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『フランドール 引きこもる』 作者: 黒崎 文太

フランドール 引きこもる

作品集: 19 投稿日時: 2010/07/31 14:33:53 更新日時: 2010/07/31 23:33:53
今、私は姉レミリアと仲違いをしたことによって地下室に閉じ込められている。

そもそもの原因は想起することが出来ないほど些細なことだったが、やがてそれはレミリアとの対立を招くこととなったのだ。
私が爪を立ててレミリアに飛びかかろうとした瞬間、その横にいた咲夜の瞳が赤く輝くのが見えた。
次の瞬間には、私はこの地下室に入れられていた。

扉の向こうからレミリアの声が聞こえた。
「しばらくそこで反省していなさい、フラン」
その口調からは私が全面的に悪かったのだといわんばかりの高慢さが見て取れた。
この扉が物理的な衝撃で破れないことは分かっていたが、私はそこに居るはずのレミリアに向かって拳を叩きつけた。


◆◆◆


数日が経った。
その間、この部屋を訪ねてくるものは誰もいなかった。

私はこの部屋で五百年以上過ごした経験があるから、それ自体は苦痛でなかった。
そして、この部屋に使用人を寄越さないのも、寂しさによって私に敗北の言葉を言わせようとするレミリアの考えがあるように思えた。
そう考えると、この扉の向こうには音を立てずに交代しながら聞き耳を立てているメイドの姿が見えるようであり、私のレミリアに対する敵対心は更に募るのであった。

私は意地でもこの部屋から出てやるものかと思い、自分で扉に封印を施し、向こうの反応を窺うことにした。


◆◆◆


一週間ほど経った頃だった。
私がベッドに寝そべっていると、不意にノックの音が聞こえ、続いて私を呼ぶ声があった。
メイド妖精のものだと思われるその声は、地下室への監禁を赦すというレミリアの命令を伝えてきた。
私はその声を無視し、再びベッドに寝そべった。

レミリアは餌を与えてきたのだ。
自身の負けを認めたふりをすることで私を油断させ、まんまとおびき出された私に表では謝罪し、その陰で愚鈍で単純な妹だと嘲笑うつもりなのだ。

私は絶対に、たとえレミリアが土下座をしようとも自分からは出て行かないという意志を固めた。
レミリアが真の意味で私に負けを認めるのは、彼女が私の施した封印を破り、強引に連れ出した時だ。
そのため、扉の封印はレミリアの全力でちょうど割れるような強度に調整していた。


◆◆◆


日を追うごとに、地下室の前にやって来る客は変わっていった。
最初は下っ端と思われる、聞き覚えのない声のメイド妖精だったのが、幾匹かのメイドを束ねる中間管理職になり、美鈴になり、咲夜になり、パチュリーになった。

私が地下室に来てから二十日ほどになった時、ついにレミリアの声が聞こえてきた。
「フラン、私が悪かったわ。 お願いだから出て来て」
ノックを繰り返しながら私を呼ぶその声は、まだ私に対する負けを認めていないように聞こえた。
その証拠に、レミリアは強引な手段に出ることなく諦めて立ち去ったのであった。

翌日、レミリアは咲夜・パチュリー・美鈴の三人を伴って再びやって来た。
「妹様、私からもお願いします。 どうかお嬢様と仲良く……」
「フラン、紅魔館のみんなが貴女の不在を悲しんでいるのよ……」
「また一緒に遊びましょうよ……」
レミリアたちが私に謝罪と説得の言葉を述べる中、私は腰を上げて扉に近づこうとした。
次の瞬間、背後から腋の下をくぐって女の手が現れ、私はその手によって後ろの空間に引きずりこまれた。

気がつくとそこは山荘と思われる家屋のテラスで、辺りを見回した私は、自分の眼を疑った。
私の身体を持ち上げていた紫の服の女の横に、レミリアたちがいるのだ。


◆◆◆


「ほら捕まえてきたわよ。 やっぱり地下室にいたわ」
「そうだったの……そこも調べたと思っていたのだけれどねえ」
紫の女はレミリアたちと話しこんでいる。
その態度は異様だ。
三週間前から続いていたはずの私との確執による態度の硬化が、全く見られないのだ。
まるで、初めから私との対立など無かったかのようだ。

「ね、ねえ咲夜……ここ、何処?」
「妖怪の山からさらに北西に進んだ山奥の保養地です。 ほら、遠くに妖怪の山が見えるでしょう?」
「どうして、咲夜たちはここにいるの?」
「お嬢様に長期の慰安旅行を提案したんですよ。 幻想郷の名所をゆったりと周遊する旅の予定だったのですが、出発直前になって妹様の姿が見えなくなってしまいまして……」
「だから仕方なく私達だけで旅行に出てしまったのですが、偶然ここで紫さんに出会いまして、彼女に妹様の地下室を調べさせたところ、果たして妹様がいたので、こうして合流できたというわけです」
私は咲夜たちの話を聞いているうちに、自分でも血の気が引いていくのが分かった。

私は震える身体を必死で抑え込みながら、レミリアに尋ねた。
「お姉様、この旅行……いつから始まっていたの?」
レミリアは顎をつまんで回想し、それから西の月を見て答えた。

「ちょうど一ヶ月半前よ。 出発の日に下弦の半月が見えていたし、間違いないわ」

咲夜は怪訝な顔で私を見ていた。
「しかし妹様、気付かなかったんですか?
出発に当たってメイド妖精たち全員に暇を出したから、館内は無人になって静まり返っていたはずですよ。
いくら地下室に籠っていたとは言え……」

視界の端で紫の女は空間を閉じようとしていた。
閉じざまに、その向こうの地下室へレミリア達が押し入って来るのが確かに見えた。
居眠りしていたら私は夢の中でフランドールになっていました。
黒崎 文太
http://otohime199.blog51.fc2.com/
作品情報
作品集:
19
投稿日時:
2010/07/31 14:33:53
更新日時:
2010/07/31 23:33:53
分類
フランドール
短編
エログロ無し
1. 名無し ■2010/07/31 23:44:51
ラストがどういうことかは、いろいろと想像できた

しかし、黒崎さんがフランちゃんだったのか……
2. 名無し ■2010/08/01 01:30:10
つまり、どういうことだ?
3. 名無し ■2010/08/01 04:32:48
よくわからんなぁ…
でも最後の部分になぜか背筋がゾクッとした…

これってホラー的な?
意味がわかった人教えて
4. 名無し ■2010/08/02 02:40:37
こーいうのすごい好きだわー。
偽者なのか他のズレた世界の幻想郷に来てしまったのか。
500年以上地下部屋にいるのがホントだとしたら、俺たちが知っているフランとは別のフランちゃんなのかもね。
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