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『意味の無い話』 作者: 十三
日が暮れて人々が眠りに付いた頃、ルーミアはミスティアの営む屋台の暖簾を潜った。
他に客は居なかった。ルーミアは空いている席の真ん中に座り、机の上で冷えた手に息を吹きかけ暖めた。
「いらっしゃいルーミア。今日は寒いね。」
「・・・みすちー、大変なんだ。」
「どうかしたの?」
「私、神のお告げを聞いたんだ。」
「へぇ。なんて言われたの?」
「驚かないでね。」
「驚かないよ。」
「じゃあ言うけどさ。」
「うん。」
「幻想郷は本当は存在しないんだよ。」
「・・・・。その神ってどんな格好してた?」
「いや声だけが聞こえたの。」
「何時?」
「寝てる時。」
「ルーミア、それは夢よ。」
「いや、本当なんだって。」
「幻想郷が存在しないなら私達は今何処に居るのよ。」
「私達はね、人間の書いた文章の中に居るのよ。」
「なんだと。」
「そして今誰かがその文章を読んで私達の姿を画面越しに想像しているのよ。」
「可笑しな夢を見たんだね。」
「だから夢じゃないんだって。」
「じゃあさ、神はなんでルーミアにそんな事を教えたのよ。」
「きっと私が選ばれた存在だからよ。」
「そんな馬鹿な。」
「お告げにはまだまだ続きがあるの。」
「・・・どんな?」
「幻想郷はね、人の数だけ存在しているの。だから、私やみすちーも人の数だけ存在している。」
「待った。人の数だけ幻想郷がある?じゃあ井戸の中とかに別の幻想郷があるの?」
「そうじゃない。人の頭の中にあるんだ。」
「じゃあ外の世界の人間に私達は作られたって言うの?」
「そう。でも外の世界っていうのは結界の外じゃない。それよりもさらに外の世界なの。」
「それじゃあ私達は物語の中の登場人物?」
「大正解!そうなんだよ〜。」
ミスティアがコップに熱い日本酒を注ぎ、ルーミアに差し出した。外では少しずつ雪が降り始めた。
「あんたの話しはなかなか面白いけど、それが現実で起きているとは思えない。」
「だからこれは現実じゃないんだって。いい?さっきから雪が降ってるけどさ、
これはこの物語の作者が気まぐれで降らせただけなの。」
「なら今私がお酒を注いだのも作者の気まぐれ?」
「そのとおり。さすがはみすちーだね。」
「この物語は誰に読まれてるの?」
「それは分からない。だって、作者がこの物語を書いている時は誰に読まれるかなんて想像もできない。
確かなのは、人間に読まれているって事。」
「外の世界には妖怪は居ないの?」
「わからない。けど、居ない事を証明することは難しい。」
「じゃあ神の正体は作者だ。」
「多分ね。」
「じゃあこの物語は作者や読者について登場人物の視点で考える物語?」
「いや、もっと試験的な物だと思う。」
「ルーミアはきっと小説家になれるよ。」
「・・・もう、信じて無くても話す。話さないと気がすまない。」
「わかったわかった。それで、神がお告げはもうおしまい?」
「いや、まだある。作者は、この物語に制限時間を作っているんだ。」
「詳しく。」
「この物語を11時までに完成させるつもりらしいの。」
「今は12時過ぎだけど。」
「外の世界はまだそこまで行ってないはず。」
「じゃあさ、11時になったら私達は消えるの?」
「そういう事になる・・・・。」
ルーミアは熱い酒を少しずつ喉に流し込んでいく。
「あとどれ位で私達は消えるの?」
「うーん、きっとまたお告げがあると思う。」
「それまで何してる?」
「おしゃべり。」
「この物語は何時から始まったんだと思う?」
「みすちーはさ、私が来る前なにをしてた?」
「お酒を暖めてたけど。」
「きっとそれこそ、作者の気まぐれよ。この物語は私が店に入った時から始まったの。」
「じゃあ、あんたが来る前は?」
「なにもなかった。」
「私には、あんたが来る前の記憶がある。」
「詳しく思い出せる?」
「・・・・私はお酒を暖めていた・・・・。」
「その前は?」
「・・・ハッ・・・。」
「ねっ。」
「待って、今思い出した。散歩をしていたんだった。」
「不自然だね。きっと作者が適当に考えたんだよ。」
「散歩の前に何をしていたか思い出せない。」
「作者が考えてないからよ。」
「じゃあ私達は本当に消えちゃう?」
「うん。11時になったらね。」
「あとどれくらい?」
「それが分からないんだって。教えてくれないんだよ。」
「明日の11時とか一年後の11時だったらまだまだ時間があるよ。」
「うーんそうだねぇ。でも・・・。」
「でも?」
「散歩していたって言う適当な理由はきっと時間が迫っているからだと思う。」
「・・・・どうしよう。」
「どうすることもできない。こういう物語なんだから。迫る時間に私達が怯える物語なんだよ。」
「じゃあ怯えるのを止めよう。」
「そしたら物語の主旨が変わる。・・・・いや作者が気まぐれで書いているんなら、
そもそも主旨なんて無いのかもしれない。」
「私達の居る意味って・・・。」
「ただの暇つぶしか、もしくは・・・・。」
「もしくは?」
「きっと作者は今頭に銃を突きつけられているんだ。この物語を書かないと殺すと言われている。
だから適当でもなにか書いているんだ。」
「へぇー面白いね。作者はどんな人なのかな。」
「わからない。でも・・・きっともうすぐ終わる。」
「そうなんだね・・・・。」
「ちょっと寂しいね。」
「ルーミア来てくれてありがとう。」
「みすちーこそ私の話しを聞いてくれてありがと。」
「別の世界の私達は何をしてるのかな?」
「さぁね・・・でもきっと平和に暮らしているんだろうな。」
「いいなぁ。きっと自分達の世界が
神のお告げがあった。私の人生は11時で終わってしまうらしい。
私は最後に短編小説を書くことにした。
この悲しみを共感できる相手は彼女達しか居ないのだから・・・・。
十三
- 作品情報
- 作品集:
- 22
- 投稿日時:
- 2010/12/23 14:26:44
- 更新日時:
- 2010/12/23 23:26:44
- 分類
- ナンセンス
怖い……
それはさておき中途切れなあたり若干の怖さを感じますね。
しかしこういうのもいいな
しかし面白い