嘘か真か

「…美鈴。」


「はい、何でしょう？何だか深刻な顔ですが…」


「私、今日メイド長をクビにされたのよ…」


「エッ……！？」


「…」


「…そうですか、そ、それは、残念です……」


「…（なんか、思っていたより食い付きがいいわね、こんな嘘に騙されて、ふふ）」


「正直に言うと私、咲夜さんのメイド長っていう身分に惚れていたんですけどね…」


「…え？」


「クビにされたのなら仕方ないですよね、残念です、お別れですね」


「え、あ、あの…美鈴、い、今のは…」


「…さようなら、咲夜さん」


「め、美鈴、違うのよ、今のは…！」


「……嘘ですよね？」


「…えっ」


「あっはは、分かってましたよ最初から、だから私も嘘を言いました」


「ほ、本当にさっきのは嘘なのね？」


「はい」


「良かった…」


「あははははっ、さっきの咲夜さんの驚いた顔と言ったら…」


「…そ、そこまで笑わなくてもいいじゃない」


「あ、すみません、仮にメイド長じゃなくても私は貴女の事が好きですよ…」


「め、美鈴…私も…」


「だって私は咲夜さんのやわらかい身体が好きなんですから、身分なんてどうでもいいです！」


「…………………ぇ？」


「貴女の端正な顔と抱いてくれる綺麗な身体だけが好きなんですよ」


「……………」


「…ま、今のも嘘なんですけどね、って、あれ？咲夜さん？」


「…………」


「あのー」


「…ほんとうにいまのもうそなのね？…」


「な、なんか怖いですね、嘘ですよ嘘！」


「良かった…」


「何か今日は変ですね、咲夜さん」


「別にいつも通りよ」


「そうですか？」


「……………」


「……実はですね……私、一つだけ、本当の事を言ったんですよね…ふふふ」


「…ふふ、そう何回も騙されないわよ、美鈴」


「いいえ、今のは本当です、マジです」


「嘘よね」


「いいえ」


「そ、そう何度も…」


「……………」


「…………め、美鈴……？」


「……」


「………めい、りん…？」


「…」








…この笑みは一体何を意味するんだろう

どの部分が本当なんだろう

お願いだから嘘だと言って欲しい

からかっているだけだと言って欲しい









美鈴の笑顔が恐ろしく見えたのは今日が初めてだった












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