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『東方夢見島 第38話』 作者: ぐう
遥か遠くの彼女の故郷、夢への結界破る術なく。
力の増しゆく悪夢の主、全ては彼女の動きに委ねて。
目覚めし男もまた外の者、見知らぬ世界で彼はこれから・・・
東方夢見島 第38話「魂の歌と眠りの骸(むくろ)」
「これで楽器を六つ揃えたようぢゃな、ホッホウ」
「はい。次は山の上と聞きましたが・・・」
神殿のすぐ近くの丘で、フクロウはトリルを待っていた。
「お主も知っての通り、魔物たちは風のさかなの目覚めを恐れておる。風のさかなが目覚めれば、奴らも消えてしまからのぅ」
「・・・・・・」
「ぢゃが、いくらここが夢の中の世界とはいえ、魔物の力は現実ぢゃ。いずれ島中を支配し、邪魔な者を消すぢゃろう」
「ということは魔物からすれば邪魔な者って、私のことですよね?」
フクロウは顔を少ししかめて、話を続けた。
「・・・いや、お主だけではない。今は小手調べ程度のことしかせぬが、やがては島の人々にまで手を下すやもしれぬ」
「ほ、本当ですか!?」
「この島を悪夢で封じる黒幕、そやつが日に日に力を増しておる。もしそやつがその力を開放することがあれば・・・ということになるのも時間の問題ぢゃ」
闇の彼方で力の増幅をしているという敵の総大将。今まで自ら動かず、手下のデラルをけしかけてきたことを考えれば、十分に納得がいく話である。
それにいずれは消えてしまうとはいえ、島の人々にまで手を下すなんて真似は是が非でも阻止しなければならない。
「一刻を争う事態ですね。それで、山の上で私を呼んでるというのが・・・」
「ここからは崖で見えぬが、遥か北東の山頂に高くそびえる塔がある。次はそこなのぢゃが、その前に『空飛ぶニワトリ』の謎を解きなされ」
「『空飛ぶニワトリ』?」
フクロウの口から出た意味深なキーワード『空飛ぶニワトリ』。ニワトリならメーベの村のあちこちにいるのだが、それらと関係があるのだろうか?
羽ばたくフクロウを見送ると、ひとまずメーベの村へと向かうことにした。
メーベの村はいつも通り明るく平和で、いずれ魔物が攻めてくるとは思えないほどだった。
「コケッ、コッコッコココ」
「この子が急に空を飛べるようになったりとか・・・なんてことはないわよね、あはは」
村のあちこちにいるニワトリを一羽一羽じっくり見て回るトリルだが、どれもこれも見るからに普通のニワトリ。
草や虫をついばんではひょこひょこと動き回り、とても空を飛びそうな感じではない。
「あらトリル、今日はニワトリと遊んでるのね」
「マリン、ちょうどよかったわ」
ニワトリの観察兼戯れをしていると、後ろからマリンが声をかけてきた。
トリルは思い切って、空飛ぶニワトリについて尋ねることにした。
「空飛ぶニワトリ? ええ知ってるわ、こっちよ」
「えっ、マリン知ってたの!?」
『灯台下暗し』とはいったもの。まさか自分の身近な人が、自分の探しているものを知っているとは・・・
ひとまずマリンの後を追ってみることに。
「あれ、ここっていつもの場所だけど?」
マリンに案内されてやってきたのは、いつも彼女が歌っている風見鶏のある広場。
ここのどこが、空飛ぶニワトリに関係するのだろうか。
「ふふふっ、風見鶏をよく見て」
マリンは笑顔で答え、トリルは言われるがままに風見鶏に目をやった。
よく見ると鶏の台座には何か文字が彫ってあり、それはこう読むことができた。
『空飛ぶニワトリ、ここに眠る』と。
きょとんとした顔で後姿を見るマリンを背に、トリルは愕然と肩を落として村の東へ出た。
確かに探していた空飛ぶニワトリの足取りをつかむことはできたのだが、既に死んでしまっていたのではどうしようもない。
わざわざ案内してくれたマリンには申し訳ないのだが、亡き骸にあったところでどうすればよいのか・・・
「はぁ・・・とりあえずおじいさんから何か知恵を借りようかしら・・・」
いつまでも気落ちしていても仕方ないのだが、探し物が途絶えた今、これからどうすればいいのかわからない。
人に話を聞くと何かわかるかもしれない、トリルは近くにある電話ボックスからうるりらじいさんに電話することにした。
「もしもしうるりらじゃ。トリルちゃん、どうしたんじゃ?」
「はい、実は・・・」
トリルはこれまでのことを話した。
「なるほどのぅ。確かにわしも若い頃は何度か見たことがあるのじゃが、何せニワトリはそこまで寿命が長くない。それも30年も前の話じゃからのぅ」
「そうですか・・・」
「それにあのニワトリは山の上に住む男が飼っておって、彼の話だと突然変異か何かで生まれた可能性が高いそうじゃ。じゃから今そんなニワトリが生まれるなんて話は、奇跡でも起こらない限りありえないかもしれん」
「ですよね・・・はぁ・・・」
完全に気落ちしてしまうトリル。このままではニワトリの謎が解ける前に、力を増した魔物たちが襲ってくるのかもしれない。
するとトリルの気持ちを察してか、じいさんは別の話を持ち出した。
「そういえば君は、歌は好きかな?」
「えっ? す、好きですけど・・・」
「ウクク草原の南にある看板の迷路に『マムー』という変わったボーカロイドが住んでいるそうじゃ。気分転換に聴いてみるのはどうかの?」
「歌ですか、そうですね」
幸いトリルが立ち寄った電話ボックスは、その場所から北に位置するらしい。
地図を確認して南に向かうと、看板が立っているのが見えた。
「えーとなになに、『南の方向へ進め』? どういうこと?」
しかし看板に書いてあるのは場所の詳細などではなく、まるで指示のような内容だった。
仕方なく看板の通りに南へ進むと・・・
「うわっ、何これ?」
そこはちょっとした平地でありながら、あちこちに看板が設置されていた。
場所を案内するのならひとつあればいいのに、なぜこんなにたくさん設置される必要があるのだろうか。
とりあえずトリルは、近くにある看板を読んでみることにした。
「『もう一度最初からやり直し』? やり直しって何を?」
先ほどの指示に続いて、今度はやり直しという意味不明な内容。
意味もわからないままほかの看板も確認してみるのだが、書いてある内容はどれも同じだった。
「やり直しって言われても、意味がわからな・・・あら『東の方向に進め』って書いてある」
それは最初に読んだ看板の真南に位置する場所にある看板で、最初に読んだ看板と同じように指示が書かれてあった。
その時、トリルはふと閃いた。
「もしかしておじいさんが言ってた看板の迷路って、この通りに従えっていうことなのかしら」
最初にあった看板の指示、そしてここが『看板の迷路』と呼ばれる辺りに何か秘密があるのかもしれない。
トリルは順繰りに看板を見て回ることにした。
「あっち行ったりこっち行ったり・・・あー目が回る・・・」
看板の指示通りに歩いて回っていると、同じ場所を巡回するため目が回ってくる。
それでもなんとか歩き続け、ようやく最後の看板の前に到達した。
「これが最後のはず・・・えーと『お見事、ご褒美はあちらです』。あの階段の下かな」
最後の看板はゴールのようで、小さな水溜りにさっきまでなかった階段が現れていた。
マムーという人のことも気になるが、今は先に階段の下を確かめることにした。
「ここに何か・・・あっ、誰かいるわ」
階段を下りてゆくと、そこは地下の空洞のようで、奥に誰かいるのが見えた。
そこには少し大きめのカエルが2匹と、どこかの王様のような出で立ちの巨大なカエルがいた。
「ゲロゲロ、客なんて久しぶりじゃねぇか」
「こんにちは、私はトリルっていいます」
「礼儀正しい嬢ちゃんだな。オレっちはマムー、この辺りで知らない奴はいねぇボーカロイドだ」
どうやらこの巨大なカエルこそ、じいさんが言っていたボーカロイドのマムーらしい。
人ではなくカエルだったのは予想外だったのだが。
「昔はある国で悪さしてたもんだが、変な一家にこてんぱんにされたもんでよぉ。思えばあの時のオレっち、相当とがってたもんだぜ」
「兄貴、お客さんの前ですぜ」
「おおすまねぇ。そうだ嬢ちゃん、お前もオレっちの歌を聴きにきたのかい?」
「は、はい・・・」
「チッチッチッ、オレっちバンドは安い仕事はお断りだぜベイビー。まぁ一曲300ルピーってとこだな」
「さ、300ルピー!?」
思わず目が飛び出そうになる額を聞かされるトリル。一曲歌うのに、普通はそんな金を取るものなのだろうか。
しかしそれだけ高い金を払ってまで聴いてみる価値がある曲なのかもしれない。
「わかりました、お願いします」
「オッケイ、確かに受け取ったぜ! いくぜヤローども!」
トリルからお金を受け取ると、マムーとカエルたちは歌い始めた。が・・・
あ・・・ありのまま今起こったことを話すわ・・・
私は300ルピーを払ったと思ったら、カエルたちの歌を聴いていた
何を言っているのかわからないと思うけど、あの間私の耳もどうなっていたのかわからなかった
不協和音とか耳レイプとか、そんなチャチなもんじゃあ断じてない・・・
もっと恐ろしいものの片鱗を味わったわ・・・
「センキュウっ、魂を全快にするこの曲を聴いてくれてありがとおっ、ゲロゲーロ!」
「兄貴、お嬢さん完全に硬直してますぜ」
歌が終わった後、彼らの目の前には完全に固まっているトリルの姿があった。
今回はカオス・・・もといカエルのソウルです。
このシーンを動画で再度見てたら目と耳が痛くなりましたw
マムーさん、夢の世界(サブコン)の次はまた夢の世界(コホリント)ですかw
ぐう
- 作品情報
- 作品集:
- 23
- 投稿日時:
- 2010/12/30 01:56:22
- 更新日時:
- 2010/12/30 10:56:22
- 分類
- 東方夢見島
剣で切りまくればいっぱい出てくるよ!
コケコココケコココケコココケコココケココ(ry