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『アップルパイ』 作者: マルチノ
唐突にアップルパイらしきモノを作り始めた彼女は、吸血鬼らしからぬ優雅な動きであたかも舞っているようです。
友人である私はただそれを黙って見つめていますが、彼女の足元がポロポロと破片になって落ちているのには気づかないふりをしてあげます。
彼女はとても見た目にこだわりを持っているので、自分の足元がポロポロとアップルパイの外側らしきモノになって落ちていると知った日にはショックで死んでしまうかも知れません。でも、もしそうなってもお葬式には行ってあげようと考えています。
参列者が少ないと見栄えが悪いですからね。
アップルパイが出来上がったと思われる時には既に足首から下は無くなっていたので、それとなく彼女を椅子に座らせて完成したアップルパイを運んであげます。
それはとても美しく、食べ物には思えませんでしたが見た目にこだわる彼女ならそれくらい朝飯前なのでしょうか。
自分の作ったアップルパイを目の前にして、彼女はただテーブルに肘をつきながらニコニコと笑っているだけでした。
彼女のことです、もとから観賞用に作ったのかもしれません。
美しいアップルパイをただ見つめる彼女の横顔も、ポロポロとヒビが入っているという点を覗いて同性の私から見てもそれはそれは美しいものでした。
やがてヒビは彼女の中身が見えるくらいにまで広がり、もはや穴が開いていると言ってもいいでしょう。
彼女の中身はアップルパイの外側でした。どろりとした熱したりんごを想像していたので正直驚きましたが、見た目にこだわる彼女に中身は必要ないのでしょう。
彼女の中身である外側がポロポロと崩れ落ちます。その美しい口が壊れてしまう直前に私に何か告げようとしたようですが、私は耳をふさぎました。
見た目にこだわる彼女に、言葉は似合いません。
ついに彼女はアップルパイの外側になってしまいました。カリカリしていて、とてもじゃありませんが美しいとは言えません。でも彼女のお葬式には行ってあげようと考えています。
参列者が少ないと見栄えが悪いですからね。
そろそろお腹が空いてきた私はアップルパイが食べたくなってきました。サクサクの外側にドロドロとした中身、どちらが欠けてもアップルパイとは言えません。
でも私はもうじき歩く事も出来なくなってしまいます。
足元からどろりとしてきた中身しかない私は、自分の葬列者の数なんて気にしません。
マルチノ
- 作品情報
- 作品集:
- 24
- 投稿日時:
- 2011/02/10 16:27:40
- 更新日時:
- 2011/02/11 01:27:40
- 分類
- レミリア
オイスター坊やと同じ匂いを感じる