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『東方落語【転失気】』 作者: tori
知らないことを知らないと言えなくて、知っているフリをする。
よくあることですな。知ったかぶり、というヤツで。
まぁ、まったく何も知らない人、というのはあまり知ったかぶりはしません。
チルノのようなHは知らないのが当たり前になってますので、「しらなーい」「なにぃ、それぇ」なんて、ごく気楽におっしゃいます。
一方で、本当に物事を深く知っていらっしゃる慧音のような教養人は、これまた知らないことは知らない、とおっしゃいますな。
今さら一つや二つ、モノを知らなくったって、誰もその人をバカにしたりなどできませんからな。まぁ、自信の現われということでしょうか。
知ったかぶりをする、というのは、われわれ同様という、このちょうど中間にある人間ですな。
半端にモノを知っている。
実際よりも余計にものを知っているように見られたい。
そういう気持ちが知ったかぶりをさせるのでしょうな。われわれの中にもよくあります。
魔理沙はどうもここ二、三日、身体の具合が悪い。
そこで永琳に往診をお願いしまして、診てもらいました。
永琳は脈を取ったり、ベロを出させたり、目ン玉の色を見たり、腹を押したり揉んだりしておりましたが、ふと首をかしげて、
「うーん、これは少しお腹が張ってるわね。[てんしき]はあるかしら?」
ここで困ったのは魔理沙。
素直に知らないことを知らないと言えばいいのに、認めたがらないのだ。
「ん…、ああ、[てんしき]か…。えっと……んー…」
「ないのかしら?」
「あ、ああ。ないぜ」
と返事をしてしまった。
「そう。分かったわ、あとで薬を作るから永遠亭に取りに来てね」
永琳は帰ってしまった。
さて、あとになって魔理沙は気になって仕方がない。
「んー。[てんしき]」ってなんだ?
魔導書にも書いてないしな…。いったいなんだ?
…適当に返事をしておいたけど…もしこれで…あるのとないのとでは命に関わったら…うう、怖いぜ」
そんなときアリスがお見舞いに来た。
「魔理沙?大丈夫?具合が悪いって聞いたけど」
「お、アリスか。…待てよ、アリスなら物知りだから知ってるかもしれない。
おーいアリス!こっちだ」
「あらよかった、割と元気そうね」
「ああ、もちろんだぜ。ところでアリス、[てんしき]を出してくれないか?」
「…え?」
「だから[てんしき]を出して欲しいんだって」
「……え?」
「だーかーら、早く[てんしき]を出してくれよ」
「…えっと…てん…なに?」
「[てんしき]だよ」
「あの…魔理沙?[てんしき]って…なに?」
本当に困っている様子のアリス。
「え?アリスは[てんしき]も知らないの?魔法使いが聞いて呆れるぜ…。もっと修行しなきゃダメだぜ」
「…ねえ、[てんしき]ってどんなものなの?私、魔理沙の為になら探してくるわ」
「…は?……えっとなぁ……[てんしき]は…[てんしき]だよ。それ以外何でもない」
「それじゃ分からないじゃない。教えてよ」
「私は教えてあげないぜ。分からなくなったら、すぐ近くの友人に聞く癖を治した方がいいぜ」
「…そんなこと言ったって…」
「…そうだな、紅魔館とかマヨヒガに行って聞いてくればいいんじゃないか?『てんしきはありますか』って」
「いやよ、そんな遠いとこ」
「私がどうなってもいいのか?」
「…っ。行くわよ。行って、あったらどうするの?」
「あったら借りてきてくれ」
「分かったわ。じゃあ魔理沙は寝て安静にしててね」
「おう、待ってるぜ」
「…はあ。[てんしき]って何かしら?聞いたこともないわね。時々魔理沙は変なことを言い出すから…。あら、紅魔館だわ」
「こんにちは、美鈴さん。中に入っていいかしら?」
「…って寝てるわね。勝手に入っちゃいましょう」
「…あら、珍しいお客さんね。こんにちは」
「…ああ、咲夜さん、こんにちは」
「なんの用かしら?基本的には立ち入り禁止だけど。図書室に行くなら寄り道しないでまっすぐ行ってね」
「違うわ。あの…今日は[てんしき]を借りに来たんだけど」
「……てん…[てんしき]?…えっと…それなら……パチュリー様に許可を取ってね」
「分かったわ」
「パチュリー、元気にしてたかしら?」
「パチュリー様なら今日は研究の為に自室にこもってます」
「あら、小悪魔ちゃん。…なら…[てんしき]を借りたいんだけどどうすればいいのかしら?」
「…[てんしき]ですか?…レミリアお嬢様にお聞きください」
「分かったわ」
「こんにちは、失礼するわ」
「…ふーん、今日は珍しい方の魔法使いね。何の用?」
「[てんしき]を借りに来たわ」
「…[てんしき]ぃ?……[てんしき]……[てんしき]………咲夜!お客さんに[てんしき]を貸し出してあげなさい!」
「…結局私に戻ってくるのね。……あ…アリスさん、…[てんしき]は現在切らしてまして」
「そうなの?残念ね」
「はい。申し訳ありません。先ほどまで2つあったのですが…片方は庭に撒いてしまい…片方は晩餐の為に調理してしまいました。次に入手したらお知らせしますね」
「分かったわ、ないものは仕方ない、帰るわね」
「[てんしき]…庭に撒くもので夕食に使うもの…なにかしら…。まあいいわ。マヨヒガにも行ってみましょう」
「こんにちは」
「こんにちはー」
「あら、橙ちゃん、こんにちは。紫さんはいらっしゃいますか?」
「んー…たぶん…いる…」
「そう。ところで[てんしき]ってここにはあるかしら?」
「…んー?」
「貸してほしいんだけど」
「ならね、藍しゃまに聞いてください」
「藍さん、いらっしゃいますか?」
「あら、こんにちは」
「あ、紫さん!…藍さんは?」
「あの子は今、人里に油揚げを買い物中よ。あの子に用があったのかしら?伝えておくわよ」
「いえ、紫さんでもいいです。あの、[てんしき]を貸してください」
「…[てんしき]?」
「そうです。[てんしき]です。魔理沙が困ってるんです」
「…て、[てんしき]ねぇ…」
「ないんですか?」
「……ああ…。…あれなら…ごめんなさい。私が冬眠するときに使っちゃったわ。それが最後の1個だったの」
「そうですか…」
「アリス、待ってたぜ。どうだった?どこかにあったか?」
「どこにも無かったわ」
「紅魔館には行ったか?」
「行ったけど…。1つは庭に撒かれたらしくて」
「はぁ?庭?…ま、まぁ…あれは植物の栄養になるからな」
「もう1つは夕食に使われたらしいわ」
「夕食ぅ?…ま…まぁ…今が旬だしな……」
「マヨヒガにも行ったけど、冬眠の為に使っちゃったんだって」
「冬眠ん?……あ、ああ…あれは温かいもんな」
「…ねえ、魔理沙…。[てんしき]ってなんなの?」
「あ、えっと…そりゃあなぁ……。うーん…ゲホッ。アリス、そろそろ永琳の薬ができた頃だ…。取りに行ってくれ」
「…分かったわ」
「…その時にだ…。永琳に[てんしき]って何だか聞いてきてくれないか?そして私にこっそり教えてくれ。…あ、これは…伝言ゲーム。そうだ伝言ゲームだ」
「はあ?…分かったわよ」
「あら、アリスさんいらっしゃい」
「魔理沙の薬を取りに来たわ」
「魔理沙の薬…処方は完了してるわ。こちらよ。使い方とかはそっちの紙に書いてあるわ、代金は…あとでね」
「…あの、永琳さん?[てんしき]って何かしら?私分からなくて…」
「転失気?…分からないことを聞くことは良いことよ。それはね…おならのことよ」
「…おならって…あの…屁?」
「そうよ。その、屁、よ」
「へぇ…、おならは…屁…へぇ…」
「あんまり屁屁言わないの」
「でも、魔理沙が[てんしき]を借りるために紅魔館に行けだのマヨヒガに行けだの言ってたわよ?…どこにも無かったけど」
「…そんな話があるのかしら?俄に信じがたいわね」
「ねえ、永琳さんが嘘をついて私をからかったりしてませんか?」
「そんなことは無いわよ。昔の『傷寒論』という本の中に出てくるの。「気を転め失う」、これがすなわち「転失気」だ、ってね」
「信じられないわね」
「じゃあ証拠を見せてあげるわ…これよ」
「(…なにこれ月語?)」
「どう?信じたかしら?」
「…う、うん、信じたわ。あ、薬もらっていくわね。ではまた」
「おかしいわね…。[てんしき]は、おなら?…でも…みんな食べたって…撒いたって…使ったって…
第一、魔理沙が借りてこいって…。
……分かった。
あはは、そういうことね!みんな分かってなかったのね!ははははは!」
「でも…ここで仮に魔理沙に、「魔理沙、あのね、[てんしき]はおならのことよ」って言ったら魔理沙は「ははは!知ってるよ!」なーんて言うに決まってるわよね…。…ようし。」
「アリス、薬は持ってきたか?」
「持ってきたわよ、はい」
「ところで[てんしき]って何だったか、伝言ゲームだぜ」
「あれはねぇ、魔理沙、キノコよ」
「…キノコ?」
「そうよ、キノコよ。あれぇ?まさか魔理沙…」
「はははっ!アリス、伝言ゲーム満点だぜ!そうだ、[てんしき]はキノコのことだぜ!」
「…ほら、やっぱり」
「何か言ったか、アリス?」
「何でもないわ」
「キノコは、旨味を添える菌のことだぜ。添旨菌、つまりてんしきだ!」
「…ふーん」
「ところでアリス、これからはキノコのことを添旨菌(てんしき)って呼ぶぜ、プロらしくな」
「あら、そう」
さて、翌日、魔理沙は永琳特製の薬も効いて、体調はすっかりよくなりました。
アリスは魔理沙の体調が不安だったのでずっと見守ってましたが、杞憂だったようです。
そこに永琳が往診に来ました。
「おはよう、魔理沙さん」
「永琳か、おはようだぜ」
「元気になったかしら?」
「おかげで元気だぜ、ところで昨日、永琳は私に添旨菌はあるかって聞いたよな」
「…聞いたわね」
「よく考えたら私、添旨菌あったぜ!」
「それは良かったわね」
「私は添旨菌には目がなくてな」
「…そうなの?」
「でもな、毎朝は添旨菌からスタートするわけにもいかないだろ?」
「…いや、そんなの個人の自由よ」
「もしかして永琳も添旨菌は好きか?」
「そんな特別な感情がある訳じゃないけど…。催すこともあるわね」
「催す…。催すか!いやぁ、永琳も好きなんだな、意外だぜ」
「いや、別に好きってわけじゃないわよ…」
「またぁ。そうやって、夕飯時には姫と一緒に突っついてるんでしょ?」
「姫と突っつくぅ?」
「あれ、永琳興味あるか?よし、私の添旨菌を見せてやるぜ」
「いや、見せなくて結構ですが」
「遠慮するなって。おい、アリス!…何で笑ってんだよ!とにかく私の添旨菌を持ってきてくれ!…丁寧に扱えよ!傷付いたらどうしてくれるんだ!
いやいや、永琳、これを見てくれよ。私の宝だぜ」
「宝?この風呂敷の中に入ってるのかしら?…臭くないの?」
「丹念に洗ってるから臭くはないぜ」
「洗ってるの?いや、私も長いこと医者をやってるけど転失気を洗って保存した人は初めて見たわ。是非見せてもらうわね。
…これは美味しそうなキノコ…。でも…このどの辺が転失気なのかしら」
「どの辺って…どの辺もこの辺も私の大切なキノコだぜ…?」
「はぁ?いや、私たち医者の間では『傷寒論』にあるように「気を転め失う」と書いて、[てんしき]。おならのことを指すのよ?もしかしてあなたは違う意味だったのかしら?」
「…へ?おなら…。お、おならー?
ア、アリス…あいつ…!
…い、いや、なんでもないぜ永琳。
私たちはキノコのことを[てんしき]って言うんだぜ!」
「へえ、何でかしら」
「そ、そりゃあ…キノコを生で出すと、ブーブー言うやつがいるからだぜ!」
ぱちぇ「なんで貴方たちてんしきも知らないのよ」
らん「紫様…どうしててんしきを知らないのですか」
れみ&ゆか「べっ…別にいいじゃない!!」
咲夜「…今回一番恥ずかしいミスをしたのは…私…?」
「もーこーのーでーばーんーがーなーいーモコー!!」
ぱちぇ&らん「…今の誰だ?」
うらんふ様やぐう様の作品を見て作りたくなりました。
色々問題があれば言って下さい。削除しますので。
後書きに結構なミスを見つけたので直しました。
参考url
http://www.geocities.co.jp/Hollywood/6684/tenshiki.html
11月25日23時:コメント返事。いろいろなコメントありがとうございます。
tori
- 作品情報
- 作品集:
- 22
- 投稿日時:
- 2010/11/23 05:51:27
- 更新日時:
- 2010/12/06 22:29:05
- 分類
- 落語
- 東方落語
- 魔理沙
- アリス
- 永琳
- てんしき
- 会話文多
- 分かり易く
それでも読みやすかったのはちゃんと掛け合いや口調でキャラが分かるからだなー
そして『てんしき』か。俺も知らなかったぜ。冒頭のけーねチルノに納得
ついつい知ったかしてしまう自分は魔理沙をわら……いました
なるほど、てんしき(おなら)だけにwww
時代や場所を選ばないのは人の内面がテーマだからかな・・・
孫子みてぇだ・・・
落語好きな人が増えるのは嬉しいです〜♪
・・・実はですね。私、不勉強で、ちょっと分からない事があるんです。
「ちはやふる神代もきかず竜田川からくれなゐに水くくるとは」
という歌があるんですけど、この歌の意味が分かりませんでして・・・(泣)。
もし宜しければ、教えていただけると嬉しいです!!!!!
教えていただけなければ・・・絶望のあまり、井戸に飛び込んで入水自殺してしまいますから(笑)!!!
>6
うらんふ氏の本名は、とはだったんですねw
大丈夫です。私たちの一般常識では誰も転失気なんて知りませんから。
ありがとうございます。やはり口調といい行動の自由さといい魔理沙は扱いやすいですね。
魔理沙を笑えるということは、良いことですよ。これからも知ったかぶりし過ぎないようにしましょう。
>>2様
知らないものははっきりと知らないと言いましょう。
魔理沙はそれで大変な目にあいましたからね。
>>ぐう様
勝手に東方落語を1つ作らせてもらいました。
そうですね。魔理沙はそれが精一杯の言い訳だったのでしょうね。
…恥ずかしいものですよね。
>>4様
そうですね、知ったかぶりは良くありません。
自分が危なくなる上に、他人から見たとき、とても笑えるということが起こる可能性があります。
知らないものは知らないと言いましょう。
>>5様
本当にすごいものですよね。
キャラクターが東方に置き換わっても、文章になっても楽しい落語というものは、日本が産み出した素晴らしい文化のひとつですね。
これから少しでも落語に興味を持ってくれれば幸いです。
>>うらんふ様
影響されて作ってしまいました。私も落語は好きです。
ちはやふる〜、も落語では知ったかぶりの話でした…よね?
えっと…これは…真面目に答えさせて頂けば良いのか悩みますね…。でも…折角なので
相撲取りで人気大関の
竜田川
が吉原へ遊びに行った時
千早
という花魁に一目ぼれしたのですが
振られて
しまいましてね。千早の妹の
神代
を呼んだのですが言うことを
聞か
なくて。それで…色々あって千早は入水自殺し
水をくぐった
のですが。ちなみに千早の本名は
とは
ですね。
>>7様
良くできてますよね。
…ないとは思いますが…まさか…ちょっと意外ですね。