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『もてもてもこたん 2』 作者: 上海専用便器
「ね、ねぇもこたん。」
「どうしたの、チルノ?」
「ゆ、幽香が私を苛めてきたら守ってくれる?」
「幽香はそんなことしないから大丈夫。」
チルノが、私と幽香の仲を知ったのはつい先日。
それ以来、この子はびくびくしながら私の家を訪れる。
もちろん、幽香がチルノを苛めることなんてない。
むしろ、チルノに避けられてショックを受けていた。
「だめだよ、チルノ。幽香を傷つけているから。」
「えっ………あ、あたいが幽香を?」
私はチルノと一緒に暮らすようになてから、チルノにいろんなことを教えていた。
慧音が私に教えていたように。
「今、何時よ〜」
「夜6時。」
「朝6時〜?じゃあ、お休み〜…………」
「さっさと起きろ!!」
「いやぁぁん!妹紅に襲われるぅ〜」
輝夜は相変わらずだらけた生活を送っていた。
こんな輝夜に仕えていた永琳は本当にすごい。
その永琳はというと………
「妹紅、今日は何を食べたいかしら?」
「ん?いや、みんなが食べたいものでいいよ。」
「そ、優しいわね。」
「や、優しいとか言っても何も出ないよ。」
「ふふ、輝夜と同じくらいかわいいわね。」
永琳は完全に、通い妻状態となっていた。
本人は輝夜の面倒を見に来ていると言っていたが、
誰がどう見ても私のために来ているようなものだった。
そんなある日、意外な訪問者が現れた。
「お邪魔しますわ。」
「あんたは………紫?」
「あら、名前で呼んでくださるなんて嬉しいわ。」
全く意味が分からない。
何故、紫がこの家に来たのだろうか?
念のために、私はいつでもスペルカードを取り出せるように身構えた。
「そう身構えなくても大丈夫。今日は、話をしに来ただけよ。」
いつの間にか、私のスペルカードは全て紫に取られていた。
さすがはスキマ妖怪、私でも勝てるかどうかは分からない相手だ。
「それで………私をどうするつもり?」
「いいえ、今は何もいたしませんわ。」
「今は、なんだ。」
「ええ、今はですわ。」
「…………………あの子達をどうするつもりだよ。」
最近、私の身の周りで起こった変化。
それに何か問題があったのかもしれない。
そうでなければ、この時期にあの八雲紫が私を訪ねるはずなんてない。
「心配しなくてもいいわ。彼女たちには絶対に手を出さない。」
「…………私に何をするつもりだ。」
「警告よ。」
「警告?」
「これ以上、幻想郷を貴方たちのものにしようとしないで下さる?」
「そんなつもりは…………」
「あるくせに何をほざいてるのよ、死にぞこ無いの蓬莱人。」
「っ!」
私は一瞬、こいつを殺してやろうかと思った。
だけど、今の私では殺せない。
それにあの子達も巻き込まれる。
私は大人しく、紫の忠告を聞き入れるしかなかった。
「じゃあね、妹紅。ま、大人しくしておけば何もしないわ。」
そう吐き捨てて、紫はスキマの中へと消えていった。
(でも、少し言い過ぎちゃったわね…………お酒でも持っていけば大丈夫でしょ。)
もしもこのとき、紫が私に暴言を吐いていなかったら。
紫が私の家に来ていなかったら。
未来はどうなっていたのだろうか?
紫の訪問から数日後、また慧音に教えを説かれた。
「さて、妹紅。今度は神様のことを理解しようか。
まず、鍵山雛と呼ばれる厄神がいることは知っているな?
ならば、人形のような性格であることも知っているだろう。
何故、人形のようになって心を閉ざしてしまったか分かるか?
それは、厄を引き受けてもらうという名目で彼女を犯した男たちが数人いるのだ。
しかも、それが何十回と繰り返されてしまった。
だから、彼女は心を閉ざしてしまった。人間を誰よりも愛していたというのに。
妹紅、お前が何をすればいいかは分かっているな?」
妖怪の山へと向かい、私は雛のいる場所へと向かった。
昼なのに薄暗く、何か嫌な雰囲気を感じた。
いるだけで気分が滅入るような、何となく暗くなるような。
「あら……………厄を、吸い取って欲しいのかしら………………?」
声のするほうを振り向くと、そこには特徴的なフリルの服に身を包んだ雛が立っていた。
噂どおりの綺麗な顔で、服も似合っている。緑髪もかわいい。
だけど目に光がない、まるで死んでいるかのようだ。
心が壊れる、ということがどういうことが少しだけ分かった気がした。
「どうしたの…………………私を襲いに来たの………………?」
さも当たり前であるかのように、自分が襲われるのを受け入れているようにも見えた。
いや、襲われるのが運命であるかのように思っているのだろう。
「あー、じゃあちょっと私についてきて………ダメ?」
「いいわよ……………どこでしてもいいわ…………………」
天子のときもだったけど、「家に来て」と言うとどうしてそっちに勘違いするのか。
私はそこまで酷い奴には見えないと思っていたけど、ちょっと悲しかった。
やはり、見た目の問題なのかもしれない。
「はい、どうぞ。」
「……………どういうこと?」
「何って………お昼ご飯。そりゃ、私は慧音とか永琳とか幽香ほど料理は上手じゃないけどさぁ。」
「…………いただきます。」
食べないと思っていたが、意外と素直に食べてくれた。
「…………おいしい。」
「ほんと!?ありがとう!!」
「ちょ、ちょっと?」
あまりにも嬉しくて、私は雛を抱きしめてしまった。
「あっ!?ご、ごめん!!」
これはさすがにまずい。
雛に嫌われたかもしれない。
「……………ふふっ。」
雛が笑った?
これは良い感じになってきた。
それから雛は、あっという間にご飯を食べ終わった。
チルノたちの倍のスピードで食事を終わらせたのだ。
まさか、ここまで食事のスピードが早いなんて思ってもいなかった。
「ごちそうさま…………………また、呼ぶつもりね。」
「な、何で分かったの?」
「顔にそう書いてあるわ、妹紅。また会いましょう?」
「え………………あ、う、うん!」
雛が家から出て行くときに見せてくれた顔。
その表情は、噂の中の雛からは想像もできない優しそうな顔をしていた。
それから雛は、呼ぼうと思ったときに私の家に来るようになった。
何回も何回も私の家に来るうちに、だんだんと表情豊かになっていった。
出会った頃とは全くの別人になったかのようだ。
みんな、今の雛を見せると驚くのだろう。
そして、雛は急に私にこんなことを言ってきた。
「ねぇ、妹紅。」
「どうしたの?」
「明日、一緒に来て欲しいところがあるの。」
「どこ?どこでも行ってあげるよ。」
「それは明日になってからの、お楽しみ。」
そう伝えてきた雛の表情は、少しだけ重いように感じた。
次の日、私は雛に連れられてある場所へと連れて行かれた。
「ここは…………無名の丘?」
「そう………私の大好きな場所よ。」
「どうして、ここが好きなの?」
ここは無名の丘と呼ばれる、鈴蘭畑だ。
いくら厄神でも、鈴蘭の毒は危険ではないのだろうか。
そうでなくても、どうして雛はこの場所が好きなのだろう。
「…………………人形には、幸せなんて訪れない。」
「え?」
何を言ってるの、雛?
「鈴蘭の花言葉、知ってるかしら?」
「えっと………ごめん、花言葉は幽香に聞かないと…………」
「『幸福が帰る』、だから私はここが好きなのよ。
この鈴蘭畑に幸せが帰ってくるなら、いつか私も幸せを手に入れられる、なんてね。」
「雛……」
「一生手に入れられないものを、花言葉を信じて手に入れようとしている私も………おかしいわよね。」
私は、だんだんと弱弱しくなっていく雛を見ていられなかった。
守ってあげたい。
幻想郷中から迫害されても、私が守ってあげたい。
「雛!」
「も、妹紅?」
私は雛を強く強く抱きしめる。
何があっても、雛が消えてしまわないように。
「人形が幸せになれないって言っていたけど、それは間違ってる!
雛が人形?雛は男たちの性欲処理のためのもの!?
そんなこと言う奴がいたら、私が一人残らず燃やしてやる!
雛は人形なんかじゃない。幻想郷に必要な神様で、私の大事な人なんだ!」
「妹紅…………ありがとう。」
「雛………これからずっと、私と一緒にいてくれないか?」
「…………………もちろんよ。」
その数分後、自分の言ったことが如何に恥ずかしいことだったかを思い出し、
死にたくなっていたところを、雛に笑われて死にそうになった。
「あ〜あ、まさか雛が山から出て行くなんてねー」
「しかも、男………ごめんなさい、フィアンセができたから出て行くなんて悲しいわ。」
「ふふ、一番乗りね。」
「そんな勝負してたの?」
「「してたわ!」」「してないわ。」
「…………仲のいい神様たちね。」
雛とその友人の秋姉妹と私は4人でミスティアの屋台でお酒を飲んでいた。
神様もここまでお酒好きとは驚いた。
かなりの量を飲んでいるが、ミスティアの屋台なのでお代はタダである。
この後、ミスティアは「赤字だよ、どうしよう〜」と半泣き状態になってしまった。
「妹紅。」
「どうしたの、雛。」
「この厄除けのお守り、持っていてね。」
「うん、分かった。」
「そのお守りがあれば、どんなことからもあなたを守ってくれるから。」
「ふふ、ありがとう。」
私は雛がくれたお守りを首にかけた。
これがあれば、輝夜との勝負にも全勝できそうである。
もうそんな時が来ることはないだろうけど。
まさか、このお守りが役立つときが来るなんて思ってもいなかった。
そんなこんなで、今日もまた慧音に教えを貰うときが来た。
「さて、妹紅。地下の妖怪、と聞いてお前はどう思う?
凶暴で融通が利かなくて消えるべき存在、と思っていても仕方ない。
ある人物が地下の妖怪たちはそういうものだというレッテルを貼ってしまったのだ。
さて、まずは古明地さとりに会いに行くのだ。
大丈夫、お前ならばさとりと心で通じることができる。
彼女は心に深い傷を負っている。
自分は誰にも好かれない、誰も好きになることがない。
誰も自分を守ってくれない、何も守ることができない。
そう思い悩んでしまっているのだ。
地下への行き方は分かるな?さぁ、地下の住人たちに光を届けるのだ!!」
しかし、地下となるとさすがに大変だ。
今までの場所とは、移動距離が比べ物にならない。
輝夜ではないが、寝ている間に地霊殿についているなんてことはないだろうか。
そして、私は地霊殿にたどり着いていた。
「あれ?」
「お姉ちゃん、私たちに何か用ー?」
「うわっ!」
今気づいたのだが、私は誰かに抱きかかえられていたのだ。
その子は私よりも身長の低い子だった。
容姿を見ると、この子はどうやらさとりの妹のこいしだと分かった。
無意識を操る能力の持ち主で、何をされても気づかれない。
おそらく、私をここまで運んできたのだろう。
「えっと、こいしちゃんだよね?」
「そーだよ。ちゃん付けじゃなくてもいいけど、私がかわいいと思うならちゃん付けでお願い。」
「じゃ、じゃあこいしちゃん。」
「ふふ、お姉ちゃんの好きなように呼んでもい〜よ。」
この子、中々の策士である。
かわいいということを否定させない状況を無意識のうちに作り上げた。
「さ、案内するから来て。」
「え?」
「私、お姉ちゃんのこと好きになっちゃったから勝手に入ってもいいよー」
「い、いいの?」
「あ、名前を聞いてなかった!」
「妹紅だよ、藤原妹紅。」
「妹紅ね、ようこそ地霊殿へー」
いとも簡単に地霊殿へと入ることができた。
しかも、こいしとはいい感じである。
あとは、さとりの心の傷の深さを確かめなければならない。
「こいし…………どうして、勝手に入らせたの。」
「だって、私が大丈夫だと思ったんだもん。お姉ちゃんの意見なんて知らない。」
「貴方は私と違って、心が読めないのよ。他人を騙すのがうまい人だっているわ。」
「…………そうやってまた、一人ぼっちにさせるんだね……………」
「こ、こいし?」
「もういいもん!お姉ちゃんなんか、知らない!!」
「ま、待ちなさい!!」
どうやら、さとりとこいしが姉妹ケンカをしてしまったようだ。
やはり、ちゃんとした礼儀を持って訪れるべきだった。
「申し訳ございません。お見苦しい姿を見せてしまって…………」
「い、いいよ別に。それよりも、こいしは………?」
「大丈夫です、いつものことですから。」
いつものこと、その言葉を聞いて私は胸が痛くなった。
「え……………?」
「どうしたの?」
「どうして、私とこいしの姉妹ケンカのことを心配なさるのですか?
私と貴方は、それほど交流が無いというのに…………」
そんなこと言われては返答に困ってしまう。
やはり、兄弟姉妹は仲良くしなければならない。
ケンカするほど仲が良いとはよく言われるけれど、
この二人はすれ違って、ケンカをしているように見える。
「……………そんなことを思ってくれる人がいたなんて。」
「え?」
そうだ、さとりって心を読めるんだった。。
まぁ、別にいいんだけどね。心ぐらい読まれたった。
「………ありがとう、妹紅。」
「へ?う、うん。」
「……………こいしのこと、理解してあげないとダメね。」
「そうだよ、さとり。自分の家族は大切にしてあげないと。」
「…………ふふ、面白い人ね。」
「あー、偉そうにこんなこと言ってごめん。」
「いいのよ………」
「それじゃあ、とりあえず私は一旦帰るね?」
「こいしを探しに行くのね。」
「もちろん。」
「私もいきたいのは山々ですが、何しろペットたちのこともありますので…………」
「いいよいいよ、私がちゃんと説得してあげるから。」
さとりもこいしも私が守ってあげるから。
「……………変な人ね。」
私は一旦、家へと帰り慧音にどうやってこいしを見つけるか相談しようと思った。
聞くところによると、こいしを認識することはできないらしい。
が、慧音ならば必ず知っている。そう信じて私は家の中へと入っていった。
気づいたら、こいしが私を迎え入れていた。
「おっかえりー!」
「はい?」
「今日は、もこーの家に泊まるね?」
「さ、さとりに言わなくていいの?」
「もちろんだよー、あいつは私のことは嫌いなんだしさ。」
そんなことない。さとりは絶対に、こいしのことを大切にしているはずだ。
「でもね………私はお姉ちゃんのことは大好き。」
「こいし?」
だんだんとこいしが弱弱しくなってきた。次第に目も潤んできている。
「私ね、お姉ちゃんと違って第3の目が閉じてるの。」
さとりは三つ目の目が開いているのに対し、こいしの方は閉じていた。
その理由は知らなかったし、慧音も教えなかった。
「何で目が閉じているかは聞かないで。
でもね、目を閉じてから私………誰も信じることができなかった。」
こいしの体が小刻みに震えている。
何かに怯えているようだった。
「私………誰にも嫌われたくなかったのに………
どうやったら、お姉ちゃんが私のこと好きになってくれるか分からなかった。」
こいしの目から涙が流れる。
私はいてもたってもいられず、こいしをそっと抱きしめてあげた。
「もこーは………もこーは私のこと…………嫌いにならないよね?」
「何を言ってるの…………!」
「もこー…………あったかいね。」
「ふふ、そりゃ私は炎を操るもの。」
「心の中も……………あったかい……………」
「そ、それは照れるかな…………」
しばらくの間、私はこいしを抱きしめ続けていた。
気づいたら朝になっており、私とこいしは寝ていた。
こいしの腕はしっかりと私を抱きしめており、抜けように抜けられなかった。
それなので、私はそのまま寝てしまうことに決めた。
気づけば、輝夜と同じくらいの時間寝ていてしまってショックだった。
「でね、もこーったら友達になったときから私を押し倒したのよ!」
「おお〜、さすがこいし様!」
「いーなー、私も食べてみたいー。」
「こら………変なことを教えないの。」
「あ、お姉ちゃん!」
「こ、こいし?」
「おはよー」
「お、おはよう………今日はやけに元気ね。」
(お姉ちゃん、大好きだよ。)
「え!?」
「あっ、こいし様。あのお姉さんが来ましたよ。」
「ほんと?じゃあ、会いに行ってくるね。」
「こいしの心を読めるようになったなんて……………妹紅。」
地霊殿に入ってまず最初に、こいしに押し倒されてキスをされた。
その後、いつの間にか裸になっていたがさとりが止めてくれて助かった。
「妹紅、二人きりで話があります。」
「え?うん、いいけど………」
(おおーっ!?さとり様まで、あのプレイボーイに!?)
(うにゅ!?あ、あんなに綺麗なのに男なの!?)
「違うよ、お空。確かにかっこいいけど、女の子だからね?」
「心配しなくても、妹紅に手を出したりはしないわ。」
「ははは………」
そんなやり取りを見て苦笑いしながら、私はさとりに連れられて地霊殿の一室へと入っていった。
「で、どうしたの?」
「……………ありがとう、妹紅。」
「えっと………こいし、のことかな?」
「ええ、こいしの心の声が聞こえたわ。『お姉ちゃん、大好き。』ってね。」
「ほ、ほんと!?」
そう、こいしの心の声はさとりには聞こえなかった。
無意識を操っている者の心の声は聞こえることはない、と慧音が言っていた。
「本当にありがとう、これで私もあの子のことで迷いはなくなったわ。」
「………………」
心で思っても無駄だ、どうせ伝わるのなら言葉で伝えよう。
「………どうしたの?」
「さとり。」
しっかりと聞いて欲しい、一番苦しんでいるのはさとりなんだから。
「な、何を言ってるの…………?」
私はさとりに自分の思っていることを全て、言葉で伝えた。
さとりだって、心を読む力が欲しくなかったことも。
心を読む力があったせいで、苦しかったことも。
妹とすれ違ってばかりで、ペットたちにも距離を置かれていると思って、ずっと一人ぼっちだと感じて。
誰かに苦しみを知ってもらいたかったことも。
全部、さとりに伝えた。
「はぁ…………」
「悩んでいるけど、どうしたの?」
「さとり………最近、家が狭くて困ってるの。」
「ふふ、あなたがそれだけ愛されている証拠よ。皆、あなたのことを本気で愛しているわ。」
「あ、愛しているなんて………それに、女同士だしさ…………」
「かわいいわね、妹紅…………」
こいしだけでなく、さとりまで私の家に来るようになった。
最初は受け入れられるか心配だったらしいが、
「妹紅を愛する同士を見捨てたりなんかしないわ!」と言って、あっさりとさとりを受け入れた。
「いつか、お空とお燐も連れてくる?」
「もうこの家に忍び込んでいるわ。」
(バ、バレたぁ〜!?)
(さすがさとり様だねぇー………………ちょっとヤバイかも。)
「混ざりたくなったら、いつでも降りてきなさい。」
「「は〜い。」」
屋根裏に忍び込んでいたようだ。
しかし、隠れる気が全くない。
天井の壁の一部が外れているし、そこから足が少しだけ出ている。
慧音に頼んで、家の警備を厳しくしないといけないな。
「それじゃあ、あの子達が家に入れなくなるわ。」
「いいじゃん、だってあの子達も私の家に住むようになるんだから。」
そんなやり取りをしながら、私はさとりとのんびりしていた。
「上海、紅茶をお願いね。」
「ハーイ」
「はーい。」
「…………珍しいわね、あなたがここに来るなんて。」
「ユカリンデター」
「でたーとは酷いわ………よよよ。」
「で、何の用なのよ。」
「…………気をつけなさい。」
「え?」
「貴方も魔理沙も標的にされるわ。いずれ、この幻想郷の住人全員があいつに洗脳される。」
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ。全く話が掴めないわ。」
「いずれ分かることよ。」
「おーい、お前ら私がいることを忘れてないか?」
「あら、魔理沙いたのね。」
「さっきからお前に座られてたんだよ。」
「ごめんなさいねー」
「で、異変か?」
「…………………命を落とすことだけは避けてね。」
「お、おい紫!」
「コウチャイレタノニー」
「魔理沙、二杯飲みなさい。」
「分かったよ…………………で、紫は何を言いたかったんだ?」
「さぁね……深く考えなくてもいいでしょ。」
「………私は心配だぜ。」
「そんなこと言われると………私だって、心配になってきたじゃない。」
「行くか。」
「ええ。」
「シュツジーン!」
魔理沙とアリスが外へ出て行こうとドアを開けたとき、上白沢慧音が立っていたのだ。
「け、慧音?」
「また珍しい人が来たわね。今から出掛けるところだったけど、用は何かしら?」
「用事があるというのにすまないな、一つ頼みごとがあるんだ。」
「どうしたのよ。」
「人里の子供たちのために人形劇をやってもらいたい。お願いできるだろうか?」
「人形劇?それぐらい、いつでもいいわよ。」
「やってくれるのか?ありがとう。では、報酬はいくらぐらいがいい?」
「いいわよ、タダで。」
「本当にか?」
「ええ、日時はしっかりとお願いね。」
「分かった、では――――」
「よろしく頼むぞ、アリス。」
「ええ、当日に会いましょう。」
「ああ、ではここで失礼する。」
慧音は魔理沙とアリスの前から立ち去っていった。
「ふぅ、また仕事が増えたわねぇ。」
「いいじゃないか、またお前の人気が上昇するぜ?」
「からかわないでよ、私に人気なんか無いくせに。」
「それがあるんだよな、上海?」
「アリスハ、ミンナノオヒメサマー」
「う、うるさいわね!」
「さてと…………霊夢のところに行くか。」
「ええ。」
「コンドコソ、シュツジーン!」
そんなやり取りをしながら、魔理沙とアリスたちは博麗神社へと向かっていった。
この時の慧音との取引が、如何に重要なものだったかをこの二人が知ることはなかった。
場所は変わり、博麗神社。
そこで、霊夢と紫は何やら密談していた。
音を吸収する結界を張っており、さらに一部の人妖しか入れない仕組みになっている。
その人妖とは、霊夢、紫、萃香、アリス、魔理沙の5人だった。
「……ごめんなさい、紫。あの空気は異常だったわ。」
「そう…………止められなかったのね。」
「ええ。慧音の言葉は絶対よ。お賽銭50年分とかいうのは、慧音たちが勝手に決めたこと。」
「よかったわ、霊夢は私の敵じゃなくて。」
「何を言ってるのよ、あんたがやられたら幻想郷はおしまいよ。」
「ふふ、冗談よ冗談。」
「ったく…………で、どうする?」
「……山にいる神の一部が味方になったわ。それに地霊殿のさとりたちも。」
「はぁ………全く、手間をかけさせるわね。」
「へぇ〜、このままだと勇儀も敵になっちゃうのかねぇ?」
そんな声が聞こえてくると霧が集まってきて、萃香が現れた。
「呼ばれたから来たけど、誰を倒せばいいんだい?」
「萃香、霧になって妹紅を追跡して。何か悪事を働いていたら、倒さないで私に報告しなさい。」
「もっと難しい仕事がほしいねぇ〜」
「油断しないでよ、あんたまであいつら側についたら……………」
「何を心配してるのさ。私は絶対にあんたら二人を裏切ったりしない。」
「………………信じてるわよ、萃香。」
「それじゃ、行ってくるね〜」
萃香は再び霧となり、神社の外へと消えていった。
「魔理沙とアリスにも手伝ってもらうわ。あの二人も有能だからね。」
「……嫌な予感しかしないわね。」
「あら、それじゃあ萃香が裏切るとでも?」
「どうしてかしら、うまくいくようには思えないわ。」
「……………心配しすぎよ。」
「そうだといいのだけれど。」
再び場所は変わり、紅魔館の大図書館。
パチュリーと慧音が会話をしていた。
それを小悪魔は心配そうに見つめている。
「魔理沙に盗まれた本……………?」
「まだそうだと決まったわけじゃない。が、その疑いが強いんだ。」
「……………勘違い、じゃないかしら?ああ見えて魔理沙は、律儀に借りた本を返しにきているわ。」
「しかし、ここにしかないような魔道書が魔理沙のよく行く店に落ちていたのだ。
だから、魔理沙に疑いがかかってしまってな。まあ、貸した本ならばいいのだが。」
小悪魔は何か嫌な予感を感じた。
悪魔の恩恵なのか、他人の顔を見ればある程度は何を考えているのか分かるのだ。
(あの人、嘘をついてるようですけど…………後でパチュリー様に伝えますか。)
「分かったわ…………確かめるから、その本を持ってきて頂戴。」
「ああ、明日には持ってくる。」
「それじゃあね……………」
「では、また。」
(善人だと思っていましたけど………まさか、この人が悪人だなんて思ってもいませんでした。)
小悪魔は慧音のことを疑い始めて、慧音の意図を考えていた。
「…………こぁ、レミィを呼んできなさい。」
「パチュリー様も、慧音さんを。」
「ええ、魔理沙を陥れようとしているわね。」
「では、早々に……!」
「ダメよ、彼女は人里の守護者。殺せば、霊夢が動くわ。」
「そう、でしたね………」
「レミィに頼るのが一番よ。さ、呼んできなさい。」
「はい!」
小悪魔は大図書館から出て、レミリアを呼びに咲夜に会いに行った。
レミリアを待っていたパチュリーは、ハッとあることに気づいた。
「………………まさか、あの魔道書を?」
慧音が言っていた魔道書が、もしも自分の思っているものだったら?
最近、図書館で見当たらなかったあの本だったら?
見向きもしなかった、いや見向きもできなかったあの魔道書を盗んでいったのなら?
最悪の場合、自分たちの身に降りかかる災難がどういうものかを想像すると、
柄にも無く体が震え始めてきた。
「ふふ、よく眠っているな。幸せそうで何よりだ。」
慧音は、ぐっすり眠る妹紅と添い寝している少女たちを見て微笑んだ。
「…………今のところ、お前たちを苦しめる必要は無い。安心していろ。」
そう言い残して、慧音は明日のために魔道書の準備をする。
対人用拷問魔法が秘められた、魔道書を。
次は紅魔館のある二人と、橙と萃香と勇儀の予定
妖怪の山とか言っていたけど、結局雛だけに………
あややたちや守矢神社の人たちには、後で頑張ってもらいます
アリスと魔理沙は別のところで活躍してもらうことにしました
相変わらず、上手く書けないや
上海専用便器
作品情報
作品集:
18
投稿日時:
2010/07/19 00:04:26
更新日時:
2010/07/19 09:05:13
分類
妹紅
慧音
雛
こいし
さとり
みんな大好きもこたん
紫
霊夢
目的不明
>>1
第3次大せ……ゴホッゴホッ。
妹紅がさらにモテます。
>>2
洗脳?いいえ、愛です。
>>3
これから数人、酷い目に遭っていきますよー
>>4
このけーねは、本当に黒なのでしょうか?
>>5
またまたありがとうございます。
ちなみに、ネチョは下手なのしか書けないかも………
>>6
さぁ、みんなで一緒にもこたんを呼ぼう!
>>7
どんなフラグがあったか忘れたかもしれない、やべぇ
それと次の話からは、だんだんとイチャが無くなってきますので。
先が気になる話を書けるのはすごいなぁ。
あとこれ妹紅は慧音に操られてるだけなのですね?
誤字発見したのですがさとりの所
×心ぐらい読まれたった。
○心ぐらい読まれたって。
だと思います。