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『刹那に輝く月よ、私は―― その2』 作者: 上海専用便器
季節も段々と秋に近づくというのに、残暑はまだ厳しかった。
蝉の鳴き声は聞こえてこなくなったとはいえ、陽の強さはまだまだ強い。
「ふぅ……暑いわね……」
竹林の外に出て、人里へと向かっていた輝夜は、自分の顔に流れる汗を拭う。
彼女には今、永琳や妹紅といった友人が付き添っていない。
普通、輝夜が外出するときには誰かが一緒にいるはずなのだ。
だが、今回は話が違っていた。
輝夜はただ一人で、しかも面倒がることもなく、幻想郷中を回ろうとしているのだ。
一人で人里まで出ることですら、一部の人妖たちにとっては天地がひっくりかえるようなことである。
それぐらい、輝夜は妹紅の身を案じていたのだ。
「妹紅にだって、好きな人がいたかもしれないのに………」
その場で立ち尽くし、悲しそうな声でそう呟く輝夜の手に、爪が食い込む。
唇を噛みしめ、守ってあげられなかった自分に嫌気が差し始めた。
もしも、あの時に妹紅と顔を合わせていたら、妹紅が襲われることもなかったかもしれない。
自分が面倒くさがっていなければ、妹紅は―――
「……やめましょう。後悔しても、何も始まらないわ。」
今は、情報収集をすることが先決だ。
輝夜は気持ちを切り替えると、人里の方へと足を動かし始めた。
人里に着いた輝夜にとって、その光景は目新しいものだった。
行き交う人々は皆、せわしなかったり、米俵や野菜といったものを運んで、大変そうな人もいる。
しかし、輝夜が目にした人間は皆、生き生きとしているようだった。
「あんなに働いているのに、嫌にならないのかしら……?」
家事は全て、自分の家族にやらせっぱなしの姫には、彼らの気持ちを理解することは難しい。
人間の気持ちはどうなのだろうか、と考え始めた輝夜だったが、すぐに本来の目的を思い出す。
「いけないわ。今は、妹紅の犯人捜しよ。」
今は、人里の有力者に話を聞くのが先決だ。
太陽が真上に上り始め、昼時と知った人々は、昼食を取り始める。
そんな彼らの視線を感じながら、輝夜は里長がいるらしき立派な屋敷へと向かい始める。
と思ったのだが、その道中に輝夜はある人物に声をかけられた。
「輝夜様?」
「あら、妖夢じゃないの。」
「はい。今日は、永琳様とご一緒ですか?ご挨拶をしたいのですが……」
半人半霊の華奢な体の女剣士、魂魄妖夢が主人のおつかい帰りに輝夜と出会ったのだ。
しかし、輝夜は相手にする必要も無いとそのまま通り過ぎようとする。
「えっ?か、輝夜様?」
「ごめんなさい、今はおしゃべりしている時間が無いの。」
「え、ええ?な、何かあったのですか?」
素っ気ない態度を取られた妖夢は、輝夜を怒らしてしまったのかと心配になっていた。
馬鹿正直の妖夢が、輝夜を怒らしてしまったかどうかをうやむやにしてはならないと考えるのは当然である。
鬱陶しいと思われていようが、輝夜には謝罪しなければならない。
その思いから、妖夢は輝夜の後を追い続ける。
「あ、あの………何か、気に障ることでも、おっしゃってしまいましたか?」
「何でもないわ。今、私は忙しいのよ。」
「で、でも……………」
やはり、輝夜は怒っている。
これでは、自分の主にも迷惑がかかるかもしれない。
妖夢はそう考え、輝夜の前に移動し、地面に座って、土下座を始めた。
「申し訳ございません、輝夜様!私が悪うございました!!」
「は、はい?」
妖夢の大きな声が、人里にこだまする。
その声を聞いた人里の人々が輝夜と妖夢の方に振り向くのは、明らかだった。
何か、よくない方向に勘違いされるのではないだろうか。
そう考えた輝夜は、土下座している妖夢に近づき、少しだけ相手をすると決めた。
「妹紅、さんが………?」
妹紅が陵辱されて発見されたことを妖夢は知ると、呆然とその場に立ち尽くした。
妖夢は妹紅と仲がよいわけではない。
輝夜は、妹紅の交友関係は全て知っているのだ。
全て、無理矢理に聞き出しているので、誰と仲がよいのかを知っている。
しかし、なぜか妖夢は唖然としており、それだけではなく体が震え始めたのだ。
(やっぱり子供ね。自分もいつかやられるんじゃないかと、怯えているのかしら。)
輝夜は、妖夢の様子からそう思った。
「だ、誰が!?」
裏返ったような声で、妖夢はそう訪ねた。
ここまで妖夢が慌てている様子に、輝夜はある種の違和感を感じる。
(ただの知り合いのことで、ここまで心配できるものかしら?)
妹紅は、輝夜の親友だ。
だから、自分の態度は、他人も納得できるものだ。
だが、妖夢は妹紅と顔見知り程度の仲である。
妖夢の主人が永遠亭に押しかけることがあるので、自分たちとは顔を合わしているが、
妹紅とは殆ど会っていないはずだ。
それなのに、どうして妖夢はこんなにも妹紅のことを気にするのだろうか。
輝夜は結局、まだ手がかりは無く、今自分は情報を集めているのだと説明した。
ただし、永琳や慧音が自分を疑っている、ということだけは言わなかった。
――つい先刻まで、それは演技の話だったが。
一通り妖夢に事情を話した輝夜は里長の屋敷へと向かっていく。
「さよなら。ご主人を喜ばせるように、がんばりなさい。」
輝夜は妖夢にそう告げると、そのまま妖夢の視界から消えていった。
その妖夢はなぜか、数分間、その場で動かなかった。
里長の屋敷に着き、里長と面会をしようと下男に伝言を伝えさせる。
竹林の奥に住む、月の輝夜姫がやってきた。
その知らせを受けた里長は、すぐに面会を許可した。
お茶を出され、一対一で向き合う、輝夜と里長。
「それで、どういったご用件かな?」
人間でありながらも、独特の風格を持つ里長。
輝夜は想像していた人間と全然違っていたため、少しだけ驚いた。
(もっと、権力に媚を売るような男だと思っていたわ。)
一人で別のことを考えている輝夜を見抜いたのか、里長はこう声をかけた。
「しかし、慧音様ではなく、私に用があるとはな。何があったか、言ってはもらえぬか?」
的を射た問いかけに、輝夜はハッと気づく。
「ご、ごめんなさい。」
「別に時間はあるので、構わない。しかし、貴方がここに居続けるのはよろしくないのでは?」
「そ、そうね………」
輝夜は無意識のうちに、次第に里長に押されていった。
里長は人里を取り仕切る者である。
名のある妖怪の性格、友好関係は大抵、理解しているのだ。
当然、輝夜が慧音と悪くない仲であることも知っていたために、慧音のことを突いたのだ。
「では、言ってもらえぬか?」
「ええ、話すわ。」
態度を改め、輝夜は妹紅のことを包み隠さず話す。
「何っ、彼女が?」
「ええ。一人じゃなく、数人だって。永琳が言うには、人間の仕業らしいわ。」
今頃、妹紅の体を調べて、人間が妹紅を犯したと永琳が発見しているだろう。
そう信じていた輝夜は、犯人は人間だと決めつけていた。
これは邪推ではなく、二人の天狗が人間が犯人である証拠の写真を手にしている。
そのために、輝夜の推理は一応、当たっている。
輝夜は続けて、里長にあることを尋ねた。
「そういう、女性を犯すような男に心当たりは無いかしら?」
「ふむ………罪を犯しそうな男は、いくらでもいるのでな。これ、と言える者はおらん。」
「そう…………」
里長の返答を聞いて、輝夜は落胆する。
というのも、この次に事情を聞くべき人物が思い当たらないのだ。
ともかく、用がない以上、里長の屋敷から離れるべきだ。
そう考えて、輝夜は里長に別れの挨拶を告げる。
「ありがとう。慧音にも……よろしく、伝えておいて。」
「うむ。貴方もお気をつけて。」
自分を疑っている慧音や永琳のことも心配だったが、今は犯人捜しが先決だ。
輝夜はそう決心して、屋敷から離れていった。
「しかし、あの月の姫が一人で来るとは………」
一人残った里長は、残りのお茶を口にしていた。
そのとき、彼はあることに気づいた。
「………永琳殿が付き添っておらぬのは、どういうことだ?」
輝夜は、永琳がいなければ何もできない。
そういう話を聞いていた里長にとって、一人で来訪してきたことには驚く。
「…………何か、裏があるのかもしれんな。慧音様に伝えておくべきだな。」
そして、彼は輝夜のことを慧音に伝えようと決心する。
ひとまず、人里以外の場所へと向かおうとする輝夜。
しかし、早速行き先を見失っていた。
大した手がかりを得ることができなかったため、どこに行けばいいのか分かっていなかったのだ。
「そうだわ…………こういうときは、あの天狗よ。」
射命丸文、輝夜は一人の新聞記者の顔を思い浮かべる。
もしかしたら、文ならば何か知っているかもしれない。
知っていないにしろ、協力してもらえる可能性が高い。
「って、どこにいるか分からないのよね…………」
妖怪の山のどこかに家があるのは知っているが、どこにあるかなんて知らない。
そもそも、人里の人間の殆どが知っている、妖怪の山の川の場所すらも知らないのだ。
だんだんと輝夜は、自分の無力さを思い知らされていくことになる。
(永琳や鈴仙、てゐは本当にしっかりしていたのに、私は……………)
こんな風にダメな女なのに、自分はいつも我が儘を言ってきた。
しかし、いざ一人で行動してみると、ろくなことができない。
道に迷うし、言葉で人間に押される。
輝夜は、自分の家族に申し訳ない気持ちで一杯だった。
「…………だめよ、輝夜。妹紅のことよ、妹紅のこと!」
また自分のことを考え始めて、妹紅のことを蔑ろにしそうになった輝夜は頭を横に振る。
自分がいくら非難されても構わない、犯人を捕まえることができれば、何だっていい。
輝夜はそう考え、文の居場所を知るためにある場所へと向かっていく。
守矢神社、そこに住む二柱の神は妖怪の山の住人を呼び出すことができるらしい。
そこて、文を呼んでもらえばいい。
そうと信じて、輝夜は妖怪の山を登り始めた。
半刻ほどかけて、輝夜は守矢神社へとたどり着く。
見ると、境内で東風谷早苗が何やら、洩矢諏訪子と会話をしていた。
「さーなーえー!それ、返してよー!」
「だめです、諏訪子様。これは、没収します。」
「あーうー!!」
諏訪子は手をばたばたと動かして、早苗の手にしていた本を奪おうとしていたが、
頭を押さえつけられていて、全く届いていなかった。
早苗がため息をついた後、その視界に輝夜が入る。
「えっ?か、輝夜さん?」
「隙あり!!」
一瞬、輝夜の存在に気を取られた早苗は、本を諏訪子に取られてしまう
「あっ、諏訪子様!?」
「へへーんだ!」
舌を出し、べーっと早苗に挑発すると、諏訪子は神社の奥へと消えてしまった。
また叱らないといけないな、と早苗は考え、その後に輝夜の元に近づいた。
「輝夜さん、どうしました?こんなところまで、一人で来るなんて………」
「お願いがあるのよ。」
輝夜は先ほどまでのやりとりのことについては触れずに、早苗に妹紅のことを伝える。
「そんなことが…………許せませんね………!」
早苗も輝夜と同じように、怒り始めた。
女性のレイプは、正義感の強い早苗の逆鱗に触れてしまうのだった。
「それで、あの天狗を呼んでほしいの。」
「なるほど、情報を集めるのですね。分かりました、神奈子様にお願いしてみます。」
「ありがとう………え、えっと。」
「東風谷早苗です。」
「あ、ありがとう、早苗。」
「では、部屋でゆっくりしていてください。こちらに。」
早苗は、てきぱきと輝夜を客室に連れて行き、お茶を用意すると、神奈子の元へと向かう。
そのお茶を飲みながら、輝夜はこれからの行動についてしっかりと考えていた。
(さっきから、突っ込みがちだったわね……もうちょっと、考えて行動に出ましょう。)
何の考えもなく、里長の家に行ったのは失敗だったかもしれない。
何一つ、犯人についての情報は得られなかったのだ。
これからは、もっと慎重に行動に出ないと、永琳や慧音のように自分を犯人と信じる者が現れるかもしれない。
少しだけ、輝夜は心配になっていた。
そうこうしているうちに、神奈子が輝夜の元に現れる。
「すまない、遅れてしまったよ。」
「こちらこそ、ごめんなさい。急に押しかけてしまって。」
神奈子は輝夜の前に座り、胡座をかいて、お茶を飲み始める。
そんな神奈子に、輝夜は要件を伝えた。
「妹紅のことは、早苗から聞いた?」
「聞かせてもらったよ。野放しにしておくわけにはいかないねぇ。それで、文の力を借りたいんだね?」
「ええ。あの新聞記者ならば、情報収集も早いでしょうしね?」
「呼ぶのは、簡単だよ。けど、このことが新聞のネタにされる可能性はあるぞ?」
それでもいいのか、と神奈子に念を押された輝夜。
新聞記事にされるかもしれないのを、輝夜はすっかりと忘れていた。
犯されてしまった、なんてことが知れ渡るのは妹紅のためにも避けるべきだ。
(も、もう!どうして、私のやることはうまくいかないのよっ!!)
また自分の行動が完全なものでないと知り、彼女は頭を悩ませる。
どうすれば、これ以上妹紅が傷つかないようにできるのか。
その答えを、輝夜は考え続ける。
「…………もう一人、新聞記者がいるんだ。」
新聞のネタにされることを恐れていると気づいた神奈子は、ある烏天狗のことを口にする。
そちらの方は、文よりも他人のことを考えており、何よりも念写という能力がある。
もしかしたら、文よりもその天狗――はたて――の方が頼れるかもしれない。
神奈子は、そう考えたので、輝夜にはたてのことを提案した。
「その娘の方は、能力の面でも、道徳的な問題でも、助けになるとも思うよ。そっちの方を、呼ぼうかい?」
神奈子の提案に、輝夜は頷くことしかできなかった。
それ以外、自分の頭からはいい案が出てこなかったのだ。
「よしわかった。それじゃあ、はたてを呼びに行くよ。しばらく、待っていてくれ。」
「ええ、分かったわ………」
「そういえば、永琳さんたちはどうしたのですか?」
「そうだ、私も気になったよ。あんた、家族はどうしたんだい?」
早苗と神奈子は、ずっと抱いていた疑問を輝夜にぶつける。
その問いかけは、今の輝夜の心を痛めつけるだけだった。
(そんなの、答えてもしかたないじゃない……)
自分を疑っているから、と答えたところでどうにもならないのだ。
永琳や慧音が自分を犯人と見なしている、その事実を神奈子と早苗に伝えてどうするのか。
自分に同情してもらう?
自分を擁護してもらう?
何のために、妹紅を陵辱した犯人を?
(だめよ!妹紅のことよ、妹紅の!)
自分が疑われている、ということを思い出すたびに、犯人捜しは保身のためだと意識してしまう。
「………何か、事情があるみたいだね。ま、追求はしないでおくさ。」
「しばらく、ここにいますか?」
早苗が、そう提案してきた。
今の様子から、輝夜は永遠亭に居づらそうになっていることを読み取ったのだ。
早苗の推測通り、輝夜は永遠邸に帰ることができなかった。
できるだけの勇気がなかったのだ。
「…………しばらく、ここにいるわ。」
輝夜は、早苗からの提案を受け入れ、神奈子もまた同意した。
神奈子がはたてを呼び出している間、輝夜は早苗に生活をする部屋を用意される。
「あまり良い部屋ではないですが………」
「いいわよ。そこまで我が儘は言わないわ。」
輝夜は早苗にそう告げると、部屋に入って、そこでくつろぎ始める。
「ふぅ……しばらくは、ここで心を落ち着かせましょう。」
先ほどから慌ただしく動き回り、落ち着きが無くなっていることを自覚していた。
こんな調子ではたての話を聞いては、また失敗に繋がってしまう。
そう考える輝夜は、目を閉じて、頭の中を真っ白にする。
これで一度、気持ちを切り替えようとしたのだが、彼女はそのまま眠りについてしまう。
輝夜が里長の屋敷に向かっていた頃、永遠亭は騒然としていた。
鈴仙は、永琳と慧音に向かって、輝夜の無実を訴っていた。
「師匠、姫様は絶対にやっていませんよ!絶対に………」
「私だって、信じたいわ。でもね………これは、疑うしかないじゃない。」
永琳は、目尻に涙を浮かべながら、鈴仙にそう言い放った。
輝夜が妹紅陵辱の犯人だとは信じたくない。
けれども、輝夜が何も言わずに永遠亭から去ることなど今まで一度も無かった。
それでも永琳は輝夜を犯人とは信じていないが、慧音は完全に輝夜を犯人と見なしている。
「お前たちには悪いが、一度輝夜を捕らえる必要があるな。一人でやらせてもらうぞ。」
慧音は怒りの籠もった目で永琳たちを睨むと、そのまま部屋から出て行った。
「輝夜はそんな娘じゃ………輝夜は…………」
永琳の目から、涙が止めどなく流れ出す。
鈴仙は、そんな永琳の頭をただただ抱きしめることしかできなかった。
慧音は爆発しそうな感情を抑えながら、人里へと戻っていた。
輝夜の姿を見た者がいないかを、慧音は人里で聞き始めたのだ。
念のために聞いておこうと思っただけだったが、慧音は思わぬ収穫を得る。
「確かに、そんな格好の娘が通りましたよ。」
「里長の屋敷に向かっていきましたぜ。」
「銀髪で刀を持ってた女の子に、土下座させてたような………」
輝夜は間違いなく人里に現れ、里長の屋敷にまで出向いていた。
妖夢に土下座をさせたというのが何を意味しているかは分からなかったが、
輝夜の行動が奇怪なものであることは、慧音の目には明らかだった。
慧音は、里長の屋敷に向かう。
下男はすぐに慧音を屋敷に入れて、里長がいる部屋へと連れて行った。
「これはこれは、慧音様。ちょうど、慧音様の元に行こうと思っていたところです。。」
「輝夜が来たらしいが、何を言ってきた?」
「そのことでお話が…………」
「ふむ…………教えてくれうるな?」
里長は慧音の姿を見ると、輝夜との面会について話し始める、
「それなら………犯人捜しを始めただけ、なのかもしれないな。」
慧音は、里長の話を聞き、少しだけ輝夜への疑いが弱まった。
怒りに身を任せて、自分が早とちりをしてしまったのではないか。
そう考えて、慧音は反省し始める。
「それで、彼女は人間が犯人だと答えたのだが………」
「………ちょっと待て。それは、何を根拠に言ったのだ?」
里長のその言葉に、慧音は引っかかる。
妹紅を犯したのは人間であると、慧音も思っていた。
しかし、そう決めるつけることができるほどの証拠など、まだどこにも無かったはずである。
その根拠を、もしかしたら、輝夜は手にしているのかもしれない。
慧音は、里長からの回答を期待した。
しかし、その期待は裏切られるだけでなく、輝夜への疑いを復活させてしまった。
「確か、永琳殿が言っていたと。」
「…………………永琳が、人間を犯人だと?」
妹紅を搬送してから、慧音は永琳とずっと一緒にいた。
しかし、そんな言葉を永琳は発していない。
まだ怒りの収まっていない慧音にとって、その答えは聞き捨てならぬものだった。
もしも、犯人が人間でなかったら。
それならば、人間からの永琳の評価を地に落とすことも可能である。
人間に濡れ衣を着させようとしたとして、永琳に濡れ衣を着させることが可能だ。
ただ人間が犯人だったら、効果が無いかもしれない。
だが情報工作など、やろうと思えば誰にだってできる。
妹紅と永琳。
人間に信頼されているのは、妹紅である。
確かに、永琳は人里にも頼られているが、やはり距離は置かれている。
それに対して、妹紅も永琳同様に頼られているが、永琳よりは親しみやすくあった。
もしや、輝夜は永遠亭を破滅に導こうとしているのでは?
それなら、理由が見当たらない。
一体、何のために輝夜は…………
慧音は、妹紅にも度々言われていたのだが、こんな風に考えすぎることが多かった。
普段なら、妹紅が慧音に助言をしたりするのだが、その妹紅がいないのだ。
慧音の暴走が止まらなくなるのも、致し方ないことだった。
そして、慧音は里長の屋敷から外に出る。
目指す場所は、妖怪の山にある文の自宅。
慧音は、妹紅陵辱の犯人を見つけるために、文に協力を求めようと決心したのだ。
「姫様、どこに行ったの……?」
因幡てゐも慧音や輝夜同様に、犯人捜しに向かっていた。
てゐは、輝夜を犯人とは一切思っていない。
たとえ、永遠亭から黙って抜け出していようとも、それぐらいで輝夜を疑うわけがなかった。
「文に聞くしかないのね…………面倒ウサー」
自分の友人の文ならば、何か情報を手に入れているかもしれない。
彼女ほど情報収集能力が高い少女はいないのだ。
そして、妖怪の山に行こうと決心したとき、てゐは一人の少女と出会う。
「む、妖夢?」
「あ、てゐさん?」
冥界の管理者の従者、妖夢とてゐは出くわす。
いつものように、お使いで人里まで来たのだろうと考えた。
「妖夢、今日は何を買いに来たウサー?」
「え、えっと………お、お団子を。」
ちょっと言い詰まりそうに答えた妖夢に、てゐは笑いながらこう返す。、
「ほうほう、まだまだ幽々子は食いしん坊なのね………大変ウサー」
てゐはいつものように談笑を交わそうとしたが、妖夢はあることをてゐに伝えた。
「てゐさん、先ほど輝夜様が私を会いました。」
「な、何だって!?」
その言葉を聞いたてゐは、大声を上げて、妖夢に掴みかかる。
突然のことに、妖夢は驚き、地面に倒れてしまった。
「て、てゐさん、落ち着いてください!それで輝夜さんは、人里で、どこかに向かおうとしてましたよ。」
押し倒されながらも、妖夢は冷静にてゐにそう答えた。
「そう……………ごめんね、妖夢。それと、ありがとう。」
妖夢の上からどいて、彼女を起こすと、てゐは礼を言う。
「いえ、お礼なんて………と、当然のことをしたまで。」
服に付いた泥を払いながら、妖夢もまた言葉を返した。
てゐは、次に向かうべき場所を見つけたために、すぐにそこへ向かおうとする。
目指す場所は、人里における聞き込み。
そう決心しようとしたとき、最後の妖夢の言葉に引っかかる。
「それでは、てゐさん。妹紅さんを襲った犯人を見つけられるといいですね。」
「うん、ありがと…………………え?」
てゐは妖夢の横を通り抜けて、人里に向かおうとした。
しかし、妖夢がなぜ、妹紅が襲われたことを知っているのか。
輝夜が妖夢に妹紅のことを伝えているのだが、そのことをてゐに伝えなかったのだ。
(考えてみると、そうだよね………ん?そういえば、どうして姫様のことを真っ先に?)
真っ先に、輝夜のことを自分に言ってきた妖夢の対応。
よくよく考えてみると、それは不自然なものだった。
もしかしたら、妖夢は何か隠しているのでは?
だから、輝夜のことを真っ先に自分に伝えた。
何か真実を知っているから、もしくは―――
「ま、まさかあの娘がねぇ…………ちょっと、追いかけてみるかな。」
人里の方に向けていた足を、てゐは妖夢のいた方に向ける。
そして、こっそりと姿を見られないように後を追う。
全て杞憂で終わってほしい、と心の中で願い続けながら。
場所は変わり、ここは文の自宅。
そこでは、文とはたてが女性陵辱事件の犯人捜しをしていた。
「文、いる?」
「どうしたのよ、はたて。」
念写された写真を見つめて、犯人についての手がかりを探している文にはたては声をかける。
「どこでこれが行われたか分かる写真があったわ。」
「ほんと!?」
文は声をあげて、はたての手にしているカメラの画面を見た。
そこに写っていたのは、今まで見てきた写真と女性と男性たちの位置は変わっていない。
しかし、背景にはっきりと竹が写っていたのだ。
「竹林………なるほど、あそこならば見られないわね。」
「ええ、ただでさえ迷いの竹林だか…………迷わないで、どうやって行き来するのかしら?」
はたては、この男たちは迷ってしまうのではないかと考えた。
「誰か案内人でもいるの?」
「ええ、案内人な………まさか、妹紅さん…………?」
「あ、文?」
文は、写真を全て撮りだし、女性の特徴が見分けられる場所はないかと探し始めた。
顔に冷や汗が流れ始めていることに、はたては気づいた。
「ど、どうしたのよ?」
「毛が少しでも写っていれば…………銀色だったら、最悪よ。」
一枚、一枚と写真をじっくりと眺める。
女性が無残にも体を汚されていく写真、それらを全部、隅々まで見る。
最後の一枚、それを細かいところまで見ていくと、ついに文は女性の特徴を見つけた。
銀色の毛が、しっかりと写真に写っていた。
「妹紅、さん……………?」
銀髪の少女など、幻想郷には数えるほどしかいない。
それに、この体つきは、妖夢ではないと文は判断していた。
この体つきで、銀髪、そして竹林にいる可能性が高い人物は、ただ一人。
「間違いないわ………妹紅さんが被害者よ。」
「やっと分かったのね!それじゃあ、その人を恨みに思う人を………」
妹紅のことを知らないはたては、誰が被害者が分かった途端にテンションが上がる。
ところが、文ははたてと対照的で、落胆していた。
「あ、文?大丈夫……?」
「………絶対に、捕まえてやるわ。」
はたてが声をかけたときには、文の感情は怒りに支配されてしまう。
自分の知り合いを好き勝手にされることは、仲間意識の強い天狗にとって侮辱そのものだった。
全プライドをかけて、この男たちの正体を突き止めてやる!
文は、胸のなかでそう決心し、さらに写真を細かく見始める。
「…………私も私で、がんばらないとね。」
そんな文に圧倒されたはたても、黙って手がかり探しを再開する。
こうやって、数刻経ったとき――ちょうど、輝夜が神奈子との対談を終えた――に、はたてに報が来る。
『至急、守矢神社に来るように。』
その知らせを聞いた、文とはたてはほぼ同時に首を傾げる。
「何かあったのかしら?はたて、何か思いつく?」
「いいえ、全然思い浮かばないわね。てっきり、あんたが何かしでかしたかと思ったわ。」
「そ、そんなに悪いことばかりしてるわけではないわ!」
「はいはい、自分の悪事を認めてどうするの。」
「ち、違うわ!今のは、話のノリというか………って、はたて!?」
いつものようなやりとりを交わした後、はたては守矢神社へと向かっていった。
「ふぅ………それにしても、この男たちの手がかりが見つからないわねぇ。」
はたてが守矢神社に飛び立ってからも、文は写真を調べ続けていたが、犯人に関する有力な情報は手に入れられない。
やはり、外に出なければならないのか、と文は考えるが、もう少しだけ調べてからにしようと決心する。
そんな文のいる家の玄関扉をドンドンと叩く者が現れた。
「あら、私にも招集がかかったのかしら?」
文は自分も呼ばれるのだろうかと思い、何の警戒も無く、玄関扉を開ける。
「どなたでし――――っ!?」
てゐは、妖夢の後を追いかけていくうちに妖怪の山へと足を踏み入れていた。
そして、文の家に近づいていることに気づく。
「文に用があるのか………」
文の家が見えてきて、妖夢が家に入るのを見ていた。
(ノックも無しに入るなんて………鍵もかけてないのも、問題だけどね。)
すんなりと家に入る妖夢を見たてゐは、家に近づこうとする。
すぐ近くまで近づいたのだが、その時に妖夢が突然、文の家から外に出てきて、てゐはすぐさま近くの茂みに隠れた。
(な、何があったのよ。ものすごく慌てているようだったけど………)
しかし、妖夢は文にヌード写真を撮らせてくれ、と言われただけだろうと思っていた。
そう考えるのも、仕方がない。
文はよく、このネタを使って、他人をからかうことがあったのだ。
鈴仙も、一度文の家に入ったとき、突然外に出ることがあった。
鈴仙も妖夢も、裸とかそういうものには敏感なのは一緒だった。
「でも、文に何の用だったんだろう………それよりも、今日の妖夢は変ウサー」
文に話を聞いても良かったが、妖夢の行動があまりにも奇妙だったために、てゐは妖夢の後を追うと決心した。
「妖夢は、おつかいに来たんだよね………やっぱり、おかしいウサー」
考えれば考えるほど、妖夢の様子がおかしいようにしか思えなくなるてゐ。
いつの間にやら、気づかれないように走って、てゐは妖夢の後を追いかけていた。
てゐと妖夢が、文の家から離れて数十分後。
「やっと着いたな。」
慧音は文の家の前に立っていた。
「しかし、妖怪の山の道というのは不便なものだな。」
そんな愚痴を漏らしながら、慧音は文の家の扉を叩く。
何回か叩いてみたが、中から全く返事が来ない。
「ふむ、留守か。」
留守ならば仕方がないと思ったが、念のために口で呼びかけようと慧音は思った。
玄関を叩きながら、大きな声で文に呼びかける。
「おーい!文、いないのかー?ちょっと、頼みたいことがあるんだがー!」
しかし、家の中から返事は来ない。
これは留守だ、と慧音は判断して、守矢神社の神奈子に頼み、文を呼んでもらおうと考える。
その時、玄関扉がほんのわずかだけ、開いたことに気づいた。
「何だ、いたのか。文、お前に頼みがあるんだ。」
玄関扉を開け、慧音は文の家の中へと入る。
家の中の光景を見て、慧音は愕然とした。
文は玄関近くに倒れ伏しており、文の部屋の中は荒らされていたのだ。
しかも、写真の大きさぐらいの何かが大量に灰になって、落ちていたのだ。
「文!文、しっかりしろ!」
地面に倒れ伏す文を抱え、慧音は声をかける。
体に触れると体温が低くなっており、息はしていたが、文の体かなり弱まっているようだった。
口からは血を流し、顔や腕に打撲の痕があった。
「これは………証拠隠滅のためか。」
何の証拠を消そうとしたかは分からない。
だが、何か良からぬことが怒っていることだけは確かだった。
慧音は、文の家に他には誰もいないことを確認すると応急手当を行った。
幸い、文の家に医療道具があり、永琳特製の薬もあったために、慧音でも手当は行えた。
そのとき、文の胸の中に、一枚の写真が残っていることに気づく。
「これは………………も、妹紅の………?」
その写真は、竹林で犯された女性が妹紅であることが一番分かる写真だった。
文はその写真を命がけで守ろうとしたのだ。
頭を殴られ、腹、顔を何十回と殴られようとも、その写真を守り通した。
もしかしたら、文もグルだったかもしれない。
けれど、この様子では文は真実を伝えようとしただけなのだろう。
「文……………お前の意志、しっかりと私が受け継ぐからな。」
今まで、文のことを快く思っていなかった慧音。
その慧音がはじめて、文のことを認めた瞬間だった。
そして、文の持っていた写真を手にして、慧音は考える。
(誰かがバラまこうとするなら、写真を奪うだけで済む……が、燃やした紙片の数が多いな。
写真を全部、燃やしている可能性も少なくない。となると、文はグルではないだろうな。)
家の状況から、慧音は文を襲った者たちの意図を推測する。
ふと、慧音は文が倒れている地面を見る。
そこには、銀色の髪の毛が落ちていたのだ。
長さから自分のものではないので、誰の者なのかも分かる。
「……………ふふ、まだまだ甘いな。」
銀色の髪の毛を持ちながら、慧音は誰がこの家に来たのかを考える。
銀髪の人妖など、妹紅を除けば、残りは数人である。
「手がかりは見つかったぞ。これで、少なくとも犯人の一人は分かるな。」
ひとまず永遠亭まで文を連れて行こうと、慧音は文を抱えて、家から離れていった。
「どういうこと………?」
「この銀色の髪の毛、見覚えはあるな?」
文を搬送した後、鈴仙に治療を任せた永琳は慧音と髪の毛のことについて会話を交わす。
「この髪の毛…………あの娘のよね。」
「そうだ。そして、文の近くに散乱していたのだよ。」
その言葉が真意を捉え、永琳は一番怪しいのが誰なのかを理解した。
「妖夢…………もしくは、幽々子なのね。」
「ああ、間違いないだろう。」
永琳は、輝夜が犯人でないと知り、嬉しくもあったが、不安でもあった。
これが幽々子の命令による妖夢の行為だったら、相当手間がかかる。
彼女は、幻想郷でも屈指の実力者なのだ。
罰を下そうとしても、幽々子の親友である八雲紫を何とか説得しなければならないのだ。
「紫の力が必要か………となると、霊夢に会わないとな。」
「それじゃあ、私はあの子の治療に戻るわね。無茶はしないでよ、慧音?」
「ああ。」
そして、永琳は慧音を後にし、文の元に戻っていった。
「師匠、文さんの傷も治りそうです。」
「そう。貴方も成長したわね、ウドンゲ………」
永琳は、鈴仙の頭を優しくなでた。
「師匠………姫様が…………?」
「いいえ、違うわ。もうあの娘は犯人じゃないわよ。」
永琳は、輝夜が犯人の可能性は無くなったと伝えた。
その言葉を聞いて、鈴仙は表情を明るくする。
「よかったぁ…………やっぱり、姫様が妹紅をあんな目に遭わせるわけがないですもんね。」
鈴仙は、満面の笑みでそう答えた。
鈴仙のそんな笑顔を見て、永琳は少しだけ元気になる。
「さぁ、ウドンゲ。私たちは、この子たちの体を治して、輝夜の帰りを待ちましょう?」
「はい!」
鈴仙は、大きな声で頷くと、文と妹紅の身の回りの世話をし始めた。
「そういえば………誰が犯人なんですか?」
ふと、鈴仙は思い出したように永琳に尋ねる。
その問いかけに、永琳は正直に答えた。
「妖夢と幽々子が怪しいわ。この子の家に、銀色の髪の毛が落ちていてね。
長さから考えて、私や慧音ではないわ。もちろん、妹紅でもない。となると………」
「妖夢……ですね。」
その通りよ、と永琳は呟く。
鈴仙が即答しても、おかしくはない。
なぜなら、幽々子や妖夢はよく永遠亭に遊びに来ているのだ。
理由は無茶苦茶で、『妖夢の目を治してもらったお礼に、人参を貰いに来たわ〜』が最初である。
しかし、永琳たちは迷惑してなかったし、逆に幽々子がお酒を持ってくることもあった。
そのため、彼女たちは幽々子と妖夢に少しだけ好感を持っていたのだが………
「どうするのですか?」
鈴仙は、幽々子と妖夢をどうするつもりなのかを、永琳に尋ねる。
「まだ犯人と確定したわけじゃないけど………霊夢と紫に任せるわ。」
「そうですか…………」
鈴仙の顔が俯く。
そんな愛弟子の頭を撫でて、永琳は慰めの言葉をかける。
「心配しないで、ウドンゲ。何があっても、あなたは守ってあげるわ。」
「ししょぉ…………」
少しの間だけ、涙目になった鈴仙をだきしめると二人は再び治療を再開する。
「大丈夫よ。みんな、きっと元に戻るわ…………」
最後に鈴仙にそう言うと、永琳は治療に集中し始めた。
幻想郷の東に属する、博麗神社。
そこで、紙に包まれた銀色の髪の毛を霊夢と紫、そして慧音が目にしていた。
「本当なのね?これが、文の家にあったのは嘘偽りはないわね?」
「ああ、間違いない。この命を差し出しても、構わん。」
慧音は、紫に対してそう答えた。
その態度に、慧音は嘘をついていないと知る。
たとえ、間違っていたとしても、罪には問わないと決めていた。
「で、紫。本当に、妖夢のだと思う?」
霊夢は純粋にそう尋ねる。
その問いかけに、紫は首を縦にも横にも振らずに、こう答えた。
「それは、私がこれから調べるわ。慧音、貴方はしばらくここで待ちなさい。」
「分かった。では、少しの間だけ世話になるぞ。」
「それじゃあ、私は行ってくるわね。」
そう言い残して、紫はスキマを展開し、中へと消えていった。
残された二人は、霊夢の用意したお茶を飲みながら、紫の帰りを待ち続ける。
(しかし、輝夜は一体どこに…………)
犯人の可能性は無くなったが、輝夜の居場所が未だに分からない。
それが慧音が今、一番心配していることだった。
「お茶がおいしいわね………」
そんな心配をよそに、霊夢はいつものようにお茶を嗜んでいた。
場所はさらに変わり、守矢神社。
ついに、はたてが輝夜の前に姿を現す。
「神奈子様、ただいま参りました。」
「あぁ、来てくれたね。このお姫様が、あんたに用があるんだ。」
「何でしょうか?」
はたては、前髪を揃え、後ろ髪の長い少女と対面する。
輝夜は、やっと来たか、と不満を言いそうになるが、要件を端的に伝える。
「藤原妹紅が襲われて――」
「えっ!?」
はたては、さきほどの写真でレイプされている女性の名前が出てきたことに驚く。
「ど、どうしたの?」
「も、妹紅って………その人、私の念写に襲われているところが写っていました。」
はたてから伝えられた事実には、神奈子と早苗すら驚愕してしまう。
「それじゃあ、証拠の写真はあるのね!!」
「は、はい。現像したものは、友人の文が持っていますが、カメラにはちゃんと………」
そして、はたてはカメラを輝夜に見せる。
顔ははっきりと写っていなかったが、女性――妹紅――が犯されているのが分かった。
「妹紅…………ごめんね、妹紅…………」
写真を見た輝夜は、悔しさのあまり、謝罪しながら涙を流し始める。
はたてはどうすればいいのか分からず、あたふたと慌てる。
しかし、早苗が近づいて、輝夜の背中を撫でた。
「大丈夫ですよ、輝夜さん。私たちも協力しますから…………ね?」
「ぐすっ…………ごめんなさい…………それで、この男たちのことを調べてほしいのよ。」
「は、はい。それぐらいなら、全然やりますよ。」
はたては心を落ち着かせて、輝夜の申し出をあっさりと承諾する。
輝夜はそんなはたての両手を持ち、ありがとう、と感謝した。
「私らもできる限りのことはさせてもらうよ?」
「これも幻想郷のためですからね!」
神奈子と早苗も、妹紅陵辱の犯人捜しに協力すると決意する。
これならば、うまくいける。
妹紅を襲った男たちを捕まえることができる。
そう安心した輝夜は、これから妹紅をどう支えていけばいいかを一人考えていた。
しかし――――運命はまた、少女に牙を剥くことになる。
私の書く守矢一家は産廃っぽくない………
上海専用便器
作品情報
作品集:
20
投稿日時:
2010/09/04 06:18:25
更新日時:
2010/09/04 15:18:25
分類
輝夜
永琳
慧音
妹紅
鈴仙
てゐ
文
はたて
妖夢
守矢神社
結界組
今後、彼女達の泣きっ面を拝めると思うと、もう…。
中途半端に的中した推理や、物証がパラパラと出てきて、捜査に当たる者達の連携がぐちゃぐちゃと来ていますね。
これは、壮絶な誤解や敵視が起きて、やがては武力衝突の予感。
前回のシリーズでは不安が的中して、腑抜けになった霊夢や紫、慧音先生が活躍することを…、
あまり期待していません。
守矢一家の居候となった輝夜姫の明日はどっちだ!!
でも銀髪と言えば咲夜さんも忘れないであげてください…。
一発で妖夢と疑うのはよくないです。
気にせずそのまま書いてください
しかしこれからどう転ぶのか気になるなー
上げて落とすっぽいし
なっていくのかな?
まだ序盤って感じで先が読めない。楽しみだ。