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『そして彼女は人の恐ろしさを見る』 作者: pnp
「いつの間にかなくなっていた、と?」
「そうなんです! まるで溶けて消えたみたいになくなっちゃってたんです!」
小さめの籠にぎゅうぎゅうに詰め込まれている果物を指差し、人里で商店を営む女性が言った。
彼女いわく、気付いたら商品が消えてしまっていた、ということなのだ。
売れもせずに商品が消えてしまい、損害を被った筈なのだが、その口調はどこか得意げに感じられる。
あまりに摩訶不思議な出来事に直面している為か、原理や犯人が明確でないので、怒るに怒れない為か、あるいは両方か。
相談を受けた上白沢慧音は、顎に手をやり、ううんとそれっぽく唸って見せた。この事件の犯人を考えていそうで、実は彼女は何も考えていない。
と言うより、考えようがない、と言った方が正しい。店先に置かれた商品を誰にも気付かれずに盗むなど、要領よくやれば人間でもできる事だ。
しかし、店の女性は盗られた感じなど微塵にもしなかったと、自身の主張を捻じ曲げようとしない。
それ故に、慧音が言える事と言えば、
「売ったのを覚えていないとか」
これ程度の憶測だった。
慧音の予想通り、女性はぶんぶんと首を横に振り、慧音の示した憶測を否定した。
「なくなったのは、今日売っていたものの中でも特に大きな果実です。もしも売れていれば、それはそれは印象に残りますとも」
「それじゃあやっぱり、目を離したりした隙に盗まれたんじゃ……」
「そんなこともありません!」
断言した女性の勢いに気圧され、慧音は言葉を失った。
その後も女性はぎゃあぎゃあと喚き散らし、慧音は当たり障りの無い言葉で宥めていた。
暫くそうしていると、女性は怒り疲れたようで、すっかり大人しくなってしまった。
それを見計らい、
「とにかくこの件は博麗霊夢に相談しておく。彼女ならきっと解決してくれるさ」
慧音がこう言うと、
「ええ、ええ、是非お願いします」
すっかりしおらしくなってしまった女性はぺこぺこと頭を下げ、自営している店へと戻って行った。
「……と言うことなんだ。何とかしてくれ」
慧音はわざわざ長い階段を上って博麗神社へ赴き、そこの巫女である博麗霊夢に、件の女性の事を相談した。
しかし、女性の相談を受けた慧音がそうであったように、霊夢も至極困り果てている様子だった。
「何とかしろって言われてもね。犯人がいるかいないかもはっきりしていないんでしょ?」
「それも含めて、何とかしてくれ」
慧音は懇願するように言ったが、
「無茶言わないでよ」
霊夢の返答は予想通りのもであった。慧音は、そうだよな、とため息交じりに呟いた。
慧音よりも先に神社に来ていた霧雨魔理沙は、軽い口調で口をはさんだ。
異変解決の義務も無く、人里の出身でもない彼女にとって、この奇妙な事件は他人事でしかない。それ故の軽口だった。
「霊夢得意の勘で探して当ててみればいいじゃないか」
「いくらなんでも限界があるわよ」
この件の面倒くさい所は、犯人がいるかどうかが定かではない事――同時に、そもそも事件性すら有無がはっきりしない点だろう。
特殊な能力を持つ者が多くいる幻想郷では、常識では考えられない出来事でも、何者かが起こした『事件』である可能性がいつでも纏わり付く。
犯人なんていない、何かの間違いだろうと、簡単に割り切る事ができないのだ。
実際、慧音に相談を持ちかけた女性だって、心の片隅では自分に落ち度があったかもしれないと思っている。
だが、前述した通りのような世の中だ。自身に落ち度が無い僅かな可能性に賭けて、駄目で元々で相談している節がある。
一切の手掛かりの無いこの事件を、一から捜査するのは、まるで雲を掴むような話だ。
そんな骨の折れる仕事を霊夢が真面目に受け持ちたがる筈もなく、足を投げ出して座っていた濡れ縁をかつかつと指で叩きながら、暫く唸った後、
「あ! もしかして紫じゃない?」
ぱちんと指を鳴らし、慧音を指差して言った。
閃いた人物の名前を、何の吟味もせずに口に出した、と言う感じが否めず、慧音は顔を顰めた。
「ゆ、紫? 八雲紫?」
慧音の表情は晴れないが、霊夢は対照的に嬉々としている。魔理沙も笑っている。あまりに馬鹿げた推測だったからだ。
「そう。あいつの能力なら人知れず物を盗るなんてお茶の子さいさいよ」
「確かにな。霊夢の言う通りだ」
魔理沙は笑みを崩さぬまま、首を縦に振って同意を示した。
「って言うか、この際そうだったことにしちゃいましょう」
「こらこら。私をそんなちんけな事件の犯人にしない」
言われて飛び出て――と言わんばかりに、スキマ妖怪の八雲紫が、何も無い空間に刻まれた割れ目から登場した。
唐突すぎる登場に慧音は少したじろぎ、「こんにちは」と妙に丁寧に挨拶してしまった。
永夜の異変の際に出会った時とは打って変わって丁寧な慧音に、紫も少し困惑したようで、少し不思議そうに「こんにちは」と返した。
霊夢と魔理沙は、どうしてこんなに丁寧なやり取りをしているんだろうと疑問を感じ、二人を交互に見やっていた。
そんな、妖怪同士のやり取りとしては不自然なほど丁寧な挨拶を終えると、紫はすぐに口を開いた。
「人里の商店の物を盗るなんて、私がする筈ないでしょう?」
「いや、あんたって案外つまんないことをやりそうだわ」
「随分軽く見られたものね。傷つくわ」
淡々とした口調で言った後、さて、と紫が慧音の方を向き直した。
「何だか、人里が大変なようね」
「えっ、ああ、えーと……あ、あなたの力で、その、何とかならない……ですか?」
慧音はまだ、先ほどの丁寧なやり取りの尾を引きずっているらしかった。
しかし紫と初めて対面した時は使わなかった口調であるが故に、同時に不自然さを感じていた。
そんな慧音を見て、紫はふっと微笑んだ。
「いつも通り話してくれていいのよ」
「……すまない」
少し顔を紅潮させ、慧音はコホンと咳払いし、
「どうにかできないものか?」
と言い放った。だが、やはり少しだけ口調が堅い。
「どうにかするのは簡単だけど、私が出る幕ではないわ。高が窃盗だし」
「されど窃盗だぜ」
魔理沙が口をはさんだ。
「承知しているのならその手癖の悪さをどうにかなさい」
「私は死ぬまで借りてるだけさ」
その後も暫くの間、この奇怪な事件の対策を話し合ったが、真面目に向き合っていたのは慧音だけであった。
手掛かりが無いと動く気の無い霊夢と、茶化したいだけの魔理沙と紫。そんな四人で話し合っても、いい案など浮かんでくる筈がなかった。
結局、『様子見』と言う無難な結論に達し、解散となった。
『様子見』を言い渡された数日後、同じ様なの事件が人里で起きた。
最初とは違う店で起こったが、やはりこの店の店主も、気が付いたら無くなっていたと主張してそれを捻じ曲げようとしない。
その数日後、また別の店で同じような事件が。その数日後、またも同じような事件が……。
どうにかして被害を食い止めようともどうにかできるものではなく、被害は人里全域に広がった。
被害を金銭に換算しても、そう大した額にはならないが、何者かが盗みを働いていると言う事実が腹立たしいようで、人里の雰囲気は険悪なものになっていった。
*
ある日、霧雨魔理沙は、魔法の森にある自宅で、魔法の元となるものを煮込んでいた。
特に喋る必要もないので、ただ黙って、じっと作業が終わるのを待っている。
それ故に家の中は静かで、薪が爆ぜる音と水が茹る音くらいしか聞こえてこない。
聞き慣れたその音に耳を傾けている内に、魔理沙はうつらうつらとし始めた。魔法研究に没頭して、就寝が遅い日が続いていたのが原因だ。
一瞬視界が真っ暗になり、すぐにまた見慣れた竈が目に映り、また闇に消えて――これを繰り返している最中だった。
きぃ、と、草臥れた霧雨邸の玄関扉が開いて軋む音がした。
眠る間際ではそんな小さな音にも敏感に反応してしまうようで、はっと覚醒した魔理沙は、反射的に玄関の方を見た。
「いらっしゃ……ん?」
音が聞こえてからそう時は経っていない筈だったが、客人の姿がない。勝手に開くこともありえない。
不思議なこともあるものだと、魔理沙は竈へと向き直した。
だが、向き直して目に映ってきたのは、竈ではなく、知り合いの妖怪であった。
「こんにちは!」
「うわっ!」
まさか誰かいると思っておらず、魔理沙は驚いて椅子から転げ落ちた。
ここまで驚かれるとは思っていなかった、覚妖怪の古明地こいしは、椅子から落ちた魔理沙を見てけらけらと笑った。
「そんなに驚かなくてもいいのに」
「驚くに決まってるだろ。こっちは気配すら感じれないんだぞ」
古明地こいしは、心を読む妖怪であるが、その能力を発揮する為の第三の眼を閉じてしまった為、心を読むことができない。
その代わりに、無意識を操る能力を手に入れた。そのお陰で彼女は、誰にも気付かれずに移動を行うことができる。
テーブルに手を掛けて立ち上がり、服に着いた埃を叩いて払って、再び魔理沙は椅子に座った。
こいしは傍に置いてあるもう一つの椅子に腰かけ、魔理沙と同じように、火に掛けられている鍋をじっと眺め始めた。
しかし、こいしはすぐに目線を別の方向へ向けたり、自分の指を絡ませてみたりと、集中力が見られない。魔法に関心がないからだろう。
すぐに飽きてしまったこいしは、魔法とは全く関係の無い話をし始めた。
「そうそう、魔理沙! 聞いて! 見て! ほら!」
「んん?」
早急にいろんなことを知らせたくて、一息で多くの事を要求してきたこいしに、魔理沙は気の抜けた声と共にゆっくりと振り返る。
無邪気な笑顔を浮かべるこいしが魔理沙に見せているのは、ありふれた質のりんごだった。
魔理沙は見せられたそのりんごを凝視してみたものの、おかしな点を何一つ見つけることができなかった。見たところ、ただのりんごでしかない。
しかしこいしは、したり顔でそのありふれたりんごを、魔理沙にこれ見よがしに見せつけている。何か言葉を期待している風にも見えた。
前述したとおり、魔理沙にとって、それはありふれたりんごでしかないので、
「りんごだな?」
こう問うのが精いっぱいだった。
問われたこいしは一層笑みを深くし、頷いた。
「そう、りんごなの!」
だからどうしたんだと、魔理沙は心中で呻いた。
妖怪と言う者達は、ただでさえ何を考えているか理解し難い輩が多い。この心を閉ざした妖怪は、その傾向が特に顕著で、付き合いが非常に難しい。
相手の気に障るような発言をしてしまわないように警戒しながら、魔理沙は次なる問いを口にした。
「りんごってのはいいんだけど、そのりんごがどうしたんだ?」
「ただのりんごじゃないのよ。実は、このりんごはねぇ」
そこまで言って、こいしはふふっと微笑んで言葉を区切った。
ここまで勿体ぶると言うことは、きっとこのりんごには大いなる秘密が隠されているのだろうと、魔理沙は思った。
その後、もう三度ほど「このりんごはねぇ」を繰り返した後、
「盗んだものなのよ」
こいしは確かにそう言った。
魔理沙は言葉を失って、黙ってこいしの笑顔を見据えた。
言葉を失った理由としては、りんごに隠されていた秘密の内容が、『盗品である』というだけのことであった――これが大部分を占める。
そして、そのつまらない秘密の内容が、よりによって悪事であったこと。おまけにそれを自慢げに語ってきたこいしへ対する、いわば呆れの様なものも感じていた。
呆れと言っても、妖怪なんて基本的に自分勝手な者ばかりだから、侮蔑の意は無かった。立派な妖怪の癖に、こんな小さな窃盗を自慢してくる。その妖怪らしからぬ幼さに呆れていたのだ。
魔理沙だって時々、窃盗まがいの強奪行為を行っているから、あまり強い事は言えない。していなくたって、特に言うことなどなかったが。
「窃盗は立派な罪だぜ」
苦笑い混じりに当たり障りの無い警告を言ってみると、こいしは急にりんごを齧り、咀嚼し、飲み込んだ。
見た目は勿論、味まで普通であったようで、美味いも不味いもないような反応を示した。そして、やはり微笑んだ。無意味に笑いまくるので、腹の底で何を考えているかは察し難い。
この笑顔が崩れることはあるのだろうか――ふと、魔理沙はそんなことを思った。
そんな魔理沙の思いなど露知らず、こいしは笑みを崩さぬまま言った。
「人の命を奪うよりはいいんじゃないかしら」
「なるほどな。お前からすればどっちも食べ物か」
そうそう、とこいしは答えて、再びりんごを食し始めた。しゃくしゃくと音と共に、小さな手に収められた赤い果実はあれよあれよと言う間に小さくなっていく。
こいしの胃に送り込まれていくりんごを眺めながら、魔理沙は問うた。
「どこで盗んだんだ?」
問うた頃には、りんごは残すところ芯のみと言う状態であった。
芯まで食い尽すつもりではないだろうかとも思えた勢いが、魔理沙に問われるとぴたりと止まった。
「人里だよ」
「……人里?」
「うん」
さして興味をそそる話題であった筈の、このこいしの自慢話に、僅かながら魔理沙の中で。
先日、博麗神社で、慧音が霊夢に相談していた事件のことではないかと、魔理沙は推測した。不自然なほど誰も気付けない原因が、これで説明できるではないか。
「お前、それが初犯か?」
「いいえ、もっといろいろ盗ったわ」
「いつ頃から」
「よく覚えていないけど、最近のことよ」
次々と繰り出される魔理沙の問いに、待ってましたと言わんばかりに回答していくこいし。この話題を自慢しているほどだったのだから、詳細を質問されるのが嬉しいのだろう。
質疑応答は数分間行われ、時間が経つに連れて魔理沙の中で生じた疑惑は、確信へと変わっていく。
魔理沙の質問が終わると、こいしは満足したように霧雨邸を後にした。
去り際、魔理沙はこいしに、
「次の戦果報告も楽しみにしているよ」
と、心にもないことを言っておいた。
再び霧雨邸は、薪の爆ぜる音と、水が茹だる音だけが響く、静かな空間となった。
その中で魔理沙は、紙とペンを用意し、先ほどこいしに投げ掛けた質問とその回答を思い出し、メモしておいた。
人里を困らせている異変の解決に貢献してやろう――そう思ったのだ。
明くる日、魔理沙は人里に住まう慧音の元を尋ね、昨日こいし本人から聞いたことを全て彼女に打ち明けた。
実際、人里で起きているこの窃盗は、こいしの悪戯だったのだが、確定的な証拠がないので、慧音は少しばかり魔理沙を疑っている様子だった。
「本当なんだよ。本人から聞いたんだから」
「しかし、本人から聞いたと言う証拠もないからな」
「何を盗んできたかも、本人が覚えている範囲で聞いたぞ。果物、野菜なんかの食べ物、装飾品や畑の肥料など、だろ?」
自前のメモを読み上げる魔理沙。当然のことだが、人里の被害と合致している。
「犯人が古明地こいしと言う妖怪だ、と言うことは分かった。しかし、どうやって捕えればいい。気配すら感じれないんだろう?」
「そうそう。私の目的はほぼそれなんだがな」
魔理沙は自身の胸に手をやり、言った。
「私がこいしを捕まえよう」
「どうやって?」
「どうとでもなるさ。割と仲がいいからな。それで、捕まえたらお前に渡してやろうじゃないか。処罰の内容なんて、私にとってはどうでもいいことだから」
「はあ。それはありがたい」
やけに協力的な魔理沙に、慧音は若干の胡散臭さを感じていた。無償でこんなことを受け持つような者ではないというイメージしかなかったから。
だから、魔理沙が自身の思惑を言う前に、
「何が望みなんだ?」
慧音はこう問うた。
胸に一物あることを悟られていたと知った魔理沙は苦笑いしながら「察しがいいんだな」と漏らした。
そしてこほんと咳払いをして、苦笑いを保ったまま言った。
「私もこの一件の解決に協力したってことを、誰かにさりげなく伝えてほしいんだよ」
「つまり、売名か?」
「そんなもんだ」
人里を困らせている犯人が捕まえることができるに越したことは無いので、慧音にこの取引を断る理由はない。
だが、一応、慧音は問うておいた。
「私は構わないが、お前は友達を売るつもりか?」
「ははっ。売るだなんて、随分と酷い言いようだな」
慧音は真面目にこの問いを投げ掛けたつもりだったのだが、魔理沙はそれを笑い飛ばした。
「友人の素行を正すのは、友人の役目だろう?」
「……ああ、なるほど」
「悪いことを悪いと言える勇気」とか、「友達の悪事を指摘する勇気」などに代表される、大人たちが子供に教える約束事のようなもの。いい歳になって、魔理沙はそれを引っ張り出してきた。
「そうまで言ってくれるのなら、よろしく頼むよ」
「ああ、任せてくれ」
こいしが次に家へ来た時、捕まえておくよと約束を取り決め、魔理沙は去って行った。
気まぐれに地上へ遊びに来るこいしが、再び霧雨邸を訪れるのがいつか、魔理沙にも分からなかった。
しかし、その時は遠くない内にやってきた。魔理沙と慧音が約束を取り決めたわずか二日後、こいしがまた魔理沙の元へ現れたのだ。
彼女の去り際に放った、“心にもない言葉”の影響だった。
この細やかな自慢話を聞いてもらいたくて、やってきたのだった。
二度目の戦果報告では、こいしは気配を殺すこともせずに霧雨邸の玄関扉を開けた。
「こんにちは! お邪魔します!」
「! こいしか」
以前と同じように魔法の研究に没頭していた魔理沙は、こいしの声を聞いた途端、後ろを振り返った。
前とは打って変わって、自分の来訪に興味を閉めていることに、こいしは若干の違和感を覚えたが、特に詮索はしなかった。
話が聞いてもらえれば、それでよかったのだ。
魔理沙自身、過敏に反応し過ぎたと自らの行動を戒めた。こんなに不自然な行動を取ったら、心中に一物あることを悟られてしまうではないか、と。
しかし、心を読むのが嫌で心を閉じた少女、それが古明地こいしだ。わざわざ人の考えていることを深読みしてくるようなことはしないかもしれない、とも思った。
彼女はとてつもなく、人の心と言うものに対して臆病なのだから。
「戦果報告か?」
「ええ! 今度は前とは違うのよ。まずねぇ……」
嬉々とした口調で語られる罪の数々に適当に相槌を打ちながら、魔理沙は二つのコーヒーカップに緑茶を淹れた。
そしてその片方に、妖怪にも効果がある程強力な睡眠薬を入れた。
薬入りのコーヒーカップを「ほら」と短い言葉を添えてこいしに差し出すと、こいしは「ありがとう」と答えて、すぐさまそれに口を付けた。
「コーヒーカップに緑茶なんて、変なの」
「和も洋も楽しめる贅沢な仕様だろ?」
その後もこいしはいろんなことを話していたのだが、すぐに睡眠薬の効果が表れ、うつらうつらとし始めた。
眠いならそこで寝るといい、と言う魔理沙の気遣いに何の疑いも持たず甘んじて、ころんとベッドへ横になり、不自然に深い眠りについた。
こいしを起こさぬよう、魔理沙はそっと自宅を後にし、慧音に犯人捕獲を知らせた。
慧音を連れて魔理沙が帰って来ても、まだこいしは眠りこけていた。
「この子が?」
「そうとも」
ベッドの上で眠っている少女を、慧音はまじまじと眺めた。
暫くそうした後、じゃあ引き取らせてもらうよ、と言い、そっとこいしを抱きあげた。
「薬は強い。少し乱暴に扱っても平気だと思うぜ」
「それは安心だ」
慧音は、俗に言うお姫様抱っこで、こいしを人里へ持って帰って行った。
帰路を辿る最中、慧音は幸せそうな寝顔のこの少女を見て、思わず手が出そうになるのをぐっと堪えていた。
散々人里に迷惑をかけた罪を、どう償ってもらおうか――そればかりを考えていた。
*
人里から少し離れた森に、小さな小屋がある。
元々は、人里に住んでいた人間が、森での作業に使う物を収納する倉庫として使っていた。
便利ではあったが、妖怪や妖精が悪戯して、物が無くなったり、壊されたりすることが度々あった。
直しても直しても被害は収まらなかったが、持ち主は負けじと妖怪でも中に入るのを困難にする為に、頑丈に作り替えたりしていた。
だが、出費ばかりが嵩んでいき、バカバカしくなったので、結局里の中に作り直し、結果建物だけが森の中に残ることとなった。
そんな過去を持つ建物の中に、慧音はこいしを置き、外から施錠して、一度人里へ帰って行った。
彼女が、人里から必要なものを揃えて入れた袋を持って再び倉庫を訪れた頃になっても、こいしはまだ、すぅすぅと小さな寝息を立てながら眠っていた。
強力な睡眠薬を飲ませてくれた魔理沙に感謝しつつ、袋に手を突っ込み、何の変哲もない包丁を取り出した。特別手入れがなされている訳でも、新しい訳でもない。
薄暗い小屋の中にある僅かな陽光で鈍く光る刃を見つめ、ふっと息を漏らし、次に眠っているこいしに目をやり、
「元はと言えば、お前が悪いんだからな」
そっと呟いた。
これから行う行為を正当化する為――と言うよりは、自身の正しさを再確認するかのように。
まだ金物が入っている袋から慧音がぱっと手を離した。それなりの重量を持ったそれが、地面へ落ち、がちゃんと音を立てた。
葉擦れの音が時たまするくらいの静かな森には、あまりに大きく、不自然な音であった。それにも関らず、こいしは目を覚ますことがなかった。
慧音は起こしてもいいくらいのつもりで袋を落としたが、何も変わらない彼女の様子に、驚き、呆れ、嘲った。
眠るこいしを仰向けにし、彼女の胸元にある、青い“第三の目”に、空いている左手を添えた。
右手には先ほど袋から取り出した包丁が握られている。
「どんな悪事も、コレで見て見ぬふりするつもりか?」
包丁の刃先で第三の目をこんこんとつつく。目と言う割に、思っていた以上に硬質であった。
刃を倒してぴたりと当て、そこで慧音の手は一度止まった。
すぅ、と大きく息を吸い、そして大きく吐き、大きく脈動し始めた心臓を落ち付けさせる。
未知なる体験を目前に控え、胸中は期待と不安でいっぱいなのだ。
しかし、それ以上に高揚感があった。寺子屋で教えている子どもと同じくらい幼い容姿の者へ、こんなことができる日が来ようとは――
目に当てられていた刃に、一気に力が込められた。眼球を護っている外皮に、強引に刃が入り込んで行く。
いくら睡眠薬を飲まされ眠らされていたこいしも、この行為に伴う痛覚を無視はできなかった。
悪い夢を見ていて、自身の生命が終わりを迎えたその瞬間、はっと覚醒するかのように目を開けた。
「え? え、ええっ!?」
こいしは覚醒早々、見知らぬ人物が自分の第三の目に何かしているのに酷く驚いたのだが、
「起きたか」
慧音からすれば、この覚醒は想定内の出来事で、驚くこともしなかった。無論、こいしを覚醒へ誘った右手から力が抜けることもない。
りんごの皮を剥くかのように、第三の目の青い外皮が波立ち、剥がれて行く。包丁が通った跡には、赤く細い血管が無数に奔っている白い眼球がその姿を現している。
「ちょっと何をして……ひっ……ああ……!!」
「まずはお前は人の痛みや怒りを知れ。全てはそこから始まる」
「あ、ああああ!! うああああぁっあぁああぁぁ!」
突如訳の分からないことを言われ、耐え難い激痛を味わわされたこいしは、得意の無意識への逃避さえできず、ただ泣き喚いた。
そんなことをしても慧音は何も思わないし、この暴虐を止めようなどとは思わない。
激痛を紛らわそうと必死にこいしが泣いている間にも、第三の目は少し開かされて行き、そう時も経たない間に、遂に眼球は、いつ振りかの外気に触れた。
強制的なこいしの第三の目の開眼だ。心を読む能力が復活し、代わりに持っていた無意識を操る能力は当然のようになくなってしまった。
他者を心を読むことを恐れて閉じた第三の目を、強制的に開かされる――その恐怖は、実際に第三の目を閉じてしまった彼女のみが分かることだろう。
読みたくもない慧音の心を、こいしの第三の目が読み取った。
慧音の心の中に、美しい言葉など一つも見当たらない。はた迷惑な覚妖怪に対する呪詛が、いくつもいくつも並べられているばかりであった。
口に出してくれるのならば耳を塞ぐことで遮断できるが、心の声はそうはいかない。
眼球が剥き出しの状態になった第三の目を、こいしは手で隠して心を読む能力を封じようしたが、その程度のことでは能力は封じることなどできない。
心に見るに堪えない呪詛、手には凶器。そして先ほどの暴力。
こいしが自身の生命の危険を感じるのに、時間は掛からなかった。
第三の目を手で覆うことの無意味さに気付いてか否か、目から手をどけ、尻餅をついたままこいしはずりずりと後退した。
だが、大して広くもない小屋の中、すぐ壁に背がぶつかって、後退は妨げられてしまった。
少し前のこいしならば、無意識を操ってこの状況から脱することができるであろうが、第三の目を開かれてしまった彼女には、もうそうすることができない。
慧音は悠々と歩み、すぐにこいしに追いついた。
そして、激痛と恐怖で歪み切っているこいしに目線の高さを合わせ、微笑んだ。
その微笑みは、寺子屋の子どもたちに見せるものと一緒だった。悪戯を諭す教師の、困ったような微笑みだ。
「な? 人に迷惑をかけることがどれだけ悪いことか気付けただろ?」
「ああ、あ、うう、うああ……」
心中に渦巻く汚い言葉と、口にしている言葉と表情が全く一致せず、こいしはより恐怖し、同時に困惑した。
「この私の心の中は、人里に住まう者の総意だと言っても過言じゃない」
「人里に住む人の、総意……」
「そう。人里の総意」
反芻し終えると同時に、慧音がこいしの胸倉を掴み、立ち上がった。
「お前に贈る、人里に住まう者全員の言葉だよ!」
優しげな表情を一変させ、鬼の形相となった慧音が、壁に向かってこいしの体を打ち付けた。
一度では激情を治めることはできず、二度、三度、四度と、回数を重ねて行く。回数が重なっていくにつれてこいしの泣く声が大きくなっていく。
それに煽られ、慧音の隠された下賤な嗜虐性も刺激されていく。
「言わなければ気付けなかっただろ? 心が読めないから! でも、今なら分かるだろう。心が読めるようにしてやったからな。ほら、私の心をよく見ろ。これが人里の総意だ。誰もがお前を大嫌いなんだよ!」
一体何度壁に打ち付けたか、両者とも分からなくなった頃になって、ようやく慧音はこいしを地面へ放った。
恐怖で体が硬直し、逃げ出すこともできない。がたがたと震えながら、譫言の様に、地霊殿住まう姉の名前を呟いた。助けを求めているのだ。
それを聞いてようやく、慧音はこいしに姉がいることを思い出した。
「ああ、お姉さんがいるんだっけな」
「え?」
「こんな躾のなってない妹を育てた姉にも、ちょっと反省してもらおうか」
「待って、お姉ちゃんは関係ないの!」
「あるよ。監督不行き届きだ」
硬直している体が、不思議と柔らかさを取り戻し、同時にこいしは弾かれるように慧音に飛びついた。
小屋を出ようと踵を返した慧音の脚にしがみ付いて、震える声を張り上げる。
「お願い、お姉ちゃんには言わないで! お願い!」
「姉に悪戯が知られたくないのは分かるが、そう言う訳にはいかない」
慧音はこう言ったが、こいしの想いはそんなことではない。姉をこんなことに巻き込ませる訳にはいかない――その一心だった。
しかし、今のこいしにあるのは心を読む能力くらいなもので、慧音を止める力などない。慧音は半獣と言えども、立派な妖怪だ。
意図も簡単にこいしを振り払い、小屋を出て、施錠をした。
慧音が去った小屋の中、こいしはどうにか小屋から出ようと、扉を壊そうとしたりしてみたが、無駄であった。
繰り返される妖怪の悪戯に対抗して補強されていった小屋は、こいしが壊せる程、軟なものではなかったのだ。大きな音を出しても、周囲に助けてくれそうな何かがいる訳でもない。
足掻いても無駄だと悟ったこいしは、絶望に打ちひしがれ、ぺたんとその場に座り込んだ。
静かになった途端、壁に打ち蹴られた頭や背、そして外皮を剥がされた第三の目がずきずきと痛み始めた。
痛みから逃れようと思い、無意識を操ろうとしても、何も起こらなかった。どうにかして無意識を操ろうと、どうやって操っていたのか改めて思いだそうとしても、できなかった。
外皮を大きくを失った第三の目は、再び閉じることも叶わなかった。
人里に帰った慧音は、見知らぬこいしの姉に宛てて、簡素な手紙を書いた。
『こいしが人里で悪事を働いたので、こちらで拘留させてもらっている。保護者として迎えに来てほしい。以下に示す場所へ足を運んでほしい』という内容だ。
慧音はそれを丁寧に折って封筒に入れ、昔の地獄で、嫌われ者の集う場所である地底の世界へ続く縦穴へと足を運んだ。
穴を覗いてみても、真っ暗で何も見えない。しかし風が吹き抜けるのを感じた。奥まで続いているようだ。
地底へ入って行くのは抵抗があったし、何よりこいしの姉である古明地さとりもまた、覚妖怪だ。今、自分がこいしにやっている行為を読まれては面倒だから、対面は極力回避したかった。
どうやって手紙を出すべきかと思案しながらここまで来たが、縦穴の前には看板が立ててあった。
『お手紙、贈り物などを出したい方は、勇気を持って穴へ投げ込んでください。投げ込んだ後、暫く待っていてください』と記してある。
慧音は本当に大丈夫なのだろうかと思いながらも、他に手立てが無いので、手紙入りの封筒をぽいと穴へと投げ込んだ。白い封筒はくるくると回転しながら落ちて行き、すぐに闇に呑まれて姿を消した。
封筒は闇の中でもくるくると回転しながら落ちて行ったが、暫くすると、空中でぴたりと静止した。
地底の入口付近に設けられている、巨大な蜘蛛の巣に引っ掛かったのだ。
何かが巣に引っ掛かったのに気付いた巣の主である土蜘蛛の黒谷ヤマメは、振動の発生した場所へ歩んで行く。
引っ掛かっている封筒を拾い上げ、その昔、発明家の河童から半ば強奪した小さなペンライトで差出人、宛名なんかを確認した。
終わると同時に、蜘蛛糸を使って器用に上へ上へと上がっていき、あっと言う間に地上に出た。
急に出てきた土蜘蛛に、慧音は目を丸くした。
「どうもこんにちは。この封筒は、上白沢慧音さんから古明地さとりさん宛てでいいんだね?」
「ああ、間違いない」
「了解。早急に届けておくよ」
「よろしく頼む」
任せろ、と胸をトンと叩き、再びヤマメは穴へ飛び込んで、あっと言う間に姿を消した。
その日の内に、慧音からの手紙はさとりの手に渡った。
*
手紙を読んだこいしの姉である古明地さとりは、ペット達に「留守番を頼んだ」とだけ言い残し、地上へ急いだ。
いつかこんなことが起きてしまうのではないだろうかと、無意識のまま動く妹見て思っていたが、結局何もしてやらなかったことを悔いた。
とは言っても、無意識で動く彼女をどうこうする術はないので、何もしてやれないのは仕方のないことなのだが。
地上の見知らぬ者からの手紙に記されていた地図は、人里の外れにある森の中だった。
ここに一体何があるのだろうとさとりは思ったが、地上の、それも人間たちの生活の事情など知ったことではないので、深く気にすることはなかった。
なるべく妖怪や人間の目に留まらないよう、細やかながら身を隠しつつ、目的地へ進んで行く。
誰と出会うこともなく、さとりは目的の場所へ辿り着いた。
「随分と貧相な建物ね……」
こんな所に自身の妹が拘留されているのかと思うと、非常に不愉快だった。
いくら人間に迷惑をかけたからと言っても、こんな古ぼけた場所にひっ捕らえることはないじゃないか、と。
しかしさとりは、一人、頭を振って自身の考えを否定した。悪いことをしてしまったのに、こんな態度でいてはいけないと思ったのだ。
人間はいろんなことを根に持つから、早くに謝ってしまった方が面倒なことにならない。
長い長い妖怪の一生の中でなら、このくらいの失敗はあったっておかしくない気もしているから、いちいち自身らを正当化する必要も感じなかった。
地図に示された場所にある小屋の前に立ち、ドアをノックしてみた。
「ごめんください」
声を出してみた、次の瞬間、第三の目が感じ取った心に、さとりは驚愕した。
特に意識せず読んでしまった心は、確かに「お姉ちゃん」と言う単語を感じ取ったのだ。
こいしの心は読むことができない。だから、彼女の苦悩などを理解してあげるのが難しく、いつも手を焼いていたのだ。
それなのに、確かに第三の目はこいしの心らしきものを読み取っている。
――これは一体どういうことだろう?
「こいしっ!」
ノックに対する返事など待っていられず、さとりはドアを開け放った。
見るからに草臥れた外見。内部は、地面には砂、壁と棚と宙には埃、天井には蜘蛛の巣とカビと、一辺の隙も無いくらい汚れた部屋の奥に、こいしがいた。
衣類を一切身に着けておらず、手は後ろに回っている。きっと後ろで縛られているのだろう。
見慣れた青い第三の目は、不自然な形で眼球がさらけ出されている。青い外皮の無い部分は血が固まって黒ずんでいる。
強引に第三の目を開かされてしまった。心が読めてしまった原因はこれだろう。不安げなこいしの表情。口には猿轡。きっと怖い思いをしたんだ――さとりは瞬時にこれらの推測を立てた。
推測は迅速で、しかも正確だった。しかし、これらのことをすぐに分かってしまう程にこいしのことばかり考えていたことが、彼女の失敗であった。
入口のドアのすぐ横にいた慧音の存在に、さとりは全く気付けていなかった。
推測の終了と同時にすぐさまこいしに駆け寄ったさとりに、慧音が背後からさとりの頭を木製の棒で殴打した。
殴打された瞬間、視界がぐらりと揺れた。どうにか意識は繋ぎ止められたものの、立ち上がることは叶わず、俯せで倒れてしまった。
朦朧とした意識のまま、さとりは手を伸ばし、こいしに触れようとした。
だが、その手がもう少しで妹に届くと言ったところで、慧音が殴打に使った木製の棒の先端で、さとりの手を止めた。
「初めまして、古明地さとり。出来の悪い妹を持つと大変だな」
嘲笑うかのような口調で言った慧音に、さとりは視線を向けた。
「あなた、自分が何をしているか、分かっているの?」
「勿論分かっている」
さとりの手に当てている棒を軸に、慧音はゆっくりと歩き、さとりとこいしの間に移動した。
少しだけ回転した棒にさとりの手の甲の皮膚が巻きこまれ、渦巻いた。
殴打の際に地面へ落ちた、この場所を記してある手紙を拾い上げ、小さく折りたたみ、話を続ける。
「人に何も言われないのをいいことに、悪事を繰り返す妖怪に罰を与えている」
「だからって、あんなひどいことを……!」
慧音は棒を両手で持ち直し、さとりの頬を棒で殴り抜いた。
唐突な暴力に絶叫し、のたうち回るさとりの頬は真っ赤に腫れ上がり、折れた歯が口からぽろりと落ちて、地面に転がった。
おまけにこいしまで、何かを叫び出して、静かだった倉庫内は一気に薄気味悪く騒がしくなった。
「だからって、だと? 罪人の癖に随分な口の聞き方だな」
常識が通用しない相手だと分かったさとりは今すぐにでもこの場から逃げ出したい気持ちになったが、こいしを見捨てる訳には行かず、ずりずりと後ずさりした。
それを見た慧音はくすりと笑い、血の付いた棒でこいしをつんつんと突いて言った。
「こいつも同じようなことをしていたぞ。さすが姉妹と言ったところか?」
完全に恐怖に取り憑かれてしまったさとりは、それに対しては何も言えず、
「こいしを放しなさい」
震える声でこう言うのが精いっぱいであった。
しかし、慧音は頭を振った。
「そうはいかない。これからこいつには今までの悪事を償って貰わねばならないからな」
「何が望みなの? お金? 近づくなと言うなら、もう人里には近づかせないから、お願いだから……」
「金なんてどうでもいい。人里に近づかないのなんて言うまでもない。こいつに足りないのは反省と後悔だよ」
そう言うと慧音は、棚に置いてあった袋を手に取った。
手に取られた袋の中に入れられている金物がぶつかり合い、がちゃがちゃと音が鳴る。
袋の中身は見える訳でも、見せられた訳でもない。なのにさとりの頭の中には、刃物とか、拘束具とか、不吉なものばかりが思い浮かんでくる。
そんな彼女の不安は、すぐに恐怖に変わった。
慧音がおもむろにひっくり返した袋から出てきたのは、彼女が思い描いた大量の不吉なものだった。
よく見る刃物や槌と言ったありふれたものから、あまり見慣れない、しかし見るからに危険そうなもの。そういった器物が、幾つもばらばらと地面に落ちて行く。
程無くして出来上がった小さな危険物の山。それを、慧音は足で地面に広げて行く。
「妹の罪は姉の罪。妹の更生に一役買ってもらうぞ」
「そんなもので、何を……」
「彼女に、自分のしでかしたことを死にたくなるほど後悔してもらう」
床に広がった物の絨毯の中から、慧音は小ぶりな刃物を選び、手に取った。そしてゆっくりと、完全に腰が抜けてしまっているさとりに歩み寄る。
どうにか慧音との距離を開こうと、さとりも後ろへ下がろうとするのだが、壁がその後退を妨害する。
ここでさとりは、特に意識せずに、慧音の心を読んでしまった。何を考えているのか分かりかねる相手の心は、早々に読んでしまって対処すると言う、彼女の癖のようなものだった。
それによって、彼女の抱く恐怖は頂点へと達した。
「な、何を言っているのよあなたは! そんなことしたら……!」
唐突にこんなことを叫び出したさとりに、慧音は怪訝な表情を見せ、首を傾けた。
しかし、すぐに彼女が心を読んだのだと言うことを察し、「ああ、なるほど」と、ぽつりと呟いた。
そして、にっこりと微笑んで見せた。
「大丈夫だよ。お前は妖怪だ。指なんかを切り落としたところで、死ぬことはないさ」
「……え? ゆ、指?」
慧音の後ろにいるこいしも、これを聞いて愕然とした。
どうして自分の更生の為に、姉の指が切り落とされるのか。そもそも、どうして指を切り落とす必要があるのか。こいしには、何一つ理解できなかった。
何かの間違いなのではないかと、彼女も慧音の心を読んでみたが、嘘をついている様子はない。
どうにかしてこの凶行を食い止めようと思いつつも、効果的な言葉が思い浮かぶでも、飛び掛かる勇気がでることもなく、こいしは口をパクパクと開け閉めする以外、何もできなかった。
そんな無意味な行為をしている間に、慧音はさとりの肩に手を掛けていた。
さとりは、言葉とも言い難い声を上げ、滅茶苦茶に暴れて抵抗した。
暫くの間慧音は、怖くない、ほら落ち着け、妹の為だろう、などと言って宥めていたが、ちっとも静かにならないので、次第にいらいらし出したようだった。
刃物をぽいと放り、両手で肩に手を掛け、頭を振りかぶり、躊躇もなくさとりの額に、自身の額を打ち付けた。得意の頭突きだ。
寺子屋の生徒に放つそれとは異なり、全く加減が無い一撃だった。鈍器でぶん殴られたかのような衝撃が、さとりの体を駆け抜けて行く。
暴れ回っていたさとりは、この一撃で著しく動きが小さくなった。脳震盪が起き、意識が朦朧としているようで、ふらふらと小さく体を揺らしている。
さとりはそんな状態であると言うのに、慧音は平然としている。不思議なことに、額に頭突きの跡すら残っていない。
「ようやく落ち着いたな」
ふっと息をつき、放った刃物を拾い上げ、作業を再開した。
まず、さとりの胸倉を掴んで思い切り引っ張り、俯せに倒した。
背に乗って片方の腕を抑え、無理矢理手を開いた。意識さえしっかりしていれば抵抗できたであろうが、今の彼女にそんなことをする気力はない。
地面に無理矢理開かれた手を目掛け、慧音が一気に刃物を振り降ろす。
さとりの小さな指も、木質の床も、刃物はやすやすと貫いた。
慧音が床から刃物を引きぬくと、呆気なく手から切り離されたさとりの人差し指がころんと動いた。
何が起こっていたのか、姉妹二人はすぐに理解できなかったようで、切り離された人差し指の先っぽを注視していた。
静寂をぶち壊したのは、やはり姉妹二人であった。
実害を受けたさとりは、喉がおかしくなってしまうのではないかと思えるほどの絶叫を上げた。こいしの方は、実の姉が現実離れした暴力の餌食になっていることに錯乱し、叫んだ。
「おいおい、まだ一本だぞ」
「ひっ、え? ま、まだって……?」
「残り九本。足も含めれば一九本か」
さらりと言ってのけ、慧音は再び刃物を振り上げ、さとりの手を目掛けて力任せに振り降ろす。
長さを切り揃えたい、的確に命中させたい――そんなお上品な思いは全く無い。とりあえず、さっさと指を切り離してしまいたい。この一心だ。
飛び散る血潮も、床に穿たれる穴も、重なる二種類の叫び声も気にしないで、慧音は淡々と作業をこなす。
ある一撃は、親指を掠めて小さな傷を作った。ある一撃は、中指を中途半端に抉った。ある一撃は、既に切り落とされた薬指の傷口を再び突いた。
命中具合がどうであろうと、激痛は免れない。慧音の手が止まるその瞬間まで、さとりは気が狂ったように叫び続けた。
こいしはそんな姉を、姉に行われている行為を見るのも嫌になって、目を瞑って終わりを待った。手は縛られていて耳を塞ぐことはできなかったから、叫び声は付いて回る。
だが、そうやって目の前の惨劇から逃れようとしても、やはり心はそちらに気を逸らしてしまう。心は何よりも正直だ。
第三の目が、さとりの心を読み取ってしまうのだ。
いたい。くるしい。いたい。いたい。もういやだ。たえきれない。ごめんなさい。いたい。ごめんなさい――
絶叫に秘められた真意を、心が代弁している。これはこいしにしか聞こえない。
だが、これが慧音に聞こえていたところで、彼女は手を止めることはないのだろう。
聞くに堪えない姉の絶叫と、苦しみしか感じられない心の声。負の感情の二重奏は、聞けば聞く程にこいしの心を蝕んでいく。
ぼろぼろと涙を零しながら目を瞑り、こいしはこの地獄の様な時間が終わるのを待ち続けた。
どれくらいの時間が経ったのかこいしには分からなかったが、ようやく絶叫が止んだ。それでも、当然と言えるが、心の声は止まらなかった。
ただでさえ清潔感の無かった床は砂と血が混ざったもので赤黒く塗装され、より一層汚らしさを増している。
そんな床に、断面は粗く、長さは疎らで、不細工に切り落とされてしまったさとりの手の指十本が床に転がっている。
中途半端に指が残っていたり、少しも残っていなかったりしているさとりの手は、握り拳を作っているように見ることさえできない、異様な形状になり果てた。
その手が自分のものであると言うのが信じられないかのように、さとりは変わり果てた自分の手に目をやっていた。
「う、嘘……こんなの、こんなの私のじゃない。こんなの……こんなこと……ありえない……」
さとりは譫言の様に、こんな言葉を繰り返していた。過度の痛覚で正気を失っているのかもしれない。
自分の手に気を取られてばかりのさとりを一瞥し、慧音は次なる作業の準備を始めた。
先ほどの物の絨毯に、血だらけの刃物を放り投げ、代わりにのこぎりを手に取った。
大きな刃と小さな刃の二種類の刃がついている、両刃のものだ。決して新しいものではないようで、少しの錆が見える。
さとりは自分の手のことしか考えていなかったので、それに気付いていなかった。
だが、絶叫が止んでそっと顔を上げたこいしが、次なる凶行の予兆を察し、思わず声を上げた。
「もう止めってたら! もうお姉ちゃんに酷いことしないで!」
「お前が悪いんだろう。面白半分に悪事を働くから」
こいしに目もくれずにそう言った慧音は、ただの平面になってしまった手で、切り離された指を掻き集めているさとりの足首を掴んだ。
そうなってようやくさとりも次なる暴虐に感付いたようで、びくりと体を震わせ、後ろを振り返った。
「も、もう嫌!! もう止めて!! いやああ! はなっ、放して!! いやああ!!」
さとりは懇願したが、
「一本一本切るのは面倒だ。二度で終わらせてもらうぞ」
慧音は無視し、さとりの足首にのこぎりの刃を当て、のこを引き始めた。
ギザギザした波状の刃はさとりの薄皮を、皮膚を裂き、あっと言う間に肉へと到達した。
刃と等しい太さの線上の傷から血が溢れ出てくる。出て行く血に逆らうかのように、のこぎりはさとりの骨肉を削りながら、深く深く足首へ入り込んで行く。
指を切り離した時とは比べ物にならない程の醜悪な叫び声をあげるさとり。
こいしはやはりどうすることもできず、心の声を聞かされながら目を瞑る他なかった。
のこぎりが足首の半ばを過ぎた辺りまで到達すると、慧音は深い切れ目の入ったその足を思い切り蹴飛ばし、強引に足を折って離した。
歯を食いしばり、短かったり長かったりする指で手を握り締めて、その激痛を緩和させようと、さとりは必死だった。
股からじわりと小水が流れだしてきた。恥じらいなど感じなかった。生命の危機を目前にして、こんなことに羞恥など感じている場合ではない。
慧音は切り離した足を拾い上げ、「ほれ」と言う掛け声と共に、こいしに向かってそれを投げた。
投げられた足は、どさりと音を立てて、丁度よくこいしの目の前に落ちた。
何事かとこいしが恐る恐る目を開けてみれば、映ってきたのは切り離された人の足。
甲高い叫び声を上げ、こいしがそれを蹴飛ばした。
「酷いことをするな。姉の足を蹴り飛ばすなんて」
慧音にそう言われ、こいしがさとりに目をやってみれば、確かに足首から先が無くなっている。
あまりの残虐性に耐え切れなくなり、遂にこいしは胃の中のものを床にぶちまけてしまった。血と吐瀉物の臭気が混じり、吐き気に更に拍車が掛かる。
その後、もう片方の足も同じようにして切り離されてしまった。
痛みや恐怖を紛らわしたい一心で泣き叫び続けるさとりに、慧音は不愉快な顔を見せた。
「うるさいぞ。少し黙れ」
こう言ったのだが、
「うああああああ!! あああああ!! あああああああああぁぁぁぁ!!」
叫び声は収まることは無い。
堪え切れなくなって、慧音はのこぎりを放り、別の物を持ち出した。
手に取ったのは大きな針と、太めの糸。針には糸を通す為の穴が空いている。
慣れた手つきで針に糸を通し、泣き叫ぶさとりに馬乗りになって、顎を抑えつけた。
上手く口を開けなくなったさとりは、慧音が持っている針と糸を見るや否や、ぴたりと泣き止み、大きく目を見開いた。
「それ、は?」
顎を抑えられたまま何とかそう問うと、慧音は針をくるくると回しながら見せつけ、言った。
「うるさいから黙って貰う。口を開くな」
口には出さないが、慧音の心を読めば、彼女の考えなどすぐに分かってしまう。
口を縫って閉ざそうとしているのだ。
針の尖端が、ゆっくりとさとりの口元に近づいていく。
慧音に抑えつけられ、口を開くこともできないが、それでも声を出さずにはいられない。
外へと発されない、くぐもった叫び声が、さとりの口内で響いている。
そのまま頭を振って作業を妨害し始めた。双眸から溢れる涙が、頭が右、左と振られる度、その方向へ散っていく。
「動くなよ。関係ない所に当たってしまうぞ」
「んー!! んんー!!」
「例えば……こことか」
口元を狙っていた筈の針は、突如その照準を変え、さとりの片目を穿った。
先ほどよりも声量を増し、さとりが絶叫する。
反射的に顔を動かしてしまい、針が慧音の手から離れた。眼球に針を刺したたまま、ばたばたとさとりが暴れ回る。
慧音はさとりの頭を固定し、針を抜いた。
「言わんこっちゃない。もう見えないか?」
「ああ、うあああ! 返して、返しなさいよ! 目、私の目ぇ! 返してよぉ!」
「盗ってないよ。目はそこにある。機能していないだけだ」
不細工な平面となった手と、足首から先がない手足をばたつかせて叫ぶ様は、駄々をこねる子どものように見える。
ただし、子どもの様な愛らしさは微塵にも無く、壊れた人形か、それ以上の不気味さしか感じることができない。
「ついでだからもう片方も」
言うや否や、慧音は先ほど放ったのこぎりを掴み、その柄で、機能しているもう片方の目を殴りつけた。
「ぎぃっ!?」
「まだ見えてるのか」
口調は質問めいていたが、返答は待たず、再び柄を振り降ろす。
反射的に手で防いではいるが、ほとんど効果がない。
「やめて、やめて! もう見えない、見えないから……!」
「ん。そうか」
さとりに言われ、慧音はぴたりと手を止めた。
手が除けられて露わになった目の周りは、真っ赤に腫れ上がってしまっていて、眼球がまともに見えない状態になっている。
本当に見えていないのかは不明だが、慧音は本来の作業を思い出し、目から針を引っこ抜いた。
「さあ、次こそ黙らせるぞ」
「んぐっ」
口元に手をやり、さとりが抵抗を始める前に、口に針を刺した。
上唇から入った針は口内を通って下唇を貫通した。すぐさまそのすぐ横から針が構内へ侵入し、上唇を穿ち――
初めは叫び声が響いていたが、時間と共に口は次第に閉ざされていき、遂にくぐもった叫び声しか聞けなくなってしまった。
さとりの口は完全に閉じられてしまった。
「さて、仕上げと行くか」
こいしの第三の目の外皮を削ぎ落としたナイフを再び握り、さとりの耳へ突き刺した。
当然、またも彼女は叫ぶのだが、口を開くことができないので、大した声量はない。両耳とも穿たれ、聴覚も失われた。
極め付けに、第三の目から伸びている管を、ぶちぶちと引き千切った。これで心を読む能力も無くなってしまった。
一本だけの管がどうにか第三の目を繋ぎ止めている状態となり、身体の一部と言うより、アクセサリの様な形状に近づいてしまった。
千切れた管からは、少量の血が、規則正しく噴き出てきている。恐らく鼓動と連動しているのだろう。
目、耳、口、手、足、そして第三の目を失ったさとりを、抱き抱えると、ただただ恐怖に震えているこいしに向かって投げつけた。
「ほら、お姉ちゃんだぞ」
言われてこいしが顔を上げてみると、そこには変わり果てた姿の姉。
あまりに惨い容姿であったが、吐き気も恐怖もなかった。ただただ、後悔の念があった。
自分の下らない悪戯の所為で、姉がこんな姿になってしまった。
「お、お姉ちゃん……お姉ちゃん……!」
とりあえず生死を確認しようと、こいしがさとりを揺すった。
僅かだが、体が動いたのを見て、こいしはほんの少しだけ安心した。
そしてすぐさま、慧音を見やった。これだけのことをしていおいて、慧音は涼しい顔をしている。
「この……この、悪魔め! ただで済むと思うな!」
「お前こそ。これで済むと思うなよ」
こいしの精一杯の威嚇も、負け犬の遠吠えでしかないようにあしらい、慧音は鼻で笑った。
鍵をこれ見よがしに見せつけながら、小屋を出て、施錠をし、慧音は小屋を後にした。
小屋を後にしてから、彼女は永遠亭に向かった。
客用の入口から中へ入ると、見慣れた長い兎の耳を持つ少女がいて、用件を問われた。
「栄養剤はある?」
「栄養剤。錠剤ですか?」
「いや、何と言うかな。点滴と言えばいいのか」
「はあ。珍しいものを御所望ですね」
店員はそう言い、沢山の薬剤が置かれた棚を探り始めた。
「ああ。野暮用でな」
慧音は当たり障りのない返事をしておいた。
*
暗い森に建てられた小屋はいつでも暗いので、時間の感覚が鈍ってしまう。
こいしは、自分がいつ頃ここへ連れてこられ、どのくらいの時間が経ったのか、全く見当がつかなかった。
惨劇の直前の長い眠りの前にある記憶は、魔理沙の家へ寄り、お茶を御馳走して貰い、急に眠たくなって、寝かせて貰ったこと。
「魔理沙が、私をここへ……」
こいしは頭を振り、そんな筈はない、そんなことがある筈がないと、この恐ろしい推測を頭の中から強引に消し去ろうと努めた。
地底での暮らしが始まる前に、彼女ら姉妹は妖怪、人間の双方からの迫害を受けた。人間は特にその傾向が顕著だった。力の無い者が多い為、巨大な脅威を何よりも恐れていたのだ。
だから彼女には、人間を交えた記憶にろくなものがなかった。
魔理沙と出会うまでは。
少しだけ人が好きになれるかもしれない切っ掛けとなった魔理沙が、自分たちをこんな状況に追い込もうとする筈がない――そう信じたかった。
そんなことを考えている彼女の足元で、さとりが小さく呻いた。
口は強引に縫い付けられて塞がれてしまったので、声は上手く出すことができない。
足首には、こいしの身に着けていた衣服を破いて縛り付けて止血を施した。小指の細かな断面はどうしようもなかった。
不衛生な場所なので、悪い菌が傷口から入らないかが心配だった。
「お姉ちゃん、大丈夫?」
問うてみて、すぐに口をつぐんだ。大丈夫な筈がないし、姉は音が聞こえないのだ。
さとりは第三の目も機能していないし、視覚も片方が辛うじて見えている程度。意思を伝える口も塞がれている。
だが、心が閉じられていないのが幸いし、さとりの思いをこいしが読むことだけはできた。さっきからさとりは、痛いとか、苦しいとか、そんなことばかりを繰り返している。
心を読むのもつらかった。
どうにかしてここから逃げ出す術を見つけなければと、こいしはそっと立ち上がり、小屋の中を見回してみた。
だ外へ開く仕様の入口の扉から見て、正面の壁の左側には棚があり、右の隅には、草臥れた袋が二つほどあった。
こいしが抱えると視界が遮られる程大きなものだが、中身は干し草のようなものが入っているだけだ。
もしも夜を過ごすことになったら、枕か、防寒具として使用できるだろうかと、こいしは考えた。
棚には埃まみれの汚らしい大きな布が畳んで置いてある。やはりこれも防寒具としてしか使えそうにない。
まるで、『お前たちはここで夜を過ごすのだ』とでも暗示しているかのようだ。
結局、ここを逃げ出すのに使えそうなものは何一つとしてなかった。
大して広くもないので、あっと言う間に調べられることもなくなり、結局こいしはさとりの傍に座り込むしかなかった。
もしかしたら誰かが助けに来てくれるかもしれない。地霊殿の誰かが異変に気付き、ここを偶然見つけ出して――
非現実的な妄想を繰り返して、どうにか精神状態を保つだけの、空しい時間が数時間過ぎた頃。
何となく、こいしは空気の冷えを感じていた。衣類を身に着けていないのが原因かもしれないが、それだけではないと思えた。その要因が、腹の具合だった。
こんな状況に置かれても腹は空くようで、こいしは先ほどから空腹を感じていた。いつもならば、きっとこの頃で夕食となるのだろう。思えば、昼から何も食べていなかった。
ともかく寒くて敵わないので、棚に置いてあった大きな布を広げ、それを肩から羽織った。羽織っても尚、床で横になるさとりに掛けてあげられる余裕がある程、大きな布だった。
ただし、とにかく埃っぽく、大した防寒機能がある訳でもない。無いよりはまし、と言った感じだ。
そんな布を羽織って、寒さと恐怖に体を小刻みに震わせながら、あの妖怪は一体どこへ行ったのかと考えた。
その矢先、入口の扉の鍵が解除される音がなった。
はっと顔を上げると、“悪魔”が入ってきた。
「やあ。こんばんは」
慧音は笑顔で挨拶をしたが、こいしはさとりを護るように、横たわるさとりの前に移動し、大きく手を広げた。
涙を浮かべた瞳で、きっと慧音を睨みつける。無論、そんな彼女の表情も、今の慧音にとっては養分にしかならない。
この強気な表情が崩れる瞬間を見せて貰おうか――そんなことばかりを考えているのだ。
扉を閉め、昼間見せた袋とは違う袋を見せた。
「さあ、喜べ」
「何をする気よ……お姉ちゃんに手出ししたら許さないんだから!」
「夕ご飯の時間だぞ」
にっこりとほほ笑んだ慧音は、袋から竹の葉に包まれたおにぎりを取り出した。
てっきりまた恐ろしい目に遭わせてくると思っていたこいしは、ぽかんと口を開けて、その光景を見ていた。
「手作りだ。料理にはそれなりの自身を持ってる」
「だ……騙されないんだから! どうせ、毒が入ってるとか……」
「心外だな」
慧音は困ったように言うと、葉の封を解いた。
竹の葉の上に乗せらているおにぎり二つ。大きさは慧音の握り拳大と言ったところだろうか。
暗い小屋の中でも、何故か白米はキラキラと輝いて見える。
二つあるおにぎりの内一つを手に取った。
そして、躊躇なく口に運び、もぐもぐと咀嚼し、飲み込んだ。
「うん。美味しい。具は入ってないけど、私はこっちの方が好みなんだよ。米と塩だけで十分美味しいもんだよ、おにぎりは」
簡単な感想を言った後、二口、三口とおにぎりに齧り付き、あっと言う間に一つを平らげてしまった。
指の先に付いた塩を軽く舐め取り、ふっと満足げに一息ついた。
「さて、後一個。いる?」
空腹のこいしから見れば、毒ありであろうがなんだろうが、おにぎりは大そう美味しそうに映る。
おまけに慧音が意識的に美味そうに食べたものだから、こいしの空腹に拍車が掛かる。
だが、こいしは物に釣られそうになっている自分を、心中で戒めた。
罠だ。罠に違いない。二個ある内の片方だけがまともで、もう片方は危ないのだ。そうに違いない――
「いらない」
猛烈な欲望を押し退け、こいしはこう言った。
「どうしてさ」
「いらない」
「毒なんてない。さっき私が食べて証明したじゃないか。私は嘘はつかないぞ」
「いらないったら!」
空腹感に負けそうな自分に喝を入れるように叫んだこいしに、慧音はふぅと小さなため息をついて見せた。
「じゃあ私が食べてしまうぞ」
そう言うと慧音は、さっさとおにぎりを齧った。
思わず「あっ」と声を出したこいしに、嘲るような笑みを浮かべて見せ、すぐにおにぎりを平らげた。
彼女の言う通り、毒などなかったのだ。
「だから言っただろう。私は嘘なんてつかないと」
袋に竹の葉をぽいと放り込み、慧音は踵を返した。
「それじゃ、また明日な」
また明日、と言った切り、慧音はその日は姿を現さなかった。
何も食べずに、こいしは夜を迎えた。
明日またここへ来て、何をするつもりなのだろうと、こいしは思った。
「ご飯、持ってくるかな……」
忌むべき対象であるのに、それに依存しなければ生きられない――そんな現状が、堪らなく悔しかった。
*
慧音が再び姿を現したのは、翌日の昼過ぎだった。
極度の空腹で、ろくな思考すら巡らせられないこいしは、扉が開いたのに気付くのも遅かった。
「待たせたな。ご飯だ」
昨日の夜と同じ調子で、慧音が入ってきた。
手には、昨晩食事を入れていた袋。ああ御飯だ――働かない頭で、こいしはボーっとそう考えた。
さとりと入っていた巨大な布からのそのそと這い出て、鳶座りして、慧音を見上げる。まるで親鳥に餌を求める雛鳥のようだった。
「そう慌てるな。ほら」
昨日は竹の葉に巻かれていたおにぎりだが、今回は皿に乗せられていて、透明の幕で覆われている。まだ幻想郷では珍しいサランラップだ。
「毒は無い。安心しろ。私が嘘をつかない」
サランラップを取り、ことんとこいしの前におにぎりを置くと、こいしは何も言わずにおにぎりにありついた。
まるで犬の様な食いっぷりであった。
そんな彼女を見ながら、慧音は次なる言葉を紡ぐ。
「さて、次はお姉ちゃんのご飯だが」
そう言うと、こいしの食事の手はぴたりと止まった。
口がふさがっているのに、どうやって食事をすると言うのか――それが疑問であった。
慧音が袋から取り出したのは、注射器だった。中には透明な液体が入っている。
「これは永遠亭で作られた、高価な栄養剤だ。お姉ちゃんは食事できないだろう」
「……それを打つの?」
「嫌ならいいが」
「ううん、欲しい!」
「そうか。欲しいか。それじゃあ」
慧音は首をちょいと動かし、さとりを見るようにこいしに指示した。
こいしはその仕草の意図を理解し、横たわっているさとりを振り返った。だが、それだけでは意味が分からず、すぐに慧音を向き直した。
「まだ手の指が少し残ってるだろ」
「……?」
「その皿で、その指の残りを潰せ」
「は?」
全く訳の分からない要求に、こいしは唖然とした。
「分からないか? その皿で、さとりの指を潰せと言っているんだ」
「な、何でそんなことを」
「何だっていいんだよ。やらないのか? やるのか? 一人だけ食事をしておいて、姉には何も無しか」
こいしの視界がぐるぐると回転し始めた。
何だってこいつは、こんなに酷いことを考えるのだろうか。分からない、分からない、分からない――彼女がいくら考えても分かる訳がなかった。
だが、さとりだって重傷で消耗は激しいだろうし、栄養だって摂っていない。
いつまでこの生活が続くか分からないし、姉の体力だって限界かもしれない。
「早く決めろ。十、九、八……」
「うう……うあああああああああぁぁぁぁぁあ!!!」
心中に渦巻く慧音に対する呪詛を集約し、叫び声として外界に放った。
獣さながらの叫び声に、慧音は彼女の決心を感じた。
案の定、こいしは皿を握り締め、猛然とさとりの元へ向かった。
投げ出されている手の、僅かに残った指へ、皿を振り降ろす。
がちゃんと皿が割れ、四つくらいの大きな破片に分かれて四散した。そして同時に、さとりのくぐもった叫び声が上がる。
眠っていたのだろうか、さとりは何が起こっているのか理解していないようだった。
また慧音の暴虐が始まったのかと目線を横へやってみれば、自分の傷ついた指に追撃を加えているのは、妹ではないか。
光を失った片目と、腫れ上がったもう片方の目が、一杯に開かれた。
耳が聞こえないから二人のやり取りは彼女には聞こえないし、心を読むことができないからこいしの想いも分からない。
さとりからすれば、何故か自分の妹が自分を虐げているようにしか見えないのだ。
逆にこいしは、声を出せない姉の考えを読むことができてしまう。
『どうしてこいし? なんでこんなにひどいことをするのこいし? どうして? どうして? どうして? どうして? どうして?』
心を読んでしまったこいしは、ぼろぼろと涙を零しながら作業を続ける。
割れた皿の破片の尖った部分で、何度も何度も、ぶつぎれになっているさとりの手の指を突き刺し、慧音がよしと言うまで削り続ける。
「ごめんなさい、ごめんなさいお姉ちゃん。でも、こうするしかないの。こうするしか……」
傷口を突かれ続けたさとりの絶叫が止むことはない。こいしも次第に、咆哮の様な泣き声を上げ始めた。
姉妹二人が奏でる、苦しみと悲しみの二重奏を、慧音は心地よさそうに聞いていた。
床の赤黒い汚れが酷くなった中で、こいしは血塗れの皿の破片を握り、呆然としていた。
慧音が手の様子を見て、よしと言い、こいしの傍にそっと注射器を置いた。
「御苦労さん」
それだけ言って、慧音は踵を返し、去って行った。
血だらけの手で注射器を手に取り、まじまじと眺める。
こんなものの為に、あれだけ苦しい思いを強いられたのが、堪らなく悔しかった。
手の甲で涙を拭うと、付着していた血が顔の上で伸ばされ、赤のラインが引かれた。
「お姉ちゃん、ちょっと痛いけど、我慢してね」
聞こえてはいないだろうが、こいしはそっと囁き、さとりの二の腕に注射をした。
急な痛みに、さとりはびくりと体を震わせ、すぐに落ち付いた。
どうにか姉に栄養を送ることができたが、ちっとも心は晴れなかった。
それもその筈、姉は自分に感謝など少しもしていないのだ。
こいしの凶行の理由も、こいしの思いも、注射の中身は愚か、注射された事実すら、彼女は知らない。
ただ意味が分からないまま、妹に暴力を与えられた――そうとしか感じられなかった。
それ故に、さとりの心の中は、こいしへの呪詛で一杯だった。
そもそも、ここへ来たのもこいしが悪事を働いた所為なのだ。そこから考えれば、彼女のこいしへ対する恨みは相当なものであろう。
嫌でも心の目は、さとりの思いを読んでしまう。
「絶対ここから逃げようねお姉ちゃん。お燐もお空も、きっと心配してるよ」
さとりの心の中の呪詛を一身に受け止めながら、こいしはそう言った。
涙が零れてきた。
なるほど。心が読めると悪いことはやりたくないものだ――心の底から、こいしはそう思った。
上手に言語化できない、人の“感情”そのものが、第三の目に流れ込んでくる。
聞き難く、見難く、耐え難い。
血塗れの皿の破片を握り締め、こいしはある決意をした。
*
翌日の昼前に、慧音は再び小屋を訪れた。
中にはまたおにぎりと、栄養剤入りの注射器が入っている。
今日はどんな条件を与えて、注射器を渡す機会をくれてやろうかと、慧音は思った。
眼球を取りだす。腕を折る。耳を噛み千切る――まだまださとりには、残っているパーツがある。
もう暫くは楽しませてくれそうだと、慧音は心中で笑った。
小屋の鍵を開け、扉を開く。
「こんにちは」
丁寧に挨拶をし、中へ入ると、まず目に入ったのが、右腕を下にし、入口に背を向けて横たわっている人の型。
こいしの被っていた帽子が頭に乗せられていて、彼女の長くて白い髪が地面へ投げ出されている。
棚に置いてあった大きな布を被っていて、肩から下は見えない。
その向こうにも何か入っているようで、こんもりと膨れている。
「姉妹二人で寝ているのか」
自身の入室に気付かないとは、昨日は相当疲れたのだなと慧音は思い、自ら起こしてやろうと眠っている彼女の元へ歩んで行った。
そして、思い切り背中を蹴っ飛ばした。
「ほら、食事だと言っ……?」
慧音が彼女を蹴ると、ぐらりと体が揺れて、帽子と白い髪がずるりとずれて、地面へ落ちた。
そして現れたのは、桃色の髪。寝ていたのはこいしではなく、さとりであったのだ。
さとりの向こうで一緒に布に入っていたのは人ではなく、大量の干し草。
見れば、小屋の右奥に置かれていた干し草入りの袋がなくなっているではないか。
ならば、こいしはどこへ――
慧音がそう思った瞬間、大腿に激痛が走った。
「ぐぅっ!?」
思わず呻き、後ろを振り返ってみると、出鱈目に髪を切って短髪となったこいしが、大腿に皿の破片を突き刺しているではないか。
その瞳は、恐怖と殺意に満ち溢れていた。
彼女の後ろには、干し草が入っていた袋。きっとその中に入って身を隠していたのだろう。
小屋に入った瞬間、慧音はその袋を見たか、見ていないか。思い返してみても分からなかった。殺風景な小屋のこの程度の変化など、いちいち気にしていない。
がくんと膝を地に付けた慧音に、こいしは何やら出鱈目に喚きながら、手に握っている凶器で、慧音の体を幾度も幾度も突き刺した。
返り血も、今の自分の行為のことも、後のことも、何も気にせず、ひたすらこいしは、この妖怪の形をした悪魔を殺しにかかった。
長かったか、短かかったか――とにかく、彼女の殺戮の時間が終わった。
動かなくなった慧音を見下ろしていたこいしの手から、破片がぽろりと零れ落ちた。
がちゃん――破片が更に割れて小さくなった。
この音でこいしは我に返り、すぐさまさとりをおぶって、小屋を出た。
「お姉ちゃん、しっかりして。助かったよ。助かったんだよ」
姉との体格差はあまりないが、姉を運ぶなど、そう容易なことではない。
だが、そんなことを気にしてなどいられない。
まだ動転している頭のまま、ふらふらと彼女は歩み出した。
助けてくれるであろう、誰かがいる場所へ。
*
「人里へ行くだろうな」
慧音はそう思った。
姉思いのいい妹だ。まずは負傷している姉を助けようと、人里へ行く――慧音は、逃げて行ったこいしの行動をそう読んだ。
確かに彼女らは、人の恐ろしさ、残酷さを知っている。
地底へ封じられる前に、彼女らはそれを身を持って体験しているのだから。
だが、人間は心を持つ生物だ。
酷い目に遭っているのは一目瞭然だ。きっと誰かが救いの手を差し伸べてくれるだろう。
愚策だ。
慧音は思った。
人に虐げられてきたことは、人の理解には繋がらないと言うのに。
*
真昼間の人里は、不自然な静寂に包まれていた。
それもその筈、人里のど真ん中に、一糸纏わぬ、血だらけの見知らぬ女の子が二人、立っているのだから。
片方は明らかに重傷で、手はぐちゃぐちゃ、足に至っては足首から先がない。
おまけに、目を模った何かをぶら下げている。アクセサリではない。それから伸びる管は、明らかに体と繋がっているから。
それが何者か、分からなかったが、共通している考えがあった。
彼女らは異常であると言うことだ。
「誰か、助けてください!」
短く白い髪を持つ女の子――古明地こいしは、そう声を上げた。
助けろ、とは、おぶっている方の女の子のことを言っているのだろうか――付近に人がいる者は、誰も顔を見合わせた。
どう見たって助かる傷じゃないからだ。むしろ生きているのが不思議だった。
「お願いです、誰か、誰か助けてください!」
泣きそうな声でもう一度声を上げるが、人間たちはどう対処すればいいのか、困っている様子だった。
こいしの腕力に限界が訪れ、どさりとおぶっていた姉を地面に落してしまった。
体が軽くなるや否や、こいしは急に駆けだし、一番近くにいた男に縋り付いた。
「お願いです、お姉ちゃんを助けてください!」
「助けろって言われてもな……」
こいしと、地面に置かれた彼女の姉である者を見比べ、男は声を漏らした。
なかなか良い返事がもらえないことに焦りを感じたこいしは、考えも無しにこんなことを口走った。
「あなたの望むこと、何だってしてあげますから」
「?」
「分かるんですよ」
「分かるって……え?」
男の疑問には答えず、こいしは一人、言葉を紡ぐ。
「お願いです。何だってやります。どんなことも絶対に。だから、お姉ちゃんを」
男は、近くにいた女に視線をやった。
分かる、と言うのは、男の心が読めると言うことなのか。
そうだとすれば、この姉妹は、世にも恐ろしい覚妖怪なのではないか。
決まった訳ではないが、これだけ可能性をちらつかされては、肝の小さい人間が耐え切れる筈がない。
「さ、覚妖怪だ!!」
女の一声で、人里の静寂が破れた。
信憑性はさておき、発信された危険な報告は一先ず誰もが信じる。
大きな脅威には徒党を組んで対処する。疎むべき存在は、個人の意思に関わらずみんなで疎む。
疎まぬ者は敵の味方と見なされるから。
そして当然のことながら、この姉妹は疎まれるべき存在で、人里の敵だった。
「そいつらを生かして帰すな」
こいしは、こんな言葉を最期に聞いた気がした。
*
後日、慧音は手紙を書いて、再び地底の穴へ放り込んだ。
土蜘蛛がそれに気付き、またも送り先を確認しに出てきた。
「火炎猫燐宛てでいいんだね?」
「ああ。頼んだ」
「そう言えば、最近地霊殿の主が帰っていないみたいだけど、あんた何か知っている?」
「さあ」
「そうか。知らないならいいや。気にしないで。それじゃ、すぐに届けておくよ」
燐宛ての手紙には、こいしとさとりが何者かに殺されたこと。そして、魔理沙がこいしの悪事を暴き、薬を用いて拘留したことが記されている。
「私は嘘をつかないからな」
慧音は誰に言うでもなく呟いて、人里へと歩み出した。
pnpです。
昔を思い出してみようと言うことで、
あっさり書いてしまう筈だった古明地姉妹虐待SSです。
あっさり書けなかった理由は、ポケモンばっかりしていたからです。
グロに叫び声はつきものだと思うのですが、
どうにもうまく叫ばせられません。昔には戻れないようです。
ご観覧ありがとうございました。今後もよろしくお願いします。
++++++++++++++++++
>>1
デジャヴです。
>>2
一応、彼女も人でもあるので問題ないです。
>>3
タイトル、私も困ってしまって。しかし変えるつもりはありません。そう言う失敗も含めて今作品です。
>>4
このお話は続かないので、そこはもうご自由に御想像ください。
>>5
鬼ってさとりさんに興味があるんですかね。
>>6
お粗末さまでした。
>>7
へえ、そうなんですか。神奈子さまかっこいいですね。
>>8
別にそんな事は考えなかったぜ!
>>9
分かりやすい話にはなったと思われます。
>>10
(作者の私としては)細かいことはどうだってよかったのです。それこそ昔を思い出す的な意味で。
>>11
みんな慧音先生のその後が気になるようですね。愛されてますね、慧音先生。
>>12
こんなはずじゃなかったんです、魔理沙は。そんな言い訳は通用しませんが。
>>13
そう。嘘は言っていません。 突発的に思い付いたオチ^^;
>>14
最近魔理沙全く虐めていないです。 それでもこの話は続きませんけど。
>>15
教師なんてめんどくさそうな仕事はタフじゃないとやっていられないと思います。
>>16
でも慧音なら返り討ちにできる……かなあ。
>>17
喜んでいただけたようで嬉しいです。
>>18
初めての地キャラいぢめでした。ありがとうございます。
>>19
魔理沙受け最近全然考えなくなってしまいました。どうしてでしょう。
>>20
似たようなシチュですが、関連性はありません。……マンネリ^^;
>>21
遅いですね!
>>22
学校の先生なんて、ストレス回避してやっていくことはできないと思いますです。
pnp
http://ameblo.jp/mochimochi-beibei/
作品情報
作品集:
21
投稿日時:
2010/10/25 09:49:27
更新日時:
2010/11/01 20:44:19
分類
古明地姉妹
上白沢慧音
グロ
こういう人間の恐ろしさを教え込ませるような話は大好き。
心読めるからっていつも超越者ぶってるさとりならなおのこと。
ただ上の指摘にもあるとおり、怖いのが「人間」じゃなく「慧音」に思えるのはどうかと。
狙ってやっているのかもしれませんがタイトルと少し合ってないような……
でもそういう細かいことを抜きにできるお話でした、楽しかった!!
…口の中の鶏のから揚げがより一層ジューシーに感じましたよ。
正義の名の元の虐待。
しかも、魔理沙に汚い部分を押し付けてると来た。
さて、慧音先生、錯乱して地霊を地上に開放したり、核の炎を暴走させた相手には、どう対処しますかね。
核だの鬼だのがいるというのに…
お空が実際に地上に暴れ出たら、山の神様が始末する気だったらしい。
山の神様も怖いなー、というお話。
偏見から有らぬ盗みの疑いでも掛けられてリンチされたとか
別にそんな過去は無かったぜ!としたらそれはそれで素敵です先生
恐ろしいことをなんとはなしにやる慧音先生まじこええ
そして第三の目を無理やり開かれたことによる恐怖がハンパなく伝わってきてた
調査すりゃ慧音も罰せられるだろ
よりによって相談した奴らが罰する立場だし
殺された奴らも地底の大事な立場の奴だ
間抜けすぎるだろ、この慧音
だがこれだけやったらバレないほうがおかしい
慧音のその後が楽しみで仕方ありません
最終的に魔理沙に罪をおっかぶせる先生さすがです
嘘は言ってないもんね!
後、魔理沙の小物っぷりが笑えた。
さとりちゃんかわいそー。
こいしは間違いなく良い人、凄く。
この後お隣の愛が魔理沙を可愛がってあげるシーンが続くのか・・・
快感♪
まぁ小物魔理沙が助かろうとして慧音の事を話しちゃうんだろうがw
先生素敵すぎます
魔理沙はこいしちゃんを売ったんだし当然の報いを受けるんですねw
恋焦がれる殺戮(未遂)をこいしちゃんは存分に堪能できたようでなによりですね
如何に冷静で、イカレてるかを相手に理解させるか。上手く表現出来ていると思います。
ところで先生、寺子屋の子供らと同等の容姿のこいしを教育する事に対して高揚感を覚えてますが、いつか標的が人間の子に移るなんて…ないですよねw
窃盗は立派な犯罪だぞ!魔理沙も痛い目に遭いたくなければやめようね!
いや、やっぱやめなくていいや。魔理沙の受け見たいしw
『知られざる信仰』と繋がってたりします?
だが今となってもう遅いね!
本当に懲らしめる為にやったのか、なんかストレス溜まるような事でもあったのか……