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『ひきこもりと氷の妖精』 作者: 七色の匿名希望
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二次創作注意!私設定や私解釈が含まれてる可能性があります!
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*******氷の妖精*******
数日前に、春を迎えた(らしい)
リリー…なんというのか、そんな感じの奴が、春を告げていった
ちなみに、らしい、というのは、俺があまり外の世界に興味がないからだ
だが、春を迎えようが夏を迎えようが槍を迎えようが、俺には関係ない
…今日も、下から怒鳴り声が聞こえる、いつもどおりだ、俺には関係ない
俺の現実は、6畳1間の空間以外、存在しない、本に読みふけり、夜こっそり食料を失敬する
親が死んで俺が死ぬか、俺が死んで親が死ぬか、それだけだ
俺は、ひきこもっていた
*********
ある日の深夜、ふと、散歩に出かけてみたくなった
無論、本に影響されたのだ、桃色に輝く木々、七色に彩る草花、銀色に光る湖沼
そういう、単純なフレーズに影響された、バカだと言われてもいい、俺は、俺の生きたいように生きる
親が寝静まった頃を見計らって、忍び足で玄関へ向かう、玄関特有の、土の匂いが鼻につく
草鞋を履き、鍵を開けて外へ出ると、外は、すっかり月と星の光だけが光る、暗闇の世界になっていた
深夜特有の、冷えた風が身体を撫でる、久しぶりの外気の冷たさに、一瞬、身体がビク、と震えた
「寒ぃ…もうちょっと厚着してくればよかったな…」
口から白い息を吐き出し、そう呟く、だが寒さにも次第に慣れてくる
「とりあえず、森の方へ行ってみるか…」
世間知らずで、無知な俺は、森が危険なんてことは知らない、その先に何があるかも
知らされていない場所に行く事に、俺は好奇心が高まっていくのを感じた
森の中は思ったより暗く、星や月の光りも、それほど届かない、まさに、深淵といってもいいくらい暗闇が森を支配していた
誰かから見られているかもしれない…何者かが俺を狙っているかも…
ふと、後ろを振り返ってみても、暗闇と、たまに差し込む月光以外、何も見えない
戻るのは危険、そう思い込んだ、ただ、目の前の恐怖から逃げ出したかっただけかもしれない
半ば走り気味で森の中を突き進むと、突然、森が終わった、いや、森から抜けたのか
抜けた先、そこは、まるで小説の世界、銀色に光る湖沼…湖、に出た
月が湖に映し出され、まるで湖の中に月があるようだ
そして、暗闇になった木に囲まれた湖はなんとも言えない神聖さを感じ、足が自然と湖に近づいていった
「綺麗だ…」
本の中と、ちょっぴりの現実、それしか知らない俺にとって、この光景はまさに、本の世界だった
「こんな所が…ん…?」
と、少し上を見上げた時、気がついた
湖の上…少し、俺の頭より高い、いや、それ以上の所に…何か、居る?
水色の服
水晶のような翼
水色のリボン
親や、他の人間の存在なんて、ほとんど知らない俺にとって、それは衝撃的だった
人(?)が、湖の上で、翼が生えていて…リボン?をしていて…
最初に頭に浮かんだ単語は、本でしか見た事のない、読んだ事のない…妖精
「妖精…!?」
思わず、口に出して言ってしまう、ハッ、として、俺は口を押さえる
(やばい!気づかれたらどうなる…!?)
しかし、その水色の妖精は、すでにこちらに気づいていた
水色の妖精は少し驚いたような様子でゆっくり振り向いた
水色の瞳
水色の髪
白い肌
「だれ…?アタイが、みえるの…?」
水色の妖精は、その時、嬉しそうな、悲しそうな、そんな表情をした
俺は、一瞬その姿に見惚れていたが…我を取り戻す、放心状態の時に襲われたらたまったもんじゃない
綺麗な花には毒が…あいや、トゲだったか…?
そんなことはどうでもいい、俺は、率直な質問をソイツに投げかけてみた
「あ、あぁ…見える…アンタは…誰だ?」
俺の疑問に、水色の妖精はハッキリ答えた
「…アタイは妖精よ、湖上の妖精…チルノ、アタイが見えるなんて、不思議な人間ね…」
彼女の名はチルノ、と言った、何故だかわからないが、俺はコイツに、少し、惹かれるモノを感じた
俺が不思議な人間だから、惹かれるのだろうか、不思議な人間なら、しょうがない
「…アンタ、いつもこの時間に、ここに居るのか?」
「どうだろう、アタイは気まぐれだから、いるかも、いないかも、妖精だもん」
「それじゃあ、いつもこの時間、この場所に、居てくれ」
「…なんでアタイが人間なんかと約束しなきゃいけないの?」
「………………」
俺は、何も言い返せない、出来るのは、チルノを見上げて、「頼む」という、意思を伝えるだけだ
「…うーん…変な人間がきたなぁ…」
「いいよ、この時間に、この場所ね?来なかったら、氷漬けにしてから割っちゃうから」
ペナルティは恐ろしいもんだ、これは、毎日通いつめなきゃ、いけないかな
*********
あの日、チルノと会った日から毎日、湖に通っている、親からは悪い霊にとりつかれたと、言っている
この可愛い妖精のどこが悪い霊なのか、わからない、むしろ俺は、元気になってきている
いざ話してみると、最初は畏怖こそしたが、ただの、普通の女の子、ということがわかる
少し頭は悪いかもしれないが…それでも、とても愛着のある、可愛い子だ
「チルノはなんでここに居るんだ?」
「知らない、わたしが、湖上のようせいだからでしょ」
そんなくだらない話を、毎日続けている、けれど、飽きが来る事はない、初めて、現実が広がった気がした
「チルノって好きな食べ物とかあるのか?」
「あまいものかなー特にかきごおり」
「チルノは親とかいるのか?」
「しらない、妖精だから」
「チルノはどういう遊びをしてるんだ?」
「んーとね、カエルを凍らせてなげたり、だんまくごっこしたりかな」
「チルノは友達とか居るのか?」
「いるよー、だいちゃんとか、れてぃさんとか」
「チルノって怖い妖精なのか?」
「ふふん、アタイは怖くて強い妖精なの!当たり前じゃない!」
「へぇ…(苦笑)」
「な、なんで笑ってるのよ!?」
「チルノは家とかあるのか?」
「あるにはあるけどー、うーん、教えないよー?」
次第に、俺の気持ちは、興味、から、気になる、それから…
「あー…チルノ、って、付き合ってる男の子の妖精とかいるのか〜?」
こんな質問を、した、いつもの軽いノリで、そうするとチルノは
「…いないよ」
少し、空の月を眺めた後、そう答えた、何か思い出しながら
いつもと同じ、軽くではなく、少しはにかみながら、だけど悲しそうな声で…言った
その、物憂げな雰囲気が、最初、会った時の、幻想的な姿と被り…
俺は今自覚した、この子、いや…チルノの事を…
俺は思わず、「チルノ」と、名前を呼んだ、そして、空に浮かぶチルノに優しく手を差し出した
チルノは、その差し出された手を、少し恥ずかしそうにしながら、しっかりと握った
*********
春は終わり、梅雨の季節がやってきた、空は一面、雨の色になり、それを変えようとはしない
俺は、梅雨の季節の前からこの湖に通っている、あの日からずっと
深夜、いつもの湖、いつもの場所で
そこで、他愛の無い会話や、他愛の無い遊び…そして、2人の気持ちを確認した
しかし、その妖精は、この湖にはもう居ない
いつか、いつか、いつか、いつか
いつか、いつか、いつか、いつか、いつか、いつか、いつか
いつか、いつか、いつか、いつか、いつか、いつか、いつか
いつか、いつか、いつか、いつか、いつか、いつか、いつか、いつか、いつか
いつか、いつか、いつか、いつか、いつか、いつか、いつか、いつか、いつか
いつか、いつか、いつか、いつか、いつか、いつか、いつか、いつか、いつか
いつか、いつか、いつか、いつか、いつか、いつか、いつか、いつか、いつか
その妖精が、再び俺の目の前に現れるのを、信じていた
雨が頬に伝わり、森を通る時にすっかり湿った服の中を通っていく、身体の寒さより、心の寒さの方が、強い
月は見えない、湖も、空から降ってくる水滴に、湖面を揺らすだけだ
この雨は、俺の涙、やがて泣きやめば、雨が止まれば、全て忘れられる
そんな本で読んだような受け売りの台詞を、ふと考えながら、空を見上げる
「チルノ…」
俺は、その場で膝をつき、地面を殴った、手に湿った土がこびりつく、だが、そんなことは気にしない
「クソッ、クソッ、クソッ…!!」
何度も、何度も地面を殴った、手が土にまみれていく、汚いなんて思わない
そして、最期の一発といわんばかりに、拳を振り下ろそうとした時
『妖精は死なないわ』
背後から、声が聞こえた、とても落ち着いた女性の声、そしてミステリックな、口ぶり
傘の音など聞こえていなかったのに、今は、背後から、傘に雨が当たる音が鮮明に、耳に聞こえてくる
『妖精は自然から生まれ、自然に死ぬの』
子供に輸すように、また、哀れな人間を慰めるように
『貴方はただ、待てばいい、それだけよ』
背後の、傘の音は消えた、同時に、俺の心の雨も、止んだ
*********
俺は、深夜の湖に来ている、鬱蒼とした森を抜け、暗闇から這い出た場所
ふと、湖を見てみる、湖面に、黄色い月が投影されている、ゆらゆらと、湖面の月が揺れている
…見慣れた光景だ、これも、変わらない
上を見上げてみると
黄色い月が、空を照らしていた
…これも何度も見た、変わらない…"何日"この光景を見ただろうか…
ふと、視線が行く、湖の上…少し、俺の頭より高い、いや、それ以上の所に…
「あ…っ…!」
――――――――――――水色の服――――
――――――――水晶のような翼――――
――――――――――――――――そして…水色のリボンの…
……
……
…
…
…
〜Happy End〜
創作意欲が沸いたので、ちゃっちゃと書いちゃいました
2作目でしょうか、結構SS書くの楽しいですね
稚拙な文だと思うのでもしよろしければコメントお願いします
七色の匿名希望
作品情報
作品集:
25
投稿日時:
2011/03/30 01:29:32
更新日時:
2011/03/30 10:29:32
分類
チルノ
落ち着いた女性の声の主を想像するのが楽しい
その手の人は、
たいてい、
他者に傷付けられる事を恐れ、
他者を傷付ける事を怖れ、
殻に閉じこもる。
凍てついた氷の獄を打ち砕いたのは、
氷の妖精とは、
素敵だとは思いませんか?
地面に涙を垂らすより、
天を仰いで星の雨を浴びよう。
そして儚く悲しい…。
美しい自然との触れ合いを今の人々は忘れていますね。
しかも、絶えずそれらを破壊し続けている。
本当の価値に気づくのは全てを失った後…。
妖精大戦争のチルノって何処か儚げな印象があるよね。
そんなチルノが好きな人が多いはず。だから良かった。
コメント書くのが苦手ですまん