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『小夜の雪白』 作者: kyoune
夢を、見た。
とても悲しい、夢を見た。
※
幻想郷。師走の亥の刻。
まるで真っ黒に塗りつぶした画用紙にぽっかりと穴が開いているかのように、夜空には丸い満月が周囲から浮いた光を放っていた。
数日前から降り続ける雪で外の地面は厚く覆われており、ただでさえ冷たい外気を更に凍てつかせている。人も、妖怪も、獣も、その他諸々の生き物達も、幻想郷に住まう者達は皆この非常識な寒さには思わず悪態を吐かずにはいられない。それでもいつもと変わらぬ暮らしをしているのは、あの竹林に住む不死鳥くらいのものだ。
ここは博麗の巫女が住まう神社。
奇矯な信者によって集められた(押収された)賽銭によって暖房器具などは一応用意しているものの、何分お世辞にも裕福とは言えない暮らしの為か、中に住む者はしきりに吹き込んでくる隙間風に一日中身を震わせていなければならなかった。
今日もその神社の主――博麗霊夢は、猫の如く炬燵に潜り込んだまま、鳥肌の立った細い両腕をしきりに擦り合わせていた。
「あー……なんでこんなに寒いのかしら……」
たまらず淹れた茶を啜る。もうこれが三杯目の出がらしなので、随分と冴えない薄味になってしまっている。できれば新しい茶葉で入れなおしたいのだが、もうすぐ年末故そんな贅沢は自重しておきたい所だ。
「本当ね。ここは私みたいな身の柄の者が来る所じゃないのかしら。もう一基くらいすとーぶ≠買ってもいいんじゃなくって?」
そんな霊夢に、炬燵の向かい側に座った妖怪――八雲紫が微笑みながら言う。その笑みにはまるで玩具を買ってもらえない年下の子供をあしらう様な、意地の悪い感情が込められていた。
「残念だけど、ウチはアンタみたいに恵まれた暮らしはしてないのよ。可哀想だと思うなら賽銭の一つでも寄付してくれないかしら」
「あら、賽銭っていうのは元々神に奉げるお金のはずよ? 仲介役の巫女が好きに使っちゃっていいのかしら」
「どーだっていいわよそんな事。神様だってきっと貧しいものには慈悲を与える筈なんだから」
憤慨したように霊夢が茶を飲み干す。四杯目を淹れようと思ったが、ふと見ると急須の中にはもうお湯が残っていなかった。台所まで行って湯を沸かしてくるのというのも面倒だし、何よりその為には一度この炬燵から出なくてはならない。それは御免だ。
霊夢は仕方なく茶碗から手を離すと、冷え始めた両腕を炬燵の中に突っ込んだ。
「大体、何でアンタがここにいるのよ。寝てなくていいわけ?」
紫に向かって細い視線を投げつけながら、迷惑そうに尋ねる。
「あら、私は冬はいつも眠ってばかりいる生き物だと思われてたのかしら。確かに春になるまでは少し眠いけど、熊みたいに冬中冬眠してるって訳でもないのよ」
「あっそ。アンタの所の狐や猫は放っといていいの?」
「橙はともかく、藍だってもう立派な式神ですもの。私が出かけてる間だってしっかり家事をやってくれてるわ」
「言っとくけど、私の家で夕飯食べてこうたってそうは行かないからね」
「分かってるわよ。どうせ貴女、明日食べるものだってまだ用意できてないんでしょう?」
「……うるさいわよ」
少し頬を染めて拗ねたような霊夢と、くすくすと微笑を絶やさない紫。
二人は炬燵の机越しに適当な四方山話を交わしながら、やがてだんだんとまどろみ始めた瞼を持ち上げるのが億劫になってきたのを感じていた。
※
「……今日は満月ね」
二人の間が少し無言のまま時が経ったと思った頃、ふと紫が口を開いた。
「そうね」
それに対して、霊夢は特に興味もなさそうに返事だけ返す。
「……雪、止まないわね」
「別にアンタ、スキマから帰っていけるでしょ?」
「……そうね」
取り留めの無い会話。
その時――窓の外を見つめる紫の目が、談笑していた時よりも少し寂しげになっている事に霊夢は気づいた。
紫ももう眠いのだろうか。
「……ねぇ、霊夢」
「何よ」
首の向きを動かさないまま、頬杖をついた紫が少し小さな声を出した。
「……人間って、脆いわよね」
「…………」
場に、静かな空気が流れた。
「まるでこの降りさかる雪の粒のよう。生きていられる時間は短く、いずれは溶けて跡形もなくなる。落ちたくなくても落ちるしかなく、どう足掻いても運命は変えられない。風が吹けば浚われ、日が照れば消え失せ……触れば無くなって」
「珍しいわね。アンタがいきなりそんなこと言い出すなんて」
霊夢が、紫の言葉を遮るように口を挟んだ。
「何か思う所でもあったのかしら?」
「…………さあね」
また暫く、沈黙が流れる。
このまま炬燵で転寝してしまうかもしれない、と霊夢が思った時――再び紫が口を開いた。
「私ね……今日、夢を見たの」
「夢?」
「ええ、霊夢が消える夢」
「…………」
「鮮明な夢じゃなかったわ。記憶もおぼろげだけど……気づいたら霊夢はいなくなってたの。どこを探したって居なかったし、名前を呼んでも何も返ってこない」
紫は外を見つめたまま、続ける。
「とにかく私の周りから霊夢≠チていう存在が消えて無くなってたの。ただそれだけの夢だけど……私はとても哀しかった。……目が覚めたときに改めて思い知ったわ。今のは夢だけど、いつかは絶対に現実になるんだって」
「…………」
その時の紫の寂しげな横顔を見て、霊夢は何故今日紫が家に来たのかが分かった。
目を伏せてきた現実を思わず再認識してしまい、不安になってしまったのだろう。いつもはそんな事を感じさせない紫が、何故か今日に限ってとても弱々しく見える。
「……人の事を夢の中で勝手に殺されても困るわね」
「……そんな短い一生で、悲しくならないの?」
「さあね。でも、アンタら妖怪が思ってるほど人間ってそこまでひ弱じゃないわよ。そりゃあアンタらに比べれば生きていられる時間は短いし、ちょっとの事ですぐ死ぬから、そこら辺にいる虫けらみたいに見えちゃうのかもしれないけどね。けど、人間は人間なりに頑張って生きてるつもりよ」
そうきっぱりと言い切る霊夢に――紫は何故だか、心を底から支えられたような気がした。
「……そう。……私がこんな事を言い出すのもおかしかったかしら」
「ええ。かなりね」
「……ふふっ」
紫が微笑む。
それだけで、今までこの場に流れていた空気は一気に弛緩したような気がした。
「……さ、そろそろアンタも帰ったら? もう随分遅いし、アンタの所の式神も帰りを待ってるんじゃない?」
壁に掛けた時計の針が丑の刻を指し始めたのを見て、霊夢がため息交じりにそう言った。
正直、こっちも少し眠くなってきた所だ。いつまでも居座られていても迷惑というもの。
「そうね。そろそろお暇するわ」
紫はそう言って炬燵からゆっくりと立ち上がると、右手の人差し指をすっと宙に躍らせた。すると指が通った跡の空間に少しずつ切れ込みが入り、最早見慣れたスキマが現れる。両端には可愛らしいリボンが結ばれてるが、スキマの中にはぎょろついた目玉が幾つも浮かび上がり、不気味な雰囲気を醸し出している。いつも思うが、これはもしかして紫の趣味なのだろうか。
「じゃあね」
紫は自ら作り出したスキマに半身を潜らせると、霊夢に向かって片手をひらひらと振り、やがて全身をスキマの中に溶け込ませていった。
スキマが閉じきってしまうと、後には霊夢一人だけの静寂に響く、雪の降る音だけが残る。
「……寝よう」
ぱちん、と、部屋に吊るされた電球の消える音が響いた。
※
「……ん、やっぱり寒い……」
寝室に敷いた布団に潜り込むと、霊夢の体を刺すような冷たさが襲った。やはりこの季節の布団は地獄だという事を、知りたくないほど思い知らされる。
「外の世界のでんきもーふ≠ニか……欲しいんだけどな……」
こういう時に、外の世界はつくづく便利だと思う。実際に行った事は無いのでわからないが、紫によると夏は涼しく冬は暖かく、人間が手を煩わせる事など殆ど無いそうなのだ。幻想郷を特別不自由に感じるわけではないが、そう言われては外の世界に対して一種の憧れに似た感情を持ってしまう。
一度は行ってみたくてたまに紫に言ってみるのだが、紫からはいつも駄目だと言われる。紫は結構外の世界にも出入りしているのに、どうして私は駄目なんだろう。
「(ま……分かってるけどね……)」
そう思いながらも襲い掛かってくる睡魔には抗えず、霊夢がその瞼を閉じようとした――その時だった。
「あら、もう寝ちゃうの?」
「!?」
突然、自分の背中から聞き慣れた声が発せられた。
吃驚して体ごと後ろを振り返ると、そこには――
「こんばんは。お邪魔してるわ」
自分のすぐ隣で横になって布団に潜り込んでいる、紫が居た。
「……帰ったんじゃなかったの?」
「まぁいいじゃない。今夜は満月の所為か、目が冴えて眠れないの」
紫はもごもごとそう言って布団を首まで被ると、霊夢の体に抱きつくかのように近くまですり寄ってきた。いつも被っている帽子を脱いだ紫は、何だかちょっと違う、妙に大人びた印象を受けた。
「私はアンタの抱き枕じゃないんだけどね」
そう言いつつも、霊夢は特に抵抗する事無く横になったまま嘆息する。別にわざわざ驚かなくても、紫が夜中に布団に潜りこんでくることは、今までにもたまにあった事なのだ。
――そして。
「……紫」
霊夢の色白い頬には、心なしか薄く朱が差していた。
自分の心臓の鼓動が、段々と早くなっていくのを感じる。
背中の紫の体が、妙に温かく感じる。
紫の吐息を、首筋に感じる。
こんな夜はいつも決まって――
紫が霊夢を求めてくる夜だった。
「霊夢……」
紫がゆっくりと顔を寄せてくる。
霊夢は自分から近づく事もなく、かと言って離れる事もなく、紫の唇をただ受け入れた。
「ん……」
二人の唇が、静かに重なった。
「……ん、ちゅっ……」
紫と霊夢はしばらくのあいだ、互いの唇をついばみ合うような軽いキスを何度も交わした。
唇を交えながらもたまに瞳を開き、潤んだ瞳でお互いを見詰め合う。霊夢も紫もその頬はすっかり紅潮していて、それが更に二人の気持ちを加速させていく。
紫は霊夢の細い体に左手を回して抱きしめ、残った右手で熱くなった頬を押さえた。二人の胸の高鳴りはキスを交わすにつれてどんどん大きくなっていく。
「ちゅ……ん、……んんっ……んむっ……」
やがて、紫の舌が霊夢の閉ざされた唇を少しずつこじ開け口内に侵入してきた。
それはむずがゆく、どうにももどかしい感触で。霊夢は口腔に入ってきた紫の舌に自分の舌をそっと触れさせると、そのまま唾液で濡れた舌同士を絡ませあわせた。
「……ぇいむ……」
「……うか……いぃ……」
はっきりとしないかつぜつで互いの名前を呼び合う。
そのまま口を開けると二人は思い切り舌を絡み合わせ、卑猥な音を立てながらお互いの舌を貪りあっていった。
どさっ
何かに耐えかねたのか――紫は布団を跳ねて起き上がると、霊夢の体に馬乗りの姿勢で乗っかった。
紫の唇は下になった霊夢との唇の間に、一筋の唾液の糸を繋げている。
「……嫌がらないのね」
いつもの高飛車な紫とは違う優しい声が、ひんやりとした寝室に響き渡った。
「嫌がって欲しかったの? アンタってそういう趣味だったんだ」
「違うわよ。貴女ってこういうことするの、あまり好きそうに見えないし」
その言葉に、霊夢は少しだけ心にわだかまりを感じた。そういう言い方は、まるで紫が好きもののようじゃないか。もしかして私以外とも「こういうこと」をしていたりするのだろうか。
そう感じてしまった霊夢は少し拗ねたような表情で、見つめてくる紫から視線をはずすと少し意地悪そうに言った。
「……だったらどうだって言うのよ。私がもし嫌だって言ったら、アンタは大人しくここでやめるのかしら?」
「……まさか。そんな訳ないじゃない」
「だったら無意味な事訊いてんじゃないわよ」
「そうね。……ふふっ、ごめんなさい」
そう言ってくすっと笑う紫の瞳が、何故だか霊夢はまだ寂しげに見えた。炬燵で話していたときに感じたあの目と同じように。
「じゃ、服脱がすわよ」
「脱ぐの? 寒いんだけど……」
「大丈夫よ。私が暖めてあげるわ」
「……そんな恥ずかしい台詞吐かないで」
薄く頬を染める霊夢を尻目に、紫は手際よく巫女服を脱がせていった。するすると羽織を下ろしていくと、やがて胸を隠すために巻きつけられた白いさらしが顔を覗かせる。
霊夢の胸は少し小さめで、さらしに締め付けられている事を考慮しても小ぶりなものだった。紫は背中にある結び目を解くと、くるくると体を回すようにさらしを外していった。
「あ……」
霊夢が恥ずかしげに声を上げる。完全にさらしをとり浚ってしまった胸部からは、何も纏わぬ状態となった二つの丘が現れた。少し平坦なのは否めないが、その丘の頂点には桃色の小さな突起がぴくぴくと震えて立っている。
「可愛いわね」
「……それはどういう意味かしら」
「別に」
そう言うと紫は、その細い指を霊夢の胸にゆっくりと沿わせ始めた。外側から進んでいって、徐々に乳首に近づけていく。
「……っ」
指先が乳首に到達すると、親指と人差し指で側面を挟むようにまさぐる。その度に霊夢は声を震わせ、体に伝う確かな感覚を感じていた。
「指、つめたい……」
「あらそう? なら……」
その言葉を受けて、紫は霊夢のもう片方の胸に顔を近づける。そっと唾液で濡れた舌を伸ばして乳首の先端に触れさせると、やがて胸全体を飲み込むかのように舌での愛撫を始めた。
「暖めてあげるわ」
「……ひゃっ……」
両の胸を指と舌で愛撫され、それは霊夢に甘美な刺激となって伝わっていく。そこに存在する確かな快感が、霊夢の脳の芯を揺さぶっていった。
「随分感度良いわよね。小さいからかしら」
「うるさ……んっ……」
瞼を強く閉じながら、紫が与えてくれる快感に身を任せる。次第に吐く吐息は荒くなっていき、段々と気分は高まっていく。
右の胸を冷たい指先で捏ね繰り回され、同時に左の胸を温かい紫の舌で吸い上げるように舐められるその感触は、自分独りで行うものとは違う、何か特別な甘い感情が混じっているような気がした。
「……紫……っ」
「感じてきたかしら」
紫は右手の指先を震える霊夢の乳首から離すと、白魚のように滑らかな霊夢の腹部へそのまま人差し指を沿わせていった。ゆっくり、ゆっくりと牛歩のような遅さで進む紫の指先は、霊夢にとっては妙にくすぐったいのと同時に……ある種の焦らされるような感覚を刻まれていく。
「……っふ……」
思わず、息が漏れる。
その反応を見て紫が、愛惜しいものを見るような目で「ふふっ」と微笑んだ。
紫は唇を左の乳首からそっと離すと、そのまま右手の指とは逆方向に、霊夢の首筋に沿って唾液に濡れた舌の先端を這わせ始めた。
「……やっ……ちょっと紫……」
「霊夢、これ好きでしょう?」
頬を強張らせて快感に抵抗する霊夢を尻目に、その首筋には蝸牛が通った後のように紫の唾液が線を描いていく。やがて舌が霊夢の耳の付け根まで到達すると、紫はそのまま耳全体を口の中に含み、飴を舐めるかのように舌先をちろちろと動かし始めた。
「ひっ……耳は……ダメ……」
霊夢の弱点を今までの経験から知っている紫は、唇の間から細かく漏れてくる霊夢の吐息に胸を震わせながら、自らの舌を躍らせるように動かしていった。
「可愛いわよ、霊夢」
「っ……」
季節を迎えた林檎のように真っ赤に染まる霊夢の頬は、己の中から湧き上がる羞恥≠フような感情を色濃くしきりに反映していた。紫に自分の弱いところを知られ、そこを重点的に攻められるというのは、負けん気の強い霊夢にとっては自分が紫に手玉に取られているという事を強く感じてしまうのだ。
しかし――それでも霊夢には、今はその感情すらどこか心地よいものとなっていた。
これがもし他の誰かなら今すぐ跳ね起きて打ちのめしている事だろうが、この紫なら――。自分の全てを抱擁してくれる広大な大海のような紫なら、自分の全てを預けられる……。
そんな紫に支えられていたい≠ニいう思いと、自分の負けん気の強さが相反しあって、今の霊夢の心中には複雑に入り組んだ感情が形を成していた。
それは自分が――紫のことが好きだから≠ネのだろうか。
それとも、ただ単に境界を守る者として生まれた連帯感が変化したものなのだろうか。
今の霊夢には、どっちなのかの判断は微妙な所で付かないでいた。
紫が求めてくる事は今までに何度かあった。始めは強く抵抗したものの、途中からはいつもこんな気持ちになってしまうのだ。別段嫌だという感情も消え、逆にある種の安心感≠フような温かい感情が胸の奥底から湧き上がってくる。
――分からない。紫とはいままでにも長い付き合いだが、そのなかで面と向かって「好きだ」とか「愛してる」なんて言葉を言われた事は無い。紫はこういう事の経験も結構豊富みたいだし、私と体を交えるのも、紫にとってはただの遊びなのかもしれない――。
そんな言いようの無い不安も、霊夢の中では確かにあったのだ。
それ故、踏ん切りが付かないでいた。紫がこうして私と体を重ねているのは、悠久に生きる時間を埋める為の単なる暇つぶしなのか、それとも――なにか特別な感情に揺り動かされて行っている行為なのか。
それが分からないでいたからこそ、霊夢はもどかしく、自分が取るべき行動や態度を決めかねていたのだ。
「……ゆ……かり」
「?」
段々と強くなっていく快感をしばし頭の中から消し去るよう唇に力を込め、霊夢は顔を強張らせながら紫のほうへと動かした。紫は自分の耳に舌を這わせている所だったので、すぐ横を向くだけで二人の距離は文字通り目と鼻の先となった。
「アンタって……誰とでもこういう事するの?」
「へ?」
予想していなかった霊夢の言葉に、一瞬素っ頓狂な声を出してしまった紫。
「だってさ……私には分からないけど、アンタってこういう事他にもやってそうだし……。それに、寿命が長い分暇にもなるから、私と……その、こういうことをするのは……その……」
途中から歯切れが悪そうに目を逸らす霊夢に対し、しばしの間紫はその言葉の意味を理解できずにいた。
そして。
「……ぷっ」
意味が分かった途端。
「……ふふっ……あはははっ」
口元を押さえながら、紫は笑い出した。
「な、何笑ってんのよ!」
霊夢が心外と言わんばかりに、布団から跳ね起きる。
紫は霊夢が今までにも見た事の無い表情で、いつもどこか客観的なその表情を崩して震えながら笑いを堪えていた。
「ゆ、紫……?」
「ふふっ……。ごめんなさいね。貴女があんまりにも可笑しいものだから」
「はぁ……? 私が?」
意味が分からず、上半身が裸のまま首をかしげる霊夢。
そんな仕草が、紫にとってはさらに霊夢を滑稽に見せてしまう。
「……貴女って、結構鈍感なのね」
「? 言ってる意味が分からないんだけど」
「……もう……」
紫はまだ口元に手を当てたままながらも、霊夢の浮世離れした鈍感さに最早呆れていた。
まさか、気づいていなかったとは思わなかったのだが。
紫は霊夢と同じように起き上がると、清流のように澄んだ瞳を霊夢へと向けた。
「そうね……。言う通り、私は貴女の言うところのこういうこと≠焉A結構慣れっこではあるわ」
「……っ」
紫の発したその言葉に、何故か胸がきゅっと痛むような感覚を受けた霊夢。
その痛みの意味は、今の霊夢にはよく分からない。
「けどね霊夢。貴女が思ってるほど妖怪だって暇じゃないわ。それに――」
「……それに?」
そこまで言ったところで、紫は言葉を止めた。一旦自分を落ち着かせるように深い呼吸をすると、滑らかな背筋をすっと伸ばす。
そこには――普段からは見える事の無い真剣さを浮かべ、同時に珍しく頬に紅い色が刺した紫がいた。
「暇潰しでこんな事をする程……私だって酔狂じゃないわよ」
「……!」
その言葉に。
いつもとは違う紫が紡いだその言葉に。
いくら鈍感といわれた霊夢でも、紫が言わんとする真意は掴み取れた。
「……紫……」
同時に、霊夢の頬もみるみる赤く染まっていく。
これが――告白≠ニいうものなのか。
「……霊夢」
「……紫」
二人がどちらからともなく、互いの名前を呼び合う。
紫のあの言葉を受けて、最早霊夢には……自分の態度を決めかね悩む必要など無かった。
「……愛してるわ」
ふいに、紫が掠れるような小さな声でそう呟いた。
二人の唇が、再び重なった。
「ん……んんっ……」
「……ん……ちゅっ……」
一回目のときよりも数段激しく、お互いの舌を絡め合わせる二人。
そこには人間と妖怪という異種族の垣根を越えた、濃く、深い感情が交錯していた。
霊夢も今まで不安≠ノよって拘束されていた感情を露に出し、紫の舌や唾液を貪っていく。
時が経つのも、眠いのも、裸になった上半身が寒いのも忘れ、ただ只管に紫と舌を交えることのみを考えていた。
「はぁ……はぁ……」
再び布団の上に押寝かせた霊夢の上に、自らの体を重ね合わせる紫。
唇を離さないままお互いの体を触りあい、徐々に快感を与え合っていく。
「……!」
その時、不意に霊夢の体が「ぴくっ」と跳ねた。
「ゆ、ゆかり……」
頬を硬直させながら、唇を離す霊夢。
――紫の指先が、衣服の上から自らの秘所に触れたのだ。
「こっちは嫌かしら?」
「嫌……じゃないけど……」
歯切れが悪そうに目を逸らす霊夢に対して、赤子を見つめる母親のような表情の紫。
そこに何かを感じ取ったのか――紫は体を離すと、下方にあった霊夢のすらっとした二本の細い足をひょいっと持ち上げた。
「きゃっ……!」
霊夢が小さな声をあげるのとほぼ同時に、慣れた手つきでするすると霊夢の袴を下ろしていく紫。霊夢が戸惑っているうちに、紫の顔は霊夢の可愛らしい下着のすぐ真前に近づいていた。
――霊夢のそこ≠ヘ下着の上からでもはっきりと分かるほどに粘ついた液で湿っていて、両面にぷっくりとした二つの山が浮き出ていた。
紫はその山の間の筋にそって、細い人差し指を上からすっとなぞらせる。
「……ひっ……!」
突然与えられた今までとは程度の違う快感に、思わず身をよじらせる霊夢。紫はそんな可愛らしい霊夢の反応を楽しみながらも、何往復もする列車のように秘所に通る筋に沿って指を這わせていった。そしてその度に、下着の上から愛液が新しくじんわりと滲み出てくる。
「紫……それ……やめてぇ……!」
溜まらず霊夢が噛み殺した声でそう訴えるも、紫は指を動かすのをやめずに言った。
「嫌そうには見えないわ。あら、もう下着がびちゃびちゃ……」
限度を知らず溢れ出てくる液体は霊夢の下着を濡らし、肌に張り付かせる。それは恰も小さな子が漏らしてしまったかのように見えるほどだった。
「……脱がすわよ」
紫はそう言って腰から下着の縁を掴むと、少しづつ下にずり下げ始めた。秘書と下着の接点が粘ついた愛液で糸を引きながら、霊夢の太ももを通ってするすると脱がされていく。
そして同時に、何も隠されていない霊夢の秘書が見え始める。普段隠しているものを失ったそこは、女の子にとって一番大切な箇所があまりにも無防備に股の間から晒される形となった。
「……!」
その感覚に、霊夢が思わず両手で目を塞ぐ。自分のあそこを紫に見られているのだと思うと、どうしようもない恥ずかしさが心の底から湧き上がってくる。
「……綺麗よ、霊夢」
まるで輝く宝石を目の当たりにしたかのような声で、紫が小さく呟いた。
ちゅっ
「!!」
次の瞬間、霊夢の背筋に電流が走った。
紫が濡れた生の秘所に、キスをしたのだ。
「あっ……」
堪らず身を震わせる。紫は両山に指をかけると左右に広げ、露になった秘所の奥深くに舌を忍び込ませていく。
溢れ出てくる愛液は少しの苦味を紫の舌に与えながらも、決して不快にはならないその味を喉の奥にまで啜り込んでいった。
「ずずずっ……んっ……ちゅっ……」
「……〜っ!」
霊夢の吐く吐息が、少しずつ熱く熱を帯び、小刻みになっていく。
頬もこれ以上ないほどに蒸気しきり、体はぷるぷると震え、指先に痺れるような感覚を覚え始める。
「ゆ、かりぃ……」
「んちゅっ、れい、む……」
秘所の上方に付いている硬くなった陰核も、唇で挟んで吸い上げる。その強烈な快感は、既に打ちのめされた霊夢の体を更に追い込んでいく。舌先で薄く包まれた皮を剥がすと、綺麗なピンク色に染まりあがったその突起を優しく舐めていった。
「ん……れるっ……ちゅっ……」
「つあっ……あああっ……!」
もう限界といったように、急に大きく声を張り上げる霊夢。
それが合図となり、紫はびくびくと震える秘所から口元を離すと、布団の上で身を捩じらせる霊夢の背中に腕を回して一気に抱き上げた。
まるで母親に抱っこされる子供のような体勢で紫に抱えられた霊夢は、激しく息をつきながらも潤んだ瞳で紫を見つめた。それを受けて紫は、右手の指先を抱えた霊夢の秘所にそっと近づける。
「あっ……」
もう何をするかは分かっている霊夢が、ただ声をあげるだけで紫の指を受け入れた。以前ではここまで行かなかっただろうが、今の霊夢にはその覚悟は出来ている。
すっ……
無言のまま、紫が濡れるあそこに指を忍ばせた。「くちゅっ」という液体の音は鳴ったが、それ以外は一瞬の間だけ、二人の間に静寂が訪れた。
「大丈夫かしら?」
次の瞬間に紫が尋ねると、霊夢は唇をかみ締めたまま、ゆっくりと小さく頷いた。これが今の霊夢に出来る最大の行動でもあったのだ。
「……平気……」
唇の隙間から漏らすようなその言葉を受けて、紫が遂に忍ばせた指を動かし始めた。
ずちゅっ、くちゅっ
卑猥な音を立てながら、奥に手前にと行ったり来たりする人差し指と中指。
秘所の内壁を擦られる度に、その強烈な快感は霊夢の脳髄を電流のように突き動かした。
「あああっ……あっ……!」
叫ぶようにあげられる声。それは単に秘所を弄られている故の快楽ではなく、紫に触ってもらえているからこその特別な感情が喉から発せさせた声でもあった。
二人の興奮はここを境に一気に高まり、同時に霊夢の限界もすぐそこまで訪れていた。
「……そろそろかしらね」
紫はそう呟くと、指の動きを一気に早くする。溢れ出る愛液がそこら中に飛沫となって四散していく。
「いつでもいいわよ」
霊夢の耳元でそう言うと、その震える身体は絶頂を我慢していた抑制が一気に外れたように痺れ始めた。限界を超えて高揚する感情と汗とで火照った身体が、もう全てを受け入れる体制に入っていくのが分かる。
「ゆか、り……! おねがい……!」
「何かしら?」
今にも途切れそうな声で掠れ掠れにそう発した声に、紫はそれを聞き取る為に口元まで耳を傾ける。
そこで聞こえた霊夢の言葉は、紫の身体を衝動的に動かすものだった。
「……ぎゅって、して……」
次の瞬間。
紫は持てる力の全てで、霊夢の細い身体を抱き締めた。
人間にとっては強大すぎる程の力で、触れれば壊してしまう硝子細工のような種族の身体を。
思いっきり、抱き締めた。
そして霊夢は。
抱き締められた紫の腕の中で、身を打ち震わせながら絶頂を迎えた。
※
「……もう、朝ね……」
布団の中で紫と一緒に寝ていた霊夢は、窓の外を眺めたまま小さな声でそう呟いた。
空からはうっすらと太陽の日が差し込み、真っ暗だった夜の空は次第に明るみ始めている。
「お陰で眠れなかったわ」
「いいじゃない。こんな神社に来る人なんてそんなに居ないんだし。一日くらいこのまま寝て過ごしたって罰は当たらないわよ」
「……よく言うわ」
深く嘆息しながら寝返りを打つ霊夢。
裸の肌が、紫の身体に触れた。
「……体痛い」
「貴女が抱き締めてって言ったんじゃない」
「……力強いわね……」
「私は妖怪だからね」
「……そうね」
紫は肘を立てて上半身だけ起き上がらせると、子供を寝かしつけるように霊夢の頭を撫でた。
「何よ」
「……別に」
「あったかいなって、思っただけよ」
〜END〜
ども、kyouneです。
今回は珍しく、産廃にも合わないと分かっていながらもらぶらぶえっち。
ゆかれいむが俺のロード。
kyoune
- 作品情報
- 作品集:
- 21
- 投稿日時:
- 2010/10/09 08:42:57
- 更新日時:
- 2010/10/09 17:42:57
- 分類
- 東方
- 短編
- ゆかれいむ
- 百合
- らぶらぶえっち
そりゃあぎゅっとしたくなる
ゆかれいむが俺のロード
あったかいどころか、お熱いですね。風邪でも引いたか?ヒューヒュー!!