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『もしもはたてがヤンデレだったら』 作者: ウナル
あなたは姫海棠はたてという少女をご存知だろうか。
妖怪の山に住まう鴉天狗で、念写の能力を持、あらゆる写真を自らのカメラにも映し出すことができる力を持つ。
その能力が故に家から出ることがなく周囲から“引き篭もり”“ヒッキー天狗はたn”と呼ばれているあのはたてのことだ。
もしも彼女がヤンデレで、あなたのことを好きで好きでしょうがなかったとしたら、いったいどうなるだろうか。
これはそんなヤンデレはたてのいる幻想郷での話である。
『はたてのストーキング@』
夜の道。
明かりもまばらな道をあなたは逃げている。
「はぁ……はぁ……っ!」
「うふふ。逃がさないよ。どこに行ったって私からは逃げられないんだから」
後ろからぴたりとついてくるのは姫海棠はたて。
顔のパーツを三日月のように歪めているのは微笑みだろうか。
セメントで固めたような笑顔のままはたてはあなたを追いかける。
「い、いい加減にしてくれ! オレは君なんか知らないし、好きでもない!」
「結婚したら大きな白い家に住みたいな。子どもは三人がいいかな。あ、もちろんあなたがもっと欲しいなら……ぽっ」
「ひ、ひぃ!」
ゴキブリやムカデ。あるいは汚物。あるいは腐乱した人間の死体。
それに類するおぞましい嫌悪感があなたを襲う。
堪らず逃げ出した。
とにかく、彼女のいないどこかへ逃げなければ。
「逃がさないよぉ。私からはぁ、逃げられないのぉ!」
「う、うわああああああああああああああああああっ!!」
〜〜数分後〜〜
「ちょっ……まっ……げほっ……おえっ……待って……た、たいむ…たいむ……!」
「あ、あれ?」
全身に汗をかき、はたては路上に転がっていた。
百年単位で引き篭もりを続けていたはたては、壊滅的に体力が無い。
人間でも足に自信がある人ならば十分に逃げ切れる。
うまく引き付ければ脱水症状で勝手に自滅するだろう。
「い、今の内に……」
「ま、待って……みず……お願いだから……みずを……」
ヤンデレするにも体力は必要なのだ。
はたてのストーキングA』
「どこに行っても逃げられないのよぉ。だって私にはこれがあるから!」
そう言ってはたては愛用の携帯カメラを取り出した。
はたての持つ能力、それは念写。
他のカメラが写した写真を自らのカメラにも映し出せる能力。
現在、カメラは天狗を中心に広まりつつある。
これを使うはたての目から逃れる術は――――ない。
「くすっ。見つけた。こんなところに隠れてたんだあ」
あなたを見つけ、はたては裂けるような笑みを浮かべた。
そして写真の場所へ向かい、その黒い翼をはためかす。
〜〜数分後〜〜
「ここどこ〜〜! 暗いよぉ〜! 怖いよぉ〜! おまわりさ〜ん!」
はたては幻想郷の森の中でさ迷っていた。
確かにはたての能力を使えば、相手の位置をある程度特定することはできる。
しかし、そこに実際に行くには当然ながら土地勘と方向感覚が必要となる。
引き篭りを何百年単位でしてきたはたてにはそのどちらもがない。むしろ、百年に一度レベルの方向音痴と言える。
「うああああ〜ん! 文〜! 椛〜! 誰か来てよ〜! 広いよぉ! 怖いよぉ! お家に帰らせて〜〜〜〜!!」
はたてはあなたの家から遠く離れた魔法の森の中で一晩中さ迷った。
これ以降、はたての引き篭もりがますます酷くなったのは言うまでもない。
ヤンデレするにも方向感覚は必要なのだ。
『はたてノック・ザ・ドア』
「こんにちは〜。郵便で〜す」
そんな声に言われるまま、あなたは玄関のドアを開けてしまった。
そこにいたのは姫海棠はたて。
「……来ちゃった……」
ドアの間に指を差し込み、はたてはあなたを見つめる。
幸いチェーンロックがあったため、中には入られてはいない。
だが、それを断ち切らんとはたてはチェーンに指をかける。
「?・・・なにこれ、ねえ?・・・・あけてよ?ね・・・あけてよ!」
「うわあ! やめろ! やめろ!!」
無我夢中であなたはドアノブを握る。
そして、思いっきり引いた。
ドアは閉められ、当然はたての指はドアと壁の間に挟まれる。
「――――――っ!!」
一瞬、はたての顔が鬼母のように変わった。
一秒の時間も惜しいとばかりに、あなたは鍵をかける。急いで寝室の布団の中へ潜り込む。
そうしてようやく高鳴る心臓を落ち着かせる。
〜〜数分後〜〜
辺りは妙に静かになっていた。
「……?」
不審に思ったあなたは再びドアへと足を進め、わずかな隙間から外を覗く。
「い……いた……いたいよぉ……」
はたては普通に指を押さえながら、地面にうずくまっていた。
見れば皮が剥けたのか、指からはわずかに血が出ている。
だが、どうみても痛がり方が大げさすぎる。これでは幼児と何ら変わらない。
「ど、どうしてこんな酷いことができるの!」
「いや、そう言われても」
涙目になりながら訴えるはたてにあなたは頭をかいた。
ヤンデレにも根性は必要なのだ。
『はたてマイ・ホーム』
「おらっ! ちゃっちゃと払うもん耳揃えて払わんかい!! こちとら妖怪退治の専門家やぞ! ああっ!?」
「も、もう少しだけ……もう少しだけ待ってください……!」
家に帰ったはたてを待っていたのは、この業界では有名な極悪高利貸“守矢金融”の者だった。
サングラスにタバコといういかにもな出で立ちをした早苗ははたてのケツを蹴りまわしながら、部屋の家具を引き倒していく。
「ちっ! 金になりそうなもんなんかまったくねえな! しけた部屋だぜ!」
「すいませんすいませんすいません!」
元々はたての経済状況はあまり良くない。
『花果子念報』という新聞を発行はしているが、売れ行きは芳しくなく、日雇いのバイトをしながら何とか生活しているに過ぎない。
ヤンデレになってストーキングにかまけていれば当然収入は無くなる。
そこではたてはついに闇金に手を出してしまったのだ。
「いやあ。困ったねえ。早苗」
「そうですね。諏訪子様」
そしてもう一人。部屋の隅で二人の様子を見ていた諏訪子は、ゆっくりと立ち上がり床に転げるはたてへと近づいた。
小さいな腕がはたての頭を押さえる。
それだけではたての身体はまるで動かなくなった。
「はたてさん。私たちは何もおかしなことを言っている訳じゃない。貸した物を返してもらいたいだけ。それだけなんですよ。はたてさんがきっちり3000万返してくれれば何もこんなことはしなくて済むんです」
「で、でも……こんな利子とか、知らなくて……」
「知らないはずないでしょう。私たちはちゃんと説明しましたよ。それを聞いていなかったというならそれは100%のあなたの責任で、私たちには何の落ち度も無い。でしょ?」
そう言うと諏訪子は早苗の口からたばこを奪い、その火口をはたての左目へと近づけていく。
じりじりと焼けたタバコが目の前に広がる。
赤い断面を見つめるだけで、はたての瞳に涙が浮かぶ。
「ご、ごめんなさい! ごめんなさい!!」
「言葉はいいから金返せ」
タバコが押し込まれた。
「じゃあ、三日後また来ますから。それまでに返済のメドを立てて下さいね」
「っっ…………っ!!」
顔面を押さえて転げまわるはたてに目もくれず、早苗の諏訪子は扉へと向かう。
諏訪子は振り返って。
「もしもそれでもダメなら身体で払ってもらうんで。よろしく」
それはどちらの意味だろう。そう考えるだけで死ぬほど怖かった。
ヤンデレするにも先立つものは必要なのだ。
『はたて ジ・エンド』
「あなたを殺して私も死ぬ」
そう言ってはたては包丁を振りかざした。
その目はまさしく狂人のそれで、死んだ魚のように真っ直ぐ見ているようでまったく視点が定まっていない。
「あっはっ! あはははははははははははははははははは!!」
まるで伸びるような跳躍。
そして、はたてはあなたの首筋を狙って包丁を横に薙いだ。
〜〜数分後〜〜
「おいコラ。妖怪のくせになに人間に手ぇ出してんだコラ」
「やっちまおうぜ。霊夢やっちまおうぜ」
「ぁ……ごほ……たしゅけて……たしゅ……」
はたてはあなたが呼んでおいた博麗霊夢と霧雨魔理沙によってボコボコにされた。
顔面は二度は見れぬほど醜く腫れ、赤と青の充血が広がっている。
霊夢が蹴り上げた右足はありえない方向に曲がっており、壊れた人形のようだ。
倒れる際に変な支え方をしたのだろう、両手の爪は割れていた。
「わかってんのか? てめえがこいつに手え出したらよ。この霊夢様の顔にドロを塗るってことなんだよ」
「やめ……やめ……もうしな……しないから……たしゅ…たしゅしゅ……」
「霊夢やめとこうぜ。こいつさっきから同じことばっかじゃねえか。こいつの頭ん中、猿のゲロでも入ってるぜ。なに言っても無駄だぜ」
「そうね。じゃあ、後は好きにしていいから」
それだけ言うと、二人は去っていった。
残されたのはあなたとボロボロのはたてのみ。
「……………」
あなたは――――
おわり
作品情報
作品集:
24
投稿日時:
2011/02/10 13:54:21
更新日時:
2011/02/10 22:54:21
分類
姫海棠はたて
ヤンデレ
あなた
ギャグ
グロ
煮ても焼いても食えないこいつは、食用にも性処理用にも使えないし…。
よし!!二度と悪さをしないように、手足を切り落として、野に放してあげよう!!
私って優しい!!
その・・・この・・・文と違ってかばってあげたくなる微笑ましさは・・・
というか守矢金融の利子どうなってんだよ、大変リーズナブルで御座いますってレベルじゃねぇぞw
>>1 イモムシ状になってついてくるかもです
>>2 永遠の二番手! 魔理沙!!
>>3 可愛いですよねえ。ぎょさんのつぶやき見てるとはたn株がぐいぐい上がっちゃうんです
>>4 ヤンドジ。新機軸
>>5 はたての「は」は、はいぼくしゅぎの「は」!
>>6 『守矢金融 いつもニコニコ現金払い 何と今なら10分三割複利!!』
その後純愛ルートか、泥沼ルートか、鮮血ルートは『あなた』の行動しだい