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『幻想侵略記6』 作者: IMAMI
「………あれ、何かしら?」
風見幽香はいつものように太陽の畑の向日葵の世話をしていると、上空を何かが飛んでいるのを見た。
「………マジックアイテムかしら?でもあんなの見たことないわね」
グラマンアグキャット。外の世界でそんな名前がついている五機の複葉機が編隊を組んで飛んでいた。
「幽香ー。あれなぁに?」
傍らにいたメディスン・メランコリーが幽香に訊いてくる。最近彼女はよくここに来る。なんでも毒を持たない花のことも知りたい。とか。
「妖怪の山の新発明かもしれないわ」
妖怪の山の連中がだいだらぼっちを創ったというのは記憶に新しい。
「さて、と」
幽香は傘の先端をグラマンアグキャットに照準を合わせる。
「落とすの?」
「当然」
勝手に入る方が悪いのだ。一つや二つぐらいおとしても文句ないだろう。
幽香は魔力を込めて傘から極太の高エネルギーレーザーを放った。閃光と轟音。
レーザーはその二つを纏って一機のアグキャットの左翼を消し飛ばした。左翼を失ったアグキャットは揺れながらバランスを失い、地面に軽飛行機相応の音を立てて墜落した。
アグキャットの残骸から煙が立ち上る。
「幽香すごぉい!」
感嘆の声を上げるメディスン。
「あ、私達の方に来るよ」
「へぇ…どうやら全部落としても良さそうね」
幽香が傘を振るったとき、編隊は幽香達の真上にさしかかった。と、そのとき、アグキャットは翼の後ろ辺りから霧を放った。
「―――なにかしら?霧?
きゃぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
霧が幽香の身体に付着した瞬間、幽香の身体は激痛に襲われた。
「痛い!痛い!痛い!」
「幽香!?」
メディスンが踞る幽香に触れる。
「毒だ!すごい強い毒だよ!
花が枯れてる!」
メディスンが辺りを見回すと輝くような花弁と、力強さを見せていた茎を持った向日葵がどんどん色褪せていく。
枯葉剤をアグキャットが散布しているのだ。
「!! 花が枯れてるの!?」
幽香が痺れる身体に鞭を打って立ち上がる。
「幽香!」
「メディ………大丈夫よ」
幽香は端正だった顔に笑みすらも浮かべてメディスンに優しく言った。
「花………かれちゃってる…………」
「幽香!あれ!」
メディスンが再び声を上げて花畑の一点を指した。
「………
あれは………」
枯れた花を轢き潰しながら、鉄の塊に巨大な筒が刺さったような物体がこちらに向かって来ていた。恐らく空を飛んで毒を撒いている悪魔と同じ系統の物だろう。塊の上には長髪の男が座っていた。
「なっ、何よアンタ!」
長髪の男はメディスンの声が聞こえてないかのようにひらり、と鉄の塊から降り、後ろに下がって二人から離れた。
そして───
「!?」
メディスンにはその筒から閃光が迸ったかのように見えた。そう感じた時には鉄の塊、戦車ルクレールの主砲52口径砲からタングステン弾が轟音と爆煙と共に撃ち出された。残忍な破壊力が二人を蹂躙し、バラバラにする。
筈だった。
「うっ………くく………!!」
タングステン弾は幽香の人間の強度を遥かに超えた手のひらによって受け止められていた。
「幽香!」
「嘘だろ………!?」
だが、幽香も無傷では無かった。両手で止めたため、両腕の骨は歪に折れて皮膚を突き破っていた。日傘は吹き飛んでズタズタになり、無惨な姿になって転がっている。
「ぐっ………」
ドサッと土の上にタングステン弾が落とされる。
「なんで受け止められるんだ!2トントラックですら直撃したら木っ端微塵に………!」
「あんた………」
幽香が長髪の男を睨む。そこには向日葵のような微笑はなくなり、魔界の悪魔そのものだった。
「もう後悔すらさせないわ。殺してやる………!!」
幽香は日傘の残骸を折れた腕で拾うと、分身した。日傘の残骸を折れた腕で持ったボロボロの幽香が二人になる。
「ちっ、主砲は暫く動かないが、機銃はあるんだよ!」
長髪の男の指揮で戦車はメディスンに機銃の銃口を向けて銃弾を放った。
「メディ!」
幽香の片割れがメディスンを庇い、銃弾で肉体を抉られる。
「死ねっ!」
幽香の傘から魔力の閃光が轟き、先端からアグキャットを撃ち落としたものの何倍もの出力のレーザーをルクレールに向けて放った。空間を切り裂くレーザーが現代兵器を蹂躙し、破壊する。
「ぐわぁぁぁあっ!」
長髪の男が爆風に巻き込まれ、ふっ飛ばされる。戦車は砲身がちぎれ飛び、キャタピラーもシールドごと壊されている。
「ぐっ…」
「次はお前だ!」
幽香がゆらゆらと腰が抜けた長髪の男に近寄る。
「幽香………」
それを見つめるメディスン。だが次の瞬間、爆発音によってその顔は凍り付いた。
幽香が戦車の真横に来たとき、その戦車が自爆したのだ。
爆炎と粉塵が既に死に絶えた花畑を舞台に舞う。
「ははっ!油断したな化物がぁっ!」
長髪の男が立ち上がると、数機のアグキャットが爆心地を低空飛行して爆煙を吹き飛ばす。薄くなった煙越しに長髪の男とメディスンの顔が見える。
「あっ………あっあっ………」
今度はメディスンが座り込む。
「いいもの見せてやるよガキ」
長髪の男はメディスンに近寄り、何かの塊を投げつける。メディスンは自分に張り付いたそれを見た。肉の塊から緑色の毛が伸びた物体。風見幽香の、バラバラに吹き飛んだ幽香の頭皮の一部だ。
「いや………いやっ!」
メディスンはそれを放り出し、頭を抱えて踞る。
「手間かけさせやがって………死ねや」
長髪の男は懐から拳銃、ジェリコを取り出してメディスンの小さな頭に銃口を突きつけた。
ゆっくりと、引き金を弾いた───
「誰かっ!誰か助けて!」
人里に二人の妖精が現れた。
傷だらけの緑色の髪をした妖精を水色の髪をした妖精が背負っている。湖の大妖精とチルノだ。
里を行き交う人間が二匹の妖精に目をやる。だが特にそこまで関心は持たない。
「お願いだから!大ちゃんを助けて!」
チルノは浅黄色の着物の女性に近寄って懇願する。
「えっ…ちょっと………」
「お願いしますっ!医者を呼んで!」
「何の騒ぎだ?」
すると青い髪をした特徴的なワンピースの女性がをかけた。傍らには赤みがかった茶髪の女性もいる。
「あ、慧音様…
この妖精がちょっと………」
「ん?チルノじゃないか。どうした?」
慧音はチルノに気づき、優しく話しかけた。
「わからない!なんか、なんか突然天狗と河童があたい達を襲ってきたんだよぉ!」
チルノは泣きながら慧音に説明する?
「河童と天狗だと!?男か?」
「うん!そう!あいつらが妖精をたくさん殺して………生きている妖精の服を脱がして………それから………」
「そこからは言わなくていい。小兎姫」
慧音は傍らにいる女性の名を呼んだ。
「ええ。間違いなくあの囚人部隊よね。でも、妖精ってすぐに復活するんじゃなかったかしら」
「そうだ。復活しないのか?」
「しない!しないの!みんな死んじゃった!生きてるのはもうあたいと大ちゃんしかいないと思う!助けて!」
チルノは必死に泣きながらそう説明する。
「チルノ………」
慧音はチルノを見つめ、そして言った。
「すまない。妖精を保護する余裕はこちらにはない」
「えっ………?」
「今はこちらも大変なんだ。わかってくれ」
「じ、じゃあ、大ちゃんは………!」
「すまない。今は………」
慧音は歴史を司る魔力で剣を生成した。
「彼女を介錯することしか出来ない」
「ひっ、かいしゃく………?」
チルノが怯えながら首を傾げる。
「もう苦しまないように───」
「待って!」
慧音が介錯の意味を説明しようとすると、慧音の傍らにいた赤髪の女性がそれを遮った。
「私にひきとらせてくれないかしら?」
そう、十二単擬きを纏って言うのは幻想郷の警察官、小兎姫だ。
「小兎姫………なんのつもりだ?」
慧音は剣を消して腕を組んで小兎姫に問う。
「私の所で面倒見るっていってるのよ」
「そんなことして何になるというんだ?
あまり言いたくないが、妖精だぞ?家畜より価値がない」
屈辱的なことを言われチルノは下を向く。
「でも、そんなことを言ったら………」
小兎姫はぐるりと集まってきた野次馬を見回して言った。
「こんな戦う能力のない、せいぜい猟銃か竹槍しか使えない連中にも価値が無いわ」
「なんだと!?」
野次馬の一人が声を上げるが、小兎姫に睨まれると何も出来ない。幽香が現れるまでは小兎姫も霊夢や魅魔と共に神社周辺では最強と言われた者の一人だ。単純な強さでは妹紅にも匹敵するだろう。
「ね?いいでしょ慧音。あなたに世話はかけさせないわ」
小兎姫はそう慧音に頼むと慧音はしばらく考えて頷いた。
「………わかった。その二人を頼むぞ」
「ええ。
よかったわね妖精さん」
「………ありがとう」
チルノはそこから少し離れた小兎姫の家兼仕事場兼牢屋に案内された。
「ごめんねー。あんまりいい部屋ないんだ。牢屋なら結構あるんだけど」
小兎姫は牢屋が並ぶ部屋にチルノを通した。
「ここでいい………」
「そう。じゃあ入って。はい。鍵。ベットがあるからそこに緑髪の子を寝かせて」
チルノは言われた通り大妖精をベットに仰向けに寝かせた。
「えっ………!?」
大妖精の腹部は血だらけだった。蒼いワンピースを紅く染めている。
「………すぐに医者を呼ばないと………」
「まかせて!」
すると第三者の声が応じた。そしてその声の主の像が部屋の一ヶ所で結ばれ、白い帽子を被った可憐な少女が現れた。
「行ってくるよ」
騒霊、カナ・アラベラルは姿を表したと思ったらすぐにまた煙のように消えていった。
「───家に取り憑くタイプの正統派な騒霊よ」
何か言いたげなチルノに小兎姫は説明した。
「西行寺の亡霊姫には勝てないけど、神社周辺では最強と謳われたこともある子」
「さい………きょう………」
すると、チルノはまた泣き出した。
「あたい………最強なのに、みんなを助けられなかった………
うぇぇぇぇえん───!」
「そんなことないわよ」
小兎姫はチルノの頭の上に手をのせる。
「怖い天狗や河童が襲ってきたら、人間の男でも腰が抜けるわ。でなくても友達を助けようとはしない。なのにあなたはその子を救った。立派よ」
小兎姫はそう言ってあめ玉をチルノの口に入れた。
「………なにこれ」
「あめ玉よ。泣いてる子を泣き止ませるマジックアイテム」
そうしていると、外からドアがノックされた。
「連れてきたよ!」
「入って!」
小兎姫が言うと、カナが朝倉理香子を伴って牢屋がある部屋に雪崩れ込んできた。
「怪我人はその子?」
「そうよ。早くして」
理香子は大妖精の傷を見るなり、顔を深刻にして、白衣の中のメスで大妖精の服を切った。
起伏のあまりない少女の肌についた銃創が痛ましい。
「酷いわね………銃で撃たれてるわ。手荒だけど無理矢理銃弾を摘出する。
大丈夫。急所は外れているから………
カナ、眠らせて」
「いいよ〜」
カナは大妖精に近づいていき、顔の辺りに手をかざして動かした。僅かに大妖精の体に入っていた力が一気に抜けるのがわかる。麻酔をかけられたような冗談なのだろう。
「細菌とか大丈夫かしら?」
「大丈夫よ。私の刑務所は常に無菌だから。囚人を病気で殺してあげるような甘っちょろいことはしないわ」
「………あっそ」
理香子はピンセットで大妖精の傷をまさぐり始める。
「よかったな。妖精」
手を動かしながら理香子はチルノに声をかけた。チルノはわずかに頭を上げる。
「妖精の傷がどんどん直ってきている。このやり方でも傷は残らないよ」
「ちょっと……そんな乱暴にしないでよ………」
チルノが文句を言うと理香子は手を動かしながら答える。
「どんどん治っちゃうから早くするしかないんだよ」
チルノは言われてまた俯き、口の中のあめ玉を転がした───
「いらっしゃい」
肥満体の男が香霖堂の入り口を潜ると、店主の森近霖之助がそう声をかけた。
そうしただけで霖之助は再び本に目を落とし始めた。
肥満体の男は店内を見回したあと、カウンターの中の棚に飾られている刀に目をつけた。
「その刀を寄越して貰おうか」
「これのことかな?」
霖之助は刀を取る。
「悪いがこれは非売品だ。残念だが、刀なら他の物がある。そこから選んでくれ」
「へぇ。なら、殺してでも奪い取る!」
肥満体の男は腰の白狼刀を抜き、居合いの要領で横に刀を薙ぎ斬った。
「!?」
霖之助は殺気を感じて慌ててかわそうとしたが、肩口に浅くだが斬撃を食らってしまった。
霖之助は開いている窓から外へと転がり出た。
「つっ………!」
「その剣を渡せ」
それを追った肥満体の男が白狼刀を構えたまま霖之助に迫る。
「おとといきてくれ」
霖之助は霧雨の剣を抜き、肥満体の男と対峙した。
「………あくまでもやるみたいだな」
肥満体の男は白狼刀を振り上げ、霖之助に斬りかかった───
「あれが紅魔館ね」
赤髪の少女が妖精が死に絶えた湖の畔から、赤を基調とした館を見据えてそう言った。
少女もまた髪と同じように服装も赤を基調としている。
「なかなか素敵じゃない」
少女は紅魔館へと足を進め、門の前にたどり着いた。
「なんの用だ」
と、そこで紅魔館の門番をしている妖怪、紅美鈴が門番用の簡易な小屋から出てきて侵入を試みる少女を止めた。
「アポを取っていないな?立ち去れ」
「じゃあ、貴女を倒したら入れてくれる?」
「なんだと………?」
美鈴は拳法の構えをとる。
「こちらは人間ではない。お前のような小娘など、簡単に殺せるぞ」
「あら、素敵じゃない。やってみなさい」
赤髪は挑発するかのように美鈴に言った。
「小娘………仕方ないな。多少痛い目を見せてやる!」
美鈴は赤髪のその隙だらけな腹部に鉄拳を叩き込んだ───
と、思ったら美鈴は赤髪に襟首を捕まれていた。
「なっ………!?」
あわてふためく美鈴。
「えいっ!」
赤髪は美鈴の幻想郷の少女の中では比較的大柄な体躯を、ソフトボールを投げるかのように紅魔館の尖塔の窓に向かって投げつけた。美鈴は回転しながら宙を舞い、ガラスの割れる小気味いい音と共に尖塔の中に消えていった。
「さて、開けちゃお」
門扉を引っこ抜き、投げ捨てるとゆっくりと敷地内に入っていった。
「とっ、止まれ!」
すると今度は紅魔館の門番部隊のメイド妖精から声がかかった。
「よくも美鈴さんを!」
メイド妖精は槍や剣や斧、杖等で武装している。
「………威勢がいいのは数える程ね」
赤髪が門番隊をみてそんなことを漏らした。たしかに殆どがへっぴり腰で武器を構えている。
「チャイナ服の方は気まぐれで直接殺してないけど、貴女たちは殺すわよ」
赤髪はマントから銃を取り出した。銃といっても光線銃のような形をしている。
「こういうふうに」
光線銃の銃口を一人のメイド妖精に合わせて引き金を弾いた。
音もなくメイド妖精の顔面が弾け飛んだ!
「きゃあぁぁぁぁぁっ!?」
「ああああああ………」
それだけでメイド妖精の大半が士気を失った。
「武器を捨てなさい。さもなくばそこの妖精みたいになるわよ」
メイド妖精は慌ててそれぞれの武器を放り出し、あちらこちらに逃げていく。
「さて、やっと中に入れるわ」
赤髪が光線銃の引き金を弾くと、今度は目に見える程の大きさと速度のエネルギー弾が発射され、紅魔館の扉が木っ端微塵に吹き飛んだ。
「なっ、何!?」
中に入るとモップを持ったメイド妖精達がが狼狽える。赤髪は容赦無く光線銃でメイド妖精達を殲滅していき、内装まで真っ赤な屋敷がどす黒い赤に染まっていく。
と、そのとき、赤髪の目の前に大量のナイフが現れた。
そう思ったときにはナイフは赤髪を蹂躙せんために超スピードで殺到した。
だが───
「そう。誰か知らないけど時間を止めたの。素敵ね」
ナイフは全て叩き落とされ、そのうちの一本は赤髪に受け止められていた。
「でも、素敵でも私に効かなきゃダメよ
おっと」
真横から飛んできた岩の塊を弾き飛ばす赤髪。
「ダメか…」
土符で作り出した岩を弾き飛ばされ、パチュリーはスペルを詠唱する。
「次のは時間がかかるみたいね。紫の魔法使いさん」
赤髪はパチュリーのいる物陰へ向かおうとすると、天井から自分と同じ髪の色の少女、小悪魔がクナイを持って、それを自分に突き立てようと降ってきた!
「!!」
赤髪はクナイを持った小悪魔の手首を掴む。
「くっ………」
更に開いている方の手も掴んでそれらを卵の殻のように握り潰した!
「ぎゃあぁぁぁぁあっ!!」
「リトルっ!」
赤髪は小悪魔をその場に転がした。
「その反応ならきっとその魔法は使えないわね。この子を巻き込むから」
赤髪が不敵に言う。
「パチュリー様!どうか私ごと!」
小悪魔は痛みに耐えながらそう叫ぶが、パチュリーはそれを出来ない。と、そのとき───
「はぁぁぁぁぁぁぁあっ!!」
尖塔に投げ込まれていた美鈴が入り口から現れ、赤髪の身体に蹴りを放った。
「うっ───!?」
赤髪にはまだそれは片腕で停められる程度の威力であったが、赤髪の身体を吹っ飛ばすには十分な威力だった。
(体重を300キロに設定してあるのに!)
赤髪の身体は中央階段に叩きつけられる。
「パチュリー様!」
「ええ!」
パチュリーは詠唱したスペルを発動させる。
火水木金土符「賢者の石」
五色の宝石が辺りに現れ、火や雷など対応するエレメントが各宝石から赤髪に向かって放たれる。
魔力で作られた火が水が雷が鉄が岩が、エレメント達が赤髪の息の根を止める。
「あら、賢者の石?素敵ね」
はずだった。赤髪はパチュリーの背後からそう声をかけた。
「なっ………
ぁ───!?」
そのすぐ後に外界にあるペットボトルが潰れたような音を立て、パチュリーの胸元から赤髪の筋肉のあまりついていない腕が生えてきた。
「パチュリー様!」
その腕は真っ赤な塊を握っていた。それは、赤髪がパチュリーに向かって背中から貫き手を放った時に掴み出したパチュリーの心臓だった。
カクン。とパチュリーの身体から力が抜けると、赤髪はパチュリーから腕を抜いた。支えが無くなったパチュリーはそのまま床に倒れた。赤髪はパチュリーの心臓を階段の手すりの騎士の銅像の槍に突き立てた。
「貴様ぁぁあ!」
美鈴が吠え、赤髪に向かって駈け、手刀を、蹴りを、正拳を、掌を全力で放つ。
(なんだこいつ………!?)
美鈴は攻撃を放ちながらあることに気づく。赤髪は反射神経のみで攻撃を捌いている。格闘技のかの字もない、素人の動きだ。
(なのに…なぜ………)
なぜ自分の攻撃が当たらないのだろう。
「もう満足?」
赤髪が美鈴の掌を受け止め、胸ぐらを掴み、中空に再び放り投げた。今度は加減して天井に触れる程度の高さだ。
赤髪は光線銃を抜いて回転しながら宙を舞う美鈴に向けて引き金を弾いた。
「ぎゃあぁぁぁぁあ゛!!」
光線銃のレーザーは美鈴の右足をとらえ、腿のあたりから脚が消失した。受け身もとれず美鈴は床に叩きつけられる。
「さぁ、もう動けるのは時間止めた人だけよ…」
赤髪がどこの誰ともなく声をかける。
「………出来るわね」
紅魔館のメイド長、十六夜咲夜が赤髪の正面に現れた。
「あなたこそ。なんも使わないで時間を止めるなんて、素敵じゃない」
「………」
咲夜は表情を消してナイフを構える。
「それに、仲間を殺され、痛め付けられても落ち着いている。若いのに、人間なのに。慣れているのかしら?」
「久しぶりよ。こんな気持ちになるのは………」
「そう。
奇襲なのに、すぐに紫の魔法使いさんやその中国さんも攻撃を素早く仕掛けてきた。ってことはもう対侵略者の協定を結んだりしたのかしら」
「どうでもいいじゃない。そんなもの」
咲夜の眼が赤みがかる。
「いいわね。その眼。私のいる所じゃああなたのような強くて勇ましい人のそんな眼なかなか見れないのよ」
赤髪は光線銃を連続で三発咲夜に向かって放つ。
「………なるほど。時間を止めたのね」
と、赤髪が一瞬の間に消えた咲夜が居た位置を見て呟き、後ろから飛んできたナイフを後ろ手で受け止めた。
「厄介ね。目視間の戦いじゃあこれだけ厄介なものはないんじゃないのかしら」
真後ろにいる咲夜に赤髪が向き直り、ナイフを無造作に投げつけた。足を吹き飛ばされて倒れている美鈴に。
「美鈴っ!」
咲夜は再び時間を能力で止めようとした。
が、すでにそこに美鈴は居なかった。何もない床にナイフが刺さる。
「ずいぶんやってくれたじゃない。人間」
美鈴を抱き抱えた小柄な少女が吹き抜けの二階から赤髪に向かって言った。
「やっとボスのお出ましかしら?」
「レミリア・スカーレットよ。人間。よくもパチュリーを無惨な殺し方をしてくれたわね………!」
レミリアが美鈴を床に寝かせ、そう名乗り、魔力で巨大な紅い槍を精製した。
「あなたも名乗りなさい。今名乗らないともう二度と名乗れないわよ」
「そんなことより、相談ぐらいしたらどうかしら?」
赤髪は本気の吸血鬼を前にしても不敵にそう笑った。
「従者だか友達だかを殺されて腸煮えくり返っているんでしょ?なら必死になってメイドと一緒に私を殺しにかかりなさい」
「それに相談なんか必要ないわ。ねぇ、咲夜」
「はい。お嬢様」
咲夜が返す。もう阿吽の呼吸が出来ているのだ。
「死になさい。名も知らぬ人間よ!」
レミリアの回りに紅い魔力がまとわりついた。
───瞬間。咲夜は時を止め、そのままのポーズで固まるレミリアを抱きかかえ、跳躍し、心の中で謝罪しながら赤髪の背後にレミリアの小さな身体を放り投げた。
そして赤髪に向かってナイフを投げつけまくる。
時の止まった咲夜の世界で、レミリアを赤髪の後ろに配置してそのあと咲夜は陽動をし、時が動いた瞬間にレミリアが自身の持てる限りの魔力で精製したグングニルを赤髪の無防備な背中に投げつける。そんな算段だ。
「なるほど。ダブルスでもなかなかその能力は便利なのね…」
そんな作戦は、その言葉によって、その言葉が聞こえることによって意味が成さなくなったことを咲夜は知った。
「え………?」
「でも、この世界を一人で生きることはあなたにはまだできないみたいね。退場しなさい」
自身の身体の全てが破壊される感覚と共に咲夜は世界から退場した───
ずいぶんとっ散らかった回になりましたが、お待たせしました。幻想侵略記6話目です。
なんかもう、主人公最強設定のありがちなアレな話になってしまいましたね…何この赤髪。
あ、ちなみに赤髪さんはオリキャラではありません。彼女が誰かはおそらく3話のコメント6さんがご存じかと思われますwww
こーりんもっと書けばよかったけど、こーりんは強いイメージないしなぁ…M○G○Nでも弱いし。
次は…また単発になっちゃう感じですかね。また旧作もの書きたいお。
風見幽香 戦車の自爆により死亡
メディスン・メランコリー 長髪の男により射殺される
十六夜咲夜 赤髪のより世界から退場させられる
IMAMI
- 作品情報
- 作品集:
- 20
- 投稿日時:
- 2010/09/10 09:15:49
- 更新日時:
- 2010/09/10 18:15:49
こうやって苦しむ様を見るとゾクゾクしてしまう…
使用兵器を見ると、ヨーロッパ製のヘリや戦車、イスラエル製の拳銃ときていますから、
中東やアフリカ方面の傭兵?
戦闘行為も、戦術的な勝利を連続で起こしているようですが。
妖怪の山のTOPを潰して、天狗や河童を指揮下に収めたのは解りますが、
他の重要拠点も速攻で制圧するべきではないでしょうか。
まるで、強者を力でねじ伏せるのが目的のような…。
今回の戦死者一覧に紅魔館のメンバーが咲夜さんだけということは…。
なんなんだろう
てか敵方に時止め対応できちゃうやつがいんのか
まずいね
あれま。来ちゃいましたね・・・
>2
次はニ回休みです
>3
近寄るの怖いってことで勘弁してくださいwww
>4
さすが産廃民
>5
>敵の正体はいったい何なんですか?
赤髪・紫、超人のような人間…こじつければわかるかも。
>使用兵器を見ると、ヨーロッパ製のヘリや戦車、イスラエル製の拳銃ときていますから、
中東やアフリカ方面の傭兵?
ノーコメントです。がヒントを。
何回か大型兵器の描写がありましたが、その兵器の近くには必ず「彼」がいましたね。
まるでアリスが人形を操るかのように。
また、戦車が派手にぶっ壊れたから、中の人が無事で済むはずないのに、「彼」が何かした様子もないのに幽香の位置に合わせて自爆しましたね。
まるでアリスの人形が爆発するように。
>戦闘行為も、戦術的な勝利を連続で起こしているようですが。
妖怪の山のTOPを潰して、天狗や河童を指揮下に収めたのは解りますが、
他の重要拠点も速攻で制圧するべきではないでしょうか。
まるで、強者を力でねじ伏せるのが目的のような…
幻想郷って土地が物理的に欲しいわけではないです。
>今回の戦死者一覧に紅魔館のメンバーが咲夜さんだけということは…
見落しではありません。美鈴もこあもまだ死んでないですし。
>6
でもこの人だけ別格だよなこれわwww
>7
もし原作の彼女を知ってる方なら、あいつならできるwwwと思うはず。
タングステン弾を受け止めて生きてたり、移動速度のせいか避けようともしないのは、さすが幽香様だなぁ。
咲夜さん死んじゃ嫌
こんなにも愛されているなんて、微笑ましい
ところで、幽香とかが脆すぎで違和感があるんだが………その理由も明らかに?
それとも戦車の爆発はそれぐらい威力が大きいのかな?
こーりんイケメンすぎ泣けた
確か三番目のコメントは近づいて刺せば・・・
というコメントだった筈
パス設定しろってことか
あれは管理人さんが消したのかそれともパス無しを勝手に削除したのか
問題発言残ったりしてるのに普通の発言消えてるし
悪戯好きの誰かだよね
私もコメ消されてたし
こーりんイケメンすぎ泣けた
このままじゃ幻想勢は全滅するぜ
全滅ルート一直線だな
働き者の魔法使いはたぶん運営さんですかね