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『生贄』 作者: departed
今は遠い昔の事
とある小さな村の話
生い茂る木々は深い緑を湛え、川は冷たく清らかな水が絶え間なく動いている。
そんな村だった。
その村に住む人々は豊かな自然の中で生き、自然に感謝し神を讃え畏れていた。
自然は人々に多大な恩恵をもたらしてくれるが何時もそうではない。
時には荒々しい面を見せる。
故に人々は災を恐れ神に祈った。
古来より人はそうして生きてきた。その村も例外ではない。
村は生きた命を供物として神に捧げる風習を持ち、これをずっと行ってきた。
そしてまた、儀式を行う時が来たのだ。
雨が降らず作物が枯れ、普段はあらゆる命に活力を与える陽の光が容赦なく人々を苦しめた。
村人たちは儀式を行うために、生贄となる命を選び出す。
白羽の矢が立ったのは、村の幼い一人の少女。
金色の髪と透けるような白い肌を持ったその少女の容姿は、村では特異だった。
村人達の多くは、そんな少女を恐れて近寄ろうとはしなかった。
その事が絡んでいるのかは定かでは無いが、若く、そして美しい。
神への供物には十分であることは確か。
儀式を取り仕切るものが少女の両親に要件を伝え、そして儀式の時が来た。
厳格な表情の村人たちが少女を連れて、儀式の場へ向かう。
幼い少女は両親に言われた言葉を思い返す。
「怖がることはないよ。お前は神様の元へゆくのだからね。だから・・誇りを持ってゆきなさい」
その言葉が何を意味するのか分からなかったし、何故両親があんなに悲しそうにしていたのかもわからない。
そして今、少女は両腕の自由を奪われ、太く大きな木の柱にその身を縛り付けられている。
自分の目の前にいる仮面を付けた男達が持つ刃物の光を見たその時、少女は自分がどうなるのか悟った。
泣いて叫んでも、身を捩っても刃はこちらに向かってくる。
そして刃が首元に突き刺さり、そのまま下へと進んでいく。
白い肌の直ぐそばには赤い血肉が露出し、華奢な体には赤黒い穴が切り開かれた。
その顔は既に血の気を失い、小さな口からは止めどなく血が、虚ろな瞳からは止めどなく涙が流れ続けていた。
それから間もなくして、村に再び雨が降った。
天雲は空を陰鬱な灰色に染め、降りしきる冷たい雨は少女の涙のようだった。
しばらくの間、空は泣き続けた。
村人たちは雨を喜ぶと同時に、供物にした少女の祟りを恐れ、自分たちが殺めた少女を祀り上げた。
時は流れ
場所は変わり
幻想郷の守矢神社
金色の髪と透けるような白い肌を持つその女神は、幼い少女の様な姿。
優しい陽の光の中で彼女は眠っている。
夢を見ているのだろうか。遠い昔の記憶を見ているのだろうか。
遠い昔の記憶は彼女の中に残っているのか。
いずれもわからない。
ただ、穏やかな表情で眠る彼女の瞳から、静かに雨粒のような涙が流れた。
departed
- 作品情報
- 作品集:
- 19
- 投稿日時:
- 2010/07/22 18:59:13
- 更新日時:
- 2010/07/23 04:04:18
レベル高いな
文章もかなりすごい
>>1
かなり前に一度投稿しているよ
人間の精神とは恐ろしいものですよ・・・・・・・