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『だらだら東方大学物語 【第2話】』 作者: うらんふ
*注意*
この物語は、題名のように、だらだらとした東方大学のお話が続くだけの、読んでも意味があるようなないようなお話です。読み終わった後にさわやかな感動があるわけでもなく、またはこれからの人生に役立つ豆知識が手に入るわけでもありません。
それでも、「まぁ、時間つぶしに見てみるか」という奇特な方以外は、ブラウザの「戻る」を押して帰られることをお勧めいたします。
「よし、じゃぁ新人、まずは一発芸をしてみろ」
寮ですごす初めての夜、すでに魔理沙の部屋はぐちゃぐちゃになっていた。いたるところに酒の空き瓶が転がっている。コタツの上にはつまみとしてホタテの貝ひもが皿の上に置いてあり、ぐでんぐでんになった魅魔先輩がビールのなみなみと注がれたジョッキを片手に魔理沙にそう語りかけてきた。
「一発芸、ですか?」
「うちの寮はねぇ、新人はまず最初に一発芸をしなけりゃいけないという決まりがあるんだよ」
そういってカラカラと笑う。
魔理沙は助けを求めるように周囲を見渡した。
コタツに座っているのは4人。
先ほどからビール片手に魔理沙にからんできている、すでに大学生活を10年以上満喫しているという魅魔先輩。
一人で全員以上の量のつまみを食べている西行寺四回生。
電卓を片手に、麻雀の記録用紙を見て全員の勝ち負けを記入している八意院生。
横になり、テレビをだらだらと眺めている八雲四回生。
(駄目だ、この人たち。駄目な先輩だ)
魔理沙はそう思い、逃げだそうとしたのだが、よく考えてみたらこの部屋こそが自分の部屋なので逃げる場所がなかった。逃げるとしたらトイレにでも閉じこもるしかない。というか、どうして自分の部屋に自分の居場所がないのかが意味が分からない。
(あ)
コタツに入っている先輩は4人。
先輩は5人。
ということは、コタツに入っていない先輩もいる。
よく見てみると、部屋の片隅に座っている、なかなか面白い髪形をした威厳のある先輩がいた。八坂神奈子先輩。確か、さきほど、院生だと言っていた。
(この先輩なら私にからんできていないし、少しはまともな先輩なのかもしれない。私を助けてくれるかもしれない)
そう思い、「あのー・・・」と声をかけてみた。
「だいたいねぇ、私はねぇ」
八坂先輩は、一人で一升瓶に向かって語りかけていた。
「カイワレダイコンに醤油をかけたらウニの味になるのかねぇ。あんたはどう思う?」
わけの分からないことをつぶやいている。よく見てみると、眼が座っていた。
(・・・駄目な先輩だ)
「さぁ、一発芸をやってもらおうか」
うひひと笑いながら、魅魔先輩が語りかけてきた。ビールを飲むのは止めようとしない。片手でジョッキを持ったままで、嬉しそうにこちらを見つめてくる。その様子に気づいたのか、テレビから目を離して、八雲先輩が語りかけてきた。
「そうよぉ。うちの寮は、みーんな新人の時に一発芸をしているんだから。私だってやったのよぉ。あの時は辛かったわぁ。でも、思い起こしてみればいい思い出よねぇ」
この目は、嘘を言っている目だ。
私はそう確信したのだが、それを言うことのできる雰囲気ではなかった。私がぷるぷる震えているのをみて、より楽しくなったのか、「私もあの時は大変だったわぁ〜」と西行寺先輩がいい、「私もですよ」と八意先輩も言葉を続けた。
「納豆にネギをいれるのとカモがネギしょってやってくるという話の因果関係が分かるか?私はそれをずっと考えているんだよ。ネギはうまいねぇ。そうだ。ネギをしょったカモが納豆畑に足を踏み込めば全ての問題は解決じゃないかい?」
八坂先輩だけはずっと部屋の片隅で一升瓶に語りかけていたので関係はなかった。
「いーっぱつげい!」
「いーっぱつげい!」
「いーっぱつげい!」
「いーっぱつげい!」
4人がはやしたててくる。無駄に息がそろっている。声と同時に手拍子が沸き起こる。またイライラすることに、テレビも面白くもない漫才を延々と流していた。
「いーっぱつげい!」
「いーっぱつげい!」
「いーっぱつげい!」
「いーっぱつげい!」
「・・・分かりました」
さすがに温厚な魔理沙もイライラが頂点に達していた。そもそも、ここは私の部屋なはずなのに、どうしてこんなに好き勝手されなければならないのだろう?
「ちょっとどいてください」
先輩も後輩も関係がない。
少し、痛い目を見てもらうことにしよう。
「先輩方、麻雀がお好きなんですよね?」
魔理沙はそういってニヤリと笑った。とたんに、4人の表情がすっと冷静なものになる。中でも一番鋭い目をしていたのは、八雲先輩だった。
「・・・そういうあなたはどうなの?」
「私ですか・・・私は・・・」
そう言いながら、魔理沙は卓上に置いてあった皿と酒を床に置き、卓上の牌をかき混ぜ始めた。全自動雀卓のような高価なものがあるわけがない。コタツの上に麻雀マットをひいただけの、安っぽい麻雀卓だ。
ならば、親父仕込みの技を、存分に見せてやろう。
「こんなものですかね?」
牌を並べる。
カチ、と音がしたかと思うと、魔理沙は素早く手を動かして牌を倒した。
【東南西北白発中19一九@H】
倒れされた牌は、国士無双の役がそろっている。
「ふぅん・・・」
八雲先輩が笑う。
「手先は器用そうね」
「先輩方には及びませんよ」
「言うわね」
八雲先輩が卓に座った。
ちょうど、卓には魅魔先輩と西行寺先輩が座っている。
「私はどいておくわ」
八意先輩の言葉が、新寮生歓迎麻雀の始まりとなった。
「麻雀はけっこうやっていたのかい?」
魅魔先輩はそういうと、手牌から【東】を切り出した。おっとりとした手つきで西行寺先輩がツモる。魔理沙は理牌もせずに、先輩たちの手つきを観察していた。
(所詮は、素人レベル・・・予備校にもいかずに雀荘でバイトしていた私の麻雀力を見せてやるぜ)
「そんなことはないですよ」
言いながら、魔理沙は手を伸ばした。今回、魔理沙は平打ちに徹することにしていた。イカサマには自信があるのだが、いきなりツミコミをするのも大人げないだろう。調子にのっている先輩方の鼻っ柱を叩いてやるとしよう。
「アカギや天を読んでいるくらいですよ」
「アカギと天ねぇ」
魅魔先輩は笑った。
「あのマンガを読んでいても、打つ牌は強くなっても、麻雀は強くならないよ」
「そうですか?」
「確かに面白いけどね」
「先輩は天に出てくるキャラの中で、誰が一番好きなんですか?」
「そんなの、決まっているじゃないか」
魅魔先輩がそう言って【3】を切った時。
「ロン」
隣に座っていた八雲先輩が牌を倒した。
「高めね。タンピン3色ドラ1マンガン」
「・・・」
「私は、三色銀次が好きよ」
「・・・あんたは聞かれていなかったはずだけど」
不満そうに、点棒を渡す。
「・・・そういえば、先輩方も麻雀マンガお好きなんですか?」
「この寮には図書館があるからねぇ」
牌をかき混ぜながら、魅魔先輩は答えた。
「図書館?」
「そう、図書館」
牌が配られる。
「ちなみに、私が好きなのはムダヅモなき改革と兎だね」
魅魔先輩はそういって牌を切った。その牌を横目に、八雲先輩が言った。
「私はバードとノーマーク爆牌党ね」
「チー」
八雲先輩の切った【G】を鳴いた西行寺先輩も言葉を続けた。
「私は哭きの竜とオバカミーコよ〜」
「私は天牌とむこうぶちね」
卓外にいた八意先輩も答える。なるほど、なるほど、この寮は、どうやらそういう寮らしい。
(いいハイパイだぜ)
【白白発中中中北134EEH】
魔理沙は自分の手を眺めてそう思った。
鳴いていけば、大三元まで見える。この先輩方に、ぎゃふんと言わせて見せる。
「・・・私は覇王とフランケン・・・」
部屋の片隅で一升瓶相手に八坂先輩が呟いているような気がしたが、まぁ、無視をしてもいいだろう。
ぐだぐだと話をしながらツモっていく。
(白か発)
(白か発)
(白か発)
そう思いながら、ツモるのだがなかなかツモってこない。中がアンコだから、二回鳴いてもいいと思っていた。
と、その時。
「白」
魅魔先輩が白を切った。
(よし、チャンスだ!)
魔理沙は迷わず声をあげる。
「ポン!」
同時に、西行寺先輩も声をあげた。
「ポン!」
・・・
・・・
・・・
「なんでだぁ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
思わず魔理沙は立ちあがった。
「あらあらあら」
西行寺先輩は、さも悪そうにそう言った。
「こういう場合はどうなるのかしら?」
「上家優先じゃないか?」
「そうねぇ。ごめんなさいねぇ、魔理沙ちゃん」
そして白を取る。
「いやいやいや、ちょっと待ってくださいよ!」
魔理沙は立ちあがった。
「どうしてポンが同時にかかるんですか!?おかしいじゃないですか?見てください、今、卓上に白が5枚ありますよね?おかしいですよね?」
「5枚じゃないわ」
八雲先輩が真剣な目で魔理沙を見つめた。
思わず、魔理沙はたじろいだ。
「6枚あるもの」
そういって八雲先輩は自分の手牌から白を一枚倒して見せた。
「だからそういう問題じゃないって!」
思わず突っ込む。
突っ込まざるをえない。
「あははははは。予備の白を抜き忘れていたみたいだねぇ」
「どうするの〜」
「まぁ、いいんじゃない?」
「なら、上家優先よね〜」
「ちょ、ちょっと待ってください!私の大三元が・・・」
「あらあら、魔理沙ちゃん、なら中か発をアンコでもっているのね〜」
「それは・・・」
「いいじゃない、チートイにすれば」
「大三元(笑)」
「コンチクショー!!!!!」
やってられない。
なんなんだこの人たちは。
思わず魔理沙は頭をくしゃくしゃにかいた。テレビでは相変わらずわけの分からない番組をやっているし、部屋の片隅では相変わらず八坂先輩が一升瓶に向かって「プリンに醤油をかけるとウニになる・・・はっ!ということは、プリン食べたければウニを買ってくればいいんじゃないか・・・ぷぷぷ・・・私天才すぎる・・・」とつぶやいている。
我関せず、といった感じで八意先輩は「人をおちょくる50の方法」などという本を読んでいるし、なんというか、全体的にカオスな状況だった。
「酒でも飲まなきゃやってられないぜ!」
「お!いいねぇ、飲もうのもう」
「いーっき!いーっき!」
「いっき!」
「いっき!」
「いっき!」
「そこまでよ!」
みながはやし立て、魔理沙が一升瓶を持って立ち上がった瞬間、手にマンガを持ったゆったりとした服を着た少女が扉を開けて入ってきた。
「先輩、うるさいです!」
「ごめんねぇ、パチュリー」
魅魔先輩はそういうと、カラカラと笑った。
「この新人がうるさいんだよ」
「わ、私だけのせいですか?」
「だいたい90パーセントはあなたのせいね。残りの10パーセントはスキマおくりになりました」
「訳が分からない・・・」
「そんなわけで」
魅魔先輩が、入ってきたパチュリーという少女を見やるといった。
「この子が、さっき言っていた図書館さ」
「図書館?」
「マンガオタクなんだよ」
「むきゅー」
パチュリーは不満そうに頬を膨らませた。
「オタクじゃないです。マニアです」
「どっちでも同じだよ」
「違います。オタクとマニアの間には、決して超えることの出来ないジェリコの壁があるのです」
「その言い方がすでにオタクくさいのよね」
「むきゅー」
「まぁいい。パチュリー、なんか面白いゲームない?」
「・・・ありますよ」
ゲーム、と言われたパチュリーは、少し嬉しそうな顔をして部屋から出て行った。
「・・・?」
なんだろう?
と思っている間に、何台かのゲーム機を持ってパチュリーは再びやってきた。
「ネオジオとファミコンとサターン」
「いいねぇ」
麻雀はどこにいったのだろう?
グダグダな感じで麻雀が終わってしまった。
「コンセントコンセント・・・」
魅魔先輩がそう言いながら、コンセントにケーブルを差し込む。最初につけられたのはネオジオだった。
「100メガショック!」
「・・・そういえば昔、ファミコンのがんばれゴエモンが2メガですごいすごいとテレビCMしていたのよね」
「私、持っていたわー」
「ありますよ、ゴエモン」
嬉しそうにパチュリーはそういうと、そそくさと部屋から出て行った。
(まさか)
「はい!」
手に大きなカゴを持ってやってくる。そのカゴの中には古いファミコンのソフトが山ほど入っていた。
「ゴエモン、アイスクライマー、クルクルランド、おぉ!ガチャポン戦士2があるじゃないか!ネオジオやめてガチャポンやろう!」
「先輩、ちょっと待ってください。私と永琳で今からキンファイやるんですから」
「そんなのやめてガチャポンしよう、ガチャポン」
「もう・・・テレビが足りないんですよ」
「なら上の階にいって、テレビ持ってこよう」
「そうですね、じゃぁ、にとりの部屋から持ってきましょう」
「今の時間、いるかね?」
「鍵持ってるから大丈夫です」
・・・
魔理沙の部屋が浸食されていく。
「ガチャポン大会ですか♪」
また人が増えた。
にとり(後から分かったのだが、二回生の先輩らしかった)がテレビを持ってやってきたのだ。
(・・・私の部屋・・・)
魔理沙の部屋にはテレビが2台おかれ、それぞれにファミコンとネオジオがつながれてゲーム大会が始まっていた。麻雀マットはよこにおかれ、ただの酒置き場になっている。いつの間にか灰皿が置かれ、煙草の煙が充満しだしたので窓が開けられ「寒いじゃないか」という喧騒が満ち溢れている。
(・・・キラキラ輝く大学生活・・・)
「あ!こぼした!」
「もったいない!」
「すすれすすれ!」
一升瓶が倒れ、こぼれた酒をそのまますすっている先輩の姿が合った。というか、いつのまにかまた知らない人が何人か増えている。
(・・・はぁ・・・)
なんていうか、なんといえばいいのか。
「あなた、新寮生?」
呆然としていた魔理沙にむかって、語りかける者がいた。
振り返ると、二人の女性が立っていた。
ボブカットで真面目そうな顔の女性と、ちょっと超然とした表情を浮かべた巫女姿の女性だ。
「私は向かいの部屋に入った博麗霊夢、よろしくね」
「わ、私は別棟に入ったのですが、魂魄妖夢と申します。宜しくお願い致します」
二人はそういって手を差し伸べてくる。
魔理沙はおずおずと、その手を握り返した。
「今日からこの幻想寮に入った霧雨魔理沙です・・・宜しくお願いします・・・よろしくついでに聞くのですが、ここって、いつもこんな感じなんですか?」
「そうみたい」
霊夢はそういうと、やれやれといった感じでため息をついた。
「私が入寮したのは一週間ほど前なんだけど、だいたい毎晩、こんな感じ・・・ちょうどあなたの部屋が開いていて、また広い部屋だからいいたまり場になったみたい」
「・・・」
「頑張ってね」
「・・・何を」
泣きそうな気持になる。
「あー!畳が焦げてる!」
「消火だ消火!水かけろ!」
「酒しかありません!」
「同じようなもんさ!」
・・・振り向くのが怖かった。
「それにしても」
魔理沙はため息をついた。
「一発芸から、こんなことになるなんて夢にも思わなかったぜ・・・」
「一発芸?」
きょとんとした顔で、霊夢と妖夢が魔理沙を見つめる。
何か、嫌な予感がする。
「・・・一発芸」
「一発芸?」
「一発芸」
聞くのも嫌だけど、聞いてみよう。
「あのー、博麗さん・・・」
「霊夢でいいわよ。同学年なんだし。私もあなたの事、魔理沙、っていうから」
「じゃぁ、霊夢」
「なに?」
「霊夢は新寮生伝統の一発芸なんてやったのか?」
「やってないわよ」
「・・・」
「私もしていません」
「・・・」
振り向く。
「私は止めたんだよ?」
魅魔先輩が笑っている。
新品のはずの畳が、焦げて酒びたしになっている。
「まぁ、形あるものはいつか壊れるものさ」
「壊したのはあなたでしょうが!」
思わず突っ込む。。
これが、「幻想寮のたまり場、憩いの魔理沙亭」の始まりを告げる鐘となった。
だらだらと続く
そんなわけで第二話です。
本当に、意味もない時間がだらだらと続きます。
意味もない作品ですが、だらだらとお付き合いくだされば有難いです。
学生時代ってこんなもんですよね(笑)。
うらんふ
作品情報
作品集:
25
投稿日時:
2011/03/29 04:36:45
更新日時:
2011/03/29 13:36:45
分類
魔理沙
だらだら
前回に輪をかけてだらだらですごめんなさい
何このカオス部屋!?
酒だのタバコだのマージャンだのレトロゲーだの…。
神奈子先輩はそこにいない誰かと話しているし、
永琳先輩はパタリロが便所で読んでいるみたいな本を読んでいるし…。
…いずれ、魔理沙達新寮生は染まっていくんでしょうね…。
ちなみに家にあるマージャン漫画は、最近アニメ化が決定したマンガを描いている人の東方同人誌ぐらいです。
続きをだらだらとお待ちしております。
たぶん霊夢と咲夜と妖夢と早苗が魔理沙の悪友となっているでしょう。