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『食べてもいい人類』 作者: 機玉
他の妖怪と遊んだ帰り道、ルーミアは冬の夜空をふらふらと飛んでいた。
今は夜なので闇は出していない。
以前は昼夜を問わず闇を出していたのだが最近は知り合いが増えたので夜は出さない事にしたのだ。
もう一つ、夜でもたまに人間を見つけられる事に気づいた。
闇を出さないのもなかなか良いものだとルーミアは思った。
「今日はどこで寝ようかな〜。お?何かいる」
何気なく下を見渡していると森の中に何かがいるのを発見した。
どうやら人間が座り込んでいるようだ。
もしかしたら食べてもいい人類かも知れない。
ルーミアは早速声をかけてみる事にした。
「そこのあなた、こんばんは」
近くで見てみるとその人間は年老いた女性であることに気づいた。
老女は特に何をするでもなく木の影に座り込んでいたが、ルーミアが話しかけると顔を上げた。
「……あら、お嬢ちゃんこんばんは。お嬢ちゃんは、妖怪かしら?」
「ええ、そうよ。宵闇妖怪のルーミアよ。あなたは食べてもいい人類かしら?」
この質問をされた人間は大抵否定するのだが、今回は少し様子が違った。
「食べてもいい……そうね、食べてもいいのかも知れないわね。
ルーミアちゃん、あなたおにぎりは食べる?」
「お〜、貰ってもいいの?」
「ええ、いいわよ。その代わり私の話に少し付き合ってくれるかしら?」
「別にいいわよ」
ルーミアはもらったおにぎりを頬張りながら老女の話を聞いた。
育った故郷のこと、親兄弟のこと、結婚した夫のこと、おにぎりを作ってくれた息子のこと、息子と幼馴染だった義娘のこと、まだ小さい
孫のこと、老女は様々なことを話した。
ルーミアにはよく分からない話もあったが、適当に相槌を打ち、おにぎりを食べ終わっても老女の話を聞き続けた。
やがて話が終わり、今度はルーミアの話を聞かれた。
ルーミアは何を話していいか分からなかったので、最近遊んでいる妖怪のことや、美味しかった人間や動物の話をした。
ルーミアにとってはなんでもない話ばかりだったが、老女は熱心に聞き続けた。
やがてルーミアも話が終わり、老女は満足そうに笑った。
「ルーミアちゃんありがとう、お話ができてとても楽しかったわ。
悪いんだけど、もう一つだけお願いを聞いてくれるかしら」
「なに?」
「今夜だけルーミアちゃんに一緒に寝てほしいの」
「それぐらいならいいけど」
「ルーミアちゃん、本当にありがとう。私ルーミアちゃんに会えて良かったわ」
老女はルーミアを抱き寄せるとそのまま目を閉じた。
人喰い妖怪と会って感謝するなんて変な人間だと思いつつルーミアも眠りに就いた。
老女の腕の中はそれなりに寝心地が良かった。
次の日の朝、日の光を感じてルーミアは目を覚ました。
闇を出さないまま寝てしまったことを少し後悔しつつ、となりの老女に目をやった。
「う〜ん、よく寝た……あれ、人間?」
昨日は温かかったはずの老女の身体は冷たくなっていた。
ルーミアは老女を眺めながら人間は寒い場所に長いこといると死んでしまう事を思い出した。
「そういえば、食べてもいいって言ってたわよね。じゃあいただきます」
老女の味はあまり美味しいとは言えなかったが、ルーミアは残さず食べた。
食べ終えたルーミアは木の虚(うろ)の中に老女のものではない人間の骨がいくつか転がっているのを見つけた。
またここに来れば食べてもいい人類を見つけられるかも知れないな、などと考えながらルーミアは闇を出して昼の空に飛び立ったが、しばらくするともうその場所のことは忘れていた。
唐突にルーミアが書きたくなったので書いてみたら予想以上に短かった。
投稿するかちょっと悩んだけど産廃だから投稿してみました。
ではここまで読んで下さった皆さんありがとうございました。
次回もよろしくお願いします。
12月25日コメント返信
皆さん感想ありがとうござました
>>1
終始ルーミア視点なので物語の深い部分には触れない形になっていますね。
おばあちゃんがあそこにいた理由は一応姥捨山を念頭に置いて書きました。
>>NutsIn先任曹長さん
ビンゴ、姥捨山です。
自分は結構ハッピーエンドが好きなので、今回はダーク要素を混ぜつつも救いのある内容にしてみました。
もっとも、ルーミアには関係のない話ではありますが。
>>ヨーグルトさん
ありがとうございます、好きと言っていただけると嬉しいです。
今回は切り方がざっくりなので、描写されていない部分については読者の方の想像に任せる形になっていますね。
>>4
そうですね。
この記述は入れるか少し迷いましたが、ここでまずくて食えなかったとか入れるのもアレなのでルーミアには残さず食べてもらいましたw
>>5
個人的にルーミアはあまり深い事考えずに刹那的に生きてるイメージなので、コロッと忘れてしまいましたw
>>6
ありがとうございます。
おばあちゃんの背景には色々あるけど、ルーミアの視点を通して見ている話なのでそのことはあまり表に出てこない形になっています。
>>7
はい、姥捨山なので、まあそういうことです。
作中でにおわせている程度の設定なので分かっていただけなくても問題ない部分ですが、こうして気付いてくれる人がいるとちょっと嬉しいです。
>>8
ありがとうございます。
ルーミアにとっては人間の事情などどうでもいいですからね。
気まぐれに話をして、食べても良いと言っていたので食べたというシンプルな話になっています。
機玉
http://beakerinsect.blog136.fc2.com/
- 作品情報
- 作品集:
- 22
- 投稿日時:
- 2010/12/21 12:12:50
- 更新日時:
- 2010/12/25 22:34:48
- 分類
- ルーミア
- 短編
おばあちゃんなにしてたのかな…
最期、彼女は幸せだったのだろうか…?
少なくとも、彼女は無価値ではなかった。
こういうものは好きです。
何と無く好きです。