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『戦場カメラマン はたて』 作者: ニャオ
はたてはにとりの研究所でお茶を啜っていた、今日一日そうするつもりだった、しかし、にとりの一言が記者魂に火を付けた
「模擬戦闘?ここで?どこと?」
「紅魔館の門番隊だよ、あれ?はたて知らなかったの?」
「知るも何もそんなことやってたの?」
「うん、文さんが従軍記者として着いていくからって朝早くから張り切ってたよ」
そう言えば今日は文見てないわね、と思いつつ
「ふふふ、こうしちゃ居られないわね、行ってくるわ」
「待ちなよ、はたて、たいした装備も持っていないんだから」
「止めてくれるな、文が参加すると聞いちゃあ黙ってお茶なんか飲んでられるか!」
「だからだね、模擬戦闘ってのは…」
「弾幕ごっこでしょ?大丈夫よ、カメラさえあれば大丈夫」
そう言ってはたては勢いよく研究所から飛び出していった
「馬鹿だねぇ、死ぬぞ」
にとりははたてが飛び去っていった方角を見ながら呟いた
はたては青空を飛びつつ独語していた
「大丈夫だもん、私だって烏天狗、やってやるわ」
しかし、この数分後、これまでに味わったことのない恐怖を彼女は体験することになる
「…見えてきた、あれね」
はたては高度を下げながら前方に群衆に近づいた
「飛びながら行くと見つかるから、仕方ない、徒歩ね」
山道を分け入りながら独語した、この機会を逃したら文を追い越せない、そんな気持ちを心に刻み、一歩一歩近づいていく、その瞬間、雷鳴のような爆音が山に鳴り響いた
「ヒッ!な、何?」
紛れもない戦闘開始の合図だった
あふれかえる怒号、爆音、悲鳴、銃声、それは、この幻想郷で度々行われる弾幕ごっこの比ではなかった、はたては一歩も動けなくなっていた
「…な、何なのよ」
連続する銃声、交差する弾道、そして怒号、はたてはその場に座り込んで動けなくなっていた
信じられない、文はこの生き地獄を写真に納めているのか、以前文から写真を撮るときのコツを教えて貰ったが、その時彼女はこう言っていた
『写真を撮る時は、対象をファインダーに納める、これくらいは分かるわよね、そして最も重要なのは何も考えない、何も感じないこと、良いわね』
はたてには無理だった、この様子を見て何も感じる事が出来ないのは悪魔に魂を売り渡した者だけ何じゃないかと、そう思えてきた
以前、外の書物でこのような写真を見たことがある、その写真に写っていた兵士達は皆鬼のような形相を浮かべていた、まさに写真通りだった
はたては文字通り這い蹲って進んでいた、途中、何度も死体を見た、額に穴を開けられた者、原形をとどめない肉の塊のなった者、死に方は様々であった
「う、うぅ」
「?ちょっと、あんた、大丈夫なの?」
うめき声がする方向に目を向けたら、そこには傷ついた兵士がいた
「…た、助けて…お、願い…しま…」
彼がその一言を話し終える前に一発の流れ弾が彼の心臓に突き刺さった
それは、はたてが初めて見る、死の瞬間だった
「ちょ、ちょっと、あんた、目開けなさいよ、ほら、しっかり」
しかし、両腕に抱かれている彼は黙ったままだった
「ね、ねぇ、なんとか言ってよ、ねぇ」
血で汚れ、穴だらけになって、虚ろな瞳、弾幕ごっこではこうはならない
模擬戦では無かったのか?死んでいるじゃないか!なぜ、なぜこんな事をしなければならないのだ!はたては心の中で叫んだ
「…動くな!」
声がした方向に振り返ると見慣れない鉄の棒を構えた男がいた
「手を挙げろ」
はたては男の言うとおりにした、でなければこの彼のように死ぬ、そう思えたからだ
「名前は?」
「…姫海棠はたて」
「所属は?」
「妖怪の山」
「階級」
「烏天狗」
「烏天狗?」
はたては無言で頷いた
「…分かった、手を挙げたまま待ってろ」
そう言うと男は無線機を取り出し連絡をしていた
「…こちら山の狼、こちら山の狼、本部、応答願います」
『こちら本部』
「目標を発見した、指示を請う」
『了解、司令部まで連れてこい、こちらで保護する』
「了解しました」
男が無線機をしまい、私を司令部まで案内した、その道中で私は疑問を投げかけた
「ねぇ、これって模擬戦なのよね?」
「当たり前だろ?」
「なんであの子死んじゃったの?」
「…紅魔館からの要請で門番隊の隊員には実包を使用しろ、とね」
「なんで?」
「なんでも実践の恐怖を味合わせたいんだとか」
「それだけで?」
「あぁそれだけだ」
それからその男は一切口をきかなかった
歩き続けること一時間、司令部に着き、意外な人物に出会った
「…はたて」
「あ、文じゃない、どうしてここに?」
同業者、射命丸文が防弾チョッキに身を包みそこにいた
「どうしてここにはこっちのセリフです!第一、プレートキャリアすら身につけず戦場をほっつき歩くことは自殺に等しいんですよ?分かってます?」
「…ご、ごめん」
「それからですね…」
文が言い終える前にはたては何者かによって殴り飛ばされていた
「も、椛?」
文も驚いていた、いつもは温厚なあの白狼天狗が血相を変えている
「この馬鹿野郎!死んでいたらどうしたんですか?どうしてあなたはいつもそうなんですか?えぇ?」
椛は肩を怒らせながらはたてを激しく糾弾した
「一歩間違えれば死んでたんだぞ?分かるか?」
「ご、ごめんなさい」
「それから…」
「椛、もう止めてあげなさい、はたてだって反省してますよ」
「文様…」
その後椛は演習の続きに参加するため司令部から出て行った、部屋に残ったのははたてと文だけだった
「…その、文、本当にごめん」
「おおかた予想は付きます、ここにいた理由がね」
「え?」
「にとりさんから今日この話を聞いたんでしょう」
「な、なんで、知ってるの?」
「あのね、一時間前ににとりさんから連絡がきたんです、あなたが演習場に侵入するとね」
「にとりから?」
「えぇ驚きましたよ、ろくな装備も持たずに戦場へ来るとは、勇敢を通り越して無謀です、殺されても文句は言えない所です、ここは」
はたては泣き出していた、自分のしたことを理解したからだ、前しか見ず、迷惑を掛けていたことに気付いたからだ
「ご、ごめんなさい、ごめんなさい」
「…謝れるのは良いことですよ、はたて」
かくして、はたては地獄の戦場から生還した、その後、はたては正式な手続きをして紅魔館と妖怪の山双方で行われる大規模演習に記者として参加するのはまた別の話である
はい、初投稿です
先日創想話の方で紅魔館の門番隊のssを見て書きたくなりました
温かい目で見て頂けたら嬉しいです
ニャオ
作品情報
作品集:
19
投稿日時:
2010/07/25 02:50:59
更新日時:
2010/07/25 11:50:59
分類
はたて
にとり
文
椛
オリキャラ
軍事
そう願わせる作品だった