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『レイマリスタイル side B』 作者: んh
気分は最悪だった。
まず暗い。じめじめしている。風が絶えず吹き付けていて飛びづらい。なのに涼感はどこにもなく、あるのは底気味悪い熱気のようなものだけだった。
――"地底の妖怪達は、どれも忌み嫌われた能力を持つ者ばかり…。出会い頭に倒しなさい"
そんな言葉を待つまでもなく、私は最初に出会った妖怪を軽くのした。
特に何かしてきたわけでもなかったが、とりあえず妖怪に出くわしたら倒すのだ。そんなことは陰陽玉の向こうの奴に一々言われるまでもないことだった。
「いったー、なんなのよあの人間?」
「まあ気にするな。霊夢に会ったのが厄災みたいなもんだ」
この地底調査に引っ付いてきた霧雨魔理沙は、叩きのめした土蜘蛛となにやら話していた。
「で、こっち行けばいいのか?」
「何しに行くのさ?」
「さあ、知らん」
「ひどいのが来たもんだね」
ひとつため息をつく。
魔理沙はいつもそうなのだ。何が楽しくて退治した妖怪なんかにこちらから話しかけたりするんだろう。私はとっとと先に進んで帰りたいのに。
「じゃあとりあえずそこを降りて旧都へ行くんだね。色んな奴がいるから行くあても見つかるだろう」
「おお、サンキュな。じゃあ目的を調査しに行ってくるぜ」
「無理すんなよ」
「じゃあな、また帰りに一戦やろうぜ」
二人の会話はようやく終わったようだ。陰陽玉の向こうにいる八雲紫との会話から、行き先についてはなんとなく察しが付いていた。
目的は知らなかったが異変の調査だろう。他にあるはずもない。
何の異変なのかなど、私にはどうでもいいことであった。今は早くこの不快な場所から出たい、ただそれだけを考えていた。
"――疲れてるんじゃない?"
"はあ、疲れるに決まってるじゃない。余り乗り気じゃないし"
つい数刻前、突然湧いて出た温泉に浸かってのんびりしていた丁度その最中に、あの八雲紫が『参拝』しにやってきた。今まで賽銭のひとつも入れたことがない癖に、私に異変の調査を頼みたいという。
それと同時に三人の妖怪を引きずって、魔理沙もまた神社へやってきた。アリス・マーガトロイド、パチュリー・ノーレッジ、河城にとり、やはりこいつらも賽銭を入れたのをついぞ見たことがないな。
私と同様、魔理沙もまたこいつらに異変の調査を頼まれていた。それも同じ地底への調査を。仲が良いのかそれともただ間が悪いのか、同時に魔理沙の家に着いたこの三人は、誰が魔理沙とパートナーを組むかで喧嘩になったという。下らない弾幕ごっこの末、結局3人そろってパートナーを組むことになったらしい。
今魔理沙の後ろには5色のミサイルを撃つ人形が並んでいる。正直みっともないと思ったが、魔理沙はそれなりに気に入っているようだった。
底も見えない洞窟の奥の奥へと、ただただ私たちは進んでいく。
相変わらず気分は最悪だった。運の悪いことに今日は生理なのだ。下腹部の鈍痛に加えて頭痛がひどい。それを和らげようと温泉に浸かっていたというのに…
人形から聞こえるかしましい三人の声が、洞窟に反響しながら軋む頭を更に締め付けた。勘弁してくれ。
"もしかして人間?"
「お、何か出たぞ」
次の妖怪が目の前に立ちふさがった。苛立ち紛れに容赦なく針を叩き込む。
嫉妬「緑色の目をした見えない怪物」
向こうもスペルカードを切ってきた。遠くの方から弾の塊がゆっくりと近づいてくる。
「おわっ、なんだこれ?」
魔理沙はその弾幕を振り切ろうと、辺りを大きく動き回る。
ふう――また一つため息をつく。魔理沙は相変わらず何にも考えてないな、と呆れたからだ。
この手の弾幕はたいてい自分を狙ってくるのだ。それを避けようとして大きく動き回ると逆に弾が拡散して厄介なことになる。だからできるだけ動かず、ギリギリまで引きつけた方がいい。
このスペルカードは初めて見るものだったが、この手のことは何度も戦っていればなんとなくわかることのはずだ。だから四方八方を飛び回る魔理沙を横に、私はその妖怪に近づいて針を打ち込むことにした。
「――へぇ、貴女、逃げないのね?」
ふと眼前の妖怪に話しかけられる。言葉を返すのも面倒だった。頭が痛い。
「こんなの見りゃわかるでしょ」
「とても勘が鋭いのね、戦い慣れてるというべきかしら?ああ妬ましい」
甲高い、嫌らしい声が続いた。その不快な音色に我慢ならず、思わずそいつを睨みつける。
「ああ苛々しているのね、そんな眼をされたら妬ましくて妬ましくてたまらないわ」
そいつはひどく醜悪な貌をしていた。ごみ屑と排泄物を煮詰めた臭いが顔中から立ちこめているような、不愉快そのものを纏っていた。顔の造り自体は悪くない、むしろ良い方だろう。そんな整った顔の上に悪意がこれでもかと塗り込まれていることが、いっそう不快な印象を見る者に与えていた。
「そんな感情を向けられる相手がいるなんて妬ましい。あの妬ましい地上を仕切っている博麗の巫女、そんな妬ましい力を持つ人間からそこまで強い感情を向けられている、そいつが妬ましい」
そっと、横髪を撫でられる。私はなぜだかそいつの眼に引き込まれていた。緑色の、きらきらと輝く、どろりと淀んだ眼。下腹部の痛みは気づけば吐き気に変わっていた。
「霊夢、来るぞ!」
魔理沙の声に、私の中の博麗が我に返る。弾幕は目の前まで迫っていた。回避は間に合わない。
「非常識の裏側」
「何ぼーっとしてるのよ、ちゃんとしなさい」
陰陽玉を一つ犠牲にした霊撃で、なんとかスペルを破った。紫の小言が割れそうな頭に響く。
ああ、今日は本当に気分が悪い。
さっきの妖怪――橋姫とかいったか――は結局魔理沙が倒した。曰く「順番からして次は私だろう」らしい。こちらからすれば、倒しさえすればどうでもよかった。そんな約束をした覚えもなかったが。
橋を渡り、寂れた町並みを抜ける。地底だというのにそこには雪がちらついていた。薄気味悪い。益々気分が悪くなりそうだ。
隣の魔理沙は相変わらず無駄に楽しそうだった。ドブ臭い街の喧噪をBGMに、その周りを囲う人形達と賑やかに会話を弾ませていた。
彼女はいつもああやって誰かに囲まれているな――ふと思った。
――では私は?
"気に入った!もっと愉しませてあげるから駄目になるまでついてきなよ!"
ひどい酒気と共に、別の妖怪に絡まれた。
ふいに昨晩のことを思い出した。鬼の伊吹萃香が、同じような酒気を漂わせながら神社に来た時のことを。あいつもまた異変の解決を依頼しに来ていた。
――いやぁやっぱこういうのは博麗んとこに頼むのが筋かなと思ってねぇ
「お、次のダンジョンのボスはお前か?てっきり街人Aかと思ってたが」
「地上の人間かい?懐かしいねえ、山の連中は達者でやってるかい?」
一昨日の晩のことを思い出した。取材と称して酒をたかりに来た天狗の射命丸文に、同じく地底の調査を依頼された時のことを。
――やはり異変調査は巫女の務めですし、貴方が適任と思いまして
結局面倒だったので、また今度とその時は両方とも断ったのだった。先程紫が持ってくるまで地上との通信手段もなかったが、それは後付の言い訳に過ぎないだろうな。
力業「大江山颪」
巨大な弾塊が、高速で横から飛んでくる。
「おわわっ、すごいな。へへっ、面白いぜ」
そう言いながら魔理沙はまたも縦横無尽に飛び回って回避を試みていた。学習能力がないな、と思う。
こういう弾道の中で動き回るのは逆に自殺行為だ。できるだけ相手の正面を取って速攻を心がけながら、自分の方へ向かってくる弾だけを最小限の動きで避ければいい。
そう思いながら目の前の妖怪と対峙する。そいつは随分と、こちらを見下すような貌をしていた。
「あっちの黒いのはいい顔をしていたが、あんたは非道いねえ」
酒臭い息が顔にかかる。思わず吐きそうになった。
「これは嘘つきの顔だ。ずっと昔から嘘を付きすぎて、自分が嘘を付いているのかどうかすら判らなくなった愚者の顔だよ。一番我慢ならない奴の顔だ」
そいつは嗤いながら酒をあおる。
――そういえば、昔魔理沙に「お前の周りにはいつも化け物みたいな妖怪ばっかりいるなあ」と軽口を叩かれたことがあった。
でもあいつらが私の周りにいるのは、紫が、萃香が、文が私の所へ来たのは、要するに私が博麗だからだ。私が幻想郷の巫女だから、私が博麗大結界を管理し、異変を解決する絶対的な役割を担っているから、それだけではないか。ただ奴らにとって脅威であり、故に魅力的な力があるから、他に何がある?
では魔理沙は?先ほどの疑問が反転して頭をもたげる。なぜ彼女の周りには妖怪があんなにいるのだろう?あいつはことさら強い力を持っているわけでもない。なのにどうして?
なぜあいつはあんなに楽しそうにいつも笑っているのだろう?
ああ、妬ましいなあ。
「霊夢、前見ろ!」
魔理沙の声に再び我に返る。眼前には大弾。もう間に合わなかった。陰陽玉を一つ引き替えに、またすんでの所で回避に成功した。
「よし、じゃあ少しだけ本気出すよ!」
四天王奥義「三歩必殺」
「はっ、奥義には正面から突っ込んで真っ向勝負を挑むのが盗賊の戦い方だと、昔から相場が決まってるんだぜ!」
「いい度胸だね黒いの、益々気に入った!」
逃げ回る私を置いて、魔理沙は奴の懐に飛び込んでいった。
今日は本当に気分が悪い。
自分を鬼と名乗ったその妖怪は、魔理沙のことをいたく気に入ったようだった。帰りに酒を飲む約束までしている。妬ましいな。
紫は紫で異変の原因について鬼となにやら話しているようだった。私の耳にその会話は入らない。頭痛は悪化の一途を辿るばかりだ。
紫が突然私に指図する。このまま奥の方へ進めばいいらしい。そんなこと聞かずとも見当の付くことじゃないか、馬鹿馬鹿しい。
こいつは私の体調になぞ興味ないのだろうな。せいぜい異変解決に支障がないか量る程度だろう。ああ妬ましいなあ。
「――おいそっちの巫女、あんた、『眼』が死んでるぞ。普段はそんなんじゃないんだろう、もう今日は帰った方がいいんじゃないか?」
その地霊殿とやらへ向かうために重い体を動かそうとしたとき、案内役を買って出た鬼にそう声を掛けられた。
「……大きなお世話よ」
それは鬼らしい、真っ直ぐな声だった。だからこそ何故だかひどく馬鹿にされた気がして、私は思わず声を荒げた。鬼はもう私には構わず、横にいる魔理沙と喋りだした。楽しげに、なんて妬ましい。
"…どうして私の周りはこんな奴ばかり集まってくるのよ"
地霊殿はこれまでにも増して気味の悪い館だった。
暑苦しいのに加えて、ステンドグラスから漏れ出る不協和な光の網は、頭痛の毒でしかなかった。
おまけにさっきから変な猫がまとわりついてくる。その甘ったるい鳴き声に嘔吐感は募るばかりだった。
"猫に止めを刺せば良かったなぁ"
"…来客なんて珍しい"
やっと姿を見せた妖怪はこの屋敷の主らしかった。なんでも心が読めるとか。だがそんなことは正直どうでもよかった。ぶちのめせばいいのだ、それ以上のことは考えたくない。
"……私が調べても良いのですが…貴方には平和的に解決するという心は持っていないようね"
噴飯ものだ。誰が妖怪なぞ信用するか。
"……しかし鬼の言う事は真に受けた。そして地上の妖怪の事を信用している。貴方がその妖怪の事を思い出している事が私にも判るよ"
信用?私が紫を?あの胡散臭い奴を?いい加減にして欲しい。確かにちょくちょく神社に来るし食べ物をもらったり小言をもらったりするが、それはただ私が博麗だからじゃないか。妬ましい。結界の管理者同士、ただそれだけの関係だ。
私は博麗の巫女、異変を解決するだけだ。だから他の妖怪にとっても私は暇潰しや憂さ晴らしの相手でしかない。信用?妬ましい、何だそれは?役割に基づいた生得的な関係、それ以上に何があるというのか?ああくそっ、妬ましい妬ましい!
「おい、霊夢?お前大丈夫か?」
不快感が頂点に達したところに、魔理沙の声が耳に入った。
「さっきから動きも悪いし、顔色も変だぞ?勇儀の言うように休んだ方がいいんじゃないか?」
魔理沙に気を遣われるなんて心外だった。こいつが?私にまともに勝ったこともない癖に、いつも私にまとわりついて異変解決にちょっかいを出すこいつが?妬ましいったらありゃしない。使い勝手の悪い戦い方にこだわって、何度も何度も妖怪達に敗けて、それでもあきらめずに何度も何度も挑んで、それで妖怪達と仲良くなって!!たいした力もない癖に……ああ妬ましい妬ましい妬ましい!
「だから何でもないって言ってんでしょ。あいつは私がやる。あんたが言ったのよ、順番だって。さっき鬼を倒したのはあんた。だから次は私。黙ってみてなさい」
だから、こんな妬ましい奴の戯れ言は一蹴した。考えてもみろ?妖怪退治のできない私に何の意味がある?私はお前とは違うんだ、妬ましい!
"――霊夢、そろそろ妖怪退治の本分を思い出しなさい"
さっきの紫の言葉が頭に浮かぶ。その時、いつかの宴会で酔いつぶれた夜、紫に迫られたことを訳もなく思い出した。愛撫の記憶、ざらざらとしてひどく気持ち悪いあの感触。甘い言葉で惑わせて、なんて妬ましい!あれが手なのだ。あの小鬼も、吸血鬼も、天狗も幽霊も妖精も人間もみんなそうだ!どいつもこいつも私を道具扱いする癖に、それなのにみんな私に不必要にまとわりついて、気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い!!
さとり、とか言う奴との弾幕ごっこは続いていた。
ぼさぼさの髪に病的な貌、それなのにそいつはにやにやと、全てを見透かしたような顔をしてこちらに視線を投げかけていた。妬ましい!ふざけるな、お前に何がわかる、お前に…!
想起「波と粒の境界」
予想を上回る密度の弾幕が迫る。私はとっさに霊撃を張ってそれを掻き消した後、本能的に奴の懐に飛び込んだ。弾の群れはことごとく私をかすめていく。
「……苦しいのですか、霊夢?」
目の前にいる妖怪から、甘い、粘り着くような囁きが聞こえた。
「可哀想な人、貴方はどこかで自分を強いと思っている。揺るぎない存在だと思っている。ああ違います、私はそんなことを言いたいのではない。勘違いなさらず。その感情を持つこと自体は悪徳ではありません。傲慢が罪と言えど、卑屈な者は更に愚かです。ええ、フフフ。そうではなく、私が言いたいのはですね、貴方はその自己意識によって自らを縛り付けているのです。そうがんじがらめにね。貴方は最初から揺るぎのない存在なのではない、そうではなく、いいですか、自分を揺るぎないと思い、他者に心を閉ざしているからこそ、結果として貴方は揺らぐことがない、そうただそれだけなのです。」
さとりは指を、ねちっこく絡めてくる。もう針を撃つ気にもならなかった。私の緑眼はこいつから逃れられなかった。
「ええわかりますよ、全てわかります。貴方は博麗の巫女であると同時に一人の人間、一人の少女なのでしょう?貴方は気付いていない。心象の内に眠る医しがたい乖離に。だからそうやって他者に振る舞える。でも貴方は気付いている。その乖離がその身を、心を、酷たらしく引き裂いていることを。違いますか?フフフ。貴方を千々に切り刻んでいるその不快感、嘔吐感、それはどこから来ているのですか?地底の瘴気のせい?忌み嫌われた妖怪達のせい?フフフ。違いますね。認めなさい。ああそう、そうですね、それは自己嫌悪です。貴方は利口だ、とっくに気付いていたのですよね?」
さとりはもう一方の手で私の下腹部を、重くてだるい部分をまさぐる。陰陽玉の向こうからの悲鳴は、弾幕の発射音に掻き消された。
「貴方はもっと自由に、そうなのですよ、何にも縛られずに飛ぶことができるのです。本当はね。ただ貴方は不幸にもそのことに気付いていない。そう、貴方は何にも縛られず自由に空を飛んでいると思いこんでいる。でしょう?ああ可哀想。なんて可哀想なのかしら。それは欺瞞だというのに!でもね、フフフ。落胆なさらないで下さい。大丈夫、私が貴方の心を開いて差し上げます。頸木から解き放って差し上げます。だから貴方は全てをただ私に委ねて?自分のしたいことを、真摯な想いを心に思い浮かべて。ああいけません。おそれないで。私はただ、哀れな貴方を助けたい、ただそれだけなのだから。だから、ね…私を信用して、"さあ、心に武器を持って!"」
下腹部を撫で回していた指は、そのまま胸を這い上がり、私の唇を弄んでいた。まもなくスペルカードの制限時間が切れる。
「そう、おりこうさんですね、フフフ。ではこの有意義な弾幕ごっことやらの最後に、霊夢に良いことを教えて差し上げましょう。霧雨魔理沙、彼女が貴方のことをどう思っているかを――」
Bonus FAilEd.....
"なかなか強かったわ。やっぱり人間を襲うのは良いわね"
「――夢、霊夢起きなさい!霊夢目を覚まして!」
ゆっくりと目を開けると、眼に光が目一杯飛び込んできた。それは眩しい程の、地上の光。そしてその光が映し出したのは見慣れた天井と、紫の顔だった。
「霊夢、大丈夫?霊夢、生きてる?」
その声はくぐもっているように聞こえた。ああ、こいつこんな声を出すんだ…そう言えばあの夜もそうだっけ、私を抱き寄せようとする紫を振り払って罵倒したとき、あの時もこんな声を出していたっけ…
ぐるぐると、走馬燈のように記憶が巡る。
一昨日文と馬鹿みたいに飲み明かしたこと
昨日萃香と温泉に入って笑いあったこと
色んなやつの笑顔
そして魔理沙の顔
なんだ、私だけじゃないか。私が気付いていなかっただけで、みんな笑ってたんじゃないか。莫迦だな私。何考えてたんだろ。
「ああ霊夢、よかった…」
安堵する紫がなんだか気恥ずかしく見えて、そのまま視線をさっと下へ逸らす。白い袖には赤いシミがべっとりと付いていた。ああ私あの妖怪に負けたんだ。で、戻ってきたんだ。魔理沙に迷惑かけたなあ。
そう思っておもむろに視線を横へと向ける。アリスとパチュリーとにとりが騒いでた。その喧噪の中心に、同じように赤いシミを付けた魔理沙の帽子が見えた。
ああ、魔理沙も怪我しちゃったのかな、謝らないとなあ。
そう思って視線を魔理沙の顔の方にずらした。帽子から覗いたその顔は、胴体とは離れた所にあって、真っ赤に歪んでいて、顔だったのかも判らなくて、そして転がった。
ゴロリ
私は吐いた。なにもかも。
いつも思うのですが、張り付いて攻撃しているとき彼女たちは何してるんでしょう?
ということでside Bは霊夢→魔理沙になります。
元々それぞれ別の話として考えていたんですが、思いつきでこうなりました。
*やっぱりマズイ気がしたので原作の台詞を引用した部分を "" で囲いました。すでに読んでいた方は説明不足で申し訳ありません。
んh
作品情報
作品集:
20
投稿日時:
2010/09/12 11:47:30
更新日時:
2010/09/14 00:03:32
分類
霊夢
魔理沙
パルスィ
勇儀
さとり
特に続いてません
引用あり
霊夢は親友を喪った!!
最後の1文で
『なんだ、わくわくさんの作品か』
と思ったのは僕だけじゃないはず!
さとりのセリフがめっちゃぞくぞくした