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『昨日殺した悪魔』 作者: zuy
博麗霊夢が死んだ。
四畳間に突如出現した巨大なピザカッターによって切り刻まれてしまったのだった。
しかし、希望が途絶えたわけではなかった。
<上白沢慧音の証言>
博麗霊夢の直接の死因はおそらく肺から心臓にかけて深々と切り裂かれた傷だったろうと思われるが、何しろ損傷が激しいのではっきりとしたことは分からない。
どっちみち、疑いのある彼女たちには関係のないことだが。
<?>ちょっと話いいかな?
<慧音>ああ。
<?>二日前の午後二時頃、ちょうど何をしてたのか教えてくれないか。
<慧音>……、確か妹紅を待っていたな。だけど、そうそう、あれはびっくりしたよ……。座敷の方から霊夢の悲鳴が聞こえたんだ。くそ。今でも思い出すよ。どうして止められなかったのか。本当にびっくりした。
まず、これは嘘だった。
慧音はこの時間、寺子屋にいたはずで妹紅を待っているというのも嘘。
霊夢の声が聞こえたのも疑問が残る。第一、彼女の家は神社から大分離れたところにあるし、二人は同居しているわけでもない。
座敷という単語が出てくること自体不可解である。
慧音は嘘を吐いているのだった。
<アリス・マーガトロイドの証言>
謎は深まるばかりだが、果たして解決させることが出来るのだろうか?
それもこれも彼女の友人の手にかかっているとしか言いようがないのであった。
願わくば、博麗霊夢が安らかに眠ることを。
<?>最後に現場、神社に行った時の様子を教えてくれ。
<アリス>ええ、二日前のことでいいのね?
<?>ああ、いいよ
<アリス>そう。私はお菓子を持っていこうとしたのだけど、呼びかけても返事がないし馬鹿に静かだったから変だと思ったの。それで中に、そう、玄関には開けられた痕跡はなくて、倒れた霊夢を見かけた時も障子は全部閉まっていたわ。そう。だから、私が最初。
そう。障子に開けた痕跡は見つからなかった。これは完全な密室殺人といえた。
締め切られた部屋の中で、いつも通りお茶を飲もうとしたところピザカッターは部屋に現われた。
そして彼女は逃げ場を失ってしまったのだった。為すすべもなく切り刻まれたことだろう。
願わくば、死後にいつも通りの平穏を。
<四季映姫の証言>
今、自分は確実に核心へ近付いているという確信だけはあった。
謎を晴らすのに後少しだけ、足りないもの。最後の一ピースが欲しい。
泥沼の中に佇んだ、腐りかけた巨大な木の根元に彼女はいた。
<?>質問していいかな?
<映姫>ええ……
<?>例の事件があった日、あなたは何をしていた?
非常に聞こえが悪いのは、腐り水に浮かぶ動物の死骸を狙う鳥や蝙蝠のせいだ。
いい加減、この悪臭にも堪える。
<映姫>あの日はドライブに行きました。小町の運転でしたが、信号待ちが短かったのでとてもスムーズに進みましたよ。あれでもっと人も少なかったら最高なんですがね。ところで小町知りません……?
蝙蝠の群れが頭の上を飛び回っている。
小町はあの派手な外見からして見かければ気付くとは思うのだが、ここまで一本道だったことを考慮しても彼女はどこにもいなかった。
そして、世界に車は存在しない。
どうやら、からかわれてしまった可能性があるようだ。
しかし、謎は解けた。
<解決編>
今回の事件の首謀者、東風屋早苗の顔に薄汚い老婆の唾が浴びせられた。
寂れた村も今日ばかりは活気があった。
元々は広場だったが、使われないでいるうちに道の一部と化してしまっていたのだ。
杭に磔られ、身動きが取れない彼女に向って次々に罵声が浴びせかけられ石が投げ付けられた。
「人殺し」
栄養失調の少年が投げた一際巨大な石が早苗の顔面に当たり鼻を削ぎ落した。
狂喜のあまりむせた、痩せこけた中年男が吐瀉物をまき散らす。
そして人々は早苗に襲いかかった。
ある者は髪をむしり、ある者は蹴飛ばし、ある者は手に持った棒が折れるまで彼女を突いた。
集団の中から片足の巨漢が進み出で、他の人間を殴り飛ばしながら早苗に猛烈な勢いで迫った。
間もなくして早苗の背骨が真っ二つに折れる音が聞こえた。
魔理沙「これでよかったんだな……?」
紫「……」
魔理沙「博麗の代わりは見つかったのか?」
紫「ええ」
魔理沙「これでよかったと思うことにするよ」
紫「それがいいわ。名探偵さん」
魔理沙「やめてくれ」
紫「ごめんなさい」
魔理沙「いや、いいんだ。これから墓参りに行かないか?」
集団の中にいた輝夜が弾き飛ばされて、魔理沙にぶつかった。
拍子に、早苗の血がべったりと魔理沙のエプロンに付着した。正直、紫に言われるまでは気付かなかった。
目をそらし、謝罪もせずに立ち去ろうとする輝夜の襟を魔理沙は力一杯掴んだ、と同時に殴り飛ばした。
思い切り石塀にぶつかって砕ける音がした。
もう一度、掴み起こして立て続けに顔面を五発ちょうど殴った。
血が噴き出し、魔理沙の手を汚す。
輝夜の目に反感の色が浮かぶのを見届け、更に五発殴ると顔の表面が潰れた。
しかし、輝夜の手が懐の小刀へ伸びるのを魔理沙は見逃さなかった。
服の隙間に潜った手が出てくるより先に魔理沙の手が八卦炉へ伸びた。
マスタースパークというくぐもった詠唱と共に明るい光が辺りに広がると輝夜の皮膚が裂け血が噴き出し、撒き散らされた骨と肉が塵と化す。そして、再び辺りに喧騒が戻った時にはそこに輝夜の存在は無かった。
ただ小刀と、沸騰し壁に吹き付けられた血が彼女の遺した全てだった。
魔理沙はエプロンを払いながら、再び歩き出す。
応えを保留したままの紫の視線は相変わらず冷たかった。
最近、ローゼメタルって人の作品が凄い。
本当、忙しい……
zuy
- 作品情報
- 作品集:
- 24
- 投稿日時:
- 2011/02/23 13:57:12
- 更新日時:
- 2011/02/23 23:02:10
ああ、やっぱり!!
この血と暴力と不条理に満ちた物語を紡いだのは!!
この悲しい事件は、早苗を犯人とすることで全てが丸く収まりましたとさ。めでたしめでたし。