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『瞳の中の・・・(中編)』 作者: IMAMI
作品集21
瞳の中の・・・(前編)の続きです。
誰もいなくなった地霊殿の当主の間で、さとりは一人地底で安価で手に入る阿片を吸っていた。
あの夜、めざめはすぐに息を引き取った。地底では盛大な葬儀がとり行われ、さとりが喪主を努めた。
しかし、さとりはその後特に地底を纏めることもせず、会合にも参加しなかった。地底のことなんか興味がなかったのだ。ただ不満が爆発して、自分を愛そうとはしない父親を殺した。それだけのことだ。
さらには、めざめの部下を難癖つけてはどんどんクビにしていったが、こいしをを追い出したときからは自分から出ていく者が多数だった。それもその筈だ。そのあたりから怨霊を管理する者が居なくなったため怨霊がさ迷い出て、地霊殿の中に住み着き始めたのだ。
凶暴化した怨霊もかなり多く、命が危ないと判断した者は自分から出ていき、最後の残ったのは当主のさとりのみだ。
ズドッ…
阿片を吸い終えようとしたとき、部屋の外からそんな音が聞こえた。何だろうか。
怨霊は凶悪な存在だが、無意味に無機物を破壊する習性はない。生きた生物をとり殺すことはよくやるのだが。と、いうことは───
「誰か来たのかしら」
阿片パイプを片付けて、当主の間の出入口に向き直った。だが、数刻が過ぎてもこの部屋を訪れる者はいない。
たどり着けずにいきたえたのだろう。
「バカみたい」
元ここの住人か、盗賊か、地下街の連中か。そんなものはどうでもいい。生きようが、死のうがどうでもいい。
ガタッ
そのとき、当主の間の扉が開かれた。
クルシイ…
ウウウ…
外には、無数の怨霊。ここはめざめの結界で護られていたし、食料もあったため、さとりはずっとここで過ごしていたのだがそれも今破られたらしい。
「………!」
イキタヨウカイ…
ホシイ…
肉体への干渉能力を高めた怨霊が当主の間へとなだれ込み、逃げ出そうとしたさとりを押し倒した。
「ぐっ、やめて………!」
四肢を押さえつけられ、リーダー格の怨霊がさとりに馬乗りになって上着のボタンを外していく。さとりの白い肌が露になる。
イキテイル…
「うぐっ───」
さとりの慎ましやかな胸を揉みしだきながら、胸と同じ小さな口内を蹂躙する怨霊。足を押さえていた怨霊もスカートを剥ぎ取って、薄桃色の下着の上から純潔を保つ秘所を撫で回す。
「やめな…さい………」
やがてさとりの抵抗する力がなくなってくると、怨霊はさとりの下着をも剥いで、鉄のように固くなった凶棒をさとりの秘所にあてがった。
「お願い…やめて…!」
さとりが懇願しても、相手はこの世への怨みに満ちた怨霊だ。そんなもの聞くはずがない。
怨霊はあてがった凶棒をさとりの男を知らない濡れてもいない秘所から体内へと一気に侵入させた。
「いやぁぁぁぁあっ!」
尋常ではない痛みがさとりを貫く。
「やめてっ!やめでぇっ!」
別の怨霊がさとりの臀部の割れ目を無理矢理押し広げて、まだ褐色になっていない尻穴を露出させる。
秘所を犯している怨霊と同じく硬化した凶棒を尻穴にあてがい、一息に貫いた。
「ひぐぅぅぅぅぅ!」
破瓜と、開発されていない未熟な括約筋が引き裂かれ、結合部から鮮血が零れる。
さらに、他の怨霊がさとりの柔肌に凶棒を擦りつけたりし始めた。悲鳴を聞くために口内を犯すことはしなかった。
「がっ、おごっ、いぎっ…!」
さとりの口からはもう言葉が生まれない。
裁きだ。
そう言わんばかりに小さな覚妖怪への凌辱が始まった───
「靈奈さん。新聞です」
まだ里からは近くない天狗、射名丸文が博麗の巫女、博麗靈奈に自らが発行する新聞を渡した。
「ん」
縁側に寝転がっていた靈奈はまだインクの香りがする新聞を受け取った。
「相変わらず短いスカートねあなた」
靈奈は文の見せつけるような生足を見て言う。
「いやぁ、雌の烏天狗ならこれが普通なんですよ。広報や諜報の仕事をしているといろいろ便利ですから。
それにしても人間の方で私の新聞取っている方はあなただけですよ。毎度ありがとうございます。末永くよろしくお願いいたしますね!」
慇懃なまでの言葉を述べる文に靈奈は新聞のインクの香りを感じながら答えた。
「それは分からないわね。私はいつも妖怪と戦っている身分だから。いつか殺されるかもしれないし」
「そう言わずに…」
「私はあなたと違う。人間だから寿命も長くない。私の子や孫に取ってくれるよう頼むことなら出来ないことはないわね」
「そう言っていただければ…
では、私はもう行きますね」
文が空の彼方へと飛んでいく。
「………なるほどね」
新聞を読み終えて、靈奈は起き上がり、草履を履いた。
そして新聞を畳んでちゃぶ台に放り出すと、文とは違う方向へと飛んでいった。
靈奈が降り立った先は人間の里だった。
靈奈は真っ直ぐに甘味処に向かう。
「おや、博麗の巫女じゃないか」
すると、外の長椅子に座っていた人間の里の守護者、上白沢慧音が団子を片手に声をかけて来た。
「こんにちは。慧音」
「お前も食べに来たのか?」
「ええ。評判だから」
靈奈は揚げ饅頭を注文して慧音の隣に座った。
「どうなのかしら。最近の里は」
「ぼちぼちだな………だが、最近の地霊殿のこと、知ってるか?」
「ええ。地霊殿から溢れた妖怪が地上で暴れることの懸念があるわ」
「そうだ。そのときは宜しく頼───」
「はぁっ!」
そのとき、いきなり靈奈が慧音の皿に一本だけ残っていた串を引っ掴み、甘味処の饅頭が飾られている棚付近の地面に投げつけた。串は地面に深々と刺さる。
「なっ、なんだ!?」
慧音が突然の靈奈の奇行に声を上げる。
「………ごめん。蝿よ」
「一々驚かすな!」
慧音は靈奈を一喝して胡麻餡団子を一串平らげる。
「遅いわね。普通の饅頭でも良かったわ」
「気が短いのは良くないぞ」
「そこかぁっ!」
今度は靈奈、串ではなくて封魔針を同じ場所に放った。
「おいっ!」
「きゃあっ!」
慧音が語気を強めて靈奈を叱ると、少女の悲鳴が響いた。回りの者が振り返る。
そこには封魔針に手首を貫かれて踞る少女がいた。その近くにはいくつかの饅頭が転がっている。
「これは………」
「こそ泥よ。覚妖怪かしら」
「うぐっ…痛いよ………」
「バカな。何の気配も無かったぞ!?」
「それがカラクリよ」
靈奈は覚妖怪に近寄る。
「ごめんなさい…許して…!」
「だめよ」
靈奈な覚妖怪の少女の懇願を冷徹に払いのけた。
「あなたを許したら他の妖怪まで許すことになる。でもあなただけ特別扱いは出来ないわ」
「お願いします………!なんでもしますから!」
「生憎ね。私は女だし、そんな趣味もないわ」
靈奈が札を取り出した。
「いや……いや………!」
「おい、ここでやるな!
始末なら他所でやれ」
「そうね。神社で始末するわ。揚げ饅頭は奢るわ」
靈奈は青ざめて震える覚妖怪を荷物のように持ち上げ、妖怪の動きを封じる札も貼る。
「すまないな。感謝する。
最初に投げた串もこの妖怪か?」
「わかればいいのよ。
それじゃ、これから仕事だから」
靈奈は来た道を辿って飛び立った───
地霊殿を失い、人里で盗みを働こうとしたこいしは博麗の巫女、博麗靈奈につかまり、博麗神社の居間に転がらせられた。
「待ってなさい」
靈奈に言われこいしの心臓が縮み上がる。自分はどのように殺されるのだろう。
自分はもう既に心を読むことが出来ない。何をされるのかわからない。
視界の端にちゃぶ台の上の新聞が見える。地霊殿、古明地等の文字が記載されており、それを見てるとまた悲しくなり、涙が零れる。
「待たせたわね」
やがて、靈奈が戻ってきた。手には握り飯と湯呑みが乗った盆がある。
「手、出して?」
靈奈がこいしに近寄り優しく告げるが、こいしは泣きながら首を振る。だが、逆らったらもっと痛い目に逢うと思って手を差し出した。
すると、靈奈はこいしの手首に刺さったままの封魔針を抜き取り、鮮血が流れる手首を押さえた。
「痛くなくなった?」
痛くなくなるわけがない………だが、なぜか痛みが無くなっていた。
「………!?」
靈奈が手を退けると、針に貫かれていた跡までもが消えていた。
「ごめんなさい。痛かったわよね。はい。食べなさい」
靈奈はこいしに握り飯と湯呑みが乗った盆を差し出した。
「………」
こいしはそれを受け取ることが出来ない。博麗の巫女が妖怪に手を差しのべる筈がない。
「大丈夫よ。毒なんて入ってないわ。あなた、覚妖怪でしょ?疑うなんてことはしないはずよ」
「………読めないの」
こいしは俯いて呟くように言った。
「えっ?」
「読めないの。心。私もう読めないの………」
ポロポロ泣きながらこいしはそう言葉を紡ぎ出す。
「それってどういうことかしら───?
あっ、あなたの眼!」
靈奈は覚妖怪であるこいしの第3の眼の異変に気付いた。
「閉じているわ。どうして…」
「わからない…いつの間にか眼が開かなくて、心が読めなくなって………」
「そう。でも、私は嘘はつかないわ。盛ったりなんかしていない」
真摯な表示の靈奈。こいしはその表情から、握り飯に手をつける。
「うん。食べるよ…」
靈奈はその様子を見ていたい所ではあったが、食べにくいだろうと気を使って放り出した新聞を再び開いた。新聞に記載されている興味があるが指したことの無い大将棋の棋譜をただじっと眺める。
こいしの食欲は凄いもので、幾時もしない内に握り飯とお茶がこいしの胃の中に入ることとなった。
「………ぐすっ」
こいしのそんな嗚咽を聞いて靈奈は顔を上げる。
「どうしたの?」
「………うれしいの。私、物を盗もうとした妖怪なのにこうやって助けてくれて」
涙で袖を濡らすこいし。
「事情があるんでしょ?それに、別に人間に直接の危害を加えようってわけじゃなさそうだから」
靈奈はそんなこいしをそっと抱き締めた。まだ露出度の低い巫女服に包まれた靈奈の体温がこいしに伝わる。
「ぐすっ、うぇぇぇぇん………!」
そんな靈奈にこいしは感極まって大声を上げて泣き出した。こいしの小さな体が震える。巫女服が濡れ始めるのがわかる。それでも靈奈はだまってこいしを抱き締め続けた。
やがて、こいしが泣きつかれて眠りにつくと、靈奈は自分の布団に寝かせる。もう夕刻過ぎだ。
「………自分のご飯作ろ」
靈奈が厨房に立とうとすると、すぐ後ろに2つの強い気配を感じた。
「………何のようかしら」
振り向かずに答える靈奈。
「偽善者ね」
背後の声が靈奈に対してそう言った。
「靈奈。お前、こんなことが許されると思っているのか?」
「情状酌量の価値があるわ」
そこで靈奈が振り向いた。傘を担いだ金髪の妖怪の賢者、八雲紫とその式がいた。
「博麗の巫女の仕事は妖怪に情状酌量を与える事じゃないわ」
「無闇に殺せってこと?」
「ええ。そうよ。特にどんなに小さなものにしても人間に危害を加える悪い子にはね。それが秩序よ。
靈奈。秩序ってのはいつも真っ赤な血に塗りたくられて成立するものなのよ」
紫は小さな子供に対して説明するかのような口調で靈奈に解くが、靈奈は応じようとはしない。
「そんな秩序いらないわ」
「いい加減にしないか靈奈!
貴様のやっていることは、気が向いたからその妖怪を助けたに過ぎない。人間の敵を助けて人間を不安にさせているだけだ!」
「靈奈。私も藍も人間じゃないわ。だからこそ、お互いの勢力の均衡を保っているの」
「………でも、ほっとけないわ。あの子、地霊殿の覚妖怪よ。あんた達もそれは知っているでしょう?」
「あの暗殺事件か…」
「そのことについてもあの子に訊きたいことがあるのよ。
だから、ちょっとこのことは私に任せてくれないかしら。悪いようにはしない」
靈奈は真っ直ぐに二人を見つめる。やがて紫は折れた。
「わかったわ。あなたが言うなら何かわかったのね。信じるわ」
「紫様!」
「行くわよ藍」
紫がスキマを展開して藍と共にその中へと消えていく。
靈奈はこいしが眠る部屋をちらっと見たあと、台所へと向かった。
「………ん」
朝、こいしは博麗神社で目を覚ました。昨日、自分は人間に危害を加えた妖怪でありながら巫女に助けられた。
「お姉ちゃん…」
無意識に、姉を呼ぶ。だがもちろん、今までと同じように姉は来ない。こいしは静かに布団を撫でた。隣には靈奈の布団があったが既に片付けてある。
「こいし。おはよう」
縁側から声をかけられた。こいしがそちらを見ると、巫女の袴と胸にさらしを巻いただけの靈奈がそこにいた。
「あ…おはよう………」
「よく眠れたかしら?」
「うん………」
「そう。ごめんねこんな格好で。ちょっと霊力の修業をしてたからさ。紫───この幻想郷の偉い人が裸に近い格好の方が効率がいいって言ってたんだけど………うそっぽいよね」
靈奈が巫女の小袖を着込み、緋袴の中にねじ込む。それでいいのだろうか。
「ああ、それでこいし。ちょっと───」
「靈奈!いるかっ!?」
外から突然声をかけられる。この声の主は知っている。
「藍」
「入るぞ」
スキマ妖怪の式が縁側に現れた。
「何しに来たのよ」
こいしの前で昨日のようなことを言うつもりなのだろうか。なら容赦はしない。
「そう身構えないでくれ。
なぁ、こいし」
「………」
と、藍が寝起きのこいしに声をかけた。
「………あなたは、橙の」
「知り合いなのかしら?」
「ああ。だいたい一月ぶりだ」
藍が答える。
「昨日は済まなかったな。靈奈。私も式だからあの場ではあんな態度に出た」
「そう………
それで、何のようかしら?」
「閻魔が朝方こちらに来た。どうやら地霊殿は怨霊に占拠されているらしい。めざめ殿の不在から地底を統べる者もいないため、無法地帯になりかけているとのことだ」
「………お姉ちゃんは?」
こいしがおずおずと尋ねる。
「まだ屋敷の中だそうだ。生死は不明とのことだ」
「そう……」
こいしは顔を伏せてか細い声を上げる。
「それで、何の用なのかしら?報告に来ただけ?」
「違う。地霊殿を解放してほしいんだ」
藍が靈奈に向かって頭を下げる。
「……それ、あなた個人の依頼じゃないわね」
「鋭いな。私が依頼人ではない。地底の組合員によるものだ」
「そう。今から地底に行けってことね。遠いわね。近所に地底への大穴があけば嬉しいんだけど」
「バカなこと言うな。地下の灼熱地獄を管理するものが気が狂ったりしない限りありえん。
頼んだぞ」
「わかったわ。こいしも来るかしら?」
「うん。もちろん」
その後、軽く支度を済ませ、地底へと二人は向かった。
地底の橋へつく。
「お待ちしていました。博麗の巫女殿」
橋ではリカント族の女が一人、二人を待っていた。
「あなたは?」
「見ての通りリカント族です。古明地めざめの側近をしていました」
「エレナ!」
と、そこでこいしがリカントの女に抱きついた。
「エレナ……エレナ……会いたかったよぉ………」
「私もですよ。こいし様」
リカントの女はこいしを抱き締めてやる。
「なついてるわね」
「ええ、まぁ。
それで、話は八雲藍から聞かれましたか?」
「ええ。聞いたわ」
「では、こちらへ」
リカントの女に連れられ、二人は地霊殿の豪華な酒と料理の並ぶ料亭の一室に案内された。
「ふぅん…」
何か言いたげな靈奈。だが、それを飲み込み、ホスト、いや、ホステスの向かいに座った。
「よく来てくれたな。靈奈」
「………萃香」
上座に座る小さな百鬼夜行、伊吹萃香は靈奈に微笑みかけた。
「あんたが依頼人かしら?」
「ああ。そうだとも。ほら、注ぐぞ」
「あなたはいつから地底の組合員になったのかしら」
「権力が通じる場所なら何にでもなれるんだよ。ほら」
萃香が徳利をつき出すので靈奈はお猪口を差し出す。匂いだけで高級品だとわかる逸品だ。
「さぁ、飲むんだ靈奈」
「私は賄賂は受け取らない主義よ」
「知ってるよ」
その返事に満足したのか、靈奈はお猪口の酒を煽った。アルコールが利いていながらも穏やかな味わいが靈奈を包む。強い酸味と甘味のあとに立ち上る柔らかい苦味がなんとも心地よい。
「……まぁまぁね」
「だろう?こいしもどうだ?」
萃香が勧めるがこいしは首を振って辞退した。
「そうか………それで本題だ。靈奈」
萃香の顔が真剣なものに変わる。
「ここ一月、何人かの侠が地霊殿を解放しようと、地霊殿に向かっていった。妖怪、天狗、河童、はてまた鬼、天人までもが地霊殿を解放しようとした。
だが、戻ってきた者は一人もいない」
「………」
「先日なんかはあの───」
ガラッ
萃香がいいかけた時、障子張りの襖が開いた。
「あなたが博麗の巫女ね……?」
金髪に緑の瞳、尖った耳の女。彼女は──
「パルスィか……」
「お願い……!」
席へ乱入してきた水橋パルスィが靈奈の手を取り、絞りだすように告げた。
「勇儀を助けて!お願い……!」
緑の瞳は涙で濡れ、薄い肩が震える。
「ああ。先日、あの星熊勇儀が地霊殿へ向かって、同じく今行方不明だ」
「あの星熊勇儀が!?」
「ああそうだ。そこのパルスィの恋人であり、私の友人でもある。靈奈。どうか勇儀と、古明地さとりを救出してくれ。二人とも地底の要人だ」
と、そこで萃香は手をついて、人間の靈奈に頭を下げた。
「私からもお願いするわ!お願い!勇儀を助けて!」
泣きながら頭を下げるパルスィ。靈奈は肩を竦めて告げた。
「こんな席を用意させられて、しかも鬼の頭領に頭を下げられちゃあ首を横には振れないわよ」
「そうか!じゃあ……!」
「しばらく神社を留守にするわ」
「そうか!やってくれるか!
さぁ、呑んでくれ!」
萃香が靈奈に酒を勧め、それからは真面目な席だった筈がすっかり宴会モードとなってしまった。
珍しく素面だった萃香はすっかり出来上がり、パルスィは勇儀への恋慕を泣き上戸に語りながら潰れていた。
「靈奈さん」
ガラッ。と再び襖が開く。あのリカントの女だ。
「そろそろ宿に行かれた方が宜しいかと」
「うー…そうかもね………」
それを聞いてこいしはほっとする。こいしもこの宴会を切り上げたかったのだ。
「宿に案内いたします。馬車を手配してありますので」
「助かるわ」
三人は外に停まっていた馬車に乗り込む。
リカントの女のお叱りの言葉を受けながら馬車に揺られ、宿に着いた。小さいながらも地底の地熱を利用した温泉付きの民宿だ。
「温泉ね……」
少し高くてもいいから地上人に温泉ツアーでも提供したほうがいいんじゃなかろうか。
こいしと共に温泉に浸かりながら靈奈はそんなことを考える。他の客はいない。まさか貸し切りなのではなかろうか。
幻想郷の地上には温泉がない。地底のさらに地下の灼熱地獄を管理する者がいるため地上に温泉が上がることがないらしい。
「地霊殿も温泉なんだよ!」
「そう……
でも地上も井戸水湧かすから似たようなもんかもね」
そう思うとこにしよう。
「でも、もう少し綺麗だったかな……。地霊殿のほうが」
ポツリと言うこいし。
「ミモザちゃん──地霊殿にいた竜族のメイドなんだけどね、その子によく背中流してもらったなぁ……
ディアボロスの子と付き合ってたんだよその子」
「ふうん……そういうのアリだったのね。地霊殿。イメージ変わっちゃうわね」
靈奈が上を仰ぐと湯気で曇る天井が見えた。
「うん!めざめお父さんがそういうのに厳しくない人だったから……」
「いい当主だったのね」
「うん。いい当主で…いいお父さんだったよ!地霊殿の人にも頼られて……うえぇぇぇぇぇん!!」
「こいし!?」
突然こいしの声が泣き声に変わったため靈奈が慌ててこいしのいる方向を見やる。
「お父さん……お父さん……お父さん……」
温泉に浸かったままこいしは泣きじゃくっていた。
「こいし!大丈夫だから!さとりは助け出すから!」
靈奈がこいしに近寄り、今度は肌で直接こいしを抱き締めた。温泉の温度とは違う暖かさをお互いに肌で感じる。
「さとりは生きている。大丈夫よこいし!」
「嫌」
すると、こいしは靈奈の胸の中ではっきりと拒絶の声を上げた。
「こいし?」
「お姉ちゃんは、さとりはお父さんを殺した。殺し屋を雇って殺した」
「ええっ!?そんな……」
靈奈は驚きの声を上げた。
とはいえ、靈奈も薄々わかっていた。覚妖怪という妖怪の事情やめざめ本人や萃香、勇儀、四季映姫等とは繋がりがある。地霊殿の状態もおぼろ気に掴んでいたのだ。
『ちょっと教育熱心過ぎるんだよなぁ。めざめの奴は。あれじゃ虐待だ』
萃香が溢していた。
『彼はいい人だけど、家庭の間では不器用だね。気持ちも理屈もわかるんだけどな』
勇儀もそんなことを言っていた。
『彼女の自分のされる"仕打ち"について彼女は彼に憎しみすら持っています。
それが爆発しなければいいのですが……』
閻魔が心配していた。
「もし、さとりを助けてもムダだから。さとりが生きてたら私はさとりを殺すから。
あんな奴お姉ちゃんじゃない」
「こいし!なんてこと言うの!やめなさい!」
バシッ!
その時思わず、靈奈は右手を振り上げてこいしの頬を張ってしまう。
「あっ───ごめん………」
「………っ!!」
こいしは驚いたように目をみひらいたが、やがて乱暴に浴槽から裸身を引き上げ、何も言わずに風呂場から出ていってしまった。
「……はぁ」
靈奈は右手で目尻を揉む。さとりも、こいしもお互いが幼すぎたのだ。
「かなり大変な依頼受けちゃったわね……」
こいしと顔を会わせないために、靈奈はもうしばらく温泉につかることに決めた──
「温泉、どうでしたか靈奈殿。
こいし様はお休みになられています」
ロビーには既にリカントの女が待機していた。こいしにも会っているらしくだいたいのことは分かっているようだ。
「肌がすべすべになったわ」
こいしのことは話に出さず、靈奈はリカントの女に応えた。
「それ、溶けてるんですよ」
「は!?」
リカントの女の言葉にすっとんきょうな声を上げる靈奈。
「温泉の酸で肌が溶けてすべすべになっているんです。拭いたり、乾いたら戻るでしょう?」
「………」
やっぱ地底ツアーを紫や慧音に提案するのはやめよう。靈奈はそう決めた。
「この後、地霊殿解放計画の打ち合わせを私の部屋で行います。あなたの部屋の向かって右隣です。あと、助っ人と称する方が来ていらっしゃるのですが……」
「助っ人?」
「書簡があります」
と、リカントの女は懐から書簡を取り出して靈奈に差し出した。
「……この家紋は」
靈奈はそれを封じるための密蝋に刻まれた刻印を見て、誰が来たのかを理解した。
「書簡を持った人は今どこに?」
「宿の外に…」
「わかったわ。すぐ向かえに行ってくる」
靈奈は浴衣のままエントランスにかけていった───
またまた登場オリジナル博麗。
霊夢の時代から??年前ということで博麗靈奈は私が東方に触れ始めたあたりのころの霊夢のキャラ。と勘違いしていたキャラをだいたいそのまま当ててみました。
妖怪退治をやっちゃう人間にも妖怪にも優しい巫女さん。んなアホな。
あんまりオリキャラ中心にしないようにしないといかんのですが、なんかオリキャラがよく喋ってるな…
ってか心理描写がかなり下手なんだよな…なんとかしなきゃ。
※こいしは心を読めることで嫌われるのを避けるために第三の目を閉じた。というのはちゃんと頭に入れております。
オリキャラ先祖はもうやんないようにしよ………
IMAMI
作品情報
作品集:
22
投稿日時:
2010/12/22 09:08:53
更新日時:
2010/12/22 21:28:06
分類
こいし
さとり
靈の字はなんか字面が悪いね。
話は東方だと思わなきゃ面白い。
リカントとかディアボロスとか苗字がほぼ漢字の
地霊殿メンバーの中にいるともの凄い違和感でしょうがないです。
種族名です
まぁ結構オリキャラ多い気はするけど、普通に理解出来る程度の人数だし、ベースが東方だから問題ないと思うよ
次は後編かな?期待しながら待ってます
この時の博麗の巫女は霊夢から何代前だろうか?
いろいろと現在の幻想郷を暗示させる描写が心憎いです。
オリキャラも悪くないです。心理描写が下手?登場人物の挙動で心情が分かりますよ。
次でさとりとこいしが現在の性格になったいきさつが分かるのかな?
楽しみに待っています。
他のオリキャラも欝陶しくない程度な盛り上げ役だし全然アリだと思いますよ
あとこいしが可愛かったから良し