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『オカシイ』 作者: いぬうえ
〜妖夢〜
あっという間の出来事だった。
私と幽々子様が博麗神社の宴会に行くため白玉楼を出ようとしたとき、突然、幽々子様の顔が無くなった。
私の目の前にいたのだ。
すぐ目の前に、ほんの数十センチほどの距離に、『いた』のに。
幽々子様は笑っていた。楽しみにしていたのだ。宴会を。
だが、その笑顔は私のすぐ目の前で消えた。一瞬で。
幽々子様は顔が無くなったのではない。顔を切り取られたのだ。
物凄く鋭利な刃物で、スパッと。
「誰?だれ?ダレ?誰よ!!幽々子様を斬ったのはっ!!!!!」
ダレ?だれ?誰?
そんなの私の前にいるコイツしかいないじゃないか!!
「殺す殺す殺す殺すコロスコロスコロスコロス!!!!!」
殺す殺すコロス殺すコロス殺す殺すコロス殺す殺す殺すコロス!!!!
〜幽々子〜
妖夢が最近オカシイ。
独り言をブツブツ言ったり、毎日やっているはずの庭仕事を休んだり。
私以外の見えない誰かと話していたり、知らない男の人と帰ってきたり。
他の幽霊を意味もなく斬ったり、冥界中で暴れ回ったり。
私は紫に相談した。すると紫は
「で?私になにをしろと?言っとくけど私はあなたの願い事をなんでも叶える神様なんかじゃないわよ。自分の家の子のことも分からないくせに他人に頼ろうなんて、まるでカッコウやホトトギスね」
紫は冷たくそう言った。それ以来、紫とは疎遠になってしまった。
・・・紫の言う通り、妖夢は私の子供も同然の存在だ。
カッコウやホトトギスは自分の卵を他の鳥の巣に産んで育てさせる。
私は紫にあろうことか妖夢を預かって欲しいと頼んでしまった。
限界だったのだ。妖夢がオカシクなってからというもの、私たちは冥界中から注目を浴びるようになってしまった。
もちろん悪い意味で、だ。
閻魔様のところにも何回も何回も行った。ちょっとその辺を歩いただけでもなにが飛んでくるか分からない。
死にたい。そう思った。だが、もう死んでいる自分にとってその思いは全くもって意味すらないものだった。
そんなあるとき、霊夢が神社の宴会に妖夢と私を誘ってきた。妖夢のウワサは聞いているはずなのに。
だが、霊夢は言った。言ってくれた。
「きっと疲れてるだけなのよ。気にしないで明日の宴会はうんっと楽しみなさい!きっと盛り上がるわよ」
私は、もう霊夢の顔が見えなかった。かわいい霊夢の顔がグニャリと歪む。
気がつくと霊夢は私をそっと抱きしめてくれていた。
そして次の日。
「妖夢。準備できたかしら?」
妖夢はなにも言わずコクリと頷いた。だがその瞳には今までの妖夢と変わらない優しさが見えた気がした。
「妖夢・・・」
私は妖夢を抱きしめた。そっと、労わるように。壊れないように。
「妖夢、あなたは私の大切な子よ。もう、絶対に離さないからね?」
すると妖夢が口を開いた。そして、小さい声でこう言った。
「人殺し」
「え――――――」
スパッ
「!!?」
突如激痛が走った。斬られた、確実に私は斬られたのだ。
妖夢に。
「ぐぅあああぁぁぁぁ!!!」
痛い痛い痛い痛い痛いイタイイタイイタイイタイ!!!!!
斬られたのは左腕だった。
「ぐ・・ぅ・・・どう・・して?妖・・夢」
だが、私に対する妖夢の返答は――――――――
「よくも・・皆を・・・殺した・・な・・・。紫様や、霊夢や、魔理沙を・・・!!!」
・・・・・・・・・え?
「どうして・・?幽々子・・様?」
「な、なにを言ってるの?妖夢?あなた・・大丈夫?」
さっきから妖夢はなにを言っているの?なんで紫や霊夢を私が殺したなんて言ってるの?
「幽々子様!思い出して下さい!!幽々様が皆を・・・皆を・・殺してしまったんじゃないですかあああああああああああ!!!」
・・・・・意味が・・・分からない・・・・・
なんで私が皆を殺さなきゃいけないの?オカシイじゃない。
オカシイ、オカシイ、オカシイ、オカシイ、オカ・・・シクナイ?
〜妖夢〜
一ヶ月前
「幽々子様が・・変なんです・・・」
私と話しているのはスキマ妖怪であり、幽々子様のご友人である八雲紫様だ。
「幽々子が?きっと食べ過ぎのせいじゃない?」
「はぁ・・・」
本当にそうだろうか?只の食べすぎ?
幽々子様は最近、ご飯をあまり食べなくなった。どうしてかと聞くと
『え?さっきたくさん食べたわよ?』
と、言うのだ。違うときに聞いても同じ答えしか返ってこない。
私はオカシイと思い紫様に相談した。紫様は信じていないようだったが、一度様子を見てからまた来ればいいと言ってくれた。
それからしばらくして幽々子様が狂った。
『紫のとこに行ってくる』
と、言ったまま二日も帰ってこないので心配になり、紫様のところへ行くと―――――
紫様は眠っていた。・・・眠っていたのだ。
まさかとは思った。この幻想郷に紫様を・・・・殺せる者はそういないからだ。
紫様は最強の妖怪である。しかし、絶対に死なない分けではない。
紫様ほどの妖怪に傷も負わせずに眠るように殺せるような人は・・・私には一人しか思い浮かばない。
「幽々子・・様・・・?!」
私は霊夢にこのことを伝え、白玉楼に帰ると幽々子様はお茶を片手に庭を眺めていた。
「あら?妖夢、おかえり。遅かったわね」
幽々子様は帰ってきた私に気づいたのか、こちらを振り向きもせずにそう言った。
・・・そして私は紫様のことを幽々子様に・・死ぬ覚悟で報告した。
すると、
「あら、そうなの・・・。カワイソウな紫。・・私を『オカシイ』なんて言うから、きっと罰があたったのよ。ウフフ・・・」
それはもう・・幽々子様じゃなかった。
「それより妖夢?その隣にいる男の人は誰?誰なの?誰!ダレ!?だれよ!?」
私の隣には誰もいない。いたとしても半霊だ。
嗚呼・・幽々子様・・・あなたは・・・どうなってしまったの?
私はもうダメだと思った。完全に幽々子様がオカシクなってしまった。もう、どうしようもない。
竹林のお医者様に診てもらおうとしたが断られた。専門外だと言われた。
それからの幽々子様はもっとオカシクなった。
無意味に人を死なせたり、いるはずもない人と話したり。
私のことを忘れたり、自分のことも忘れたり。
私は限界だった。もう死にたいとばかり思うようになった。
でも、私が死んだら幽々子様はどうなる?幽々子様を守れるのは私だけだ。
・・・・死ねない、よね。
そんなとき、霊夢と魔理沙が神社の宴会に誘ってきた。
幽々子様のことについて色々話さなければならないだろう、と。
「幽々子はきっと直るわ。きっとなにかの原因で幽々子はオカシクなっただけよ。私もできる限り協力するから・・・ね?」
「お前らとは長い付き合いだしさ、花見のときとか世話んなったし。私にできることがあったら我慢しないでなんでも言ってもいいんだぜ?」
私は涙が止まらなかった。・・私の心はもうボロボロだった。乾燥しきって、カラカラで、砂漠みたいな私の心は、潤いを取り戻したのだ。
そう、二人のお陰で。
なのに、なのに、なのになのになのになのに!!!!!!!!
「あなたは殺した!!」
そうなのだ、幽々子様は私が宴会に行くの準備をしようとしている間に霊夢、魔理沙を・・・・
「妖・・夢・・・」
「・・・!もう、私の名前を呼ぶなああぁぁぁぁぁぁ!!」
私はもう許せない。もうダメ。限界。
この人はもう、私の知っている『西行寺幽々子』ではないんだ!!!
殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺すしかない!!!!
「死ねエエエエええええぇえぇぇぇぇええええぇええ!!!!!!」
振り上げられた楼観剣は幽々子の頭目掛け振り下ろされる。
その刹那、
「妖夢。目を覚ましてちょうだい」
「え?」
ザシュッ
「ハッ!!」
あ、れ?ここは私の部屋?
「妖夢〜、やっと起きたわね?」
幽々子様?あれ?なんか変な夢見てたような・・・・・・・・。
う〜ん、どんな夢だったっけ?思い出せない。
「妖夢、今日は神社で宴会よ?早く早く!!」
「あ・・すいません。急いで支度します!」
ま、夢は夢だろうし。気にしくてもいっか☆
「あ、そうそう妖夢?」
「はい?なんでしょう―――」
「オカシイノハアナタノホウダカラ」
- 作品情報
- 作品集:
- 18
- 投稿日時:
- 2010/07/19 20:18:51
- 更新日時:
- 2010/07/20 05:18:51
- 分類
- みょん
- ゆゆ様