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『逃げる魔理沙、追う女』 作者: NutsIn先任曹長
魔理沙は、走る、走る、走る。
女は、追う、追う、追う。
魔理沙は、女から逃げる。
女は、魔理沙を捕まえようとする。
魔理沙と、
女の、
距離は、
縮まりつつあった。
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魔理沙は香霖堂上空に、箒に乗って飛んできた。
魔理沙は香霖堂店主の森近霖之助と、とりとめの無い話をしながら茶でも飲み、
あわよくば、めぼしい物を無期限借用しようと考えながら地上を見下ろした。
店から誰かが出てきた。
珍しい。香霖堂に『お客』が来るなんて。
魔理沙はその奇特な人物を見ようと、香霖堂から少し離れた場所に着陸した。
その人物は、和装の女であった。
頭から手ぬぐいを被り、その端をくわえておりよく顔は見えないが、
相当の美人のようだ。
魔理沙は、その美女と目があった。
僅かコンマセカンドのことであった。
魔理沙がその場から逃げ出すことを選択するのに十分な時間であった。
魔理沙は、恐怖に顔を引きつらせながら、可能な限りの速度で飛行した。
あの女。
魔理沙を見て、
確かに、
にたり、と嗤った。
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小一時間ほど、魔理沙は幻想郷上空を我武者羅に飛び回った。
長時間の飛行で恐怖が薄らいだか、頭が冷えたか、
魔理沙は友人に助けを請うことを思いついた。
魔理沙は、友人の中でも最強を誇る者の元に向かった。
魔理沙は博麗神社に辿り着いた。
魔理沙は素敵な賽銭箱に目もくれず、居住部に向かった。
良かった。
縁側には、幻想郷の最強者が、なんと三人もいた。
楽園の素敵な巫女、博麗霊夢はお茶を飲んでいた。
境界の妖怪、八雲紫は霊夢にしだれかかってセクハラまがいのちょっかいを出していた。
小さな百鬼夜行、伊吹萃香は霊夢の膝の上に座り、はしゃぎながら瓢箪の酒と湯飲みのお茶を交互に飲んでいた。
魔理沙が救世主三人の元に駆け寄ろうとした時、
ちゃり〜ん。
ぞくり。
魔理沙は後ろを振り向いた。
魔理沙の位置からはよく見えないが、あの女が素敵な賽銭箱に小銭を放った後、手を合わせているようだ。
女は下げていた顔を上げた。
ひっ!!
魔理沙は恐怖に竦み、霊夢達に助けを求めようとして、
何時の間にか縁側には誰もいないことに気が付いた。
食べかけの煎餅。
湯気を立てている湯飲み。
そのうちの一つは倒れ、転がりながら中身を零していた。
ころころ……。
ころ……。
がちゃん!!
転がる湯飲みが縁側から地面に落ちて粉々になった時には、
魔理沙は博麗神社を離脱していた。
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魔理沙は紅魔館の地下図書館に転がり込んでいた。
図書館には、館長のパチュリー・ノーレッジと彼女の忠実な司書である小悪魔の他に、
悪魔の妹、フランドール・スカーレットがいた。
最初は魔理沙に勝手に持って行った貴重な蔵書の返却を求めようとしたパチュリーであったが、
匿ってくれるよう哀願する彼女の尋常でない様子に、しばしの滞在を許可した。
ようやく落ち着いた魔理沙は、小悪魔が淹れてくれた紅茶を啜って一息つき、
フランとなぞなぞ遊びをしたりして、穏やかな時間を堪能した。
平穏は、紅魔館の当主、レミリア・スカーレットが図書館にやって来たことで、脆くも崩れた。
レミリアはパチュリーに二言三言なにやら告げると、パチュリーは大きな水晶玉を持ってきて、
そこに紅魔館正門のライブ映像を映し出した。
あの女が、
門番の紅美鈴から会釈を受け、
メイド長の十六夜咲夜の案内で、館内に入っていくところであった。
勝手知ったる他人の家。
魔理沙は、図書館の本棚の一角にある隠し扉を開け、
現れた避難用の抜け穴を、その本来の目的で使用した。
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魔理沙は、今度はどこに逃げようか考えていた。
妖怪の山の麓の川の側に住む、河童の河城にとりの所はどうか?
彼女は人間を『盟友』と呼ぶ、魔理沙とも親しい親人間派の妖怪である。
駄目だ!!
魔理沙はかぶりを振った。
『あいつ』が本気を出したら、にとりは極めてまずい立場に追い込まれる。
霊夢達や紅魔館だって手出しできないのだから。
魔理沙は絶望的な面持ちで、ただ、闇雲に飛び回った。
気が付くと、魔理沙は太陽の畑に来ていた。
空を飛ぶにも気力や体力を消費する。
魔理沙は疲れ切って、花畑に大の字に寝転んだ。
荒い息遣いは落ち着き、日の光を浴び、花の香りに包まれながら、
まどろみにも似た無気力感を感じていると、
魔理沙の顔に影が落ちた。
魔理沙の顔を覗き込む、日傘を持ったチェック柄の洋服を着た、
最強最悪の存在。
四季のフラワーマスター、風見幽香。
魔理沙は、固まった。
魔理沙を見つめながら、獲物を見つけた肉食獣のように舌なめずりしていた幽香であったが、
急に振り返った。
魔理沙は目だけ動かして、幽香が向いた方向を見た。
あの女がいた。
幽香は、小物よりも美味そうな獲物を見つけたようだ。
幽香があの女に向かってゆっくり歩き出した。
魔理沙はそれを確認すると、疲労困憊の体に鞭打って、
今まで以上のスピードを出して飛翔した。
流石、幽香は幻想郷でも上位に属する最強者であった。
あの女を相手にして、
二時間、持ちこたえた。
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太陽の畑から逃げ出して数時間後、魔理沙は魔法の森に戻ってきた。
狭い幻想郷。
逃げるにしても隠れるにしても、あの女の息のかかっていない所など、人間が生きていけない場所ぐらいだ。
なら、ホームグラウンドである魔法の森なら、まだ何とかなりそうだ。
友人達や人助けをしてくれるような者達を頼るわけには行かない。
今回の逃避行で、彼女達はあまりにも無力だということが分かったし、これ以上彼女達に迷惑をかけるわけには行かない。
森をとぼとぼ歩きながら、奴が張っている可能性があるが、とりあえず自宅に帰ろうかと、ぼんやり考えていた。
魔理沙の歩みが止まった。
ご近所さんのことを思い出した。
魔理沙と親しく、例え恐怖を感じても、例えどんな仕打ちを受けようとも、その信念を曲げない頑固者。
魔理沙の顔は、見る見るうちに青くなった。
魔理沙は、七色の人形遣い、アリス・マーガトロイドの元へ疾駆した。
魔理沙は、アリス邸の玄関ドアを蹴破るような勢いで開け放った。
間に合った。
魔理沙の最悪の予想が、
今まさに、
現実のものとなる寸前であった。
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「その手を離せ!!」
魔理沙の怒声が室内に轟いた。
女は、アリスの顎に手を当てて、彼女の顔を上に向けてまじまじと見つめていた。
魔理沙の叫びに、女が手をどけるよりも早く、アリスが女の側を離れた。
「ま、魔理沙!?」
アリスは、尋常ではない魔理沙の様子に度肝を抜かれていた。
魔理沙は、愛用の獲物である八卦炉は懐に仕舞ったままである。
しかし、彼女からそれだけで女を八つ裂きに出来るかと思えるような怒気を放出していた。
が、しかし、女は魔理沙の怒りのオーラなぞ、春の麗らかなそよ風ほども感じてはいないようだった。
魔理沙は、この女には勝てないことは百も承知である。
だが、だがしかし、ここまでされては黙っていられなかった。
もう逃げるのはおしまい。
魔理沙は、女を問い詰めた。
「一体何のつもりだ!!
親父いいいいいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!」
この女は、生物学的に、確かに、紛うかたなき、人間の女性である。
だがしかし、
常識に囚われない幻想郷では、
女性同士で結婚も出来れば、
子供も作れる。
蛇足ではあるが、
男性同士でも同様であるが、
出産は帝王切開一択のため、
永遠亭が出来るまで、それは死と隣り合わせだったそうだ。
閑話休題。
魔理沙が叫んだ通り、
この女は、魔理沙の『父親』であり、人里の有力者であり、大店である『霧雨店』を一代で築いた実業家であり――、
魔理沙が毛嫌いしている相手である。
「ずいぶんと、ご挨拶じゃないさぁね、魔理沙」
「てめぇには十分すぎるくらいの最敬礼だぜ!!」
「世間の荒波に揉まれ、ちったぁお淑やかになったかと思いきやぁ、愛しの『お父上』になんてぇ口の利き方だい?
母さんが泣くよ」
「てめぇ程、母さんは泣かせてないぜ!!」
「あたしゃ、母さん一筋さぁね。他は、あ・そ・び、さ」
「だからって、子供だった私の目の前で、男女を問わず乳繰り合うことは無いだろ!!」
「あ……、ああ、悪い。あんときゃ、お前を連れていたことを、けろっっっっっと、忘れちまってねぇ……」
「こ、この性欲魔人があああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
魔理沙の『父親』である霧雨氏には、先に挙げた物の他にもう一つ、
巷では、性欲が無限であらゆる性技に精通した好色家として、浮名を流している。
曰く、霧雨店で商品の支払いが滞った者は、見目麗しい娘、或いは息子を連れて行かれる。
曰く、霧雨店で盗みを働いた男は容姿端麗の場合、その殆どが痔主となる。
曰く、恋人を寝取られた男が匕首を振りかざして霧雨氏を襲ったが、次の日、腎虚にされて発見された。
曰く、寺子屋では生徒達に、霧雨店に行く場合は必ず親同伴で、可能であれば護衛を連れて行くように指導されている。
曰く、ハクタクモードの慧音先生と霧雨氏が、CAVED合戦!!
等等。
上記の噂に加え、
人里での発言力、
各方面への莫大な寄付――例えば、異変被害の保証金や、博麗神社、自警団、寺子屋といった公共機関――、
及び霧雨店が牛耳っている妖怪との商取引――西洋の嗜好品や河童の発明品、幻想郷に無くてはならない酒類の供給等――、
遊郭で培った『兄弟』、『姉妹』達のネットワーク、
それらによって、霧雨氏は人間、妖怪を問わず、様々な影響力を持っていた。
魔理沙は、そんな『父親』の背を見て育った。
背中どころか、男女のまぐわいまで見せられた。
霧雨氏と顔を合わせると、魔理沙は吐き気を覚えた。身体が竦む。
『父親』を軽蔑し、反発して、実家を飛び出したのも納得できるだろう。
魔理沙は霧雨氏を見かけたら、即座に回れ右をして、逃げた。避けた。
霧雨氏は娘のつれない態度に、その豊満な胸の内を痛めた。
だが今回、霧雨氏は娘に用があるので会いに来た。蛇蝎の如く追い回した。
娘の立ち回り先は、とっくに調査済みだ。
香霖堂――。
師匠であり『初めての女性』である霧雨氏が訪ねたというのに、霖之助は相変わらず淡白な対応だった。
魔理沙が来たら伝言を伝えるように頼んで店を出たところで、魔理沙本人と遭遇した。
逃げる背中を見て、直接、魔理沙と話をしたくなった。
博麗神社――。
霧雨氏は、博麗の巫女によって磨き上げられた素敵な賽銭箱に小銭を投じて、娘との再会を祈った。
居住区に向かうと、魔理沙どころか、霊夢、紫、萃香まで逃げ出した。
金、食料、酒を提供するスポンサー様の寵愛を受けるのが、そんなに嫌か。
紅魔館――。
上物のワインや舶来の食器を入荷したので、霧雨氏は娘探しの途中、商談の為に紅魔館に立ち寄った。
メイド長に通された応接室には、主人の他に主人の妹が待っていた。
妹君は、どういうわけか霧雨氏を睨みつけていた。
人見知りする性質か。
霧雨氏は、どんな女性も男性もメロメロになる、好色そうな笑みをフランドールに向けた。
すると、まだ幼いせいか、フランは怯えた表情でレミリアの背後に隠れてしまった。
太陽の畑――。
最近、ここで行なわれる夜雀と騒霊のライブが好評だそうだ。
そう、飲みに行った八目鰻の屋台で、女将もやっている夜雀本人から聞いた。
魔理沙探しの途中、霧雨氏は出資の対象になるか、その会場を見にやって来た。
花咲き乱れる園。
どの花にも負けない美しさと気高さを持った、女性が一人、立っていた。
女性は微笑んだ。
霧雨氏も微笑んだ。
二時間後。
女性――風見幽香の庵。
寝室。
幽香は、ベッドで丸くなり、さめざめと泣いていた。
霧雨氏は、またご夫人を泣かしてしまったと、己の魅力とテクニックに恐怖した。
床に脱ぎ散らかされた衣服の中から、
霧雨氏は自分のものを拾い上げ、着込むと、
幽香に素晴らしい具合だったことを告げた後、魔理沙探しを再開した。
幽香は、霧雨氏が出て行った寝室のドアに枕を投げつけた。
羽毛の詰まった枕と木製のドアは、轟音を発して粉々になった。
魔法の森――。
直接、魔理沙の家で待たせてもらおうと分かれ道までやって来た。
一方に向かうと、魔理沙の自宅兼何でも屋の店舗がある。
そう、魔理沙お手製の立て看板が告げている。
霧雨氏はしばし黙考し、魔理沙の家と反対の道を往くことにした。
一度会っておこうと思ったのだ。
アリス・マーガトロイドに。
アリス邸――。
応対に出たアリスに、自分の名と用件を告げた霧雨氏は客間に通された。
家の外見、庭、内装、調度、客間内、そして出された茶菓。
霧雨氏は魔法使いの家だからおどろおどろしい物を想像していたが、
自身のセンスと商売人の鑑定眼の両方が、これら全てが好ましいものだと告げていた。
家は手入れが行き届き、若干少女趣味な落ち着いた小物類が飾られ、
人形の材料だろうか、資材が綺麗に整頓されていた。
以前覗いた娘の家は、魔女の家、というよりゴミ屋敷だったが……。
アリス自身がブレンドしたらしい紅茶と、手作りの菓子に舌鼓を打ちながら、
霧雨氏はアリスに好印象を持った。
さて、顔はどうだろうか。
霧雨氏はおもむろにアリスに近づくと、彼女の顎を右手の親指と人差し指ではさみ、自分のほうに顔を向けさせた。
アリスは何が起きたか分からない、といった感じで霧雨氏のなすがままにされていた。
霧雨氏がそうやって、アリスの顔を口付けが出来るぐらいの至近から観察していると、
「その手を離せ!!」
魔理沙の方から霧雨氏の元にやって来た。
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「で、親父、一体何のようだ」
嫌々ではあるが、ようやく魔理沙は霧雨氏の話を聞く気になったようだ。
霧雨氏は、娘が臍を曲げないうちに、端的に要件を告げた。
「魔理沙、アリスちゃんを幸せにしておやり」
魔理沙とアリスは数秒間、思考が停止した。
「な〜に、鳩が12番ゲージのOOバックを食らったみたいな顔してるのさ?」
「お、お義父様……」
「親父……、知ってたのか……?」
呆然とする二人に、霧雨氏は是と答えた。
「ああ、愛しの一人娘のことさぁね。何でもお見通しさ。
全く、こんな器量良しと婚約するなんて、あたしの血を受け継いでいるからかねぇ?」
「勘弁してくれ……」
霧雨氏の好色の遺伝を否定する魔理沙の口調には、先程までの険は無かった。
魔理沙とアリスは恋人同士である。
このことは、ごく一部の親しい者しか知らない、筈である。
その仲は深まり、つい最近、幸せな家庭を築くことを誓い合ったばかりである。
このことは、まだ誰にも知らせていない。
二人の指に嵌った真新しい婚約指輪が、二人の初々しさに華を添えていた。
「あの、お義父様……」
「なんだい、アリスちゃん?」
「私達の結婚を、お認め下さるのですか……?」
魔理沙は勘当同然の状態であったし、
アリスの実家は魔界の名門である。
結婚が認められなかったら、二人きりでひっそり暮らすことも具体的に考えていた。
「ああ。あたしも細君も賛成さ。それを伝えようと、幻想郷中そこの馬鹿娘を探し回ったよ」
「なら、それならそうと早く言ってくれれば良かったのに……」
「人の顔見てトンズラぶっこいたのは、何処の何方だい?」
「う……」
魔理沙は絶句した。
「まあ、魔法使い同士のカップルだ。これなら休止している魔道具部門を再開できるかねぇ」
「え……?」
「ほら、ウチで働いていた悪霊の姐さん、ふらりとどっか行っちまっただろう?
何も言わずに出てっちまったから、泣く泣く魔道具の商いを止める羽目になっちまった」
「それ、親父の魔法嫌いのせいじゃ……」
「あたしゃ、不誠実な魔法使いが嫌いであって、ボロい儲けを出していた魔法関係の商いは嫌いじゃないよ。
ったく、あんたの師匠は何考えてるのさ?」
「今頃それを蒸し返すのか!?
あの人ならこう言うよ。 『自分で考えな』ってね」
魔理沙は魔法の師である、自由気ままな大魔法使いのことを思い出していた。
「あの人は誰にも束縛されないって。魔界でも有名です」
アリスの耳にも、自分の母に匹敵する実力を持った大魔法使いの噂は届いていた。
「とまあ、そういうわけだからさ。あんた達も安定した収入は欲しいだろう。
子供何人作るか知らないけれど、銭はあって困るもんじゃないだろう。
こっから通いで良いから。別にウチに住む必要ないし、たまに顔出してくれりゃいいからさ」
霧雨氏からの素敵な結婚祝い。
魔理沙とアリスは、涙ぐんでしまった。
特に魔理沙。
毛嫌いしていた霧雨氏からの親の愛。
山葵を食べたみたいに、目頭にツンと来た。
「で、魔理沙、ちょっといいかい?」
「? なんだよ、親父? アリス、ちょっと待っててくれ」
「? 良いけど……?」
霧雨氏は魔理沙の肩を抱きながら屋外に出ると、
「あんたには、霧雨家の秘術を授けなけりゃならない」
「!?」
真剣な表情で魔理沙に告げた。
「魔理沙、お前には素質がある。お前ならきっと正しく使いこなせるだろう」
「親父……」
「修行の道は険しい。だが、お前ならきっとモノにできる!!
それはアリスちゃんの為でもあるんだよ!!」
「アリスにも関係があるのか!?」
霧雨氏は静かに頷いた。
「ああ、お前ならあたしの後を継いで、立派な二代目になれるだろう」
「親父が初代か!?」
「私がその人生で編み出した、霧雨流夜伽術!!
最初に、基礎の四十八手!!
その体で学ぶが良い!!」
「お、親父!? い、嫌!! 止めてぇ!!」
霧雨氏は、
人食い妖怪が跋扈する魔法の森で、
実の娘を押し倒し、
その体をまさぐり始めた。
ムアスタアアアアアァァァァァ、ス、パァアアアアアアアアアアァァァァァク!!!!!
霧雨氏に新たな伝説が生まれた。
娘のように、空を飛ぶ能力を得たそうだ。
溢れる閃光と共に、魔法の森上空を飛翔する霧雨氏の目撃談が、
人間、妖怪を問わず、語られることとなった。
魔理沙とアリスの結婚式に参加したアリスの親族は、
その噂を耳にして、
霧雨の家系は、かつて魔導に精通した一門の末裔ではないかと推測した。
空飛ぶ霧雨氏は、霧雨家に魔理沙が訪問したときによく見られたそうだが、
霧雨氏が『枯れた』と噂される頃から、ぱったりと飛ばなくなったそうな……。
衝動買いした『竹』で遊んでいたら、すっかり遅い時間になってしまいました。
今回は、恐怖と感動、蛇足の伝説の物語をお送りいたします。
2011年2月7日(月):東方の女性同士のカップルが許されるくらいですから、魔理沙の『父親』が女性でも良いではないか。
と、言うわけで、コメントの返事を追加します。
>幻想保査長殿
霊夢や紫が逃げ出す程ですから、この位のチート性能でないと。
>2様
Sなゆうかりんが手篭めにされたでござるの巻。
>3様
前半と後半のギャップをお楽しみください。
魔理沙には、呪われたジゴロの血が流れているのか、ご想像にお任せします。
>イル・プリンチベ様
魔理沙が恐怖を感じるくらいに嫌っているのですから、この位の下半身豪傑でないと。
NutsIn先任曹長
作品情報
作品集:
23
投稿日時:
2011/01/30 15:05:45
更新日時:
2011/02/07 01:21:38
分類
魔理沙
魔理沙を追跡する者
香霖堂に奴がいた
霊夢達が逃げた
紅魔館に乗り込んできた
幽香敗れる
アリスに迫る魔の手
明かされる真実
マリアリ
そして伝説へ
…幽香…
むっちゃ緊張してそしてワロタww
魔理沙のジゴロ体質は親譲りだったのか!まあ、マリアリが幸せそうで何より…でいいのかなw