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『Down!!Down!!Dawn!!』 作者: NutsIn先任曹長
穴があったら入りたい。
昔の人はうまいことを言ったものだ。
まさしく、今の私の精神状態を的確に表現している。
私は大変な過ちを犯した。
仲間に大怪我を負わした。
その後、彼女がどうなったか知らない。
逃げ出したからだ。
ごめんなさい。
心の中で何度も詫びながら、闇雲に走った。
目の前には、入るにはうってつけの穴があった。
地底への入り口。
穴があったから入ることにした。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
私、霧雨魔理沙に仕事の依頼があった。
私は霧雨魔法店という何でも屋を営んでいる。
何でも屋とは、文字通り何でもやる、非常に便利な店である。
が、何故か皆、専門店の方に仕事を持っていく。
例えば、私の得意分野である妖怪退治は博麗神社や守矢神社に、といった具合である。
やはり、何でも屋だと器用貧乏に思われるのだろうか。
依頼人は、最初は店の方に行ったが留守だったのでこちらに来たと言った。
よく私がアリスの家にいることが分かったな。
まあ、私とアリスが恋人同士であることは、烏天狗の新聞によって幻想郷中に知れ渡っているからな。
アリスがお茶を淹れてくれた。
仕事のパートナーも務めてくれるアリスも同席してもらって、
私は依頼人から仕事の内容を聞くことにした。
仕事の内容は、人探しである。
ここで言う『人』とは人間のことではなく、人型をした知的存在『妖怪』を指す。
私の恋人であるアリスも、何を隠そう『妖怪』である。愛に種族は関係ない。
私の仕事は、捜索人を見つけ出し、生死を問わず依頼人の元に届けることだ。
私は依頼人から捜索人の顔写真と前金を受け取った。
金の入った封筒には、私が想定した報酬の全額よりも多い額が入っていた。
そのことを指摘すると、依頼人は、
色々と入用になるでしょ。
アリスを、見た目何の変哲も無い彼女のお腹を見ながらそう答えた。
アリスは頬を赤らめた。
アリスは、二人の愛の結晶である子供を妊娠している。
私もアリスも女性であるが、子を孕む手段はある。
幻想郷では珍しくない。
しばらくしたら、私はアリスの『母親と姉貴達』に挨拶に行くつもりだ。
お嬢さんを私にください、と。
依頼人が帰った後、私も仕事の準備をするために店に戻ることにした。
最初にやるべきことは、聞き込みだな。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
地底は、かつては忌み嫌われる妖怪達を封印した場所であった。
今は、一大歓楽街であり、治安も旧都を仕切る鬼達の尽力によってかなり良くなっている。
地上の妖怪は地底には立ち入らない約定があるが、現在は有名無実化している。
ぐるるるぅぅぅ〜〜〜。
でも、私の目の前には、野犬の群れがいる。
私と同じかそれ以上の体格をした妖怪犬だ。
治安が良いのはメインストリートであって、
私がそこを避けて通るような、人気の無い、薄暗い裏道は該当しない。
私は怖くてたまらなかったが、逃げる気は起きなかった。
犬に食い殺されて死ぬなんて、卑怯者に相応しい末路だからだ。
犬の腹の足しになるだけ、誰かの役に立てるだけ、まだましだ。
10匹以上の野犬が私を取り囲み、何匹かが一斉に飛び掛ってきた。
私は押し倒され、衣服を引き裂かれた。
野犬の一匹が、ドロワースの隠しどころを破かれて露になった股間をひとしきり嗅ぐと、
執拗に舐め始めた。
私は不覚にも感じてしまった。
秘所が犬の唾液と分泌物でしとどに濡れると、
犬は私の背中を前足で押さえ込み、己が剛直を突き立てた。
「〜〜〜〜〜っ!!」
私は怖くてたまらなかったが、抵抗する気は起きなかった。
犬にレイプされるなんて、卑怯者に相応しい末路だからだ。
犬の慰み者になるだけ、誰かの役に立てるだけ、まだましだ。
う、う、うおおおおぉぉぉ〜〜〜〜〜ん。
私にペニスをつきたてている犬が長い時間をかけて果てた。
どぴゅどびゅびゅぶぶぶうぶぶびゅ〜〜〜〜〜。
「〜〜〜〜〜ぁぁっぁぁ〜〜〜〜〜!!!!!」
私も声を殺しながら、イッてしまった。
私と犬の結合部から、膣に収まりきらなかった精子がもれてきた。
しばらくして私からペニスが引き抜かれると、さらに大量の精子があふれ出した。
直ぐに次の犬がやってきた。
今度は私を仰向けにして犯し始めた。
他の犬達が私を湿った鼻先でつついたり、舐めたりしている。
私を犯している犬は、急に仰向けになった。
私はその犬の物をくわえ込んでいるので、必然的に、その犬の上に乗っかる形となった。
そんな私のがら空きになったアヌスに、別の犬がペニスを突っ込んだ。
「んううぅぅぅぅ〜〜〜〜〜!!!!!」
私はその衝撃に歯を食いしばり耐えた。
だが、直ぐに口を開けることになった。
私の眼前に、また別の犬のそそり立ったペニスがあったからだ。
「ぺちょっ、ぺちょぺちゃ」
私は舌で犬に奉仕した。
その犬は私の奉仕を痛く気に入り、
硬くて太いペニスを私の口に、それこそ喉の奥まで押し込んだ。
「う、うげぇぇぇぇ、ぐ、ぐぷ、ぐぽっ、ぐぽっ」
私は吐き気をこらえて、奉仕を続けた。
そうしているうちに、私の前と後ろの穴を蹂躙している犬達が限界を迎えたようだ。
私も何かが上ってくるのを感じた。
口を、喉を犯している犬も痙攣を始めた。
わおおおおおぉぉぉぉ〜〜〜〜〜ん。
うおおおおおぉぉぉぉ〜〜〜〜〜ん。
えあおおおおぉぉぉぉ〜〜〜〜〜ん。
「う、うあああぁぁっぁぁぁぁ〜〜〜〜〜ぁあああぁぁ〜〜〜〜〜!!!!!」
どぽっどぶぶぶどぼぼどぼっ、ぴゅびゅびゅ〜〜〜〜〜。
ごぼごぼぼぼぼぼおぼぼごぼどぼぼおぼぼっぼぶびゅ〜〜〜〜〜。
私の意識は、一気に高みへと押し上げられた。
私の体は大量の犬のザーメンを飲み込もうとしたが、
無理だったので、口と二つの穴から垂れ流した。
「あ、あ、ぁぁっぁぁぁぁぁ……」
私は、快感に酔いしれた。
もはや恐怖など感じない。
私は変態で淫乱だったのか。
私を犯していない犬はまだまだいる。
まあいいや。
これが、私にとって相応しい末路なのだから。
私は、どん底に堕ちて行くのを感じた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
聞き込みの結果、捜索人は地底に向かったことが分かった。
私はかつて地底が地上と隔絶していた頃、アリスにサポートをしてもらい、
異変解決に乗り込んだことがある。
この異変解決後、地底は観光名所と化しているが、
荒事になるかもしれないので、またアリスにサポートを頼むことにした。
「人形のメンテは済んでるわ」
「悪いな、アリス」
アリスの家を訪れたところ、既に通話機能及び自爆機能付きオプション人形の準備ができていた。
流石私の恋人だ。やることにそつが無いぜ。
私とアリスは手分けして、私の箒に魔力充填装置を兼ねた人形懸架
――要するに人形ホルダーだ――を追加した。
これで、箒の左右に4体ずつの人形が装着できる。
さらに、柄の先端に手綱が付けられる。
高速で無茶な機動を行なって、私が箒から振り落とされないようにと、アリスが薦めた装備だ。
「今回の人形はすごいわよ」
「何がすごいんだ?」
「従来通り貴方からの操作の他に、遠隔操作もできるのよ」
「すごいぜ!!」
「でしょ?デフォルトでは従来通り貴方が操作して、いざという時は私が操るわ」
全く、アリスはすごいぜ!!
以前の異変では、決まったフォーメーションでしか人形を操れなかったが、
アリスが操作してくれるとなれば、攻撃と防御のバリエーションが増える。
「私も同行できれば良いのだけれど……」
「もうお前だけの体じゃないんだぜ?」
「それは貴方にも言えることよ?」
「だから、アリスのお願い通り、霊夢に声をかけておいたぜ」
心配性のアリスは、私の身に何か起きるんじゃないかと心配して、
いざという時に直ぐに救援を送れるように、しかるべき筋に連絡するよう言ったのだ。
だから恥を忍んで、親友でありライバルでもある、博麗霊夢に頼んだのだ。
私が困ったときに助けに来てください、と。
私は霊夢に笑われるかと思ったが、そんなことはなかった。
怯えられた。
「……てなことがあってだな、まあ、後で霊夢が様子を見に来るってよ」
「あはは、でもそれだけ貴方が心配だということを分かってね」
「分かってるぜ、アリス」
準備はよし。
私はアリスにキスをして、
「行って来るぜ。支援よろしく」
「行ってらっしゃい。任せてちょうだい」
地底に向け、出発した。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
目の前に具沢山のシチューが出されると、思考が停止した。
私は、給仕をしてくれた老女の姿をした妖怪猫を見た。
微笑んでいた老婆が口を開いた。
おあがんなさい。
柔らかく煮込まれた野菜とホワイトソースの味が口いっぱいに広がり、
私は咀嚼する間も惜しみつつ、程よく冷めたシチューを胃の腑に詰め込んだ。
私はいただきますの一言も言えなかった。
ありがとうの一言も言えなかった。
言う間もなく、口の中がが一杯になったからだ。
私は、どん底から救い出されたようだ。
ようだ、というのもこの時、私の意識は朦朧としていた。
あの陵辱劇の参加者であった、妖怪犬の群れは、一匹残らず肉塊になっていた。
血塗れの棍棒みたいな右手をした、黒羽の女性。
彼女のことを知ってはいるが思い出せない。
間欠泉地下センターで働いていると聞いたことがある。
私を手押し車に乗せた猫女。
彼女のことを知ってはいるが思い出せない。
確か死体を運ぶとか。私も死体になったのか。
ここで、私の意識は途切れる。
三日間、眠り続けた(ことを後で知った)私は、
三日間、付きっ切りで看病してくれた(ことをこれも後で知った)
地霊殿の主、古明地さとりから、
私は、地霊殿に保護されたことを知った。
私が何か言おうと思ったら、さとりは私に立てるか聞いた。
私は寝ていたベッドから起き上がり、床にそっと足を下ろした。
立ち上がったとき少しよろめいたが、もう大丈夫。
私はさとりに連れられて、広い屋敷の中を歩いた。
着いた先は、食堂のようだ。
ペット達の大食堂だと、さとりは説明してくれた。
中はかなり広い。さとりは大勢のペットと暮らしているとは聞いていたが、
かなり上方修正する必要があった。
さとりは給仕をしていた老婆と何か話をしていたが、
話が済むと、私を適当な席に座らせ、仕事があると言って食堂を出て行った。
さとりと話をしていた老婆が、
私の前に具沢山のシチューが盛られた器を置いた。
私の目が覚めたとき、
さとりは私の心を読んで、
私が空腹であることに気付いたのだろう。
で、気が付くと礼の一言も言わずにがっついていたのであった。
私はおかわりを3回した。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
かつては、落ちたら絡め取られて一巻の終わりの蜘蛛の網。
今は、落ちたら優しくキャッチして命を救う蜘蛛の網。
地上の者にとって恐怖の対象であった土蜘蛛、黒谷ヤマメは、
今は地下に無数にある奈落の穴に転落防止の網を張っていて、
転落したものを中心に、蜘蛛の糸を垂らしたお釈迦様のように慕われ始めている。
「よう、魔理沙。弾幕(や)るか?」
「よう、ヤマメ。生憎と仕事中なんだ。こいつ、見なかったか?」
「うーん、私はここしばらくセーフティネットの点検してたけど、
この子は落ちてこなかったな。キスメ、見なかった?」
私から借りた捜索人の写真を、ヤマメは作業の手伝いをしていたキスメに見せると、
ふるふる。
桶から顔を出したキスメは首を横に振った。
「悪いね、力になれなくて」
「いいって。邪魔したな」
「今度飲みに行こうよ。彼女も連れてさ」
「はは、おごりなら考えとくぜ」
地底にまでアリスのことが知れ渡ってたぜ。
『ひょっとしたら、私達有名人?』
人形からアリスの声が聞こえてきた。
「らしいな」
そっか、私達有名人か。
地下の大河を横切る橋に、橋姫、水橋パルスィの姿は無かった。
私はそのまま通り過ぎ、旧都に向かった。
きっと彼女もそこにいる。
旧都。
繁華街。
飛んでいる時は身を切るような寒さも、
人混みを歩くと汗が吹き出るくらいの熱気を感じる。
手っ取り早く情報収集を行なうために、
顔役である星熊勇儀の馴染みの飲み屋に行ってみると、
いた。
立派な一本角の鬼と橋姫がいた。
勇儀は愛用の杯に並々と注がれた琥珀色の液体を呷っている。
パルスィは勇儀の杯に達磨のようなボトルのウイスキーをドボドボ注いでいる。
「お楽しみのところ申し訳ないが……」
「なによ魔理沙、アリスとかいうあんたの嫁の自慢に来たの?妬ましいわ」
「そうか、ついに祝言を挙げたか。おめでとう。
私も呼んでくれりゃ、秘蔵の酒を持って祝いに行ったのに」
「いやいや、まだ結婚して無いっつうの。相手の家族に挨拶にも行ってないのに」
「なに、彼女とは遊びだったわけ?じゃあ彼女に伝えてちょうだい。
丑の刻参りの道具を貸してあげるって」
「ち、違うって!!私とアリスはラブラブだ!!
それにアリスは効果覿面の立派な藁人形を作れるから借りる必要は無い!!」
「何だ魔理沙、結局惚気に来たのか?」
「ぜぇっぜぇっ、ち、違う……。仕事だ。この子見なかったか?探してるんだ」
ようやく本題に入れた。
私は捜索人の写真を勇儀とパルスィに見せた。
「あら、この子……」
「ああ、見た見た。地霊殿の猫と烏が持っていった死体がこの子に似ていたな」
畜生!!最悪のケースだがこれも仕事だ。確認しなければならない。
「……もう、火にくべられたりしてないよな?」
「冗談!!冗談だって。二人が野犬に襲われていたのを助けて、地霊殿で手当てするって行ってたよ」
「もう少し、幸せ者の魔理沙の暗い顔を見ていたかったのに。残念ね」
「……今の一言でテンションダダ下がりだぜ。勇儀も質の悪い冗談言うなよ。恋人の影響か?」
意趣返しに、こちらもちょっぴり冗談で返したが、
勇儀はパルスィの胸をまさぐりながら、かっかっかと笑いやがった。
パルスィは顔を真っ赤にしているが、抵抗しない。
「お邪魔のようだから、もう行くぜ。地霊殿だな」
「おう、今度はお前さんの彼女も交えて、や・ら・な・い・か?」
「私はアリスと二人でしっぽりとヤるぜ」
私は、今にもおっぱじめようとしている二人の元を去った。
『……二人で、しっぽりと……』
「なんだ、アリス、乱交の方がよかったか?」
人形の一体が手にした馬上槍でつついてきた。
「イテ!!痛いです!!アリスさん、痛いです!!悪い!!悪かったって!!」
アリスに下ネタは厳禁だぜ。
地霊殿まであと少し。
地霊殿の主、古明地さとりに会って話をつければ、
依頼の大部分は終了だ。
まず無いと思うが、さとりがお得意の『覚り』でネチネチと攻撃してくる場合、
私とアリスの仲を引き裂くようなえげつない奴で来るだろう。
『さとりが精神攻撃を仕掛けてくるとすると、おそらく……』
「ああ、私達のことだな。そうなったら……」
『私が遠隔操作で人形を……』
全て爆破するわね。
アリスをパートナーにした場合のメリットは、
通常の倍のボムを持てる事だ。
オプションでありボムでもある人形は、8体全て健在だ。
さとりよ、私の心を読んで、馬鹿なことは思い止まれ。
私達の予想は外れた。
地霊殿への途中。
4面ボスのさとりではなく、
5面ボスの火焔猫燐と6面ボスの霊烏路空が待ち構えていて、
いきなり攻撃を仕掛けてきた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
心身共にすっかり回復した私は、さとりさんに私を地霊殿で働かせてくれるように頼んだ。
私を拾ってくれたさとりさん達の役に立ちたい。
そちらが望むなら、ペット達の慰み者でもかまわない。
痛くしないのであれば、切り刻んでペット達の食事にしてくれてもかまわない。
口に出そうとしたら、さとりさんが世にも恐ろしい目つきで私を睨みつけた。
私は自虐的な考えを封印した。
さとりさんの目つきは、元の眠そうなものに戻った。
ともかく、私は地霊殿の皆のために働きたいことを訴えた。
さとりさんは了解した。
ただ、私はペットではなく、臨時の雇い人として扱われた。
とりあえず、さとりさんには感謝しておく。
私の立場はパートタイマーではあるが、地霊殿の皆は私に親切にしてくれた。
猫のお婆さんはいつも食事を大盛りにしてくれる。
あんたは育ち盛りなんだからもっと食べて大きくならなきゃって、いつも言っている。
私、貴方よりも年上だと思うけど。
地霊殿及び周辺の警備をしている無口な犬の大男は、
道に迷った私を肩に乗せて目的地に連れて行ってくれた。
私をレイプした駄犬共とは大違いだ。
だけど、子供扱いは勘弁して欲しい。
地霊殿内の掃除をしているインコの女の子はいい話し相手だ。
仕事の合間に、私達は他愛の無いおしゃべりに花を咲かせた。
おしゃべりに夢中になって仕事が疎かになり、さとりさんに二人揃ってしかられた。
さとりさんの妹のこいしさんは、どうもよく分からない。
私が大盛りご飯と格闘していた時は、こいしさんは傍らで自分のお弁当を食べていた。
私が犬の警備員の右肩に乗せられていた時は、こいしさんは左肩に乗っていた。
私がインコの娘とおしゃべりしていた時は、こいしさんはいつの間にか話の輪に入っていた。
私とインコの娘がさとりさんにお説教を受けていた時は、こいしさんはいつの間にか姿をくらませていた。
だけど、面白い娘だからいいや。
私の命の恩人である火焔猫燐と霊烏路空の両先輩は、さとりさんの側近のような立場だ。
だからなのか、毎日忙しく働いているようだ。
食事も大食堂ではなく、さとりさんやこいしさんと同じ食堂で食べている。
だから、私と顔を合わせる機会はそんなに無いはずだ。
にも拘らず、二人とも暇を見つけては私に良くしてくれた。
三人で食べたゆで卵は、美味しかった。
ちょっと塩気が利きすぎかな。
嬉しい時でも涙は溢れ出すことを、何百年ぶりかに思い出した。
私は、久しぶりに安らいだ日々を送ることができた。
そんな日々は長続きしないことは知ってはいたが、考えないようにした。
地霊殿で働き出して一月が経とうとしていた。
外回りから帰ってきたお燐先輩が気になる噂を聞いたそうだ。
『あの人』が、人を雇って私を探させているそうだ。
私は得体の知れない不安に襲われたが、
お燐先輩と、いつの間にか仕事場から帰ってきたお空先輩が、
私を守るといってくれた。
もし、私のせいで二人に、地霊殿の皆に迷惑がかかるようなら……。
年貢の納め時か。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
『魔理沙、後ろ!!』
「分かってる!!」
私はさらに加速して、追尾してくる地霊の大群を振り切ろうとした。
「くっそう!!ケツに食らいついて離れないぜ!!」
『魔理沙のお尻は安産型で魅力的だから。二人目は貴方が生む?』
「考えておく、ぜ!!」
右に急旋回。
その刹那、私のいた場所に巨大な火球が飛んできた。
その火球の威力たるや、私の追っかけ共が一瞬で消滅したほどだ。
お燐は直ぐに先程の倍の地霊の大群を召喚した。
お空の右腕の制御棒の先端に火球が生まれ、先程の倍の大きさに膨れ始めた。
この二人の連携はなかなかのものだ。
お燐は地霊を召喚して私を狩り立て、お空はそんな私を砲撃する。
お燐に肉薄しようとすると、護衛のゾンビフェアリー共が襲い掛かってくるし、
お空に近づこうとすると、右腕に装着した制御棒を棍棒として殴りかかってくる。
そして現在、私は二人の通常弾幕の雨あられをかいくぐっている真っ最中だ。
オプションはまだ8つともある。
いくつかボムとして使い、突破口を開くか。
いや、それだとこちらの守りが薄くなり、あっという間に連中の餌食だ。
8体の人形達は、雲霞の如く沸いてくる雑魚共を蹴散らすのに手一杯だ。
アリスが制御してくれなかったら、私は今頃ピチュッていただろう。
奴らの弾幕の薄いところは……。
『後方、しか無いわ……』
アリスの言うとおりだ。
後方、つまり地霊殿とは反対方向。
奴ら、私にとっとと帰れと言っているのだ。
尻尾を巻いて、一度帰るか。
力ずくで押し通り、お燐とお空の餌食になるか。
運良く突破して、満身創痍の状態でさとりと対戦となるか。
私は、可能な限り無傷でこの場を切り抜けて地霊殿に向かう方法を、
攻撃と回避を行ないながら考えた。
まず存在しないだろうが。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
地上。
アリス邸。
アリスは、魔理沙のオプション人形8体を七色のフィンガーテクニックで操作しながら、
お燐とお空の攻撃を切り抜ける方法を考えていた。
最良の、唯一の方法は、撤退しか思いつかなかった。
現場の魔理沙も既に同じ結論を出しているだろうか。
いいや、魔理沙はその結論を却下したのだろう。
そうでなければ、とっくにケツを捲くっている筈だ。
魔理沙の逃げ足は天下一品だ。
私と交際を始める前は、悪魔の巣食う紅魔館から無期限借用と称する魔道書の略奪を
頻繁にしていたのだから。
魔理沙は、依頼を完遂するつもりだ。
私はパートナーとして、魔理沙を支援しなければならない。
だけど、それ以上に魔理沙を危険にさらす訳には行かない。
やはり、人形をボムとして何体か消費しなければならないのか。
魔理沙のオプション人形は、私が丹精込めて作成したものだ。
だが、魔理沙の願いを叶える為に自爆させることに躊躇はしない。
魔理沙に爆風に留意するように言おうとしたとき、
「忙しそうね」
霊夢が何時の間にか私の横に立って、人形操作器の表示装置を見ていた。
人形達から送られるライブ映像が画面に映し出されている。
「今日はここまで。ボムを使って魔理沙を引き上げさせるわ」
「魔理沙にはその気が無いようだけど?」
霊夢も気付いていたか。
私は画面を見ながら、人形達を操りながら霊夢と話す。
「この二人の鉄壁の守りは突破できないわ。
無理やり突破したとしても、次のさとり戦は厳しいものになるわ」
「魔理沙なら、無理やりの方を選ぶんじゃない?」
「……でも、私が頼めば、魔理沙は……」
「あんたの頼みなら帰ってくるわね。いやいやながら」
「っ!!わかってるわよ!!でも、でも、魔理沙が怪我するようなことがあったら……」
これが私の本音だ。
魔理沙が無事なら、それでいい。
「……私なら、魔理沙がこの場を切り抜けるのに手を貸すことができるわよ」
「え……」
「一人はヤれるわ。もう一人は魔理沙が何とかしなくちゃならないけど」
霊夢と魔理沙のコンビは、数々の異変を解決してきた。
魔理沙との連携は、認めたくないが、私よりも上手く取れるだろう。
私は半ば機械的に、画面の向こうの人形達を操り続ける。
考えながらでも操作できる。
霊夢のこと。
私と魔理沙が付き合うことを報告した時。
霊夢は祝福してくれた。
その日の夜は、霊夢が色々な人妖を集めて宴会を開いてくれた。
私も魔理沙も霊夢も普段以上に飲んだ。
トイレを借りた後、宴会場に向かっている途中。
井戸端で、霊夢は顔を洗っていた。
トイレに向かうときも見たから、そのときから延々と顔を洗っていたのか。
霊夢は顔を洗っていた。肩を震わせながら。声を押し殺しながら。
私は、うすうす知っていた。
霊夢も魔理沙を愛していたのだということを。
私は霊夢を見た。
霊夢は無表情で画面を見ている。
たとえ普段は親しい妖怪でも、異変の時は虫けらのように踏みつけられる博麗の巫女の顔。
「今、魔理沙に必要なのはパートナー(伴侶)ではないわ。バディ(相棒)よ」
霊夢の言い分は良く分かった。
私は霊夢に、最後の確認をした。
「これ、操作できる?」
「外の世界の『てれびげえむ』みたいなもんでしょ?
私、霖之助さんに『えむえすえっくす』ってのを見せてもらったことがあるわ」
……やったことがある、では無く、見ただけかい。
しょうがない、細かいところは追々教えればいいか。
私は席を立った。
「You have control」
霊夢が席に着いた。
「I have control」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
地底。
魔理沙 VS お燐、お空
現在、戦闘継続中。
お燐が地霊やゾンビフェアリーのエスコートを引き連れ、
接近戦をしようと私に突っ込んできた。
私と人形達は弾幕で迎撃したが、取り巻き連中の守りは堅かった。
私は人形の自爆トリガーに手を掛けた。
不意に、人形の4体が前方に出て、人形を4角とした正方形の魔力障壁を展開した。
お燐と手下共が障壁に激突した。
地霊とゾンビフェアリーの大部分が撃破された。
お燐は、体を襲う衝撃に耐えながらも、力ずくで突破した。
今度は、残り4体の人形が魔力障壁を展開した。
お燐は、これも打ち破ろうとした。
できなかった。
先程の障壁よりも頑丈さが桁違いだからだ。
お燐は助走をつけようと後ろに下がろうとした。
できなかった。
先程破った障壁が、前方のそれと同様のものとなってお燐の背中にぶつかったからだ。
前方と後方の2枚の障壁に挟まれるお燐。
二重の衝撃に苦しむお燐。
2枚の障壁の面積が徐々に縮まり、
2枚の障壁の間隔が徐々に狭まり、
8体の人形が離脱する。
その刹那、
お燐を挟み込んだ二重障壁は、
弾けた。
ぎ、にゃあああああああぁああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……ぁぁぁ…………
墜落したお燐の絶叫が木霊して、やがて聞こえなくなった。
私は体に爆風を浴びた。
爆風は、私に更なるスピードを与えた。
私は突撃した。
前方へ、お空の下へ。
お空は砲撃すべきか殴りかかるべきか、とっさの判断ができなかった。
私のスピードは、お空に激突する寸前でゼロになった。
私は手綱を胴体にしっかり絡めた。
両手で握り締めたミニ八卦炉から逆ベクトルの運動エネルギーが発生した。
そのエネルギーは、お空をウェルダンのロースト・レイブンにして、
私を高速でバックさせ、内臓がペシャンコになるような感覚を与えた。
撃つと動く、私の全力全壊、ゼロ距離での魔砲、ファイナル・マスタースパークだ!!
うにゅううううううぅうううううぅぅぅうううぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ……ぅぅぅ…………
墜落したお空の絶叫が木霊して、やがて聞こえなくなった。
私は、しばらくバックのまま飛び続け、
体からダメージが抜けたところで箒の向きを変えて、通常飛行に戻った。
私は、8体の人形を箒の懸架に収納した。
先程、大量の魔力を消費したから充填しておかないと。
本来は守りに使われる結界。
それを攻めに使用するなんて、
そんな奴は人間では霊夢くらいだろう。
「さんきゅ、霊夢」
『お礼はお賽銭でお願い』
案の定、霊夢だった。
よくアリスが人形の制御を霊夢に譲ったものだ。
あいつも丸くなったなぁ。
地霊殿が見えてきた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
地上。
アリス邸。
魔理沙は危機を乗り越えた。
霊夢は慣れない人形の操作に凝り固まった肩を揉んだ。
アリスは最初の基本操作以外、霊夢に教える必要は無かった。
こんこん。ぷしゅ。
霊夢が振り向いた。
私は二本目のビンジュースも同様に、
栓抜きで2回王冠を叩いてから開けた。
そろそろ人形の操作を返してもらおう。
「I have control」
霊夢は席を立った。
「You have control」
私は霊夢に冷えたオレンジジュースのビンを渡すと、席に着いた。
霊夢は一息にジュースを半分ほど空けると、
引き続き、私の隣で画面を注視した。
私もジュースに口をつけながら、画面に注目した。
画面に、豪奢な屋敷の玄関が映し出された。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
窓の外。
閃光と轟音とかすかな地鳴りがした。
間を空けてもう一回。
私とインコ娘はそれを見て、聞いて、感じて黙り込んでしまった。
先程までのかしましい雰囲気は霧散した。
犬の警備員がやってきて、私を小脇に抱えると走り出した。
インコ娘は怯えた顔でそれを見守った。
私は大食堂に連れてこられた。
猫のお婆さんが、厨房の奥にある地下食料庫を開けて待っていた。
『その時』が来てしまった。
逃げ隠れはしない。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
地霊殿。
私は客人として招き入れられた。
地霊殿の主、古明地さとり自らが出迎え、私を応接間に案内した。
私は浮かべた箒の手綱を引きながら(増設した装備で箒は手に持てなくなった)、
さとりの後ろを歩いた。
屋敷の中には、見事に誰もいない。
だが、あまり友好的とは言い難い気配を感じる。
「すいませんね。念のため、ペット達には隠れているように言ってあります」
ペット達を避難させたのは、私に危害を加えないようにするためか、
私が危害を加えないようにするためか。
或いは、さとりが私と戦う時に巻き添えを食わないようにするためか。
私の疑問の思考に、さとりは答えなかった。
応接間に通され、さとりが自ら淹れた上物の紅茶と手作りらしいクッキーが出された。
二人きりの会談。
私は、早速捜索人の写真を取り出し、本題に入った。
「彼女、ここにいるな」
「そう、貴方は彼女を探してくるように依頼されたのですね。魔理沙さん。
……『生死を問わず』ですか、殺してでも連れて帰るというわけですね」
「死体になっていた場合でも連れて帰って欲しい、と、いう意味だ。
さとり、お前、人の心は読めても言葉の真意は読めないようだな」
こいしが箒の手綱を引っ張って遊んでいる。
私はこいしの頭を両手の拳で挟んで、グリグリ。
「彼女、上手くやってるようだな。お燐とお空の熱烈歓迎振りでよく分かるぜ」
「彼女を助けたのはあの子達です。私のペット達は仲間意識が強いですから」
「て、ことは、あの子はペット仲間と認められたのか」
「ええ、現在、彼女の立場はアルバイトですが」
「何故、ペットにしない?
ペットの皆に仲間だと思われているんだろう?
彼女自身も皆を慕っているんだろう?
何故だ?」
「そのことについては、彼女も不満に思っています。
ここは行く当ての無いものの楽園たれと思っています。
しかし、まだ帰る場所のある彼女は、ここに居るべきではないと思っています」
こいしが私の茶菓子をムシャムシャ食べている。
私はこいしの手からラスト1枚のクッキーを取り上げ、口に放り込んだ。
「私は、人の居場所を奪ってまでペットにしたいとは思いません。
彼女は、自身が犯した罪を恐れて、こんな穴の底まで落ちてきました。
でも、最近、彼女は罪に向き合おうとしています。
どうやらそれは貴方の所為のようですが」
「私?」
「誰かが地上で彼女を探しているという噂は聞いています。
いずれ地下にも来るだろうと思っていました。
彼女は皆に迷惑をかけないようにと、迎えが来たら出て行くつもりのようです」
私は冷めた紅茶を飲み干した。
私は、私の膝枕で寝ているこいしの頭を撫でた。
「貴方は彼女に危害を加える気はないようですね。
貴方の依頼人はどうだか分かりかねますが」
さとりは私に紅茶のお替りを淹れてくれた。
さとりは寝ていたこいしを起こすと席を立った。
「それでは彼女を呼んできますから、しばらくお待ちください」
さとりとこいしは応接室を出て行った。
紅茶が冷めるまで、待たされることはないだろう。
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地霊殿の門前は、さとりさんのペット達で溢れかえっていた。
猫のお婆さん。
犬の大男。
インコの娘さん。
何時の間にかここに居たこいしさん。
黒焦げになったお燐先輩とお空先輩。
そして、さとりさん。
そして、そして、――。
別れを惜しんで涙を流すのも何百年ぶりだろうか。
魔理沙は、箒をアイドリングさせて待っている。
魔理沙の周囲を飛んでいる2体の人形は、霊夢とアリスが操作しているそうだ。
異変解決メンバーがわざわざ私を探しに来るとは、『あの人』の本気を今更ながらに知った。
私は、心の中で思いながら口にできなかった言葉を、
叫んだ。
「みんなーーー!!本っ当に、あ〜り〜が〜と〜〜〜〜〜!!!!!」
皆は歓声を上げた。
私は箒にまたがり魔理沙の腰に手を回した。
さとりさんは、箒にまたがり私の腰に手を回しているこいしさんを引き剥がし、
「忘れ物よ」
野犬の群れに襲われた際に失くした、
人参のネックレス。
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私は、因幡てゐを箒に乗せて、仄暗い地底を飛んでいる。
地上に戻り、てゐを依頼人の八意永琳に引き渡せば、依頼終了だ。
2ケツなので、安全速度での遊覧飛行だ。
てゐは私の腰にしがみつき、黙っている。
私と編隊を組んで飛んでいる2体の人形もだんまりだ。
私は、沈黙に耐え切れなくなった。
「あ〜、てゐ、永琳、それほどひどいお仕置きしないと思うぜ。
せいぜい、試薬の実験台とか、モルグの掃除1ヶ月とか」
馬鹿馬鹿!!私の馬鹿!!
てゐを怯えさせてどうする!!
てゐがようやく反応した。
「魔理沙、鈴仙、どうなったの?」
よかった。
それなら詳細に答えられる。
「あ〜、鈴仙な、ピンピンしているぜ。
1週間ぐらいはベッドで寝たきりだったけど、リハビリ頑張ってたぜ。
時々逃げ出してたけどな。
今じゃピョンピョン飛び跳ねられるぐらいだぜ。
たまに、永琳に診療所の雑務をやらされてるぜ」
てゐは驚きのこもった声を上げた。
「えっ!?ほんとに!?私、悪戯で、鈴仙の両足の骨、折っちゃったんだよ!?嘘じゃないよね!?」
「嘘はお前の十八番だろ。ホントだって。
ここ一月はしょっちゅう永遠亭に通ってたから、ついでに鈴仙の様子も見てたんだよ」
てゐは再び驚きのこもった声を上げた。
「えっ!?魔理沙、どうしたの!?どこか具合が悪いの!?」
「あっ!!いや……、その……」
てゐは、私の知っているてゐの意地悪っぷりを発揮し始めた。
「ほらほら、答えなさいよ〜。うりうり」
「ぎゃはははは!!やめ、ちょ、止めて!!脇の下弱いの!!」
私は何とかてゐのくすぐり攻めに耐えて、墜落寸前となった箒の体勢を立て直した。
「その、な、アリスのことで……」
「え、アリス、どうしたの……?」
「その、えと、あ〜……」
『私、魔理沙の子を妊娠したの』
アリスが代わりに答えてくれた。
いつになっても、この手の質問に答えるのはこっぱずかしい。
てゐの驚き、三度。
「え、えぇ〜〜〜〜〜!?」
「一月前、アリスがな、具合が悪いって、それで、永遠亭に行ってだな」
『おめでたですって、永琳先生に言われたのよね。その時の魔理沙の顔ったら……』
「あ、わ〜〜〜〜!!わ〜〜〜〜!!わ〜〜〜〜〜!!」
『あんた、ウチでありったけのお守り買ってったわよね〜。おかげで、不良在庫が無くなって助かったわ〜』
「れ、霊夢!!ありゃ、不良品か!?とんでもないもん掴ませやがって〜!!」
『不良在庫よ、モノは確かよ』
「ま、魔理沙、アリス、そ、そりゃ〜おめでと〜……」
1ヶ月前、てゐが出奔した直後のことだから知らないのも無理は無い。
私は地上までの道中、ずっとてゐにいぢられ続けた。
先程の沈黙よりはましだ。
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魔理沙の操る箒は旧都上空に来た。
大きな飲み屋らしき建物から、橋姫をお姫様抱っこした鬼の姐さんが出てきた。
鬼はこちらを見上げた。
橋姫は片手に持った一升瓶を持ったまま、こちらに向かって両手をブンブン振っている。
へべれけに酔った橋姫が振り回す一升瓶が鬼の頭を直撃して砕け散ったが、
鬼は微動だにせず、笑顔をこちらに向けている。
渡る者の無い橋を通過して、地上への出口に近づいてきた。
眼下の無数の竪穴に、蜘蛛の巣が張ってあるのが見える。
その中のとびきり大きな穴に、これまた立派な巣が張ってあった。
大きな立派な蜘蛛の巣。その上に寝転がっている2つの人影が見える。
土蜘蛛は、片目を開けると、片手をこちらに振った。
もう一人のすやすや寝ている小柄な女の子は……、誰?
傍らの空の桶を見て、私はこの子は釣瓶落としだと思い至った。
もうすぐ地上だ。
私は、どうなるだろうか。
どうにかなってしまう前に、私にはするべきことがある。
先ずは、お師匠さんに土下座でも何でもして、鈴仙に会わせて貰おう。
そして、
謝るのだ。
ごめんなさいと。
声に出して。
鈴仙は私を許さないかもしれない。
謝罪の言葉を、嘘だ、と切って捨てるかもしれない。
私は嘘つき兎だ。当然の反応だ。
それでも、言わなければならない。
声に出して言わなければならない。
地霊殿では、別れ際に、簡潔に、本音を絶叫した。
なかなかに気分の良いものだった。
永遠亭に戻ってもできるだろうか?
お師匠さんのお仕置きに耐えられてから考えることにしよう。
前方に光が見えてきた。
兎は月の光の下で飛び跳ねるものだ。
偶には、お日様の下で跳ねるのも悪くはない。
私はお師匠さんのお仕置きに怯えていた。
私は鈴仙の拒絶を恐れていた。
しかし、私は地の底で光を見た。
私は逃げるわけにはいかなかった。
私達は、地上に飛び出た。
光に包まれ、一瞬、視界が真っ白になった。
明けない夜はない。
昔の人はうまいことを言ったものだ。
たとえ、絶望的な状況でも光明はある。
無ければ、それは探し方が足りないのです。
スターライトスコープの準備を!!
2010年10月11日:皆様のコメントへの返事追加
>1様
嘘つき兎のてゐは、嘘の通用しない世界でみんなの善意に囲まれて過ごし、
最後に本音を叫んで現実に向き合う決心をしました。
ちなみに、かつて窃盗癖のあった魔理沙はアリスと恋に落ち、更正しました。
今回は支援に回った霊夢とアリスの会話には、現場とはまた違った緊張感を出させようとしました。
考えてみたら、てゐ、魔理沙、アリスの三人は、一人称が『私』なんですよね〜。
『捜索人』の正体はウサギだってばらした方が良かったかな。
>2様
『捜索人』は鈴仙だとミスリードさせようという気が少し有りました。
鈴仙は両足へし折られたからな〜。その辺は、てゐがいかに誠意を尽くせるかに懸かっているでしょうね。
気丈に振舞いながら影で涙する霊夢って、グッと来るでしょう。
>3様
自身の感情を殺して、魔理沙のことを優先させるプロの会話を意識しました。
>4様
複座の戦闘機の操縦交代をイメージしました。
箒に脱出装置を付けて、使用時に『Good Luck!!』と言わせようかとも思いました。
>5様
アリスの実家に挨拶に行った時、アリスの家族はおめでたいと思うだろうか…。
>6様
バッドエンドが日常的な産廃でも、たまには良いでしょ。
>7様
酷い事なんて…。
ちょいと、鈴仙が永琳から普段受けているお仕置きを味わうだけですよ。
うーさーぎーおーいしかーのーやーまー。
NutsIn先任曹長
作品情報
作品集:
21
投稿日時:
2010/10/02 15:23:34
更新日時:
2010/10/11 09:20:26
分類
魔理沙
アリス
マリアリ
霊夢
地霊殿の面々
逃げ出した悪戯好き
獣姦
てゐかぁ…すごい予想出来なかった…タグ見直したら分かったけど…。そうだよね…てゐは月から逃げて何百年何千年何億年って嘘まみれだったもんね…。
アリスも霊夢も良い役してる…。
最初の〜〜〜の前は現在の魔理沙で、〜〜〜の下は過去の魔理沙で、だと思って読んでたけどそんな勘違いしてても楽しかった…。
イイハナシダー( ;∀;)
初めて霊夢がかわいそうに見えた。ほかの産廃でいくら殺されようがざまぁだったのにねぇ。
帰還したてゐには相当ひどい運命が待ち構えているのだな