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『【リレー小説】 首なし死体は弾幕奴隷の夢を見るか?』 作者: ウナル→灰々→変態牧師→機玉→うらんふ
■起(ウナル)■
「明日、告白しよう」
魔理沙はそう決意した。
その夜、魔理沙は殺された。
「……ここは?」
目を覚ますと魔理沙は見慣れぬ川辺に寝ていた。
石の敷布団では身体も痛みそうなものだが、不思議と身体は軽い。
訳もわからず魔理沙は立ち上がる。
その川はどこまでも続くかのように広く、果ては霞んで見えなくなっていた。霧の湖よりよほど幅があるのではないだろうか。まだ見ぬ海というものはこのようなものかもしれない。
周囲は石の敷き詰まった川辺。ところどころ塔のように石が重ねられている。
空に浮かぶ雲も絵の具で描いたように現実味がなく、足元の草はまるでおもちゃのようだ。
墓場のような無生物感。
牢獄のような静謐感。
ここには命というものが無い。
そして魔理沙はこの場所に心当たりがあった。
「……彼岸」
「正確には彼岸はこの川の向う。ここは三途の川だね」
背にかかる言葉に魔理沙は振り返る。
形だけ繕った木に背を預ける少女が一人。
魔理沙よりも頭一つ分、高い背丈。豊満な女性の印。そして大仰な両手鎌。
三途の川の案内人。小野塚小町。
「……あんたの登場で心地良い夢が小粋な悪夢に見えてきたよ。小町」
「そいつは死神冥利に尽きるね。魔理沙」
答え、小町は鎌を手に取り立ち上がる。
どれほど居眠りをしていたのか、大きく伸びをすればぽきぽきと関節の鳴る音が聞こえてくる。思わず金を払いたくなるほど良い音だった。
「さてと。行こうかね。顔見知りだし、渡し賃は割引きしといてあげるよ」
「なに言ってるんだぜ? 生憎、閻魔に用事はないんだぜ」
「ん? もしかしてあんた自覚がないクチか?」
小町は面倒半分面白半分といった表情で、魔理沙の顔をまじまじと見る。
「なんのことだぜ?」
「気付いたらここに居た。それだけで大抵の奴は思い至るもんだけどね。それとも認めたくないだけかい?」
「だからなにを言ってるんだぜ!」
「あんたはとっくに死んでる。だからここにいる。そういうことさ」
「なっ!」
「論より証拠。見ればわかるさね」
小町が差し出した手鏡の中には、金髪の少女の姿が映っていた。
青ざめた顔色、それとは対照的に真っ赤に染まった唇と瞳。
自慢の金髪も脱色されたようにくすんだ色に変わり、その存在全てがあやふやになっている。
それは魔理沙も見てきた幽霊の姿そのものだった。
「そ、そんな! 嘘なんだぜ!」
「幽霊はみんなそう言うねえ。しかしこんなにはっきり意識を残して幽霊になるなんて、なにか未練でもあったのかい?」
「未練……」
いきなり冷や水を浴びせられたかのようだった。
魔理沙は口をつむぎ
唐突に思い出される想い。
「……おい死神」
「ん?」
「後ろに閻魔が立ってるぞ」
「んなっ!? し、し、し、四季様!? いえいえそんな別にさぼっているとか、そういう訳じゃなくて船出を円滑にするためのコミュケーションの一環と申しましょうか。これは私なりの創意工夫の結果でありまして減給とか有給カットとか休日出勤とかそういう鬼畜なお仕置きはご勘弁――――あれ?」
誰も居ない空間に向かい、平身低頭していた小町。
目を見開き魔理沙を振り向き見るが、そこには詰まれた石が二三あるばかり。
「あたーやられたねえ。このまま見逃しちゃあ減給どころじゃすまないだろうし。しょうがない追いかけるか」
大鎌を手に石を蹴る小町。
その身体をふと止め、彼岸に向かい言った。
「四季様〜。これは業務ですよ〜。逃げ出した幽霊を捕まえるんですからねえ。サボリじゃありませんからね〜。これでよしっと」
満足げに頷き、小町は幻想郷へと足を向けた。
もちろん、魔理沙以外にも舟待ちの幽霊がいるわけだが、そんなもんは後回しに決まっていた。
「まったく、現世に戻ったって何もできないってのに。やれやれだねえ」
「くそくそくそっ!」
空を駆けながら魔理沙は悪態を吐き散らす。
すでに体には無数の違和感が生まれていた。
箒がないというのももちろんだが、もうしばらく飛んだというのにその身は羽根のように軽いまま。
まるで疲労という概念が抜け落ちたようだった。
「なんで! なんで息が上がらないんだぜ! なんで身体が疲れないんだぜ!」
今や肉体のしがらみは魔理沙を縛らなくなっていた。
呼吸は必要なく、心臓は鼓動を止め、身体はいくら酷使しても疲れることも眠ることもない。
大昔、世の王たちが求めたその身体は、魔理沙にとっておぞましい呪い以外の何ものでもなかった。
「くっ! とにかく戻らないと! 私はあいつに――――」
そこまで言って魔理沙はようやく気付いた。
あいつ。あいつ。あいつ。
生前は絶え間なく思っていたはずの人物。
だがそれが“誰”なのかまったく思い出せないのだ。
「……あいつって誰だ? 私は何を伝えようとしてたんだ?」
記憶は肉体と共に置いてきてしまったらしい。
ただ大事なことを伝えなければならないとだけ理解している。
胸にぽっかりと穴が開いたような気分のまま、想いだけが魔理沙を駆けさせる。
幻想郷が見えてきた。
■承(灰々)■
日はまだ昇りはじめたばかり。ホー、ホーという鳥の鳴き声だけが聞こえる。
丁度これから人間たちが活動を開始しようという時間だろう。
誰でもいい、早く人に会いたいと魔理沙は思った。
「とりあえず、神社だ。霊夢ならこの時間、境内を掃き掃除してるはずだ」
幻想郷の東、外の世界との境目に位置する博麗神社、そこを目指し魔理沙は全速力で飛ぶ。
急いでいるというのに、相変わらず息はきれないし、心臓はピクリとも鼓動しない。
魔理沙の胸中に不安と違和感が渦巻くだけだ。
十分程飛ぶとようやく神社が見えてきた。
「……いた!」
遠くからでも赤と白のおめでたい巫女服は容易に視認できる。
博麗霊夢はいつもと変わらず境内を竹箒でサーサーと掃いていた。
魔理沙はそのいつもの霊夢の様子を見て、少し安心したのか顔が綻ぶ。
「霊夢ーー!」
魔理沙は大きな声で霊夢に呼びかけた。しかし、霊夢は相変わらず竹箒を動かすのみ。
距離があるため聞こえていないのかと思い、今度はさっきよりも、もっと大きな声で彼女の名を呼んだ。
それでも、霊夢が魔理沙の方を向くことはなかった。普通の人間ならば十分に聞こえているはずの距離だというのにだ。
「どうしちゃったんだよ……」
神社に降り立ち、今一度霊夢に呼びかけるが結果は先ほどと同じだった。
今にも泣き出しそうな顔で霊夢を見つめるも、彼女は相変わらず境内をきれいにする作業を続行中だ。
きっと、自分のことをからかって聞こえていないふりをしているんだ、そう魔理沙は信じて霊夢の元に駆け寄る。
「霊夢」
霊夢の面前に顔をひょこっと出して呼んでみる。
だが、霊夢の目線は魔理沙とは合わず、くるりときびすを返すと、ちりとりを手に取り集めた葉っぱをその中に掃き入れた。
「な、なあ、無視するなよ」
わなわなと震える声で話かけるが反応はない。再び霊夢の前に移動しても彼女は葉っぱをちりとりに入れるのをやめない。
霊夢はちりとりにきれいに掃いたものを入れると、大きなゴミ袋にそれを捨てる。
「ふう」と一息つくと神社の母屋に向かって歩き出した。
「待ってよ霊夢!」
魔理沙が霊夢の肩に手をかけようとした瞬間、
「ああ、鬱陶しいわね!」
バシッと霊夢がその手をはら退けた。
普段なら、冷たいと思うその行動も、今の魔理沙にはやっと自分の存在に気がついてくれた証に他ならない。
「霊夢、ひどいぜ。無視するなんて」
霊夢が自分に反応してくれたことがうれしく思わず抱きつこうとする魔理沙。
「ええい、だから、近づくな!」
「いて、ちょっと、今日の霊夢は冷たいぜ。どうしたんだよ?」
「たく、なんなのよこの人魂は……」
「……え?」
一瞬魔理沙には霊夢が何を言っているのか理解できなかった。しようと思えばできたのだろうが、彼女の心がそれを拒否した。
「霊夢、私だよ。霧雨魔理沙だ……」
「あー、すがすがしい朝が台無しだわ。とっとと冥界に帰りなさい」
「やだよ……霊夢……私にはまだやり残したことが」
魔理沙は霊夢に助けを求めるかのように右手を伸ばす。霊夢の袖に手が触れようとした瞬間、
バチィ!
「っ!?」
右手は見えない何かに激しくはじかれる。霊夢の結界に触れたのだと少ししてから気がついた。
どうして、魔理沙はそんな顔で霊夢を見つめるが、彼女は虫けらでもみるような冷たい視線を向けるだけ。
魔理沙は霊夢に近づこうと恐る恐る一歩踏み出すが、彼女が懐から御札を取り出したのを見て思わず後ずさる。
「嘘だろ……」
お願いだ、気がついてくれと願う魔理沙の思いを断ち切るように、霊夢は取り出した札を魔理沙に投げつける。
「うわああああ!」
魔理沙はたまらず神社から逃げるように飛び去った。
霊夢から逃げてきた魔理沙はいつの間にか魔法の森の前に来ていた。
ここをしばらく歩いて行けば香霖堂だなと魔理沙は思った。
店主の森近霖之助とはそこそこ親しいが、今は会うのが怖かった。
魔理沙も逃げている最中に段々とわかってきてしまった。
おそらく自分は殆どの者にはそこら辺をふよふよと漂っている人魂にしか見えないであろうことを。
「なんてこった……三途の川から逃げてきても何もできないじゃないか……」
魔理沙はその場でガクリと膝をついた。自分の無力さに絶望した。
いよいよ自分が死んだということに実感が沸いてきた。
地面を叩きつけても土は抉れず、拳も痛まない。
ただ、霊夢に伸ばした右手だけがジンジンと脈打つような痛みを発している。
「あれ、魔理沙じゃない……」
「え」と魔理沙が顔を上げるとそこには背の低い銀髪おかっぱの少女が立っていた。
長さの違う二本の刀を携えたその少女は魂魄妖夢、冥界の白玉楼の専属庭師だ。
「あらら、あなた死んだのね……」
「わかるのか……私のこと。霧雨魔理沙だってわかるのか!?」
「そりゃあ、私も半分そっち側の人間だからね、わかるわよ」
妖夢がそう言葉を切ろうとした時、魔理沙が抱きついてきた。
「うあああああん!よかったよぉぉぉ」
「ちょ、ちょっと……」
いつもの妖夢なら突き飛ばしていただろうが、魔理沙の事情を考えると今しばらくこの胸を貸してやろうとそのまま魔理沙の頭を撫でてやる。
ようやく落ち着いた魔理沙はこれまでの経緯を妖夢に話した。
気がついたら三途の川にいたことそこからにげてきたこと、何かを伝えようとしていたこと、誰にいったい何を伝えようとしていたか思い出せないこと、霊夢に自分が認識されていないこと等々……
それを聞いた妖夢は、
「大人しく、死を受け入れて転生をまちなさい」
と淡々とした口調で答えた。白玉楼に勤める彼女としては当然の解なのかもしれない。
「いやだ……私にはまだ遣り残したことがあるんだ!誰かに伝えなくちゃいけないんだ……なにか」
「ふむ、この姿になっても残ってるってことはよほど強く思っていたんでしょうね……」
「でも、思い出せないんだ」
「そりゃあ、死ねば肉体に生前の記憶の殆どを置いてきてしまうからね。でも、強い思いは肉体を離れても魂に焼きついている。それが恨みならその魂は怨霊と化してしまう。あなたのように何か遣り残したことがあるってことだけを覚えてる者は浮遊霊として現世をさまよう羽目になるわ」
「どうしたらいいんだ……なんとかして記憶をもどすには」
「記憶を取り戻すには肉体を探し出すしかないわね。肉体を見つければ生前の記憶は取り戻せる」
「本当か!?」
真っ暗だった魔理沙の目の前に一筋光明が差し込んできた。肉体をみつけ、記憶を取り戻す。そして、誰かに告白しようと思っていたことを伝える。これをやり終えるまでは三途の川を越えることはできない!
魔理沙はそう決意した。
「ただ、そうする場合いろいろ気をつけたほうがいいわ」
「え、何に?」
パッと明るくなった魔理沙に釘を刺すように妖夢は険しい表情になる。
「一つは時間。肉体を離れ、三途の川からにげて現世で彷徨うあなたの記憶は段々と薄れていく。早く肉体を見つけるか三途の川を渡るかしないとさっき言ったみたいに浮遊霊になってしまうわ。自分の姿も名前も忘れ、ただ現世を彷徨うだけの魂に」
おどかすような妖夢の口調に魔理沙の顔に再び影がさす。
「それと、もう一つ。あなた気がついてる?」
「な、何に?」
「あなた、多分殺されてるわよ」
妖夢に言われ、魔理沙は今、はじめて自分が殺されたことを知った。
「わ、私が……殺された!?」
「ええ、首に赤い線が見える。おそらくそれが致命傷ね」
「そんな……」
魔理沙は首に手を当ててみる。感触はいつもの自分の首だった。傷などついていないように思える。
「触ってもわからないわよ。生きてるときにできる切り傷とは違うから……そこだけ赤く光って見えるのよ」
「いったい誰が」
「そこよ!今、幻想郷で霧雨魔理沙が殺害されたという事件は起きていない。私も今あなたが何ものかに殺害されたと知ったのだから」
「どういうことだ」
「まだ、事件は起こっていないのよ。事件が起こるには被害者が必要でしょ」
「……あ!」
ようやく鈍っていた魔理沙の頭も周りはじめた。
「私の死体がまだ発見されていないってことか……」
「ええ、そうね。恐らく何者かが見つからないように処理してしまったのかも……」
「じゃ、じゃあ私の遺体は?バラバラになっていたら私の記憶は!?」
「その点は大丈夫。バラバラでもある程度記憶は残ってると思うわ」
「そうか……」
「でも、あなたを殺せる奴だからね。もしかしたら跡形もなく死体を消してしまうことも容易にできてしまうかもよ。それでも探す?」
妖夢は意地悪でこのようなことを言っているのではないと魔理沙にもわかった。魔理沙が大きなリスクを背負っても結局のところ徒労に終わるかも知れないことを危惧して言ってくれているのだ。
だが、それでも、それでも魔理沙には、
「私は探したい……記憶を取り戻して誰かに伝えなきゃいけないんだ。それをやらないと絶対後悔する……気がする」
あきらめることができなかった。
「そう、なら好きにしなさい。私は止めもしないし助けもしない」
「おう、色々教えてくれてありがとうな」
「……今のあなたは虫と同じよ。そこら辺を飛んでいる虫。誰かの目にはとまることはあまり無い。でも目障りだと判断されたら容赦なく叩き潰されるわ。あなたには抵抗する手段はない」
「色々嗅ぎまわるには便利な体だな」
魔理沙は強がって見せたが声が少し上ずっていた。
「ふぅ……、一つだけアドバイスしてあげる。何かしら思い出すということはそこが遺体の近くだということよ」
「わかった」
「あと、逃げるときは壁抜けしてみたら、幽々子様がたまにするけどあれやられると結構困るのよね。追えないし」
「うん、やってみる」
妖夢はまだなにか言いたそうだったが、
「お前って優しいな」
という魔理沙の言葉に顔を真っ赤にすると、
「じゃ、じゃあ、私は用事があるから……」
とそそくさとかけて行ってしまった。
「うっし、やるか……遺体探し!」
魔理沙は空へと舞い上がった。
■転1(変態牧師)■
「う〜ん…………」
空へと飛び立った魔理沙は、まず何処へ行くべきかと思考を巡らせていた。
死んだ時の記憶は、彼女自身にも定かではなく、記憶を呼び戻そうとしても、其処だけが切り取られたようにすっぽりと抜け落ちている。
今の魔理沙に記憶の断片を手にすることは、まるで砂山から米粒を探し出す程に困難であり、完全に八方塞の状況だった。
「……いや、まてよ」
そのとき、魔理沙は『首を切り裂かれた』という妖夢の話を思い出した。
少なくとも、幻想郷の内側で一人暮らしを――――それも、魔法の森のような妖怪や妖精はびこる危険地帯で――――している魔理沙は、実は見た目ほど暢気ではない。
まかり間違っても背後から奇襲を許すようなことはなく、外に出る時は常に周囲には気を配っている。
自分よりも力で勝るものに出会い、命の危険が付きまとおうものであれば、問答無用で逃げの一手を選ぶ。
無論、余程不意を疲れれば話は別だが、家の外では殺される可能性はかなり低くなる筈のだ。
「私の家か……?」
けれども、その注意力も自宅では若干……いや、妖怪や妖精を遠ざける魔術を家全体に付与しているため、魔理沙は自分の館ではほとんど危険に対し気を置いては居ない。
それは、魔理沙自身が自宅で殺害された可能性が高いと言うことに他ならない。
意を決した魔理沙は、かつて住んでいた館に向かって飛び立った。
・
・
・
――――その頃
何処にあるのかさえ知れない薄暗い部屋……いや、そこは“部屋”というよりも“地下室”と呼ぶべきであろう。
長方形の岩を敷き詰めた壁に、照明としての目的を申し訳程度にしか成していないランプがそこかしこに据えつけられている。
一つ一つの光は酷く弱いため、数をなしても暗闇を振り払う役目を殆ど果たしてはいないのだ。
灯火が揺れるたびに、岩肌に映りこんだランプの筐体の影がゆらゆらと揺れ、その光景は猟奇小説の一幕のようであった。
そして、その部屋をより正確に表現するならば、“牢獄”という名がふさわしい。
天井に据えつけられた頑丈そうな金具からは、かなり大き目の鎖が垂れ下がっており、床の上にだらりと垂れ下がっている。
壁の一面には、手首や足首を拘束するための錆びかかった鉄枷が据えつけられている。
そして、比較的照明が多く据えつけられている場所とは、“鉄格子のようなもの”をもって隔てられていた。
この概観で、この部屋を牢獄と見まがう者は、まず居はしまい。
「逃げられたの、アイツに!?」
岩肌に、女の引きつったような大声が岩肌に残響して消えてゆく。
『逃げられた』という言葉通り、“鉄格子のようなもの”の一部は、ちょうど人が一人分ほど通れるかのように歪み、ひしゃげていた。
そのような破損さえなければ、“鉄格子のようなもの”は鉄格子としての役目をなしていたであろう。
「も、申し訳……ございません……紫、さま……」
大声の返事として、床の上から弱々しい声が帰ってくる。
無骨な岩肌の上には、短い髪の女が転がっており、彼女は自身の脇腹を抑えながら荒い息を吐いていた。
呼吸をする事さえも辛いのか、呻き声と共に僅かに身じろぎすると、ぴちゃり、と水が滴る様な音が響く。
薄暗い床の上には、女を中心に黒い水溜りが出来ていた。
「……捻じ伏せたと思って、油断してたら、いきなり不意打ちを……」
床に倒れたままの女の側には、一人の人影があった。
全体的に丸みを帯びており、胸部の辺りが盛り上がっていることから、その影が大声の主――――“紫”と見て間違いは無いだろう。
転がっている女には、どう見ても大声で叫ぶ力は無いからだ。
「ッ……! あなたなら不意打ちを喰らっても、“あんなの”軽く――――」
紫は、自らの衣服が黒い水で汚れることも厭わずに膝をつき、床に転がった女を抱き起こした。
そして、その時点で短い髪の女の身体が、黒い水でない液体で濡れていることに気付く。
女を抱きかかえたまま首を回し、周囲に視線を送ると、ひしゃげた鉄格子のすぐ側に竹筒が転がっている光景が紫の目に入った。
竹筒からは透明な液体が、ぽたり、ぽたりと滴り落ちており、床を湿らせている。
“それ”が女の弱点であることを、紫は理解していた。
「……た、倒れた拍子に……みず、を……」
「もういいわ、藍……今はゆっくり休みなさい。後は私が何とかするから」
“藍”と呼ばれた短い髪の女の頬を雫が伝い、彼女が身に纏っていた服の胸元のあたりを湿らせる。
その理由は自らの不甲斐なさからからくるものであることは想像に難くない。
喋ることすら億劫であるはずなのにギリギリと歯を食いしばり、ほとんど力の篭らなかった掌を握り締めているのが、その証だ。
「永遠亭に送ってあげる、あの薬師ならすぐに治療してくれるわ」
「もうしわけ、ござい、ま……」
ヴォン……!!
藍の言葉が終わる前に、二人のすぐ側の空間がチャック付きのビニール袋を開けるかのように裂けた。
開いてゆく空間の内側にあるのは、黒一色に塗りつぶされた“闇”と、幾つもの人間の瞳孔。
普通の人間であれば、物欲しげにこちらを眺めるような薄気味の悪い空間に入りたいと言うものは居まい。だが、藍の表情には恐怖の欠片さえも無い。
殆ど間をおくことなく、開いた空間の裂け目に藍の全身が飲み込まれ、裂け目がなくなるとともに、彼女の全身が消えた。
「……前鬼! 後鬼!!」
紫の声と共に、二匹のカラスが紫の側に降り立った。
空の見えないこの牢獄の、一体どこから来たのかも定かではないが、紫はそれが当然と言わんばかりに、二匹の僕へ命令を下す。
「あの“殺人鬼”を探しなさい、今すぐに!」
二匹のカラスは、全くの同時にガァ、と鳴いた後、翼をはためかせ勢いよく飛び立った。
・
・
・
魔理沙が自宅に辿り着いたのは、その日の太陽が地平線の彼方に消えるか消えないかの夕暮れ時だった。
昼間のうちはチ、チ、チ、と鳴いていた鳥たちも、今はその姿どころか鳴声の欠片さえ聞こえない。
鬱葱と生い茂った森の中に佇む 灯りの点いていない人気の無い館は、住み慣れた場所とはいえ、魔理沙に薄気味の悪さを覚えさせた。
「ただいま〜……」
そんな陰鬱な雰囲気を少しでも晴らそうと、魔理沙は出来る限り明るい声でドアノブに手をかけようとする……が、その掌はまるで手ごたえ無く空を切った。
数秒の間抜けな沈黙の後、『ああ開けなくてもいいんだ』、とぼんやり考えながら、魔理沙は扉をすぅっ、と通り抜ける。
「……! ……いきなりビンゴか」
館の中に広がる光景を目にした瞬間、魔理沙の表情が凍りついた。
家具の配置や、小物の置き場所は、魔理沙が記憶していた位置と殆ど変わりは無い。
違うのは、壁や床の色だ。 床の上や、壁面……天井までもが、赤い部屋という形容が最も相応しいほどに、暖色に染まりぬいていた。
そして、その中央には、黒と白のエプロンドレスを纏った首のない少女の遺体が転がっている。
“その身体”と十数年付き合ってきた魔理沙が見紛うはずも無く、彼女は一瞬でその遺体が誰のものなのかを理解した。
「……流石に気持ちいいものじゃ――――」
シュッ、シュッ……ハッ、ハッ……
「ッ!?」
自分自身の遺体を目にしながら、悲痛な表情を浮かべる魔理沙だったが、次の瞬間その顔が緊張で引き締まった。
部屋の中に、押し殺したような短い吐息が聞こえたからだ。
「だ、誰だ……?」
恐る恐る問いかけるも、返事は返ってこない。
まるで自らの身体に縋りつくように、部屋の中央にある遺体に身を寄せる。
太陽の光を背に、魔理沙は部屋の奥から何が出てくるかを注意深く探っていた。
「え……ひぃぃっ……!?」
けれども、“そいつ”が現れたのは全くの逆方向。
床に映っていた太陽の光が、何者かの影によってゆっくりと塗りつぶされる。
振り返った魔理沙の目の前には、男が立っていた。
身長は2m近くにもなるだろうか、汚れたズボンに、所々が解れた長袖の上着。
薄汚い身なりだが、それ以上に印象的なのは男が身に纏っている白い仮面――――魔理沙はその名前を知らなかったが――――ホッケーマスクだった。
仮面の眼窩の内側には暗闇しかなく、男が何を考えているのかさえわからない。
ただ、少なくとも魔理沙にとって友好的な相手であるはずが無かった。
男の片手には、刃渡り50cmほどの大きな鉈が握られており、刀身がべっとりと赤い鮮血で染まっているからだ。
忘れ去られた“伝説の殺人鬼”を目の前にした魔理沙は、一瞬で戦う気概を奪われ、恐怖でその場にへたり込んだ。
「た、たす……け……」
冗談抜きで殺されることを覚悟した魔理沙だったが、男は部屋の中央にあった遺体をぼんやりと眺めると、ゆっくりと扉の入り口へと向かい、ドアノブを捻って外へと出て行った。
男が出て行ってから数秒後、ようやく魔理沙は自分が“虫”のような気にも留められない幽霊になっていることに気がついた。
未だに恐怖の残る身体を無理やり引き起こし、窓に駆け寄ると、森の中に消えてゆく男の後姿が見える。
そいつが歩む先は――――
「……ま、まずい……! このままじゃ、アイツがアリスの家に……!!」
――――魔理沙の友人であるアリスの館だ。
振り返った魔理沙の視線の先には物言わぬ自分自身の躯。 首が無いからか、記憶はまだ戻らない。
おそらく、家の中のどこかには転がっているに違いないが、アリスの命と天秤にかけると、それを探す時間さえも惜しかった。
魔理沙は後ろ髪引かれる想いを振り切るように家から飛び出すと、アリスに危機が迫っていることを伝えるために、走り出した。
■転2(機玉)■
「半獣さんお邪魔するわよ」
「おや賢者殿、本日はどんな御用で?」
「緊急事態だから単刀直入に言わせてもらうわ、今すぐ人里を隠してちょうだい。ちょっと今危険人物がうろついてるから」
「・・・ふむ、了解した。悪戯だったら承知しないからな」
「流石にそこまで暇じゃないわよ。じゃあちょっと急いでるから、捕まったらまた報告するわ」
「分かった」
魔理沙は急いでアリスの家に向かったは良いが、幽霊状態ではやはり何もすることできず、結局アリスも不意を突かれる形で仮面の男に殺されてしまった。
「迂闊だったわね、まさか結界ごと壁を突き破って斬りかかってくる奴がいるとは思わなかったわ」
「先に殺されたのに何も出来なかったぜ……悪いなアリス」
「いや先に殺されたら何も出来ないのが当然でしょ、あんたが気に病む事は何も無いわよ。むしろ何でまだこんなトコ彷徨いてるのよ、早く三途の河渡らないとまずいんじゃない?」
「あーそれにはちょっと事情があってな」
魔理沙はこれまでの経緯を説明した。
「というわけで私の記憶を取り戻したかったんだ」
「成る程ね、じゃあ早く戻った方がいいんじゃない?なんかの拍子に紛失でもしたら見つけるのは大変よ」
「ああそうさせて貰うよ。じゃあな、アリス」
魔理沙は急いで自宅へ戻った。
「神様、いらっしゃるかしら?」
「おや賢者さん、今日はなんか用かい?」
「ええ、ちょっとここに飾ってあるあの注連縄、あれ借りたいのよ」
「は?何で?」
「ちょっと危ない奴が今うろついてて、それの拘束に使わせて貰おうと思って」
「あんたの十八番の結界じゃダメなのかい?」
「今回ばかりはちょっと『押し』が欲しいのよ」
「ふむ」
紫と神奈子が話をしていると、こたつの中から諏訪子が顔を出した。
「んじゃ私も手伝おうか?」
「そうね、来れるなら」
「しかしあんたが私等を頼るなんて珍しいな、そこまでヤバい奴なのかい?」
「ヤバい奴よ、ある意味ね」
紫はフェムトファイバー製の注連縄を担ぎ上げ、諏訪子と共に仮面の男のもとへ向かった。
「くそ、どこだ私の頭!」
再び惨劇の現場へ戻ってきた魔理沙。
今度は部屋をくまなく探すが何故か頭だけが見つからない。
「あいつが持ち出したのか?いやアリスは殺されたらそのまま放置だったから私のだけ持ち出すって事はないだろ。じゃあ一体どこに……」
「あんたの死体も酷いわね」
「うお!?アリス、付いて来てたのかよ!」
「せっかくだから私もちょっと付き合ってあげるわよ」
「そりゃあ、ありがとう」
「とりあえずあんたの頭なら外で妖精が蹴り回してたわよ」
「それを先に言ってくれ!」
魔理沙をアリスは急いで外へ飛び出した。
そして妖精の元へ来たのは良かったのだが、
「どうすりゃいいんだ」
「そう、私も追い払おうとしたんだけど、この状態だと何もできないのよね。遊びが終わるのを待つ?」
「そんな事してたらいつになるか分かったもんじゃないぜ」
「かと言ってどうする事もできないし」
この身になってからつくづく幽霊の無力さを痛感する。
今更ながらいつかの夏にクーラー代わりに捕まえておいたのを反省し、次の機会があればもっと丁重に扱う事にした。
魔理沙とアリスはしばらくその場に立ち尽くしたまま何もできずに妖精が魔理沙の頭で遊んでいるのを眺めていると、そこへ弾幕が飛んできた。
「ほらあんた達、仏様で遊んでるとバチがあたるわよ」
妖精達はあわてて逃げ出した。
魔理沙とアリスが驚いて振り向くとそこには用事があると行って去ったはずの妖夢が立っていた。
「妖夢!?なんでここに?用事があったんじゃなかったのか?」
「それはもう終わったわよ。少し気になったから戻ってきたの、無事見つかって良かったわね」
「ああ、お前のおかげだよ、ありがとな」
「礼はいいわよ、なんか一人増えてるみたいだけど、とりあえず話は後にして記憶を取り戻しときなさい」
「ああ」
魔理沙は自らの頭に近づき、ようやく自分があの夜何を考えていたのか、その記憶が蘇っていくのを感じた。
■結(うらんふ)■
「思いだした!」
魔理沙はそう叫ぶと、眼をキラキラと輝かせながらアリスと妖夢に向かっていった。
「私、告白しなければならないことがあったんだぜ!」
足元には魔理沙の首が転がっている。先ほどまで妖精たちの遊び道具とかしていたその首は、いたるところに傷がはいっており、ボロボロになっている。見るも無残な光景なのでが、当の本人である魔理沙は気にしていないようだった。
「私、魔法の研究をしていたんだぜ」
「・・・そんなのいつもの事じゃない?」
「分かってないなぁ、アリスは。いつもの研究とは違う研究だから、すごいんじゃないか」
「それで魔理沙さんはどんな研究をしていたんですか?」
「それは・・・」
誇らしげに胸をはる魔理沙。
そんな魔理沙をいぶかしんだ目で見つめるアリス。
意外と興味しんしんに尋ねる真面目な妖夢。
「最強の奴隷を作ることにしたんだ!」
「・・・はぁ」
やれやれといった風に、つかれきったため息を出すアリス。よく意味が分からないながらも、ふんふんと頷く妖夢。そんな対照的な二人を横目に、魔理沙は胸をはって言葉を続けた。
「紫には藍が、アリスには上海が、という風に、奴隷型の弾幕があるじゃないか。私はそれがうらやましくて羨ましくて仕方なかったんだ」
「あんたのポリシーは『弾幕はパワーだぜ』じゃなかったの?」
「弾幕は奴隷だぜ」
嬉しそうに、魔理沙はいう。
「だって、奴隷型の方が楽じゃないか?」
「けっこう大変なのよ」
あきれるアリス。とりあえず真剣に聞いている妖夢。
「それで、どうせ奴隷を作るなら、やはり私にふさわしい強力な奴隷を作ろうと思って、色々な実験をしていたんだ」
「・・・嫌な予感がするわね」
「パチュリーの所から借りた本に書いてあった魔法を色々研究した結果、素晴らしい魔法を見つけたんだぜ」
「借りたっていっても、どうせ無断で持っていっただけなんでしょう?」
「死ぬまで借りているだけだぜ」
「あんた、もう死んでいるじゃない」
「死んだら債権はなくなるんだぜ」
「もう」
「細かいことはいいんだぜ」
魔理沙は強引に話を続けた。
「蠱毒、って知っているか?」
「そりゃぁ、ね」
アリスはゆっくりとした口調で答えた。アリスも魔法使いである。魔理沙のいった蠱毒について知らないはずがない。少し、背筋に冷たいものが走る。死んでいる身なのに変な感じなのだが、嫌な予感がするのだ。
「最強の毒をつくる為に、さまざまな毒のある虫たちを壺の中にいれて殺し合いをさせ食べさせ合いをさせ、最後に残った一匹が最強の毒を持つように・・・」
「・・・」
「私にふさわしい、最強の奴隷を作るために、古今東西の最強の者たちを召喚して、それを殺し合わせたんだ」
「・・・なんか話が見えてきたわ」
「アリスさん、奇遇ですね。私もです」
「その結果!」
魔理沙は一人で盛り上がっている。
いよいよ語りのクライマックスにきた魔理沙がこぶしを握り締めた時、
「制御しきれなくなって、暴走されて、殺されてしまった、というわけね」
八雲紫がそういって中に入ってきた。
「私の魔法が凄すぎた結果だぜ」
「それはただの無謀でしょう」
紫は「失礼するわね」と言って土足のままで魔理沙の家の中に入った。床に転がっている魔理沙の首なし死体を一瞥すると、やれやれといった風に大きなため息をついた。
「おかげさまで、こちらに迷惑がかかっているのよ」
「迷惑をかけたつもりはないのだが」
「・・・魔理沙、私、殺されちゃっているんだけど?」
「アリスは可愛いなぁ」
「死人に言われたくないわね」
「・・・あんたたちがどう思っているかは分からないけど、はたからみたら、人魂ふたつが絡み合っているだけにしか見えないんだけどね」
「あーうー」
紫の後ろに、さらに二人の神様がいた。
八坂神奈子と洩矢諏訪子の二人である。
「どうせやるなら、最後まで責任とってもらわないとねぇ」
「だから死んでからもこうやってやってきているんじゃないか」
「あんた、ついさっきまで忘れていたじゃない」
「昔の事は忘れたぜ」
「調子がいいわね」
「とにかく」
紫は手にしていた扇子を魔理沙に向けると、きつい口調でいった。
「あなたの召喚した不死身の殺人鬼、ジェイソンをなんとかして倒すわよ」
「ふっふっふ」
「何がおかしいの?」
「この魔理沙さんが、たかがジェイソン一人にやられる魔法使いだと思っていたのか?」
「思っていたわ」
「なら、認識を改めてもらわなければいけないぜ」
誇らしげに胸を張る魔理沙。
「私は、最強の奴隷を作ろうとしていたんだ」
「はた迷惑な話よね」
「私がやっていたのは、蠱毒の魔法だぜ?」
「・・・嫌な予感するわね」
「蠱毒ってのは、様々な毒を持った虫たちを戦わせるんだぜ・・・それで残った最後の一匹が、全ての毒を持った最強の毒になるわけだ・・・それを応用した私の奴隷作り・・・私が召喚したのがジェイソン一人だけだと思ったか?」
と、その時。
轟音とともに、扉がまさに文字通り「切り裂かれ」た。
チェーンソーを持ち、ホッケーマスクをかぶった巨大な殺人鬼、ジェイソンの登場である。
「来たわね」
「まだまだだぜ」
緊迫した雰囲気で語る紫を横目に、魔理沙は手をぐっと握りしめて叫んだ。
「まだ終わらないぜ!」
魔理沙の言葉は嘘ではなかった。
ジェイソンの後ろから、右手に鉄の爪をつけた殺人鬼・・・フレディが現れたのだ。
「夢の中でもないのに!」
「まるで夢を見ているかのようだぜ」
「うまいこと言わないの」
魔理沙の言葉にアリスが突っ込む。
「痛っ」
妖夢がそういうと、足を押さえた。
見ると、妖夢のすらりとした足首から血が流れている。
紅い血がしたたり落ち、その先に、手にナイフを持った小さな人形がケタケタと笑っていた。
「チャッキー!」
「・・・可愛くない人形ね」
人形については厳しいアリスがそう答えた。
「まだまだ来るぜ!」
魔理沙は嬉しそうにいった。
空気がぐにゃりと動いたか。空気が曲がっている。
「プレデター!」
魔理沙の死体がもこもこと動き、その腹を突き破って怪物が飛び出してきた。
「エイリアン!」
魔理沙の家の傍にあった井戸から、長い髪の女性がはいずり出てきた。
「貞子!」
チェーンソーを持ち、ひと肌でつくったマスクをかぶった男が飛び込んでくる。
「レザーフェイス!」
フンガーフンガー
「フランケン!」
ザマスザマスの
「ドラキュラ!」
ウォーでがんすの
「狼男!」
そのほかにも、わらわらと歴史上架空その他諸々のモンスターたちがあらわれてきた。
「もう、いったいどれだけ召喚したのよ!?」
「わしの 波動球は百八式まであるぞ?」
「意味分からないからっ」
アリスの的確な突っ込みをよそに、戦いが始まっていた。
紫、神奈子、諏訪子の三人が、わらわらと湧いてくるモンスターたちと戦いを繰り広げているのだ。
実体を持っている妖夢も戦いに加わっていた。まさに、阿鼻叫喚な図である。
もうすでに死んでいる魔理沙とアリスは戦いに加わることもなく、ぼぅっとしたままでその光景を眺めていた。
「・・・平和だぜ」
「少なくともこの光景を平和だと思うあんたの頭の中身を疑うわ」
「見てみるか?そこに転がっているぜ?」
「なんであんたの生首なんてのぞかなければならないのよ」
「自分でいったんじゃないか」
「馬鹿」
やがて日は暮れて・・・
「はぁ・・・はぁ・・・これで・・・最後よっ」
普段の余裕もなんのその、ボロボロに疲労しながら、紫は手にした扇子をふるい、最後の一匹をスキマの中に放り込んだ。
周囲はひどい状況である。
木は倒れ家は倒壊し、いたるところに怪物たちの死体が転がっており、ぶすぶすといった煙と臭いが充満している。
肩で息をしている紫に向かって、魔理沙はゆっくりと近づき、いった。
「おめでとう、紫」
「・・・何が?」
「最後に勝ち残ったのは、紫だぜ」
「・・・」
「私の奴隷弾幕に・・・」
「なるかぁ!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
今日も、幻想郷は平和だった。
おわり
3月上旬に、うらんふがいつもの通り、芋焼酎飲みながらてれてれとスティッカムで生放送をしていたのですが、その際に、「産廃作者でリレー小説出来たら面白そうですねー」と、特に深い考えがあったわけでもないのですがつぶやいたのです。
それに乗ってくれたのが、「ウナルさん」「灰々さん」「変態牧師さん」「機玉さん」の4人でした。
その場のノリで、ルールが決まりました。
@「起」→「承」→「転1」→「転2」→「結」という風に回す
A5人が5人とも、「起」を書き、それを順番でまわしていく・・・最終的に、5つの物語が出来る。
B物語の初めは・・・「明日、告白しよう」魔理沙はそう決意した・・・という文面から始める
C同じ文から始まっても、まったく別の5つの物語が出来るはず
D自分のパートの〆切は「5日間」 責任を持ってやる
Eとにかく楽しむ
こんなノリで完成した5つの物語、少しでも楽しんで頂ければ嬉しいです☆
とりあえず5人は死ぬほど楽しみましたので!!!
(うらんふ)
ウナル→灰々→変態牧師→機玉→うらんふ
作品情報
作品集:
25
投稿日時:
2011/04/01 22:51:33
更新日時:
2011/04/02 08:01:39
分類
リレー小説
でもそれが、リレー小説の醍醐味ですよね☆
5つの才がぶつかるこんな風になるのか
ご馳走様でした
すんげ〜!! 五人五色の文章が織り成すハーモニー!!
よくもまあ、うらんふさんはこんなオチを思いつきましたね。
魔理沙らしいっちゃあらしいですけどね。
この事件で幻想郷が恐怖のどん底に…落ちる事もなく、無事収束しましたね。
アリス、とんだとばっちり。
魔理沙、とっとと四季様の説教を食らってこい!!
推理形式に進むだろうと思っていたら、まさかのギャグ落ちw
これだからリレー小説はわからない!
まさかこんなコミカルなギャグオチになるとはww
実に魔理沙らしい面白いエンディングでした。
何がどうなるのか分からないのがリレー小説の醍醐味ですね。
小町はまたエンドレスサボりか