目に涙を浮かべて、恐怖に怯える大妖精の姿がそこにはあった。
数人の――否。人ではない。およそグロテスクな形相の妖怪達が、数体、大妖精をぐるりと取り囲んでいる。
「嫌……」
怯え震えた声で大妖精が小さく呟く。
誰もそれに耳を貸さない。あるいは聞いていないのかも知れないし、そもそも耳など無いのかも知れない。
そんな妖怪達に囲まれて、何をされるか分からない、しかし自分が狙われていて、そしてこれから自分はそれらに何かされるのだと悟る。しかし大妖精に為す術はなかった。完全に囲まれ、後退るにも後ろにも妖怪が、腕をだらりと垂らして棒立ちしていた。
逃げ場はない。助けも無い。声をあげればあるいは誰かが駆けつけたかもしれなかったが、周りには大妖精と妖怪の他、一羽の鳥すら一匹の虫すら、何処にも居なかった。
暗闇の中、ただただ怯える他無い。恐怖で声も出ない。脚がすくんで動くことすらままならない。
「ヴヴヴヴヴァアアアァァァ」
声とも鳴き声とも取れぬ不気味な音を上げ、大妖精の後ろに陣取っていた妖怪が一体、沈黙を破り動き出した。
後ろから大妖精の両腕を掴み抑えつけ、それを振りほどこうとする大妖精のその力は、しかし妖怪を前に圧倒的に、絶望的に無力だった。
「嫌……ぁッ!」
叫んだつもりなのだろうか、しかし恐怖に怯えたその声は、か細く、弱く、そして虚しかった。
その一体の動きを合図に、他の妖怪たちも一斉に動き出す。一歩、また一歩と大妖精に躙り寄ってゆき、そして一体の妖怪の腕が、か細い大妖精の体に触れた。
「やめて……」
誰も聞かない。
腕と呼べるのかすら分からないそれが、大妖精の脇腹に、爪を立てて掴みかかった。
「触らないでよ!!」
「ヴヴ……ァガァァアアアアア!」
刹那、叫び声と共に、その腕は大妖精の体を、抉った。引きちぎるのとも違う。爪を、指を食い込ませ、それを掴んだまま、握りつぶすような形で、遠慮も躊躇もなく、抉り取った。
服は裂け、動脈には達していない、吹き出すまではいかずとも、しかし軽い血飛沫を上げ、服の裂け目には真っ赤な血が滲み、流れ、そして傷口からは真っ赤な血と肉と、遠慮もなく乱雑に引きちぎられズタズタに裂けた肌と、何本かは妖怪がまだ持っているのだろう折れた肋骨が露になっていた。
大妖精は叫んだ。痛み、苦しみ、何も考える余裕など無い。悲痛な叫びを上げ、しかしそれは誰の耳にも届かない。
引きちぎられた大妖精の肉を、妖怪は暫く潰れたような醜い目で長め、そして両手で掴んで引き伸ばしたりしてひとしきり遊んだあと、それを引きちぎって、片方を口に、片方を大妖精の方に放り投げた。
ぬちゃぬちゃと音を立て肉を食い、そして大妖精は、既にぐったりとした状態で傷口からだただらと血を流しながら、目の前に放り出された自分の肉片を見た。
欠けた肋骨の突き刺さった、血の色と肉のピンク色で、月明かりに照らされキラキラと光る肉片。それが自分の物だと、自分の一部だと、大妖精は思いたくはなかったし、思えなかった。
既に人の形をしていないそれは、ただの肉だった。
そして、他の妖怪たちも一斉に大妖精に掴みかかった。
ある者は肉を抉り、ある者はそのまま噛み付き噛みちぎり、ある者はか細いその脚をぐちゃぐちゃに蹴り潰し折り曲げた。
「ぅあぁぁああああああ!!」
悲痛な叫び声が虚しく響き渡る。
妖怪の大妖精への蛮行は続いた。
暫くして、大妖精は大声をあげなくなった。ぐったりとした状態で、虚ろな目をして地面に横たわっていた。体のあちこちで抉れた傷口から骨や肉や内蔵がが覗き、見るも無残な状態で、虚ろな目をして、血まみれでただ横たわっていた。動く力もなく、抵抗などもとよりままならない。声をあげる体力も気力も、もはや傷ついた大妖精には残されていなかった。
一体の妖怪が、ぐったりとした大妖精の腹を、思い切り踏みつぶした。
ぐちゃりと、骨と内蔵の潰れる音がした、そしてその部位からはまた血が滲み、妖怪はそこに手を触れると、服を引き裂きそのまま中に手を突っ込んだ。ぐちゃぐちゃと潰れた内蔵を掻き回し、そしてそのまま中の腹綿を引き摺り出した。
「ぐ……ぁ」
声にならない声で大妖精は苦痛に、痛みに呻く。
引き摺り出されたものはそのまま引きちぎられ、そしてやはり半分程食べた後、片方をを傷だらけの大妖精に、興味なさ気に放り投げた。
死んだように横たわり、しかし大妖精の心臓はまだその動きを止めてはいなかった。
妖怪と血と自分の肉片に囲まれ、服はズタズタに引き裂かれ血で滲んで真っ赤に染まり、もはやその原型を留めていない。
体の大半の血が流れでて、もはや意識も薄れ朦朧とし、何が何だか、大妖精には既に分からなくなっていた。痛覚すら麻痺し、あるいは神経が切れているのかもしれない。何も痛くない。何も感じない。
自分は今襲われている。きっとこのまま自分は殺される。そしてそれを止める手立てなど無く、だから私はこのままされるがまま体をぐちゃぐちゃに傷つけられ、そして――死ぬ。
そんな認識がうっすらと、ただあるだけだった。
妖怪の一体がぐったりとした、辛うじて人形を保っている程度の血まみれで傷だらけの大妖精を打き抱えた。
そして、いきり立った股間のモノを、ぐちゃりと大妖精の性器に無理矢理ねじ込んだ。
そしてまた別の妖怪は、大妖精の眼球を爪でぷつりと一突きし、そしてそれを眼球ごと引きぬいて、むき出しになった眼窩に股間のそれを、やはり無理矢理ねじ込んだ。
他の妖怪たちも同様に、各々ボロボロになった大妖精の体のいろんな部位を、自分の都合のいいようにぐちゃぐちゃと掻き回し、そしてやはりそのままそこにいきり立った棒状の肉をねじ込んだ。
ずちゅりと。ぐちゃぐちゃと。血で潤った肉の擦れる音がした。
その音は暫くの間ずっと、静かに、しかし激しく響き続けた。
そして、そのまま大妖精の体の中に、あるいは抉れた肉の表面に、顔に、体に、大量の真っ白でネバネバとした体液が放たれた。
服は見る影もなくその殆どが破れ落ち、殆ど全裸の状態で、傷と血と肉と、真っ白な液体が身体中にべったりと纏わり付いていて、そして、いつの間にか大妖精の心臓の鼓動はその動きを止めていた。
もはや原型すら留めていない、人の形すら保てていないそれは、既に唯の肉の塊と化していて、それはもう見るも無残な、ただの汚い肉片だった。
それからどれくらい経っただろうか。
これで何度目なのだろうか。
幻想郷の霧の湖で、小さな蕾が花開いた。
その花は何度も枯れ、そして何度も咲いた。何度も何度も。
これで何度目なのだろうか。
霧の湖で一人、いつの間にか大妖精はそこに居た。
ああ、またなのか。
これからまた私は――
「嫌……もう嫌……」
足元に咲く小さな花を、大妖精は思い切り踏み躙った。泣きながら、目に大粒の涙を浮かべて泣き叫びながら踏み躙った。何度も何度も蹴り潰し、躙り、地面は抉れ土は飛び散り、千切れ、裂け、バラバラになって地面に埋もれたその花は見る影もなく――
でもきっと何時かチルノが助けに来てくれるよ
良かったね大ちゃん
「血で潤った肉の擦れる音」と言う文章に惹かれました。
イラストが付いていると、なんか得した気分になりますね。
でもその救世主共々惨殺されて、さらなる絶望を味わうのでしょうね。
むしろ経験済みなのかも。そんな大妖精が好き。
終わりが無いのが終わり…グレート妖精レクイエム…
妖精が多く捕れれば食糧問題も性犯罪も一挙に解決出切るかもしれない。