Deprecated: Function get_magic_quotes_gpc() is deprecated in /home/thewaterducts/www/php/waterducts/neet/req/util.php on line 270
『むし』 作者: 曇川

むし

作品集: 20 投稿日時: 2010/09/04 15:48:17 更新日時: 2010/10/10 17:22:49
なんだか体が重い。
最近ずっとそうだったけど、今日はことさらにひどい。

見渡す限りの竹林に、明るい月が見下ろしてる。
なぜだか誰かを思い出して、なんだか腹がたった。
こういう時は少し動けばすっきりするものだ。

なのに体が重くて動けない。

「あんまり無理に動かないでくださいよ、もうあなただけの体じゃないんですから」

ふいに頭上から声が聞こえた。
その声の主よりも、言葉の内容が気になった。

私はいつの間にか身ごもったのだろうか。
結婚でもしたか。

いやいや違う。
だって、私はそんなことを許される身ではない。

…なぜだっけ?

「ほら見てください」

声の主が私の頭を少し持ち上げた。
そこに見えたのは私の。

「…え?」

大きく膨れた腹だった。

「私とあなたのかわいい赤ちゃんですよ」

人里で妊婦を見たことがある。
幸せそうに笑っていた、彼女の腹を撫でさせてもらった事を思い出した。
でもその記憶に似ても似つかないほどに、私の腹は膨れていた。
一般的な胎児の大きさなんて知らないけれど、寺子屋で勉強しているような子供が入ってるといわれた方が、納得できるほどの大きさで

「うあ…あ…」

早く出たがるように暴れていて、腹がボコボコと波うっていた。
それを見て、痛覚が復活した。

「か…っく…」

なのに叫び声が出なかったのは、単に腹に入っている何かに内臓や肺を押しつぶされていたからだ。

すっと、
頭を撫でられた。
正確には苦しみで、頭を触られた感覚しか分からなかった。

「もう少しですよ、がまんしてくださいね」

穏やかな声が、この状況に似合わない。
だんだんと苦しみが増していくのが分かる。

息が、できない。

ブチィ

何かが千切れた音が音がした瞬間、

「ぐあああああああああああ!」

押さえつけられていたものがなくなり、声が出た。
腹が、破けたのだろうか。

カサカサカサカサカサカサカサカサ

耳元で乾いた音がする。

「ほら、ちゃんと見てくださいよ」

あの穏やかな声が私の頭を無理やりあげる。
そこからは、

「あぁ…あ…」

虫が、虫が、虫が、虫が。
腹から大量の蟲が。
ずるずると。
這いずり出てくる。

「かわいいですよね」

腹から出てきた虫たちは、ぞろぞろと体を這いまわる。

「ほらお母さん、子供たちがお腹をすかせていますよ」

体を這いまわっていた虫たちが、太ももの内側や、食い破った腹などに集まってきた。

鈍い、痛みが広がる。

もう感覚が鈍って、何が起こっているのかわからない。
ただ持ち上げられた顔についた目が、淡々とその様子を脳に伝えていた。

食われている足が。
削れていく腹が。
骨が見えている。
血は出ていない。

ふと頭に小さなかゆみを感じた気がした。

そしてふいに力が抜けた。
一瞬、私の頭を支えている人の顔が見えた。

長い触角が二本。

それだけが最後に見えた。



   ◇      ◇



「うわああああ!」

目が覚めたようだった。

体中には汗が噴き出していて、服が肌にひっついていた。
視界には、見渡す限りの竹林に私は横たわっていた。
なんてことはない、いつもの光景だ。
私はいつも竹林で寝ているからだ。

「…」

私の腹に穴はない。
もちろん膨れてもいないし、体にはかすり傷すらない。

だからといってあれが夢だったと信じることはできない。
私は不老不死で、けがなんてものはすぐに再生してしまうからだ。

あの痛みが夢でない可能性はあるけれど、それを証明することができなかった。

「どうしたんだ、妹紅。またこんなところで寝ていたのか」

耳に届いたのは、枯れ草を踏む音と

「けー、ね…?」

心配そうにこちらを見る慧音だった。
私の表情をみると、驚いたような顔をして寄り添ってきた。

「どうしたんだ妹紅、ずいぶんと顔色が悪いぞ」

本当に心配してくれる慧音が心強い。
心が折れていたのだ、私は。

「あのね、慧音…」

だれかに寄り添ってほしかったのに、

「どうしたんだ?」

虫が。
慧音の体の大きさを超えるような、ムカデのような虫が。
慧音の後ろにまるで食いつこうとするように存在していた。

腹の痛みが小さくよみがえる。
守らなくてはならないのに、動くことはできなかった。

そして虫も動かなかった。

牙のような口の先端が慧音の首に当たるぎりぎりで止められていた。

まるで何も言うなというように。
私にはそういう風にしか見えなかった。

何も言えなくなってしまった私を、慧音は優しく抱きしめてくれた。
温かく、頭を撫でられる。

「怖い夢でも見たんだな、妹紅。大丈夫だ、私がついているからな」

そういうと、慧音は私に口を近づけてきた。

「怖い夢は私が食べてやるから、もう大丈夫だからな」

もうあの虫はいなかった。

意識を失う前に、
上白沢が夢を食べる妖怪だったかを少し考えた。



     ◇      ◇



なんだか、体が重い。


fin.
「お疲れだったな、リグル」
「こんばんわ慧音先生。妹紅さんはどうですか?」
「今記憶を喰ったから眠っているよ」
「ではまた妹紅さんに虫たちを寄生させにいきますね」
「わかったよ」
「でもなんで慧音先生は私に協力してくれるんですか?」
「特に理由はないさ」
「そうですか。まあ私は虫たちの食事に困らないので大歓迎なんですけどね。それでは」
「うむ、またな」

(あの妹紅がすがるような目で見てくるこの感覚がたまらなく気持い。これをやめることなどできるものか)



おはこんばにちは、曇川です。
妹紅に「あなただけの体じゃないのよ」って言いたかったがだめにできたお話です
もこがあたまにかゆみを感じた時に髪の毛抜いたって設定ですが
髪の毛一っぽんでも残っていれば再生するってことは
髪の毛全部燃やして体を残さず喰ったりすれば
もこは死ぬってことなんでしょうか
お粗末
駄文乱文失礼いたしました
曇川
作品情報
作品集:
20
投稿日時:
2010/09/04 15:48:17
更新日時:
2010/10/10 17:22:49
分類
食人
リグル
妹紅
慧音
1. 上海専用便器 ■2010/09/05 11:44:29
いいぞリグル、もっとやれ

>>もこは死ぬってことなんでしょうか
体が消滅しても、もこたん大好きなみんなの心の中で生き続けるはずさ!
2. 名無し ■2010/09/05 11:59:58
マジレスすると食った奴の排泄物からもこたんが誕生して慧音がスカに目覚める。
3. 名無し ■2010/09/05 12:04:32
>>2
その発想が出てこなかった自分が恥ずかしい
4. 名無し ■2010/09/05 14:36:54
髪の毛一本は吸血鬼では?
5. 名無し ■2010/09/05 23:20:06
富江ェ・・・
6. 穀潰し ■2010/09/06 15:42:11
寄生→出産→共食いとか何という俺得。
遂に虫寄生の時代がやってきたか……!!
これはキーボードに向かわざるを得ない。そして>2氏の発想に脱帽。
7. 名無し ■2010/10/03 15:39:31
まぁ再生ってのは少々無理のある設定なのだから、もこたん全部を消しても無理でしょう。
>2やめてくれ。
名前 メール
パスワード
投稿パスワード
<< 作品集に戻る
作品の編集 コメントの削除
番号 パスワード