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『レストランSt.π』 作者: 家具
「………うぅ」
降り出しそうな雲の下、高めの湿度と気温にうじうじと蒸された薄暗い森を、駆ける小さな影がある。
黒白魔法少女、霧雨魔理沙。
軽快なテンポで足を動かすその表情には、しかしながら若干の陰りが見て取れた。ちらちらと頭上―――重く垂れ下がった黒雲を気にしては、その眉を不安げに顰める。
「降るなよ、絶対に降るなよー……」
実際、この森を徒歩で抜けて彼女の家まで行くにはあと30分はかかるため、彼女が全身乾いたままで我が家に至れる可能性はかなり低い。だがそれを知りつつも、やはり彼女は両手を胸の辺りで擦り合わせながら、ぶつぶつと口の中で「降るなよ」という言葉を繰り返していた。
魔理沙も、人間の身ながら魔法を嗜む者である。それ故空を急いで飛んで帰れば或いは間に合うかもしれないのだが、生憎と今日は飛ばない日と決めていた。
一日のうち殆どを飛んでいる日もあるくらい空が好きな魔理沙だが、月に数回ほど、気まぐれで『飛ばない日』を作ることにしていた。たまには視点を変えないと見えてこないものがあるから、というのがその理由である。そして頑固な魔理沙のこと、濡れたくないとは思いつつ、たかが雨程度で自分の習慣を曲げようという気には決してなれなかったのである。
そして、数分後。魔理沙の願いも空しく、ぽつり、ぽつりと点からは生温い水滴が落下を始めた。今はまだ降り始めだが、間もなく土砂降りにまで進化しそうな気配の重たい雫。
しかしそれを黒い三角帽子で受け止めながら、魔理沙の表情は若干明るいものへと変化していた。
天は彼女の願いには応えなかったが、代わりに救いの手を差し延べた。駆ける彼女の視界に、人工の明かりが飛び込んできたのだ。
どうせ家に待つ人もなし、自由人魔女霧雨魔理沙。はてこんな所に建物があったかなと首を傾げたがそれも一瞬、不思議の郷の幻想郷でそんなことをいちいち気にしていればきりがない。雨が止むまで宿れるならば渡りに船と、彼女は喜び勇んでその建物を目指すのだった。
さて、魔理沙がたどり着いたそこは、どうやら飲食店のようだった。何故そう解るのかといえば、入口の上にやや悪趣味な赤茶色のペンキで書いてあったからである。
レストラン、St.π。
「れすとらん、えす、てぃー………何じゃこりゃ? 読めん」
………ともかくも、それがこの建物の名前のようだった。まあちゃんとした店なら丁度良い、金を多少取られることになるだろうが性悪な民家で門前払いを食らうよりはマシだろうと、魔理沙は扉を開ける。
「いらっしゃいませー」とマニュアル的な抑揚の声に歓迎され、十数秒後にやってきた店員が二人席に案内する。きちんとお冷やも用意された。もしかしたら<注文の多い料理店>のような引っ掛けかと内心少しだけ警戒していた魔理沙だったが、特に何の変哲もない、普通の店のようだ。肩の力を抜くと、胸の底に沈殿していた焦燥と緊張が潮のように引いていく。
テーブルの横に、二つ折りのメニューが置かれている。それを手に取って中を一目見ると、彼女は思わず「何だこりゃ」と声を上げた。
「酷いメニューだぜ。誰が書いたんだ?」
写真も絵も載っていない文字だけのメニューだが、上から下まで誤字や脱字、妙な汚れのオンパレード。その内容もあまり統一性がなければひらがなと漢字の区別も曖昧と、まるで子供の字の練習帳のような有様だ、と魔理沙は思う。
「………ま、いいか。字のうまさで味のうまさが決まるわけじゃないしな。えーと、何があるんだ?」
しかし細かい事は気にせず、彼女は注文を考えることにした。メニューをテーブルの上で広げ、指をさしながら順番に読み上げていく。
周囲の客何人かはそんな魔理沙に訝しげな視線を向けていたが、まさか彼女がそんなことを気にする性格である筈もない。
「なになに? 西京漬け、茄子の胡麻和え、レンコンの天ぷら、………干し肉って料理か? 熊の肉の唐揚げもウツボの刺身もまずそうだがな。貝のバター焼き、鱚の丸焼きに山女の塩焼き、
うわ……これなんてただのふりかけご飯みたいなもんじゃないか。たらこご飯に、その下は混ぜご飯(小盛り)。大盛りは載ってないみたいだし、訳わからんな。あとは、いくら丼………ふーん。
えーとそれから、紅茶、山盛りの柿に輪切りの西瓜? ははっ、何か面白いな、このメニュー。段々この字も可愛く見えてきたぜ。
一番下は、これが当店の最人気メニューです? シャーベットアイスか。へぇー、いいな。腹もあまり減ってないし、これにするかな」
さっくりと決断して、元気良く手を挙げて店員を呼ぶ。
店内は、外に比べて湿気も少なく温度も適当で遥かに居心地がいい。魔理沙は早くも、この一時の仮宿を気に入り始めていた。
間もなくしてやってきた店員に、彼女はメニューの中の文字を指差すことで注文をする。
「これを頼むぜ」
「かしこまりました。調理過程はご覧になりますか?」
「へ?」
「当店は本来の2倍の料金をお支払い頂くことで、ご注文の料理の調理過程をご覧になって頂ける仕組みとなっております。いかがなさいますか?」
ぽかんとする魔理沙に、店員はメニューの下の方にある注意書きを指し示す。そこには確かに、今店員が説明したようなことが書いてあった。
ふむ、と魔理沙の好奇心が僅かに疼く。だが、「げっ」その流れで何気なく料理の値段を見た瞬間、思わず彼女は小さく声をあげてしまった。先程はあまり気にして見ていなかったが、よく見ればこの店、どの品も異様に高い。0を一個取れば手頃な値段になるのになぁはっはっは、というような料金設定に、魔理沙は内心でぼったくりだと叫ぶ。ついでに声にも出して騒ぎたくなったが、雨宿りのためとはいえここを選んで入ってきたのは他ならぬ魔理沙自身だということを思うとそれはそれで気が引けた。
高い雨宿りになりそうだぜ、と小さく呟きながら、彼女は大人しく諦める事を選択する。幸いにも彼女の選んだシャーベットはメニューの中でも飛び抜けて安く、決して多くはない今の魔理沙の手持ちでもまあ払える額だった。勿論、倍プッシュなどかけなければの話だが。
魔理沙は若干憮然としながらも手を振って、調理過程に興味がないことを店員に伝える。
「いや、いい。通常料金で頼むぜ」
「かしこまりました」
慣れた具合に頭を下げて、店員がテーブルを離れる。魔理沙ははぁ……と息を吐くと、椅子にぐでっと体重を預けて改めて周囲を見回した。
店の規模はそこまで大きくない。レストランというより、小さな喫茶店という風情だ。だがそれなりに客足はあるらしく、空いた席は残り1テーブル位しか残っていなかった。
(それにしてもあの高さで、更に倍? 一体どうなってやがるんだ、この店は。大して凝った料理でもなさそうだったのに)
シャーベットが届くまでの時間潰しも兼ねて、彼女は思考する。一体どれだけ特殊な調理法でどれだけ美味しい料理を作れば、あんな料金設定が成り立つのだろう。
驚くべきことに、どうやら殆どの客が、倍の料金を払うことを選択しているらしい。厨房があるらしい扉から、時折客らしき人間が出入りするのも見えた。
(実は、セレブ御用達の隠れた名店! みたいな奴だったりしてな)
有り得る話だ。それに、それならこんな森の中に、隠れるように建っている理由も納得できる。金持ちの大好きな雰囲気作りというやつだろう。
雰囲気作りはともかく、金持ちという人種が魔理沙はあまり好きではなかったが、まあ今更何を言っても仕方ない。せっかくの機会だ、奴らの食い物がどんなに美味いものかひとつ審査してやろうと、彼女は密かに胸を躍らせた。
待つこと、ゆうに十数分。
混んでるって程の席数じゃないのにアイス一つに時間をかけすぎじゃないか、いやまあ特別な製法らしいしな、暇もたっぷりあるんだし、きっとその分うまいんだろう、と思いながら流石に魔理沙が苛々してきた頃、漸く店員が「お待たせいたしました」と彼女のもとにやってきた。
そして目の前に置かれた皿を見た魔理沙の第一印象は、「………何だ、これ」だった。
簡素な透明の器に大きく盛られたそれは、薄暗く演出された照明の下、確かにシャーベット状の質感をしているように見えた。だがその色は、赤。まるで鮮血を思わせるような禍々しい―――――と思った瞬間、魔理沙の鼻に正にその臭いがむせ返る程に強く届き、彼女は堪らず口元を押さえた。
何が材料なのか、どんな味なのか、食べてみないことには解らないが、少なくとも魔理沙の予想していたシャーベットとは大幅に違うものだということは解る。そもそも、彼女の脳は何故だろうか、どうしてもそれを食べ物と認識することが出来なかった。それは触れてはいけなくて、本当は見てもいけなくて、しかし僅かに懐かしく温かい、そんな印象を魔理沙の直感に伝えた。
しかし、本当にこれは一体何なのだろう。魔理沙は礼儀正しく一礼して去ろうとした店員を慌てて呼び止め、疑問をぶつける。
「なあ。何なんだ、これは」
「は………ご注文の品ではございませんでしたでしょうか?」
「いや、っていうか………これ、本当にシャーベットアイスなのか?」
「アイス?」
「あいすぅ? じゃない! これだよ、これ!!」
彼女は怒鳴りながら乱暴にメニューを開くと、しゃーべっとあいす、そう魔理沙が読んだ文字を指差す。
それを確認し、「ああ、はい。そちらに書かれている通りでございますよ」と、店員はよく教育された丁寧な笑顔で答えた。
「遠方からわざわざそれ目当てにいらっしゃるお客様も後を絶たない、人気の一品。殺したての新鮮なマーガトロイドを使った、当店自慢のシャーベットアリスでございます」
―――――人間も妖怪程ではないが、精神に左右されやすい生き物である。
こと感覚に関しては、その人の先入観や精神状態如何で、例え正体不明の種を介さなくとも、事物を事実と全く違う風に錯覚してしまうこともままある。
改めてメニューを見返し、今まで理解した気で誤解していたその正しい文字列と目の前に置かれた料理の意味を把握して、魔理沙は盛大に嘔吐した。
レストランSt.π
おしながき
さいきょー漬け
なずの胡麻和え
れんこの天ぷら
ほしぐまの唐揚げ
うつほの刺身
はたてのばたー焼き
きすめの丸焼き
やまめの塩焼き
ゆかりご飯
たたらご飯
混ぜご飯(しょう もりや)
いく丼
こちや
輪切りすいか
かぎやま盛り
しゃーべっとありす ←当店の最人気メニュー!
※料金2倍で調理過程をご覧頂けます。
捻りのない短編くらいしか書けねーぜよ! という事で二度目の投稿、再び何だかなぁなネタで失礼します。
めにうを水増ししようとした結果、なんだか無理矢理すぎるのはご愛嬌にしておいて下さい。スイカ露骨すぎる。
最近ナスが全部ナズに見えていちいちどきっとするのでむしゃくしゃして書きました。同ネタ多数な感じですみません。
読んで下さった方、ありがとうございました。前作にコメント下さった方もありがとうございました。カロリーチルノ吹いた。
河童巻きとかも入れるか悩んだけど露骨過ぎるのもなーと思ってカット。さとりにとりで鶏肉とか
あと「多たらこ傘」って単語が頭を離れないので誰か使いませんか。たーっぷりたーらこー
※8/7 プレビューでは普通なのに投稿後の作品は改行が何故か倍になってたのでタグ手打ちで修正。ついでに字サイズも自分好みに変えてみました。不評なら戻します。
家具
作品情報
作品集:
19
投稿日時:
2010/07/29 07:42:54
更新日時:
2010/08/07 13:56:49
分類
魔理沙
あたまわるい
駄洒落
オチが読める
でも最後のメニュー一覧があったからこそ、作品に余韻(?)が出たのだと思う
すいませーん!「はたてのばたー焼き」まだ時間かかる?
流石に人妖が調理されてるとはまとも?な思考を持つ魔理沙は思うまいw
こう異次元染みた所に迷い込んでしまう人のお話って凄い好きです、千と千尋の神隠しみたいに
え、ないの?
…なら自分でつくるから材料だけでも(←
生きたままで頼むわ
所で素材の入手方法と場所は……
いや、私はさいきょー漬けを頂きたいのですがね。
ここから導き出される答えは一つ…
この店の店長は、おっぱいのある聖者、聖白蓮なんだよ!
食材は供養済みなので、どなた様でも安心して召し上がれます!
な、なんだってー!?
ナズナズまで売るとは、聖…恐ろしい子っ…!
ところで餡(水)蜜はありますか?
シャーベットアリスw