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『人の大切なものを奪うという事』 作者: NutsIn先任曹長
今日も平和な幻想郷。
今日も今日とて、黒白の人間魔法使いが、二人の妖怪魔法使いにつるし上げられていた。
「魔理沙!!」
「魔〜理〜沙ぁ〜〜〜〜〜!!」
アリス・マーガトロイドとパチュリー・ノーレッジに詰め寄られる霧雨魔理沙。
「ま、まぁ、二人とも落ち着いて……」
「これがっ!!」
「落ち着いていられると思っているのっ!?」
魔理沙が宥めても効果無し。
「私のマジックアイテム返してよ!!」
「私の魔道書返せ!! むきゅ〜!!」
「あ……、あぁ、返す、返すぜ」
死んだらな、と続けようとしたが、
「……たしか、死ぬまで借りるって言ってたわよね〜?」
「むきゅ!! なら、今死ねば、今すぐ返してくれるという事よね〜?」
なにやら剣呑な雰囲気になってきた。
アリスの人形が、鋭いランスを手に取った。
パチュリーの周りに、木火土金水の属性を持った五つの賢者の石が生成された。
魔理沙の対応は早かった。
「あばよをするぜ!!」
箒にまたがった魔理沙は、あっという間に空の彼方に消えていった。
毒気を抜かれた魔女二人。
とりあえず臨戦態勢は解いたが、魔理沙を許したわけではない。
いい加減、何とかしなくては。
アリスとパチュリーはお互いの顔を見て、うなずいた。
「このままじゃ、魔理沙の為にならないわ」
「そうね、一度むきゅ〜っと締め上げてやらなくちゃ」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
博麗神社の縁側。
楽園の素敵な巫女、博麗霊夢はいつものようにお茶を飲んでまったりしていた。
そんな平穏をかき乱す黒い疾風。
「霊夢ぅ〜〜〜〜〜!! 助けてくれぇ〜〜〜〜〜!!」
魔理沙は霊夢に、こうなったいきさつを誇大に虚偽を交えて、面白おかしく説明した。
「それで、うちに避難してきたって訳ね」
「悪い、霊夢」
「はぁ……。まあ、いいわ」
霊夢は湯飲みをもう一つ持ってきて、魔理沙のためにお茶を淹れてやった。
「さんきゅ、霊夢」
魔理沙は礼を言って、霊夢から湯飲みを受け取った。
「だいたいさ、二人ともケチなんだよ」
湯飲みを玩びながら、魔理沙は手前勝手なことを言い始めた。
「お宝を腐るほど持っているんだ。
私みたいな知的探究心に満ち溢れた若人にちょっぴり貸してやったっていいじゃないか。
なあ?」
「……ええ、そうね」
霊夢のお茶をすすりながらの答えに、魔理沙は満足そうな笑みを浮かべた。
「だろ!! 霊夢なら分かってくれると思ったぜ!!」
魔理沙は、程よく冷めたお茶を一息に飲み干した。
霊夢はそんな魔理沙を見て、微笑を浮かべた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
今日も今日とて、黒白の人間魔法使いが、二人の妖怪魔法使いから物品を無許可借用してきた。
「大漁大漁」
魔理沙はホクホクであった。
アリスの所からは、人形の部品として魔界のコネでやっと手に入れたというオリハルコンや、
その時実家から送ってきたという珍味を奪った……、ではなく、借りてきた。
それはアリスの母親の手作りだというマンドラゴラのお漬物と聞いて、胸の奥が暖かくなった。でも借りた。
漬物の入ったタッパーを取り出した時、手紙が付いている事に気が付いた。
内容は、アリス元気か、こちらも元気だ、体調に気をつけろ、たまには帰って来い、
そろそろ魔界神の跡継ぎのことを考えなければならない、といったような、
魔理沙にとってどうでもいい事だったので、クシャリと手紙を丸めて投げ捨てた。
漬物を一切れ食べたが、なかなか美味かった。酒かお茶か白飯が欲しい。
パチュリーの所からは、新刊一揃いの他、
古い本の修繕に使用するという、薄くなめした皮を巻き上げた……、ではなく、借りてきた。
手になじみ、なんとなくしっとりしているそれは何の皮か、怖くて聞けなかった。でも借りた。
巻かれた皮の中に、手紙がねじ込んであることに気が付いた。
内容は、パチュリー様、いくら魔法使いとはいえ身体に悪いですから、ちゃんとベッドでお休みください、
今度の休みに中悪魔昇進試験を受けますので、個人レッスンをお願いします、といったような、
魔理沙にとってどうでもいい事だったので、手紙で鼻をかんで投げ捨てた。
この皮の手触りは、なかなか癖になる。箒の柄にでも巻いてみるか。
「……っと、のんびりしている場合じゃないぜ!!」
後方に小さな点が二つ、見えた。
アリスとパチュリーだ。
魔力が可視光となるほど強烈に放出されていたため、早期に発見できた。
魔理沙が今日の戦果を包んだ唐草模様の風呂敷包みを抱えると、前傾姿勢になり、箒の速度を上げた。
後方の二つの光点は、ついに見えなくなった。
この場は撒くことができたが、二人は何故か今日は何時に無くしつこかった。
魔法の森の家に張り込まれているかもしれない。
しばらく霊夢のところでほとぼりを冷ますか。
魔理沙は箒を博麗神社の方へ向けた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「魔理沙……」
バシッ!!
「あっ!!」
「魔理沙ぁ……」
ビシッ!! バシッ!!
「あぅっ!!」
「魔理沙ぁ〜……」
バシッ!! ベシッ!! バシッ!!
「あ!! やっ!! 止めっ!!」
「魔理沙ぁ」「もう止めてくれ!! 霊夢!!」
「ふふ。い・や」
バシッバシッピシィッッッッッ!!!!!
ここは何処だ?
地下牢らしいが。
でもなんで私は、
裸で、鎖で縛られ、吊るされ、
霊夢に鞭で打たれているのだ?
魔理沙は混乱していた。
霊夢にバケツ一杯分の冷水を裸体に浴びせられて気が付いたら、
地下牢らしき場所で吊るされていた。
そして今度は鞭の雨が全身に降り注いだ。
魔理沙の混乱と苦痛は、霊夢が疲れて休憩するまで続いた。
霊夢はハンカチで額の汗をぬぐい、側の小机にあったポットと急須でお茶を淹れた。
魔理沙は疲弊していたが、何とか最優先の質問を口に出すことが出来た。
「れ、霊夢……、なんで、こんな事するんだよ……」
霊夢はすすっていた湯飲みを置くと返事をした。
「あぁ? 魔理沙、自分の胸に手を置いて考えてみなさい」
魔理沙、しばし黙考。
「……分かんないぜ……」
「はぁ……」
霊夢はため息をついた。
そして、理由を説明した。
「あんた、人の大切なものを盗んで行ったでしょ」
「死ぬまで借りただけだぜ」
「それを専門用語で『盗む』って言うのよ」
「さいですか」
ここまでメタメタにされても減らず口を叩く魔理沙に、
霊夢は非道の理由を述べた。
「あんたを鞭でしばいたのは、大切なものを奪われた人の痛みを身体で感じてもらうためよ」
「……そう、なのか……」
今更ながら、魔理沙はアリスとパチュリーの心の痛みに思いを馳せた。
魔理沙の両目から雫が零れたが、これは鞭打ちの痛みが原因ではない。
「……全く、貴方も大切なものを失わなきゃ、分かんないのかしら……」
霊夢はブツブツつぶやいている。
「今日のお仕置きはお終い。トイレはそこの桶の中でして。食事は朝と晩に持ってくるから」
魔理沙の拘束を解いた後、それじゃ、と言って、
霊夢は牢に鍵を掛け、茶器を持って地下(らしき広い場所)を出て行った。
魔理沙は、
二人の親友に対して犯した仕打ちについて、考え込んだ。
時間は十分にある。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
魔理沙の悪行に業を煮やしたアリスとパチュリーは、
魔理沙の友人である霊夢にそのことを相談した。
霊夢は魔理沙にお仕置きをする必要があるとして、
今度魔理沙が来たら、『お仕置き部屋』に監禁することを請け合った。
大して日を置くことなく、魔理沙は博麗神社に逃げてきた。
霊夢は魔理沙に一服盛ると、八卦炉や衣服を気を失った魔理沙から取り上げ、
地下牢に監禁した。
そのことを魔理沙が盗んだ品を返すついでに、霊夢はアリスとパチュリーに報告した。
魔理沙が人前から姿を消してから数日後。
博麗神社。
二人の妖怪の種族としての魔法使いがやって来た。
「霊夢」
「いらっしゃい、アリス。素敵な賽銭箱は、あっちよ」
「いや、いや、いや」
「あら、出不精のパチュリーが来るなんて珍しいわね。何の用?」
「魔理沙の様子はどう?」
「……会う?」
二人の魔女は、博麗の巫女の提案に是と答えた。
霊夢は二人を神社裏手の倉庫内に案内すると、
壁の一角でなにやら操作をした。
すると、そこに地下へ通じる階段が現れた。
霊夢を先頭に、アリスとパチュリーは、闇へ通じる階段を下りていった。
アリスとパチュリーが通された地下は、思ったより広かった。
そこにある無数の牢屋。
その一室に、魔理沙がいた。
魔理沙は全裸で、全身痣や傷だらけで、部屋の隅で俯いて、体育座りをしていた。
「魔理沙!!」
「むきゅ!! 魔理沙!!」
二人の魔女が魔理沙が閉じ込められている牢屋に駆け寄ると、
魔理沙のうつろな目に生気が宿った。
「あ、アリスと、パチュリー……?」
はっきりと二人を認識した魔理沙は、
顔に喜色を浮かべ、
べそをかいた。
「うっ……、ふ、二人とも……、来て、くでだんだ……。ううっ……」
魔理沙は鉄格子を両手で掴み、
「……ぐ、ぐすっ……」
涙ぐんでいる。
そんな魔理沙の手を掴むアリスとパチュリー。
二人の魔女は何も言わない。
言うべきは、数々の悪行を重ねてきた魔理沙である。
「う……、アリス……、パチュリー……、……ぐずっ」
魔理沙の両手に、二人の親友の温もりが伝わる。
「……、……、……ご、……」
魔理沙は親友に見守られ、
「……、……ご、……ごべ……」
捻くれ物の己に、
「……、ご……、ごべ……、ん……」
打ち克とうとしていた。
「……、ご……べん……、だざい゛……」
魔理沙は、
アリスとパチュリーの手を握り、
「ごべん、だざい゛……」
「二人の……、大切なものを盗って……」
「ごめんなさい!!」
己の心の闇を祓う
最強の呪文を唱えた!!
「う、ご、ごめん……、本当に……、ごめんね……、うぅ……」
魔理沙は、
ついに、
号泣した。
「う……、うわあああああぁぁぁぁぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん!!!!!」
二人の妖怪の魔法使いは、
人間の魔法使いが究極魔法を会得したことを祝福した。
反省である。
この魔法には、同じ失敗を二度と繰り返さない効果がある。
魔理沙は聡明である。
この魔法でより高みを目指すことが出来るだろう。
霊夢は牢を開け放った。
泣き止んだ魔理沙はよろめきながらも、
自らの足で牢屋を出て、
二人の魔法使いに抱きついた。
「ごめんなさい!! もう、人の物を取ったりしません!! ごめんなさい!!」
「もういいのよ。貴方は大切なことに気付いたのだから」
「むきゅ!! 今回のことを忘れずに精進することね」
アリスとパチュリーは、
魔理沙を赦した。
この魔の法の先駆者達が何故、道を外れることなく、強大な力を行使できるか、
魔理沙は理解した。
「ごめんな。私、今まで二人に甘えていた……」
「くすっ。いいのよ。甘えて」
「むきゅっ。いたずら盛りの孫娘みたいなものだから。魔理沙は」
「こんな可愛いおばあちゃん達がいて、私は幸せだぜ」
「ちょっと。私は自分をおばあちゃんだなんて思ってないわよ!!
もっと、こう……、親密な、熱々な、ラブラブな……」
「??」
「ちょっと、アリス、抜け駆けは許さないわよ」
「お婆様は、若人の恋愛に口出ししないで下さる?」
「むっきゅぅぅぅ〜〜〜〜〜!!」
「「あははははは!!」」
この友情は、絆は、何物にも代えられない。
これこそ、魔理沙の大切な宝。
ようやく、ようやく、そのことに魔理沙は気が付いたのであった。
「……そう……。それが……。
それが、魔理沙の大切なものなのね」
「魔理沙、大切なものを失った私の心の痛み、思い知るがいいわ」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
霊夢は三人の魔法使い達に近づいた。
霊夢は、振り向いたパチュリーの腹に、無造作に御札を貼り付けた。
次の刹那、
ドンッ!!
パチュリーの腹に大穴が開いた。
背中側の穴から、血や臓物や肉や骨といった、身体の構成物の残骸が放出された。
がくり。
膝をつき倒れるパチュリー。
「ぱ、パチュリー!!」
「パチュリー!!」
魔理沙とアリスは、数秒の時間を消費して、
ようやくパチュリーに何が起きたか認識できるようになった。
パチュリーはまだ、息があった。
「……ぁ、ぁ」
「パチュリー!! しっかりしろ!!」
「パチュリー!! パチュリー!!」
「無駄よ。お腹にこんなおっきな穴が開いてるじゃない。
くたばるのは時間の問題よ」
パチュリーの腹に風穴を開けた本人である、霊夢がそう告げた。
二人は霊夢の台詞を聞いて、
自分達の見たことは見間違いではないことを思い知らされた。
魔理沙とアリスは、霊夢を見た。
霊夢は嗤っていた。
口の端をゆがめ、
目は汚物を見るかのような冷たい光を湛え、
死に逝くパチュリーを、
そんなパチュリーに何も出来ない無力な二人を、
嘲笑っていた。
「霊夢!!」
冷たくなり始めたパチュリーの骸を抱きしめ、
魔理沙は怒鳴った。
「何故だ!! 答えろ!! 霊夢!!」
アリスは黙って、上海人形と蓬莱人形を左右に展開して臨戦態勢に入った。
「何故って……」
霊夢は、はっ、と鼻で笑ってから答えた。
「魔理沙の大切なものって、パチュリーとアリスとの間に築いた絆とか友情とかって奴でしょ?
だから、壊すの。魔理沙の宝物を。
あんたが私の大切なものを壊したみたいに」
魔理沙は、一瞬頭の中が真っ白になって思考が停止した。
だから、アリスが魔理沙に代わって尋ねた。
「魔理沙が貴方の何を壊したと言うのよ!!」
「魔理沙を愛する気持ちよ」
霊夢は即答した。
「え……?」
「何言ってるのよ? 魔理沙は貴方のことを親友だと……」
「黙れ!! 薄汚い妖怪が!!」
霊夢が鬼――萃香や勇儀ではなく、憎悪の化身のこと――のような貌で、
悪意の塊を吐き出し、二人にぶつけた。
「人間の魔法使い、霧雨魔理沙を愛していいのは、
人間であり、博麗の巫女である、
この、博麗霊夢様、ただ一人よ!!
お前らみたいな妖怪風情が魔理沙と一緒にいるだけで、魔理沙が穢れる!!
悪魔の犬や冥界の庭師みたいにね!!」
人間と妖怪が共存する幻想郷を守護する博麗の巫女の、
まさかの衝撃発言。
「魔理沙の様な孤高の能力者は、同じ境遇の私といれば幸せになれるのよ。
それなのに、お前ら下等生物ときたら、
ほんの少し魔理沙が物を借りてやっただけで筋違いの怒りを感じ、
あまつさえ、恋愛感情まで持つとは!!
あんたら、魔理沙に獣姦しろってーの!?」
「れ……霊夢、お前……」
「霊夢、貴方、見損なったわ」
「お前ら珍獣は、スキマババアが作ったこの動物園で大人しくしてりゃいいのよ!!」
「霊夢……!!」
アリスは、本気になった。
上海人形が声なき声を上げ、吶喊してきた。
まるで、主人の怒りが乗り移ったようだった。
そんな上海の必殺の一撃を、霊夢はたった一枚の御札で無力化した。
御札を貼られた上海は爆発。木っ端微塵になった。
ほぼ同時に、霊夢は退魔針を投擲。
死角から奇襲を掛けようとした蓬莱を針山に変えた。
しかし、
これらアリス愛用の人形の攻撃は、
全て、陽動であった。
霊夢の首には、目に見えないほどの極細の糸が掛けられていた。
アリスは、その糸を力いっぱい引っ張った。
すぱっ。
そう音が聞こえたような気がするほど、
綺麗に、
霊夢の首が落ちた。
「……終わったわ」
「……霊夢……、パチュリー……」
魔理沙は二人の友人を失い、打ちひしがれていた。
いったい何を間違えたのだろうか。
アリスは魔理沙を慰めるべく、彼女の側に歩を進めた。
「な〜に、勝手に締めくくろうとしてんの、よ!!」
バシィ!!
五体満足の霊夢が、
アリスの顔面に、
パチュリーや上海人形を屠った爆裂符を、
力いっぱい貼り付けた。
「い、嫌あああああぁぁぁぁぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」
香港映画のキョンシーの如く顔に貼り付けられた符を、アリスは剥がそうともがいたが、
露出している頬に引っかき傷が出来るばかりで、符は剥がれず、破れもしない。
魔理沙は霊夢の死体があった場所を見たが、そこには真っ二つになった御札があっただけであった。
魔理沙はアリスに貼り付けられた爆裂符を剥がそうと、アリスの側に駆け寄ろうとしたが、
「ざ〜んねん。時間切れよ」
アリスは失禁しながら絶叫した。
「あ、や、やあああああぁぁぁ」ドンッ!!
轟音と共に、
アリスの頭部は、
綺麗に吹き飛んだ。
魔理沙は爆風に煽られ、石壁に叩きつけられた。
「魔理沙ぁ、大事なお友達を目の前で殺された気分はど〜お?」
霊夢はニタリと笑いながら魔理沙に尋ねた。
「あ、あ……、アリス……、パチュリー……」
「嬉しさのあまり、声も出ないみたいね」
呆然とした魔理沙の態度を霊夢はそう解釈した。
これだ!!
これが見たかった。
いつも不敵な態度をとり続けているが、実は妖怪並みにメンタルが弱い魔理沙。
博麗の巫女である霊夢に見初められながらも、それに気付かない魔理沙。
霊夢はいつもポーカーフェイスの下に、魔理沙に対する愛しさと憎さがない交ぜになった劣情を抱いていた。
霊夢は改めて魔理沙を見た。
呆然とした表情で涙を流し、
へたり込んで自身を抱きしめながら打ち震える、
心も身体も傷だらけな、全裸の魔理沙。
ごくり。
生唾を飲み込んだ霊夢は、スカートとドロワーズを脱ぎ捨てた。
なにやらブツブツ唱えると、霊夢の股間に勃起した巨根が出現した。
霊夢は己が欲望を具現化したのである。
霊夢は魔理沙の方に歩き出した。
魔理沙は霊夢に気付き、股間にそそり立った男根に気付き、
「ひ、ひぃ!!」
這って逃げようとした。
腰が抜けて、恐怖で身体がこわばって、身体が思うように動かない。
マイペースで歩いてきた霊夢に追いつかれ、あっという間に組み敷かれた。
「霊夢!! 止めてっ!! 嫌っ!! やっ!!」
バシィ!!
「あぅ!!」
霊夢がビンタをくれてやると、魔理沙の悲鳴の音量が下がった。
「はぁ、はぁ、魔理沙ぁ……、ひひ、愛してるわ……」
ぎらついた目。
つり上がった口の端から、零れ落ちる涎。
「ゃぁ……、ぁぁ……」
発情した野獣のような霊夢の貌から目を逸らすことが出来ないまま、
ずぶぶぶぶぶぅ!!
ぶち。
「あ、あぁぁぁぁ……」
魔理沙は、処女を散らした。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
魔理沙に溜まりに溜まった性欲をぶつけ、暴力を存分に振るった霊夢は、
体中痣だらけ、精液塗れになり、顔を腫上がらせた魔理沙を地下牢に放り込んだ後、
後片付けをしていた。
「それじゃ、この粗大ゴミ、捨てて来るわね」
霊夢はアリスとパチュリーの死体を、何処から調達したのか、
車輪のついた簡易ベッドのようなもの――ストレッチャーだ――に無造作に乗せると、
それを押して出口に向かった。
行ってしまう。
アリスが、
パチュリーが、
行ってしまう。
もって行かれてしまう。
霊夢が、
連れて行ってしまう。
持って行ってしまう。
魔理沙の、大事な大事な宝物を、
持って行ってしまう。
「……かないで」
「……いかないで」
「持って行かないでぇぇぇぇえぇぇぇぇぇ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!」
霊夢は、魔理沙の絶叫を聞いても、その薄ら笑いを浮かべた顔を振り向かせること無く、
地下室を出て行った。
閉ざされた地下室。
僅かな光と、魔理沙の嗚咽が残された。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
霊夢は自身の能力『空を飛ぶ程度の能力』を駆使して己の存在を干渉不能にすれば、
人や妖怪で賑わう白昼に気配を消すなど造作も無いし、
死体を大胆に展示して、
それを目にした人妖の反応を、
誰にも気付かれずに楽しむことも出来る。
パチュリーの死体は、
紅魔館の時計台に逆さ吊りにした。
最初にパチュリーの穴開き死体を見つけたのは、メイド長の咲夜であった。
咲夜は口を手で塞ぎ悲鳴を押し殺すと、姿を消した。時間を止めてレミリアの元に向かったのだろう。
あっという間に、紅魔館の住人、使用人達が時計台の下に集まってきた。
メイド妖精達の中から悲鳴や話し声が聞こえてきた。
間抜け面を晒すレミリア。
半狂乱で泣き叫ぶ小悪魔。
咲夜に無能振りをなじられ、何も言い返せない美鈴。
最高の見世物であった。
アリスの死体は、
人里の、普段アリスが人形劇をやっている広場のど真ん中に全裸で放置した。
突如現れた裸の首無し死体。
衣服と人形の原形を留めている残骸も側に置いたから、
遅かれ早かれ、それがアリスだと気付くだろう。
悲鳴が上がった後、集まった野次馬の人数は、人形劇の観客よりも多かった。
自警団が来るまで、まだまだこのショーの観客は増えていくだろう。
最終公演は大盛況ね。
良かったわね、アリス。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
魔理沙を陵辱しながら、
霊夢はパチュリーとアリスの死体を放置したときの顛末を、面白おかしく話した。
霊夢は話しながら爆笑した。
魔理沙は黙って涙を零した。
魔理沙の反応が鈍い。
少々乱暴に扱いすぎたか。
もう飽きてきた。
なので、霊夢は魔理沙を殺すことにした。
霊夢は魔理沙の牢に入ると、
床にぐったりと横たわっている魔理沙を足蹴にして、仰向けにした。
魔理沙の目の焦点が合っていない。
こうされても呆けていられるかな?
霊夢は、魔理沙を縊り殺すことに決めた。
「魔理沙、死ぬときぐらい、私を楽しませて頂戴」
霊夢は魔理沙の首に両手を掛け、徐々に力を込めていった。
「う、ぐ、ぅ……」
魔理沙の顔が青ざめてきた。
両の目が見開かれ、舌をはみ出させた口からは泡を噴き始めた。
酸素が不足し始めた魔理沙の脳裏には、楽しかった日々が浮かんでは消えていた。
博麗神社に行けば、霊夢がお茶を啜っていて、魔理沙に気付くとお茶を淹れてくれた。
二人で取り留めの無い話をしているうちに、夕方になった。
その日の夜は宴会だが、準備にこの時間から取り掛からなければならない。
霊夢は人を乗せるのが上手い。逃げ出そうとする魔理沙をおだてて、料理の下ごしらえをさせた。
紅魔館の地下図書館に本を勝手に借りに行くと、パチュリーが弾幕ごっこを挑んできた。
勝ったときも負けたときも、瀟洒なメイド長がお茶を淹れてくれた。
煙たい顔をした小悪魔を無視して、魔理沙はパチュリーと読書に勤しんだ。
たまに図書館にいるフランドールをかまってやった。弾幕ごっこ二回戦目だ。
アリスにお茶会に誘われたことがあった。
アリスの家は整理整頓されていた。自分の家とは大違いだ。
湯気の立つカップ。素朴なお茶菓子。
長閑な一時。
結局、魔理沙はお茶だけではなく、夕食までご馳走になった。
後ろ髪を引かれる帰りがけに、珍しい素材や本を借りた。
アリスはむくれていた。
不意に魔理沙は正気に返った。
目の前に、
化け物が、いた。
死にたくない、とは考えなかった。
純然たる、恐怖からの行動であった。
魔理沙は、
何時の間にか手にしていた、
上海人形が持っていた小さなランスを、
霊夢の左目に突き刺した。
ずぶびゅりっ。
「う? ぎ、がぎゃあああああぁぁぁぁぁ〜〜〜〜〜っ!!」
霊夢は、聞く者を萎縮させるような悲鳴と鮮血を撒き散らし、
魔理沙を放り出すと、
人形用のランスが刺さった顔面を両手で押さえて転げまわった。
魔理沙はよろけながらも立ち上がり、
ふらふらと牢屋を出て、地上に向かった。
霊夢は眼球に刺さったままのランスを抜こうとしたが、上手くいかなかった。
霊夢が上海人形を爆破した際、人形が装備していたランスは爆風を受け、石畳に打ち付けられ、
細い先端部分が捻じ曲がった状態で、魔理沙の牢の中に飛び込んだのだった。
ランスの曲がった先端部が返しとなり、眼球に食い込んでいた。
霊夢は両手を使い、力任せにランスを引き抜いた。
「い、あがああああああああああぁぁぁぁぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!!!」
じゅぶりゅりっ。
霊夢はランスを抜くことが出来た。
刺さった眼球ごと。
「あ、ぐぁ、え、い……、あああああ〜〜〜〜〜!!!!!」
手にした眼球を残った右目で検分した霊夢は、痛みで自棄になったのか、
抜けた目玉と眼窩を繋ぐ視神経を引き千切った。
「ぎ、い、ぎゃああああああああああぁぁぁぁぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!」
ぶちぶちぶちぃ!!
ぼたぼたぼたぼたっ。
眼窩から血がどくどくと溢れる。
血塗れの空洞と化した左眼窩を押さえた左腕の袖が、真っ赤に染まっていった。
「ふぅ〜、ふぅ〜、ふぅ〜、ふぅ〜、ふぅぅぅぅぅ〜、……」
想像を絶する痛みに耐え抜いた霊夢。
冷静な思考が戻ってきた。
「ごろじでや゛る……」
欠落した左目の分を憎悪で補うかのようであった。
「ご、ごろじでやるぅ……、ま゛りざぁああああ!!」
眼窩を押さえた左手の隙間からは、未だ、鮮血が零れていた。
「殺してやるぅ!! 魔理沙ぁぁぁあぁぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!」
ゆらりと立ち上がった霊夢は、地上に続く階段に向かい、ふらつきながらも走り出した。
魔理沙は神社本殿、素敵な賽銭箱の前で力尽きていた。
霊夢の度重なる攻めにより、魔理沙は衰弱していたのだった。
神社には誰もいない。
堅気の人間はもとより寄り付かない。
よく神社に遊びに来る鬼やスキマ妖怪の姿も無い。
霊夢が人払いの結界を張っているためであろう。
魔理沙の意識が闇に沈み始めた。
そんな魔理沙に近づく人影。
本殿の中から出て来たような気がした。
とんがり帽子、緑の長髪、青い服。
その人物を頭から観察していた殆ど映らない視線が足元に行く前に、魔理沙は気を失った。
どのみち、その人物には足が無いので見る必要は無かっただろう。
緑髪の女性は、魔理沙をどっこいしょと担ぎ上げると、その姿を消した。
血を滴らせながら霊夢が地上に飛び出したのは、その数秒後のことであった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
むかしむかし、あるところに、悪い魔女が住んでいました。
悪い魔女は、いつも人の物を死ぬまで借りるといいながら勝手に持って行ってしまいます。
当然、物を返したことなどありません。
悪い魔女には三人のお友達がいました。
お友達は悪い魔女に、人の物を取ってはいけません、とお説教をしました。
しかし、悪い魔女は全然懲りません。
それどころか、お友達からも物を取ってしまいます。
いつも人の大切なものを持って行く悪い魔女に、
お友達の一人である神社の巫女はばちを当てました。
悪い魔女さん、あなたの大切なものを取り上げましょう。
こうして悪い魔女は、三人の大切な友達を無くしてしまいましたとさ。
どっとはらい。
ぱたり。
守矢神社の風祝、東風谷早苗は読んでいた絵本を閉じた。
人里の書店。
早苗は霊夢と共に異変解決を行なうため、人里での用件を済ませた後、博麗神社に向かう予定であった。
しかし、予定より早く用事が片付いたため、暇つぶしのために本屋で新刊の立ち読みをしていたのであった。
早苗は読んでいた絵本の著者名を確認した。
アルファベットで、『MM & M』とあった。
外界から来た人だろうか、こんなお洒落なペンネームを名乗るとは。
魔理沙がアリスとパチュリーを猟奇的に殺害して、行方をくらませてから数ヶ月経った。
魔理沙は自警団に自首するように説得した霊夢の片目を潰した後、何処かへ逃走した。
自警団の捜査網に魔理沙はまだ引っかかっていない。
彼等の捜査は人間が住める地域限定だから、妖怪のテリトリーや地底、冥界、魔界等には及んでいない。
幻想郷の管理人である八雲紫、アリスの実家の魔界勢力、紅魔館といった有力者が
本気を出して魔理沙の捜索を行なえば直ぐに片が付きそうなものだが、何故か皆、消極的であった。
そして、つい最近、自警団の捜査本部も規模が縮小されたそうである。
そのことを早苗が敬愛する二柱の神、八坂神奈子と洩矢諏訪子に問うてみたが、
幻想郷にも色々と難しいあれこれがあるのさ。
そうそう、いわゆる『政治的判断』ってやつさ。
早苗は以降、この件に興味を持つことを止めた。
早苗は時間ぴったりに、博麗神社を訪れた。
霊夢は縁側に腰掛け、お茶を啜っていた。
その光景は、あの事件前と何も変わらない様に見えた。
早苗が声を掛ける前に、霊夢が早苗に気付いた。
「いらっしゃい、早苗。素敵な賽銭箱はそっちよ」
「仕事を片付けたら、奮発させていただきます」
お互いに、年相応の少女の如く笑い合った。
しかし、一方は幻想郷の重要人物である博麗の巫女、もう一方は現人神ときている。
人並みの青春など味わったことなど無かった。
同じ境遇の人間の能力者。
自分の苦しみが分かるのは、同じ苦しみを味わっている者だけだ。
異変解決に出発する直前、
「ねえ、早苗」
霊夢は上目遣い気味に早苗の顔を覗き込んだ。
霊夢の片目は義眼だ。
河童の技術で作られた、無事な目と同じ方向に瞳が動く逸品だ。
流石に元の目と同じように視力は得られないが。
ついでに言えば、見つめた人を操ったり、ビームを出したりといった、
早苗好みのギミックも搭載されていなかった。
だが、見た目は普通の目となんら変わりは無い。
だから、早苗は霊夢の両目で見つめられた気分になり、照れてしまった。
「な、なあに?」
「早苗は、私を裏切ったりしないわよねぇ?」
「しないですよ。そんなに信用無いですか? 私」
「単なる確認よ」
霊夢と早苗は、互いの唇を合わせた。
いつものように。
準備万端。
霊夢と早苗、幻想郷を護る二人の少女は、
異変解決のために博麗神社を飛び立った。
いつものように。
幻想郷は今日も平和になるだろう。
いつものように。
そろそろ、私の産廃分が不足してきましたので、一発書いてみました。
2010年11月21日:コメントの返事追加
>1様
目を潰して盲目にする話はよくあるので、こうしてみました。
パチュリー大人気!!むきゅ〜〜〜〜〜!!
>2様
妖怪の賢者様を…!?甘っちょろい話になるかもしれませんけど、宜しいですね。
>3様
彼女の師匠のおかげですね。
>4様
義眼に何かからくりを仕込もうかと思いましたが、使う機会がないので止めました。
アリスとパチュリー亡き今、霊夢を敵に回した魔理沙を助けられるのは、彼女しか思い浮かびませんでした。
>5様
たまにはこんな霊夢も宜しいかと。
>6様
パチュリー大人気!!むきゅむきゅ〜〜〜〜〜ん!!
>7様
私の書く小悪魔は、パチュリー思いの使い魔です。
霊夢は属性中立だから、味付け次第でいかようにも出来る万能キャラですね。
>8様
博麗の巫女様は、人として何か大事なものを奪われてしまったから、こうなったのでしょう。
>9様
博麗の巫女様は、人として何か大切なものを無くしてしまったから、こうなったのでしょう。
>10様
悪霊の大魔法使いと人間の普通の魔法使いは、どこかで生きているでしょう。
>王子様
あっけなくぶち殺されたパチュリーが大人気なんだが…。むきゅっ!!
NutsIn先任曹長
作品情報
作品集:
21
投稿日時:
2010/11/14 13:33:32
更新日時:
2010/11/21 10:09:13
分類
霊夢
魔理沙
アリス
パチュリー
魔理沙拷問
魔理沙陵辱
惨殺
眼球喪失
緑髪の悪霊
早苗
話もとても面白かったのですが、そんなことよりむきゅむきゅ言うパチュリーが可愛くて死にそうになった。
お願い致します
曹長のミマーは強いな。
こうして見ると、霊夢は正義も悪も狂人でも違和感が無いキャラクターですな…
友人なんて者は生まれたときから奪われた存在だったのが、この苛烈な言動の理由かも。
寛大でいられるのは、持てる者だけだから。
早苗もいずれは……
彼女には一生『大切なもの』はできないんだろうなぁ
※9
幾ら大切でも、幻想郷にとって害になる存在は潰すのが巫女だし、そうしなければ自分が消されるから。
同棲しても異変で神社毎潰される……あの海亀のようにな!