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『逃走者 七(番外)』 作者: 名前がありません号

逃走者 七(番外)

作品集: 19 投稿日時: 2010/07/25 05:32:33 更新日時: 2010/07/25 14:33:33
1.

――文捕獲数時間前 人里の有力者の屋敷にて



「い、今なんと……?」

男は焦っていた。
慧音と自警団の者達が一斉に自分の屋敷に押し寄せてきたからだ。
慧音の男を見つめる目はとても冷めている。
男はその目に睨まれるだけで萎縮してしまう。

「貴方の屋敷が、人身売買の現場になっているという疑いがある」
「そ、そんなことはございません。私はそのような事など一つも……」
「これでもか?」
「へ? な、何故それを!?」

慧音が取り出したのは、有力者の屋敷で行なわれていた行為の写された写真、
そして人里の資金を横領した証拠文書などが男の前に突き出された。
それをみただけで、男は頭が真っ白になってしまう。

「里の資金の横領、人身売買。貴方の罪は極めて重い。厳重な処罰が下ると思え」
「そ、そんな! わたしはあの天狗に騙されて……」
「騙された? これだけ甘い蜜を吸っておきながら、そのようなことが言えたものだな!」

慧音の言葉にも、明確な怒りが込められている。
これほどまで深く関わっていては、文に誑かされたでは済まされない。
男は何の反論も出来ず、ただ跪くことしか出来ない。
自警団の面々によって、男は捕縛され牢に連れて行かれる。
慧音らは男の屋敷へと進み、横領した資金の行方と、敗者達の捜索を開始した。






「……なんという事を……」

そこに広がっていた光景は写真のそれよりも酷いものだった。
妖怪の女達は完全に性に溺れていた。
三角木馬に自ら跨り、秘裂を擦り快楽に身体をよじる者。
男らに囲まれ、精液をぶっかけられ、それを飲み干して、発情する者。
乱暴に男達に犯されて、快感に喘ぎ声を上げて、乱れ狂う者。

皆、肉棒と精液の虜にされた、性中毒者になっていた。



慧音は自警団と共に男らを捕縛し、全て牢にぶち込んだ。
しかしこうしたところで、彼女らが助かるわけではない。
これからが重要なのだ。彼女らを真っ当に立ち直らせなければならない。
他人から全てを奪う権利など誰にも無いはずだ。そう慧音は思っていた。

人里の有力者の屋敷は解体された。
いわくのついた屋敷に買い手がつくはずもなく、
また被害者達の心理も考慮して、解体と相成った。

後に逃走者に協力した者達、特に深く関係した者達は全員処刑された。
資金横領、人身売買。これほどの事をして、許されるはずはなかった。
人里の淀んだ秩序を元に戻す為、慧音もこの処刑を呑んだ。
その慧音の決定を拒否するものは誰も居なかった。


そして人里は、いつもの平静を取り戻しつつあった。









2.

――大妖精とチルノの場合

相変わらず、チルノは妖精達に虐められていた。
それでも何も反撃する気も起きなかった。
自分はそうされても仕方が無いと、チルノは勝手にそう思っていた。

そんな時、チルノが一人湖にいると、「チルノちゃーん」と呼ぶ声が聞こえる。
チルノはまさかと振り返ると、そこには大好きな大妖精が居た。

「だ、大ちゃぁぁぁん!」
「あん、もぅ、チルノちゃんたら、いつのまにこんなに甘えん坊になったの?」
「さびしかった、さびしかったよぉぉぉ!」
「……うん、ごめんね。チルノちゃん」
「ゆるさない! ゆるさないよ! だから、もうずっとはなれないで……」
「うん、約束するよ、チルノちゃん」

抱きついてくるチルノを抱きしめて、大妖精は「大丈夫、大丈夫」と呟いた。
やがて落ち着いたチルノが、大妖精にキスをする。

「チ、チルノちゃん……?」
「だいよーせーを、あたいのおよめさんにする!」
「え、えぇ!?」
「いろんはみとめないよ! きんそくじこうだからね!」
「チルノちゃん、それは決定事項だよ……」

大妖精はあははと笑いながらも、内心大喜びだった。
彼女の望みであったチルノを独り占めにする事がこんな形で叶ったのだから。
二人は長いキスを繰り返して、自分達の住処に帰っていった。
それをみていた他の妖精達は赤面して、しばらく湖に来なくなったそうな。












3.

――橙の場合

「ふぅん、あのゲームは終わってしまったの」
「はい。事件の収拾については人里の者達が行なったとされていますが……」
「天狗の関与はほぼ確定的かしら」
「はい、人里の面々では、これほど手際良く行くとは思えません。射命丸文の行方も依然不明です」
「あぁ、その点に関しては心配要らないわよ? 霊夢から色々聞いたから」
「そうですか」

紫は外の回線を繋いで、テレビを見ていた。
テレビは相変わらずの猛暑を記録というニュースが何処の局でも流れていた。

「今年も暑いわねぇ」
「ええ、そうですね」
「それで、外にいるあの子はどうして、あんな事になってるのかしら?」

紫が指差す方向には熱された鉄板の上で土下座させられて、悶え苦しむ橙の姿があった。
先ほどからこちらに何かを訴えかけているが、結界に阻まれて鉄板の上から逃れる事も出来ず、
式によって声も出せなくされて、言い訳も哀願も出来なくされていた。

「橙が帰りが遅い時があったので、問い詰めたところ、逃走者に参加して、逃げてきたと言いました」
「へぇ、それで?」
「あまりに不甲斐無いため、あのようにしているのです」
「相変わらず酷い拷問ね」
「彼女のためです」

そういう藍の顔はとても無感情だ。
こういう時の藍は本当に怒っている証拠である。
彼女は橙には手を掛けて、溺愛と言っていいほど愛している。
その一方で、式としてのあり方がなっていないと『教育』する事もある。
橙の処遇に関しては紫は藍に一任にしているので、特に関知する気もなかった。
大方、ゲームに参加して逃げ帰ってきた事に対して怒っているのだろう。

「まぁ基本的には任せるけど、半殺しぐらいにしておきなさい。死体の片付けなんて面倒だわ」
「わかっております」
「はぁ、あの天狗のせいで、余計な仕事が増えて寝る暇も無いわ。出かけるから、留守を頼むわ」
「はい、いってらっしゃいませ、紫様」

そういって、スキマを開いて紫が出て行く。
それを橙が必死に口を動かして、助けを求めるが、橙の眼前を藍が塞いだ。
ガタガタ震え、怯える橙。

「そんな弱気だから、他の猫達にも舐められるんだ。橙、お前の性根を叩き直すからな!」

藍は無表情のまま、橙にそう宣言する。
橙は恐怖に顔をくしゃくしゃにしたまま、藍の折檻を受け続けた。










4.

――ミスティア・ローレライの場合

ミスティアは今日も今日とて、八目鰻屋を開いていた。
今日の客入りも上々で、売り上げもそこそこ出た。
そして、店仕舞いをしようという時に飛び込むように店にやってきた人間が居た。

「あ、あの、店、仕舞っちゃうんですけど」
「へ、へへ……」

男はニヤニヤ笑いながら、写真を取り出す。
それはかつての逃走者の写真。自分と橙だけ、降伏して生き延びた時の写真だ。

「あ、あの、それ……」
「なぁ、店、続けたいよな? まぁ店だけじゃなくて、こんな事したら妖怪の面汚しだわなぁ?」
「う、うぅ……」

店などいつでも畳めるが、今の時勢は逃走者の関係者は徹底的に忌避される。
人里の連中にこの写真が渡れば、退治されてしまいかねない。
なにより他の妖怪達とも孤立してしまう。
これ以上、孤立するのはごめんだった。

「な、何すればいいのよ……」
「いやぁ、簡単なことさぁ、この首輪をつけて、俺のコレに奉仕してくれればいいんだ……ああ、俺を殺そうとしても無駄だぜ」
「え………」
「俺の仲間に、俺が戻らなかったら写真をばら撒くように言ってあるからな。おとなしくしとけよ」
「うぅ……」

男は極太の肉棒をミスティアの前に晒す。
ミスティアは下手に抵抗しても無駄と理解して、その肉棒を手で掴んで、扱き始める。
それだけで男は「おほぉ」とだらしない声をあげ、肉棒をびくびくと震わせる。
こんな気持ち悪いものを持たされるだけでも、吐き気がするが、それでも噂にされるよりはましだった。

「こ、これで、いいの……」
「おぉぉ、いいよぉ、ミスティアちゃん。今度はお口に咥えてねぇ?」
「な、い、いやよ、そんなの?」
「あぁ? 咥えろっつってんだよ! ばらされてぇのか!」
「う、うぅ、わ、わかったわよ……」

男に怒鳴られても、反抗できず、ゆっくりと男の肉棒に唇を近づける。
しかし、いつまで経っても口でしないミスティアに腹を立てた男が、
口を強引に肉棒でこじ開けて、喉奥まで突っ込む。

「んぐぅ!?」
「おらぁ! 何チンタラしてんだよ! さっさとやれよ!」
「んぐぅ、んぶぅ、んん、んぐぅ、んぅぅ!!」

そのままミスティアの頭を掴んで、腰を振って喉奥に肉棒を叩き込む。
喉を叩かれるたびに、ミスティアが苦しむ様を楽しみながら、
男は早々に達してしまう。

「うぉぉぉ、でるぅ!」
「んぐぅ!? んぶぅぅぅ!!」

男はミスティアの喉奥に肉棒を押し込み、そのまま射精する。
ミスティアは飲むのも嫌だったが、息苦しくなり始めると、涙を流しながら精液を飲み始める。
男が満足して口から引き抜くと、ごほっ、おぇぇとミスティアが精液を吐き出す。

「こ、これで、満足、した?」
「俺は満足したけどよぉ、他の仲間もお前としたいって言ってるんだわ」
「そ、そんなぁ」
「まぁ怨むなら、あんなゲームに参加した事を怨むんだな」
「う、うぅぅ……」

何で自分がこんな目に。
ミスティアは逃走者を企画した文を呪った。

それからしばらくして、人里の離れの小屋で女の妖怪が人間の肉棒を貪る姿が目撃された。
妊婦のような腹と鳥の羽を生やしたその妖怪は、今日も人間の肉棒を貪り、子を産み続けていた。
同じ頃、人里においしい焼き鳥屋が出来たそうな。













5.

――リグル・ナイトバグの場合

リグルは慧音らに助けられた後、森へと帰っていった。
しばらく自分の家で静養した方がいいのではないか、と慧音が提案したが、
リグルは、「森の皆が心配だから」と言って、そのまま森へと帰っていった。


それからしばらくして、ある森の一角で虫が大量発生していた。
慧音ら里の者達が調査をすると、そこには異様な光景が広がっていた。

「あはぁv んむぅv いいっv いいのっv もっとv もっと種付けしてぇv」

大きな虫が次々とリグルの秘裂に生殖器を突っ込んで、種付けをしていた。
リグルのお腹は、妊婦のそれよりも大きくなっており、膨らんだ乳房から出る乳に虫が群がっている。
犯されているようにしか見えないものの、リグルの顔は惚けていて、種付けの快楽に溺れていた。

「リ、リグル……」
「あv 慧音さぁんv わたしはぁv だいじょうぶだからぁv」

慧音はリグルの顔を直視できなかった。
慧音にはリグルが犯されているように見えるが、
リグルにとっては、別段大した事ではないのかもしれない。

蟲の王が、女王になっただけのこと。
たったそれだけのことなのかも知れなかった。

「あぁv また、いっぱいv たまご、うみつけられてるぅv」

甘い声色で、卵を産み付けられるたびに、リグルはイキ続けた。
慧音は無理にでもリグルを止めておくべきだったと思う一方で、
これが彼女の幸せなのかもしれないと、諦めにも似た顔でリグルを見つめていた。

リグルに事情を説明して、蟲が人里に入らぬようにと慧音が打診して、この一件は終了した。
それ以来、その森に人里の人間も妖怪も、立ち入る事は無かったと言う。












6.

――霧雨魔理沙の場合

慧音らに発見された時の霧雨魔理沙は、ボロボロだった。
身体中には痣や切り傷があったが、そのたびに包帯が巻かれてぐるぐる巻きにされていた。
見つかった当初は何も喋らず、食事も禄に取らなかったという。

しかしアリスが魔理沙の看病をすると提案すると、
見る見るうちに魔理沙はかつての元気さを取り戻すようになっていった。
その一方で、魔理沙がアリスにベタベタするようになる光景も良く見られ、
「まるで人が変わったみたいだ」と言う者も居た。
一匹狼というわけではないが、それでもあそこまで他人に依存する姿を見せたことが無い魔理沙が、
あそこまでアリスにベタベタする光景は異様であった。
ある者がアリスに聞いた。「一体どんな魔法を使ったのか」、と。

アリスは口元で指を立てて、「秘密よ」とだけ言った。




アリスが帰宅すると、そこには霧雨魔理沙の姿があった。
いつもの魔法使いの服装ではなく、上海人形に着せている服のそれだった。

「おかえり、ありすぅ」

アリスが帰ってくると、魔理沙は猫撫で声で擦り寄ってくる。

「ありすがいつ帰ってきてもいいようにぃ、実験の準備もしておいたぜぇ」
「そう、ありがとう」

いつもの魔理沙の口調ではあるが、その喋り方は何処か魔理沙とは逸脱している。
しかし、この魔理沙は人形ではないし、魂だけ別物という事も無い。
ただし、今の人格は魔理沙当人のものではなかった。

霧雨魔理沙はパチュリーからの陵辱と、有力者の雇った男らに変態的な行為によって、
主人格が眠りにつき、仮の人格を形成する事で自己を保った。
しかしその期間が長すぎた。元々、魔理沙は強い人間ではない。
激しく攻め立てられれば、彼女はいとも簡単に崩れるほど脆い。
所詮、彼女は霊夢とは違う、ただの人間でしかなかった。

そこでアリスは、新しい人形の創造の過程で生まれた副産物を使うことにした。
それは人形に意志を持たせる過程で作り出した疑似人格である。
これを魔術式に変換して、魔理沙の魂の中に刻み込んでしまうのである。
本来は意志の無い人形に使うものだが、今の魔理沙も本質的には大差なかった。

実験は成功だった。
主人格を復活させつつ、アリスの刻み付けた疑似人格によって、
魔理沙はアリスの家でのみ、アリスの人形になったのである。

アリスは欲しかったのだ。生の人間を。自由に出来る人間を。
これで人形の自律化の実験が出来るというものだ。
アリスが笑うと、魔理沙も何故だか嬉しくなって一緒に笑いあった。
魔理沙は、自分の自由が永遠にもがれた事に、まだ気付いていない。








7.

――地霊殿のペットの場合

お燐とお空もまた慧音らによって救助された。
しかし地霊殿側から、二人の引き受けを拒否されてしまい、
この二人は身寄りが無くなった。

お燐は精液中毒者となっていて、仮住まいから飛び出しては、
男の肉棒をしゃぶって精液を搾り取っていった。
人里の男らから次々精液絞りを繰り返すものだから、人里も対応に困っていた。

お空の方はと言えば、ずーっと仮住まいでボーッとしていた。
食事を出しても、手をつけずにずっと空ばかり見上げている。
時折、「さとりさまぁ……」と寂しそうに呟く程度だった。

そんな二人の引き受けに名乗りを上げたのは天狗達だった。
地霊殿が引き受けないなら、自分達が引き受けよう、となった。
正直、人里では手に余ると思っていた慧音は、若干の不安を感じつつも、
天狗に引き取られていく二人に幸せがあるように祈った。




その後のお燐は、天狗達の性処理便器となっていた。
口や秘裂、尻穴の全てを肉棒で埋められ、身体中に肉棒をこすり付けられても、
お燐は喜びの声をあげる。

「にゃぁぁv にゃーv にゃぁぁぁv」

もはや人語も話せないほど、獣に近い状態で天狗のセックスを受け入れる。
かつてでは考えられない事だったが、刷り込まれた肉棒と精液の味は、
彼女の心身を満たしてくれるただ一つのものだった。

「んぅ、にゃぁ、にゃああvv」
「へへ、まさに猫撫で声って奴だな」
「猫撫でっつーか、猫擦りじゃねw 猫穿りでもいいかw」
「ひゃはははw」

下衆な天狗達に犯されても、お燐はただ肉棒に酔いしれる。
肉棒以外は何も見えていない。
かつて愛した主人の顔すら、もう忘れてしまっていた。

「あにゃあああああああああんvvvv」

そして何度目かもわからない精液を、身体中に浴びてお燐は絶頂した。




お空は核融合炉に居た。
河童達に改造されたお空は核融合炉に直結され、
核融合エネルギーの調整を行なわされていた。

どんな改造をされても痛みを感じなくなった心は、
ただたださとりへの後悔で埋め尽くされている。
今のお空には手も足も無い。
機械に直結する際に、不要と判断されて除去されたのだ。

お空は地下の奥底で永遠に機械に縛り付けられたまま、
ただ空を見上げる事しかしなくなった。

やがて、お空は考える事をやめた。
悲しい事も、苦しい事も、何もかも忘れてしまった。
そして、お空はただ核融合炉を動かす為の制御装置に成り下がったのである。









8.

――地霊殿の住人の場合

こいしは留守番をしている。
さとりが出かけてくるのを見送ってから、大分経った。
しばらくして、さとりが帰ってきた。
両手両足の無い姿で。さとりの眼は閉じている。
それでもこいしは、さとりを抱きしめて「おかえり」と言った。

こいしは帰ってこないペットのことなど忘れて、
さとりに色んな服を着せて、散歩に連れて行った。
もっともこいしが、さとりを背負っているので散歩と言うには少しおかしいが。

「あは、こうしているとお本の事思い出すの。こうやって赤ちゃんおぶって、あやすんだぁ」
「………」
「そうだ! おねぇちゃんもお唄を歌おうよ! きっと楽しくなるから!」
「………」
「えへへ、いくよぉ。あっるこー、あっるこー、私はげんきぃー♪」

さとりをおんぶしながら、こいしが歌う。
その歌を聞くさとりの表情が少しだけ綻んだ気がした。




相変わらずペットは帰ってこない。
さとりとこいしのふたりっきりの地霊殿での暮らしは1ヶ月ほど経った。
今の地霊殿の当主はこいしになった。
さとりがあの状態では、当主など出来ない事は目に見えている。
とはいえ、地下の代表として立てるべき当主が必要だった。
人格面に不安要素を抱きつつも、こいしが当主となる事で一致した。

さとりはこいしにべったりするようになり、甘えてくる姉をこいしも笑顔で受け入れた。
ほほをすりすりしたら、身体を拭いてあげたり、時にはえっちな事もした。
そんな風に接していくうちに、さとりが口を開いた。

「……こいし」
「え? お姉ちゃん喋れるようになったの!」
「こいし、こいしっ」
「あぁ、やったぁ! おねぇちゃん喋れる! やったぁ!」
「こいし、ありがとう、ありがとう……」

こいしはまるで自分の事のように、さとりが喋れるようになった事を喜んだ。
そんな風に喜んでくれるこいしに、さとりはただただ感謝した。
自分はなんて素敵な妹を持ったのだろう。
さとりはペットの事などすっかり忘れて、こいしを愛した。
こいしもさとりのそんな愛情を、感じ取っていた。
二人の間に、心を読むなどという行為は要らなくなっていた。




こいしが新しいペットを連れてやってきた。
それは射命丸文。何故彼女を連れてきたのか、さとりには分からなかった。
でも、こいしは文を虐めている光景がたびたび見られた。
こいしがわかってやっているのか、
それとも無意識にさとりを嬲った女だと思って、やっているかは定かではない。

そんなこいしとさとりとペットの生活が進むと、さとりは自分で歩きたいと思うようになった。
こいしを抱きしめてあげたいと思うようになった。
今まで、こいしに出来なかった事をいっぱいしてあげようと思うようになった。
しかし、今の自分の身体では歩く事も抱きしめてやる事も出来ない。
こいしにその事を相談すると、「まかせて、おねぇちゃん!」と言っていた。
さとりは何をするのだろう、とこいしの顔を見ながら思った。

それからしばらくして、文がさとりの部屋に入ってきた。
文は驚きの表情をこちらに見せる。心を見なくても、良く分かる反応だった。
こちらに近寄ってくる文に、こいしが後ろから踏みつける。
ガタガタ震えてみっともない姿を晒す文に、さとりは哀れんだ。

私はこいしに本当の事を教える事にした。
それでこいしがどんな行動をするか、見てみたかったのかもしれない。
するとこいしは文に感謝した。何故、とさとりは思ったが、その次の言葉を聞いて理解する。
こいしはずっと私が好きだったのだ。でもペットが邪魔で、今まで自分の物に出来なかったのだ。
さとりはこいしがずっと、自分を愛してくれた事に気付いて涙した。
こいしにはずっと嫌われていると思っていた自分が馬鹿みたいだった。

するとこいしが文に両手両足を欲しいと言ってきた。
拒否をする文に、こいしは聞く耳を持たなかった。
あぁ、こいし。私のためにそこまでしてくれるなんて。

文の断末魔の叫びを聞きながら、さとりは引き千切られた両手両足と血塗れのこいしを見て、
こいしの献身に心から感謝した。

それからさとりは、永遠亭で両手両足の移植手術を開始。手術は成功した。
失われた両手両足が戻ってくる感覚は妙な感じだったが、
永琳先生はリハビリすれば動かせるようになる、と言ってくれた。
しばらくこいしには会えないけど、歩く姿をこいしに見せてあげよう。
そしてこいしを抱きしめてあげよう。
さとりは、自分の歩く姿を見て喜ぶこいしを想像しながら、リハビリに励んだ。

退院した後、地霊殿でさとりとこいしは笑顔で抱き合った。








9.

――河城にとりの場合

慧音らによって救出された中に、にとりの姿もあった。
しかしその様は凄惨という他無く、かろうじて生きている、に近かった。
男らから拷問を受けたのだろう。
身体中には痣と傷だらけで、秘裂と尻からは血が流れていた。
あと少し発見が遅れていれば、死んでいたかもしれない、と永琳は言っていた。

それからにとりはずっと、永遠亭の病室にいる。
臆病な性格はさらに臆病になり、人が近寄るだけで過剰防衛と言えるほどの抵抗をした。
おまけに治療をしようとする鈴仙などにも当り散らすようになり、
永遠亭の看護を担当する者達の誰もにとりに近寄らなくなった。

にとりは退院すると、妖怪の山に戻った。
しかし、天狗達に顔を忘れられたにとりは、哨戒天狗達に止められ、
自分の工房に戻る事すら出来なかった。

その後、にとりは人里の郊外に住まうようになり、
怪しげな道具を作り始める。
自分をこんな状況に追いやった人間と、
自分の事を利用し、忘れ去った天狗達に復讐する為に。
にとりは、復讐者となった。










10.

――風見幽香の場合


「はい、幽香おねぇちゃん」
「あぁ、ありがとう」

花屋の娘から、紅茶を受け取ると、幽香は花屋の娘の頭を撫でる。
すると娘は、向日葵のような笑顔を向けてくれる。
それを見ると、幽香はとても幸せな気分になる。
幽香は今、人里の花屋にいる。

あの後、穴から立ち上がって花屋の娘を抱いて、花屋へと戻った。
気付けば会場には誰も居らず、人里に戻れば金貸しは居なくなり、
その上にいた有力者も処刑されたと聞いた。
もう幽香が人里にいる理由は無くなった。

傷ついた身体を癒すため、太陽の畑に戻ろうとすると、
花屋の娘が必死に服の裾を掴んで離さなかった。
上目遣いに帰らないでと意思表示をされると、流石の幽香も参ってしまった。
こんなにも頼られた事は初めてなので、どうしていいかよくわからない。
でも、そばに居るくらいならいいかな、と思い、未だに花屋に居座っている。

最初は人里の人々も花屋に近づくのを怖がったが、
花屋の娘と共に笑顔を浮かべる姿に惹かれて、
花屋に人が集まるようになった。

幽香が花を買いに来た人達に、助言している姿は少し不思議に見えるのか、
他の妖怪達も珍しそうにしていた。
最も、それでも彼女から感じる圧力は本物であり、
決して彼女が衰えたわけでない事も理解できた。

優雅に紅茶を楽しむ姿がとても様になっている。
淑女とはこう在るべき、という見本にも見える。

「それじゃ、買出しにいってくるねー」
「ええ、いってらっしゃい。気をつけなさい?」
「はーい」

幽香が買出しに行く花屋の娘を見送ると、ふぅと一息を付く。
一人で居ても困る事は無いけど、たまにはこういう時間もいいかもしれない。
そんな風に思う自分が居て、少し可笑しくなった。
妖怪も変われるものねぇ、などと一人心の中で呟いた。

出来るだけ長く、この時間を楽しんでいたい。
そんな風に思ってしまうのは少しわがままかもしれない。
領分は弁えなければならない、そう思いながらも、
幽香はこの幸福にもう少しだけ溺れていたいと思った。

そして、また一人、客がやってくる。
幽香は優しげな笑みを客に向けて言う。

「いらっしゃい。どんな花が欲しいのかしら?」
六に後日談を入れなかったとは言ったが、別に番外編を書かないとは言っていない(キリッ

蛇足気味な番外編です。
さとりだけ気持ち多めに書いたかもしれない。
幽香と花屋の娘とのラブちゅっちゅは書けなかったから、こんな感じに。
こう、優しげに微笑むゆうかりんとか良くね?

超短編集みたいな感じになったな、こりゃ。

しかしあれだね、少し物足りない感じだったようだね、六の反応を見ると。
もうちょいフルボッコ率を上げたほうが良かったかぁ。
ともあれこれで逃走者は終了。
しかし、格付けからは大分感じが離れたなぁ。

次は何を書こう。

※おおう、名前を入れ忘れた。
名前がありません号
作品情報
作品集:
19
投稿日時:
2010/07/25 05:32:33
更新日時:
2010/07/25 14:33:33
分類
逃走者
番外編
参加者のその後
1. 名無し ■2010/07/25 14:38:42
ゆうかりんが幸せでよかった
2. 名無し ■2010/07/25 15:06:26
不幸になってしまった者、かろうじて幸せになった者がそれぞれいて良かったです。
3. おうじ ■2010/07/25 15:59:30
にとり…
僕が優しく治療してやんよ←
4. 名無し ■2010/07/25 17:13:45
ジュジュジュジュジュジュ・・・・
5. 名無し ■2010/07/25 21:10:45
後日談きたー
大妖精とチルノがくっついたり幽香と花屋の娘がくっついたり……
それなりに幸せそうでなにより
しかし、逃げた連中がちょっと可哀想だなぁと思うのは産廃らしくないんだろうか
6. 名無し ■2010/07/25 22:29:58
大妖精の人格がどうやって復活したかは気になるがっこういうピリ辛風味ハッピーもあるよなエンドは好きだなあ
幽香りんにはほっとした
7. 名無し ■2010/07/26 03:12:17
全員がハッピーエンドってわけにはいかないって辺りが産廃らしくて良かったです。
それでも、さとりとこいしのちょっとダークっぽい新しい関係には幸福を感じずにはいられない。
まあ、魔理沙とにとりは正直、キャラ的になんとなく無理だと分かってたw
8. 名無し ■2010/07/26 04:47:46
結果的に、さとりとこいしの仲を取り持つ事が出来ただけでも文の存在価値があったな
しかもこいしに飼って貰えるだなんて、ある意味で文もハッピーエンドだw
9. 名無し ■2010/07/26 05:53:30
悲惨なのは魔理沙とみすちー、おくうかなあ
文のがマシな待遇受けてるように見える
しかし文の手足を移植したさとりんの体型はすごいことになりそうだ
10. 名無し ■2010/07/26 08:19:32
体の傷は癒えても心の傷は癒えることはないんですね、先生
11. 名無し ■2010/07/26 09:09:44
にとりは、復讐者となった。――ってなんか影を落とすような締めだけど、以前ここで読んだSSのせいか、空回りで終わる結末しか見えない。
生活することもままならずに借金まみれになって最後に花屋の娘さんに手を出して、ゆうかりんに半身不随になるまでボコられて自殺というオチが見えたw
12. 名無し ■2010/07/27 06:05:02
ゲームの関係者で普通に幸せに終わったのはゆうかりんや大妖精か
さとりとこいしはちょっとダークだねw
リグルとか橙は幸せとも不幸とも言えないかな(まぁ、不幸っちゃ不幸かもしれないけど)
魔理沙は悲惨だけどミスティアとお空に比べればまあマシな気がする
というかこの中で一番とばっちり受けたのってみすちーだよね…
13. 名無し ■2010/07/27 22:40:16
リグルは…レズ…なのか?
14. おうじ ■2010/07/28 01:30:33
11>すげえwww
15. 名無し ■2010/09/13 22:56:16
アリスが勝ち組すぎる件www
後、お燐に興奮した。

作者にありがとう。
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