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『地獄の城 第二話』 作者: ND
朝食にはワッフルを作った。
一つの皿に、5つのワッフルが乗っている。
ワッフルの乗る皿の隣には、ジャムの入った入れ物と、
バニラアイスの入った入れ物があった。
主は、ワッフルをジャムの皿の中に入れ、
アイスの入った皿にも突っ込んだ。
主がワッフルを口に運んだ。
ワッフルを口で噛み続けたまま、何も言わなかった。
一応は合格点なのだろう。
それともう一つ、溶かしたチョコレートも置いてあるのだが、
それには一切手を付けなかった。
『今日は多くの部屋を掃除してもらうわよ』
主は口にジャムを付けたまま、僕に支持をした。
僕は付近を取り出し、そのジャムをふき取った
主は何も言わなかった。
ずっと黙り込んだ
拭き終わった後、また口を開かせた
『その前に、妹に朝食を届けて行きなさい。』
その命令は、正直にいえば掃除よりも厄介だった。
あの少女に会いに行くのは、相当な覚悟が居る
だが、主の命令には従わなければいけないのだろう。
見計らって、あの絵を主に見せる為に、今は執事としての仕事を全うした方が良いだろう。
『分かりました』
主にそう返事をして、僕は地下牢に向かった。
地下室の入口を開けると、すぐに少女の声が聞こえた
『霖之助――!』
笑顔が大半の感情の声だ。
朝食をシュートの中に入れると、少女は目を輝かせて貪り始めた
姉である主と比べると、食べ方が結構下品に見える。
だが、常識と言う者が存在しないこの少女にとって、それは仕方のない事だろう。
『ごちそうさまー!!』
だが、姉妹は似る者で
やはりジャムとアイスにしか手を付けず、チョコレートには手を付けていなかった。
『ねぇねぇ!!霖之助!!早く遊ぼうよ!!』
鉄格子を握り、早く僕にしがみつこうと必死に壊すように揺らしていた
だが、鉄格子は、音を鳴らすだけで、壊れるような心配は無い。
『すみませんが、娯楽は許されておりませんので。』
そう言うと、少女は少しガッカリした表情になった
だが僕は、少女にも聞きたい事があるのだ。
『ですが、少し時間を取りたいと思います。』
そう言った後、少女の顔に明るみが増した
『この絵、なんですが』
僕は、図書館の地下にあったその絵を少女に渡した
その絵を見た瞬間、少女は何かが分かったように、スッキリした笑顔で大きな声で答えた
『あっ!!私とお姉様だ!』
そうはっきりと答えたが、僕が聞きたいのはその言葉では無い。
『この男と女は、観た事がないだろうか。』
僕は、長身の女性と男性について追及した
『男?………この大きな人は見た事あるけど、よく分かんないよ』
『女性の方は?』
『見た事も無いよ?』
その答えを聞けば、もう時間を取る必要は無い。
『ありがとうございます。ではこの絵は返してもらえますでしょうか?』
そう言いながら、僕は絵を取り上げ、入口の方まで戻って行った。
瞬間、少女はとても悲しそうな顔をした
『あーまって!まだ見る!!まだ見たいよ!!』
絵を返せば、僕が帰っていくと思ったのだろう。
僕を帰さないように、少女はまた絵を自分の手に持とうとしていた
『また、昼飯の時、夕飯の時、そして全てが終わった時にまた来ます。』
僕は少女に微笑み返し、その場から去って行った。
『朝食を渡すだけなのに、随分時間が掛ったわね』
主は、不機嫌そうな顔をしてそう言った。
『申し訳ございません』
『まぁ良いわ。今日もとことん働いてもらうから。』
あと、2日の辛抱だ。
二日経てば、良くも悪くも一度は香霖堂に帰れるだろう。
『まずは全てのベランダを掃除してもらおうかしら』
主はそう言った後、自分の部屋に戻って行った。
問答無用だそうだ。
ベランダは、広大な上に、今日は冬でとてつもなく寒い日だった。
さらに、どこから来たのか、枯れ葉と虫の死骸がそこらじゅうに散らばっている。
おそらく、40年は掃除して居ないのではないだろうか。
忘れ去られた公園の公衆便所、とも言えるほどの不衛生さだった。
渋々、覚悟を決めて箒に力を入れた。
枯れ葉の中に、細い回虫のような生き物が多く居た。
それらは全て、魔道具で焼き殺す事にした。
掃除用の、害虫を灰にする道具だが、いざという時に服からスーツに移し入れて良かった。
そのまま、掃除を続けて、あと枯れ葉一枚を燃やして終了の時、
『霖之助さん。ごきげんよう』
懐かしい声が響いた
振り向くと、スキマから出てきた紫が居た
『………久しぶりだな』
『本当に久しぶりなのに、素っ気ない挨拶ね』
紫は、霊夢や魔理沙が居なくなってから、さらに冬眠を取るようになった。
冬だけではなく、まる2年起きなかった時もあり、
今、この場で会った瞬間も、約50年ぶりなのだ。
『本当に、君は良く寝るようになったよ。』
『本当は、私だってそんなに寝たいとは思っていないわ。そんな事よりも、貴方、店主を辞めて執事になったなんてね』
『店主は辞めて居ない』
『そうかしら。もし良かったら私の所にも執事として雇いたいところなんですけどね。』
全力で御免したい。
こいつの世話をするなんて、まっぴら御免だ。
『そんな事を考えるよりも、霊夢や魔理沙については考えなかったのですか?』
『そんな暇なんて無かったわ。』
紫は、当り前のように言った
『残酷だな』
『ええ。残酷よ。』
紫に、少し絶望感を感じた
『幻想郷の人々が、この100年でほとんど消えて居なくなっているの。』
その言葉を知り、僕は少し驚いた
『そんなの、僕は聞いていないぞ?』
『新聞を作る人は、霊夢と一緒に消えてしまったから、それはしょうが無いんじゃないかしら?』
僕は、滅多に外には出なかった。
だからか、外の情報なんぞほとんど知らなかったのだ
『どこに居るかは、見当もつかないんですか?』
『ええ。ただ、幻想郷に居ない事だけは確かと言う事は分かっているわ。』
そう言った後、紫は僕の手を握った
『でも、貴方はいつまでも消えなかったみたいね。』
『女性に興味があったんじゃないかな?』
そう言った後、紫はくすりと笑った
『本当に、行方不明になるのは女性ばかりだから。そうなのかもしれないわね』
紫はそう言った後、急に首がガクンと垂れた
『紫さん?』
どうやら、睡魔が襲ってきたようだ。
今度は、どれくらいの時間を眠るのだろうか。
『霖之助さん………。私が目覚めた後も、きっと残って居てくださいね。』
紫は、スキマの中に戻って行った。
そして、紫の存在は完全に消えた
ベランダの清掃が全て終了した。
その事を報告に、主の元に駆け寄った。
『次の掃除場所は、自分で探しなさい』
主は、適当に僕に命令をした。
だが、僕は聞きたい事がある為、まだ動かなかった
その事を不審に思ったのか、主は質問をした
『………………何?』
僕は、この紙を提出するか、それは迷った
図書室の地下にあった、あの事を伝えたら僕は消されるのではないか。
と思う自分があったのだ。
そうなれば、結構面倒な事になる
主は、急に不気味に微笑む
『私を掃除したいのなら、ほら』
主はそう言った後、靴下を脱ぎ、生足を僕の前に差し出した。
さすがに、こいつの足を舐めるくらいなら、と思い
僕は紙を提出する決心をした
『主、この絵の人物に心当たりはありませんか?』
そう言って、僕は主にその人物の絵を差し出した
その絵を見た主は、
最初は無表情だったが、急に変わったかのように目が見開いた
『貴方、これをどこで拾ったの?』
本当の事を言うのに、少しためらったのか
僕は、少し嘘をついて答えた。
『図書室です。』
その言葉を聞いた時、主は深々と座りこんだ。
だが、しばらくしてまた立ち上がった
『仕事変更、図書室で調べ物をしてもらうわ』
血色を変えた その顔で、迫力のある命令をだした
図書室に辿り着いた僕たちは、さっそく所々調べる事にした。
主は、人が変わったかのように、乱暴に本棚の中の本を散らかした
『止めてください』
僕がそう言っても、彼女は止めなかった
ずっと、散らかしたまま、さらに散らかした
『どこに………どこにその絵があったのよ!』
主は、僕に尋ねるように聞いてきた
『…………………』
僕は、とりあえず場所を示唆するように、動かした本棚の所へ移動した
『この本棚の近くで拾いました』
そう言った後、主はその本棚に近づき、
『動かしなさい』
と僕に命令した。
僕は、命令されたとおりに本棚を動かし、
また、小さい赤い扉にご対面した。
その扉を見た主は、また血色を悪くした
その扉について、何か知っているのは確実だった。
あの門番も、この地下に居たのだから。
『………………』
主は、しばらく考えた後、
『妹を連れてきなさい』
と言った。
『なぜでしょうか?』
『良いから連れてきなさい!!!』
理不尽に、僕は叱咤された
牢屋から出され、鎖から解放された少女は、しばらく何かを考えていたが、
すぐに忘れたかのように、子供のようにはしゃぎ、
元気に僕の周りを駆け回った。
そして、大きな声で笑って僕に抱きついた。
『霖之助ー!!ありがとう!!ありがとう!!』
何故か今、少女を騙して居るような気がして辛い自分が居た。
少女は、僕から離れようとはしなかった為、
とりあえずそのまま主の元へ歩んで行く事にした
『フランドール、見つかったわよ』
その赤い扉を見た少女は、その扉を見たまま固まっていた
一体、この下にあった部屋と、主達は一体どんな関係があるのだろうか。
あの絵から見た時に、両親が住んでいるのだと思われるが
『…………………』
さっきまではしゃいでいた少女が、固まったまま動けないで居た
『ねえ………お姉様、私……やっぱり牢屋で良い!!止めよう!!』
少女は、戸惑って恐怖していた。
そう叫び、僕の袖を引っ張った
『ねぇ霖之助!もっと他の所に行こうよ!!他にも楽しい場所ってあるんでしょ!?』
『フランドール!!!!!!!』
主は、聞いた事も無いような大きな声で妹を叱咤した
妹は、その声に驚き、腰から崩れ落ちた
『…………………』
その場に、沈黙が流れた
『………この地下に、もうこの地下にしか可能性はないじゃない………』
『可能性?何の?』
『………………………』
主は答えなかった。
僕だけ、この下の部屋の存在を知らなかった為、何の話か全く分からなかった。
『……………召使』
『なんでしょうか』
主は、少しためらってから命令した
『……………仕事は、私の援護をして頂戴』
『霖之助!!行っちゃ駄目だよ!!』
『あんたも来るのよ、フランドール』
彼女たちは、一体何に怯えているのだろうか。
明らかに、そこには何かがある、と言うような事。
『………………………召使』
主が、僕を呼んだ
『はい』
『100年前から、幻想郷の少女が行方不明になっているのは、知っているかしら?』
先程、紫から聞いた話だった。
『はい』
『今から行くところは、その真実を知る事になるかもしれないわよ………』
そう言った後、主は扉を開けた。
しかし、先程の言葉はなんだ
幻想郷の少女失踪の真実?
この地下に存在した剥製、あれが。
主は、赤い重い扉を開き、そして完全に開いた頃、
その場から離れた。
その狭い階段から、何か邪気のような物を感じるのか
少女たちは後ろに下がって行った
どうやら、先に階段を下りようとはしないらしい
僕は、荷物の積んである近くの机に置いた霧雨の剣を腰に付けた
『僕の後に続いてください。』
僕は、屈んでその階段を下りて行った。
下に辿り着き、僕は再びその暗い大広間に戻ってきた
主とその妹も、遅れながら階段から降りてきた
横を見渡すと、やはり剥製が並んでいる
その中に、昨日からは見なかった剥製が一つあった。
全身にカエルの卵を植え付けられている少女の剥製だった
やはり、それは悪趣味な造形だとは思わざるを得なかった。
奥に、誰か人が見えた。
それを確認した時、僕はどこかに隠れなければと思った。
主と妹も、その者の存在に気がついたはずなのだが、
隠れようと思うどころか、じっとその者を見つめていた
『主?』
僕は主に語りかけると、主は急に体を震え上がらせた
そして、会いたかった者を見るように、手を伸ばした
『…………咲夜?』
そうつぶやいていた
僕は再び、その者に目を向けると
その姿は、信じられなかったが
本当に、その咲夜本人だった。
だが、一つ奇妙な事があった。
姿が、100年前とほとんど同じなのだ。
咲夜がこちらを振り向いた後、
何か、暗示しているのか、微笑みだし、
そしてまた僕たちに背を向けて、この大広間から出て行き、消えた
『待って!!』
主が、我を忘れて走り出した
『主!!』
僕も、護衛という任務がある為、主の元について行った
主の妹も、僕を見失わないように、僕の袖を掴んで駆けていった。
『主!!主!!』
僕は主を追いかけた。
だが、曲がり角に曲がったと思って、主が通った曲がり角を通ったのだが、
その場所にはもう、主は居なかったのだ
『主!?』
僕は、足を動かすのを止めずに、主を探していた。
僕は、走り、主を探しているのだが、
一つの廊下がものすごく長い、200M走っても、全く端が見えないのだ。
しかも、所々の壁に剥製が並んでいるときがある。
『主!!!』
叫んでも、その声は確実に、この廊下の半分も届かないであろう。
主は、どこまで行ったのだ?
走っている途中、誰かに足を掴まれた。
そのせいで、僕ははずみでこけてしまった。
気が付いたら、主の妹が居ない
どこかではぐれてしまったのか、だが僕は一本道を走ってきたはずだ
僕の足を掴んでいたのは、人間の姿をしていなかった。
右手と顔のみは人間だが、それ以外は魚の目玉で構成されていた。
顔の右半分も目玉に浸食されている。
その半分の顔は、早苗さんだった
『あ…………霖之助さん……』
半分の顔は、100年前から全く年を取っておらず
蒼白く、美しい形をしていた。
だが、ほとんどの体がグロテスクに形成されている
僕は、思いっきり足を手から引き抜こうとしたが、
一緒に、手も千切れて行った。
付け根に生えていた目玉も一緒に付いて、引き抜かれたように千切れた
すぐにその腕を外し、僕はその早苗さんを助けようとしたが、
だが、先程腕がもげたように、もう早苗さんの体も脆くなっている。
移動している間に、確実に早苗さんはただの肉片になるだろう
『………ごめんなさい』
僕は早苗さんに謝罪をして、その場から去って行った。
『霖之助さん………待って……行かないで……一人はもう嫌……もう嫌だよ………』
悲痛で、涙も枯れ果てたような声、かすれた美しい声が僕の耳に入ってきた
しばらく走ると、もう聞こえなくなった。
心の中で必死に謝罪していると共に、目の前でまた音が聞こえた
花瓶が割れる音だった。
僕は足を止め、その場で止まって小さな悲鳴を上げてしまった。
そこには、眼球にあるべき場所に、馬の脚がはめ込まれ、
足がある場所に、蟹の足が、ちゃんと八本とあった。
アリスだったからだ
『店主さん!?あの店主さんなのよね!?』
目が見えないのか、さっきの小さな悲鳴で僕を判断したらしい
『店主さん!!助けて!!何も見えない!!何も見えないし、何も感じないの!!聞こえる事しか………!!助けて!!』
そう言って、僕に近づいて、普通の人間の手で僕にしがみついてきた
『………ごめん……なさい……』
その姿に絶句して、僕はその手を振りほどき、また逃げてしまった。
『待って!!行かないで!!もう私を一人にしないで!!嫌………嫌あぁぁぁぁあああああああ!!!!』
そのあと、何かが崩れる音がした。
振り向くと、アリスが自分の首を掻き毟っていた。
血が出ず、ただ肉がボロボロと落ちて行くだけだった。
つには骨が見え、赤い断面が薄くなり
ついに首がボトリと床に吸い込まれるように落ちて行った。
アリスの体も、招かれるように床に崩れた。
『…………………』
心の中で必死に謝罪をしながら、僕はその場から去って行った。
もっと、もっと優しい言葉をかければ、助かったのではないのだろうか
僕は、その後悔で一杯だった
『うわああああああああああああああああああああああああああああああ!!』
僕はいつのまにか、頭を掻き毟りながら廊下を駆けまわっていた
その声に気付いたらしく、ほとんどの人が僕の方向に近寄ってきた
『霖之助……その声は霖之助か!!』
『店主さん!!店主さん!!』
『助けて………助けてぇ!!!!』
近くに居た、僕と面識のある者達が、僕に近づいて来る
『後で……後で必ずお助け致しますから!!後で必ず!!』
そう、言葉を送っても、ほとんどの者は聞こえないかのように近づいてくる
だが、それもしらばく走っていると、いつの間にか居なくなっていた。
失踪した少女たちが、何故この場所に存在しているのか
そして、なぜ異形の形で、存命しているのか
真実が明白になってきたが、知りたくない自分が居た
この真実は、もう救い用が無いのだ
誰も、誰も救いようがなくなっているのだ
『霖之助さん』
懐かしい声が聞こえた
意識を、現実に戻すと、目の前には霊夢が居た
それも、異形の形でない、100年前とほとんど同じ姿
『…………霊夢?』
僕は、そう質問すると、霊夢は僕に背を向けた
100年ぶりの再開は、彼女にとってはどうでも良いような物のように
それとも、どこかへ案内するかのように
『待ってくれ!!』
僕は霊夢を追いかけた。
追いかけていく途中、また多くの異形の物が動き回っていたが、
そんなものを相手にも出来ないほど、僕は霊夢を追いかけた
また、見失いそうな、そんな気がしたのだ。
『霊夢!!』
霊夢が曲がり角を曲がったが最後、ついに居なくなってしまった。
厳密にいえば、消えてしまった
『……………』
その曲がり角の奥には、一つの扉があった
それ以外の扉は無い為、その扉を開けろと言う事だろうか。
霊夢は、あの扉の奥に居るのか
僕は、恐る恐るその扉の前まで辿り着いた。
そして、ドアノブに手をかけ、カチと扉が開く音がした
その時に、扉を押し、その扉の中の部屋を見渡した。
そこは、ほとんど何も無い部屋だった。
真中に、霊夢が腰ぐらいまで床に埋まっている以外、何も
『霊夢…………?』
僕がそう呼びかけると、埋まっていた霊夢はゆっくりと顔を上げた。
僕と目が合うと、霊夢は笑顔になった。
『………霖之助さん』
その顔は、100年前と全く変わっていない
色が、青白くなった以外、全く変わっていないのだ。
彼女は、見たところ、どこも異形の場所は無かった。
だが、なぜ腰ぐらいまで床に埋まっているのか
『霖之助さん………会いたかった……』
本当に、久しぶりだ。彼女の声を聞くのは
『今、引き上げてやる』
僕はそう言って、彼女の元に近寄った
だが、霊夢はそれを余り良しとはしなかった
『………別に良いよ。それより、もうちょっと私と一緒に居て……』
『悪いけど時間が無いんだ。引き抜くよ』
僕はそう言って、霊夢の腋を掴み、上に引き抜いた
だが、まるでそれは根が張ってあるかのように、とてつもなく重かった。
だが、引き抜けないほどでは無かった。
『引き抜けそうだ』
僕はそう言って、徐々に上がっている霊夢の体を引き上げた。
すると急に、床にヒビが入った。
『なんだ?』
そうなると、あとは簡単に引きぬけた。
だが。引き抜いた事を後悔した
霊夢の下半身は、無くなっていた
代わりに、植物の太いひげ根が存在していたのだ。
しかも、一本一本が生きているらしく、一つ一つが脈を打っている
だが、それはあくまで植物の為、霊夢の意志では動かせないようだ。
『霖之……助さん……』
弱々しい、少女の声の霊夢が、僕の足にしがみついてきた。
僕は口元を手で覆い、驚きを隠せないで居た。
だが、
ずっと、この場所に居る訳にもいかないのだ。
僕は、しがみついている霊夢の手を触れた。
それは、とても冷たかった。
『……霊夢』
霊夢は、何も反応しない
『必ず、必ず助けてやる。だから、もうしばらくだけ此処で待って居てくれないか?』
僕は霊夢にそう語った。
だが。霊夢はその想いを考えないかのように
『………嫌。ずっとここに居て』
そう言った。間隔もなく
『霖之助さん。私、貴方が大好きよ。おそらく、この世で一番。だから、本当に会いたかった。ねぇ、お願い。だからお願い。私を置いていかないで。もう………私を一人にしないで……。』
霊夢は、涙を流せないが、
声が、涙声になって来ているのが分かった
『霖之助さん………霖之助さん…………』
霊夢は、絶対に離すものかと強く僕の足を抱きしめていた。
だが、その強くと言っても、先程より強いだけで、弱い握力だった。
だから、引き離すのも、容易だった
『…………絶対に助けるよ』
そう言って、僕は全力でその場から去った
『ああああああああ!!行かないで!!お願い!!ずっと一緒に居よう!!ねぇ!!私もうこんな所で一人なんて嫌だ!!うわああああああああああ!!!』
霊夢の叫び声が、廊下に響く、だが、その声も、走っていく事に、聞こえなくなっていった。
絶対に、絶対に戻る。
幻想郷に、皆帰れるはずだから。
そう、心の中で決めて、僕は走った。
そして、走っている最中、
主の姿が見えた。
立ち止まって、呆然としている
主は、ただじっとその場所をみていた
何か、信じがたい物見たかのように
『主!!』
僕は主に言葉をかけた
『主、この場所で単独行動は危険です。どうか勝手に走りなさる事は無いよう………』
何かがおかしかった。
主は、返事どころか、微塵の反応さえもしていないのだ
僕は、不審に思い、主の視線の先を追ってみた。
そこには、
頭はえぐれた腹の中に収まっており、首のある所は女性器の内臓が貼り付けられ、
腕は小腸と繋がって、足は無くなり、下半身がミミズのような生き物の物とされている
頭の方も、眼球が牛の男性器と思われる物が付けられている
顔は、咲夜本人の物だった
主は、その光景を見た後、膝から崩れ落ち、放心状態になった。
『あ……・・ああ……あ……』
とぎれとぎれのような泣き声を出し、僕の方に振り向いた
『うわ………あ……あああ……』
そして、僕の方にすがってきた。
よほど、ショックだったのだろう。
僕も、この姿を見てからの今は、恐ろしく衝撃を受けている
『………………』
僕は、すがってくる主の手を掴み、歩き出した
だが、自分が情けないと思ったのか、
今度は主が、泣きながらも前に、前に進んで行った。
『行きましょう。まだ妹様が見つかっておりません。』
主は、絶対に僕の手を離さない様に強く握って、
ずかずかと前に進んで行った。
『霖之助!!!』
後ろから主の妹の声がした
その声に驚き、僕は後ろに振り向いた
先程、後ろを通ってきたはずなのに、
その場所は、扉も無い廊下道なのに、その場に主の妹が居た。
『霖之助!!霖之助―――!!』
妹は突進して、僕の腹に突撃してきた
その突拍子に、僕は舌を噛んでしまったようで、血が口から流れて行った。。
下の床は、模様が描かれているが、ほとんどタイルになっている為、血が目立つようになっている
『見つかった!!やっと見つかった!!』
正直、僕たちもこいつを探している途中だったので、都合は良かった。
『もう、三人、離れちゃ駄目ですよ。』
僕はそう言った後、主の妹は元気よく返事をしたが、
主は返事を返さなかった。
僕はため息をついた後、立ち上がり、
急がなければならないのだが、三人手をつなぐと、思い通りに動けなかった。
足のペースが合わないからか、主は走ろうともしない為、さらにペースが遅くなっていった。
廊下の突き当たりの所
そこに、ものすごく大きな扉が存在した
豪華で、一つ一つ彫刻がされていた
地獄の業火に苦しむ者
体が串刺しにされた者
壁の一部になって、苦しむ者
少なくとも、100は超える生物が苦しんでいる姿が彫られている
一番上には、哀しむ巨人が彫られていた
この部屋には、絶対に何かがあるだろう。
腰に付けた霧雨の剣を構え、
この大きな扉に手をかけた。
その大きな扉は、大きな音を立てながら、ゆっくりと開いて行った。
そして、人が入れるほどの大きさになった時、僕はその扉の中に入った。
その扉の中は、廊下とはほとんど別次元ともいえるような存在感だった。
壁一面に絵が描かれており、
床にも、神様が全ての生物に聖なる光を渡すかのような、西洋の絵が描かれている
机は、居たってシンプルなデザインだが、それでも上流の人が使うような机だ
『この部屋は………?』
他にも暖炉や柱にまで、ほとんどの所に、絵が描かれているこの部屋
その部屋に入った瞬間、主の顔が浮かない物になった。
置くから、足音が聞こえた
その音のするように顔を向けた。
しばらくして、その足音の正体は、姿を現した。
その足音は、絵が描かれている壁の中にあった扉を開けて、
この部屋に入ってきた。
その足音の正体は、男性だった。
あの、僕が昨日拾ったあの絵の、
力強い肩幅の大きいの大男
主の妹が言った、見た事のある人だ
主は、気まずそうな顔をして、その大男の正体を言った
『………お父様……』
大長編、第二話です。
最初、もうひとつ新しく考えた大長編があります。
それは幻想郷の皆の性別が変わ…あ、これ前言った
狂った幻想郷シリーズで、何が起こっているのか全く予想がつかない、さらに、全く現実性の【げ】の字も無い
ボボボーボ・ボーボボみたいな作品を考えてました。
当然ボツりました
ND
作品情報
作品集:
24
投稿日時:
2011/03/07 09:46:48
更新日時:
2011/03/07 18:46:48
分類
霖之助
レミリア
フランドール
紅魔館
大長編
紫の体力の消費が著しいようですね。
地下ではフリークショーが催されている、と。
で、『展示物』達の台詞は決まって『行かないで』と。
要注意人物であるフランちゃんを同行させてまで、レミリアは何をしようというのか?
男性――スカーレット姉妹の父?がショーの主催者?
執事香霖、何もしてやれないとか抜かすなよ。
私なら、『彼女達』にしてやれます。
ベレッタM9を異形の頭に向けて、
「アディオ〜ス」
BANG!!
蝋で固められた知り合いの蝋を皮膚ごとはがしちゃうシーン
あれはえぐかった……
後、咲夜の異形の姿を文面から想像したらなんかもう凄いことになったwww