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『手のひら返して返された』 作者: 上海専用便器
「ぬえ!また聖からの仕事をサボって、寺子屋の子供たちと遊んでいたわね!!」
「何のことだか分からないな〜!」
「まぁまぁ、子供たちも楽しんでいたからいいじゃない。」
「で、ですが………」
「ふふん、ムラサは子供に優しくなんかできないもんね。」
「な、何ですって!?」
毎日毎日、こんな下らないやり取りを繰り返す。
それが私の一番の幸せだった。
聖は優しくしてくれるし、ムラサとは喧嘩ばかりしてるように見えるかもしれないけど、
本当は同じ布団で寝るくらい仲がいい。
一輪も地味だけど頼りになるし、星は天然だけどいざというときは聖並みに頼りになる。
そして、子分の小傘にクールでかっこいいナズーリン。
地上に出てからは、本当に楽しいことばっかり!
「さぁ〜て、今日は誰と遊ぼ………あれ?」
何か変な感じがする。
手が疼いてきた。
虫でもくっついたのかと思って手を見てみると、手が裏返っていた。
「え、ええ!?わ、私、こんなこともできたんだ………」
正体不明が看板のぬえちゃんでも、自分の体で知らないことがあったなんて。
鵺って、そこまで不思議な生き物だったのかな。
でも、私の体に異常が出ていたら嫌だしみんなに相談しに行かないと。
聖のところに行って…………?
あ、あれ?あんなババアのところに何を相談しに行くの?
あいつ、自分が死にたくないから若返っただけの臆病者じゃん。
大体、人間と妖怪がみんな平等なんてそんな世界作れるわけないよ。
だって、あいつ人間と一緒に生活してないもん。
ただの力の強い化け物、私と一緒。
危ない危ない、あいつに洗脳されかけていたなんて恥ずかしいな。
じゃあ、誰に相談しようかな?
よし、ムラサは面倒見がいいから………
ちょっと待って。ムラサって、何もできない無能だよね?
船を沈没させることしかできないじゃない。
それであのババアが救ったとかいうけど、あいつ簡単に言い包められたんだっけ。
はぁ、一緒に寝た自分が恥ずかしい。
これからは、沈没船長って呼ぼうかしら?
……センスがない名前だから、やめよっと。
一輪かぁ…………
美人とは思うわ。
でも、地味。
こうなったら、星に見てもらうしかないね。
って、星はまさしくババアの信者だったわ。
毘沙門天の代理があんなババアの手先でいいのかなぁ。
ふふ、いつか星が毘沙門天に罰される時が来て欲しいね。
いっつもいっつも、ババアの傍にいるし挙句の果てにエッチまでしてた。
さすが、落ちこぼれの妖怪の集まりだよね。
星は命蓮寺でも一,二を争う無能。
小傘はどうかしら。
人を脅かすことすらできないのに?
幻想郷一の無能妖怪、この称号を与えてやりたいわ。
早苗とかいうアホ巫女とかなり仲がいいみたいだけど、
人間を驚かすのが生きがいなのに人間と一緒にいていいの?
しかも、デートもしてたのよデート!
はっ!同じ妖怪として、恥ずかしいわ。
残りは、ナズーリン…………
毘沙門天のスパイだっけ?
星を監視しに来たんでしょ。
それなのに、星と一緒に寝ていたのは何で?
………星のことを好きだと見せておいていざという時、星を殺すためね。
ナズーリンなら、相談してもいいかもしれないわ!
よし、ナズーリンのところに行こう!!
命蓮寺に戻り、私はナズーリンの元へと向かった。
運よく、一人で命蓮寺の掃除をしていたナズーリンと出会えた。
「おや、ぬえじゃないか。掃除を手伝いに来た、と言ってくれればありがたいが。」
「ねぇねぇ、ナズーリン。」
「どうしたんだい?また、聖に隠し事をするのか?」
「あのねぇ…………」
「あのババアを殺したいんだけど、どうしたらいいかな?」
「出て行きなさい。」
「ひ、聖…………?」
私は今、聖たちに追いだされそうになっている。
「もうここに帰ってこないで。」
「ム、ムラサも何で…………?」
怒るときはもっと声を荒げるムラサが、こんなに冷たい声で怒ってくるなんて思ってもいなかった。
「ぬえ………どうしてなんですか…………?」
「ち、違うもん!!私はナズーリンを傷つけたりしないもん!!」
私を心配しているように話してきたが、星の顔は私を見下しているものだった。
「でも、ナズーリンはあなたにやられたと言っているわ!!」
「違う!!私はやってない!!」
普段なら絶対に怒らない一輪が、私の胸倉を掴んできた。
あの後、ナズーリンは急に私に掴み掛かってきた。
何でナズーリンが私を襲ってきたのか分からなかった。
「冗談でも、そんなことは言ってはならないぞ、ぬえ!!」
怖かった。
ナズーリンに怒られたことなんてなかったもん。
ムラサ以外の誰にも、怒られたことなんてなかったのに。
本当に怖かった。
ナズーリンに殺されちゃう、みんなに殺されちゃう。
どうしよう、どうしよう。
なんで、私はこんな気持ちになったんだろう。
気がついたら、片耳が欠けているナズーリンが血を吐いて地面に横たわっていた。
「嫌だよ、聖ぃ!!私にはここしか居場所がないのに!!」
「……………私を、殺したかったのでしょ?」
「え………?」
何で?
何でそんなこと言うの?
聖は、私の大好きなお姉ちゃんなのに。
聖のためなら、死ぬ覚悟だってあるんだよ?
今ここで、自殺したっていいよ?
だから、私のことを信じてよ!
私は聖を殺そうと思ったりしない!!
バチンっ!!
急に右頬に痛みを感じる。
こんなに痛いと感じたことは、今までで一度も無かった。
「もう一度言うわ…………………この命蓮寺から、出て行きなさい!!
頭の中が真っ白になる。
どこにも行く場所なんてない。
フラフラ空を飛んでいるけど、前は全く見えていない。
今私がどこにいるかなんて、分からない。
どうしてこんなことになってしまったんだろう。
もう死のうかな?
舌噛み切るだけで、死ねるかな?
でもそれぐらいじゃ、妖怪は死なないよね………
そうだ、巫女に殺してもらえばいいんだ。
ふふふ、神社で暴れたら私を殺してくれるよね………
「聖………こんなことになるなら、会わなかったらよかった…………」
そうつぶやいて博麗神社へと向かった。
両手はいつの間にか元に戻っていたが、そんなことどうでもよかった。
「ということで、この子の死体をどうするかは貴方たちに任せるわ。それと………ごめんなさい。」
「分かったわ、処分は任せておきなさい。」
「………悲しくないの?」
「ええ、自業自得でしたもの。」
「っ…………まぁいいわ。それと、少しは参拝客をこっちに寄越しなさいよ。」
「ありがとう、霊夢。」
(………こいつらがおかしかったことに気づいておけば、
あんたを助けられたかもしれないのに…………ごめんなさい。)
「みんな、ぬえの死体が届いたわ。」
「やっとかぁ。」
「まったく、迷惑ばかりかけてこの屑は。」
「聖、どうするのですか?」
「もちろん、見せしめとしてバラバラにするわ。」
「そうですよね、いくら私たちでも我慢の限界ですもの。」
ぬえの死体をバラバラにしていく、白蓮たち。
斧を用いて、右手、左手、そして両足と次々と切断していく。
切断されようとも、ぬえの両手足は綺麗なままだった。
ムラサたちがぬえを晒し者にしようとする最中、白蓮は自分の手を洗っていた。
そのときにやっと、自分の体の異変に気づく。
両手が、裏返っていた。
「ナズーリンさん、聞こえますか?」
「聞こえているよ、鈴仙。」
「治した耳の方も聞こえるようになったでしょ?」
「ありがとう、永琳。貴方のおかげで、ここまで元気になれたよ。」
「そう…………」
「ご主人、また物を無くしてないだろうか………?また、ムラサとぬえの喧嘩を見たいな。
ぬえが何であんなことをしたかは分からないけど、聖なら優しく包んでくれるはずだからね。
もしかしたら、ぬえが泣きながら謝ってくるかもしれないから、
今のうちに慰めの言葉を考えておかないとな。」
「……………っ!」
「れ、鈴仙?」
「きっとトイレに行ったウサー。あいつ、ああ見えてお腹が弱いウサー」
「そうか…………しかし。」
「しかし?」
「彼女は、涙を流していたように見えたが………?」
「鈴仙。」
「ひ、ひめさまぁ………」
「泣いちゃダメ。今は、あの子に苦しみを与えてはいけないわ。」
「で、でも……でも!わたしが、わたしに力がないからぁ………!」
「大丈夫よ、昔と違って今のあなたは他人のために泣いてあげられる………十分に力があるわ…………」
「う、ううっ…………ひっぐ……ひめさ、ま…………」
「早く、みんなに会いたいな。そのときは、永琳やてゐたちも一緒に宴会を開こうじゃないか。」
「そうね………楽しみにしているわ。」
「楽しみにしているウサー」
聖白蓮たちの心中死体が見つかったのは、
ナズーリンが意識を取り戻すちょうど一日前だった。
その知らせを聞いて、驚かない人妖はいなかった。
なぜ、あの聖白蓮が心中などしたのだろうか。
その傍に、ぬえのバラバラ死体が晒されてあった。
「気が狂ったのか?」
「あの聖様がご乱心に?」
「あんな素晴らしいお方が狂うなんて、この世の終わりだ。」
人里は特に騒然とした。
しかし、慧音と阿求の手により聖白蓮たちの葬儀が行われたことで
かろうじて騒ぎは収まった。
その後見つかった、聖白蓮の遺言状にはこう書かれてあった。
「ぬえを一人にしてしまったことへの罰です。」
小傘が出演する隙がなかった。
しかし、前作より劣化したかも。
皆さんが手のひら返しネタに飽きなければ、次はあやや編で。
上海専用便器
作品情報
作品集:
18
投稿日時:
2010/07/12 15:04:42
更新日時:
2010/07/13 00:04:42
分類
ぬえ
白蓮
ムラサ
一輪
星
ナズーリン
その他大勢
意味不明
聖人の誕生だな
その発想はなかった