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『肉の家 』 作者: ND
昔の話。
そうだ、これは魔理沙と霊夢が物心つく前の話。
僕が、どこに店を建てるか探していた時の話だ。
『この山の中は………妖気が彷徨っているから無理だな。』
店を立地させると言う事は、あまりにも難しい事を知った。
霧雨の親父さんが娘を作ってからというもの、それ以来は急に僕に冷たくなった気がしたような。
それ以来、霧雨の親父さんに対する嫌悪が少しだけ増した時、霧雨の親父さんの弱点でも探そうと観察していたときだ。
娘をネタとかダシにすればいいのだが、さすがに関係の無い娘を巻き込む訳にもいかなかった。
それで観察しているうちに、僕はある事に気付いたのだ。
僕がやりたい事と、まるで違う。
僕は、霧雨の親父さんに僕に対する破門を要求した。
だが、その承諾はあまりにも簡単だった。
『娘が生まれたからにはお前に構う暇なんか無えからな。』
僕は荷物をまとめて、新しい店を建てると申した所、それもあっさり承諾された。
『勝手にしろ。』
霧雨の親父さんはそっぽ向いてキセルをふかしているだけだった。
出ていけと言う親父さんと、出ていきたい僕の気持と裏腹に、霧雨の娘は逆の答えを放した
『行かないで』
それは、小さく消えてしまいそうな声であり、未発達な思考の故の言葉のようだったが、気持ちは伝わった。
だが、そんな言葉を気にも止めずに僕は扉を開けた。
霧雨の娘がついて来るように僕の足を掴んでいたが、僕は娘を持ちあげ、椅子に座らせた。
『今までありがとうございました。』
僕はそう言って、開けた入口の向こう側に足を置いた。
『まぁ、今度からは師弟関係とかじゃなくて友人として来いや。堅くなくてよ。』
扉の閉め際に霧雨の親父さんはそう言っていた。
僕はただ少しだけ頷いて、その扉を閉めた。
しばらく歩いているうちに、立地条件として最適な場所が見つかった。
その場所は、妖怪と人間が済む所の境目に存在する場所であり、
人間も妖怪も訪れやすい所だった。
妖気も少なくすぎでも多すぎでも無い。
しかも、そこには店にするにはピッタリな古ぼけた家が建っていた
何より、その場所は美しい緑や花が生えているのだ。この場所を僕は一目見て気に入った。
だが、一つだけ不満点があった。
店を建てようとしている場所の隣に腐敗臭のする家があるのだ。
その家は、近づけば近づくほど臭いが増し、少し血の臭いも混じっている
所々、変なキノコなのだろうか指のような突起が生えている。
その隣には、真っ黒に汚れた水晶玉のような物が埋め込まれてある。
その水晶玉は、どうにか柔らかいのが気持ちわるかった。
こんな家、一体誰が住み着いているのだろうか。
それに対しての好奇心が、急に湧き出た。
入口らしき亀裂が入っている壁の方に向かうと、取っ手らしき穴に手をかけた。
その穴には、何か干乾びた柿の様なものと、歯がついていた。
開くにしては抵抗が無く、すんなり開いた
『すみません。ごめんください。』
扉を開けると、そこはまた腐敗臭が漂っていた。
この部屋には、さらに多くの突起が壁から飛び出ていた。
柔らかい物もあれば堅い突起もある。
さっきの取っ手のような歯の入っている穴もあった
だが、腐敗臭が酷くて目にも来ているのだ。涙が出た。そこらじゅうが霞んで見える
しばらくすると慣れてきて周りが見渡せるようになったのだが、部屋の向こうに何か白い物が見えた。
ようやく臭いも慣れてきたとき、その白い物がはっきり見えるようになった。
白い物は、人間でなかった。
どんな存在かはよく分からないが、見た目はただの少女だ。
白い髪に白い服、そして白い眼をした少女がこちらを見て怯える顔でガクガク震えている。
その姿はまるで兎のようだった。近づいたら今にも噛みつかれそうだ。
『この家は君が作ったのか?』
僕は壁に手を触れると、以外に簡単に崩れて、壁の中からは白い棒のような物が露出した。
僕は少しだけよろめいた後、必死にふんばりなんとか体制を持ちこたえた。
その行動が恐ろしかったのか、白い物はさらに怯えていた。
僕はため息をついて、その白い物に近づいた。
白い物はさらに怯えて、体を丸めている。
さすがに、こんなのが店の隣に居たら何をされるのか分からないので、なんとか友好的になる必要があるのだ。
だから僕は、少しずつでも彼女に近づいた。
ガタガタ震えている、その頭を撫でてやった。
これで少し友好的になればいいのだが、
心なしか、その白い少女の顔は少し柔らかくなっていた。
そして、次第に僕が近づいても震えなくなっていた。
僕は安心して、少女に伝えた
『今度、此処の隣に僕の店出します。どうぞ仲良くやっていきましょう。』
それだけ伝えて、僕は異臭のするこの家から出ていった。
ようやくこの家から出る事ができた。伝えることも伝えたし。
これでもう良いだろう。僕はこの花畑の場所に腰をかけ、そこで野宿することにした。
と言っても僕は眠る必要などないので、そこで暇を潰すだけなのだが。
夜になると、あの腐敗臭のする家がより一層不気味に見えてくる。
家にはいくつもの顔のような模様が所々あり、どれもこれも黒眼で僕の方を見ているように感じた。
なんだか落ち着かなかったので、もう少し離れた場所に移動しようとした。
その時、後ろに物音がした。
後ろを振り向くと、あの家の扉が少し開いていた。
そこから少女が体を少しだけ出し、こちらをじっと見ているのだ。
何か訴えたいようなので、僕はその家に近づいた。
だが、その家に近づけば近づくほど腐敗臭がする
『僕に何か用かい?』
その言葉の”僕”を言い終えた時、その扉は急に閉まって少女は閉じこもってしまった。
とりあえず僕はまず、この腐敗臭のするエリアからダッシュで脱出した
300メートル離れた所まで走ると、僕は新鮮な空気を肺に送った。
翌朝、僕はあの家を自分の店に改装することにした
魔法の森には不思議な道具がさまざま有る。
仕事を終える頃、僕はまたその家に近づくことにした。
相変わらず、恐ろしい臭いのする家だった。
『失礼するよ』
僕は、扉に手を掛ける穴を使って扉を開けようとしたのだが、その時に何か白くて堅い物がボロボロ落ちていった。
おかげで開けにくくなってしまった。困った。こんな所で時間をかけると臭いが僕の体にも染みついてしまう。
やっとのことで扉を開けた。
白い少女は、昨日とは少し違っている。
まだ少し怯えている表情だが、震えてはいない。
昨日はろくに僕の目を見なかったのだが、今日はじっと僕の方を見ていた。
僕の顔に何かついているのだろうか。だが、悪いがここの家の布を使う気にはならん。
『明日頃には、店は完成すると思うよ。』
とりあえず、最低限の伝言を伝えることにした。
話が長くなると、失神しそうだからだ。
『良かったら僕の店も利用してくれ。では』
僕はそう言ってこの家から出ようとした時、後ろから服を掴まれた
少女は何か伝えたいような表情で僕の方を睨み、俯いたままだ。
『なんだ?何か言いたい事があるのか?』
僕は少し焦り気味の口調で問いかけた
だが、少女は俯いたままで何も喋らなかった
僕はめまいを起こし、耳鳴りが聞こえ、意識が薄くなった。
目が覚めると、そこは花畑だった。
ああ、僕は死んだんだなと感じた。
だが、この花はどこかで見た事があった。
そうだ、店に変える家の近く場所に生えていた花だ。
上を見上げると、そこには少女が居た
まだ寝て居たかったが、さすがに寝たままだと失礼だと感じ、僕は起き上がることにした。
『ああ…………すまないな。他人の家で勝手に倒れてしまって』
少女は未だに俯いたままだった。何か申し訳なさそうな態度だ
僕は、あまり気にしなくてもいいですよ と笑顔で送った
そして僕は、再び野宿を始めた
目が覚めると、何か違和感を感じた
野宿をしたのだから、違和感を感じるのだろうが、それ以前に空気が違う。
臭いだ。
昨日と臭いが違うのだ。
昨日は、腐敗臭がしたのだが、
この臭いは……………生臭い
また、肉の焼く臭いと、こげる臭いがした
臭いの元をたどると、そこには家があった。
あの腐敗臭のする家だが、その家はなんだかおかしくなっていた
そうだ。臭いがしないのだ。
腐敗臭の臭いが綺麗になくなっている。代りに奇妙な臭いが漂っている。
一部の草が不自然に無くなっていた。灰が溜まっている
風が吹き、その灰はどこかへ飛んで行った
最も目立ったのは、家の壁の色だった。
前は薄汚いこげ茶色だった気がするが、
今は色が違う。新鮮な薄いオレンジ色だった。
壁から生えている突起も、弾力性のあるものになっている
すぐに曲げただけでは折れもしない。
思いっきり曲げたら、ボキリという音がした
その後は、ぶらん と柔らかくぶらさがった
昨日まではボロボロと崩れたのだが、
ドアノブも弾力性のあるものになっていた。
手をかけると、妙な液体が手に付着した。それが少し不愉快だったな
家の中に入ると、底の中は少し明るい雰囲気に変わっていた
だが、そこにあの少女は居なかった。
『おじゃましますよー。』
途端、奥の部屋から血まみれの少女がこの部屋に入ってきた。
それは、昨日の少女なのだが
少女は、キョロキョロ見渡しながら、チラチラ僕の方を見ていた。
とりあえず、彼女が血まみれなのはスルーをしておこう。
『随分、明るい雰囲気になりましたね。臭いも消えましたし』
少女は初めて笑った。
その笑顔は、小さい物だったが、
その後、僕の方を向かなくなった。僕は何かしたのだろうか?
『今日中には、店は完成しますので。開店しましたら、よろしくお願いします。』
とりあえず、客引きをすることにした。
少なくとも、人は来てほしいとは思っている。
だが、少女は何もいわず向こうを見ている
僕と目を合わそうとしない。
『まぁ、必要ない時は来なくても大丈夫だけどね。』
そう言って、僕はこの家から出ていった。
『さて、再開しないとな。』
店作りも、もうそろそろ終盤だ。
釘や板などもそろっているため、完成まで一日も経たない
ただ、なぜかノコギリとトンカチが無くなっている
探していると、裏口の方の壁に刺さっていた
昨日、本当に何があったのだろうか。
心当たりがあるが、まぁ現状に材料とノコギリとかは揃っているので別にどうでも良かった。
そのノコギリとトンカチを引き抜き、僕は建築に戻った。
丑三つ時、ついに店は完成した。
明日は商品を拾ってこなければいけない。
とりあえず、僕は出来た家の中で寝ることにしようと店の中に入って行った。
扉に手をかけた後、後ろから服を引っ張られた
後ろを振り向くと、あの白い少女だった。
白い少女は、笹の葉でくるまれた何かを僕に渡した。
その後、どこか走り去ろうとしていたのだが、自分の家に入って行った。
これは祝いなのだろうが、一応物を貰ったらお返ししなければいけないと霧雨の親父さんに言われたので
とりあえず、自分の持っている者を渡そうと探したが、ノコギリとハンマーしか無い。
さすがにこんなものを渡されたら困るだろう。あきらかに建築なんてした事なさそうな人柄だしな。
とりあえず、店の中に二つほど白い花が生えていた事を思い出した。
僕はその花をお返しに渡そうと考えた。とりあえずその花が生えている部屋に向かった。
扉を開けると、その場所だけ床が抜けているのだ。
それ以外は、普通の部屋なのだが、
とりあえず僕は、邪魔な直方体の石をどけて花をむしり取った。
その花を持ち、家から出て、月の光で不気味に映る家に向かった。
いつの間にか、ドアノブに付着していた不愉快な液体は乾いて無くなっていたのだが。
生々しい触感の柔らかい物体は、未だに残っている。
とりあえず扉を開けて、玄関まで上がり込んだ
目の前には、あの白い少女が居た。
僕が扉を開けた時、少し驚き怯えた表情を見せていた
だが、すぐに和解したような顔になった
『これは、あの肉のお返しです。』
僕はそう言って白い花を渡した。
そうだ、あの葉にくるまれていたのは牛肉らしき物だった。
だが、それにしては少し柔らかい用な、そんな気がしたが
花を渡された少女は、顔を真っ赤にして別の部屋に逃げていった。
やる事は終わったので、僕は貰った肉で焼き肉をすることにした。
その肉は、食べた事のない肉で、今まで食べた中で一番美味い肉だった
朝になり、僕は店の開店を始めた。
最初の20時間は誰も来なかった。
閉店しようとした時、一人客が来た。
それは客かどうかは分からないが、あの少女だった。
少女は、またあの草にくるまれた肉を持ってきて、僕に渡してくれた。
『よかったら上がっていくかい?』
途端、少女は少し戸惑い、俯いたままだったが、
しばらくすると頷いた。
僕は彼女を店に入れ、扉を閉めた後、僕は台所に向かった。
『昨日もこんな美味しい肉を貰って悪いね。これはどこに売ってるんだい?』
僕はそう質問をしたが、少女は何も答えない
ご飯を食べているときは、殺伐としていた
少女は箸の持ち方をしらなかったらしく、手で食べていた。
その光景を見て僕は何も言えなかった。
内気の割に、ワイルドが人だと思った。
食べ終わった後は、少女の分の布団を取りだした。
隣なのだから、そのまま帰って寝ればいいだけの話なのだが、
『今日は泊まって行くかい?』
その言葉を聞いた少女は、一瞬ビクンとなった。
何かを訴えたそうな顔だが、口が全く動いていない。
それが2分ほど続くと、彼女はゆっくり頷いた
『そうか。ならついてきてくれ』
僕は、あの花が生えていたあの部屋に布団を敷いた
『ここが君の部屋だ。僕の部屋は向こうだから、用があったら呼んでくれ』
少女は少し寂しそうな顔をしていたが、布団をふんずけると、
何か異様な物を踏んだかのように、少女は下を確認した
その後はかがんで、布団を手探りで調べるように撫でまわしていた
布団を押しては離してはを繰り返していた。
押しては離してはを繰り返しては、だんだんと笑顔になっているような気がした。
そんなに羽毛布団がめずらしいだろうか
白い布団と白い少女と重なって見えて、同化しているようにも見えた
『それじゃぁ、消灯するよ』
僕はそう言って蝋燭の火を消し。この部屋から出ていった。
朝になり、僕は朝飯の用意をした。
完成した時、少女を読んだのだが返事が無い。
見に言ってみると、部屋にはもうすでに居なかった。
もう起きたのだろうか。随分早起きなものだ。
布団のそばには、またあの肉が置かれていた
帰るなら帰ると言えばいいのに。
僕はそう思いながら、真っ赤な布団を畳んで片付けた
それからというもの、毎晩少女は僕の家に来る事になっていた。
来ても何も喋らないのだが、
掃除の手伝いや夕飯を一緒に食べるくらいだ。
何も喋らないのだから、殺伐とした気まずい空気が流れてくる。
この店が気に言った事だけはよく分かった。よく分かったから買い物をしてくれ。
そう言えば最近、子供がさらわれると言う事件が人間の町で良くあるそうだ。
霧雨の娘さんは大丈夫だろうか、と少し心配になった。
店が設立されて一週間、霧雨の親父さんが娘を連れて僕の店に訪れてきた。
『よぉ。儲かってるか!?』
喧嘩売ってるのかコノヤロウと思った。
『ああ、ゴメンゴメン。そんなつもりで言ったんじゃないんだゴメン。』
僕はまだ何も言ってない。つまり完全に喧嘩を売っているな。これは。
『霖之助ー。』
霧雨の娘さんが僕の膝の裾を引っ張って誘導していた。
『コラコラ。僕はまだ仕事中だよ。』
そう言って霧雨の娘さんを手で軽く払った。娘さんは少し寂しそうな顔をしていた。
『なんだ?うちの娘が可愛くないってか?』
『そうじゃありません。僕だって一応忙しいんです。』
僕は大ウソをついた。
『客が居ないのに忙しいのか?』
『そりゃぁ掃除とか商品の整理とか』
霧雨の親父さんは大笑いした。
その大笑いしている霧雨の親父さんを見ていた僕の顔がなんだか赤くなっているのを感じた。熱くなっていた。
『からかいに来たなら帰ってくれませんか?』
『やだー』
霧雨の娘さんが僕の足にしがみついて離れない。
『まぁ、霖之助聞けよ。俺は質問したい事があってここに来たんだからよ。』
そう言って霧雨の親父さんは、窓の外の隣の家を見つめていた
『ここ最近、人攫いがでるようなんだ。』
『だったら家に帰って用心して下さい。娘さんがいるんでしょう。』
霧雨の娘さんが見上げて僕の顔をじっと見ている
『それに、そんな危険な時にどうして僕の所に来たんですか。娘さんを連れて』
『霖之助に会いたい会いたいうるせぇんだよこいつがよぉ。俺がお前の店に行くと言ったら私も行くと聞かなくてな。』
笑顔で淡々と話していたが、次の瞬間顔つきが急に変わった。
『てめぇがこの娘を貰ったらてめぇを一生拷問にかけてやるけどな。』
『心配は御無用ですよ。』
僕はそうため息をつくと、霧雨の親父さんは心底安心したような顔になった。どれだけ僕が嫌なんだ
『で、人攫いがどうしたんですか?』
『おー。そうだそうだ。まだ聞いてなかったな。』
霧雨の親父さんは再び隣の家を見つめた。
『ここんとこ、人攫いが出るんだが、お前何か知らねえか?』
『僕が人を攫うように見えますか?』
『見えるわけねえだろ。どちらかと言うと女にも負けそうな体つきだ。』
僕は少し殺意が湧いた。
『だがなぁ、どうもお前は人攫いの犯人に無関係とは思えねえんだよなぁ。』
僕はため息を吐いた。
『何を根拠にそんな』
『あの家が特に怪しいんだよなぁ…………。』
『………………。大体気づいてるんじゃないですか。』
霧雨の親父さんは再び笑いだした
『いやぁ、ただお前をからかってみたかっただけなんだよなぁ。』
だが、すぐに笑いは止んだ
『悪い事は言わねえ、お前、ここから離れた方がいいぜ。』
『嫌ですよ。折角店が建ったのに一週間で畳めと言うのですか?』
『その通りだ』
僕は霧雨の娘さんの頭を撫でながら霧雨の親父さんに押し付けるように、霧雨の親父さんに固まらせた
『済みませんが、帰ってくれませんか?』
娘さんが、寂しそうな悲しそうな顔をした
『りーんーのーすーけー』
霧雨の親父さんが、不気味に微笑んでいる。
『帰れるわけねえんだよ。何人行方不明になってると思う?一週間だけで56人は消えてんだぜ?』
その気迫は、もはや殺意とも言えた
『そのほとんどが子供、子供、子供、俺もおちおち寝てられねえんだよ』
『柔らかいですもんね、子供』
霧雨の親父さんは、未だ不気味に微笑んでいる
『妖怪の恰好な上等な獲物だもんな。だからよぉ、皆も必死なんだよ。大人たちは』
言い終えた後、森の入口から次々に人が入って来て隣の家を襲撃してる。
槍や斧などを家の壁に突き刺した。壁の断面の色は赤黒かった
『お前さんがお隣さんと仲良くなっているかは知らねえが、仲が良いのなら別れの挨拶をした方がいいぜ』
僕は急いで店から出ていき、隣の家まで走って行った。
『死ねっ!!死ねっ!!』
『息子を!!息子を返せ!!!』
『化け物がっ!!くたばれ!!』
『どこだっ!!どこに居る!!!!!』
家が、赤い液体をまき散らしながら崩れていく
誰もやられて居ないのだが、所々肉片が転がっていた
その壁の断面には、半透明の液体が流れているのもあった。
『居たぞ!!こいつだ!!!』
白い少女は、ガタガタ震えながら涙を流している。
少女は僕の方をじっと見ていたのだが、僕にはどうする事もできないだろう。
『今からてめぇをぶっ殺してやるからな!!おらぁ!!糞女が!!』
君がやった事は、妖怪である君は生きるためにやらねばならぬ事なのかもしれない。
だが、その行為は人間にとっては性質の悪い悪行でしかない。
そうだ。その行為をした者は、キチガイとも言われる
『ああああああああああああああ!!死ね死ね死ね!!』
少女は、蹴られて踏まれて棒で叩かれていたりしていた。
少女の顔は、見た事がないくらい、悲しい顔をしている。
『これでもくらいやがれぇぇぇええええええ!!!!』
男は、花の入った花瓶を持ち、その花瓶を使って少女を殴りつけた。
そのはずみで、花が落ち、そして踏まれた。
その瞬間、少女の様子が変になった。
踏まれても、叩かれてもビクともしなくなったのだ
『ああああああああああ!!死ね!!死ね!!命乞いしやがれ!!』
その行為が、周りの人間をさらに苛立たせ、暴力はエスカレートしている
瞬間、少女の目は真っ赤になっていた。充血とは違う色だ
その瞬間、周りに居た人間の5人位の頭が無くなった。
壁を切りつけた時に出た液体と同じようなものが無くなった首から出てきた
『ざけんなぁぁぁぁ!!死ね!ああああああああああああ!!死ねよぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!』
だが、彼女に近づいた者は全て頭が無くなっていく。
そして、動かなくなる
『なにやってんだ!!お前も動けよぉぉぉぉ!!!』
僕に近づいてきた男が、僕の目の前で二つになった。
二つになった男は、次第に動かなくなった
『あっ!!こら行くな!!』
後ろから霧雨の親父さんの声がした。
僕の足元に霧雨の娘さんが来ていた。
『霖之助ぇ………。大丈夫?』
僕の体は血まみれになっていた。全て返り血なので、問題は無いのだが。
霧雨の娘は、僕の足をじっと離さなかった。
『危ないから親父さんの所に行きなさい……。』
そう言って、僕は霧雨の娘さんの頭を撫でた。
しばらくした後、娘さんは僕の方を見上げた。
そして、頭がずれた
ずれた頭は、下に落ちた。
腹と腰も少しずつずれていった。
すべて地に落ちた。
三つに分かれた娘さんの周りは、真っ赤に染まって行った。
向こうで、霧雨の親父さんがずっと突っ立っていた。
何もしていないかのように、うわの空を見るかのように僕の方を見ていた
そして、膝が地についてしまった
僕は、再び霧雨の娘さんの方に目を向ける。
三つに分かれていた。
腕を触ると、僕の体温を奪って行った。
『あ』
僕は、声を出してしまった。
白い少女は、こちらを見ている。
ずっと、僕の方を見ている
そして、涙を流している
男がまた一人、少女を殺そうと近づく
だが、当然二つに分かれる
その光景を見て、僕は立ち上がった。
頭が、何かすっきりしたような感覚だ。
何かが、無くなった。
僕が近づくと、少女は少しずつだが手を僕の方に近づけた。
下に下がっていた手が次第に上がっていき、まっすぐ僕の方に向く
他の人は少女に近づくと二つに分かれたりしたのだが、
僕が近づいても、僕は一つのままだった。
少女は涙を流しながらも、少しずつ微笑んでいた。
僕が、少女の手を握りしめると、もっと微笑んでくれた。
さらに近づくと、息を吐いていた。
そして僕は、刀を取り出した。
そして、少女の腹にぶっ刺した。
何の迷いも無く、そのまま、当たり前かのように
その瞬間、少女の目は見開いた
そして、微笑みは消えていた
その代り、涙の量が増えていた。
『あ…………あああ………あ』
初めて少女の声を聞いた。
だが、そんなものを聞いても、もうどうでも良い。
僕は、表情を一つも変えずに刀を抜いた
『うっ』
少女は少しもだえて、その場で崩れていった。
『ああぁぁ………ぁぁぁぁあああ………』
少女は泣き崩れていたのだろうか。
僕の足にしがみつき、ずっと泣いていた
それを見た時、何か僕の中でまた生まれた
慈悲
とでも言うのだろうか。
少し切ない、そして後悔があった。
『ごめんな』
僕がそう言うと、少女はまた悲しい顔になった。
そして、少女は立ちあがり、自分の家に向かって行った。
そしてまたその場で崩れ、床を引っかいていた。
少女の手から血が出てきたが、まだ引っかいていた
その時、少女の手が何かに引っ掛かった。
少女が引っ掛かった手を引き上げた時、地面が開いた
その中には、大量の肉が入っていた
全て新しい肉、新鮮な肉だった。
少女は、その中から2つ、より良い肉を取り出し。立ち上がった。
そして、再び僕の方に近づき、その肉を僕に差し出した
『あ――――……あ――――………』
幼い声で、少女は微笑みながらその肉を僕に差し出した。
その声は、『ごめんなさい』と『元気出して』が混じっている声だった。
『あ―――……あ………』
少女は、まだ微笑みながら肉を僕に差し出している。
必死に、僕に理解を求めようとしているのか、
それとも、もっと仲良しになってほしいのか。
僕は、少女の頭を持ち、持った手で頭を撫でた
『ありがとう』
少女の顔が、晴れた。
涙の量は変わらないが、明るさが段違いだった。
初めて会った時、そしてずっと一緒に過ごした時よりも、ずっと明るい顔だった。
一番明るい顔だった。
そして、その明るい顔のまま、少女の頭には矢が刺さった
『続けぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇえ!!!』
そして、男たちが突進してきて、少女の体に無数の刀が刺さった
『ははははははははは!!この化物め!!』
『勝った!!俺たちは妖怪に勝ったんだぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!』
『ざまーみろぉぉぉぉぉ!!ざまぁぁぁみろぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!』
人間は、歓喜の声を上げながら少女をバラバラにしている。
霧雨の親父さんも、人が変わったかのように少女を痛めつけていた
『うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!ああああああああああああああ!!!』
悲鳴を上げて、少女を刀で痛めつけていた
もうバラバラにできないと気付いた人間は、
少女の生首の断面に棒を差し、それを地面に突き刺した。
その瞬間、人間は笑いだした。
ずっとずっと、愉快そうに笑いだした。
霧雨の親父さんは、ずっと俯いたまま暗い表情をしていた。
それはそうだ。愛する娘が殺されたのだ。
『魔理亜………………』
霧雨の親父さんは、娘さんの名前を呟いた。
正直、僕も笑えなかった。
少女は数少ない友達だった。だが、
その友達は親父さんの大切な物を奪って行ったのだ。
人間は、満足したかのように、闘っていたときの事を愉快に話しながら帰って行った。
僕と親父さんは、ずっとここで残っていた。
じっと、ずっと娘さんの死骸を見ていた
『………………………』
何も言わずに、ただそこで座りこんでいた。
人間が帰ってから、しばらく間が空いた頃
親父さんの口が開いた
『霖之助』
僕は親父さんの声に反応し、ゆっくりと親父さんの方に顔を向けた
『お前、ここに店を建てるのだけはやめとけ』
その声は、生気が一切感じられなかった。当然だろうが
僕は、親父さんの肩に手を置いた。
『綺麗な桜の下には、死体が眠ってるらしいですから。』
僕は、じっと娘さんの死骸を見つめた。
『いわくつきの場所の店って言うのも、面白くありませんか?』
『本当に不吉な事を言う奴だな』
親父さんは、そう言いながら娘さんの死骸を全て持ち、帰って行った。
その姿を見て、僕はごめんなさいと小さくつぶやいた
『おーい香霖ー!!邪魔するぜー!!』
魔理沙が店のドアを乱暴に開けて入ってきた。
そして店の商品を勝手にいじっていた。
店の外には、大きな桜の木が一本生えている。
その桜の木は、白くてとても美しい。
満開の時は、光を反射させるような美しい薄い桃色の花が咲く
だから、花見の時には多くの人が此処を訪れる。
『ん?どうした香霖?』
魔理沙は、一体どちらの生まれ変わりなのだろうか。
魔理亜も少女も、どちらも大人しい性格だったので、あまり関連はなさそうだが、
全体的に魔理亜の部分が多い、耳の形とか目の色とか。
だが、髪の形、パーマのような髪は少女によく似ている。
『まぁいいや。今日はこれを借りてくぜー。』
『金は払ってほしいものだね。』
『ケチケチすんなって!』
そう言って魔理沙は店のドアを乱暴に開けて、逃げるように去って行った。
そうだ。もうすぐ春なのだ。
僕は、外に出て桜の木を確認しに行く。
その桜の木にはつぼみが出ていた。
緑色の葉も、残りが少なくなっていた。
一年に一回、またあの日の事を思い出す。
『また、君が咲くのか』
だが、その思い出は血にまみれた生臭い思い出では無く、
共に過ごした、くだらないただの思い出だ。
最初はそそわで載せようかと思っていましたが、
グロすぎるので止めました。
幻想郷が狂った日に少し寄せた奇妙なお話になっています。
今までの中では、産廃の中ではそんなにグロくないかもしれませんけどね………。
ND
- 作品情報
- 作品集:
- 19
- 投稿日時:
- 2010/08/05 06:48:27
- 更新日時:
- 2010/08/05 15:48:27
- 分類
- 霖之助
- オリキャラ
- グロ
- 魔理沙
人間って恐ろしい・・・
面白かったです
ありがとうございます
そして少女がいい意味で妖怪をしてかつ可愛いのが切ない
切なさと愛しさが良い塩梅だわぁ
確かzooに収録されてたような