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『地獄の城 最終話』 作者: ND
顔が、
顔の皮膚が集まってできたその球体の化け物は
主と
主の妹を徐々に取り組んでいた
手足から、吸い込まれるように入っている
なのに、バロンさんは動かなかった。
狂ってる訳でも、気絶しているわけでもなかった。
現状を分かっていて、そして動いていなかったのだ
『ブルー』
バロンさんの口が動いた
『それが、お前の答えか』
そう言った後、バロンさんは
フォークのような手を、普通の人間の手に戻した
そして、その場に座り込んでしまった。
『バロンさん?』
『おお。霖之助か』
バロンさんは、寂しそうな顔をしながら、あの化け物を見ていた
『動かないんですか?』
『俺は、動かない方が良いんだよ。』
意味が分からなかった。
なぜ、その場所に留まるのか
『霖之助。お前が助けに行くんだ』
『どうして、そんな勝手な』
『俺は、あの化け物と闘うことは無理だ。だが、霖之助。お前ならできる』
また、勝手な理由な気がした
『なんで、バロンさんは戦えないんですか』
『闘う気が失せたんだよ。』
やはり、勝手な良いわけだった
『もういいです』
僕は、刀を握りなおし
その化け物と向き直った
一番上に居る少年は、
目から、さらに口から液体をこぼした
『霖之助ぇ………』
主の妹が、泣きそうな顔でこちらの顔を見ている
僕は、剣を上に掲げ
『ふん!!』
一閃した。
球体が、避けた
顔が避け、観た事のない表情が盾に並んだ
だが、そんな物は目に止まらなかった
傷口の中は、真っ黒だったのだ
まるで、その奥に何かが存在するように
真っ暗だ
『なんだ………?』
化け物が、こちらに近づいてきた
恐ろしくなり、僕は後ろに下がった。
そして、さらに剣を振った
さらに、傷口が増えるだけだった。
さらに。その傷は再生しないのか
ずっと、真っ黒のままだった
その真っ黒い傷の中から、黒い手が伸びた
『うわぁ!!』
僕は足に力を入れて、右の方向に蹴りあげた。
蹴りあげるのが早かった為、容易にその黒い手を避ける事が出来た。
だが、
黒い手は増えてきた。
僕を捕まえ損ねた手は、黒い霧となって消えて行った
まるで、その手は僕を捕まえる為に存在しているかのように
そして、また右に移動した時、
避けきれない腕が二本伸びてきた
僕は、その腕を断つように斬り落とした。
腕は、存在意味を失くしたかのように消えて行った
そうだ
あの化け物を退治するにはどうすればいいんだ
主と主の妹は、
融合されている
殺せないし
斬ってもどす黒い傷口から黒い腕が伸びてくる
攻撃すればするほど、この化け物は強くなっているのだ。
この状態になった今、逃げるしか
その時、黒い腕は僕の体を包んだ。
目の前が、黒い煙に包まれたように暗くなった
そのまま、僕は化け物の傷口の中に吸い込まれて行った
『うわああああああああああああああああああああああああああああああ!!!』
傷口の中は、寒く、暗く、
まるで鉄筋コンクリートの部屋に閉じ込められたようだった。
冷たい空気が、僕を包んで
死後
のような世界が広がっているようだった
だが、急にその寒さは無くなり、
太陽の光が僕に当たった。
足が、地についた。
そこは、草が生えていた。
暗い場所が、徐々に明るくなった
『おっ、香霖!!』
『霖之助さん、外に出るなんて珍しいわね。』
人間の姿をしていた霊夢と魔理沙が居た
辺りをもう一度見渡した。
その場所は、100年前の幻想郷に変わっていた
『おい、ブルー』
俺は、球体の中に居るであろう
俺の嫁を呼んだ
案の定、返事は無かった
『居るんだろ。出てこいよ』
球体の中の黒い物が、徐々に薄くなった。
その中に入って行った霖之助の姿は無かった。
居なくなっていた
その中には、
数年前から変わらないブルーの姿があった。
人の顔で作られた椅子に座っていた
『ブルー。』
俺は、彼女の名前を呼んだ
だが、彼女は反応すらしなかった
『お前は、何故このような事をしようとしたんだ』
俺は、聞き取れるように徐々に近づいて行った
フランドールは気絶したのか、もう叫んですら居なかった
『ブルー!』
俺は叫んで、ついにその球体の中に入っていった。
俺がその球体に入った途端、傷口が塞がった
眠っていた、虎が目覚めたように、
再生能力が目覚めたのだ
彼女は、ゆっくりと動き出した
ゆっくりと立ち上がり、顔を上げた。
彼女は、僕の顔を見た。
幼い少女のその顔は、昔から変わっていなかった。
そして、幼い少女は微笑んだ
嬉しそうに、笑顔になった
『やっと、二人になれたね』
『香霖ー!!折角外に出たっつうなら遊びに行こうぜ!』
魔理沙は、そう言って僕の袖を引っ張った。
『魔理沙、霖之助さんも年なんだから大概にしときなさいよ。』
僕は少しムッと来た。
だが、同時に複雑な気持ちになった。
霊夢の気持ちを知った後、彼女に出会ってみると、
何かが、少し気まずい気分だ
『どうしたの霖之助さん?顔が赤いわよ』
『まぁ、外に出るのは久しぶりだからな。』
そう誤魔化して、僕は魔理沙に連れていかれるままになった。
だが、引っ張られる時間が長くて、僕は息が切れそうになった
『魔理沙、まだ着かないのか?』
魔理沙に愚痴を言うと、魔理沙は笑顔で答えた
『まぁいいじゃねえか、もう少しだもう少し』
そう言った後、4分は走り続けた
『着いたぞ!』
そう言って、魔理沙は僕を投げた
『ほら、香霖見てみろよ!!』
魔理沙に向かって拳を振り上げた時、
魔理沙に連れてこられた世界を見て、僕は驚いた
そこは、大きな桜の木が一本立っている物だったが、
その桜の木が、いや、桜と言えるべきなのか
『いつ見ても、この木は綺麗ね』
僕の髪の色と、同じ色をしていた。
『香霖、珍しいだろ?この色。香霖そっくりだろ?』
魔理沙が、感想を聞きたそうに僕に語りかけてくる。
だが、確かに見事な物だった。
真っ白な桜の木は、僕を来たのを祝っているかのように
僕の居る場所に、花弁が降ってきた。
それは、雪が降っているようだった。
『綺麗だ。』
そう言った瞬間、後ろで誰かに叩かれた。
魔理沙が、僕の背中を叩いたのだ。
『だろっ!!だからお前も店に閉じこもってねえで、いっぱい外に出とけって!絶対その方が楽しいからよぉ!』
魔理沙は、いっぱいの笑顔で僕にそう言った。
瞬間、
辺りが暗くなった。
もう夜になったのか、いや
明らかに、昼から夜に変わった。
蛍の光が桜の木に止まっていた。
まるで、その白い桜の木に宝石が飾られているようだった。
『霖之助さん』
隣には、いつの間にか霊夢が居た
霊夢は、少しだけ僕と距離を取っていた
『どうした?』
質問と取れる返事をしたが、霊夢は何も答えない
ただ、俯いているだけだった。
桜の木の下で、屈むように座りこんでいた。
『霖之助さん』
『なんだ』
霊夢は、また僕の名前を呼んだ
『霖之助さん』
『なんだ』
『霖之助さん』
『霖之助さん』
『霖之……助さん……』
僕の名前を何度も呼んだが、
途中から、だんだん声が小さくなっていった。
それに伴い、顔もだんだんと赤くなっている
『何が言いたいんだ?』
だんだん、この世界にのまれているのが分かった。
ここは、本当にあの球体の世界なのだろうか。
この桜の木は、本当に幻想郷に存在した物なのだろうか。
だが、
それはどうでも良い。
早く、僕はこの世界から脱出しなければ
『済まないが、僕はもう帰らせてもらうよ。』
早く探さなければ、助けなければ
僕は、この世界の脱出方法を考えながら
剣を握り、僕は桜の木を背に向けた
『霖之助さん!!』
霊夢の大きな声が、辺りに響いた。
驚いた僕は、思わず振り返った
霊夢の顔は、涙にぬれていた。
顔も、真っ赤に染まっていた。
『毎日!!毎日味噌汁を作らせて下さい!!』
『勝手に作ればいいだろう。』
僕はそう言った後、そのまま桜の木を背に歩いて行った。
後ろから、駆け付ける足音が聞こえた。
そして、後ろから誰かに抱きつかれた。
霊夢だ。
強く、そして押し倒すように
彼女は飛び込んで抱きついてきた。
僕は倒れこんでしまった。
霊夢の顔が背中に当たっていた。熱い
熱がこもっていた。
『…………恋人』
霊夢の声が聞こえた。
『恋人に………』
意味は分かった。
さっき、彼女の思いは知ったから、驚きもしなかった。
辺りが暗くなった。
徐々に、闇が僕を包んでいるようだ。
僕は、とっさに彼女に答えを返した
『恋人は、まず親友からだ』
また、暗闇に戻った。
音も聞こえない、あの闇の世界だった
しばらくして、鳥がさえずる音が聞こえた。
気づけば、僕は自分の店の机に座っていた。
僕は、机の上で眠っていたようだ。
先程の桜の下の夜から、時間が経っていない筈だが
夜が明けたように。そこは朝になっていた。
まるで、この世界が現実で、今までが夢だったようだ
だが、その訳にはいかないだろう。
おそらく、ブルーはそれが希望のはずだ
『霖之助さん!!』
ハイテンションの霊夢が店の中に入ってきた。
『材料を買ってきたの!今日は私が朝食を作ってあげるわ!!』
何か良く分からない事を言っていた。
地震でも起こるのではないだろうか。
『おーっす!!香霖!!』
魔理沙も、ハイテンションで入ってきた
『今日は霊夢が朝食作ると聞いて、やってきたぜー!!』
『情報が届くのが早いな』
『飯の為ならな!!』
魔理沙は自信満々に答えた。
霊夢も、上機嫌に笑っていた。
僕はあまり飯を必要としていないが
作ってくれるなら好都合だ。ならば期待しよう。
今、僕は気づいては居なかったが、
一番、居心地の良い幸せの中に居た
『何をする気だ?』
ブルーは、笑顔で、ゆっくりと俺の元に近づいてきた
『いえ、ただ私は二人になりたかっただけよ』
『すぐに霖之助が戻って来るだろう。』
『戻って来ないわ』
ブルーは、優しい微笑みを表しながら、俺の手を握った
『彼は、もう二度と戻りたく無くなるかもしれないわね。』
俺は手を払い、攻撃するように問い詰めた
『霖之助は戻って来るだろうと俺は思うけどな』
『貴方は、他の人が大好きのようね』
『お前は身内の人間さえも嫌いのようだな。自分の子供をなんだと思ってやがる』
ブルーは、微笑みながら抱きついてきた
『必要あると思う?』
『必要だろう。』
『要らないから、今あの子たちはあんな状態になっているのよ』
ブルーは、さらにきつく抱きしめてきた。
『私もね、貴方と触れなくて寂しかったわ。こうして抱きしめられたの、いつぶりかしら』
『お前は、自分の子供をなんだと思ってるんだ。』
『大丈夫よ。すぐに忘れるわ』
俺は、それ以上は言わなかった。
忘れる
そんな恐ろしい言葉を、この女は使ったのだ
『バロンさん』
ブルーは、椅子に乗った。
ちょうど、俺と同じ高さの位置になった。
ブルーは、俺に近づき
静かに口づけをした
『美味いな』
僕はそう感想を述べると、霊夢は笑顔を満面にした
『もうちょっと茸を入れると、もっとよかったけどな』
『貴方の好みに合わせてるんじゃないわよ。』
霊夢は、魔理沙には冷たく当たった
僕は、炊きたてのご飯を口に運んだ、
運んでいる途中に、入口の扉が破壊された
『本を!!今日こそ本を返せ!!!』
あの妖怪だ。
あの妖怪がまた、僕の店に入ってきた。
霊夢は、鬼の様な形相になり、術を唱え、その妖怪を吹っ飛ばした
入ってブッ飛ばされる時間は、約2秒だった
『襲うなら、飯時以外の方が効率が良いわよ』
そう言った後、あの妖怪の悲鳴が聞こえ、しだいに聞こえなくなった
変なオーラをまとった霊夢は、しばらく入口の前で威嚇していた
ああ、これでまた客が減るな
霊夢の作ったご飯を食べながら、そう考えた。
だが、しばらく箸を止めた瞬間、僕は我に返った
そうだ、僕はこの世界から出なければならない。
この世界は、僕にとっても気に入っていて
ずっとこの世界に居たいと思った。
それは、この世界は
まんま100年前の世界だからだ
霊夢の飯を食べている時と比例して、自分の中の我が失っているようだった。
僕は、箸を机に置いた。
これ以上、この料理を食べてはいけない
そう、感じたのだ
『おっ香霖。もう食べないのか?』
僕は立ちあがって、入口の方に向かった。
霊夢は、少し戸惑いを見せた
『あ……霖之助さん。お口に合わなかった?』
いつも、自分勝手な性格が、いつの間にか大人しい少女に変わっていた。
この霊夢の想いも、考えなければいけないのだろうか。
いや、これは偽りだ
『いや、美味しかったよ。でも、もう良いんだ。』
そう言った後。僕は霊夢の頭を撫でた。
霊夢は、少しだけ顔が赤くなっていた
僕は、入口から出ていって
紅魔館の方に向かおうと走った。
『霖之助さん!?』
霊夢が、僕の後を追いかけていた
何か、心配になったのだろうか。
魔理沙も、店から飛び出して飛んで来ていた。
つまり今、店には誰も居ない状態だ
だが、そんな事を考えている暇は無い
紅魔館の方向は、ここで良いはずだ。
走っていけば、城の方まで見えるはずだ。
だが、また目の前が暗くなった。
また、暗闇が僕を包んだ。
『また……・…か』
そして、徐々に明るくなった。
その場所は、また別の場所に変わっていた。
だが、先ほどよりも紅魔館の場所への距離はあまり変わっていないはずだ。
僕は、方向が変わった紅魔館へと向かおうと走りの構えをした
『霖之助さん!そんなに急がないで!』
後ろから、霊夢の声がした。
霊夢の顔は、前よりも笑顔になっていた。
『一緒に行動しよって、さっき言ったばかりじゃない!』
そう言って、霊夢は僕の腕を組んだ
まるで、これでは恋人同士じゃないか
あれから、また時間が経ったというのか
その時、僕達の仲はさらに進展してしまった
というのか
『霊夢』
霊夢は、明るい声で、
『ん?』
と返事した
『少し、離れて歩かないか?』
『霖之助さん。それはできない相談よ』
笑顔のまま、返答された
『…………』
だが、ここで引き離さなければ、
僕は、永遠にこの世界から出られないだろう。
『霊夢』
『どうしたの?さっきから』
まだ、霊夢は笑顔のままだ
今、彼女は幸せなのだろう。
『僕は、今から行かなければならない場所がある。』
ここで、言葉が止まった。
今の霊夢を傷つけずに済む言葉が、一瞬見つからなかった
『だから、しばらく待っていてくれないか』
言い終えた後、霊夢はまだ笑顔のままだった。
その笑顔が、なんだか怖かった
歩いている途中、家と家との間の隙間があった。
霊夢は、僕の服を引っ張り、その隙間の中に入って行った。
そこで、僕は壁を背にされ、霊夢に押されていた。
『霖之助さん』
霊夢は、少しだけ悲しそうな顔だった
『私、今、とっても幸せだよ。今こうして、霖之助さんに一番近い場所に居るんだもの』
霊夢はそう言った後、手を僕の首にまわした。
彼女は、顔を近づかせ、
唇が、徐々に僕の場所に近づいてきた
俺は、ブルーを押し返し
警戒の態勢を取った
『止めろ』
そう言うと、ブルーは少し悲しそうな顔をした
『どうして?』
『お前の目的はなんだ。』
俺は、こいつが心底何を考えているのか分かんない。
何が目的で、何がしたいのか
昔、俺はこいつに出会って
『私は、貴方とずっと一緒に居たいだけよ』
『なら、なぜ作品を作り続けた』
ブルーは、再び笑顔になって答えた
『貴方と話ができる時間ができるからよ』
本当に、たったそれだけ
たった、それだけの理由だった。
それは、すぐに分かったのだ。
たったそれだけで、上の霖之助の世界の住民が居なくなった事は
『亡霊をこの城に留まらせたのはなんだ、作品を動かした意図はなんだ』
『強い魂を、二度と輪廻も許さなかっただけよ。強い者が、此処に来るのは怖いでしょう。』
ブルーが、このような事をしているのは
ただ、臆病なだけだったからか
ブルーの力は、決して強い物とは言えない。
ブルーの能力は、生かすも殺すもない
殺した”後”を処置する
命の”無い”物を利用する能力だからだ
『ねぇ、バロンさん』
ブルーは、僕の手を握った。
『覚えてる?』
その手を持って、僕の目を見ていた
『貴方と、初めて会った時の事』
『霊夢』
僕は、霊夢の肩を掴み
ある程度の距離に、引き離した
『僕は行かなきゃいけないよ』
『霖之助さん?』
霊夢の首が傾げた
暗闇の間の記憶が、頭の中に浮かんできた。
僕は霊夢に、プレゼントをして
僕も、霊夢にプレゼントした物と同じ物を持って
霊夢は嬉し泣きをして
一緒に手をつないで
いつの間にか、彼女は香霖堂の助手になっていた。
そして、そんな生活が1年
霊夢は、さらに僕にくっつくようになった。
魔理沙も、からかうように僕たちの店にやってきた。
でも、それは少し寂しそうだった
≪幸せにな!!≫
僕たちの店を背に向けながら、魔理沙は去って行った
僕と霊夢は、一緒に掃除して
同じ飯を食べて、
同じ布団で寝たりした。
そして、今、
彼女は言いだした
≪一緒に散歩しない?≫
そして、僕は店の看板を『閉店』とした
そして、僕たちは今此処に居る
僕は、なんだか悲しくなった
この霊夢も。僕は好きだった
きっと、幸せな、幸せな人生を歩んだのだろう
僕も、きっと幸せだったのだろう。
霊夢の首には、綺麗なネックレスが一つ
僕の首にも、霊夢と同じのネックレスがあった
きっと
きっとこれからも幸せになれるのだろう
このままこの世界に居たら
ずっと幸せになれるのだろう
だが、それは偽りだ
そんな事は分かっている
でも。それでも幸せだと思ってしまう
『ああ。この世界は優しいよ。優しい』
そう言った後、僕は霊夢の頭を撫でた
『もう一人の君が言った。これからの僕は今から生きる事を考えて』
まともに、霊夢の顔が見れなかった
『さようなら』
そう言った後。僕は走った
紅魔館の場所まで、走って行った
『霖之助さん!!』
霊夢が、僕の後を追いかけてきた。
だが、僕は振り返らず、ただ走り続けた
瞬間、また暗闇が僕を包んだ
『…………!!!』
歯を食いしばりながら、僕は走り続けた。
暗闇を、通り過ぎた
『霖之助さん!!』
霊夢が、先ほどと違う服で走っていた
また、暗闇が流れた
通り過ぎると、また霊夢が違う服を着て追いかけてきていた
『待って!!お願い待って!!』
霊夢は、手を伸ばして僕を捕まえようと走ってきた。
また、暗闇が流れた。
その場所は、城と近かった。
後ろには、霊夢がまだ追いかけてきていた
先ほどとは違って、
一周回って、一番最初と同じ服だった。
門番が、間合いに入っていた
『どいてくれ!!』
『悪いけど、易々と通すわけにはいかないね。』
僕は、刀を取り出し、
門を斬った。
それで、別の場所に入口を作った
『なんですって!?』
門番は驚いていた
だが、僕は気にせずにすぐに中に入って行った。
霊夢も、間を空けずに入って来ていた。
入口の扉を開けると、目の前には咲夜が掃除をしていた
『あら、どこぞの店主さん』
『すぐに出ていくから安心して下さい』
そう言った後、僕は図書室に向かった。
図書室の場所は把握している
その場所に行くのに時間はかからなかった。
『うっうわぁ!!店主さん!?』
小悪魔は、僕が城に来ていて驚いていたが、
気にしない事にした
『あっ!ちょっと待って!!』
何か伝えたかったようだが、無視をする事にした
図書室の扉を開けると、その場所にはあの魔女が居た
『うわぁぁああ!!』
魔女は驚き、顔を赤くさせながら後ろに退がった
僕はすぐに、あの赤い扉のあった本棚を破壊した
『あっ!!ちょっと店主さ……』
魔女も、さすがにこれには動転していたが
その場所で初めて見たその赤い扉に、魔女は言葉を失っていた
『霖之助……さん?』
後ろで、霊夢の声が聞こえた。
僕は、赤い扉を開けた
その中は、真っ白だった
白い光に包まれていた。
その場所から出ると、僕は外の世界に出られるのだろう。
『さぁな。忘れてしまったよ』
嘘だ。本当は覚えている
『思い出して』
『君は、もっと絵を上手くなって私を描いてと言っていたな』
そう言うと、ブルーは笑った
『私は、僕と究極の愛をかわしたいと言ったのよ』
そうだ。
しかし、それは子供の時の僕は分からなかった
だが、今は分かっている
『私はね、今と昔も変わらないの。』
そう言った後、ブルーは座りこんだ
『私は、ずっと貴方を愛して居たわ。ずっと、ずっと』
彼女は、俺の事を考えただけでこんな行為を運んだのだろうか
『究極の愛って、貴方なら知っているでしょう?』
ブルーはそう言って、服のボタンをはずし始めた。
『人はね、キス異常がセックスと言われているわ。だから、初めて抱かれた時、私は嬉しかった』
ボタンの服の下は、裸だった
『でも、子供が出来たら私に構わなくなったわね。』
ブルーは、俺にしがみついた
『寂しかったわ。本当よ。』
こいつは、子供よりも俺の方を優先していた
こんな愛の為に、皆死んでいったのか
作品は、こんな愛の為に
『子供の事は、考えた事は無かったのか』
『考えていたわ。一応だけど』
ミルゴ
お前は元々、母親には愛されていなかった事は知っていた
だから、俺はお前を愛そうと思ったのだ。
だが、愛すべき存在は、今、化物になっている
ミゴルエモ
俺はその名前が嫌いだった。
『究極の愛は、永遠に二人で愛し合う事。そうだと思っているわ』
その名前は、余りにも母親に愛されていない名前だったからだ
ミゴルエモ
モエルゴミ
『霖之助さん………』
霊夢は、悲しそうな顔をしていた。
目の前の大きな光が、ドアからはみ出しているような光が
小さく見えるように
霊夢の顔は、悲しそうだった。
『霊夢』
僕は、彼女の名前を呼んだ
だが、彼女はただ俯くだけだった
『僕は、この世界の人では無い』
今、この反応はそのような
『でも、僕はこの世界が好きだったよ』
霊夢は、泣きそうな顔をしていた
彼女の手が、震えていた
涙が、流れて
ずっと、流れて
先程の笑顔は、観れないほどだった
『君も、好きだった。』
そう言って、僕は彼女の頭の上に手を置いた
『行かなきゃ』
そう言った後、霊夢の大きな声が響いた
『待って!!』
振り向くと、霊夢は箱を持っていた。
それは、小さな箱だった。
震えた手で、僕に差し出すように
僕は、その箱を貰った。
その箱を開けると、その中には宝石が入っていた。
これは、世間ではプロポーズと言うのだろう。
普通は、これの逆の方だと思うが
『霊夢』
『霖之助さん……。知ってた』
霊夢が、告白を始めた
『どこかに、この世界から居なくなる扉が存在する事は、知ってた。』
涙声で、しゃっくりまじりの声で語っていた
『きっと、霖之助さんが居なくなることだって、知っていた。知っていたよ……。』
顔を覆い隠し、霊夢はしゃっくりまじりの声で泣いていた
僕は、返事に困った。
この、赤い扉の向こうに、
行かない方が良いのだろうか。
だが、霊夢は
『だから、早く行ってあげて!!』
予想外の答えを語った。
『知ってたから。ずっと一緒に居られないくらい。』
『この世界には、本当は霖之助さんが居ないから。』
二人の霊夢が重なって見えた。
二人とも知っている霊夢だった。
僕の居た世界の霊夢と
この世界の霊夢
『霖之助さんは、これから先も』
『もっと、やるべき事があるって事も』
辺りが、真っ白になった。
いつの間にか、世界は赤い扉と、霊夢と僕だけの世界になっていた。
『でも、これだけは知っていて、この世界は偽りであり、偽りじゃないの』
『この世界は、私が望んだ世界だって言う事を。』
霊夢の泣き顔は、しだいに笑顔になっていった。
そして、目に涙を流しながらも、笑顔で僕を見た
『これからは霖之助さんは今から生きる事を考えて。』
『がんばってね』
僕は、赤い扉を開けて、
白い光に包まれて行きながら、霊夢の顔を見た
彼女の顔は、また泣き顔になっていた。
だけど、その中には、
想いやりと、優しさがあった
『さようなら』
霊夢はそう言葉を残して。
僕の周りは、完全に真っ白になった
これから今、生きる事
それは、まだ分かんないまま
霊夢の顔が、完全に見えなくなった
『バロンさん?』
ブルー
お前は、人を愛する事を
俺を愛する事しか知らないのか
『私は、幸せになりたかったんだよ。』
可哀想だね。ブルー
『ブルー』
『バロン、どうしてそんな悲しい顔をするの?』
『俺も、お前と究極の愛を咲かせたいと思った。』
ブルーは、嬉しそうな顔をした。
『だが、お前は究極の愛を勘違いしている』
俺は、彼女から少し離れた
壁に背をつかせ
『どういう事なの?』
ブルーは質問をした
『愛って、二人の時が、その時が始まりなんだよ』
部屋に、隙間から流れるように
所々から白い光が差し込んだ
『究極の愛っていうのは、子供達が居て、俺が子供を愛して、お前も子供を愛して、子供も俺達を愛する事が、それが本当の愛の究極体っていうんだぜ』
白い光の先
そこは、あの球体の化け物が居た場所だった
その側面に融合している、
主と主の妹に太刀を向けた。
お嬢様二人に二閃して、二人を引き離した
二人の浸食は、もう腕と脚の付け根にまでに至っていた。
僕は、皮膚にへばりついた出来物を斬り落とすように
彼女たちを引き離した。
『がぁあああ!!ああああああああああああ!!』
主と主の妹に渡る激痛の悲鳴が、辺りに響いた
彼女たちは、だるまになった
だが、ここまでの事をしなければ、
二人はもう、一体化して取り返しのつかない事になっていただろう。
一番上の少年は、まるで見えない敵に襲われているかのように、暴れていた
『霖之助ぇ!!』
球体の中で、バロンさんの声が聞こえた。
僕は、球体を再び少年ごと斬り裂いた。
球体は、おぞましい叫び声を上げながら、
塵となって、消えていった。
中には、あの女が居た
全ての元凶の
あの女が
『……………!!』
まるで予想外な事が起こったかのように
彼女の顔は、青ざめていた
『ブルー』
バロンさんは、彼女に語りかけた
『俺の事をもっと、もっと愛してくれていたのは嬉しかった。』
何を言っているのか、僕は全く耳に入れなかった。
僕は、あの女を斬りつけることだけを考えていた
『でもな、』
あの女は、僕を触れずに吹き飛ばした。
何かの衝撃が、見えない衝撃が僕を襲った。
僕は壁に叩きつけられ、
内臓に傷が付いたようだった。
口から血が吹き出た
血が、血が止まらない
『ブルー、お前はずっと間違っていたんだな』
あの女は震えていた
震えて、泣いていた
『香霖』
声が聞こえた。
その声は、魔理沙の物だった
目の前に、魔理沙が居た。
霊夢が居た
『幸せって、なんだろうな。』
魔理沙は、笑顔でそう言った。
一片の悲しみも、感じられなかった
『私さ、思うんだ。幸せって』
魔理沙の姿が、だんだんと薄くなっていった
『いろんな形があるから、いろんな所にあるんだって。』
霊夢の姿も、薄くなっていく
『だから、それが偽りでも、幸せは幸せだろ?だから』
霊夢の口が開いた
『これから先は、先の未来の幸せがあるんだってさ』
無邪気な笑顔で、見つめあった後、
彼女たちは消えた
いや、
一瞬で僕の横に移動した
僕の後ろには、いつの間にか
居なくなった全員の亡霊が居た
多くの
多くの優しい光が、僕を応援しているようで
『ブルー』
バロンさんが、口を開いた
『俺の幸せは、皆で、一人だけを愛さないで、皆愛して、いっぱい、いっぱい愛を感じる事が、俺の幸せだったんだ。その愛の形は、いろんな形をしているけど、でも、どれも全部美しい物だから、どんな、どんな芸術でもな。』
ブルーの震えが止まった。
ブルーと、バロンは手をつなぎ、
僕たちの元へと、歩み寄ってきた。
『皆ぁ、済まなかったなぁ。俺の嫁が迷惑かけちまったみたいでよぉ。』
バロンさんが、優しく、力強い声で、
僕たちに言葉を送った
『なぁ、霖之助ぇ』
バロンさんの言う事に、僕は納得ができなかった。
だが、それでバロンさんの言いたい事が分かった。
『バロンさん、本当に、本当に貴方はブルーさんが好きなんですね』
『まぁな』
『でも、レミリアはどうするんですか?フランドールさんも、二人の娘を置いて行くんですか?』
バロンさんは、笑った
笑って、大きな声で笑った。
『お前さあ、何のために娘たちを地の上の城に置いて来たと思ってんだよ』
そう言った
でも、彼女たちは今、だるまだ
『大丈夫さ。なんとかなるだろう。』
バロンさんは、安心したような声で、そう答えた
『なぁ、後ろの亡霊さん達』
今度は、後ろの人達に、声をかけた
『済まなかったな。ずっと、ずっとこの城にとどまったまま黄泉の国にも行けなくて。ここは、死者を留まらせるような魔力を持っていたなぁ。まるでそれは地獄だ。ここは地獄の城だったな』
『でも悪いな、それは呪いなんだ。嫁の呪い』
謝罪の言葉を述べながら、さらに言葉を付け加えた
『こいつは結局、ただの臆病者だったんだよ。』
『バロンさん』
『だから、俺も一緒についていかねえとな。だから』
本当にそれで良いんですか
喉元から言いかけたけど、
結局、言葉にできなかった
剣が光っている。
亡霊の少女たちが、剣に力を入れているのだ。
終わらせなければいけないのか
ようやくブルーは本当の愛に気づき
バロンさんも幸せになれたというこれを
本当に終わらせなければいけないのか
『霖之助』
バロンさんの声が聞こえた
『頼む』
その言葉が聞こえた直前、頭の中が真っ黒になった
何も考えなかったのか
バロンさんの為を考えたのか
ブルーの為を考えていたのか
亡霊になった皆の事を考えていたのか
主と主の妹の事を考えていたのか
自分の事を考えていたのか
分からなかった
それらを全て、
考えていたのだろうか
一閃
大きな光の刃の波動が、バロンさん達を包もうとしていた
『みんな。ごめんなさい』
ブルーの声が聞こえた。
何かの後悔が、心の中で産まれた
『バロン!!愛してる!!愛してるから!!!!』
涙混じりの声で、ブルーはバロンにしがみついていた。
そして、光は
二人を包んでいった。
この部屋には、もう二人は居なくなった
光に包まれて、塵と化した。
いつの間にか、亡霊となった皆も見えなくなっていた。
この部屋に残っていたのは、
僕と、全裸で、だるまになっている主と
主の妹だった。
再生能力が無いのか、
手足が、全く生えていなかった。
皮は繋がれていたが、
もう二度と、彼女たちの手足は生えないだろう。
僕は、主と主の妹を抱えた
両手が塞がった
だが、もうしょうがないのだ。
二人は、温かかった。
温もりが、僕に伝わった
彼女たちは生きている事を、実感できた
抱えながら、僕は先程の倉庫に向かった。
その倉庫の中は、先ほどと違うところがあった
うめき声や、物音が全く聞こえないのだ
『魔理沙?』
彼女の名前を呼んだ。
彼女の埋まっていた壁の方へ向かった
そこに、彼女は居なかった
老朽化した、魔理沙の剥製が、
皮膚がボロボロになっていて、所々に穴が空いている
そんな、埃まみれの剥製になっていた。
もちろん、ピクリとも動かなかった。
それは、まさしく『死』のイメージだった
城は、もう何も移動はしなくなったようだ
それは、忘れ去られた鉄道のおもちゃの線路のように
つねに同じ場所に同じ所が規則性に存在していた
なので、坂を見つけるのは容易だった。
ところどころに、バラバラになった剥製が見られた。
だが、その剥製は、二度と動こうとはしなかった
ただ、あさっての方向に向いていて、散らばっていた
それは、まるで不気味なマネキンのようだ
先程の暴走が嘘のように、
場所は、沈黙を保っていた。
僕を呼ぶ声など、微塵も聞こえない
ただ、沈黙が流れ
僕の歩く音だけが聞こえた
大きな彫刻の施された扉
扉の向こうの、絵の描かれたバロンさんの部屋
その絵の中の扉
扉の奥の廊下
その奥の部屋に、僕は向かった。
その部屋には、一つの柱がある
この部屋に来なければ、確実に完全に終わらせる事はできないだろう。
『………………』
このような城は、完全に断たなければならない。
壊さなければ、彼女たちも浮かばれないだろう。
だが、バロンさんはどう思うだろうか
この絵は、失っても良い物だろうか
『なぁ、ミルゴ君』
目の前に居た、亡霊の少年に僕は話しかけた。
柱の影に隠れていて、ずっと僕を待っていたかのように
少年は、ずっとそこに居た。
そう言えば、一つだけ、
一つだけ分からない事があった
『ミルゴ君。』
少年は、ただじっと僕の顔を見ていた。
『幻想郷の少女たちを誘拐したのは、君だね?』
少年は笑い、翼を広げた
白い髪
そして、それに繋がるかのように白い翼が
部屋に広がった。
『うん!!だって僕、お父さんも大好きだけど、お母さんも大好きだもん!!』
そう言って、少年は尖った歯を露出させた。
少年の能力は、
≪相手を眠らせる能力≫
それは、強力な能力だった
下手をすれば、姉達よりも強い物になりかねんからだ
何よりも、あの紫にさえもあれだけの影響をおよぼしたのだから。
『お母さんがね、地の上の世界の女の人を連れてきたら、褒めてくれるんだよ!!』
無邪気に、子供のような笑い声で
自慢のように言っていた。
足音が聞こえた、
足音の方を見ると、
そこには、手をつないだバロンさんとブルーが歩いていた
『こんな所に居たのか、じゃぁ、もう行こうか』
バロンさんが、少年にそう言うと、
少年は、さらに嬉しそうな声を出した
『うん!!』
バロンさんとブルーは、一度手を離し
真中に少年を挟んで、
バロンさんが右手、
ブルーが左手を握って
絵の描かれた壁の方に向かって歩いていった
そして、徐々に薄くなって
三人、一緒に消えて居なくなった。
壁に描かれた絵に、一つ絵が加えられていた
あの地獄に居た女の表情が、描かれていたのだ。
それは、優しそうで嬉しそうな顔だった。
バロンさんが望んだ事は、これなのだろうか
地獄が崩壊し、
全員が解放されている絵
そんな絵として、たった今、この壁の絵は完成した。
美しい、とっても美しい絵だった。
僕は剣を構え、柱の前に立った。
主と主の妹を、すぐそばに置いて、
僕は柱の前に立っていた。
これで、本当に終わりだ
本当に
本当に終わる
『………………』
100年前の幻想郷を奪った、この事件が、
ついに、この柱を失くす事によって、終わりを迎えるだろう
『ありがとう』
僕はそう言って、柱を斬った
必ず、崩れるように柱を斜めに斬った
ギ
天井の崩れる音が聞こえる
ギギギギギギギギ
天井に、ヒビが入る
壁にも、床にもヒビが入る
城の崩壊が起こっているのだ。
僕は、主と主の妹を抱えた
そして、入口に向かって走った
走り続けた
壁が崩れ、部屋が傾いた
壁が潰れかけてきた。
僕は、全速力で駆けていった
大きな扉を開けた
すぐに曲がり、入口に向かった。
廊下のヒビが広がる音が聞こえる
ギギギギギギギギギギギギギギギギギギ
坂の所を走ると、
足の着いた所から、どんどん崩れていった
床が、どんどん下に落ちていく
『くそっ!!』
上にあがっていくごとに、
天井が崩れていっているのが分かった。
そして上に辿り着くと、
床がほとんど無い所々穴だらけの床を走っていった。
足場に気をつけながら。
そして、ようやく見覚えのある場所に辿り着いた。
この先に、大広間があるはずだ。
そこから曲がると、大広間に辿り着いた
瓦礫に埋もれた、大広間が
『…………………!!』
大きな衝撃が僕を襲った。
こんな場所………動けるはずがないのだ。
抱えている状態で、とても
僕の頭に、衝撃が当たった。
瓦礫が、僕の頭に直撃したのだ
内臓から、
舌から
そして、首から流れた血が
僕の口から流れた。
あ。僕もう死ぬんだ
僕は、瓦礫だらけの床に倒れこんでしまった
ああ。守れなかった
結局、守れなかったな。
主と主の妹は、まだ体が綺麗だった
このまま、僕は抱えたまま死んでしまうのだろう。
僕の後ろは、もう床は無かった。
瓦礫に埋まっていて、
もうもはや、後戻りはできないだろう。
もう、なすすべも無い
目が霞んできた
ごめんなさい
ごめんなさい
主
妹様
こんな執事でごめんなさい
嫌々やっていたとしても
こんな情けない三日間を過ごすつもりは無かった。
僕は、最低でした
手が動かない
足も動かない
麻痺しているようだ。
終わりだ。ついに終わりだ。
僕は諦めた
謝罪の言葉を頭の中で連なりながら
謝りながら
瓦礫に埋もれるのを待った。
だが、目の前に人が立った。
何だ?と目を見開くように
必死に現実を見ようとするような目で前を見た。
その場所に、咲夜が居た
彼女たちは、まだ黄泉の国に行っていなかったのか
咲夜の亡霊は、主と主の妹を抱えた後
出口に向かって歩き出した。
僕は、動けなかった。
だから、その場所で目を閉じようとした時
僕は誰かに抱えられた。
二人掛かりで。抱えられた
霊夢と、魔理沙だった
彼女らも亡霊だった
亡霊だったはずなのに
なぜ、僕たちに触れられるのだろう
抱えられながら、彼女らは
僕と主と主の妹を抱えて、瓦礫の間を通って行った。
その隙間を通った後には、そこには階段があった
まだ、その場所だけは残っていた。
『魔理沙、霊夢』
口が動かせるようになった
手も、足も
麻痺から解放された
『咲夜さん、もう良いですよ。』
だが、彼女たちは離さなかった
咲夜はずっと主と主の妹を抱え
魔理沙と霊夢は、僕の両腕を肩で抱えていた。
階段を上がっていく
狭い階段を上がっていくと
目の前に赤い扉があった。
その赤い扉は、開いていた
その向こうには、城の中が
綺麗で明るい、城の中があった
僕たちは、その城の仲間で運ばれ、
木の床の上で、僕たちは居た。
亡霊たちは、下へ帰って行った。
もう用事は終わったかのように、下へ、下へ
また戻るかのように、城の中に帰って行った。
『霊夢!!魔理沙!!咲夜!!』
いつの間にか、他に人は増えていた。
幻想郷に居た、僕と面識のある少女たちが
『霖之助さ――――ん!!』
霊夢の声が響いた。
少女たちは、徐々に、徐々に薄くなっていった。
消えていった
最後の声が、響いた
『助けに来てくれて、ありがとう!!』
瞬間、瓦礫が彼女達の上に落ちてきて、
彼女たちが消える前に、彼女たちは見えなくなった
瓦礫が落ちる音が、まだ聞こえる
ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ
まだ、まだ聞こえた
ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ
聞こえなくなった
完全に、城は瓦礫に埋まってしまった。
ただの土の一部となった。
剥製も
絵も
少女たちの遺体も一緒に
ただの、土の一部となってしまった。
彼女たちは、黄泉の国へと行けたのだろうか
皆、皆幸せの世界に行けたのだろうか。
分かる事は、彼女たちと僕は
笑顔のまま、別れをした事だ
『………霖之……助……・・』
主の声が聞こえた。
それは、弱々しく、小さな声だった。
『どうしました?』
『眠いよ…………なんだかとっても………眠いよ………』
主はそう言った。
僕は微笑んだ後、二人を抱えた。
今気付いたが、だるまになった二人は、とても軽かった
『それでは、就寝用の服に着替えて、今日はもうお休みになりましょう。』
そう言った後、僕はこの図書室から去った
幻想郷の少女喪失事件は、これで幕を閉じた
『召使、今日の朝食は?』
僕は、調理した食事を主の前に持ってきた。
『ハムエッグと、トーストとコーヒーです。』
『ふうん。まあまあね』
主がそう言った後、僕は主の後ろに周り
僕の手でナイフとフォークを使った。
主の手足が無くなった為、
食事の時は、僕が主の代わりの手にならなければならなかった
僕がハムエッグを切り、主の口へと運んだ。
それを、手を辞めずに、トーストも細かく切って主の口へと運んだ
主の口が汚れるならば、布巾を持って主の口を拭いた。
コーヒーも、僕がカップを持って口に運ばせる必要があった。
『ふぅん』
主が言葉を開いた
『一週間でマスターしろって言ったけど、三日目で随分腕が上達したわね』
『恐れ入ります』
僕はそう言葉のやり取りをしながら、食事を終わらせた。
『あっ!!霖之助!!』
主の妹は、地下牢から普通の部屋へと変わった
手足を失った彼女は、もう危険ではないと判断したからだ。
だが、それでも口で枕を噛んだりしていた物だから、僕はその事について叱った
『ごめんなさい………』
反省したようなので、僕は食事を用意した。
食事を切って、主の妹の口へ食事を運ばせていった。
『なんだか、こう言うのも楽しいね』
主の妹は、笑顔でそう答えた。
『もっと頂戴!!もっと!!』
僕は、まだ残っているトーストを、主の妹の口に運んだ。
食事を終わらせると、僕は部屋に出る準備をした
『霖之助』
主の妹が、僕を呼びとめた
『大好きだよ!』
主の妹は笑顔でそう言った
僕は微笑み返し、その場から去った
主は、これからは一生車いすで移動しなければならない
僕は、車いすを押して、主の希望通りの場所へと運ぶ
『庭に行きたいわ』
そう言われれば、庭に移動した。
庭には、一本の白い木が立っていた
だが、葉は緑色だった
『こういう生活も、楽で悪くないわね』
主はそう言ったので、僕は言い返した
『でも、色々不自由でしょう?』
『貴方に任せるわ。』
冗談交じりだったのか。主は少し微笑んだ。
その後、主は急に沈黙した
考え事をしているいのか、表情が重い
『主?』
僕は主を呼んだ。
主は、悩んでいた事を口に出した
『今日で三日目ね。貴方はどうするの?』
質問をしてきた
『貴方が望むなら、このまま店に戻るのも許してあげるわ。貴方には命さえも助けられたから。ずっと、私達の世話するなんて、しゃらくさいでしょう?しかも手足が無くなってから、さらに難しい仕事も増えて。だから、店に戻っても私は文句を言わないわ』
それは、僕に自由を渡すと言う話だった。
なぜ、その事を悩んでいたのか分からなかった。
だが、主は今にも泣きそうな顔をしている。
辛そうな、そんな顔をしている。
僕は、その質問を返答した
『明日の朝食はココアとコーンスープとポテトサラダです。他にフランスパンをお付けします。』
主は顔を上げた。
『良いの?私達の世話係を受けて立つと言うの?今まで生きていた中で、大変な仕事が毎日あるのよ?それでも良いって言うの?』
僕は、その質問に答えた
『もう一度言います。明日の朝食はココアとコーンスープとポテトサラダです。他にフランスパンをお付けします。楽しみにしてください』
主の目から、涙が流れていた。
もう、僕は決心したのだ。
店は、たまに帰るくらいで十分だ
骨董品にも飽きた
暇が無くなるのならば、喜んで。
『こっ………こきつかってやるから………覚悟しなさい…!』
涙声で、でも笑顔で僕の方を見た。
僕も、微笑み返し、主の頭を撫でた。
『それでは、そろそろ夕食の時間です。』
僕は、泣いている主を運びながら、食事の場所に向かって行った。
図書室の壁に存在していた
赤い扉を開けると、その場所はやはり瓦礫に埋まっていた。
彼女たちは、この中には居ないだろう。
きっと、黄泉の国へと帰って行ったはずだ。
今は、そう確信を持てた。
休憩時間に摘んできた花を、
花束にして瓦礫の上に置いた。
白い桜の木は、
その花畑の上に立っていた。
その白い桜の木は、霊夢の心の中の桜の木よりも
段違いに大きくなっていた。
そして、何倍にも美しくなっていた。
その場所は、本当に天国のようで
不意に、涙が流れてしまったよ。
綺麗な花
皆は見えているか
この花束が、見えているか
なぁ霊夢
魔理沙、咲夜、皆
もうこの幻想郷は昔の幻想郷では無くなってしまったけど
僕は生きていく
この世界で生きていく。
今から生きる事を考えるよ
『ねぇ、霖之助さん』
『どうしたんだ?霊夢』
『霖之助さんは、自分の未来の事とか、考えた事ってある?』
≪終≫
これで、長い長い長編も終わりです
いやぁ終わりませんでした。ゲシュタルト崩壊。
はい、戯言終わり!
この話は、まさしく最終回であろうような終わりの後のお話を考えて書いた作品です。
なので、ちょっと配役を斬新にしました。
最初、ラスボスは バロンにする予定だったのですが
『仲間の方が面白くね?』という事でこんな形になりました。
今回の話は、ちょっと異色っぽいので、ついていけるのか心配です。心配で胃の物がウォボォロロロロロロ…………
ふぅ。失礼。
では、次書くときは今度こそ長いものではなく、短編の作品を書きたいと思います。
またしばらく書きませんが、見ていていただき、ありがとうございました。
さよならー。
ND
- 作品情報
- 作品集:
- 25
- 投稿日時:
- 2011/03/11 13:23:06
- 更新日時:
- 2011/03/11 22:23:06
- 分類
- 霖之助
- レミリア
- フランドール
- 紅魔館
- 大長編
胸がキューっと締め付けられるような感覚がたまりません。
確かにあった過去、それを背負って生きていく。
楽しかった時間が終わってしまう空虚感……はわわわ
最高でした!
こーりんカッコイイ!
幸せとは何か?
愛とは、相手と合わせること。独り善がりの者ではない。
幸せとは、死でさえ合わせること。永遠に縛り付ける事ではない。
執事香霖の万能武器である霧雨の剣が、他者を不幸にした親子を繋ぐために斬る!!
主達を自由にするために、四肢を斬る!!
香霖は一生、身体を不自由にした主姉妹のために尽くす事になりますが、
淡白な香霖だからこそ、躊躇無く思い切った行動を取れるし、執事生活も苦にはならないでしょう。
これは、一つの可能性。
変化の無い店主が、過去やこの世ならざるものに囲まれて、身近な素晴らしさに気付かない生活を送っている。
もし、外に出て、失ったものに素晴らしさを見出したとしたら。
香霖は、過去に囚われず、自分の生きる世界で幸せを探すほうを選びましたね。
最初、これは終わってしまった幻想郷の話だと思っていました。
読み終えて、これは私の知っているものから変わってしまいましたが、まだ続いている幻想郷の話なのですね。
最期は自機キャラが香霖達を救出して、異変を完全に終わらせましたね。
ミルゴ君の誰でも眠らせる能力、恐ろしい…。
フランちゃんの全てを破壊する程度の能力と違って、眠った相手は『終わらない』のだから…。
今回の異色作、少々疲れましたが、堪能いたしました。
スカーレット家の身内がしでかした不始末なので、香霖は『家臣』という立場で無ければならなかったのか。
では、また素晴らしい作品を携えたND様との再開を祈っております…。
亡霊霊夢たちとのロマンスが美しくも悲しい。良作でした。
『僕は生きていく
この世界で生きていく。
今から生きる事を考えるよ』
ところで、これ本当に地震については関係ないんだよね?
路地裏で無理矢理キスしてくる霊夢ちゃんとか、服変わりながら追っかけてくる霊夢ちゃんとか
可愛すぎる
可愛い可愛い!!