天候も良く、お天気日和のことであった。
「たまには運動しないと身体が鈍っちゃうわ」
「そうですか」
「だから少し外出するわ。留守番頼んだわよ、エリー」
「かしこまり」
花の好きの妖怪風見幽香は夢幻館から飛び立ち、獲物探しに出かけた。
なんとなく幽香は北北西に向かった。
途中、2時の方向に普通の魔法使いの霧雨魔理沙が飛んでいた。
「あら、泥棒鼠じゃない。丁度いいわ、あれで遊ぶわ」
愛用の日傘をたたみ、取っ手を両手で持って白黒に照準を合わす。
「必殺・・・・」
ざわ・・・・ざわ・・・・。
「風見流奥義・・・・『舞血戯利』ッ!!!」
ヒュオッッ!!!!
風を切る程の速度で白黒に突撃した。
一方、白黒本人は幽香の突撃に気が付いていない。
***
「あ〜、こんないい天気は霊夢にお茶をたかるのが一番だぜ」
呑気にふよふよと飛行しながら目的地である博麗神社へと向かう。
ほのぼのとした気持ちを撒き散らしながら飛んでいる魔理沙に魔の手が襲う。
ズシャッッ!!!
「ふぁっ?」
肉を挽き切るような音がしたと思ったら目の前に幽香がいた。
「あ、しまった・・・手加減間違えちゃた♪」
「お前何言って・・・・・おりゃ?」
ぐらりと身体が傾き、反射的に箒の柄を持とうとするが、感覚がない。
重力に引かれて身体は落ちる。
視界に映ったのは自分の身体。
箒に跨った腹部がない下半身だった。
視線を落とすと胸から下が抉られたようになくなった自分の身体。
赤い液体が漏れて、それが血液だと認識できたのが数秒後だった。
魔理沙は混乱していた。
「な、なんだ・・・?どうなっ・・・・ゆ、幽ッ」
グシャッ!
そこで魔理沙の意識は途切れた。
***
幽香は地面に落ちて一輪の花が咲いたのを見て立ち去った。
「うっかり殺しちゃったわ・・・もっといたぶりたかったのに・・・・・今日は調子がおかしいわ」
どうやら勝手に殺人奥義が無意識に発動したみたいだ。
きっと春なのだからだろう。
幽香は暇な気分になると奇行に走っちゃうんDA。
君達の中にもそう云う人、いるだろう?
おや?どうやら適当に飛んでいた幽香は幻想海に着いたようDA。
このバカでかい水溜りは幻想海と言って、専門的な事はともかく、魚などの物が色々獲れるんDA。
「あら?なにかしらアレ?大きいものが浮かんでいるわ」
幽香が見つけた物は演習最中の海上警備隊だった。
空母一隻と護衛の艦船がニ隻の編成だった。
「いいものを見つけたわ!早速お遊びだわ!」
艦隊に弾幕を浴びせる。
いきなり攻撃を受けた艦隊はすぐに回避行動を始めた。
幽香の存在に気付くと対空攻撃を仕掛けてきた。
榴霰弾や高射榴弾が幽香を襲いかかる。
「ひゃっ!?クッ・・・こんな鉛玉程度で私を落とせると思ってのかしら?」
さすが上級クラスの妖怪だけあって耐久力は半端ない。
「あれ一番大きそうだからまずあれをピチュらせてやるわ・・・!」
航空空母に目をつけた幽香は元祖マスタースパークを撃ち込むことにした。
ドン!ドン!ボンッ!
激しい高射砲弾幕により狙いが定まらない。
視界が砲弾の炸裂で煙が立ち込め、視界が悪くなる。
「たかが妖怪一人に大袈裟な弾幕ねぇ・・・畜生ォ!!煙鬱陶しいわ!!!」
ヤケクソになって弾幕をばら撒くが見当違いの所へ飛ぶ。
幽香は一旦落ち着く事にした。
「あっ、弾幕が薄くなった・・・・オラァ!これでも喰らえ!!」
パウッ!
高エネルギーの極太レーザが空母に磁石のように直進していく。
レーザがこちらに飛来してくる事を視認した対空指揮所はすぐさま機関に指令を下す。
出力全開にし、回避を開始するが間に合わず。
艦体に直撃した空母は爆発炎上。
「やった!当たったわ!」
思わずガッツポーズをする幽香。
「しかし凄い爆発ね・・・」
喜ぶ彼女の身体に銃弾が貫いた。
腹部はポッカリと空き、ダラダラを鮮血が吹き出す。
唸る轟音と共に頭上に通過したのは銀翼を持つ機体。
「ペッ!なによあれ・・・」
血を吐き出し、戦闘機を睨みつける。
弾幕を撃とうと手を戦闘機に向けたその瞬間、左手が吹っ飛んだ。
一機だけではなかったようだ。
「ウザいものだわ・・・・胸糞悪くなってきた・・・・・帰ろ」
面倒臭くなった彼女は屋敷に向けて帰ることにした。
逃げる彼女を確認した航空隊は追撃はせず艦隊の上空に留まった。
自分の身体をみると赤と白のチェック柄の洋服はボロボロになっており、肩や太股が露出している状態。
腹いせに彼女は地上で遊んでいた妖精を能力を使って嬲り殺しにした。
が、妖精程度では満足し切れぬまま、不完全燃焼の気持ちで帰宅。
「すぅ・・・すぅ・・・」
居眠りしてサボっているくるみの顔を蹴飛ばして夢幻館の中へと消えた。
背後から呻き声と謝罪の声が聞こえたが無視した。
「お帰りなs・・・お、お嬢様!?どうなさいましたのですか!その格好!」
「あぁ、ちょっとね・・・それよりエリー!ちょっと地下室にきなさい」
「えっ?あ、はい♪」
【次回予告】
前回人間を飛ばすのに失敗した二人。
無駄死にした阿求の死に里香と朝倉は二日で忘れ、次の方法を考え出す。
警察予備隊の基地に不法侵入して略奪行為をする。
そこで目にした物に新たなアイディが浮かび上がる!
その見つけた物とは!?
次回「まんまと騙されたな。お目出度い奴だ」
『このSSは、血盟団と革マル派と・・・赤紙隊の提供でお送りいたします』
あそこまでやられても、致命傷になっていないとは!!
というか幻想郷に、海軍に準ずる装備を持った海上警備隊を運用できるほどの水溜りがあったとは!?
春ですからね、幽香も調子が悪いご様子。
相手が魔理沙だったから良かったですけれど……。
自衛隊創設によって幻想入りした国防組織には、まだ愛国精神と侍魂が生きているようですね。
調子が狂っているとはいえ、幽香を撃退できるぐらいですから。
本日は幽香、ツイていませんでしたね。
そういう時は、一発ヤッてスカッとするに限ります。
さて、警察予備隊には過渡期の皇軍装備や進駐軍から押し付けられたトンデモ兵器が眠っていそうですね。
次回、何が出るかな? 何が出るかな?
P.S.アカは嫌いです……。