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『Rain』 作者: 名前がありません号
雨はいつ見ても、自らを憂鬱な気分にさせてくれる。
こと紅魔館の住人達にとっては、雨はとても嫌いなものである。
妹を足止めする時にしたって同じである。
あれは止むを得ないからやるんであって、本意ではない。
無論それは、私ことレミリア・スカーレットとその妹フランドール・スカーレットに限った話ではない。
その日は、丁度雨だった。
といっても、雨量は知れている。
殆ど小降りと言っていい。もっとも私達吸血鬼にとっては、小降りだろうがなんだろうが、雨は雨である。
傘の常備は欠かせないのである。といっても、今日はこれといった用事は無い。
霊夢のところに遊びに行ってた事もあったが、霊夢には積極的なアプローチが通用していない事は、
ここ数年の彼女の傾向を見て把握している。
ふと窓から門を見る。
門番はやはり立っている。門番隊の多くは年中無休である。
美鈴以外は交代性だが、それでも雨嵐に関わり無く、門の防衛に携わっている。
門番隊の持ち前のタフネスはこうした活動で養われている。
美鈴は相変わらず昼寝をしている。というより基本、彼女は昼寝している機会の方がよく目にするだろう。
昼時は妖怪どもの侵攻はない。その分夜は起きている。妖怪らしい生活である。
魔理沙のような輩は素通ししている。
パチュリーは止めろと言っているが、当人は気にしていない。
彼女が害敵と判断したら、パチュリーの願いは叶うだろう。当分は来ないだろうけど。
小降りとはいえ、雨に打たれる美鈴は平気なのかといえば、まったくもって平気であった。
妖怪は本能の生き物である。たとえ他者に仕えていても、それは変わらない。
過度にストレスを感じれば破綻する。そういう生き物だ。
相変わらず妙な構えをしている。
特にこれといって面白そうな事はなさそうなので、カーテンを閉じる。
翌日。
今日もやはり雨だった。
ただいつもよりも激しい降り様であった。
それでも美鈴は門に立っている。
今日は昼寝をしていない。する必要が無いのか、あるいは出来ないのか。
私はいつものように、窓から美鈴を見ていた。
少し苛立ちのようなものを感じる。
水も滴るいい女とは彼女の事をあらわすぐらい、美鈴は美人である。
だが濡れる当人からしてみれば、たまったものではない。
表情も、こころなしか引きつった笑みだ。
かつかつと地面を踏みしめる。
本人は気付いていないようだが、足の跡がくっきり残るほど強く踏みしめている。
ふと空を見上げると、黒い何かが近づいてくる。
あれは恐らく霧雨魔理沙だろう。
近づいてくるといよいよ当人だと分かった。
口を動かして、下の美鈴に声を掛けて、そのまま紅魔館に入ろうとする。
おおかた『邪魔するぜ』とでも言ったのだろう。
それに怒りを覚えたのか、美鈴は館にも響く奇声を上げて、魔理沙に飛び蹴りをかました。
ほぼ直下からの飛び蹴りに不意をつかれ、箒を蹴り折られながら、
自身も股を蹴り飛ばされ、きりもみ回転しながら、湖に落下した。
美鈴は門の前に降りると、深く深呼吸をする。
まぁ、いつもの笑顔が戻ったようでなによりだ。
とりあえず、美鈴が苛立ってる時に手を出すのは止しておく事をお勧めするよ。
その日も土砂降りの雨だった。
我が館の読書中毒者(パチュリー・ノーレッジ)にとっては、
湿気は常に天敵である。本に対するダメージに加え、
あの碌に動かない友人には、この時期の暑さと湿度には耐えられない。
叩けば「ぐぇっ」と、そのかわいらしい顔とは裏腹の声が聞けることだろう。
といっても図書館の管理は全て小悪魔に一任(押し付けたとも言う)されており、
別に読書中毒者の一人や二人がダウンしたところで、小悪魔の仕事が増えるわけではない。
ふと読みたい漫画を探しに図書館に入ると、我が友人は見事にグロッキーだった。
『本に埋もれて死にたい』が、彼女の口癖だが、埋もれる前に死にそうだな、と思った。
とりあえず小悪魔を探すのさ。
ついでに小悪魔にパチュリーの蘇生をお願いしておく。
この季節は放っておくといつの間にか死んでいる。
小悪魔が気付けばいいが、気付かなければ本当に死ぬ。
実際、一度死にかけたことがあったしね。
その時はどうしたかって?
小悪魔の必死の人工呼吸と心臓マッサージで一命を取り留めたよ。
傍目には、性交の現場にしか見えなかったけど。
ただ、まぁその日はちょっと状況が違ってね。
珍しく小悪魔が何処にも居なかったのさ。
ふと、パチュリーのテーブルの上に書き置きと塩の入った瓶が置いてあってね。
書き置きには、
『所用により、しばし図書館を留守にします。
パチュリー様にはお塩をかけてあげてください』
って、あったんで、そのまま塩をパチュリーの頭の上から掛けてやったよ。
どうなったと思う?
なんとパチュリーの身体がぐじゅぐじゅのドロドロに溶けていくじゃないか。
どんどん身体がでろでろの液体になって、最後にはパチュリーの座っていた椅子と床には、
パチュリーだったものの液体だけが残ったんだ。
あまりにあっけない親友の死に様に私は悲しみに包まれながら、
とりあえず液体を燃やしたよ。だって臭いんだもん。
あとで聞いた話だけど、蛞蝓は塩を掛けられると溶けるらしいね。
ちなみに小悪魔に詳しい事を聞いたら、「ノリでナメクジにした」んだってさ。
ノリじゃ仕方ないか。
その日は嵐のような雨だった。
咲夜が身体中をずぶ濡れにして、帰ってきた。
「お帰り」というと、一つ会釈をして、そのまま部屋に戻っていった。
あの時の咲夜はどうにも触れにくい。
いや、無理に聞こうと思えば聞けるだろう。
まぁ、それはそれで面白みに欠けるわけだけど。
咲夜は激しい雨が降る時に、いつも出かける。
美鈴はいつも心配そうに見送っているのを見かける。
そして今日のようにずぶ濡れで帰ってくる。
そして帰ってくるときは、いつもあんな調子である。
まぁ彼女は使用人とはいえ、奴隷にした覚えは無いから、
余計な詮索はしないけどね。
彼女は優秀だし、特に粗相もしていないから、
聞くチャンスも早々無い。完全で瀟洒というのも時には考え物だね。
そういえば、先月お前が話してくれた話に、
『豪雨の殺人鬼』なんて話があったね?
嵐のような雨が降る日に、外に出た人間が斬殺されるって事件。
えーと、どんな話だっけ?
そうそう。
嵐のように雨が降る日に、
外に出た人間を誰だか判別できないくらいにバラバラにして、川に流すって奴。
綺麗に、部位ごとに解体されてるものだから、玄人の犯行とか言ってたなぁ。
まだ犯人は捕まってないんだっけ?
その話を咲夜にすると、余り面白くなさそうな顔をしていたよ。
それからは、咲夜は嵐の雨の日には外出しなくなったよ。
理由? さぁ? 本人から聞いてみれば?
「ふんむ。あんまり面白い話はありませんねぇ」
「私の作り話にいちいち期待するなよ。そういうのはパチュリーのが専門だよ」
「彼女に頼んだら、『貴方の持ってる本を寄越せ、全部』と言われましたので、やめました」
「あっそ……。あぁ、まだ降ってるな、憂鬱になる」
射命丸文はレミリアの部屋に居た。
窓の外は、バケツをひっくり返したような雨だった。
レミリアはとてもつまらなさそうな顔をする。
晴れても困る、雨が降っても困る。吸血鬼の困りどころだ。
運の悪い事に昼時に目覚めてしまったレミリアは、
暇潰しの方法を探していたところに、射命丸文が飛び込んできた。
湖でチルノの特集をしていたら、突然大雨が降り出したものだから、
雨宿りに来ていたらしい。
ついでなので、何か面白いことは無いかとレミリアが訪ねたところ、
「適当に作り話でも作ってみては?」といわれた。
面白ければ、話を載せるという。
レミリアはその頭を捻って、とりあえず話を作ってみたが、
そも専門外のそれはお世辞にも面白いとは言いがたい。
レミリアも話を作るのに飽きてきて、文も雨が止まない為に出るに出られない。
無理をすれば戻れるが、今日は休暇を取っているので明日帰っても問題はない。
今日はレミリアに頼み込んで、館に泊めて貰う事になった。
文は案内された客間で、チルノ特集と題した原稿を書いていた。
いわゆるチルノの私生活や行動などを調査し、妖精についての見識を深めようと言う物だった。
もっともそれは建前で、こういう個人の私生活関係の話が、幻想郷でウケるかどうかの実験が本命だ。
外の世界ではそういうのが流行っていたようだが、幻想郷でも同じように行くかはわからない。
まずは手頃な妖精相手に試すのが目的である。
一通り纏め終えて寝ようとすると、コンコンと戸を叩く音がする。
ここの住人はまだ寝静まっていないが、どうもレミリアとは違うようだ。
とりあえず戸を開けると、そこにはニヤニヤ顔のフランドールが立っていた。
「何よ、そんなに怖がらなくてもいいじゃない」
「い、いえ、珍しい事もあるものだな、と」
「一人遊びは飽きるし、外は雨音で五月蝿いのよ。というわけで付き合ってよ」
「ま、まぁ、構いませんが……でも、特にお話するほど面白い話はありませんよ?」
「いーよ。代わりに私が面白い話をしてあげるよ」
「面白い話……ですか?」
文は適当にフランを追い払おうと思ったが、その話を聞いて少し戸惑う。
それを見たフランは、ニヤニヤしながら文を見る。
「そうよ。面白い話。きっと気に入るわ。なんなら新聞に書いてもいいよ」
「……聞くだけですよ、聞くだけ」
そういいながらも文は既に、フランの話が気になってしょうがなかった。
それはね、むかしむかしのこの館で起きた事件なの。
昔、この館はある貴族の別荘だったらしいの。
誰も住んでいない館を改装して、別荘にしたらしいわ。
その人はとても優しく穏やかな紳士だったのだけど、
この別荘に住んでから、奇妙なことが起こるようになるの。
それが大雨が降った時なの。
大雨になると彼は苛立ち、暴力を振るうようになるの。
使用人や妻、娘や息子にまで危害を加えるほど凶暴になってしまうの。
でもね、雨が止むと、自分の部屋に戻っていくの。
そして、暴力を振るった事をまったく覚えていないの。
大雨の日の彼はまるで別人で、時には殺してしまう事もあったらしいわ。
だから、使用人も妻も娘も息子も、みぃんな部屋に鍵を掛けて隠れていたの。
妻はそんな夫を心配して、色んなお医者さんに見せたけど原因はわからない。
結局、原因もわからないまま、その日は別荘に帰ったの。
そしてある日、事件は起こったわ。
その日は、かつてない豪雨に見舞われたの。
その豪雨で館を繋ぐ橋が壊れて、外に出られなくなってしまったの。
そしてこの豪雨で、彼は狂ったように館を徘徊しはじめたわ。
そして目に映る者に次々に襲い掛かったわ。
逃げるメイドを捕まえると、その服を破いて犯して殺してしまったの。
それを見たメイド達は次々に逃げて行ったわ。
皆、部屋に隠れたり倉庫に隠れたりして、雨が止むのを待つんだけど、
全然雨は止む気配がなくて、むしろどんどん激しくなって……。
ざぁざぁという音が、耳を掻き毟るように館に居る人達を蝕んでいくの。
そんな中、彼の息子がキッチンに隠れていた時に見つけたナイフを手に取って、父親に突きたてたの。
父親は苦悶と憎悪に満ちた顔で息子を睨みつけて、死んでいったわ。
そして父親を殺した事を母親に報告しようとしたら、
血のついたナイフを見た母親は発狂して、近くにあった花瓶で息子の頭を殴打して殺してしまうの。
そして母親が実の息子を殺したところを目撃した娘は、
割れた花瓶の破片を手にとって、母親の腹に突き刺して、部屋から逃げてしまうの。
しばらくして、母親は大量出血で死んでしまったわ。
部屋から逃げて、内緒で部屋に上がった事のあるメイド達の部屋に入ると、
それぞれが持っていた道具で、娘の姿を確認する前に殴りかかって、
そのまま娘を殴り殺してしまうの。
メイド達は自分達が仲良くしていた娘を殺したショックに耐え切れずに自殺してしまったの。
そして、誰も居なくなったとさ。
「な、なるほど……確かに面白いお話ですね」
「そうでしょ」
「すばらしい作り話ですよ、小説家にでもなれるんじゃないですか?」
「何言ってるの? 作り話じゃないよ?」
「……え?」
文はフランドールの言葉に硬直する。
作り話じゃない、とはどういうことなのか。
「だって、そうなるように仕組んだのは私だし」
「そ、それはどういう……」
「人は単純だから、それとなく演出してあげれば、こういう事は簡単に出来るわ。
橋を破壊して、平常心を破壊して、狂気を助長して、最後に元に戻すの。
そうしていけば、面白い話の種が出来上がるわ」
「た、他人を利用して、玩具のように殺したのですか……」
「驚く事は無いでしょう? 妖怪は人を食らうものだけど、
直接捕食するだけじゃ、おいしくないもの。
スパイスが必要なのよ、極上の恐怖と追い詰められた者の感情。
だから一人残らず綺麗に食べた時はとてもおいしかったわ」
フランドールの言葉の節々に感じられるそれは、文にも分かるほどの狂気。
人を弄び、壊しながら楽しむ行為を、無邪気な子供のような笑顔で行なうこの少女が、
同じ妖怪とはいえ、恐ろしいものに見えていた。
「そんな顔しないでよ。貴方だって、似たような事をしようとしたでしょ?
チルノの事を面白おかしく書いて、他人の反応を見るんでしょ?
それでチルノを利用して、自分に利益が出れば最大限利用して使い潰す。
私と同じじゃない」
「ち、違います……わ、私は、断じて……」
フランドールが近づいてくる。
文は逃げようとして、身体が動かない。
何の能力も使われていないのに、フランドールに見られているだけで、
まるで身体が石のように動かない。
「今日は豪雨ね。これだけ雨が降っていると、どんな雑音もかき消してくれそう」
「な、何をするお積りですかっ……」
「んー? それはねぇ……こうするの」
フランドールが手を出す。
中には光る玉のようなもの。
文は知っている。フランドールの能力。
そして、その光る玉が何なのかも。
「ひぃっ! や、やめ……」
「どっかーん」
グシャッ
「うわぁぁぁぁぁぁ!!!」
文はベッドから飛び起きた。
そして辺りを見回す。
テーブルには書きかけの原稿。
部屋には誰も居ない。
ふと自分の服を見る。汗だくで、にちゃにちゃして気持ちが悪い。
なにか恐ろしい夢でも見ていたのだろうか。
そう思うくらい、汗で服が身体に張り付いていた。
幸いにも換えの服を用意していたので、汗だくの服で戻るという苦行からは脱した。
「なんだ、もう帰るのか?」
「ええ、休暇も今日までですし、そろそろ戻らないと仕事に差し支えますので」
「まぁいいさ。面白い話でも持ってきて、来るといいよ」
「新ネタを期待していますよ、それでは」
そういってレミリアと軽い会話を交わした文は、紅魔館を発った。
館に戻ると、咲夜がやってきた。
「お嬢様、今日はお出かけになりますか?」
「いんや、これから寝る。夜這いくらいは掛けるかもね」
「……今日はやめておいた方がよろしいかと。先ほど里に買出しに言った所、天気予報装置が夕方から夜間に掛けて大雨だとか」
「なんだ、また雨か……。やれやれ、当分外出も出来ないと太っちゃうわ」
「では、今日の食事は少なめに?」
「これ以上減らすならいっそ食べない方がマシだわ。とりあえず寝るんで、後はよろしく」
「はい、おやすみなさいませ、お嬢様」
そういって、レミリアは自室に戻っていった。
「ひぃぃ……」
ざぁざぁと雨が降る。
射命丸文は、森の中で身体を抱えるようにして震えていた。
途中人里に寄ったのが間違いだった。
突然降ってきた大雨に、身体がガクガクと震えだして、
飛ぶ事も出来なくなってしまった。
自分の身体の異常に、頭を混乱させながら、
雨が止むのを待ち続ける。
雨が身体に触れる。
冷たい。その冷たさに体温を奪われていく。
身体がぶるぶると震える。
すると誰かが近づいてくる。
土を踏みしめる音。
しかし姿は見えない。
ざぁざぁと降る雨音が、相手が何処から来るかを惑わせる。
わからない、わからない、わからない。
混乱し続ける頭は冷静さをどんどんと奪い取っていく。
そして、自らの肩に何かが触れた。
文は振り返ると、其処には鬼の仮面をつけた何かが立っていた。
「いやぁぁぁぁぁぁぁっぁぁぁ!!!!」
そして文は気絶してしまった。
そんな文を見た、仮面をつけた人間の男は河童から買ったカメラという道具で、
気絶し、失禁した文の写真を何枚も撮り続けた。
その後、人里で射命丸文の失禁写真がひっそりと売られ、
それが妖怪の山にも知れ渡り、文は居場所を失い、ひっそりとその姿を消した。
ホラーを目指して失敗した話。
というか前置き長すぎだよ、と言われそうだ。
名前がありません号
- 作品情報
- 作品集:
- 20
- 投稿日時:
- 2010/08/20 13:54:26
- 更新日時:
- 2010/08/20 22:56:48
- 分類
- レミリア
- フラン
- 文
それぞれの場面が互いに軋み合ってひとつの異常を形成している
射命丸は不憫
というか人間の男はなぜ雨の中鬼の面を持って森にいたんだろうw
あったら見て見たいね。
文ちゃんのおしっこイタダキマース^^
それにしても、蛞蝓パチュリーかぁ………
と、思ったらレミリアの作り話だったのか……作り話とはいえ親友になんてマネをw
文もついてないですね