Deprecated: Function get_magic_quotes_gpc() is deprecated in /home/thewaterducts/www/php/waterducts/neet/req/util.php on line 270
『持ちつ持たれつ』 作者: 穀潰し
あるところにさなえという1人の少女がおりました。
少女には人とは違う力がそなわっていました。
なんと少女は『かみさまの力』を使うことが出来たのです。
と言っても、もちろん少女自身の力だけではありません。
少女には本当にかみさまがついていたのです。
そのかみさまのちからをつかい、ひでりの土地に雨を呼び、はんらんする川を収め、吹き荒ぶ突風を弱める。
天気すら自在に扱う少女の力。
それはただのにんげんたちからみれば奇跡といえるものでした。
しかしいくらかみさまと言えども、好き勝手に力を振るえばこんらんをまねくだけ。
だから少女を『通り道』として力を見せつけて、そこから生まれる感謝や恐怖の感情、つまり信仰を得る。
そうすれば人間の意識の集合体ともいえるかみさまは、もっと力を増すことができるのです。
逆に言えば、信仰を得られないかみさまは、その力を失い、最後には消えてしまう運命です。
だからにんげんたちに見える形である『少女』をつかって、自身の力を振るっていたのです。
でも、それ故に、人間達は少女に助けて貰った後、何時もこう言っていたのです。
「ありがとう、さなえちゃん」
その言葉を言われるたびに、少女はその顔を綻ばせていました。
少女も人間達にたよられてわるい気分はしなかったのです。
『頼られる側』というのはそうじて良い気分なのですから。
しかしここで面白くないのは、少女に力を貸している『かみさま』たちでした。
少女のようにもともと生まれが特別な人間はともかくとして、かみさまたちは普通の人間には目にすることが出来ません。
それゆえ、信仰の対象が、じっさいに力を振るっているように見える少女に向かうことは、しかたのないことだと思っていました。
では何が気に入らなかったのか。
それは力を貸している少女が、かみさまの力を、あたかも自分の物のように振る舞っていることでした。
このままではいずれ自身達のお株を少女に奪われてしまう。
そう判断したかみさまは、ちょっと手荒い方法にでました。
それは少女に与えている力を減らす、というものでした。
この方法により、少女に、『扱っている力は余所からの借り物』だということをちゃんと意識させたかったのです。
その結果どうなったか。
いつものようににんげんたちに奇跡を起こしていた少女。しかし今回はいつもとは違います。
呼ぶはずだった雨は小雨であり、抑えるはずだった河はなんとか溢れない程度、突風に至ってはその力をまったく弱めることが出来ません。
思うように振るえない力に、少女は首を傾げました。
それもそうでしょう。少女は力を貸してくれるかみさまがそんなことをするとは思っていません。
その原因が自身に対するひがみだと、どうやって気付けたでしょうか。
少女はただ、人の役に立とうとしていただけなのですから。
それをかみさまが邪魔するとはとても考えつかなかったのです。
そしてそれに気付かないということは自身の振る舞いを直すこともないということです。
だからかみさまも態度を改めない少女に腹を立て、さらにちからを弱めました。
そんな中、いちばん影響を受けたのは人間達でした。
身内とも言える少女とかみさまのけんかに巻き込まれた結果、今まで以上に荒れる自然。
日照りは潤わず、川は氾濫し、突風が吹き飛ばす。
にんげんたちから見れば、少女は既に力を失っているように見えたのです。
だから。
彼らは少女から離れた。
彼らが信仰していたのは『奇跡を起こす少女』であって『こちやさなえ』という一個人ではないのだから。
神様と少女がその事に気が付いた時にはすでに手遅れだった。
慌てて少女に力を与えようとしても、人心の離れた神に力は生まれない。結果として力は弱まり、さらに人心は離れていく。そしてさらに力が弱まる。この悪循環に飲み込まれる。
もはや自己の維持に精一杯である神に、人間の為に振るう力は無く、そしてそれを発現する少女も力を失った以上ただの少女と成り果てた。
それ故彼女達は逃げた。
座して待つは自己の消滅のみ。ならば信仰を得られないこの世界より逃げ出し、新たな世界で一からやり直そうと。
辛うじて信仰した人間達を見捨て、自己の保存を選んだその判断。英断ととるか愚断ととるかはそれぞれ。
そしてある日の晩、残っていた力の大半を使い、彼らは別の世界へと旅だった。
ただ彼女達は気付けただろうか。
自身が力を振るえたのは、そして、存在できていたのは、決して『彼女達自身の力』だけではなく、『人間の信仰によって得た力』も必要だったということを。
そして自身達もまた、人間達に『頼っていた側』だったいうことを。
前回の「マキャベリ〜」からの続きで早苗さんをフルボッコにするはずだったのに気付けばこんな文章。どうしてこうなった。
まずはここまでお読み頂き有り難うございます。筆者の穀潰しです。
久方ぶりに書いたこの『自業自得シリーズ』、若干主旨がずれている気もしますがそこはお気になさらずでお願い致します。
また今回は雰囲気を変える為、前半、後半で語り口調を変えております。これも1つの実験だとご容赦下さい。
にしても東方は自業自得、所謂『咎』がないキャラが見つかりません。
強いてあげるなら慧音か星ぐらいでしょうか。まぁこれは人それぞれの解釈が尽きますので、どうにもなりませんけどね。現に私も『うしおい』で慧音の咎を書いていますし。
さて、今回はあまり読み応えのない文章かも知れません。それでも皆様に少しでもお楽しみ頂ければ、また僅かでも暇潰しになれば幸いです。
では、失礼いたします。
穀潰し
- 作品情報
- 作品集:
- 21
- 投稿日時:
- 2010/11/14 23:23:17
- 更新日時:
- 2011/09/26 10:08:29
- 分類
- 守矢組
- 自業自得シリーズ
- 超短編
彼女達、特に早苗さんは気付けただろうか。
信仰とは『収奪』するものではなく、
彼女達の人々に対する行いが昇華、還元されるものであるということに。
ただ奪うだけだと、そのうちに利息の付いた苛烈な取立てがあるということに。
元々、自然に対する敬いの念だったものが、
今では『人の形』をした『形』のある神様へと姿を変えた・・・・