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『魔理沙は病死』 作者: アルマァ
まず、アリスが死にました。
全身のありとあらゆる部分にぶくぶくと膨れ上がった瘤から血が吹き出して死にました。
次に、紅魔館の門番が死にました。
同じように体の瘤から血を流しながらしろい、しろい、と譫言を死ぬ間際まで繰り返し、
最期にけふ、と静かに軽く咳をして死にました。
次は宵闇の妖怪が。
その次は山の烏天狗が。
そのまた次は傘の憑喪神が死にました。
みんなみんな、体中に瘤が出来て死んでいきました。
流行り病、と最初に言い出したのは誰だったでしょうか。
そんな噂話は、それこそ流行り病のように広まって行きました。
頼る物の無い人間ほど脆いものはありません。
水の入った瓶に予防薬、と紙を貼付けるだけでどんな値段でも飛ぶように売れるほどの混乱が起きました。
その水の入った瓶の為に争いが起きて、死人が出るほどでした。
「何が流行り病だ、馬鹿馬鹿しい」
魔法の森の奥の奥、ぽつんと立つ一軒家。
ごちゃごちゃと物が溢れている自分の部屋で、魔理沙はお茶を飲みながら呟きました。
「もっと冷静になるもんだ。アレのどこが病気なもんか」
魔理沙は、この一連の死を呪いの類と考えました。
第一に、今までの死者。
今までに死んでいるのは妖怪ばかり。
単純な丈夫さなら人間を遥かに超える妖怪が死ぬほどの病気だとしたら、人間などひとたまりも無いはず。
が、今までに人間が同じように瘤が出て死んだ、という話は聞いていない。
となれば、ただの病気とは考え辛い。
第二に、死んだ者の先行く所。
この幻想郷に限っての話かは知らないが、命を失ったものは裁きを受け、冥界で輪廻転生を待つか、地獄に堕とされて罪を償うか、大体はどちらかである。
少なくとも、自分の知識ではそうだ。
しかし、死んだ奴らに感想でも聞いてやろうと冥界に行って見れば、そこの管理亡霊はそんな妖怪は来ていない、と言った。
じゃあ地獄行きだったのか、と無縁塚へ向かい、そこの死神に話すと、やはり同じ答を返された。
ただ病気で死んだのであれば、他の命と変わらない末を行くはずだ。
それが無い以上、何らかの幻想的な力が働いた物と考えるのが順当。
ヒトに危害を加える力。
それは呪いと呼ばれる物だ。
この際死んだ物の魂がどうなったかは重要ではない。
肝要なのは、「自分がそうならない」事だ。
魔理沙は門番の死でいち早く事態の深刻さを悟り、混乱の起きる前から人里で食料や日用品を買い込み、騒がしくなる頃には家で篭城を決め込んでいました。
自分も人間ではありますが、用心するに越したことは無い、と思ったからです。
いつもならこういった異変には喜んで首を突っ込むのですが、なぜか今度ばかりは命の危険を感じました。
今回は霊夢にやらせておけばいい、そういう風に思いました。
魔理沙は一ヶ月間、閉じこもることを決めました。
一月も経てば、ほとぼりも冷めていようという物です。
その間、自宅の周りには対呪の魔法を込めた薬を撒いておきました。
効き目が続くのは5日間。
それを一ヶ月分の6つと予備の2つ、合わせて8つを用意しました。
ついでと言ってはなんだが一応、と簡単な殺菌作用も加えました。
これで、この異変に対する魔理沙の一月限りの要塞が出来上がりました。
1週間。
魔理沙は魔法の研究を進めながら過ごしました。
自分はここにこうしているから平気なのですが、気がかりなのは他の妖怪の事でした。
万一を考えて、死者の死に方から呪いの類を予測して、解呪の魔法を作る事にしたのです。
あいつらに特別好意を持っている、というわけでもないのですが、スリルある弾幕ごっこもできなくて、ただただ張り合いの無い先を考えると、恐ろしく退屈だったからです。
幸いにも自宅にある材料だけでなんとかなりそうでした。
2週間。
魔理沙は先週分の実験結果を書き留めて過ごしました。
今のところ生活の不足感は予想外に無く、魔法使いというものは元来閉じこもる者なのだな、と思いました。
3週間。
魔理沙は静かに本を読んで過ごしました。
どこぞの病弱魔女のようだ、と魔理沙は思いました。
もちろんその間、薬を撒くのを忘れはしませんでした。
4週間。
魔理沙は溜まっていた研究成果を纏めて過ごしました。
量だけで言えば山のようにありますから、退屈はしませんでした。
食料の備蓄も余裕を持たせて買いましたから、まだ尽きる気配は見えません。
あまりに平和で静かな毎日に、騒ぎすぎたのは自分の方だったかな、と魔理沙は思うほどでした。
それでも油断した途端、というのは嫌でしたから、薬を撒くのは欠かしませんでした。
あと一週間。
流石に魔理沙も外が恋しくなってきました。
それでもそうなってしまえば、外の事を考えるだけで時間が潰れて良い塩梅でした。
まずは皆読み切ってしまった本を調達しに紅魔館に行かないと。
門番が居ないから楽そうだ。
その前に神社に寄っても良いな。
あの辺は魔法の森の症気も無いし、ゆっくり茶でも飲みたいとこだ。
そういえばまた森で実験の材料を採ってこなくちゃ。
ああ、やることは山積みだ。
魔理沙は最後の紅茶を飲み干しました。
今日でちょうど一月。
魔理沙はいつもの格好をして、玄関の前にいました。
魔理沙は躊躇っていました。
一月というのは早過ぎるのではないか。
もしも、こうして一歩外に出た途端アウト、という事になったら。
ドアを開けた手の先からぷつり、と瘤が。
ぷつ、ぷつ、腕。
胸。腹。脚。首を昇り―
あと、10日。
10日待とう。
食べ物もまだ備蓄はあったはず。
薬だって10日分。
相当の退屈かもしれないが、死ぬよりかはよっぽどマシだ。
あと、10日だけ。
のこり、9日。
魔理沙は前までのように、研究を纏めて過ごしました。
でないと、いつものように振る舞わないと、途端に体に瘤が出来る気がしたからです。
手が震えて、うまく紙を揃えられません。
ばさばさと束を落とした事が、何回もありました。
その度に魔理沙は、いつものように不満げな顔をして束を拾いました。
その顔はぎこちなく、まるで、誰かに監視されているようでした。
あと8日。
魔理沙はベッドでシーツを被り、動きませんでした。
ただ目だけが、爛々と見開かれていました。
あと7日。
魔理沙は
あと6日
魔理沙は本を読みました。
ずっと前に読んだ本でしたから、もう一度読むことにしました。
もう残りの食べ物ものこり少ないことに気づきました。
魔理沙は、限界が近付いているのをを感じました。
あと、5日。
魔理沙はいつも思っていました。
はやく外に出たい、そう思っていました。
外を考えるだけでいつまでも暮らしていけそうでした。
4日。
魔理沙は恨めしげに窓に張り付いていました。
外は素晴らしく晴れ渡っていて、とても心地良さそうでした。
いつもなら、こんな日は外に飛び出して好きなように振る舞って、それから―
気が付けば、日は沈んでいました。
あと3日。
魔理沙は、残り少ない乾パンを朝食として囓っていました。
季節はそろそろ夏、暑くなって来ています。
魔理沙の肌にはじっとりと汗が浮かび、痛んでしまったので捨てた果物には虫が集っていました。
別段に魔理沙は虫が嫌い、というわけでは無いので放って置いたのですが、蟲の一匹が、魔理沙の耳元を
ぷん と、小さな音を立てて通り過ぎました。
ひっ、
と小さな声を出して魔理沙は椅子から転げ落ちました。
そのまま逃げるように壁まで這いずって、ぎゃあ とも うわあ ともつかないなんともへんてこな叫びを上げながら、何もない眼の前に向かって腕を振り回しました。
そうしていて、ふと気がつくころには、もう日が暮れていて、魔理沙は自分の膝を抱えて震えていました。
そして自分のしていた事を思い出すと、魔理沙は不機嫌そうに立ち上がり、倒れた椅子を直してからベッドに横になりました。
その夜。
何の変哲もない、一匹の蚊が、魔理沙の手に止まりました。
残り2日。
魔理沙はまた乾パンを食べようと、缶詰に手を伸ばしました。
そこで魔理沙は、気付きました。
自分の右手の甲、第2指の基関節から5mm程度下。
ちいさくて、あかい、ひとつの「はれ」がありました。
見方によっては、ちいさな、ちいさな「瘤」にも見えました。
「…………ぅ…………そ」
「…………そんな」
「ぁ………ああぁあぁぁああああぁぁぁぁああぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁあぁぁぁぁあああああ!!」
魔理沙は勢いよく立ちあがり、めちゃくちゃに叫びながら玄関から飛び出しました。
どれくらい走ったかわからない頃に魔理沙はようやく走るのをやめました。
それから胃液をぶちまけて、また自分の手を見やりました。
腫れが――――――瘤が、2つになっていました。
それは魔理沙が眺めているうちにやがてぷつ、と4つに増えました。
ぷつ。8つ。
ぷつ。16。
手の甲は瘤に覆われ、最初に見えていたものはもう最初の3倍にも膨れ上がっていました。
ぷつ。ぷつ。ぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつ
うで。
かきむしってもむだ。 もっと、もっとふえる。
ぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつ
むね。
ぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつ
おなか。
ぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつ
あし。
もう、からだぜんぶ。いいえ、まだ。
ぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつ
首を昇って。
ぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつ
おはこんばんちわ、アルマァです。なんか久しぶりの投稿だったり。
病死ってなんかおっかなくて美しいなあと思ったので書いた。反省も後悔もしていない。
>>1様
ありがとうございます。ちょっとでも鼻で笑っていただけたのなら幸いですw
>>2 NutsIn先任曹長様
人間誰しもギリギリまで生き延びようと考えるものです。少なくとも魔理沙は。
みんなー!地球はいいところだぞー!早く降りてこーい!!
>>3様
ありがとうございます。 少しふざけすぎましたかね・・・・
>>4様
ありがとうございます。そう言っていただけると最高に嬉しいですイヤほんと
>>5様
アリス爆発が宇宙の真理。これは絶対的に定められた全世界の定義であr(ry
>>6様
その一言のためのあとがきです(キリッ 賢い奴から死んで行くんです。悪賢いのが生き残る。
>>7様
じつはよくわかんないんですよねぇアレ いつかは読みたい&やりたい。
おまけ
「なぁ、アリス」
「何、魔理沙?」
「アリスって可愛いな」
「〜〜〜〜〜〜ッ」
アリスは爆発した。
その衝撃は博麗大結界、幻想郷という僅かな垣根を遥かに超え、宇宙をも包み込んだ。
後に、「ビッグ・バン」と呼ばれる爆発である。
その過程で生まれた幾多の塵やガスが万有引力をもって集まり、膨らみ、気の遠くなるような時間を経て、無数の天体を産んだ。
その天体に一際大きな物が一つ。
これを仮に、「地球」と名付ける。
大きな体を持ってなお引き合った塊は、ぶつかり合い、一つとなり、衝撃で中に貯まったガスや水蒸気を放出する。
そうしてそのガスや水は、やはり引力を持って地球に覆いかぶさり、共に宇宙を旅した。
大気が、生まれた。
尚も引き合って衝突を繰り返す天体は、やがて衝突の力で熱く、熱く燃え上がるようになった。
それらは真っ赤に光り、飴のように溶けた岩は、まるで余りに巨大な湖のようであった。
そして、比重の重い金属は、飴の中へと沈んで行く。
後にこの金属は、この天体の核となる。
変化があった。
上空の水蒸気が凝結し、雲を成し、水として地表へ降り注ぎ始めたのだ。
雨である。
しかしその恵みは、地表へと届くことは無かった。
余りにも大きな熱量を持った地表は、その鼻先で雨を蒸発させてしまうのだ。
そしてその水蒸気はまた上空へ登り、雨としてまた地表を目指す。
そんな螺旋が、幾度となく行われた。
やがて、地球は周囲の小さな星々を皆飲み込んでしまった。
衝突のエネルギーが失われた地球は、少しずつ熱を失う。
そして、雨はようやく岩の「海」へと身を投ずる。
ようやく、地表に恵みは与えられた。
そして冷やされた岩は、我々のよく知る形へと姿を変えた。
この地球に、ようやく大地が生まれたのだ。
そして尚降り続く雨は大地の隆起に沿って流れ、地を削り、川や湖、果ては途方も無く巨大な湖である『海』すらも造ってしまった。
初の生命の誕生は、その『海』の中である。
この地球ができた頃よりおよそ6億年。
当時、大気に多く存在した『めたん』、『あんもにあ』、『二酸化炭素』と言った物質が寄せ集まり、なんらかの「奇跡」が起きた上で、生命は誕生した。
その奇跡を起こしたエネルギーとは、太陽光や雷、放射線とも言われている。
そうして生まれた生命は、小さな、小さな物であったが、二つに増える事を覚え、四つ、八つと数を増やし、それらが集まり、なお大きな物になる事を覚え、やがては「草木」として地上に進出し、大気に酸素をもたらした。
海に残った物は自力で動くようになり、草木に遅れて地上に進出し、知恵を持ち、人へと進化を遂げた。
それらが更なる英知を得て、文明を築き上げ、その過程で幾多の幻想が生まれた。
それらが意思を持ち、地球と同じように合わさり、集まり、固まって、この幻想郷は再度、同じくして異なる姿を持って蘇ったのだ。
にとり「っていうフィクションを考えたんだけどどうかな」
早苗「もう全部わかっててやってんだろ、なぁ」
アルマァ
http://twitter.com/ilsaber
- 作品情報
- 作品集:
- 20
- 投稿日時:
- 2010/09/24 11:10:01
- 更新日時:
- 2010/09/26 19:26:50
- 分類
- 魔理沙
魔理沙は早くに家を出るべきでした。
早くに楽になれたでしょうから。
あと、後書き。
宇宙の真理は、アリス爆発。ユニバース!!
後書き?が意味がよくわからなくて、本編を台無しにしてる気がします
閉じこもったのが運のつき、か
一度用心し過ぎちまうとそれを解除するのが怖くなるよなあ
その末路が単に蚊にさされたことを呪いと勘違いかあ