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『研修中の巫女、代行中の巫女』 作者: NutsIn先任曹長
「霊夢さん、もう少し真面目にしてください」
守矢神社の風祝、東風谷早苗の一言が、事の発端だった。
人里で行なわれた、人間と妖怪の有力者達の会合での発言である。
各勢力の景気や治安について、気づいたこと、世間話等。
それらについての報告や議論が一段落したところで、この発言である。
博麗の巫女は、異変の時以外はいつも自堕落に過ごしている。
そんな噂が立っているとのことだった。
堅気の人間が近寄らない神社のことを、誰が人里で言いふらしたか知らないが。
でも、火の無いところに何とやら。
霊夢の素行の悪さが招いたことではないのか。
早苗はほとんど言いがかりに近いことを言い始めた。
そうだそうだと尻馬に乗ったのが、守矢信者の多い村の長である。
長自身も熱心な守矢信者であるこの村は、他の集落に比べてかなり裕福で知られ、
表に裏に、各勢力に影響を与えていた。
紅魔館当主であり、霊夢の親友でもあるレミリア・スカーレットが村長を睨みつける。
護衛らしい剣士が、村長を背後に隠し、白木の鞘に納まった太刀に手をかけた。
レミリアは忠実な部下であるメイド長、十六夜咲夜の背後に隠れ、
咲夜は懐に忍ばせたナイフに手をかけた。
「ふ、あぁぁぁ〜〜〜〜〜ぁ」
糾弾された、当の本人である霊夢が大あくびをした。
寝ぼけ眼をぱちくりし、
「……?、何?」
霊夢は事態を把握していないようだ。
霊夢は不真面目である。
この会合の出席者のほとんどが、
噂は正しいと認識した。
「何、何よ、私がいつ、巫女の仕事をサボったってえの!?
ちゃんと朝起きて、境内の掃除をして、休憩して、掃除して、掃除して、
……ああ、そうそう、お茶も飲んでるわよ。
あ、あと朝昼晩のご飯とおやつも食べてるわね。
で、夜はたまに宴会をやったりして、お風呂に入って寝るわよ」
お茶を飲むのと休憩は別なのか。
飲食も仕事に含まれるのか。
この会合の出席者のほとんどが、
平時の博麗の巫女の仕事は、
境内の掃除と食って寝て宴会をやることだと認識した。
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霊夢に生活態度の是正を求めることが、満場一致で可決された。
さらに、目に見える形で改善されるように、
下記の辞令が、会合の議長であり、
幻想郷の管理人であり、
妖怪の賢者である八雲紫より交付された。
博麗霊夢に、1ヶ月の外界での研修を命ずる。
研修期間中、博麗霊夢は、博麗の巫女の任を解くものとし、
その間、代行者がその任に当たるものとする。
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博麗大結界の補強終了後、
守矢の神々他有力者達の立会いの下、
研修参加者『達』の能力は研修期間限定で封じられ、
外見年齢相応の人間と同等となった。
霊夢の研修を企画したのは紫である。
外の世界にある紫が経営する企業の研修施設で、
霊夢と『同行者達』は研修を受けることになる。
不正が無いように、紫自身も出向いて監督及び講義を行なう事となった。
『同行者達』とは、
自主的に霊夢の受ける研修に参加するもののことである。
霧雨魔理沙は今回の一件を霊夢から聞いた後、
腹を抱えて笑い、研修の同行を申し出た。
慣れない外の世界で親友が困らないように、少しでも手助けしたいとのことである。
嘘くさい。
同じ森に住む、人形遣いに気取られないように苦労したそうである。
会議で唯一の霊夢の味方であったレミリアは、
紅魔館の幹部達(咲夜、美鈴、パチュリー、小悪魔、フランドール)と共に、
研修の参加を表明した。
部下たちと共に、見聞を広め、心身を鍛えることを目的とする旨を申告した。
嘘くさい。
紅魔館の幹部連中が留守の間、メイド妖精たちに休暇を取らせ、建物は封印された。
烏天狗の射命丸文は、
白狼天狗の犬走椛、河童の河城にとりと共に研修の参加を申し込んだ。
報道に携わるものとして、見識を深め、真実を伝えるのが使命だと力説した。
嘘くさい。
文文。新聞はしばらく休刊になり、はたては喜んだ。
地霊殿の主、古明地さとりは、
妹のこいしとペットのお燐、お空と共に研修に参加することを伝えた。
姉妹とペットの親睦を深め、ペットの勉強嫌いを克服するためだそうだ。
真実を全て伝えていなさそうだ。
地霊殿の留守は、人型に変化できるペットたちに任せた。
参加者達の内、天狗組と地霊殿組は、
守矢神社の二柱の神、
八坂神奈子と洩矢諏訪子の推薦状を持っていた。
霊夢の研修に同行するのは、
彼女に友好的な者達と、
守矢神社の息のかかった者達。
これは、何を意味するのか。
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博麗の巫女の代行には、
人里の多数の有力者達の推薦で、早苗に決定した。
人里に守矢神社の教えが、かなり浸透している。
布教活動の最前線に立ち、
信仰を集めるために地道な努力を重ねた彼女が
選ばれたのは、当然の結果である。
守矢神社の2柱の神と、
努力が報われご満悦の早苗に見送られ、
一行はスキマを通り、
外の世界に旅立った。
博麗の巫女の代理といっても、
博麗大結界の維持管理はまだ任されていないので、
早苗の仕事には、従来の守矢神社の風祝の他に、
妖怪の討伐が含まれたのみである。
いつもやっている『ストレス解消』ではない。
博麗の巫女としての妖怪退治である。
大規模なものなら『異変』として認められ、
解決すれば、守矢の格が上がるというものである。
早苗は気負っていた。
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スキマを抜けると、そこは、南国であった。
この南の島丸々一つが、
紫が経営し、結界の内外で手広く商売している、
株式会社ボーダー商事の研修施設である。
スカーレット姉妹は、
咲夜が持っている大きめの日傘の下から飛び出し、
その辺を走り回った。
『外見年齢相応の人間と同等となった』彼女達は、
外見年齢よりも幼いはしゃぎっぷりを披露した。
いつの間にか、こいしと、紫の助手の助手として参加している橙も、
一緒になってはしゃぎまわっていた。
彼女達の追いかけっこまがいが一段落したところで、
紫と助手の藍は、研修参加者達を宿泊施設に案内した。
リゾートホテルの趣のある、研修所の宿泊施設の部屋割り終了後、
豪華な宴会場でビュッフェ形式の夕食をとり、
様々なバリエーションの湯に浸かれる大浴場で汗を流した。
お子様グループがここでも大立ち回りを演じたことは、
想像に難くない。
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同時刻、守矢神社。
早苗は、緊張から汗を流した。
会議に参加していた守矢信者の長が統治する村の付近で、
人が妖怪に襲われたとの報告があった。
これは、異変、か。
霊夢お得意の『巫女の勘』ではない。
単なる、早苗の期待である。
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朝、研修所。
宴会場でのやはりビュッフェ形式の朝食後、参加者達は大会議室に集まっていた。
午前は、紫から研修に当たっての諸注意があった。
最初に上がった話題は、
備品を勝手に解体してはいけない、ということである。
にとりは別室で、藍から説教を受けていた。
昼食は仕出し弁当であったが、
気の置けない者同士で食べる飯は美味かった。
午後から、本格的な座学が始まった。
本日のお題は、事件発生時の初動捜査について。
元・司法機関の捜査官による、
現場で培った様々な技術を、参加者達は吸収していった。
にとりに鑑識活動の才能があることが判明した。
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同日、幻想郷。
朝食もそこそこに、
早苗は事件現場に向かった。
10名程の隊商は、全員体を切り刻まれ、
荷物のほとんどが持ち去られていた。
自警団が遺体を運び出し、荷車を撤去されたため閑散とした現場で、
撤収前の遺体を見たために、食べた朝食を地面にぶちまけた早苗は、
それを片付けた後、推理していた。
荷を持ち去ったということは、妖怪の盗賊か。
隊商を皆殺しにしていることから、『犯人』の凶暴性が分かる。
人数は―!!
目撃者や自警団、及び自分によって、
現場の地面は荒らされてしまった。
迂闊だった。
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研修内容は多岐に渡った。
警察や探偵の調査方法は、異変発生時の首謀者の割り出しに役立ち、
軍隊や民間軍事会社の戦術は、弾幕ごっこや至近距離の格闘戦に応用できる。
戦略の授業の一環で図上演習を行なったとき、
さとりは相手の心理状態と自軍の能力を把握して、
見事な采配を見せた。
こいしは一見意味不明に駒を動かしたが、
改めてみると、相手の駒の配置の穴を無意識に突いたものであった。
さとりとこいしの対局でさとりが勝利したのは、
さとりはこいしの姉であり、一日の長があったからに他ならない。
ナイフを使用した格闘訓練では、模擬戦闘をトーナメント形式で行なった。
優勝したのはなんと咲夜では無く、椛であった。
椛といえば太刀と盾というイメージがあるが、実は剣鉈の扱いにも長けているのである。
非番の時も常に持ち歩いているという、オーダーメイドの剣鉈で表ざたに出来ない修羅場をくぐってきている。
このことを知っているのは文とにとりくらいのものであろう。
その文も、変幻自在な足技とナイフ捌きのコンビネーションで、決勝戦まで勝ち進んだ。
性格の異なる天狗の頂上決戦は、静と動が極端なもので、動かないときは全く動かず、
いざ動くと常人には視認できなかった。研修参加者達は見とれるほどには把握できた。
ちなみに3位は美鈴で4位が咲夜である。
メイドさんに格闘技能まで要求するのは、酷である。
幻想郷でもいずれ必要になるからと、紫は経営者向けのカリキュラムや一般教養も
今回の研修に組み込んでいた。
経営の授業の一環で株売買の模擬演習を行なったとき、
レミリアとフランドールのペアが、株価が上下する境界を繊細に読み、
大胆に投資して、ノルマを大幅に上回る資産の増加を行なった。
これには紫も舌を巻いた。
霊夢は直ぐに素寒貧になるかと思いきや、ノルマギリギリの収益を上げた。
魔理沙は予想通り、開始後直ぐにすっからかんになった。
一般教養での理系の授業は、魔法使い達の独壇場だった。
パチュリーは複雑な計算式を、基礎で学んだ簡単な式のレベルまでに細分化、
理解しやすくしてから解いて見せた。
なんせ、お空でも(他者の3倍の時間とお燐の助言が必須であったが)
理解できるように説明して見せたのである。
自分の研究の傍らに、スカーレット姉妹の家庭教師の真似事をしたことがあるから
その経験を生かしたと、パチュリーは小悪魔の差し出した冷えたお茶を飲みながら、
小声でむきゅむきゅと言った。
魔理沙はその逆に、複雑な計算式をより分かりづらくして、しっちゃかめっちゃかにしてしまうのである。
それでいて、すったもんだの末に出された答えは、8割方正解であった。
マスタースパークの如く、真っ直ぐシンプルに行けば正答率は上がるのに、とはパチュリーの弁。
スターダストレヴァリエの如く、あっちこっちに思考を散らして答えを導き出すのが魔理沙である、とは霊夢の弁。
研修のカリキュラムはつつがなく消化されていった。
以外にも、授業をサボるものは一人もいなかった。
授業態度に難有りなのは若干名いたが。
肝心の霊夢であるが、
各科目で平均以上の点数をたたき出している。
問題は無い。
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幻想郷での『連続』隊商襲撃事件は、ようやく解決の糸口が見えてきた。
あれから、類似した事件があちこちで多発して、早苗は一睡も出来なかった。
現在分かっていることは、『犯人』は隊商と同人数程度であること、
奪われた荷物は、高価なものから生活物資に至るまで多岐にわたること、
そして、『犯人』は残虐であることぐらいであった。
現場検証や聞き込みは人里の自警団が行なっているため、
早苗がやることは『犯人』である妖怪が判明するまで無いはずであった。
早苗は自分で自分を精神的に追い詰めていた。
そんな彼女に、個人的に調査協力を依頼していたはたてから朗報がもたらされた。
彼女が念写で犯人の姿を捉えたのである。
早苗はその写真をプリントアウトしてもらい、
特徴をメモすると、はたてに誰にも言わないように口止めをして、
聞き込みに飛び出していった。
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研修最終日は、近場のリゾート地で終日、自由行動であった。
参加者達は、少しハードに組んだ紫の研修カリキュラムを、
予定より1日早く、好成績で終了させたのである。
紫はご褒美として、各人に小遣いとしてクレジットカードを貸与して、
1日限りの休暇を与えたのである。
各々、事前にボーダー商事経由で入手した外界の衣服に身を包み、
紫所有のクルーザーで、島一つが丸々観光地の島にやってきた。
霊夢は極彩色の神社に仰天した。
賽銭の入りの良さにパルパルした。
一通り嫉妬した後、
黙祷した。
周囲の俗っぽい空気が、一気に浄化された気がした。
魔理沙とパチュリーと小悪魔は、良さげな店でみやげ物を物色していた。
パチュリーが選んだブローチを、魔理沙がアリスに似合いそうだな、
などと抜かしたものだから、さあ大変。
すったもんだの末、芋で作った氷菓子を魔理沙がパチュリーに
アーンで食べさせる羞恥プレイを公衆の面前に披露する羽目になった。
小悪魔は、その光景を写真に撮っていた。
レミリアとフランは咲夜と一緒に黒砂糖の揚げ菓子を食べていた。
スカーレット姉妹が丸い菓子を食べる様は、げっ歯類の小動物のようだった。
レミリアは菓子屑をぼろぼろ零し、にぱー、と微笑んだ。
フランドールも、こちらは綺麗に食べているが、やはり、にぱー、と微笑んだ。
咲夜は、この世界ではちり紙を無料で配ってくれることに感謝して、鼻血を流した。
美鈴、お燐、お空は3人連れ立ってアミューズメントパークに来ていた。
要するに、ちょいとお洒落なゲームセンターである。
美鈴がお約束通り、パンチングゲームを破壊したのは分かる。
しかし、気を送り込み、レーシングゲームの車をターボブーストさせるのは如何なものか。
お燐は、クレーンゲームで菓子やぬいぐるみを取っていた。入れ食いである。
職業病か?
お空はガンシューティングや格闘ゲーム等、派手目のエフェクトのゲームを適当に楽しんでいた。
そこに、明らかに日光以外で日焼けしたと思われる派手な身なりの若者が2人現れて、
お空に何やら話しかけている。お空は、若者達と談笑しながら裏口から出て行った。
偶然それを目撃した美鈴とお燐はあわててその後を追いかけていった。
数分後、泣きじゃくるお空を宥めながら美鈴とお燐が裏口から入ってきて、そのまま店を出て行った。
お空は、お燐がゲットした菓子を口にした途端、いやな思い出はすっぱり記憶から消えた。
店の裏では、チャラい格好をした若者が5〜6人、側溝やゴミ缶に頭を突っ込んでいた。
文と椛は、みやげ物店を冷やかしながら、そぞろ歩いていた。
椛は憮然としていた。好印象と言い難い感情を抱いている上司に連れられているのである。
折角の休暇が台無しである。
すると、前から来た体格の良い異人の3人組が何やら話しかけてきた。
文のホットパンツから生えている自慢の足を見て、褒めているようである。
文は満更でもない様である。椛はますます憮然とした。
異人のうちの一人が異国の札が詰まった財布を取り出し、片言の日本語で何やら商売の話をし始めた。
聞いているうちに、文は静かに怒りだし、椛はストレス解消のはけ口が出来たことに喜んだ。
ビジネスの話は人気の無いところで、と、言うことで路地裏に入っていく一堂。
出てきたのは、すっきりした様子の文と椛のみであった。
路地裏から、鉄錆のような匂いがほのかに漂ってきた。
にとりは、ボーダー商事の紹介で一人、孤島にある電子機器メーカーの研究所を尋ねていた。
外界の最先端技術を見学したいとのたっての希望で、紫が系列会社の最高機密を扱う研究所を紹介したのである。
本来は広報の担当者が案内するものだが、予め話が通してあったので、研究室の職員が直接案内した。
そこには、宝の山があった。
本来、関係者以外が見た場合、切り刻まれて魚の餌にされる機密がそこにあった。
にとりの顔は、恋する乙女のものであった。
不覚にも、研究員はときめいてしまった。
一通り見学した後、休憩室で他の研究員も交え、自販機のコーヒー1杯で何時間も技術談義に花を咲かせた。
さとりとこいしは、本土にもある量販店でペット達のお土産を購入した。
大量のペットフード、菓子、小洒落た小物類を、この島にあるボーダー商事の営業所に配送するように依頼した。
二人は店を出て適当にぶらぶらと歩き出した。無目的で彷徨うなんて、こいしみたいだと、さとりは思った。
屋台で適当なものを買い、二人で分け合いながら食べて、話して、笑った。
さとりは笑った。それは捻くれ者の浮かべる卑屈な笑みではなかった。
こいしは笑った。それは心の深遠に殺戮衝動を秘めた暗い笑みではなかった。
紫、藍、橙の一家三人は、地元の家庭料理を出す食堂で食事をしていた。
苦い瓜と缶詰のハムと豆腐の炒め物を、どんぶり飯と共に頬張る橙。
そんな橙の汚れた口の周りをハンカチで拭いてやる藍。
そんな二人を、芳醇な香りの酒をロックで楽しみながら、微笑を浮かべ眺める紫。
どう見ても、微笑ましい、家族の団欒がそこにあった。
3姉妹と見られないところが悲しいが。
皆、それぞれの休暇を楽しみ、研修施設のある島に戻ってきた。
休暇の余韻に浸りながら、執務室に向かう八雲一家の元に、
事情を知っているボーダー商事社員より、緊急連絡を記した紙が一枚届けられた。
東風谷早苗が、行方不明になったとのことである。
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早苗は事件の有力な手がかりを掴み、聞き込みに出た。
最初に向かった先が、よりにもよって、『犯人』達の本拠地であった。
早苗は自由を奪われ、スペシャルルームでもてなされることになった。
荒い息遣いが、薄暗い部屋から聞こえてくる。
両手首を縄で縛られ、天井から吊るされた早苗は、
二人の男から責められていた。
男の一人は、はたてから入手した写真に写っていた。
その男は、早苗の引き裂かれた上着から覗く乳房の片方にむしゃぶりついていた。
唾液をたっぷり含ませた舌を円を描くように這わせ、時折ピンクの先端を吸っていた。
もう片方のバストには、ローターを指先に挟んだ手で時には触れるように、
時には力強く、揉みしだいていた。
それを左右交代させながら、両の胸を愛撫した。
もう一人の男は、下着を引き摺り下ろされて丸見えになった、
早苗の下半身を担当していた。
柔らかな草原のクレバスに舌を這わせていると、
そのうち唾液以外の液によって、草原は湿地帯となった。
指で割れ目を押し広げると、初々しい蕾が花開き、蜜をたっぷり滴り落とした。
二人は重点的に攻めている箇所以外にも、背中や首筋を舐めたり、
尻を揉みしだきアヌスに愛液塗れの指を突き入れたりして、
早苗を飽きさせないようにした。
「ふっ、う、うぅうぅぅぅ!!
や、やええぇ……。
あ、あ、い!!い゛い゛い゛いぃ!!」
早苗は意味不明の喘ぎ声しか上げられない。
口にボールギャグが入れられていることも、その一因である。
達したのは何度目だろうか。
早苗の目は虚ろであった。
抵抗する意思は、イッた回数が一桁の時に萎えた。
ほんの僅かな休憩時間中に、『犯人』達の親玉がボディガードを従えて部屋に入ってきた。
早苗は目を見開いた。
早苗は二人を知っていた。
暗く、寒く、気力が根こそぎ奪われる感覚。
早苗は、20年に満たない人生で、
初めて、絶望というものを知った。
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夜、予定を繰り上げて急遽、幻想郷に『帰国』した霊夢達は、
連絡をよこした神奈子と諏訪子に事情を聞いたが、大した情報は得られなかった。
早苗が一人で全て抱え込んで事件を調査していたためである。
幻想郷上空。
文は幻想郷最速の名に相応しい機動力を発揮していた。
早苗の交友関係を片っ端からあたり、はたてから早苗に渡した物と同じ写真を入手した。
他にもブンヤのつてで様々な情報を得ると、守矢神社に向かった。
紅魔館。
レミリア達は紅魔館に戻り、大食堂に幹部達を集めて、関係各方面から入手した書類束と格闘していた。
夜にも拘らず、なりふり構わずかき集めた資料である。
明日になれば、このことが幻想郷中に知れ渡るだろう。
かまわない。夜が明ける前には全てが終わっている筈である。
美鈴がダンボールに入った書類を一箇所に集め、
小悪魔がカテゴリー毎に仕分けして、
パチュリーが注釈を書き加えたりして編集した。
咲夜がお茶や軽食、資料と共に各人の間を流れに逆らう魚のように瀟洒に泳ぎまわり、
レミリアとフランは手元に届けられた書類を一瞬で検討すると、背後に投げ捨てた。
それを何度か続けていると、フランの書類を鷲掴みにした手が止まった。
無数の数字の羅列の僅かな違和感。
そのしわくちゃな紙切れを姉に見せる。
レミリアは、心の中でビンゴ!!と叫んだ。
しばらくして、全ての書類を検討して得られた僅か数枚の『当たり』を咲夜は茶封筒に収め、
全員、霊夢達が待機している守矢神社に向かった。
守矢神社の大広間。
霊夢の勘と、さとりや知識人達の推理が確信の域に達したことで、
予めさとりが立てた制圧作戦の詳細の検討に入った。
早苗の救出は、非最優先事項であることが何度も確認された。
二柱の神達は、それで構わない事を何度も返事した。
さとりは、二柱の心を読むような無粋はしなかった。
今回、紫はこの件には介入しない。
博麗の巫女とその仲間達で解決する必要があるためである。
これは、今後のことを考えた政治的判断でもある。
ただ、橙は志願して作戦に参加することとなった。
藍は橙を抱きしめた。
椛は皆から離れた壁際で、顔に墨を塗っていた。
彼女の銀髪は黒いバンダナで覆われ、哨戒天狗の制服ではなく、
やはり黒い着物に袖を通していた。
守矢神社の外、倉庫の影。
お燐は、愛用の猫車に油を差していた。
ひっくり返した猫車の車輪を指先で回してみる。
軋み一つ無く、音も無く高速で回転した。
彼女のそばにいるお空の目は、感情を感じさせないものになっていた。
彼女の火力は、作戦終盤、場合によっては序盤から使用されることになる。
核の炎とは対照的に、お空の精神は冷たく研ぎ澄まされていた。
守矢神社の境内。
たった今、にとりは発明品と魔理沙の箒を持って戻ってきた。
今回、光学迷彩スーツは使用しない。
過酷な状況下では信用に足るものではないからだ。
これは、にとり自身と霊夢や魔理沙が『実戦』で確認済みである。
にとりが持ってきた発明品は、にとり個人が愛用している、
発明品というのもおこがましい、既存の道具を小改造したものだった。
魔理沙の箒には、さとり考案の小改造が施されていた。
後は魔理沙に使ってもらい、微調整を施すのみである。
動作確認する時間はあるだろうか。
準備は整った。
文は守矢神社の周りを1周した。
『犯人』の物見はいないことを確認した。
文はゴーサインを出した。
二柱の神を残し、霊夢達は粛々と目標地点に向かった。
深夜になっていた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ぐちょっぐちょっぐぢょっくちょっぐちょおっ。
くぷっくぷっぐぷっくぶっぐぶうっ。
がぽっがぼっぐぼっげぼっげろおっ。
「くっ、出る!!早苗様、受け止めてください!!」
「お、俺も!!イクぅ!!」
「俺のどぶろく、たっぷり飲めぇ〜!!」
「ふ、ふぐうううぅうぇぅぇぅぅ〜〜〜〜〜!!!」
『犯人』の親玉と2人の手下が、早苗の膣、アナル、口にそれぞれ
欲望の白濁を吐き出した。
何回目だろうか。
『犯人』の親玉である、守矢の敬虔な信者である、村長が、
早苗の純潔を奪ってから、膣の中で精液を吐き出すのは。
5〜6回ぐらい?
アナルや口や胸に出したものを併せると、10回は超えているのではないか?
2人の手下が出した分を含めれば、50の大台に乗っているのではないか?
早苗の体は無理やり昂ぶらされて火照っているが、
心は冷え切っていた。
衝撃の対面で絶望を経験した早苗は、
村長から真相を聞かされたからである。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
守矢神社に足繁く通う村長は、早苗に恋をした。
なんと畏れ多い、しかし、背徳的な恋慕に村長は震えた。
早苗様に触れたい。
早苗様に接吻したい。
早苗様の乳房を吸いたい。
早苗様のアソコにぶち込みたい。
早苗様のケツ穴を穿りたい。
青年団の会合でのことである。
正直者の村長は、村の青年団員達の前で思いのたけをぶちまけた。
なんと、青年団員達も、村長と同じ思いであった。
度々布教に訪れる早苗は、村の若者達の憧れであると同時に、
女日照りである彼らの劣情を向ける対象でもあった。
この村は、正直者ばかりである。
彼らは、早苗を手に入れるための具体的な計画を立て始めた。
村長には常に剣士が付き従っている。
剣士は村長に大恩があるとのことである。
詳細は不明。
ただ、村長に忠誠を誓っていることは確かである。
今回の件でも彼の功績は大きかった。
彼は呪術に関してもちょっとしたものだった。
彼が呪術に精通していることは、村長以外、口の堅い村人数名のみしか知らない。
彼の得意とする戦法は、相手の魔力や霊力を封じ、
退魔刀で切り伏せるというものである。
村の周りに魔力感知の結界を張り巡らし、
早苗を『もてなす』部屋に能力封じの加工を施した。
後は、この計画の、いや幻想郷最大の脅威である、
博麗の巫女と幻想郷の管理人をどうにかしなければならない。
彼女達に直接の危害を加えることは出来ない。
幻想郷が滅びてしまうからである。
早苗を犯らずに死ぬわけには行かなかった。
博麗の巫女はぐうたらである。
風の噂にそんなことを聞いた。
事実かどうかは問題ではない。
村長は守矢神社に出向いた際、
恐れながらと、二柱の神と早苗に聞いた内容をそのまま報告した。
底の浅い嘘など直ぐに見破られてしまうため、
自分が聞いたままを言ったのである。
生真面目な早苗は食いついた。
今度の会合で、早苗は博麗の巫女に噛み付くことだろう。
村長や青年団員達は、守矢神社に言った内容を誇張して、
他の村や大店の有力者達に吹聴して回った。
事態はとんとん拍子に進んだ。
会議で、幻想郷の管理人と博麗の巫女が一月の間、
幻想郷を留守にするよう仕向けることが出来た。
さらに安全策を用意する。
一ヶ月研修が決まったとの報を受けると、
村長は村に新聞を配布しに来る天狗や、
最近、地上に出ることが多くなった覚り妖怪に、
外の世界の研修の件を話した。
曰く、外界のことを新聞に書けば、部数が伸びますよ。
曰く、妹さんやペットがまた馬鹿をやらないように、
外界で勉強をさせたらいかがですか。あなたも一緒に、旅行もかねて。
守矢信者でもある彼の言うことに、彼女達もまた食いついた。
お八坂様の推薦状があれば、妖怪の賢者も文句は言いますまい。
だめを押しておいた。
これで、事件に関して鼻が利くブンヤや、
人の心を読める薄気味悪い妖怪もしばらく遠ざけることが出来る。
早苗を博麗の巫女代理に推薦することは、容易かった。
しかし、これにしくじれば計画に影響が出てしまうので、
根回しは万全に行なった。
紫以外の邪魔者達プラスおまけ達が、村長達の目の前で能力を封じられ、
外の世界に旅立っていった。
これで計画を最終段階に移せる。
なじみの隊商が通るルートに先回りして、
村長は護衛の剣士と数名の青年団員と共に偶然を装って現れる。
後は簡単。後ろからグサリである。
万が一しくじっても、こちらには剣士がいる。
殺した隊商達は、外界の道具であるチェーンソーでバラバラにした。
立ち込める血の匂い。
食べやすくしたから、獣や下等妖怪がさらに現場を滅茶苦茶にしてくれるだろう。
隊商の商っていた荷物は、予め用意した荷車に移し替えて村に持って帰った。
食べ物や消耗品は、村人達に分け与えた。
値の張るもの、かさばるものは、いくつかは功績のあった青年団員に与え、
残りは村長の警備が厳重な蔵に保管された。
それを数件行い、事件の捜査が行き詰ってきたところで、
青年団員の内、有志数名を写真に収める。
烏天狗に念写が出来る者がいる。念写には、過去に写真に撮られたものが写るそうだ。
早苗は捜査に行き詰ったら、その天狗を頼るだろう。
その発想が出なかったら、入れ知恵する予定であった。
リスクを伴う被写体に志願した団員には、
報酬として村長と共に最初に早苗を嬲る権利が与えられた。
早苗の餌への食いつき方は、計画を立てた村長達にとって爽快であった。
いの一番に村長を尋ね、見覚えのある写真を見せてきた。
それとなく、誰かにこのことを言ったか確認した。
誰にも言っていない。好都合だ。
早苗には睡眠薬入りのお茶でお休みいただき、
予め『おもてなし』の準備をした地下牢に閉じ込めた。
そして、現在に至る。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「―と、言うわけです。
我々の早苗様の愛が理解できましたかな?」
少なくとも、この連中が狂っていることは早苗は理解できた。
「理解されようとは思いません。
早苗様、貴方様はこの村で永遠に現人神として祀られるのです。
若い盛りの『信者』が盛って待っておりますゆえ、
そろそろ仕上げに入りたいと思います」
村長は、一緒になって早苗を犯した青年団員の一人に目配せした。
団員は一礼をすると部屋を足早に出て行った。
「ただいま、お薬をお持ちいたします。
早苗様が男衆とまぐわいたくなる素敵なお薬でございます」
「!!!う、い、いあ、いぁ、いああああぁぁぁぁ〜〜〜!!!」
「暴れても無駄ですよ。女子の力ではその戒めは解けませんし、
早苗様の奇跡もこの部屋では起こせませんからね」
「ああおあぁぁ〜〜!!うあおあああああぁあぁぁぁ〜〜!!
あえあ、あうええええぇぇぇ〜〜〜〜!!!」
「助けを呼んでも無駄ですよ。私共は偽り無く守矢の信徒ですから、
お八坂様達はまず疑いません。
邪魔をすると思われる博麗の巫女や幻想郷の管理人は、
明日になるまで幻想郷には帰ってきませんよ。
他ならぬ、早苗様達がお決めになったことですからね」
何故、自分はあんなことを言ってしまったのだろうか……。
早苗は後悔しまくった。
「発覚すれば私共は打ち滅ぼされるでしょうが、
その時には早苗様も我々と共に逝くでしょう」
早苗の絶望、再びである。
彼等の言う『お薬』がどれほどのものか知らないが、
どうやらたった一日でセックス・ジャンキーにしてくれるものらしい。
「い、いあ、いぁ、ぃぁ、ぃぁ、ぃ……」
早苗は、涙することしか出来なかった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
薬の保管場所に向かっている青年団員。
不意に背後から伸びてきた左手によって口が塞がれ、
下あごから脳天まで剣鉈の刃が貫いた。
地下牢の扉が爆薬で吹き飛ばされた。
踏み込んだ美鈴の気弾が青年団員に命中した。
気弾は通常の弾幕のように魔力や霊力を使用するのではなく、
修行によって得られた生命エネルギー『気』を使用するのである。
従って、魔力、霊力封じがされたこの地下牢でも有効である。
倒れたまま動かない青年団員の首が、あらぬ方向を向いている。
剣士は村長の手を取ると、自分が控えていた牢の奥に向かった。
石壁の一部を押すと、隠し通路が現れた。
剣士と村長が通路に入ると、直ぐに通路は塞がれた。
美鈴は追いかけることが出来ないと分かると、
早苗の戒めを解き、にとりが持参した毛布で包んだ。
「助けに来ました。もう大丈夫ですよ」
美鈴が囁く様に言ったが、
早苗は爆発の衝撃と安堵から、気絶するように眠っていた。
剣士は村長を連れて村の中を走っていた。
あの中国妖怪は何処から入ってきたのだ!?
村の結界には異常が見られないが……。
村のあちこちで火の手が上がっている。
いや、あちこちではない。
特定の場所が燃えているのである。
あの燃えている建物は、青年団の詰め所だ。
あっちは有事の際に使用する武器庫。
たった今、火の手が上がったのは……!!
「わ、私の屋敷が、燃えている……!!」
炎に浮かび上がる小さな影。
背中に蝙蝠の翼を持つ小さな影。
巨大な槍を持った小さな影。
蛆虫を見るような目で村長達を見る小さな影。
その隣に、また小さい影が現れた。
背中に無数の宝石の羽を持った小さな影。
巨大な剣を持った小さな影。
おもちゃを見るような目で村長達を見る小さな影。
新たに現れた小さな影が、何かを握るような動作をした。
炎上する村長の屋敷の隣にある建物が崩れ落ちた。
「!!!く、蔵が!!私の、村の、財産が!!」
剣士が太刀に手を掛ける。
二つの小さな影は飛び去った。
「おい!!何故だ!!何故妖怪がこの村に侵入している!!
村の守りは完璧ではなかったのか!?」
村長は、先程から剣士が考えていた疑問を叫ぶように言った。
正解は、
にとりが地面を這い進み、結界を構成する2箇所のポイント―楔状の物体があった―の間に、
持参した魔道具の作成及び修理に使用する特殊な銅線を、やはりそれ用の工具と手袋で
弛ませる様に張り、地面と銅線のたるみの間を抜け道としたのである。
村への進入組が入り、一部が出た後、この抜け道はもう使用しない。
何故なら―、
村の結界が何者かに力づくで破られた。
村長と剣士の前に降り立つ、紅白の少女。
「こんばんは。妖怪退治は博麗の巫女にお任せよ」
楽園の素敵な巫女、博麗霊夢が、
薄ら笑いを浮かべ、現れた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「どうしたの?何を恐れているの?」
薄ら笑いを浮かべたまま、霊夢が一歩前に進んだ。
村長は一歩後ろに下がった。
剣士が村長の前に進み出た。
「貴方達も大変ねぇ。
長のお家が燃えちゃうし、早苗は行方不明だし」
「な、何でもない!!帰ってくれ!!
大体、どうしてお前がここにいる!!外界から帰ってくるのは明日―」
「幻想郷の一大事と聞いて、大急ぎで帰ってきたのよ。
それに、もう『明日』になっているわよ」
確かに、深夜0時を回っている。
「さあ、何があったか、博麗の巫女に報告なさい」
「た、ただの火事だ!!」
霊夢と村長達のそばの民家が炎に包まれる。
刀や矢筒を装備した青年団員が、火達磨になって飛び出した。
上空にはスカーレット姉妹がじゃれつきながら飛んでいた。
「ずいぶんと大物がいるじゃない。
それに、ずいぶんと物騒な連中が住んでるじゃない」
「あ、あれは、そう、あれはあの妖怪共を退治しようとしていたんだ!!」
「じゃあ、何故空ではなく、私の方に弓を向けているの?」
霊夢が燃えている家の向かいを睨みつけた。
小さな悲鳴と共に、矢が飛んできた。
矢は霊夢の顔面ギリギリを飛んで、燃えている家に飛び込んだ。
「……」
村長は、この場を言い逃れようとした。
が、それは次の闖入者によって叶わなかった。
「霊夢ー!!大変だー!!」
箒に乗って飛んできた黒白の少女。
普通の魔法使い、霧雨魔理沙である。
「例の妖怪盗賊が盗んだらしい品が、この村から来た荷車から出たんだと。
今、自警団が大勢こっちに向かっているぜ!!」
「お、長ー!!自警団が大挙して、こちらに向かって来まーす!!」
村の警備に当たっている青年団員の報告がそれを裏付けた。
何故だ、何故……、はっ、蔵の中!!
正解。
村長邸の隣の蔵の中身は、倒壊する前にお燐の猫車に移されていた。
証拠物件かどうかは分からないが、とにかく金目の物を積み込み、
早苗救出班と合流、抜け道から脱出した。
その後、一目散に人里を守る半獣、上白沢慧音宅を訪れ、
蔵の中身と、救出した早苗を見せた。
次に慧音を伴い、自警団の詰め所を訪れた。
照合の結果、自警団の盗品目録と、村長の蔵の品が一致した。
自警団は直ちに討伐隊を編成、村に進撃を開始した。
早苗は、連絡要員の文が連れてきた二柱の神が付き添い、
永遠亭に運ばれていった。
目的の半分は達成された。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「何故だ、何故分かった?
早苗様を快楽の虜にするくらいの時間は稼げると思ったが……」
「この村と取引のある業者の販売、購入の履歴を大急ぎで調べたのよ。
商人は不良在庫を抱えないように、かなりシビアに仕入れを行なっているのよ。
それなのに、いくつかの品物の売れ行きが落ちたり、
いつもなら品薄の商品の購入を持ち掛けられたりしたそうよ。
その品々は、例の強盗に盗まれたものと一致したし、その時期が―」
「妖怪強盗が現れた時期と同じだった。
小さな村だから消耗品からは足が付かないと思ったんだな。
確かに帳簿の変動した数値は微々たる物だったぜ。
だがな、それが今回の強盗事件と絡めると、色々と見えてくるものだぜ!!」
霊夢と魔理沙がまるで自分たちが見つけたように言っている品々の数値の件だが、
発見したのは紅魔館の面々である。
「……そんな、些細なところから……」
「蟻の穴からも堤防は崩れる。
今回は、女の子一人助ける程度の穴は確実に開けたぜ!!」
「博麗の巫女の権限で、貴方達の身柄を拘束します。
観念なさい」
霊夢が身体拘束用の御札を取り出そうとした。
いきなり剣士が抜刀、切りかかってきた。
距離をとる霊夢と魔理沙。
「長」
無口な剣士が口を開いた。
「ご無事で」
「……すまん」
村長は、霊夢と魔理沙がいる方とは反対側に駆け出した。
二人が村長を追いかけようとすると、
剣士が太刀をちらつかせ、牽制した。
「じゃあ、まずはあんたから、おねんねしてもらうわよ」
霊夢が無数の追尾札を放つ。
魔理沙がレーザーを放つ。
剣士は二人の頭上を飛び越えざま、
2枚の札を放った。
札は二人に触れる直前に燃え上がった。
「!!」
「やはり、あんた、呪術も使えるのね」
「……何故分かった?」
「この質問は飽き飽きしたわよ。
……まあいいわ。
理由は、あんたの太刀。それ、退魔刀でしょ?
レミリアがそれを見たとき怯えたから。
それほどの業物となると、あんた、呪術に関しても達人のようね」
剣士は、にやりと笑った。
「だから、それなりの対策を取らせてもらったぜ。
早苗を捕まえたぐらいだから、魔力封じ位使ってくると思ってたぜ!!」
「対策を立てたのは私」
剣士は、今までを上回る太刀筋で二人に斬りかかってきた。
さらに無数の札まで放ってくるので、
距離をとっても近づいても、隙が見えず、二人は攻めあぐねた。
「それじゃ、奥の手、いくぜ!!」
魔理沙は箒にまたがり空を飛び、
一度大きく旋回すると、一直線に剣士目掛けて突っ込んでいった。
「食らえ!!マスタースパーク!!」
魔理沙の十八番、マスタースパークが剣士に向けて放たれた。
しかし、剣士は逃げようとせず、太刀を正眼に構えた。
かつて、月で体験した光景が脳裏によぎる。
あの時は『弾幕ごっこ』だった。
今回は『殺し合い』である。
案の定、極太レーザーは一刀の元に真っ二つにされ、
返す刀で魔理沙の首を狙ってきた。
箒が制御不能になり、急上昇したため、魔理沙は死なずにすんだ。
が、今度は失速、墜落して、尻を地面に打ち付けてしまった。
「い、つつつっ!!」
魔理沙は痛む尻をさすりながら、剣士から距離をとる。
剣士は追撃してこない。
と言うか、動けない。
長い鉄串が、剣士を貫いているためである。
これぞ、さとり考案、にとり製作の、
箒に仕込んだ魔理沙の秘密兵器。
ショットランサーである。
マスタースパークをおとり兼目くらましにして、
至近距離から放つ最終手段。
今回は、発射の衝撃と自重の急激な変化で、
箒が制御不能になるという不具合が判明した。
やはり、実戦配備前に動作確認はしておくべきであった。
しかし、それで命拾いしたこともあるから、難しいところである。
剣士はまだ生きていて、
胸に刺さった鉄串を抜こうとしている。
霊夢は爆裂符を1枚放った。
御札は剣士の首に張り付き、爆発した。
爆発自体は大したことは無いが、
剣士の首の血管を断裂させ、死亡させるには十分であった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「はあっはあっはあっ」
村長は走っていた。
必死で走っていた。
博麗の巫女を怒らせてしまった。
殺される。もうお仕舞いだ。
「はあっはあっはあっ」
村長は走っていた。
必死で走っていた。
剣士や青年団の皆には済まない事をした。
「はあっはあっはあっ」
村長は走っていた。
必死で走っていた。
早苗様を犯りたがっている者が、順番待ちをしていたというのに。
「はああっあはあっははあっ」
村長は走っていた。
必死で、考えながら走っていた。
もう一度、早苗様を捕らえなくては。
快楽漬けにしなくては。
ペニスの味を覚えさせなくては。
「あはっあははっはははっ」
村長は走っていた。
必死で、笑いながら走っていた。
早苗様にセックスの味を覚えさせなくては。
まんこにちんぽを突っ込んで差し上げなくては。
ケツ穴にちんぽを突っ込んで差し上げなくては。
のどの奥までちんぽを突っ込んでさしあげなくては。
「はははっあははっあーははっあ〜はっはっはっ」
村長は走っていた。
必死で、エロいことを考えながら走っていた。
早苗様とセックス、セックス、セックス。
セックスセックスセックス。
せっくすせっくすせっくすせっくすせっくす……。
「あ〜はははははっははっははっはは……?」
村長は走るのを止めた。
急に何も考えられなくなった。
村長の腹に、
剣鉈が、
突き立てられた。
椛は、
突き立てた剣鉈の刃を、
横一文字に動かした。
村長の腹が、
横一文字に裂け、
臓物がはみ出た。
村長は、
地面に崩れ落ちた。
臓物をはみ出させながら。
大量の血を噴出しながら。
惨めに死んでいった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
早苗は、
さとりとパチュリーの、
辛い記憶を消そうかという、
魅力的な提案を、
拒否した。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
守矢の敬虔な信者達の住む村を襲った大火。
村長を初め、青年団員の多数が命を落とした大火災。
会合の前に、大火災の尊い犠牲者達に黙祷を捧げた。
場の空気が浄化された気がした。
人里で行なわれた、人間と妖怪の有力者達の会合は、
つつがなく進行した。
相変わらず、各勢力が好き勝手を言っている。
会合の議長であり、
幻想郷の管理人であり、
妖怪の賢者である八雲紫が、
おざなりな採決を行なう。
異議が有ろうが無かろうが、結局なあなあで通ってしまった。
会合の後、一人で神社に帰ろうとした霊夢を、
早苗が呼び止めた。
早苗は一言、霊夢に尋ねた。
「何がいけなかったんでしょう」
霊夢はこともなげに答えた。
「突っ走ってばかりいないで、ゆっくり歩いて周りの景色を楽しんだら?」
いや、これは答えになっていない。
だが、早苗は納得したようだった。
もう少し、霊夢さんとは腹を割って話した方が良いですね。
時刻は正午を回って十数分。
早苗は、霊夢を誘う殺し文句を口にした。
「霊夢さん。お昼ごはん、ご一緒にいかがですか?」
おごりますよ、と続けたら、
霊夢は何やら考え込んでしまった。
早苗は不安になった。
この辺で美味くて、昼間から酒を出してくれる店は何処だったか?
霊夢の脳内データベースが回答を出したので、
早苗のお誘いにも回答をした。
「ええ、良いわよ。私、いい店知ってるから、そこにしましょ」
霊夢は辺りの飲食店や屋台から漂う匂いを堪能しながらゆっくり着実に、
早苗は霊夢を追いかけて人ごみに巻き込まれ躓きながらせかせか急いで、
二人の少女は歩き出した。
登場する椛は、山蜥蜴様の作品に登場する椛を参考にしました。
霊夢達が外の世界で遊び呆けている間、博麗の巫女代行になった早苗さんが苦労する話を書こうとしたのです。
なぜ、こんなになってしまったのだろうか…?
2010年9月22日:皆様のコメントに対する返事追加
皆様のご意見を踏まえたおまけストーリーを投稿いたしました。
>1様
パチュリー、大事にしてくださいよ。
咲夜さんといったらおぜう様ネタが鉄板ですよね!!
>2様
隊商の遺族には、守矢神社より多額の見舞金が支給されます。
>3様
山蜥蜴様の椛といったら、ランボーの如き孤高のワンマン・アーミーですから。
ラストは、霊夢と早苗のスタイルをあらわしてみました。
>4様
早苗さんが不幸を埋めるほどの幸せを得ますように……。
>上海専用便器様
ある意味、人間味溢れる村長と、この外道を単なる処理対象としか見ていない椛。
>王子様
最初は、クールな悪の紳士を目指してたのですよ。
どうしてこうなった……。
>7様
恐怖と全力疾走で頭に酸素と血が回らなくなり、代わりに下半身の血の巡りが良くなったのです。
外界に追っ払った連中がパワーアップして帰ってくる。燃える展開でしょう?
>8様
村の皆から愛された長ですから。
貴方もこの村の青年団で汗を流しませんか?
>9様
あなたのご指摘は、未熟者にとって大変励みになります。
確かに、今回の作品は睡眠不足の頭に鞭打って、勢いで仕上げましたからね。
『平時』の霊夢の駄目っぷりは、妖精如きに遅れをとるぐらいですから。
村長は駄目なんかじゃない!!ちょっと自分の欲望に正直なだけなのです!!
千里眼!そういうのもあるのか
椛は作戦開始前に千里眼を使って、村の重要施設を確認したんですよ。
…そういうことにしておいてください。
>10様
よくある、仕える主を間違えた以外は最強の従者。
早苗さんにそんなことを言ったら、早苗さんの立場が非常にまずくなります。
>11様
完全オリジナル設定では有りませんが、お褒め頂き光栄です。
>12様
意外と、村長が大人気ですね。変体外道紳士が良いのかな。
朝右衞門て、ググったら出てきた、首切り朝右衞門のことかな?
あっちは首切り、こっちはハラキリ。
>13様
怨霊になったら、妖夢にマヨイを断ち切ってもらうか、お燐の手下にでもなれ!!
>山蜥蜴様
山蜥蜴様、貴方の作品に登場する椛には、プロの兵士といった感じがします。
まさしくランボー!!
既に指摘されていますが、村長を始末するシーンはランボー4のオマージュです。
貴方様原案の椛だからこそ、これほどの支持を得られました。
本当に有難うございます。
村長も結構キャラが立ってしまいました。
折角のカリスマと頭脳を、早苗さんを犯りまくるためだけに使うところとか、
まさに狂気!!
早苗さんの存在意義をそれ以上いぢらないであげて……。
NutsIn先任曹長
作品情報
作品集:
20
投稿日時:
2010/09/19 20:40:28
更新日時:
2010/09/22 00:13:37
分類
霊夢
早苗
紫
魔理沙
文
椛
にとり
紅魔館組
地霊殿組
ボーダー商事
博麗の巫女解任
研修
博麗の巫女代行は早苗
監禁
陵辱
山蜥蜴様リスペクト
小声でむきゅむきゅと言った。
なにこのパチュリーすごく可愛い!
ください!
咲夜は、この世界ではちり紙を無料で配ってくれることに感謝して、鼻血を流した。
咲夜さんはやっぱりおぜう様だよね!
このほのぼのとした感じとか大好きです!
早苗の舞台とのギャップとかも良いです!
朝からニヤニヤしちゃいました!
殺された商人たちが浮かばれないな
華々しい弾幕ごっこの陰、誰も知らない幻想郷の裏で汚れ仕事こなしてるプロってカッコよくね?
ラストの一瞬の制裁シーンはランボー4のクライマックス見てるみたいでした。
話の前半読んで「ああ、うぬぼれた早苗さんがまたひっそりとくそみそな遭うんだな」って考えてたんですが、なんという綺麗な締めw
悲惨さがありながらも綺麗なラストに全く抵抗感なく最後まで話を楽しむことが出来ました。
良い意味で期待を裏切ってくれたラスト
あれだ、村長は終盤きっと現実逃避でセックス思考してたんだよ、多分!w
しかしこのパワーアップ幻想組ぱねえなあ
(「さとりとパチュリーの」の所は「さとりとパチュリーからの」にした方が日本語の曖昧な点を回避できる、とか)
勢いと人物の個性の思い切りが大好きです。
原作よりダメな霊夢、ダメ村長がそれぞれの方向で徹底的にダメなのが良い。
千里眼使いを頼った方が早いと言うのは内緒だ。
早苗さんが来るまでは村長さんはまともな人だったんだろうか
ちょっと必殺シリーズの中村主水を思い出した。
>>11
どっちかというと、この椛は朝右衞門っぽい感じがした
って誰も知らんわなw
この椛は寡黙に良い仕事してますね…まさに不言実行、質実で良いです。バトルプルーフされた艶消しキャラって良いですよね。
作戦会議等を待ってる間、一人部屋の隅で会議の様子を睨みながら、黙々と砥石で剣鉈をタッチアップしてそうな感じの。
そして、村長のキャラ最高ですね。性欲に流され、大量殺人、集団レイプ、台詞も猥語連発、一人で逃走、という下衆っぷりを披露しつつ、
綿密な作戦練って幻想郷のTOPクラスを手玉にし、凄腕の剣士や村人の人望を持ち、『順番待ちをしていたのに済まない事をした』と同志想いだったりと、ハジけてましたw
早苗さんさえ現れてしまわなければ、若しかしたら敏腕の切れ者だった…?
この早苗はエロくてよいね