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『妹紅が好きな輝夜と優しい妹紅』 作者: tori

妹紅が好きな輝夜と優しい妹紅

作品集: 21 投稿日時: 2010/10/01 09:34:58 更新日時: 2010/10/07 23:23:16
輝夜は妹紅と戦うたび何か物足りなさを感じていた。

妹紅と殺し合いをするのが嫌なわけではない。
妹紅が嫌いになったわけではない。
むしろ好きだと言える。
こう見えても妹紅は永遠亭に時々泊まる。時々一緒に食事もとる。
外出をしない輝夜にとって唯一の『友達』と言えるかもしれない。

輝夜は考えた。
なぜ最近物足りなさを感じているのかを。

答えは簡単だった。
妹紅との戦いが飽きてきているのだ。

輝夜と妹紅は毎日のように喧嘩していた。
実力にそんなに差はなかった。
お互い何万回勝って何万回負けたかは数えていない。
数え切れないほど戦っていた。

輝夜は妹紅の戦うときの癖を知り尽くしていた。
妹紅も輝夜の戦うときの癖を知り尽くしていた。
お互いがお互いの表も裏も知り尽くしていた。

あまりに変化が無かった。
何百年も戦い続けてきた結果,読み合いもし尽くしてしまった。

輝夜は新鮮なものを求めた。
今までやってこなかったもの。
輝夜は何日も家の中で考え続けていた。
そして良いことを思いついた。
家の兎たちを集めて耳打ちをした。



妹紅は家でのんびりしていた。
ここ数日輝夜が襲撃してこなかった。
だから平和だった。

「妹紅いるかしら!?」

聞き慣れた輝夜の声が聞こえた。
平和な日々も好きだったので居留守でもしようかと思った。

「妹紅は弱虫だから逃げちゃったのかしら?」

「なんだ,またお姫様が私に負けにきたのか?」

乗ってあげることにした。


輝夜はいつも通り喧嘩を売っていた。
でもいつもと違ったのは,今回は湖のところで戦いたいとのこと。
妹紅は断る理由もなかったので素直に従った。



湖の近くに移動した。

「さあ,この辺が良いわね。妹紅掛かってきなさい」

いつも通りの喧嘩が始まった。
弾幕を展開して輝夜に襲いかかる。と思った。

「いてっ!」

妹紅は背後からの投石攻撃をくらった。
何個も何個も石が妹紅の頭をめがけて飛んできた。

「誰だ!?」

妹紅は振り返った。
何十匹もの兎が妹紅に向かって石を投げていた。

妹紅は怒った。
そのとき今度は輝夜が全力で妹紅の首の後ろに手刀を入れた。
妹紅は気を失った。




「よくやったわね。帰って良いわよ」

輝夜は兎たちを褒めていた。
兎たちは竹林の方に帰って行った。


輝夜は考えていた。
何か楽しい新しい遊びはないかと。

急に妹紅を殺したくなった。
妹紅で遊びたくなった。

妹紅は死ぬと灰になる。
灰になってそこから妹紅はまた蘇る。

じゃあ。
妹紅の周りに空気がなかったら。
妹紅は蘇っても蘇っても空気が無くてしぬのかな。
妹紅は死んでも生き返り続ける。
でも生き返ってもまたすぐ死ぬ。
永遠と繰り返されたりするのかな。


輝夜は実験してみた。
妹紅のお腹の部分にロープを巻いて,その先に大きな岩を括り付けた。

そして妹紅と岩を湖の色が濃いところまで飛んでいった。
妹紅は軽かったけど,岩は重かった。

「…ん…」

妹紅は意識が戻ってきた。

「…妹紅おはよう。おやすみなさい」

輝夜は湖の一番深いところで妹紅と岩を湖に落としてみた。

「は…か,かぐ……!!」

妹紅は一瞬にして水に沈んでいった。
目にものすごい恐怖の色を浮かべながら。
輝夜はその様子をただ観察していた。


妹紅は焦った。
しかし焦ったところでどうしようもならない。
腹部に巻かれているロープのせいでどんどん自分が沈んでいっているのが分かった。
ロープをほどきたいがほどけない。
かなりきつく縛っているみたいだ。

火で焼き切る。いや,ここは水中だ。
刃物はないか。ないないないないない。

焦れば焦るほど正常な思考が働かなくなる。
泳ぐ?岩が重すぎる。

ごぼっ

空気が口から出ていった。
頭がぼーっとしてきた。
妹紅は周りを手探りしてみたが何もない。

妹紅は焦った。

思考を巡らせるが。
何も思いつかなかった。
妹紅は死んだ。


その様子を輝夜は上から黙って見ていた。
妹紅が苦しみ恐怖に満ちた顔で死んだとき,輝夜は何とも言えぬ快感を感じた。
しかし,妹紅は灰になって湖を漂い始めた。
ロープを抜けたのだ。

輝夜は思った。
つまらない。失敗した。
…鉄板の下に妹紅を置いて沈めておけば灰は漂わなかったかな。

灰になった妹紅を見て輝夜は湖を後にした。




それから1週間ほど輝夜は前回の反省を生かして,どのようにしたら妹紅で遊べるか考えた。
輝夜は妹紅の恐怖におびえた顔が印象に残っていた。

普段強気な妹紅もあんな顔をするんだ。


念入りに作戦を練った後,守矢神社に向かった。


境内を掃除している東風谷早苗を見つけた。
交渉を開始する。

「こんにちは。少し神様を貸してほしいんだけど」

「…あら…こんにちは。えっと…どういう意味でしょうか?」

「少しあなたのところの神様の力を借りたいのよ」

「それなら…この御守りを買って下さい。御利益ありますよ」

「そうじゃなくて…あなたの神様の能力を借りたいの」

「え…?…どうしてですか?私では駄目なのですか?」

「駄目なの。あなたの神様が必要なのよ」

「…何のためにですか?」

「友人を殺すため。もっともあの子は死なないけど」

「…はあ。…呼んでみます」


常識に捕らわれてはダメだ。と呟きながら神社の中に入っていく早苗を輝夜は見送った。


暫く待つと,空から誰かが降りてきた。

「我を呼ぶのは何処の人ぞ」

「強いて言うなら月の者ね。手伝ってもらいたいことがあるのよ」

「困っている人を見捨てる訳にもいかぬが,早苗から聞いたところ用件は殺生と聞く。如何にぞや我の力を求む」

「んー,友人を殺すため。理由なんてそんなにないわ」

「なら我は手を貸さぬ」

「対価として私がこの神社を信仰してあげるから」

「ふっ。いらぬ。さあ帰った」

「仕方ないね,じゃ意地でも手伝ってもらいたいから,あんたのとこの娘を人質に取るから」

「…言って良い冗談と悪い冗談があるぞ」

輝夜は神社に向かって全力疾走した。
敢えてナイフを神奈子に見えるように携えながら。

神奈子は御柱を輝夜に飛ばす。
威嚇のつもりで飛ばした。
敢えて輝夜はその御柱を避けなかった。

御柱は輝夜の腹部を貫通した。

輝夜は死ぬほど痛かったが,顔に出さずに言った。

「うふふふふ。こんなもので私の足止めかしら。効かないわね」

御柱を体から抜きとり,また疾走する。
虚ろな目をしながら。
神奈子は今度は無数の御柱を輝夜に飛ばした。

輝夜の全身に突き刺さった。
頭に。肩に。腕に。胸に。腹に。腰に。脹ら脛に。足に。

輝夜の頭は弾け飛んだ。脳が飛び出し眼球が飛び出した。
肩に風穴があいた。
右腕は消えた。
胸には何本もの柱が肺,心臓の位置にも突き刺さった。
胃が腸が腎臓が膵臓が肝臓が子宮が飛び出した。
筋肉が切れ骨は折れた。
アキレス腱と靱帯が切れた。

「…これ,どうしようかしら。狂ってたから殺したのは仕方なかったわよね」

神奈子は足下にある肉を見ながら呟いた。
そして水で流すため水道に向かった。


「あら。これで攻撃は終わりかしら?」

後ろから声がした。
さっき肉片にしたはずの者の声がした。

「言ったじゃない。全然効いてないし,痛くもないわ」

輝夜は満面の笑みを浮かべながら嘘をついた。
本当はものすごく痛かった。作戦のためだった。

神奈子は充分すぎるほど動揺していた。
殺しても蘇るし痛くもない人間が目の前には映っていた。

「諏訪子!」

「はいな!!」

後ろから戦いを見ていた諏訪子はすぐさま鉄輪を輝夜にめがけて飛ばした。

輝夜はそれも避けなかった。身体の中身が出てきた。
上からも神奈子の御柱は降ってきて,輝夜のいた場所は真っ赤な池に変わった。

しかし。
「…それだけ?」

さっきと変わらない笑顔の輝夜はまたそこに立っていた。



数十分後。

神奈子と諏訪子は疲れ切っていた。
何度殺しても辛さすら見せない人間を何千回と殺していた。

輝夜は笑みを保っていた。
全ては妹紅のため。

「さて。もう手がないのならあなたのところの娘さんを…殺して良いかしら?」

神奈子と諏訪子は少し話し合い,言った。

「…分かったわ。手伝うから。早苗には手を出さないで」

発言の中には余裕を見せつつ,しかし内心は焦っていた。
これでまだ何時間も輝夜が早苗を襲ってきたら止めきれるか。
否。
もし輝夜が言っているように,本当に効いていなかったら止められるわけはない。

「良かったわ。私も余計な殺生はしたくないから。そうね…明日の巳の刻にでも竹林に来て。それじゃあまた明日」

輝夜は去っていった。

神奈子と諏訪子は早苗に何もなかったことの安堵感でいっぱいだった。



永遠亭に帰るまで輝夜は毒づいていた。
「痛い…気を失いそうだったわ…あの二人め…」

まだ日が明るいうちに眠った。

日がすっかり落ちて真っ暗になった頃,輝夜は起きた。

永琳の薬剤置き場に忍び込む。
そして一番強そうな,ドクロマークの付いている麻酔薬をくすねた。

朝になる。
永琳が無くなった麻酔薬を盗んだ犯人をてゐだと決めつけ喧嘩をしていた。
輝夜はまたてゐが何か問題を起こしたのか,程度に考えて外出した。


昨日戦った二人が約束の場所に来ていた。

輝夜は案内した。竹林の奥の奥のところまで。
かなり進んだところに開けているところがあった。

輝夜はそこで少し待機しているように頼んだ。


輝夜は妹紅を呼びに行った。
妹紅はあの湖に沈めた日以来会ってなかった。

妹紅は輝夜を軽蔑したような怯えるような目つきで見ていた。

「…また私を殺しに来たのか」

「いえ,違うわ。前回のことを謝りに来たの」

「…なんであんなことをしたんだ。…何か悩みでもあるのか?」

輝夜は,あんな卑怯な殺されかたをしても何だかんだで輝夜のことを心配してくれる妹紅に感動した。

「…そうね。ここではちょっと都合が悪いわ。着いてきてくれる?」

妹紅は輝夜のあとをついて行った。
輝夜は神奈子と諏訪子を待機させているところの近くまで行った。

「ねえ,妹紅」

「…どうした?」

「あのね。」

輝夜は妹紅に抱きついた。

「お願いがあるの」

「…私に出来ることなら何でもやるよ」

「そう。ありがとう」

麻酔薬を妹紅に打ち込んだ。


妹紅を神奈子と諏訪子の待つ場所へ運んだ。
神奈子と諏訪子を呼んだ。

神奈子に長く細くて丈夫な柱を何十本か頼んだ。
その柱で,上から見たとき半径1mくらいの円を描くように地面に深々と突き刺す。

諏訪子には半径1mと少しの鉄輪をいくつか頼んだ。
その輪を柱の円の外に補強として取り付けた。

神々の能力を使って作り上げた小さな空間が出来た。
見た目は昔の井戸のようだ。
その中に妹紅を入れた。

河童お手製の網状の蓋をする。


二人の神はその場で帰した。

輝夜はその小さな牢獄に背をもたれてうたた寝した。
最近考えたり行動したり忙しかったから。


「…ん…ここは…」

妹紅は目を覚ました。
変な所に自分はいた。
立ち上がることは出来ないくらいの高さの狭い空間にいた。
上から外は見えた。

「…えっと…私は…輝夜に…。そうだ,輝夜!輝夜!!何かあったのか!!」


その声で輝夜は目を覚ました。
もう日は暮れていた。
うたた寝のつもりだったのに。

「誰かいないのか!!出してくれ!!」

妹紅の声がする。
でも助けない。

「おーい!!誰か!!」

誰もいるわけがない。こんな竹林の奥の奥。

「…よし。はあ!!!」

妹紅のいる牢獄から炎が上がった。
筒の様な形をしているので綺麗に一直線に空へと炎が伸びた。
でもこんなものでこの牢獄は壊れるわけがない。

「…は?何で壊れないんだ?」

妹紅の困った声が聞こえる。
これが壊れるわけがない。神の作ったものだから。

「…誰か!!誰か助けてくれ!!」

妹紅が叫んでいる。
輝夜はその声をただ黙って聞いていた。



数時間後。
妹紅は静かになっていた。

「おなかすいたよう…。」

妹紅は呟いた。
こんなことになるなら何か食べておけば良かった。
何度も何度も壁を叩いたため,妹紅の手は皮が破れていた。

「…けーね。かぐや。おなかすいた…さみしいよ…」

狭く暗い静かな空間に閉じ込められた妹紅はただ悲しんでいた。



夜が明けてきた。
輝夜はまだ牢獄にもたれかかっていた。
妹紅のことはずっと放置していた。
でもそろそろ家に帰らなきゃ永琳が心配するかな。

輝夜は永遠亭に帰って行った。


日が昇ってきた。
輝夜は妹紅の元に帰ってきた。
永琳に数日家を空けることを述べ,いっぱいご飯を食べて帰ってきた。
こっそり妹紅を覗くと,妹紅はぼーっとしていた。

「おなかすいたなぁ…」


日が沈んだ。
輝夜は永遠亭で作ってきたおにぎりをほおばっていた。
妹紅は気が狂いそうだと感じていた。
狭い空間の中に1日中閉じ込められているのだ。
気が狂うのも当然であろう。

「誰かいませんか!?」

妹紅は定期的に叫んでいた。



日が昇ってきた。

輝夜は鳥の鳴く声よりも明るさで目覚めた。

「くそっ!!くそっ!!!」

妹紅が発している炎の明かりだった。
でもどんどん炎は小さく,暗くなっていった。
5分もしないうちに炎は消えた。

「…おなか…へったよ…けーね…」



昼になった。
輝夜は永遠亭に戻ってご飯を食べに行った。



日が沈んだ。
妹紅は時々笑っていた。
妹紅は時々すすり泣きをしていた。
目の前がぼやけてきていた。
立ち上がる気力もたいりょくもなかった。
もうだめかとおもった。

輝夜はそんな妹紅の声を黙って聞いていた。



日が昇った。
日が沈んだ。
日が昇った。

妹紅の小さな声が聞こえた。

「りざれくしょん」

でも妹紅はまた静かになった。

日が沈んだ。
日が昇った。

輝夜はそろそろと思い,牢獄の中を覗き込んだ。
憔悴しきった妹紅がいた。

「もこう」

「…か,かぐや!」

妹紅は笑顔になった。
やつれていたが,すごく良い笑顔だった。

「かぐや,無事だったんだな。…よかった。…私が閉じ込められてるから不安だったんだ。…助けてくれるかい?」

「…助けられないわ」

「……誰かそこに悪いやつがいるのか?…そうか…。無理して助けなくてもいいよ。私は大丈夫だ…」

妹紅はそう言って微笑んだ。
目を瞑ってしまった。
あの綺麗な紅い目をもっと見てたかったのにと輝夜は思った。


日が沈んだ。
日が昇った。


「…もこう?」

「…ああ,輝夜か。……元気かい?」

「…うん。あのね,妹紅」

「……なんだい?」

牢獄の屋根を取り外した。
妹紅の腹部に竹を突き刺した。

「…えっ…」

妹紅の白い服が赤く染まっていく。
妹紅は輝夜の目を見つめていた。
妹紅は灰になった。
こんなにも簡単に。妹紅は死んだ。
妹紅の死ぬ瞬間の顔。
安堵。期待。恐怖。絶望。苦痛。
ありとあらゆる感情が混ざっていた。

また蓋をした。
灰は風が吹いても飛ぶことはなかった。
輝夜は今までにない快感に襲われていた。

「…かぐや」

数分後妹紅の声がした。

「…かぐや,助けて?」

屋根を開ける。
今度は妹紅の脳天に全力で竹を突き刺した。
めきっ。
妹紅は白目を剥いた。
体中を痙攣させてる。
涎を垂らして。
脳を垂らして。
涙を流して。
妹紅は灰になった。

輝夜はその顔も忘れることが出来なかった。

輝夜はそっと屋根を閉じた。


妹紅は嗚咽していた。
不安。絶望。
輝夜は喘いでいた。
快感。満足感。


輝夜はまた屋根を開けた。
妹紅は怯える子犬のような目をしていた。

「ねえ…もうやめて…」

妹紅は泣いていた。

「ねえ゛ぇ゛……」

妹紅の口に竹を突き刺した。
妹紅は痙攣していた。
妹紅は息が出来なそうだった。
妹紅はまた白目になった。
妹紅はまた泣いていた。
妹紅は悲しんでいた。
妹紅は灰になった。

輝夜は竹を妹紅の灰の上に突き刺しておいた。


数分後。
妹紅の叫び声が聞こえた。
妹紅は生き返ったはずなのに。
生き返ったはずなのに。
既に竹が足に突き刺さっていた。

輝夜は新しい竹を腹部に突き刺した。
灰になったが,そのまま放置しておいた。
妹紅は生き返った。
既に足と腹部に竹が刺さっていた。

「あ゛…」

何度か繰り返した。


輝夜は竹を一通り抜きさって屋根をした。



日が沈んだ。
日が昇った。

輝夜は屋根越しに妹紅を見てみた。
妹紅はどこを見てるか分からなかった。
ただ,壁を黙って見ていた。

輝夜は妹紅を外へと出してみた。
妹紅が倒れたので,今まで妹紅がいたところにもたれかけさせてみた。
妹紅は静かだった。
呼吸しているのかさえ分からなかった。

妹紅は輝夜の右下のあたりを黙って見ていた。
輝夜は妹紅が見ているところを見てみたが何もなかった。

妹紅は輝夜の右下のあたりを黙って見ていた。
輝夜は妹紅が見ているところには何もないことを知っていた。

妹紅は輝夜の右下のあたりを黙って見ていた。
輝夜は妹紅の瞳を,紅く綺麗な瞳を覗き込んでみた。

妹紅の綺麗な瞳に輝夜は映っていた。
輝夜はその瞳がたまらなく気に入った。

妹紅の瞳に指を近づける。
妹紅の瞳に触れてみる。
温かい。
妹紅の瞳を舐めてみる。
少ししょっぱい。
それでいて甘い。

妹紅の右の瞳を刳り抜いて取ってみる。
綺麗な瞳だ。
妹紅は悲しそうな目をしている。
そんな妹紅も可愛かった。

妹紅にそっと口づけした。
妹紅は何も言わない。
輝夜は少し悲しくなった。

妹紅の服を脱がせた。
持ってきたナイフでお腹を開いてみた。
黒くて。どくどくいってた。
内臓は綺麗だった。
でも。今回はそこで灰になった。


妹紅は生き返った。
輝夜は待っていた。
持ってきたナイフでお腹を開いてみた。
妹紅の内臓は動いていなかった。
胃の中はからっぽだった。
けど。
奥の方で動いているものがある気がした。

肺だ。
妹紅の呼吸の印。
妹紅が息をするたびに大きく動いていた。
綺麗。
触ってみた。
妹紅は苦しそうにした。
ぎゅっとつぶしてみた。
妹紅は目を見開いた後に灰になった。


妹紅は生き返った。
輝夜は待っていた。
持ってきたナイフでお腹を開いてみた。
今度はもっと下のほうを見てみたい。
下に下に開いてみた。

これが…妹紅の子宮。
隣に卵巣があって。
ここに妹紅の子が出来るのか。
輝夜は感動していた。
あ。
丁寧に扱ってたはずなのに卵管を切ってしまったみたい。
ってことは。
今回はこの卵巣を触って良いんだよね。
小さくて。弱々しくて。
これを妹紅は守ってるんだよね。
輝夜は手に取ってみた。
綺麗だった。
ひとしきり眺めてみた。
将来お母さんになるかもしれない妹紅。
そんなことを考えながら。

妹紅が息をしなくなっていることに気づく。
そろそろ灰になるのか。
輝夜は手に持っていた卵巣を潰した。

ぷちっ




妹紅は生き返った。
輝夜は待っていた。
持ってきたナイフでお腹を開いてみた。
今度はもっと奥を見てみたい。
肺の。もっと奥の。動いている。
心臓。
蓬莱の薬はここに貯まっていると聞く。
これがなくなれば。

輝夜は妹紅の内臓を寄せて心臓を見てみた。
必死に動いていた。
妹紅の全身に血液を送るために。
輝夜は触れてみた。
妹紅の表情に苦痛が走った。

もしこの心臓を私が食べたら。
妹紅はもう生き返らなくなるのかな。

輝夜はどきどきしていた。
ここで妹紅が生きるのも,死ぬのも,輝夜にかかっていた。
輝夜はどうしようか迷った。
妹紅がいないのは寂しい。
だけど妹紅が私の中にいてくれる。

輝夜は悩んだ末,心臓を握りつぶした。





二十日くらい遊んだ。
楽しかった。
妹紅のいろんな場所を見た。
食べた。
時は一瞬で過ぎた。
その間,妹紅は何も話さなかった。
ただ私の右下ばかり見ていた。
それが少し残念だった。と輝夜は思っていた。


妹紅をそろそろ帰してあげることにした。
物事は楽しい間に終わられるのが一番だと輝夜は考えた。
輝夜は妹紅を立たせようとしたが自分では立てなかったので仕方ないから運んでいった。


妹紅の家のなかに妹紅を寝かせてあげた。

「また遊ぼうね」

妹紅は返事をしなかった。

輝夜は永遠亭に帰って行った。



文々。新聞によると1ヶ月ほど前から寺子屋で人間に慕われている上白沢慧音先生の様子が変だったという。
時々,もこう…と呟いていたという。
2週間ほど前,竹林に上白沢慧音が入っていくのが目撃されたが,1週間ほど前,目を真っ赤にして目の下にクマができた彼女が竹林から出てくるのが目撃された。
そして2日前から竹林の近くにある小屋に入って,その小屋からは出てきていない。
と報道されていた。


「…ごめんな。妹紅…」

妹紅は慧音の左下を黙って見ていた。

「…ごめんな。…本当にごめんな…妹紅…。私は…私は全然役に立てない」

慧音は大粒の涙をこぼした。
妹紅は慧音の左下を黙って見ていた。


「…妹紅。おかゆだぞ。一緒に食べような」

妹紅の口におかゆを運ぶ。

「…妹紅。私は,妹紅が元気になるまで,ずっとそばにいてやるからな…。…もう離れないからな…」

妹紅におかゆを飲み込ませた。
妹紅は慧音の左下を黙って見ていた。

「…妹紅。…私が死ぬまでずっと一緒にいてくれ…よ…。私は私が死ぬまで,死んでも絶対に妹紅を見捨てないから!」

慧音は泣きながら叫んだ。
妹紅は慧音の左下を黙って見ていた。
ただ,一瞬。
ほんの一瞬。
妹紅の目に光が灯ったように見えた。
私は妹紅が好きです。
初めて見た時から大好きでした。

この作品を作るのに結構掛かりましたが,当初の予定通りの内容で終われて良かったです。
できるだけ多くの人に楽しんでもらえることをお祈りして。

追記
コメ1さん,早い指摘ありがとうございました。

追記
沢山のコメントありがとうございました。
楽しみに読ませてもらっていました。
tori
作品情報
作品集:
21
投稿日時:
2010/10/01 09:34:58
更新日時:
2010/10/07 23:23:16
分類
妹紅
輝夜
竹林
守矢神社
早苗
神奈子
諏訪子
1. 名無し ■2010/10/01 18:40:52
加奈子…………?
2. NutsIn先任曹長 ■2010/10/01 20:26:35
妹紅は右下を見た。
絶望にも似た愛を見た。

妹紅は左下を見た。
友の涙と愛を見た。

ヌクヌク寝ている場合じゃない!!起きなきゃ!!
3. おうじ ■2010/10/01 22:35:55
このかぐや可愛い
4. 名無し ■2010/10/02 04:03:53
かぐやこわい
5. 上海専用便器 ■2010/10/02 13:45:10
微笑ましすぎて、涙が出てきた
6. 名無し ■2010/10/02 19:12:11
ぐーや可愛い
姫様の気持わかるなー
7. 名無し ■2010/10/02 20:00:27
河童の道具は便利だね〜
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