Deprecated: Function get_magic_quotes_gpc() is deprecated in /home/thewaterducts/www/php/waterducts/neet/req/util.php on line 270
『うえのほう』 作者: みこう悠長
指の先から満月と蜘蛛が零れてきていた。
はっ、はっ、はっ
あらくあたるあかるくあがる
机の上には月光に塗れた時と燐粉燃え上がる屁理屈。
せめぎあって互いに食らい合い、ちいちいち赤子の鳴き声みたいな喘ぎ声を響かせている。
強い紙魚が食い荒らしたプラスチックな世界には、折り重なるようにカドミウム心臓逆流時間は筆記用具をオーバーフローしていた。
はっ、はっ、はっ
顎の奥から顎が生えて、頭のてっぺんからもう一人自分をにが生えてくる。
分裂した真鍮製の私が、溶けた地下茎で分裂した真鍮製の私とつながっている。お互いに牙を剥き合って爪を研ぎあって、心中しようと機械仕掛けの恋心に数式と理論の泥水をぶちまけあっていた。
無性に吐き気が真っ白い三角州立ちすくんで、中心にいる肉製の私手招きしたいていたる。
だれか、いる。
うるさい。
気が る。
緋色をしたぼーんぼーんぼ死んだ?死んでないな。
虫潰しの内臓柔肉ダンボール通電レーザー形成の寺子屋にはも誰も居ないいないいないいないいたいいないいないいなくなった寺子屋なんだこれ。
指の先から満月と蜘蛛が零れてきていた。
はっ、はっ、はっ
あらくあたるあかるくあがる
音がぶつかって痛いから をぶちまけたら羽虫の群れでぶぶぶぶぶぶぶぶぶしねしねしねしねうるさいアルコールとホルマリンの臍のヲをつないで燐酸サッカリン3酸カリウム車輪さん仮にぶち込む月光浴沈没延し多重可能性平行肯定。矛盾しない?し い。
プリずムで分離した世界が黄色だけなくてぐずぐずにふやけたオートミールあふれ出すつっつくと白っぽいコンテクスト。象の耳 響。爪。ガラス引っかく歴史生死無視度外視、
あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、ああ、ああ、ああ、あ、あ
声って言うのか音って言うのかチェレンコフ光とバイオルミネッセンス器用に配置
りばめた光源金網がざりざりざり頬の中の鶏をこすっている
どう?どう?どう?
私のせ い、どう?
息があがる。フラーレンn年が発火燃える罪業ボールの中に針が立っていて私を突き刺した。
にゃーん500円
なかったことにする
かっ こと す
か こ
れ き し
れ きい し る
それ きいんし いる
それにきいんしている
過去原因歴史起因黙示録おとといの忘れ物は明日の天 が悪いせいで
ああなに言ってるんだろう時間後方流動限定?。/パラドックス¥環状世界論;goto *開闢
緑。みどりなんだ。朽ちた時間の芯は緑。覆い尽くすだろ?夜と朝の間くらいのみどりがさトランケートでも銀色が画面遷移許可記憶なしで歴史的抗原抗体反応拒絶事実/背反容認つのつのつの尻尾
実行 -s 白沢
cd 自意識
「戻った?」
「あ、ああ」
別に寝ていたわけではないのだが。
「大丈夫?」
「大丈夫だ。第一、弱音を吐いている時間なんてない」
この世界が誰かにかき回されるようになってもう大分経つ。無数に描かれるこの世界の姿は、それぞれが共存可能な要素ばかりではない。湖が干上がる事実と凍りつく事実が同時に描かれ、私が死んだり生きたりしている。今こうして隣にいるのが、永琳の場合もあれば妹紅の場合もある。
それらの背反な歴史を一度噛み砕いてなるべく矛盾のないように並び替える。因果関係の順番はめちゃくちゃで、鳥も卵もない。採用されなかった可能性は吐き出して逸史とし、アーカイブする。それが私にかせられた、満月の夜の仕事だった。
「辛そうよ?本当に」
「大丈夫だ、問題ない。記すべき歴史を稗田にもっていかんことには、この世界の証が立たないしな。」
もう少しいうなれば、私という存在が満月の夜には、「そういう不確定なものに対応できる別の何か」に変化する。事実記号で固定化された呼称を用いるなら「白沢」というらしいが、それも水を煉瓦と呼ぶようなものだ。
焦りは感じていた。最近の幻想郷は情報流入が激しすぎて、これ以上になると私では整理しきれなくなるかもしれない。そうなったらこの世界は、どうなるだろう。可能性の風船に剣山が迫っていた。
「私が私でない可能性か」
「違う。別の永琳でもあるんだ。私が見ているから、私の目の前では、今の永琳なだけで」
「すごいわね。世界が慧音次第だなんて」
「それも違うな。私は私の世界を私に都合のいいように形成してるだけだ。お前の世界は、私には操作できない」
「私の世界では、そうね、慧音以外いらないかしら」
「そいつはひどいな」
「理想よ?」
この情報爆発を誰が仕向けているのか。だれ、といっても私達には知りえない存在だ。いわば神といってもいい。私はその超次的存在に、中間処理層のツールとして使われているに過ぎないのだろう。
「私の中の慧音はね、今すごく辛そうにしてる。重そう。苦しそう。痛そう。熱そう。」
「すまないな、気を遣わせてしまって」
「ねえ、慧音。それって本当に、あなたがやらないといけないことなの?」
「当たり前だ。これをやらないと、歴史は整合性を失い、未来にわたって世界の姿が焦点を失う。」
頭のいい永琳が私の言うことを理解できないはずがない。まさか、食い残しがあったか?永琳の頭がよくないという背反情報を見落としてしまっただろうか。
「待っていろ、永琳。次の満月には元に戻してやる。」
「……ええ、待っているわ」
元、といっても私の好きな永琳、私の信じている頭のいい永琳、幻想郷一綺麗で優しくて、強い永琳。私の世界では、私の歴史では、私の中で、私の恋人の永琳。
この世界は、誰にも壊させはしない。
◆
「どう?」
「芳しくないわね。変わっていない。」
博麗神社で私は、霊夢と紫に報告に来ていた。
「閉じられないの?」
「生憎と。」
慧音の精神は壊れていた。他者と会話をしたりその考えを認めたりはするものの、自分の殻に閉じこもって世界をクローズしてしまっている。自分が世界を作り上げていると思い込み、それを守るという強迫観念から抜け出せずにいるようだった。
「慧音の言うとおり、情報の流入が激しすぎて、閉じきれない。そもそももっと別のレイヤーから入り込んできている気がするわ。結界の有無に関わらず、中も、外も、自由に行き来できる……というか、もっと上の方から俯瞰されているような。」
八雲が深刻に、言う。博麗もそれに続いて、無力を語った。
「紫でどうにもできないんじゃ、私にはとても。博麗神社が維持する結界は、幻想郷とそれ以外を区切りはするけれど、同じレイヤーでしか効果がないわ。仮に上?の方に何かがあれば、それは」
「それって、何なのかしら。神様?」
「神様も被造物だし、そういう風に言うと、造物主とか、創造主とか」
「そいつらは、私達をどうする気なの?」
私達の意思とは関係のないところで、あたし達のすべてを決定できる何者か。考えただけで寒気がした。
やつらの中では私達など人形かぬいぐるみか何かと同じで、幻想郷もその外も庭かドールハウスかと同じで、歴史や事実なんてままごとかゲームと同じに過ぎないのだろうか。
それらの情報や操作に対して横断的に感応できた慧音は、その流入量の多さと矛盾の負荷に耐えかねて壊れてしまった。
だが彼女がそうなったのは、副次的な効果であって、「やつら」が私達を壊そうとしてのことではない。
もし、私達が「死ね」「消えろ」「壊れろ」と命じられたら、私達は従わざるを得ないのだろうか。しかも、自身ではそうと気づかぬように。
「誰が……誰が幻想郷の敵なんだ」
八雲の声が、悲痛に響いた。
◆
違う。違うぞ永琳。
そう考えるお前が既に、誰かに決められたお前なんだ。
私は壊れてなんかいない。ただ客観になっただけだ。客観になったうえで、諦め、そして視野狭窄を自演してるだけだ。
私達は誰かに作られて、いまだにその操作のワイヤーから解き放たれてなどいない。いまだに、永遠に、檻の中の操り人形。
だったら、自分の見えるものは自分が決めていると、自分の世界は自分が作っていると考えるほかに、ないだろう。
私達は、自分の作り上げた虚構の世界以外の世界なんて、知りえないんだよ。
そういう点で言うと、世界、なんてものは、ただの虚構なのさ。
- 作品情報
- 作品集:
- 22
- 投稿日時:
- 2010/12/03 02:53:13
- 更新日時:
- 2010/12/03 21:59:42
- 分類
- 慧音
- 永琳
どっと疲れと冷や汗が出ましたよ。
押井守監督作品では、自分がリアルだと思えば、たとえそれがモノクロの作り物めいたものであっても、
それが現実世界と解釈していたことを思い出しました。
私達の創った幻想郷に住む彼らは何を思っているのだろうか…。
そして冒頭の壊れ描写が間に迫っていておぞましかった