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『No Country for Old Women 1』 作者: マジックフレークス
「いのち短し 恋せよ乙女
黒髪の色 褪せぬ間に
心のほのお 消えぬ間に
今日はふたたび 来ぬものを
私は金髪だがこの唄は好きだ。私は私以外の全ての生き物は私が愉しく生きるために存在していると考えているんだ、人も妖怪も幽霊もそれ以外もな。私が生きている間は私のための世界で好き勝手にやらせてもらう、本でも何でも私が死んだ後で持ち帰ればいい。傲慢で勝手な考えだと思うか? だがな、私はお前らの中にあるお前らの世界の存在を認めてやるぜ。お前が愉しく生きるために私を利用させてやる、それでおあいこだろう?」
「あぁ〜、くそっ。また失敗かぁ。…………これはヤスパースの言うところの限界状況だな、私個人じゃなんともならん。こいつはアリスかパチュリーの所に行って現況を打開する協力を仰がねば」
霧雨魔理沙は1人自宅でこれからの行動を口に出して確認し、ウンウンと頷いて名前を出された2人の了解を取り付けることなく今後の予定を作り上げた。
彼女達が喜んで自分に協力してくれれば言う事はないが、そこまで魔理沙は楽観視してはいない。だが自分が今臨んでいる魔法実験に役立つ資料を“快く”貸し出してくれることは間違いない。
彼女らの機嫌が良ければ溜息と共に、悪ければ弾幕と共に。
思い立ったが吉日とすぐさま出掛ける用意をする。もっとも、本人の言うところの恋する乙女とは程遠い生活を送っている魔理沙は当然のようにシャワーを浴びてから外出しようなどとせず、それどころか二日連続で着ている服を変えようともしなかった。
せめてもの恥じらいが彼女にそうさせたのか、研究中に掻き毟ったボサボサの頭を軽くとかして帽子をかぶる。同じ森に住む友人に貰った香水を帽子と自分の胸元に軽く振りかけた。
香水は友人の不精振りに他人ながら頭を痛めてしまっていたアリス・マーガトロイドが少しは女の子らしくなるようにと贈った品だ。明らかに彼女の意図はこれも含めて化粧などの身なりに気を使うことを促していたし、体臭や実験で用いる薬品の臭いに頓着しない魔理沙に遠まわしながら『あなた、臭うわよ』と暗に言う、皮肉っぽい意味もあった。
とは言え彼女は日頃から魔理沙の行いに振り回されることしばしばであったし、知性を重んじる彼女は機知を利かせた皮肉や嫌味を言うことは雅な生き方の中の一つの嗜みだとも考えている。そもそも魔理沙のためを想った行いであることに違いはなく、誰もが彼女を責めはしないという程度の嫌味。
当の魔理沙はプレゼントを開封した時の彼女の『フフン♪』といった鼻での笑いに全く気づくことなく、『おぉ〜、サンキューな』とか言ってあっさり受け取った。香水ビンを逆さまにして手に軽く振りかけその香りを確かめてみる………、というなんとも普通な対応をされてしまって拍子抜けする。
でもまぁ、これで魔理沙が乙女に一歩近づけるならば……と……。
だがしかし、魔理沙の香水の使い方は彼女の望むそれではなかった。
シャワーを浴び身だしなみを整えてから髪に振りかけ、『御機嫌よう』とか魔理沙が言って訪ねて来ては、『服の裾が曲がっていてよ』などと返す掛け合いは起こらず、相も変わらずの格好で訪ねて来ては、『邪魔するぜ!』であった。
ともあれ魔理沙からは自分が渡した香水の香りが漂ってきて、溜息を吐きつつも妙に納得したのも束の間の事。彼女が玄関を上がり迎えあげた自分の横を通った時に香る何とも言えない臭い、匂いではなく臭い。
呼び止めて問い詰めるまでもなかった。魔理沙は自分の体臭や服に染み付いた臭いを誤魔化すために香水を振り掛けている、それも帽子の前面と胸元に対して用い彼女に近づかなければ、あるいは横を通るにしてももう少しスペースのある通路で間隔をあけていれば香水の香りだけ漂ってきてまともに見えるというある程度効果的な使い方で。
まるでトイレの芳香剤のような使い方をする魔理沙に(まぁ流石に排泄物の臭いとラベンダーの香りとか書かれている紫色の液体の匂いが混ざったあれと比較するのは可哀想だが)彼女は眩暈を覚えて壁にもたれかかり、眉間を指で押さえて頭痛を取り払おうと努力した。
文句を言ってやりたい衝動に駆られるが、最早何を言っても無駄だろうとの諦観がアリスの心の内に去来する。
勝手に本を取り出しテーブルに向かってそれを読む友人を生暖かい目で見つめ、お茶とお菓子を出した。
その日魔理沙が彼女に対してある距離まで近づこうとすると槍を持った人形が間に入ってそれを制する。
アリスは笑顔で無言だったが、その目は“これ以上近づくな”と言っていた。
結局のところ魔理沙はアリスの不機嫌な様子の意味を理解していないし、自分の問題点にも気づけていない。
友人ならば指摘してやるべきだとは思うが、指摘しても直さないあるいはその斜め上をいく行動を度々とられて辟易するのも魔理沙の友人の宿命である。
まぁ、そのような訳で魔理沙は彼女の考えるレベルでの外出の格好をして家を文字通り飛び出した。
今回は資料の豊富そうな大図書館、パチュリー・ノーレッジを訪ねに。
「邪魔するぜ」
門番である紅美鈴といつも通りの簡単な問答をして館に入り、勝手知ったる他人の家と図書館までの道のりを何食わぬ顔で通り抜ける。館の主とは別にこの場所の主人として鎮座するパチュリーの前に立った。
「ハァ……」
パタン
闖入者を前に魔女は読んでいた本をゆっくりと閉じると気だるげに視線を上げて相手を見据える。
「ちょっと調べたい事があるんだ。本を探して、それから良さそうなのが見つかったら借りてくぜ」
歯を見せた爽やかな笑顔で悪びれもせず言い放ち返事も待たずに目当ての本の散策を始めた。
パチュリーは毎度のこと過ぎて文句を言うことすら億劫に感じ、黙ったまましばらく魔理沙が本棚の中を歩き回っているのを目で追った。
チリリン
机の上、脇においてある呼び鈴を手にして振る。
「お呼びでしょうかパチュリー様。………あら?」
友人の従者でこの館のメイド十六夜咲夜が数秒と経たずに机の前に現れた。呼び鈴を鳴らした相手を見、その様子から大雑把な状況を察する。チラリと軽く視線を滑らせて予想された存在を確認した。
「紅茶をお願い」
「畏まりました」
それだけの会話が終わるとまたもや一瞬で咲夜の姿が消失する。
「よいしょっと。ん〜、………このへんかな?」
魔理沙は数冊の厚い本を懸命に抱えて運び、パチュリーが本を読んでいた机にそれらを置いた。彼女の真向かいにある椅子に腰を下ろし、一冊一冊の本を検分し始める。
「お待たせ致しました」
咲夜が机の脇に立つ。彼女が消えてから2分半、湯を沸かし茶葉を蒸らすのにかかった時間分だろう。いい香りのするティーポットとカップが2つ、その手にしているシルバートレイの上にのっている。
咲夜はソーサーを持ち上げ2つのカップを2人の前に置いた。ティーポットからアールグレイの紅茶を注ぐ、はじめに本を脇に寄せて目を閉じている主の友人のカップに、次に招かれざる客人のカップに。角砂糖の入ったシュガーポットを机の中央に置き、丁度2人分を注ぎ入れて中身の無くなったティーポットをトレイに戻した。
「いい香りね。ありがとう、咲夜」
「いえ、また何かあれば」
感謝の言葉に対して笑顔を返してからトレイを手にして去った。
「ん、さすがいい味だな」
魔理沙は早々にカップに手を伸ばして口をつけている。
パチュリーはこの傍若無人な客人を一瞥することもせずにシュガーポットから砂糖を2つ摘み出して静かに沈めた。ティースプーンでゆっくりとかき混ぜる。かき混ぜるとは言っても、静かに浸したスプーンを前後に往復させるようにやさしく振るだけ。ティーカップの内側にぶつけてカチンという音を立てないように。
「なぁ、この本の末尾にある参考文献。探したんだがこいつ一冊だけ見当たらないんだよ、ここには置いてないのか?」
そこには30を超える数の書物の名称が並んでいる、ヘブライ語、ギリシャ語、サンスクリット語のタイトルの書物も散見された。これらの点だけは彼女を尊敬しても良いと魔女は思う。魔法の研究のために多様な言語に習熟する努力と情熱、そしてこれだけの蔵書の中から目当てのものを探し出す嗅覚としか形容できない何か。外の世界の安っぽい偉人伝に記載される南方熊楠という人物が類似しているだろうか。彼は19ヶ国語を解し留学中に考古学や生物学の文献を読み漁ったそうだが何か大きな事を成した人だったろうか? 生涯定職に就かず、たしか膨大な数のキノコを詳しく調べた功績があったような………。
「なぁってば」
無為な思考に浸っていたところを当の本人によって引き戻される。なんだか面白そうなのでその偉人伝をもう一度読み直そうとひそかに決心しつつ、彼女の指を指している箇所をもう一度よく見た。
この本の著作者は魔理沙と同様に魔術を“研究”していた者なのだろう、系統立てられた研究の報告と参考にした先人への敬意がこの項を見るだけで伝わってくる。魔女である彼女にとって、魔術は求道するものであり研鑽するものであり自身の一部分である。他者のために残すものではない。だが目の前の少女にもこういった先達への敬意があればまだ可愛くも思える。
もし彼女が自分を敬い必死に本を読んで勉強し、『ここが分からないので教えて下さいパチュリー先生』と上目遣いに懇願してくるならばどうだろうか? ふと『魔法使いの弟子』というクラシカルミュージックが仕舞われていた引き出しが開いて頭の中で旋律が流れた。
馬鹿な、私は私一人で研究をすればそれでいいし有能な部下はすでにいる。教育とは技術および知識の継承であり私にはそれをする個人的理由も社会的必要性も無い。この人間の教え子は自分より早く死ぬというのだから。
「いぢわるしないでおしえてよぉ〜ぱちゅりぃ〜」
黙り続けていた自分に対し、床に跪き椅子に座る私を上目遣いに見やり猫なで声のつもりか妙に間延びした声で懇願してきた。
パチュリーの中で“やっぱりこれはナイわー”が確定する。
「その本なら10日程前にアリスが借りていったわ。彼女は遅くても2週間後までにはここに返しに来ているからそのうち…………」
言っていて意味が無いことに気がつく。それ以前に魔理沙はアリスの家を訪ねて本を読ませてもらうだろう。それだけならばまだ良いがそのまま持って帰ってしまうかもしれない、律儀なアリスは意図せずとも又貸しとなってしまったことを、そして当分その本を返却できないことを私に詫びに来るのだ。
「それじゃあこいつらは借りていくぜ、お茶美味かったって咲夜に言っといてくれ」
そういって数冊の書物を、おそらくは目当ての研究内容について記述されたあの文献とそれを読み解くに役立つやも知れない参考書物達。
「貴女はいつ返しに来てくれるのかしら?」
「いつも言っているだろう? 私が死んだらさ」
ニヒヒっと笑みを見せる。嫌味や悪意の無い、それでいて何とも人を困らせる笑顔。
「貴女はいつもそう言うわね、“自分よりずっと寿命が長いんだから細かいことは気にするな、自分が死んだら取り返せば良いじゃないか”だったかしら? 長期的には私には損が無いっていう貴女の理屈ね、だけれど私に得も無いのではない? 貴女に本を貸与する私にとっての利益を提示してくれたことはあるのかしら?」
それを聞いた魔理沙はキョトンとして大図書館とまで言われる知識の魔女を見つめた。
今日のパチュリーはどっちなのだろうか? 機嫌が良い日は溜息を吐いて自分の行いを見逃し、悪い日はスペカ戦での決闘に発展する。それは始めから予想されたパターンである。
「なんだ、私との激しくも美しいバトル展開はそれほど楽しめていなかったのか?」
「貴女の感覚で語られてもね」
パチュリーは呆れた顔になる。本の奪い合いの押し問答自体がエンターテイメントで自分に対する礼だったなどと言われて納得できるはずも無い。
………まぁ、ほぼ単独で魔法の研究を長年続けている自分には実戦での実践は研究に新鮮な風を吹き込んでくれたかもしれない。
「私は私の好きにやらせてもらうけれど、パチュリーがして欲しい事があったら協力できるかもしれないぜ。魔法の研究や実験だったら私の勉強にもなりそうだからな」
「………今100程の仮想未来という案件を検討したけれど、その全てに於いて私の労力が増した上で成果は減じられるだろうという予想が導かれたわ」
「はっはっは、じゃあ私が生きている間は見返りなんて期待しないこったな。私が死んだときに私の全部をやるよ、それでいいだろ?」
「はぁ???」
あっけらかんと言う。これが生きている時の話ならプロポーズみたいだったのにぃ。
「貴女の死体なんて貰っても…………」
そう言いつつ顔が紅潮してモジモジドキドキしている。
(ネクロマンシーは専門外なのだけれど………。そういえば『受けネクロフィリア初心者必見! 屍霊術基礎知識大全 エロもあるよ♪』って本はどこにいったかしら?)
「おい、何を考えている。――――とにかく、私の死後は私の家にある研究ノートとか合成した試薬や魔具の類があるからそれをや………。まてよ、借りがあるのはアリスと香霖も同じか……魔具はほとんど香霖のとこからネコババしたもんだし返さなきゃいけないな。私が製作したオリジナルは借り賃として香霖にやるとして、アリスとパチュリーはまぁ話し合って財産分与してくれ」
「…………」
やはり軽い笑顔。冗談を言っているようには聞こえないが遺言を残しているような真面目で厳粛な雰囲気では全く無い。
「貴女の研究ノートなんてたかが………いえ、それ以前に貴女は自身の行ってきた成果というものに誇りが無いの!? 死んだ後って言っても自らの功績が残ることを望むのが研究者であり魔法使いである者の取るべき道でしょう?」
言葉に怒気がこもる。パチュリー自身に対する態度はともかくとして、魔法研究に対する態度は真摯であると内心認めていただけに。
「だからこそだよ、ノートが誰かの薪代わりになるよりはお前が持ってる方がずっと良い。それにしたってたかが知れてるって言いかけたのか? ひどいなぁ、オイ」
「………何で急にそんなこと言い出すのよ?」
「そうでもない、わりと図書館で本借りた当初から考えてたことだ。それと私の研究ノートはお前みたいな魔女からすれば程度は低いかもしれないけれど、少なくともここにある資料に書かれてることの丸写しは無い。私は理論系はちょっと弱いが実践系のデータや解析には自信あるし、幻想郷の植生について詳しく書かれてる書籍はここにはないだろ? 私のは主に魔法の森近辺の動植物についてと、多くの人妖の戦闘スタイルやスペカ集だ。知らないことについて書かれている本をみすみす見逃すというのは“知識の魔女”たるパチュリー様の不覚じゃないかな?」
彼女の言の葉を反芻する。
確かにインドアな自分にとって魅力的な資料になりえるかもしれない。それどころか彼女が戦ってきたという相手の性格や特性、攻撃方法などを記した書物となれば戦術的価値すら持ち得る。
いや、そんなことは問題じゃない。ただの小娘だと思っていた魔理沙の考えに感銘を受けてしまった、最初はああ言ったが礼も対価も期待などしていなかった。それは魔理沙に期待してなかったということ。
「いやはやどうして素晴らしい提案ね、私は貴女に対する評価を改めなければならないみたい。ところで貴女が不慮の事故で急逝すれば、早々に私の本が帰ってきて今後奪われる心配も無く貴女のそのノートも頂けるのかしら」
「フフン♪ 私を幾つだと思っているんだ? それなりに書き溜めているがまだまだ若輩者だぜ。婆ちゃんになるまでやったらどれだけの研究が出来るのやら」
「なるほど。目先の利益を取るべきか、貸し付けた分の利息が増えるのを待つべきか。それが問題ね」
「で、どっちにする?」
「私は熟成されたワインをゆっくり、じっくりと嗜むのを好むわ」
魔理沙は借りた本を風呂敷に入れて抱えあげ、大図書館を後にする。
パチュリーは彼女が部屋を出ていくのを目で追った。
去り際に振り向いて右手を小さく振る。小指と薬指を曲げて残りの三本の指が「またくるぜ」と言った様な気がした。
紅魔館を出て湖を跳び越し、魔法の森のアリスの家へ向かう。
遠くからでは周囲を背の高い木で覆われている彼女の家の様子は、木々の天頂よりも少しだけ高い位置という低空を飛んでいる魔理沙には見えない。
家の真上まで来てその様子が見えた。
「お、丁度外に出てなんかやってるな」
家の外にいたアリスを見とがめる。彼女は家の横手にある小さな菜園、というよりハーブガーデンの手入れと摘み取りをしているようだ。
いいタイミングだった。
魔理沙は乾燥させていない摘みたてのハーブで入れたお茶のほうが好きだから。
「よいしょっと」
アリス邸の前でVTOL機も真っ青の素早い垂直着陸をこなす。アリスが庭いじりをやめて向き直った。
「相変わらず慌しいわね」
「あいにくと生き急いでるんでね」
「先に上がって待ってなさいな」
そのように言うと背を向けて再びハーブいじりを再開する。魔理沙は言われた通りに家に上がってアリスを待った。目当ての本を勝手に探しはじめたのは言われた事ではない筈だが。
「ハァ〜。傍若無人という言葉を生み出した人はきっと身近に貴女のような人がいたのねぇ」
大げさに溜息を吐いてみせ、相変わらずの皮肉をたれる。
だが長らく付き合いのある彼女に判ったのはそれがある種のポーズであること、少なくとも本気で機嫌を損ねた状態での拒絶ではないと見て取った。
「パチュリーから借りている本があるだろう? そいつを貸してもらいに来たのさ。勿論あいつの許可は取ってるぜ」
言いながら捜索は続ける。家主が戻ってきた部屋で。
ティーポットに摘みたてのペパーミントとレモンバームを入れて机に置く。小さなヤカンに水を注いで魔力で炎を出す初歩的な魔具、用途も見た目もカセットコンロとさして変わらないそれの上に乗せて火をつけた。
「それならこれよ、貴女からちゃんと返し…………。それは彼女も期待しちゃいないかしら。全く、私が読み終わっていたから良いようなもののそうで無かったらどうしたのかしら?」
「おっ、あんがとさん。勿論私は欲しい物は手に入れるさ」
「気を使うということを知らない娘ね。ところで貴女は大切な用事を人から頼まれていても面倒くさかったりして忘れてのんきにしていられるかしら? 例えば誰かに言伝を頼まれるとかしていても」
「そういう依頼を受けたらそれなりにやると思うけれどな、放っといた方が余計面倒になりそうだし。それに一応これでも数々の厄介事に勝手に首を突っ込んできた実績があるんだぜ、私には」
「知ってたわ」
アリスは一通の手紙を取り出し机の上においた。
魔理沙が受け取ろうとして手を伸ばしたとき、スッと手前に引っ込めてそれをかわす。
魔理沙は怪訝な顔をしてアリスを見つめる。
「この話の流れからすると私はこれを受け取っても良さそうなんだが?」
「勿論私は渡すように頼まれているしここまで話している貴女に意地悪する必要性は無いわ。だからこそ先に言っておくわね、これが何であれ受け取りなさい。それで私は私が受けた依頼に対して筋を通せるから」
「ふんふん、つまり私が嫌がりそうなものなのか。受け取ったら読まなくても良いのか?」
「そこまでは私の関知するところじゃないわね」
魔理沙は机の上に突き立てた指を戻して鼻の下を擦る。ちょっとだけ考える仕草をしてから再び手を戻した。
「それなら何も言わずに渡せばいいものを。ここで私が嫌がって拒否したら依頼が果たせないじゃないか。そもそも差出人は誰なのさ?」
「貴女のお父様よ、魔理沙」
魔理沙は立ち上がり机の横に立てかけてあった自分の箒を持って玄関に向かった。
「帰る」
「あらそう?」
カタカタカタ
沸騰した水蒸気の気泡がヤカンの内側を叩く独特な音がした。火を止め取っ手を持って静かにティーポットに注ぎ淹れる。
立ち上がる蒸気にレモンバームの強い香りが混ざった。
「…………」
玄関前で戸に手をかけようとしたまま固まっていた魔理沙にもその匂いは届く。箒を手にとって玄関まで歩き帽子掛けの帽子を取って被る一連の帰宅に通ずる動作を非常に緩慢なものにしてまでアリスからの何らかの反応を待っていた。牛歩戦術で玄関前に到達してしまった後はノブを手にしたまま固まったように動かなかった。
アリスが自分の事を無視してお茶を淹れている。依頼が果たせなかったら嫌だとか言ってたくせに!
バサッ ドスドスドスガタンッ
一度被った帽子を再度帽子掛けに掛け直し、乙女にあるまじき音を立てて机まで戻っては席に着いた。
しばらく両者は無言で過ごし、ポットの湯が薄い黄緑色になる頃にアリスは席を立ってティーカップを二つ食器棚から取り出した。
2人分のカップにレモンバームが爽やかに香り立つお茶が注がれてゆく。先に淹れてもらった魔理沙は自分のカップに口をつけた。
カップを鼻の下に運んだときの強い香り、そして口に入ったときの舌先を流れ落ちる果物のレモンに酷似した風味。だがそれは殆ど一瞬のことだ、レモンバームはレモンの名を冠するに値する香りはあるが、実はお茶で飲むとそれほど酸味はない。さらにその後に来るのはペパーミントに含まれるメントールによる清涼感、そしてまだ乾燥させていない生の葉独特の青臭さが喉の奥に残る。
どれも完璧だった。全ての調和が取れている魔理沙好みのお茶。アリスが好む乾燥ハーブにしての抽出でなく自分に合わせてくれているのだから当然といえば当然だが。
「なんであの親父が手紙を寄越すんだよ? しかもアリスに」
「貴女のお父様は私が里で人形劇の公演を開いた後に声を掛けてきたのよ、娘のご友人ではないですかって。私は貴女のご友人だったかしら?」
自分のカップにハーブティーを注ぎいれた後、小さなティースプーンで砂糖を掬って静かに入れる。水面(茶面?)につくかつかないかという高さでスプーンを縦にして砂糖を滑り落とした。絶妙な加減で水跳ねすることなく揺れる水面にスプーンを濡らされることもない。同様にして3杯もの砂糖を入れたティーカップをしばらく眺めてから、
「受け取ってもらえなかったってことは私は貴女のご友人では無かったってことよねぇ?」
「…………」
魔理沙は机の上に置かれたままになっている手紙をひったくるようにして取り上げた。
アリスは小さく フフッ っと声を出して微笑を浮かべると砂糖の溶けたハーブティーをスプーンで数回かき回してから話を続ける。
「お父様だって出来れば直接貴女に渡したいでしょうよ。だけれどそう簡単に捕まえられる相手でもなし、運よく巡り合わせたところで貴女は目も合わせずに無視して飛び去って渡しそびれるのが関の山。となれば貴女が良く会う相手に渡してもらう他無いけれど、図書館の魔女に会うのは困難だし巫女に頼むのは心許ない。同じ魔法の森に住む私がたまたま里に来てたから預かったのよ、香霖堂の店主さんがいらしていれば彼に頼んだのではないかしら?」
「内容は?」
「私が他人宛の手紙の中身を盗み見るとでも?」
そう言ってアリスは机の脇に置いてあったポーチからレターナイフを取り出すと持ち手を魔理沙に向けて手渡してきた。
「それは見れば判るけれど………。何か言ってなかったか?」
「何も言ってなかったし、何も聞かなかった」
普段自分が周囲の者にそうさせているように、魔理沙は小さく溜息を吐いた。
受け取ったナイフで手紙の封を切り中の便箋を取り出す。つらつらと目を通しているがその顔がだんだんと険しいものになっていくのがアリスから見えた。
「…………」
「…………」
「…………何も聞かないのか?」
「貴女が人に話したいというのなら聞いてあげるわ」
アリスは目を瞑ってカップに口をつけた。砂糖が入っているので魔理沙が感じた味わいよりだいぶマイルドになっている。レモンミントのガムを噛んでいるときのフレーバーとでも言うべきか。
「親父が再婚したらしい。お袋が死んでから、つまり私が家を出てから7年になる。再婚相手の子供に会って欲しいそうだ」
「会いに行くの?」
ダンッ!
「冗談じゃない、商売にかまけて私もお袋もほったらかした男だ。お袋の病気だって早く気がついてあげれば助かったかもしれないのに! それだけじゃない、家に一人残された私が魔法に興味を持って勉強したり香霖のところに行ってマジックアイテムを店で扱うよう話したのにことごとく却下しやがった」
「かくして少女は家を飛び出し、お父様は彼女を勘当した。森近さんのお店に転がり込んだり魔界に行って修行したりと独自に勉強を続け、私も含めた他人に迷惑を掛け続け現在に至る………と」
机を叩いて怒りを表し過去の自分について感情的にまくし立てる魔理沙と、対照的に感情を排除して客観的に以降の魔理沙について語るアリス。
「手紙に何て書かれてたと思う? 再婚相手の連れ子2人が血が繋がらないとはいえ姉である私に会いたいとさ、それだけだ。自分が会いたいとは一言も書いてないし、再婚相手のことも全く書かれていない。バカにしてんのか?」
「私に怒鳴らないで、何も聞いていないのだから貴女のお父様の事情は全く知らないのよ。嫌なら会いに行かなければいいじゃない? お父様にも、赤の他人であるその子達にも」
「そのつもりだぜ」
魔理沙はぐいと残ったハーブティーを飲み干すと手紙を乱暴にポケットにしまい、今度は堂々たる足取りで玄関まで歩いて自分の持ち物を手にアリスの家を出て行った。
「家族って色々と難しいものよね。他人には理解し得ない複雑な部分があるかと思えば、当人だから気がつかない単純な部分もあって………」
自分について少しだけ考えてみたが、面倒になったのでハーブティーを口に流し込んでから片付けを始める。
机の上にはアリスが借りていたパチュリーの本が、机の下には今日パチュリーから借りてきたのであろう大量の本が入った麻袋が置きっぱなしだった。
自宅に帰り着くなりベッドにダイブして横になる。今更ながらに戦利品の類を置き忘れてきたことに気がついて苛立ちと自己嫌悪が胸中に渦巻いた。
「ぐぅ〜 あぁー ぬおぉーー」
突っ伏したまま枕を両手で抱きかかえてゴロゴロと回転したりバタバタ足を振りしだいたりした。
長らく自分の中でいないことになっていた人間。家を出たときのまま何年も同じ姿同じ性格同じ人間として自分に記録・記憶され続けていた人間。
その人間にも人生というものがあって、年をとり姿も変われば性格も変わっているかもしれないということ。自分の中に記録されている、時の止まっている父親は別の人間になっている可能性もあるかもしれないということ。
そんな当たり前のことに直面させられることがこれ程までに彼女に混乱をもたらすとは。
ひとしきり悩み、過去を思い出し、他人で姉妹(姉弟?)になる相手に想像を馳せる。
想像もつかない。
父の子供と言っても連れ子であるなら自分どころか父とすら他人なのだ。
「どんな奴らか知りたい」
義母に当たる女性とその子供たち。アリスにはああ言ったがごく一部分を知ってしまった事柄の全てを把握したいという欲求を抑えることはできない。
だけれど父親には会いたくない、里もかち合う可能性を考えると行きづらくなってしまった。事情を知っている人に話を聞くか、あるいは誰かに偵察を依頼するか。
「文の奴に探偵まがいの捜査を依頼するか。………あいつの辞書に守秘義務という言葉があるかどうか、面白おかしく記事に書きたてられるかもしれない。あのクソ親父がどう言われようが知ったこっちゃないが、私と絡めて騒ぎ立てられたくはないな」
であれば事情を知りそうな人間に当たるしかなく、それは一人しか心当たりがなかった。
「よぉ、相変わらず客のいない店だな」
「店主のいない店よりはいいと思うけどね」
店主のいない店とは霧雨魔法店のことを指しているのだろう。そもそも営業してないので店ですらない気もする。
「ちょっと聞きたいことがあってきた、親父のことについてだ」
単刀直入に切り出す。魔理沙はこの男森近霖之助にはどんなことでも相談できた。普段は物事を根掘り葉掘り聞いたりせず魔理沙の話の聞き役に徹してくれて、こちらが困っていることや相談したいことは的確で堅実的なアドバイスを教え諭すように与えてくれる。それを聞いてなお魔理沙が自身の大胆でイレギュラーなやり方を貫きたいということもあるが、たとえそのような時でも彼の言葉を聴くと心に余裕が生まれた。
そういう時は自分の立てた無謀な方法も事態を上手く導けたときが多い。常識と堅実手を極めた者こそ奇策を弄す事が出来るということか。
とにもかくにも悩み事はズバッと香霖に聞くのが手っ取り早いし安心できた。乙女特有の悩み以外は。
「…………今のあの人については僕自身よりも別のある人が良く知っている。その人の口から聞くのが一番いいと思う」
「なんだ、そのある人は私らの共通の知人か?」
「君は面識あると聞いているがね。僕はその女性の部下の部下が店にやってきたことがあって、何でもその女性にとって大事なものを何故か僕が拾って持っていたみたいで………まぁ、これはどうでもいい話だ。その人は聖白蓮、命蓮寺という最近出来た人妖平等と融和を説いたお寺の代表者だ」
意外や意外な人物の名前が挙げられる。父親とあの聖にどんな接点があるというのだ。
「ああ、知ってる。だけど何であの尼さん? 住職? の魔法使い婆ちゃんが私や香霖よりも親父のことを知ってるんだよ?」
「それも含めて僕の口からより彼女から聞いた方がいいだろう。何度も言うがそもそも僕は今の霧雨さんのことをそれほど詳しく知っているわけじゃないよ、本人とも最近は会って話してはいないのだから。僕が聞いたのは霧雨さんが聖さんに何度か相談をした事があるということだけさ」
「相談? あの親父が坊さんに相談するなんて天地がひっくり返っても無さそうな事だがな」
腕を組み フン! と言って顔をそむける。自分の父親を小ばかにしたような物言い。良識ある大人なら注意するべきだろうが霖之助は魔理沙の事を理解しているが為それをしない。
それは彼女の父親にそれだけの業があるという意味かもしれないし、彼女自身が父親のことを正しく理解することができる時を待っているのかもしれない。
「ありがとう香霖、とりあえず言われた通り白蓮には会ってみる。…………まさかとは思うがあいつが私の義母とか言わないよな?」
「それはない。ん? そのほうが良かったのかい?」
「まさか」
始終ツンツンした様子のまま店を後にした。
今となってはそれほど父親を恨んではいないだろう事は霖之助には分かっている。だが家を飛び出して数年、魔理沙も修行と努力でそれなりの力を身につけ一方父親とはずっと会っていない。きっと意地になっているのだ、もしかしたら両方共が。
一般に親との離別が訪れるのは女子の、親を超越する時が来るのは男子の宿命なのだとか何かの本に書いてあったような気がする。魔理沙は若くしてその両方を果たした(と彼女自身は思っている)のかもしれない。道理で男の子みたいな女の子に育った訳だ。
「僕の前ではわりと女の子らしい気もするのだけれど」
ああ、そうか。
これが兄に類する存在の宿命なのか。
命蓮寺までひとっ飛びで到着する。紅魔館のように門番を置いているわけではないが、空から猛スピードで突っ込んできた魔理沙の前を大きな雲が塞いできた。
速度を落として雲の壁の手前でとまると悪戯っぽくその雲に手を突っ込んだ。
雲山は自分の体の硬度を自在に操れるらしい。あらゆる攻撃が意味を成さないまさしく雲を掴むとも言う様な薄さにもでき、げんこつを作ればそれを岩のような硬さにもできる。今の雲山の体は綿のようなふわふわモコモコ加減だった。
その雲山の体に手を入れたままそれを伝い降りるように彼に沿って命蓮寺の庭に降り立つ。
洗濯物を干していたらしい雲居一輪が雲山との意思疎通によって気がついた来客を見上げる。
「よっ! 白蓮に会いに来たぜ」
「そうですか。それはともかくとして雲山が『くすぐったいからやめて欲しい』と言っています」
洗濯物かごを地面に置いて客人に向き直る一輪と、そのすぐ横には魔理沙が降り立った後で体を普段の大きさにまで戻した雲山が魔理沙を見据える。一輪が代弁した後雲山がモコモコと体を波打たせておそらくは抗議? っぽい意思を示す。
「可憐な少女に体を触られたんだからもう少し喜んで欲しいところだがな」
それを聞いた雲山は体を薄くして魔理沙に覆い被さり再びモコモコモードになった。
「わぷっっ! なんだ、なにする!? わはっ、わははははは。や、やめろくすぐったい〜」
ひとしきり魔理沙の全身をおさわりした後で開放してやる。
「こっ、このセクハラ雲親父!」
「『ちんちくりんの小娘の体に触れても面白くも何とも無い。女は人生経験を積み上げ、成熟した雰囲気と憂いを帯びているのがいい』と言っています」
恥ずかしさと怒りで血が上った顔でにらみつける。
「そうかい、この熟女マニア雲ジジイ。おっと失礼年相応なのに変体嗜好呼ばわりは悪かったよ。ここはいいところだなぁ、オイ? 主人の白蓮はお前好みのばあさんだもんなぁ。ん? ってことはお前が付き従ってる方の主、一輪もお前好みのばばあか? 2人も好みの熟女に囲まれて幸せな奴だな」
「あら〜、そうなの雲山???」
ギギギと油切れの機械が動くような音を立てて一輪の首が雲山のほうを向いた。
手の形を作って顔の前で力強くブンブンと振る。
「何をそんなに否定する事があるのですか? 私? 私は別にキレてないですよ? ええ、自分が好みの女と言われて悪い気はしないはずですもの。今日は久しぶりにお酒でも酌み交わしながらお話しましょうね、ウフフフフフフフf」
雲山は逃げ出した。
「あいつどうやって酒飲むんだよ?」
「貴女にも言いたいことはあるのですが………、まぁ姐さんの客人ということなのでいいでしょう。お酒については熱燗にして置いておけば揮発した空気で酔っ払うんです、可愛いですよ」
「ふ〜ん」
一輪の案内で中に通される。応接用と見られる和室で一輪は二つの座布団を敷き、その片方に魔理沙は座らせて待たせてもらった。しばらくしてから呼ばれてきた白蓮と対面した。
「お待たせ致しました。寺の建立記念の宴以来でしょうか魔理沙さん。もっと訪ねて下さってもいいですのに、同じ魔道を志す者としてお教え出来る事もあるやも知れません」
「まぁそれはいいんだが、今日来たのはそういう事じゃないんだ。私の親父と知り合いだと聞いてな、ちょっと話を聞きたいとか……考えたりして」
それを聞いた白蓮は柔和な接客スマイルから真面目な顔つきになった。しばらく黙って思案し、口を開く。
「確かに私は貴女のお父様からお仕事を依頼されたりご相談をお受けしたりしました。私の職業倫理というものを考えるのならば貴女にお話しすることではないのでしょう。しかし私は貴女が知りたいと思うのならばお話しするべきだと考えています。それが貴女にとってもお父様にとっても善き事となると信じます。ですが貴女にはその覚悟がおありですか? 私は貴女方の事情を詳しく知っているわけではありません。しかし長い事顔を合わせていなかった人が、もしかしたら変わってしまっているということを受け止める覚悟が」
今度は魔理沙が思案した。自分が捨てた父親が自分の下から離れていってしまったかもしれないということ。しかしそれはアリスの家を出た後で考え至った違和感と同じことだ。
「……私はあいつの事を知りたいだけだ。あいつは再婚相手と子供に会えと言ってきた、だからそれをどうするか決めるために情報が欲しいんだ」
覚悟ということに関しては何ともいえない。そもそもそれがあるならこんな遠回りな事をしないで直接会いに行けばいいのだから。
白蓮は魔理沙の目を覗き込んだ。
「わかりましたお話いたしましょう。なるほどお父様が引き受けられたお子さんの事はご存知なのですね。ではそのお話からにします、その件で私はお仕事を頂いたのですから」
仕事? 白蓮に頼む仕事っていったい何なんだ。曲がりなりにも魔法使いであるからその関係か? いや魔術嫌いの親父だそっち方面は考えにくい。なら商品にする道具類か、宝が集まる能力や宝を探す能力を持つ部下がいるんだからそうかもしれない。
「彼が喪主となった葬儀のお手伝いをさせて頂きました」
「はぁ?」
「ご存じなかったようですね、貴女の仰るお父様の再婚相手の女性。彼女はすでに亡くなっておいでです。私がその女性のお葬式を行ったのですから」
「おい! じゃああの手紙は………!!」
言ってから思い出す。再婚相手の子供に会って欲しいとは書かれていたが、再婚相手に会って欲しいとは書かれていなかった。
「そもそもお父様はご再婚されてはいませんでした。あの女性は元夫の暴力に耐えかねて子供を連れて家を飛び出し、貴女の実家霧雨道具店で住み込みで働かせてもらっていたのです。ですが女性も長い夫からの暴力と心労、二人の子供を養う為に根を詰めて働きすぎたのか、肺病を患ってしまい…………」
肺病、それだけでは該当する病気は多岐にわたる。だが魔理沙はそれを自らの母と重ねてしまった。肺を患って亡くなった母と。そしてそれはきっと父もそうなのだろう。
今のように永遠亭の八意永琳という名医がいれば治療できたかもしれない。薬売り兎の商品を服用していれば悪くはならなかったかもしれない。母に関して言えばそれは考えても仕方の無いことだ。だがその女性は実際にそれが出来たかもしれないのだ、父は自分を責めているのだろうと思った。馬鹿な、何も変わっていない。私が家を飛び出したときの親父そのまんまだ。大馬鹿野郎のままだ。
「自分が死なせたようなもんじゃないか………」
心とは裏腹に言葉が口をついて出た。母を死なせてしまった事に関してはとうに踏ん切りがついたと思っていたのに、見知らぬ女に母を重ねてその子供を育てることで自分の代わりにしようとしている。そう、どんどんと嫌な方向に考えていってしまう。
「たしかにあの方は周囲に対して鈍感なところがあるのかもしれません。ですが誰に彼を責めることができましょう? 彼自身が最もご自分を責めておられるといいますのに。私が知るのはこれだけです。女性が残して逝ってしまったお子さん、八歳くらいのお兄ちゃんと五歳くらいの妹さんを引き取られるとは聞いておりましたが、再婚なさったことにしているとは。自分の子供同然に大切になさりたいのですね」
「私は大切にされた記憶なんて無いがな」
「………魔理沙さん」
「ありがとう白蓮、話してくれて。親父とは顔合わせたくないがそのガキたちには会って話したくなってきたよ。それじゃあ用も済んだしお暇するぜ」
言うが早いか立ち上がるとスタスタと部屋を出て庭から飛び去ってしまう。
「魔理沙さん、きっと貴女はお父様を恨んではいないはず、会いたくない訳ではないはず。お二人とも恥ずかしいのでしょう、今更なんて言っていいのか分からないのでしょう。………理解しあうというのは人と人とでも、実の家族でもこれ程難しいことなのですね」
命蓮寺を後にしふらふらと無軌道に飛び回る。それが意識的なものなのか無意識でのものなのか、魔理沙は冥界に来ていた。
白玉楼はあの世らしい静けさで、その中の木々を剪定するバサバサという音だけが遠くまで響いていた。
「あ、魔理沙さん。何か用ですか? む、ここには取るものなんか何一つ無いですからね。ええ、これっぽっちも。むしろそんなのがあったら大発見です、家計の足しにしますので見つけたら報告してください」
「お前も苦労してるなぁ」
ふらふらして入ってきた魔理沙にこの白玉楼の庭師魂魄妖夢が気がついて声をかける。
「いや、用って程じゃないんだけどさ。実を言うとふらふら飛んでたらここに着いちゃっただけで」
「はぁ」
これには二人とも困った顔をしてしまう。里の中で暮らしていれば散歩中のご近所さんと家の前で会うこともあるだろうし、どうってことのない世間話にも慣れようものだ。だが冥界にある屋敷、それも長い階段を上るか高い空を飛んでこないとなかなか来れないこの場所に目的もなく来た相手というのは妖夢にとって初めてのことなのではないか。上げてお茶を出すのかな? ここで立ち話しておしまいかな? どう対応するものか思案する。
「……なぁ、ここに来た魂と話をしたりっていう事はできるか?」
「はい?」
「いや、知り合いが―――知り合いでもないんだが話が出来たらいいなって思う人が亡くなったらしくて」
「残念ながら死人に口なしですので。閻魔様に相談して十分納得させられる理由があれば教えていただけるかもしれません。ですがそれはあまり期待しないほうがいいかと」
「ん、そうだな。いや、私も思いついたから適当に言ってみただけなんだ」
そう言って魔理沙ははにかんだ。
妖夢はいま一つ話の流れが見えてこずに少しだけすまなそうな顔をして小首をかしげた。
「やっぱり生きている相手と話すべきだよな、うん。
いのち短し 恋せよ乙女
朱き唇 褪せぬ間に
熱き血潮の 冷えぬ間に
明日の月日は ないものを
だな」
「それって、私や幽々子様に聞かせる唄じゃないです。ぐすん」
「おおっと、悪ぃ。そろそろ帰るわ、あんがとさん。やっとやるべきことがわかったよ」
最後まで妖夢には何がなんだか分からなかった。
魔理沙は自慢のスピードをださずに、しかしふらふらしていないしっかりとした目標に向かって飛んでいった。
それから魔理沙は白蓮とアリスを訪ねた。二人には来週末にでも里に下りてその子らと会うと決めたと言った。
白蓮には父に話をしておいて欲しいと、やはり本人に面と向かって言えそうになかったので頼んでおいた。
アリスにはとりあえず今の生活習慣と自分の身なりが酷いことを(ある程度)自覚していたのでその矯正を手伝ってもらう。とりあえず洋服をちゃんと洗って清潔にし、来週までにはビシッとしたカッコイイ姉ぶりを見せられるようにしようと思った。
この件とは特に関係はなかったが訪ねた紅魔館で幸運のハーブを貰えた。いい香りだった。
数日前になって白蓮が魔理沙の家を訪ねてきた。これでも割と良くなった方だったのだが、それでもだらしなく散らかっている家の様子について苦言を呈された。要件は当日の事、里のお茶屋さんで正午に待ち合わせたとの事、お昼を一緒に食べたら(勿論魔理沙が奢れとの事)夕方まで自由にしてくれていいとの事だった。
お昼を済ませて話をしたら二人を帰してもいいのだが、せっかくだから夕方まで遊んであげなさいと釘を刺されてしまう。
魔理沙は心の中で思った。
いいおばちゃんだ、近所にいれば頼りになるが親戚だと鬱陶しいタイプだ、と。勿論口には出さないが。
明日はその日だ。
【拝啓 お父様 ご機嫌いかがですか 】
ビリィーーッ
【父さんは元気でやってるのか? 私は元気だぜ、友達もいっぱい出来たし魔法の研究も 】
ビリビリビリ
【よっ、親父 てめぇが死んだら財産は私が8割、ガキ共は2割な。こいつらガキ共があんまり可愛いから2割もくれてやるんだぜ、安心してくたばりな 】
「まだ会ってもいねぇよぉーーーー!!!」
ゴゥーーーーーーッ
「あちちっ」
【私は好きに生きる、あんたも好きにするがいいさ。だけど子供らは別だ、もしガキたちが悲しむような真似をしたら。 私が貰ってやるよ。新聞は読んでるか? あんたの娘は巷を騒がす大泥棒さ、盗まれないように大事にするこった】
「〜〜〜っ」
自分で書いた文章がこっぱずかしくってまたもや破るか火を付けようかする。
何とか思いとどまり振り上げた手を下ろした。
父には会わない。子供らだけに会うが、そのときにでも手紙を渡してもらおうと書いていた。勿論彼女の考えじゃない。頑なに父に会いたがらない―――白蓮の言う通り気恥ずかしさなのだろうが―――彼女を白蓮が説得した落としどころ。アリスもそれが良いと言った。
「明日決めよう…………」
悩んでいても仕方ない。時間ももう遅く、この頭では文章も書けそうになかった。玄関前に手紙を伏せて置き、ペンで重しをする。明日家を出る前になれば、自分が追い込まれるところまで追い込まれていれば決断できるかもしれない。レポートを前日の夜から始めないと一気呵成に終わらせられない学生のように背水の陣を敷く。そのままベッドにとって返して倒れこんだ。
爽やかとは言えない寝起きだった。
ベッドに入っていてもなかなか寝付けず、早朝近くまで意識を手放すことが出来なかったのだから。
気だるい目覚めの後で魔理沙がはじめに確認したのは現在の時刻。
小さな驚きと残念さを感じながらもほっと安心した自分がいた。時刻は7時。眠れてから3時間そこらしか経っていない。寝不足感は否めないが寝過ごすよりはマシだ、大分時間があるのは気になるが二度寝は出来そうにないし寝付いたら起きれないかもしれない。
この時間を利用して十分にリラックスし、隈でもあろうものなら化粧に貯金された時間を掛けてごまかせるだろう。
「ぬ〜」
一週間近く前に心の整理をつけた筈の決心が、またぶり返すように再びこんがらがりそうになる。
考えないようにしながらシャワーを浴びて簡単な朝食の準備をする。良かった、目の下に隈は出来ていない。普段から不摂生を続けていた強みが生きた、などとだらしないことを考える。
シャワーついでに今日のために準備しておいた真の意味で外出用の洋服を着た。あまり着飾っても恥ずかしいし、ガキ共が自分のことを聞いていれば自分を白黒魔法使いのお姉さんと認識しているだろうから普段と同じ白黒の服。状態の良かった一着を気合を入れて洗濯し、他のものを全部外へ出したクローゼットにそれだけ掛ける。一緒に貰い物の幸運のハーブ、乾燥させたマジョラムの入ったビンを入れておいた。袖を通したときほんのりとマジョラムの移り香が漂った。
焼いたトーストにクランベリージャムをつけて齧る。舌に残る甘酸っぱい味わいをグラスの水で流した。
「ん〜〜…………」
やることが無くなってしまった。
色々としなければならない事があるかとも思っていたのに、最低限の身だしなみや腹ごしらえは済ませてしまった。二人に会ったときの事をシミュレートしたりどう話すべきかなどは昨日のうちに悩み尽くしてしまったし、結論としてぶっつけ本番のアドリブ以外に自分らしさというものがわからない。考えなくていいことを考える時間がたっぷりあるというのがこれ程きついとは。
もしかしたら聞かれるかも……。などと考えて現在の研究について纏める。子供相手に学会発表じゃあるまいしそんなことは杞憂である。ただ何か普段通りの事をしていると落ち着いたし時間潰しにはなりそうだった。
コン、コン
扉を叩くノックの音。まだ起きてから1時間強しか経っていない、朝だ。普段の魔理沙では早朝の部類に入る。
「誰だ?」
玄関を開けに行く。アリスは私がこんな朝早くから起きているとは考えない。……もしかしたらそう思って起こしに来てくれたのかも。
もしそうなら彼女と雑談していれば時間は経つだろうし、優雅な身振りを教えてもらい大人な自分をアピールする方法もある。付け焼刃でどこまで通用するだろうか。
ガチャッ
「………意外すぎる客人だ」
「あらそう? そうかもね。ところで簡単なお願いがあるのだけれど、別段手間も時間もとらせないから聞いてくれないかしら」
思惑は外れたが時間潰しの相手がいるならそれでもいい。お願いとやらを聞く代わりに付き合ってもらえばいいのだ。
「願いって何だ? 今日は大事な用事があるんだ、それまでならいいけど」
「大丈夫大丈夫♪ 手間も時間もとらせないって言ったでしょ? 私と賭けをして欲しいだけよ、この場所で1分もかからないわ」
「賭けっつったって何を賭けるのさ? 金はパスだ、今日入用になるかもしれないし。それと私個人の持ち物はそう多くない」
一応彼女は借り物を博打の元手にするほど堕してはいないらしい。いや失礼、貸し借りに関しては彼女なりのルールがあってそれに関しては真面目に守っていると言うべきであった。
「私のこのコインを賭けるわ、貴女が勝てばこのコインは貴女のもの。私が勝てば私のもの。コインを賭けてコイン投げをしましょう」
彼女は左ポケットから一枚の硬貨を取り出した。金色に光るそれの魔理沙から見える面には菊の花が彫ってあり、その周りに1万円の額面が彫られていた。
「もともとお前の物じゃないのか? それだと私に損が無い気がするんだが」
「このコインは私に“与えられた”ものでね、“贈られた”ものじゃないの。なんとなく私自身のものって感じがしないんだ。だけど誰かとこれを奪い合って勝ち取ることで本当に私のものになる、そういう気がするの。この二つの違いってわかる?」
「ああ、そういうのわかるぜ。実力で奪い取ったものって自分のものって気がするもんな!」
動かない大図書館はなんだか良くわからないけれど魔理沙に対してムカッとした↓
七色の人形遣いはなんだか良くわからないけれど魔理沙に対してムカッとした↓
香霖堂の主人はなんだか良くわからないけれど魔理沙に対して溜息が出た↓
博麗の巫女はなんだか良くわからないけれど飛んできた電波を結界で遮断した↓
・
・
・
以下略
「だから貴方が勝ってこれをあげることになってもそれでいい、それが私の、そしてこのコインの運命だから。このコインが外で造られて、私にくれた人が最近まで持ってて、私の手に渡って、そして貴方が勝ったら貴方のものになる。私が勝ったら私のものになる」
「わかったよ、賭けを受けるぜ」
「じゃあ、コインを投げるからその裏表を当てて頂戴」
「それがルールか。その前に、二つ条件がある」
「条件?」
「一つ、私が勝ったらお前は私の用事の時間まで話に付き合っていけ。二つ、私がコインを投げる。賭けっていうのは自分が絡むから面白いんだ。カブト虫を戦わせたり犬を走らせたりするのに賭ける奴は賭けのなんたるかを分かってないぜ」
「わかったわ。だったら先にコインの裏表を宣言してから投げて。貴方が投げて貴方が当てるのなら、手のひらの感触で言い当ててしまうかもしれないから。ちなみにこっちの鳳凰の絵柄のほうが表、菊の絵柄の方が裏で良いわね?」
「あいよ、それじゃあ“表”でいこう」
「その選択には何か意味が?」
「ん? 私には裏が似合うってか? まぁ、想像に任せるよ。それじゃあいくぜ!」
ピーーン ペチッ パシッ! チャリーーン ファンファンファンカタカタカタカタカタ
2人の目線が床の上に落ちたコインの上で交差する。
「…………いやー、失敗失敗」
手で受けるつもりだったのだろう。コインを押さえ込むはずの右手はコインが一度は落ちた後でこぼしてしまった左手の甲をはたいただけに終わった。
「裏ね」
「裏だな」
「残念だったわね、拾ってもらえるかしら?」
「仕方ない、こいつはお前のものだ」
玄関横の靴棚、乱雑に靴やそれ以外が突っ込まれたその棚の上に一本のペンが置いてあった。その下には一枚の紙が。重しとして置かれているのだろう、高そうなペンだがこんな所に置かれているからにはそれ自体もその下の紙も重要なものではないのかもしれない。メモ用に置かれているのかもしれない。
僅かばかりの時間で視界に入る小物について考察をしてみた。導き出した結論を家主に話して正否を問うでもなく、またこの持ち主に了解を取ることなくそのペンを手にした。
「ほらよっと、惜しいことしたな」
ペンの頭を右手の中指の付け根に押し当てる。手相学では土星丘と呼ばれる場所に。
そのまま親指と小指の二本でペンを支えて固定した。人差し指、中指と薬指は何にも触れず力を抜く。
肘と手首をまっすぐに伸ばして肩から真横の高さで後ろに振りかぶる。
「まったく、一大決心の日だって言うのにケチが」
魔理沙はコインを拾って立ち上がりながら振り向いた。
滑らかな動作で右手が横にスライドする。腕が胸より前に出るタイミングで肘が微かに曲がり、直線だった右腕が孤を描く。
そのまま吸い込まれるように魔理沙の側頭部、こめかみと耳との間辺りに尖ったペン先が入った。こめかみは目と耳の付け根の中間と定義されるらしいから、目と耳3:1の内分点とも言い換えれるこの場所には正式な名称があるのだろうか?
勢いのままにペンは沈み込み脳幹に達した。
ほんの一瞬の出来事ではあった。だが意識してペンが半分ほど沈み込んだところで支えにしていた小指と親指の力を緩める。慣性力をもったまま運動のモーメントが集中した土星丘によってペンはなおも押し込まれてゆく。
小指と親指が力強く魔理沙の側頭部にぶち当たることはなく、自然に手のひらで頭をはたいたような格好になった。
バシンッ
二人の他に聴く者のいないこの場所で、その音は果たして大きかったのかそれとも小さかったのか。
屋内に反響する程度で外には漏れない小ささとも言えるし、一人の少女にとっては自分の耳がはたかれるという大きい音が鼓膜を震わせたかもしれない。
魔理沙は頭を引っぱたかれた勢いで立ち上がりかけていたその体勢のまま真横のベクトルを貰い受ける。
ドサッという音と共に横たわった。
ペンは頭の部分2cm程を残してすっぽりとその全長のほとんどを彼女の頭部の中に収めている。
入り口にはノック部分が姿をみせている。
血は見えなかった。
「よいしょっと」
自らの行いの成果を確認はしたが、それに対しては何の感慨もなさそうに目線を魔理沙の手から零れ落ちたコインに移す。
拾い上げて右側のポケットに仕舞った。
彼女が出て行く時に扉はちゃんと閉めたらしい。室内に風も無ければ地震があったわけでもない。
ペンが乗っていた紙がその重しが無くなってから大分たった後、自然とひらりと床に舞い降りた。
それだけの時間が経っても側頭部からの出血はほとんどなかった。かわりに鼻からポタポタと血と脳漿の混じった液が零れ落ちている。
まだ魔理沙は死臭を放つほどには腐敗が進んでおらず、マジョラムの香りが衣服から香る。
芳香剤や化粧品にも用いられる香り付け 鎮静作用 防腐効果 そして幸福をもたらすハーブとの二つ名
死者の神オシリスに捧げられたマジョラムが墓の上に咲けば死者の幸福を想える
そんな香りが
ボーーン ボーーン
貰い物か借り物か、あるいは戦利品という名を借りる略奪品か。場にそぐわない立派な置時計が正午の鐘を鳴らした。
あとがき
時折映画を観るのですが、皆さんにとっての良い映画の条件というのはいかなるものでしょうか? 当然各々方で違うのでしょうが。
その映画はCS放送で視聴しました。余談ですが数年前から毎月十数本単位でHDDで録画してその内の半分ほどをそのまま自宅のテレビで観るため、滅多な事では劇場に通わなくなってしまっています。最新の映画、評判の映画がロードショーしていても全然知らず、番組表での解説文で面白い映画が過去にあったことを知るという有様です。
その映画を初めて観終えたとき、感想は『静かだけどすごい迫力 なにこれ怖い 意味分からない』でした。
中学生の感想文でももっと上等なものが書けそうです。
その後自分の中で上記のような意味不な感想でカテゴライズされるという不当評価を下されたその映画をもう一度見る機会がありました。
と、言うのも単に契約チャンネルが再度放送しただけのことで、名前すら忘れていた自分がその番組表から再度録画するというポカをかましただけでした。
その際その作品がオスカーを取っているということを再確認するなど、権威に弱いライトな映画ファンである自分は真面目に観なきゃいけない気がしたのです。たぶん初回は酒入ってたか、ネットブックを机に出してカチカチやりながら流し観ていたのでしょう、……映画鑑賞としては無作法であるけれどそう思いたい。
ともかく2回目の感想は初回とは異なりました。権威付けに押し負けたといえばそうなのですが、その後原作を買って読み終えてから3回目を観ました。
長々と語りを入れておいてなんですが現在の感想は書き込まないことにします。 自ら疑問を提起しておいて申し訳ありません。
初見で途中、もしくはエンディングで涙を流した映画もあります。感銘を受けた映画も終始迫力に圧倒されっぱなしだった映画もありました。
一番を決めるのは苦手なので比較は出来ませんがこの映画も2回目、3回目とたぶん同じような至福の時間を過ごせたように思えます。
映画に限らずアニメでも漫画でも音楽でも良いのですが皆さんにも至福の時間との出会いがありますよう。
マジックフレークス
作品情報
作品集:
21
投稿日時:
2010/10/23 14:46:37
更新日時:
2010/11/06 22:51:54
分類
血と暴力の土地
すべての美しい女
魔理沙
魔理沙の哲学。
魔理沙を殺したのは何者か。それはこの話では重要なことではない。
邦画、洋画、アニメのDVD、主に東方の同人誌及びアレンジCD、マンガ、ビジネス書、銃火器。
パソコンのハードディスクの肥やしと化した雑多なゲーム類。
ネットでは排水口に投稿された作品を堪能する。たまに自分でも書いてみる。
発泡酒時々ビール、ウィスキー、たまに好物の日本酒。
私の至福はこんなに溢れている。
明確な悪がないのに普通に人がさくさく死ぬ幻想郷は本当に楽園ですね。
雲山や↓のところにゃ吹いたw
それだけに理由も意味も分からせずにさっくり魔理沙が死ぬところがギャップやタイミング的に神がかってると思った
こういう無情や理不尽は大好きだ
最後何が起こったのか分かりませんでした・・・
ところで「No Country for Old Women 1 」
ってタイトルですけど2もあるんですか?
2にも期待
そして、産廃的な場面がラストだけという事がここにある多くのSSと一線を画すように思えた。
読んでるあいだ楽しかったです。(自分の語彙が足りないので見下ろすような文章になってしまいました;;)