Deprecated: Function get_magic_quotes_gpc() is deprecated in /home/thewaterducts/www/php/waterducts/neet/req/util.php on line 270
『地獄ノ底ノ狩人ト咎人達ニ寄ル贄ノ蝕(後)』 作者: ケテル

地獄ノ底ノ狩人ト咎人達ニ寄ル贄ノ蝕(後)

作品集: 25 投稿日時: 2011/04/13 10:37:55 更新日時: 2011/04/13 19:37:55
「そういえば最近、魔理沙の姿を見かけないわね。あいつ今何やってるの?」
「さぁねぇ。少なくとも私の所には来ていないよ。美鈴の奴は心底ほっとしているようだし、フランの奴は遊び相手が減ったってすねているけれども」
「家にも帰っていないみたいね。ずっと明りがついていないもの。どこにいったのかしら、魔理沙の奴。昨日は私と互いの魔法研究を発表する予定だったのに、それもほっぽりだしているし」
「魔法研究か。パチェの奴は黒白の奴がこなくなってから落ち着いて研究ができると喜んでいたよ」
「えぇ、そうでしょうね。あいつは少しやかましすぎる所があるもの」

ある日の博霊神社。人里離れた場所にある為、参拝客など来ない神社には、レミリアとアリスがい
た。
魔理沙の行方を心配するアリス。どこか楽しげな表情を浮かべるレミリア。
そんな二人を前にしても、霊夢はいつもの泰然とした態度を崩さなかった

「あの白黒の行方についてなら心辺りがないわけじゃあない。いやまぁ、これは私に似て気まぐれな我儘な運命の予想だけれどもね……」

そういうと、レミリアは薄い唇を舌で舐め、オトガイに人差し指を当てる。
楽しいものを見つけたさいに取るレミリアの癖だ。

「今頃は、醜く下種な妖怪達に輪姦されたあげく、調理されて貪り喰われているのかも。それか魔法の森の奥深くの寄生植物の苗床にされて生きながら地獄の苦痛を味わっているのかも」
「レミリア。あなた!!」

不遜と言えるレミリアの言葉に、アリスは血相を変える。
そんなアリスの様子をみても、レミリアはその態度を改めない。

「おぉ、怖い怖い。繊細で微弱な人形使いの七色魔女は、そんなにあの白黒の事が気にかかるのかい」
「ええ、そうよ。気にかかるわよ。あいつは本当に無鉄砲な奴なんだから」
「そうかい。しかし、そんなに血相を変えてまで怒るとわねぇ。ふふ、お前達は魔法の情報を交換する仲に留まらず、肉体的なつながりでもあるのかい。私もあの白黒の唇を奪ったことがあるけれども、奪った体液は中々美味しかったよ」
「……ッ!!」

レミリアとアリスの様子を見て、ひと悶着起きそうな気配を感じ取った霊夢は、眉をひそめて迷惑
そうに口を開いた。

「ちょっとレミリア。喧嘩なら弾幕ごっこで神社の外でやりなさいよ」
「これを喧嘩とは言わないよ、霊夢。圧倒的強者が弱者と対峙する時は、駆逐というのさ」

そういうと、レミリアはアリスの胸元に日傘の柄を軽く突き立てた。あまりにも自然で素早い動作
にアリスは、何が起こったのかすら理解できない。
軽く突き立てただけに見えるそれは、弾丸のように勢いよくアリスの体を吹き飛ばす。
立ちあがろうとするアリスにレミリアの魔力が重りの様に圧し掛かる。
動く事ができず睨みつけるだけのアリスに、レミリアはきかん気な娘に物事の道理を教える親のよ
うな態度で口を開く。

「お前もあの白黒も、人間の里で、ルールに従っていればこんな無駄で愚かな心配をせずにすんだのだ。里にいる人間を襲わないという不文律が妖怪と結ばれて以降、妖怪はお約束の中でしか人を襲わなくなったのだからな。お約束とは、妖怪の出やすい時間に里の外をうろつかない。妖怪の出没しそうな場所には近づかない、といった自衛手段の他に、妖怪に出会えば、その妖怪に対する特殊な対応を取るなどといった事だ。たとえば見上げ入道と遭遇すれば、「見上げ入道見こした」と唱えて前方へ打ち伏すという対処を行えば襲われないというようなものだ。
それができなければ人間は殺されても文句は言えん。別に敵討ちが認められていないわけではないが、自業自得なのだからな」
「……」

レミリアの言葉にアリスは何も返さなかった。しかし、その顔が紅潮している事から、かなり怒っている事が分かる。

「もう帰るといい。人形使い。じきに日が暮れる。次に襲われるのはお前かもしれぬのだから、家布団の中に潜り込んで息を潜めていることだね」

どこか小馬鹿にし、嘲笑するようなレミリアの態度。アリスはしばらく睨んでいたが、やがてきびすを返すと魔法も森の方へと飛んでいく。
吸血鬼の目でも見えぬ程その姿が小さくなった所で、レミリアは霊夢の方に向き直る。

「それで、この状況をどうするつもりなのかしら、霊夢?」
「どうもこうもいつも通りよ。」

どこか楽しげなレミリアの問いに、ため息をつきながら霊夢は口を開く。

「里の人間を巻きこんだり、幻想郷を揺るがす異変になる程のレベルなら、そいつらを探し出してとっちめる。ただの小競り合いか、あいつ一人の自業自得程度なら生きようが死のうが私は関与しない。人間にも猛獣にも妖怪に外道にも聖人君子にも、私は同じ事を行うわ」
「そうかい、それを聞いて安心したよ。さすがは博霊の巫女。昔から全くぶれていない」
「それよりもさぁ、あんたさっさと帰ったら?今日は宴会もないし、あんたの所の従者もいないんでしょう?」

我が意を得たとばかりに微笑むレミリアに、霊夢は容赦なく帰れという。
しかしこの吸血鬼のお嬢様。そんなに思い通りに動いてくれるような純情可憐なお嬢様ではない。

「帰る?失礼だね霊夢。今日はお前の所に泊まりにきたというのに」
「えっ?マジで言ってるのそれ」
「えぇ」

露骨に嫌そうな顔をする霊夢。レミリアはどうして今まで気がつかなかったのかと不思議そうな表情をする。

「あんたのご飯は誰が用意するのかしら?」
「もちろん霊夢。お前だよ。なぁに、紅茶とは言わないから甘くて美味しいお茶を用意しておくれ。お茶受けの方はそれにあったものでね」
「あんた、そのままで寝るつもりなのかしら?」
「いいえ、着替えて寝るよ。霊夢なら私に合う寝巻を用意できるだろう」
「布団は……これはまだ用意できるか」
「固くて薄いと寝違えるから、なるべく柔らかくて厚い布団を頼むよ。枕は少しばかり固くても気にはしないよ」
「はぁ………ほんっっとうぅうううううううにあんたはお嬢様なのね」
「そうだ。紅魔館のお嬢様で主、そして最強の吸血鬼で夜の王。それが私なのだからねぇ」

小さな体をふんと胸を張るレミリア。頭痛を覚えたかのように霊夢は頭を抱えていたが、考えても
仕方がないとばかりに立ちあがると、レミリアの為の食事を取りに行った。

「これからお茶とお茶受け用意してくるから。あんた絶対そこから動くんじゃないわよ。変なことしたら、神社から叩きだすからね」
「分かっているさ。さぁ早く用意をしておくれ」

はぁとため息をつくと、霊夢は部屋を出て襖を閉める。
それを見届けると、レミリアは軽く目を閉じ、先程の霊夢の様子を思い返す。
誰のものにもならず、孤高の存在として輝く宝石。レミリアは、霊夢の事をそう思っていた。
自分と同じ人間で、他の誰よりも関わっている白黒の魔法使いですら、他の人妖と同じ扱い方。
それがレミリアに、霊夢を大層愉快で飽きない存在と認識させている。
既に自分の掌中に収めて、これみよがしと見せている宝石はあるのだ。どうせ誰の手にも入らぬも
のならば、硝子ケースに入った宝石のように愛でようじゃないか。

(運命を操る力。私に似て気まぐれで我儘なお前は、いつも楽しませてくれる。近い内にとても面白いものが見れそうな気がするよ。中世の拷問のごとく残酷で胸の躍る楽しいスナッフがね)





* * * * * * * * * * *






閻魔の人数が非常に多くなった為、死神、地獄の鬼と共に地獄の公的組織を作り統制を取っている
是非曲直庁。
地底都市は地獄の繁華街だったが、スリム化政策で地獄が縮小されて地獄ではなくなり地獄だった頃の施設と怨霊が取り残されることとなった。
十王と呼ばれる十人の閻魔王達が統制していた地獄の繁華街跡地である旧都は管轄の外になり、現在は地上から移り住んだ鬼達が統治している。

その旧街道にある商店街の横道に入ると、小さな商店の並びが途絶え、道は住居区へと連なっていく。喧騒と閑静の狭間、賑やかな明かりの消える境目。そこに看板の無い店がある。
そこは老いた妖怪が店主を勤める人形屋。店主の人形屋は、商店が完全に途絶えた住宅街と狭間にあった。
店主は、固定客だけを顧客として相手をし、生計を立てている。それも、人形師たる店主の作る人形の正体を見抜く審美眼と、その上で人形を欲しがる悪趣味さを兼ね備えた客しか相手にしない。
そんな店主の元に、今日はこの店に数少ない常連がやってきていた。
まるで美しい少女の人形に魂が吹き込まれて動いているような錯覚を感じさせる妖怪、古明石こいし。無愛想な店主の鼓動が、そんな素晴らしい作品のような生物を目の当たりにし、僅かに高鳴る。

「お久しぶりね、おじいさん。私がこなくて寂しかった?」

店主は黙したまま手を軽く振る。別にお前など来なくても寂しくないとでも言いたいのだろうか。
そんな店主の動作にこいしは苦笑した。こいしはこの店主が喋った所を見たことがない。
久しぶりに訪ねてきたにもかかわらず、さほど歓迎されないのもかつてと同じだ。もともと、店主にそんなものを期待しているわけでもない。こいしは店主の無愛想な応対を受け流し、狭い店内を見回した。美しい人形達の視線が、こいしを注目している。

「地霊殿にね、新しい女の子の剥製を飾ろうと思うの。活発で綺麗な人間の女の子よ。でも、その子一人だと殺風景で華やかさがないの。薔薇やその薔薇で作った香水や洋服で飾り付けて、綺麗に化粧して髪を梳いてあげても面白みがないの。だからね」

そこでこいしは言葉を切ると、店主の方を見る。こいしの言葉に店主は特に反応を見せない。その代わりそれでどうするのだとでも言いたげな表情をする。こいしはそんな店主を見て微笑むと再び喋り始める。

「だからね、その女の子と同じくらいの年の姿をしたお人形を買いにきたの。あなたは無口で無愛想で、心を閉ざしちゃった私よりもずっとずっと何を考えているか分からないけれども、人形作りの腕は確かで、どのお人形も艶やかで生き生きしているもの」

そう言うとこいしは、床を爪先で軽快に叩きながら店内の人形を一対一対吟味していく。
店内に飾られている人形の中で、魔理沙と同じ等身大の人形を探す。。
最初に目に付いたのは、真っ色な肌に銀髪の髪の、幼い少女の姿をした人形だった。その人形は硝子箱の中で、赤色のドレスに身を包んで胸で手を組み、目を閉じている。ぷっくりと膨らむ赤い唇に口付けをすれば、ぱっちりと目を覚まして、大きな瞳を瞬かせる。そんな錯覚を抱くほど、硝子越しの肌は柔らかそうで、耳を澄ませば呼気まで聞こえそうだった。
その少女の人形から目を離し、どの人形を見ようか周りを見渡した所で、こいしの知覚が声を捉える。それは静まり返った店内の中では、叫び声の様に聞こえた。

「あら?どこからか心地いい歌が聞こえるわ。恐怖とか、絶望とか、苦痛とか、そんな黒いドロドロした感情をぎゅっと押し込めたような。あなたの創った人形にしか唄えない、この世のものにはありえない、歪んで軋んだ美しい歌。聞いていると、とても心が落ち着くわ」
 
歌は耳に聞こえるわけではない。しかし心に直接響いてくる。声のするほうにこいしが目を向けると、そこには赤毛の髪を無造作に結んだ少女の人形が立っていた。白い肌の下には、本当に血が流れているかのようだ。
歌を唄う少女は、明らかに気が触れていた。声を上げる頬などは高潮しているようで、熟れ始めた大きな林檎を連想させる。

「まぁ、可愛らしい女の子。少し影があって悲しそうだけれども、とても綺麗な女の子だわ。
この子。何の歌を唄っているのかしら。楽しそうな可愛い歌が、今にも聞こえそうな気がする」

少女の気の触れた歌を感じ取りながら、こいしは三体目の人形を見る。その人形は二人の少女の人形とは、ずいぶん趣が違っている。小さな体は、ほとんど皮が張り付いただけの骸骨だった。茶色い襤褸の襟から覗き込むと、張り裂けそうにあばらが突き出ていた。
その口から発せられているのは、怨嗟の声か嘆きの声か。残念ながらこいしの知覚では、この無残な姿の少年の感情を捕える事ができなかった。
三体の人形をじっくり吟味した後で、こいしは店主の方に向き直る。店主は相変わらずの無言。表情すら変えていない。その有り様にこいしは笑いを漏らす。

「あなたは、どうしてこんな素敵な人形を作れるのにそんなに無愛想なのかしら。でもそれならそれで構わないわ。あなたは人形達を作ってくれるし、お陰で私はこの人形達を愛でることができるんだし。この子達なら魔理沙も寂しくないだろうしね」

そう言うとこいしは店の扉近くまでより、軽く手を叩く。
扉から入ってきたのは筋骨隆々とした二頭のゴリラ達。二頭はこいしの両脇に歩みより指示を待つ。

「気に入ったわ。この子達三体とも買うわ。言い値を払うから、売ってちょうだい。払えるのかなんて余計な心配はいらないわ。私の家には使いきれないくらい沢山のお金があるし、万が一の時はお姉ちゃんにおねだりすれば、何でも買ってくれるもの。さすがにそこまであなたが値段を吊り上げる事はないでしょうけれども、それぐらいあなたの人形達が欲しくなったの。光栄に思いなさいな」
 
こいしは自分の姉を篭絡するときの、とっておきの可愛らしい笑顔を作ってみせた。店主はわずかに目を見張り、大きく身じろぎする。やがて初めて、柔らかな笑みをぎこちなく浮かべた。
はにかみながら、隠微に気色ばむ店主の様子が可笑しい。作り笑いだったはずが、こいしは笑みが止まらなくなった。

「うんうん。自分の創った子供達が大切に可愛がられるのは、嬉しいわよね。とてもよく分かるわ。魔理沙も身も心も可愛がられて幸せなはずよ」

そこでこいしは軽く目をつむり、魔理沙の事を思い出す。

「可愛かったわ、魔理沙。あなたが絶望と恐怖に怯えて、無残で残忍に嬲られて心を奪われる様はとても可愛らしかった」





* * * * * * * * * * *





調理場。それは、疲れ飢えた者達に、料理という活力剤と元気を与える中心部。この地霊殿も、そのご多分にもれず調理場がある。
かってこの地霊殿で働いていた、鬼神長や鬼達が激務に耐えうれるだけの大量の食事を作るために、調理場と屠殺を兼ねたその調理場はかなり広く、設備も彼岸の高い技術を使ったものが整っている。
丸々太った巨大な七面鳥を焼ける程巨大なオーブン、そして子豚の丸焼きが楽々作れるような竈やら鉄板、幅が一メートル二、三十センチセンチ、長さが三メートルほどの、大量の炭火を入れることで、傍らにある長さが五メートル近くもある丸太に、雄牛でもしばりつけて丸焼きにできる巨大な鉄の箱やらまで並んでいる。
そんな地霊殿の調理場で、食糧調達を担当する狼ヒトガタ達の内の数頭が、調理室で話しこんでいた。どうやら、彼らが調理する分の食材を待っているようだ。

「くそっ、まだ来ねえのかよ。今日の分の食材はよぉ!!」
「そうがっつくな。食材が来ないと決まったわけでもあるめぇ」
「それはそうだが……。しかしいくらなんでも、ちょっと約束の時間と比べて遅すぎやしないか?」「あああ、うるせぇぞ。てめぇはいつもいつも餌の時だけせっつきやがってよぅ。腹がますます減ってきやがるじゃねぇか」
「それはもっともだ。そして慌てる何とやらは何とやらとも言う。落ち着いて待つことだな」

食材が来ないことに苛立つ者。そんなせっかちな仲間を呆れたように見る者。冷静に食材が来るのを待ち続けるもの。それぞれが思い思いに食材が来るのを待ち続けていた。

「やぁ、待たせたね、お前達。」
「遅かったなぁ、燐。こっちは待ちくたびれていたぜ」
「そうだぜ。珍しい食材がくるっていうから、調理器具を入念に手入れしたっていうのによ」

調理場の扉が開くと共に、今回の食材の調達者であるお燐が、荷車を押しながら入ってくる。
その様子に狼達は一様に安堵の表情を見せた後、お燐の方へ寄って行った。

「おい、燐。おめぇの言っていたとびっきりの食材って奴は、一体どんな奴なんだ?」
「馬鹿かお前は。そんな物はこの荷車の中を見りゃ、すぐ分かることじゃねぇか」
「そうだぜ、もったいぶるなんてまだるっこしいことはなしだぜ、お燐。早くその食材とやらを、俺達に見せな」
「あぁ、そうさね。じゃあ、見てごらんお前達。これが今日の食材だよ」

今にも待ちきれないといった様子で荷車に視線を集中させる狼達。お燐は、荷車の上に被せている布に手をかけると、勢いよく取りはらった。感嘆と感心の声が上がる。
食材は全身を縄で拘束され、力尽きたかのようにうなだれていた。しかもそれは、まだ生きているらしく、胸を小さく上下させている。

「若い雌の肉とはやるじゃねぇか、燐。こいつぁ、調理と喰いごたえがありそうだなぁ、おい」
「こいつぁよかった。最近は死肉か冷凍肉ばかり喰っていたからよぉ。新鮮な生肉を思いっきり食いたかったところなんだ」
「そうか。実は俺もだよ。全く、獣なのに俺達って奴はグルメになっちまったなぁ」
「獣時代よりも余程、力は増したがな」

狼達はいかにも面白そうに、獣と妖怪の本性剥き出しの笑みを浮かべている。お燐はそんな狼達をしばらく眺めていたが、ふいに荷車のほうを見る。狼達の喧騒に影響されたのか、魔理沙がゆっくりと目を開いていたからだ。
意識を取り戻した魔理沙が最初に感じたのは、例え様もないほどすさまじい激痛だった。その激痛に魔理沙は絶叫し、激しく身をよじらせる。
しばらくその様が続いていたが、体を動かす事もできない程消耗した魔理沙は、すっかり憔悴しきった様子で辺りを見渡し、周りの様子を見ておびえたような悲鳴声を出す。獰猛な獣達がぎらついた視線で、全身の皮を剥がれ、縄で拘束された食材を見降ろしている。しかも足から輪切りにしよう、全身をミンチがひき肉にしてやろう、久しぶりに若い雌の絶叫が聞ける早くくいてぇ等といった言葉を口に出している。

魔理沙は理解などしたくはなかったが、はっきりとこの肉食獣達の意図を理解させられてしまっていた。自分は完全に食材として、どんな方法でかは分からないが、この調理場において料理されるのだ。それも残酷に生きたまま。
それを理解した瞬間、無残に泣き狂いながら、荷車の中から這い出して逃れようと暴れのたうつ。しかし、狼達の太い腕が四肢を握りつぶさんばかりに強く抑え込み、逃れることができない。若くて旨そうな血肉の匂いを放つ獲物。その体を調理し喰らってしまう興奮と歓喜に、狼達の顔は残忍に輝き始める。

「お姉さん、大人気じゃないか。きっと丁寧に調理されて、美味しく食べてもらえるよ。うん、間違いないさ」

そしてお燐も、その目から涙を次々に溢れさせるばかりの魔理沙に、残忍な笑みとともに容赦のない言葉を浴びせかけてくる。
魔理沙にとって、そんな言葉がそのまま地獄だった。
その言葉の一つ一つがいよいよ残酷に魔理沙を苛み、怯えさせ、絶望させ、悲哀の中で激しくのたうたせ翻弄する。自分は人間として処刑さえもされないのだ。牛や豚のように料理されて食べられてしまう対象としてしか扱われないのだ。
地底の恐ろしい妖獣達に嬲り殺しにされ、そして食べられてしまわなければならないのだ。
絶望と屈辱が、渦のように激しく魔理沙に襲いかかってくる。

「悪魔ぁぁああああああああああああああ!!ばけものぉおおおおおおおおおおおおおお!!ああぁああっ………こんなのいやだぁあああああああ!!!」

魔理沙は妖獣達を力の限り罵りながら、いよいよ激しく身悶えながら泣き狂う。しかし、全身の皮が剥がれ、その激痛に耐えながらの罵りは、獣達を喜ばせる以外の何の意味も持たない。狼達の中には出来上がりの料理を想像して舌なめずりをしているものさえもいる。

「おい、そろそろ始めようぜ。こんな事で体力使われても勿体無いしよぉ」

やがて一頭の狼がそんな騒ぎに蹴りをつけるように言うと、お燐や他の狼達も鋭い牙を見せて笑う。
いよいよ魔理沙の食材としての調理が始まるのだ。
狼達は魔理沙の体を抱えて、屠殺場に作られている木枠のところに運んでいく。その枠からは、巨大な鉤針が太いロープでぶら下げられていて、顔を蒼白にしている魔理沙は顔を強張らせる。
運んでいた狼達は、魔理沙の右肩の下辺りに、その鉤針の鋭い先端を思い切り深く抉るように突き刺し、体を木枠からぶら下げてしまう。

「ぎああがぁああああああ…がわあぁあああああああ…痛い痛い痛いいぃいいいいいいいいいい!!降ろして…お願い降ろしてぇええええええええ!!誰か助けてぇえええええええ!!」

残酷で、恐ろしい吊るされ方。魔理沙はその手足を無残に捩らせながら泣き叫ぶ。
しかし調理する側にしてみれば、ただ食材をぶら下げただけに過ぎない。本科的な調理はこれから始まるのだ。

「で、どうやって調理していくんだ。手足をぶった切るのか?」
「いや。動物って奴は体の内側が汚れているから、これを徹底的に洗浄してやらないとどうしようもない。その後は外から味付けだ。」

問い掛けられた狼は、目をぎらつかせながら答えると、狼の一頭に手を挙げて合図をする。その狼は一本のゴムホースを手に魔理沙に近寄っていく。

「何をするの……あうひっ……お願い何をするのぉおおおおお……いやぁあああああああ!!いやぁああああああああああああ!!」

狼は魔理沙の肛門に手にしたホースを力任せに捻じ込ませる。肛門をそんなもので抉られるおぞましい激痛に、魔理沙は体を大きく仰け反らせて無惨な声を張り上げる。
しかしそれに構わず、ホースを繋いでいる水道の蛇口が別の狼の手により捻られると、彼女の体内に水が凄まじい勢いで注入され始める。たちまち魔理沙の腹部は無惨に膨らみ始め、凄まじい圧迫感が襲いかかる。

「ヒギギャアアアアアァアアアアアアアアアア……ぐわあっ……苦しい苦しいいぃいいいいいいいい!!ギャアアアァアアアアアアアアアアッ!!」

魔理沙は体をのた打ち回らせ、肛門に力を入れてホースを引き抜こうとするが、そんなもので抜ける程浅くねじ込んではいない。その腹部は見る見るうちに臨月のように膨らんでいき、今にも破裂しそうな程になる。そんな自分の体が信じられないかのように魔理沙は目を見張る。
魔理沙が完全に破裂すると皆が思った所で、狼は一気にそのゴムホースを引き抜いていく。それと同時に素早く宛がわれたポリバケツを用意。腹部を強く圧迫し、ポリバケツの中に、魔理沙に注入していた水と、体内にたまっている汚物を、汚らしい音とともにぶちまけさせる。
排泄物の汚臭が料理場に漂うが、そのポリバケツに素早く蓋をされたことと、設置されている強力な換気扇の力で薄れていく。

「思った程汚物が出てねぇな。もっと出るもんだと思ったが?」
「あたいが剥製にする為に、お姉さんから全身の皮を剥いだ時、一回汚物を漏らしたからねぇ。少なくて当然さ」
「成程、そういうことかい。だが、この様子じゃあまだ随分汚れているようだな。綺麗になるまでこうしてやらねぇとな」

そう言うと、その狼は水を吐き出し続けているホースを再び魔理沙の肛門に押し込む。
再び魔理沙の腹部は無惨に膨らんでいく。

「ヒギャヒャアアアアアアアアアアアア!!そんな……ぐがあっ……もうやめてぇえええええええ!!こんな事いやだ許して苦しい苦しいいいいいい……」

魔理沙は、また全身を無惨に捩じらせて泣き叫び、腹部がさっきと同じ勢いで、無惨に膨らんでいく。そして十分に膨らんだのを見計らった狼がそのホースを引き抜き、さっき同様、肛門に宛がわれたポリバケツの中に汚水を派手にほとばしらせてしまう。
それはさっきより遥かに薄くなっているが茶色く変色し、まだ十分に汚物の匂いを漂わせている。

「ふん、まだまだか。早く調理に取りかかりたい所だが、ここを徹底的にしておかないと碌な料理にならないからなぁ。もう一回やってやろう」

狼は水を激しく吐き出しているホースを三度、その肛門に深々と捻じ込んでしまう。
立て続けに三度猛烈な水流に浣腸される魔理沙は、たまらず体を無惨に仰け反らせて泣き叫ぶ。腹部を膨らませてきった魔理沙の肛門からホースは思い切り良く引き抜かれるが、しかしほとばしったものにはなおしつこく汚物の臭いがこびり付いている。しかし狼は落胆する様子もなく、四度、ホースを少女の肛門に捻じ込んでしまう。
実に五回も激しい浣腸を繰り返され、入れた時と同じ水が魔理沙の体内から吐き出されるようになった所で、ようやくその狼はホースの水を止める。魔理沙はがっくりと項垂れて無惨に哀願を繰り返していた。そのおぞましい責め苦と屈辱感、悪夢そのままの凄まじさで、さらに自分が殺され、食べられてしまう恐怖と一体になって苛んでいる。しかしこれからが魔理沙の調理の始まりなのだ。

「終わりだ。これでこいつの体内は綺麗に洗浄できた」
「それでは味付けと行くか。おおう、仕込みの腕がなってきたぜ」

一頭の狼が面白そうに言うと、手にしている塩胡椒を適当にブレンドしたものを、血をしたたらせ、肉や脂肪が剥き出しになっている胸に刷り込み始める。
残りの狼もそれに続き、魔理沙の全身に、塩やら胡椒やらを刷り込み始める。
その瞬間、全身が焼け爛れるような激痛に、魔理沙は吊られている体を無惨に仰け反らせて絶叫する。

「ギャヒイイイィアアアアアアアアッ…ぐわああぁああああああああああああああああああああああ!!熱い熱い熱いいぃいいいいいいいいいいいい!!」

全身火達磨になったかのような激痛に苛まれる魔理沙の絶叫が、辺りに響き渡る。しかし、かえってよいスパイスになるとばかりに、狼達は容赦なく魔理沙の全身に塗り込んでいく。
塩胡椒の味付けを終えたら、今度はそれを肉にしみこませる番だ。
そこで狼達は調理器具場に行くと、何かを手に取り、魔理沙の方へ戻ってくる。
それは、無数の鋭い棘のついた鉄棒だった。

「なるほど。こいつで叩いて肉を柔らかくしてやろうというわけだ」
「そういう事だ。ただしあまり馬鹿力を出して強く叩くなよ。人間、特に女の体は脆いからな」
「分かってるって。さぁ肉だるまの人間ちゃん。可愛らしく泣き喚いて美味しくなって頂戴ねぇ」

そしてこのまま全身を上下に引き裂かれてしまいそうな激痛に、魔理沙は全身を大きく仰け反
らせて恐ろしい声で泣き叫ぶ。
しかし鉄棒はその両足をばたつかせている下腹部を、したたかに叩きのめす。
魔理沙は全身を殴打され、そして一層その抉られる肩に走る激痛に、いよいよ残酷に苛まれながら無惨な声で泣き叫ぶ。

「こんな目にあっているって言うのに中々良い悶えっぷりじゃないか」
「これはこの後の調理で、どう悶えるのか見ものだな」

狼達は面白そうに話し合っているが、こっちは吊るされている、それも恐ろしい鉤で吊るされているのだから派手にのた打ち回るのだってむしろ当たり前だ。
魔理沙は獰猛な肉食獣に牙を突き立てられているような、恐ろしい激痛に襲われる。

「ギヒャアアアアァアアアアアアアアッ…うがあっ…死んじゃう死んじゃう死んじゃう…ヒギィイイイイイイイイイイイイイイッ!!」

魔理沙はその衝撃でさらに斜めに揺れ、凄まじさを増す激痛に、無残な声を張り上げて泣き叫ぶ。狼達の振るう鉄棒は、何度も激しくその肌に叩きつけられ、打ちのめす。
そしてそれが終わった時、魔理沙はぐったりとなって、体を僅かに揺らせ、血と涙を流す。

「この後の料理法を考えると、もっと徹底的に塩胡椒をしてやらないと」
「そうだな、もっと肉の内側にじっくりと擦り込んでやろう」

そんな言葉とともに、皮膚を毟り取られたばかりの肌に刻み込まれた、そんな魔理沙の体に再び擦り込まれる。
その激痛は、さっきの体が炎に包まれたかと思えた塩胡椒を施された責め苦を超えてしまう程のものだった。
魔理沙はさっきより遥かに激しく、遥かに無残に泣き叫び、のた打ち回って苦悶するが容赦はない。
狼達は、魔理沙の剥きだしの肌に塩胡椒をたっぷりとすり込み、鉄棒で全身を打ちすえる行為を繰り返す。塩胡椒と棒打ちのサイクルは四度繰り返され、皮を剥ぎ取られたばかりのむき出しの肌は、恐ろしい激痛に苛まれている。
その恐ろしい鉄棒による作業が終わり、魔理沙は鉤針から下ろされて、調理場の方に運ばれ、大きな台の上に横たえられる。狼達の目は、残忍の度をまして輝いていた。

「さて、これからの調理が難しい。腹をかっ裁いて内臓を抉り出すのは簡単だがな。これを殺さずに内臓を取り除くとなると俺では手に余る。おい、お前の出番だぜ、燐」

それまで狼達の調理の様子を見ていたお燐に言うと、待ちかねていたかのように、足早に進み出る。
その手には鋭く光るナイフが握られていて、無気味に光っている。

「動かれると危ないからね。しっかりと抑えといておくれよ」

そしてお燐が面白そうに言うと、それに気付いて怯えた表情をして逃れようとでもしているかの
ように体をずり上げようとしている少女の体が、再び無数の手によりしっかりと押さえつけられる。

「くくく、お姉さん。これからお姉さんの腹は、あたいに真っ直ぐ切り裂かれて、生命維持に必要な内臓以外を全て取り除かれるのさ。腎臓と肝臓はボイルしていろんなものと混ぜ合わせて、他の臓器まで取り除かれて、綺麗さっぱりとなった腹部に色々な食材を詰めてやる。そして美味しく召し上がられる為の仕上げに入るわけだけど、お姉さんがどんな料理になるかは、その時まで秘密だよ。楽しみにしながら、じっくりと自分の内臓達を観察するといいさ」

お燐は口を釣り上げ、笑いながら言う。それは、激痛という激痛が何重にも重ねられ、悶える事も思考することもできなくなってきた魔理沙にさらなる恐怖を与える。

「ヒイイイィイイイイイイ…そんな…そんな事って…ひああっ…あうあ…お願い助けて…いやだぁあああああああああああああ!!ヒイイイィーイッ…死ぬのはいやだぁあああああああああああああ!!」

魔理沙は一層無残な声を張り上げて泣き狂い哀願する。
しかし悶えようとする体はしっかりと狼に押さえつけられていて頭部以外微動もしない。
そしてお燐は、そんな魔理沙の哀れな様子にいよいよ面白そうに話しかける。

「それじゃ、お姉さんの内蔵を剥き出しにしよう」

お燐はそう言うと、ナイフを魔理沙の鳩尾に突き立て、陰部まで真っ直ぐに切り下げてしまう。
魔理沙はその信じられないほどの激痛と恐怖に無残な声を張り上げて泣き狂うが、お燐は大きく太いかぎ針をその傷に引っ掛けて、左右に思い切り広げて糸で固定。
内蔵を、ぎらついている視線達の前に剥き出しにしてしまう。

「こいつ内臓も綺麗で可愛いな」
「そうさね。外面の可愛い奴は、内臓も可愛いってことだろうね」
「美味そうだから棄てるなんて勿体無い。腸なんかも、子宮や膣なんかも、別の料理で調理した方がいいぜ」

その死に物狂いで捩らせようとしている手足を押さえつけている狼達は、それを覗き込みながら、感心したように言う。
魔理沙の恐怖と絶望はいよいよ凄まじさを増すばかりだ。
むき出しの内臓なんて、そんなものを誉められても嬉しい訳がない。

「ぐわあっ…お願い助けて…助けてえええええええええええ!!こんな事いやだ…死にたくないよぉおおおおおぉ……」

お燐は楽しげな表情を浮かべ、手にしたナイフで、赤黒い肝臓を切り取り始める。
肝臓には痛点がなく、それほどの激痛はない。しかし、内臓を取り除かれている事そのものが、魔理沙にとっては余りに残酷だった。魔理沙はその可憐な顔を無残に歪めて泣き狂い、哀願し、ナイフが体内で動く度に体が大きく震えあがる。
その体を抑えている狼達の顔には、残酷な笑みが浮かび、魔理沙にぎらついた視線が向けられる。
やがてその腹部から肝臓は丁寧に取り除かれ、赤黒いゼラチン質の巨大な塊が、お燐の手により取りだされ、魔理沙の前に突きつけられる。
自分の内臓を突きつけられた魔理沙は、信じられないように目を見開いて哀れな声で泣き叫ぶ。魔導書等で解剖図を見るのではなく、自分が解体される過程を見せつけられる恐怖は、生々しくグロテスクで、想像を絶する残酷なものであった。

「今切り取っている、このでっかく赤くてブヨブヨしてるのが肝臓だよ、お姉さん。血抜きをして湯がいて食べるとおいしいんだ」
「ああっ……あああっ………あぐっ……お願い……だから……もうやめて………こんなのいやだ……」

取りだした肝臓を狼に渡すと、お燐はさらに次の臓器を取り除きに掛かる。
お燐は見事な手さばきでメスを操り、内臓を丁寧に切断し抉りだしていく。その手さばきは、残酷な程に正確で手早く、魔理沙は死ぬことなく生かされたまま、内臓を取り出される。お燐は、内臓を切除する度、鮮血をしたたらせてまだ湯気が立っている様々な臓器を、次々と自分の体内の内臓を取り出され呆然としている魔理沙に示しながら、一つ一つ面白そうに説明する。

「これが胆嚢、胆汁を出す処だよ。生き物によっては薬になるけれども、お姉さんのは食べられたっけな?」
「これが腎臓。可愛いいお姉さんのはどんな味なのかな?」
「この白いブヨブヨしたのが胃。上手に料理すればなかなか美味しいんだ」
「あぐぐうっ……あばがっ………死にたくない……しにたくない……」

お燐の楽しそうに説明する声と、全身を戦慄かせ引き攣らせ、血泡を吹いて泣き狂う魔理沙。
残酷な生体解剖は容赦なく続き、生活するのに不可欠な臓器が次々と自分の体から取り除かれ、その度に一つ一つ説明付きで突き付けられ見せつけられる。
魔理沙にとっては、絶命してしまうか、気が狂ってしまった方が幸福だっただろう。しかし、お燐は魔理沙を殺すことも狂わすこともなく、なぶるように体を解体し続ける。
やがて魔理沙の視線は宙を彷徨い、唇は土気色になり、全身には麻痺のようなものが走り始める。そして最後にそんな魔理沙の腹腔から、腸がゆっくりと引きずり出されていく。

「ほら、見てごらんよお姉さん。これが腸だ。こうやってまっすぐにすると、実に長いものだろう」

魔理沙の目の前で、まだびくびく脈打っている、健康的な小腸、大腸が、腹の中からたぐりだされていく。絶叫と哀願とともに、魔理沙の口から、鮮血が泡となって溢れ出始める。やがてまだ湯気の立っている腸は、傍らの大皿に堆く盛り上げられる。
そして三十分余りが経過する。魔理沙の腹部は、腸や胃、肝臓、腎臓、肝臓などの臓器はもちろん、内側から膣や子宮、卵巣、膀胱までも取り除かれてしまって、綺麗ながらんどうにされていた。そんな姿にされ、なお死ぬ事を許されない魔理沙は、余りの激痛と恐怖、絶望に、弱々しい声で泣きじゃくる。

「ぐあううっ………うがあひっ………いやだ…いやだ…………」

顔は蒼白を通り越して土気色。目は力なく宙を彷徨い、唇からは血泡が吹き出しているのが何とも無残だ。しかし責めるほうはいよいよ容赦はない。

「さて、今度は手足をぶった切ってやる番だな」
「両手首と両足首はあたいにおくれ。まだ皮を剥がしてないからね」
「あぁん?そういう事はもっとはやく言えよ、お燐。味付けまですんじまったじゃねぇか」
「ごめんごめん。でも、お前達手足までは味付けしてなかったろう」
「そうっちゃあそうだがよぉ」
「……おい、お前達、ごちゃごちゃ喋ってないでそこをどけ。肉の解体ができんだろうが」

傍らの台から一本の鉈を取りあげた狼が、呆れたように言い合っているお燐と狼を見てどくように指示。どいたのを確認すると、その鉈を、魔理沙右腕の付け根に向って振るい、それは一撃で肩から切断されてしまう。

「うあぁああああああああああああああああああああああああ!!痛い痛い痛いいいいいいいいいいい!!」

腕が切断されてショックでないわけがない。魔理沙は引き攣った声を張り上げて泣き狂うが、しかし狼はさらに繰り返して鉈を振るって今度は左腕を切断してしまう。
そうしたら今度は両足の番だ。
魔理沙は声を張り上げて、力を振り絞ってて哀願するが、しかし仰向けに横たえられている体はわずかに左右によじれるだけで、ろくろく悶える事もできない。

「ふん、調理される餌が哀願するなんて滑稽だな。お前がどう喚こうが、俺はお前の両足をこの鉈でぶった切る。若くて芳醇な魔力を持つお前の肉は、さぞかしうまいことだろうな」

嗜虐心を刺激されたのだろう。その狼はさらに残忍な笑みを浮かべてそう言うと、鉈を渾身の力を込めて右足の腿の付け根に打ち込む。妖獣の力で振るわれた一撃は、大腿骨を粉々に粉砕。しなやかな足を体から残忍に切断してしまう。

「がぁあああああああああああああああああああああああ!!」

魔理沙はいよいよ無残に泣き叫ぶが直ちにその傷の付け根に焼けた鉄棒が当てられてすぐに止血が施され、さらに左足に鉈が振るわれてさらに無残な絶叫が可憐な口からほとばしる。しかし狼は左足の髄に狙いを定めると、再び力任せに鉈を振り降ろし大髄骨を粉砕。魔理沙は、その手足を付け根から切断されたいよいよ無残な姿になってしまう。死にたくない。食べられたくもない。その口かは絶えず絶叫と悲鳴声と共にそんな声がほとばしっていたが、それは回りの者たちをいよいよそそらせるばかりだ。
丁度それにタイミングを合わせるように、彼女の肝臓と腎臓をボイルし切り刻んだものと、ジャガイモや卵、パセリなどを切り刻んだものを大量に混ぜたものが出来上がって運ばれてこられ、そしてそれはがらんどうにされたばかりの腹部にたっぷりと詰められて、そしてタコ糸で元通りになるよう丁寧に縫い合わされてしまう。そしてその体も、タコ糸で肉に食い込むほど、厳重に縛られてしまう。

腹に大量の異物が詰め込まれてぷっくりと腹を膨らませ、残された内臓が圧迫される苦痛と、全身にタコ糸が食い込む苦痛に胴体と頭部だけになった体を蠢かせながら呻く魔理沙。
調理用食材として加工され終え、料理されるのを待つばかりの姿は、無残だが食欲をそそるものだ。
いよいよ料理として本格的に調理されていく魔理沙に顔を近づけながら、お燐は楽しげに絶望的な感情を煽る言葉を放つ。

「さぁてお姉さん。お待ちかねの調理される料理の発表だよ。
お姉さんはね。本格的なローストにしてやることにしたよ。ふふ、オープンの中に入れられて全身をじっくり時間を掛けて、文字通りの丸焼きにされるのさ。ぞくぞくしてくるだろう」

自分は散々この妖怪を楽しませたあげく、残酷に、惨めに、まるで牛や豚のように料理され食べられてしまう。その想像を絶する恐怖が、じわじわと魔理沙の胸の底からわき上がってくる。
しかしお燐はそれで魔理沙を殺しきるつもりではないようだ。

「オーブンで生きたまま焼かれるのは、灼熱地獄の炎に放り込まれるようなすごい苦痛だけれども、まだそこではお姉さんは殺さない。お姉さんは、それが天国だと思えるような恐ろしい屠殺をしてあげる。どういう屠殺をされるかは、またその時に話してあげるからね」
「うぅううううう……えぐっ………」

魔理沙は凄まじい恐怖に体を捩らせる。お燐は、狼達に運ばれる魔理沙の顔を覗き込みながら面白そうに笑い、狼達の目は残忍に輝く。そしてそんな魔理沙に対する料理は残酷の度を増しながら続けられる。
先の魔理沙の内臓処理の間に準備したのだろう、激しく燃える山盛りの炭火の入った巨大な鉄の箱。
その上には、厚さ3センチ、直径2メートルはありそうな巨大な平底の鉄板。それは、強火で十分に熱せられ、表面から熱気が沸きあがる。その前に魔理沙は運ばれていく。
その鉄板に肉が焦げつかないように、表面に大量の油が垂らされ、鉄板全体にひかれていく。そんな様子を、息も絶え絶えに呻くだけの魔理沙は、怯えきった表情で見つめるばかりだ。

「焼いている間に肉汁が漏れでもしたら勿体無いからな」
「まず表面の肉を焼こうぜ。ローストを作るときの鉄則だしな」

そこに狼達は魔理沙の体を、仰向けに十分に熱せられた鉄板の上に放り込む。肉が焼ける熱さ、苦痛。熱せられた鉄板で焼かれていくその熱さは凄まじく、全身をタコ糸で縛られた魔理沙は、必死でのた打ち回ろうとするが、わずかに左右に転がろうとする動きを取るのが精一杯だ。
魔理沙の体は鉄板の上で丁寧に満遍なく焼かれていき、塩胡椒され、油の染み込んで肉の焼けるい
い匂いが漂い始める。

「ぎぃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!痛い痛い痛いいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!」
「お〜お〜、元気に悶絶してやがる」
「お姉さんのその姿。しっかりあたい達の目に刻み付けてあげるよ。お姉さんを食べる時には、思い出してあげるからね」

そんな声が魔理沙に浴びせられるが、鉄板の上で全身を焼かれる激痛と恐怖にのたうちまわる状況で、その声が聞こえるわけがなかった。
そして泣き悶える力もなくなってきた魔理沙の体に、たっぷりと大樽から桶でアルコールが降り注がれる。
魔理沙は焼け爛れた肌にアルコールがしみこむ激痛に、狂ったように激しく泣き悶え始める。

「熱い熱い痛いぃいいいいいいい!!ウァギャアアアアアアアアアアお願いやめてもうやめてぇえええええええええええ!!」

そして、狼は火の付いたマッチを、泣き狂っている魔理沙の体の上に落とす。
アルコールが燃えて引火。炎は勢いよく彼女の全身に燃え広がっていき、そんな魔理沙の体全体が炎に包まれる。
魔理沙は獣のような絶叫を張り上げ、アルコールの燃える芳香を発しながら、悶え狂う。
全身の皮を剥がれ、タコ糸で縛られ、剥き出しの肌に味付けをされ、焼かれる。
その姿は地獄そのものの残酷な光景であった。
せめて仰向けに戻ろうと、無惨にのた打ち回り始めるが、狼達は鬼達が使っていただろう金棒で体を押し付けてそれを許さない。

「そろそろひっくり返した方がいいんじゃないか」
「そうだな。全体を満遍なく焼いてやらないとな」

そんな言葉とともに、狼達が、大きな鍬状の鉄棒でその体をうつぶせにひっくり返してしまう。
魔理沙は、体を無造作に裏返しにされ、胸や、腹などが熱い鉄板の底に押し当てられ、焼かれていく。タコ糸で全身を縛られ、動くことも満足にできない魔理沙の口から、さらに悲痛な絶叫がほとばしる。
良く火が通るようにするためだろう、鉄板の周辺から何本もの鍬状の鉄棒が伸びて、激痛にひきつっていた魔理沙の体を力一杯押しつけ、魔理沙の口からは一層凄絶な絶叫が連続して迸る。肉が剥き出しにされた横顔も鉄板に触れ、頬の辺りが無惨に焼け爛れていく。

魔理沙は全身無惨に焼け爛らせて鉄板の上にぐったり横たわり、今にも死にそうな声で息も絶え絶えに呻くだけになってしまう。魔理沙はもう人格や尊厳を持った存在ではなく、調理され喰われるだけの素材でしかなかった。それはそうであろう。ここで魔理沙を調理している者達の中に人間はおらず、いるのは肉と精神を貪る妖獣だけなのだから。
そうして表面を焼いた魔理沙の体は、巨大な七面鳥や丸々と太った子豚でも乗せられる、巨大な天板の上に横たえられてしまう。その足元ではその巨大な天板がすっぽり入るほどの巨大なオープンが、唸るような音をあげて熱せられている。いよいよ魔理沙は、この巨大オープンの中で丸焼きにされるのだ。

「そろそろいいぜ。今二百七十度と言った所だからな」

オープンに付きっきりになっていた狼が楽しそうに言うと、タコ糸で全身を縛り上げられている魔理沙を乗せた天板が、オープンのすぐ前に運ばれる。

「ヒギィイイイイイイイイイイイイイイ!!ギィイイイイイイイイイイイイ!!」
「二百七十度か。あたいにとってはサウナみたいなものだけれども、お姉さんをこんがりローストにするには、丁度いい温度だね」

いよいよ自分はオーブンで焼かれて、ローストになるんだ。
それを理解した魔理沙は、鉄製の天板の上で体を狂ったようにのたうたせ、よじらせて死に物狂いでそこから逃れようとするが、タコ糸で全身を縛り上げられ、手足を失っている状態では、無駄な行為だ。
オープンの戸が開けられ、地獄の釜の底のような灼熱の熱気が、魔理沙の全身を舐めとっていく。
無残で哀れな姿をさらしている少女を乗せた天板は、一気にオープンの中に押し込まれ、素早くその戸は閉じられる。

その瞬間、魔理沙の無残な絶叫がオーブンの中から響き渡る。
二百七十度と言う高温のオープンの中は、肉を剥き出しにされ、喰われる為の調理をされた人間の少女にとっては、余りに凄絶な焦熱地獄で、前扉を通しても、天板の上の魔理沙の体が激しくよじれ、のたうっている様子がはっきりと見て取れる。
辺りには肉と脂の焼ける芳香が漂い始め、その場にいる者達の食欲をそそる。

「ギャヒャアアアアーアッギヒャアアアーアッ!!がぐっ!!ぎいぃいいいいいいいいいいいいいいいい!!」

オープンの中は地獄だった。熱は縛り上げられている全身を上下左右、頭の先まで全身を余す所なく満遍なく焼かれていく。
肌を焼く熱気は、呼吸するたびに気管支から肺の中にまで侵入してきて、内臓までも焼き尽くす。
オープンの唸るような大轟音に耳を圧迫され、思わず見開いた目から水分が奪われ、魔理沙の視界を奪い取っていく。
目を焼かれる激痛に叫び続ける魔理沙は、大きく息を吸ってしまう。
それによって、体中に残っていた内臓が、灼熱に一層満遍なく焼かれていく。
その凄絶さは、まさに地獄そのものとしかいいようのない残酷さだ。
あらゆる悲観的な感情がぐちゃぐちゃに爆発し、口から放出される。
魔理沙は、オーブンの灼熱地獄の中で、ゆっくりとローストへと料理されていった。





* * * * * * * * * * *





オープンの戸が開けられて魔理沙を乗せていた天板が一気に引き出される。
タコ糸でぐるぐる巻きにされて転がされて、全身は綺麗な狐色に焼き上がって、煙を噴き上げている。なんとも言えない香ばしい匂い。
ローストにされた魔理沙の目は、灼熱の世界で焼き魚のような白濁したものとなり、残された内臓部は、呼吸するのも困難な程に焼け爛れ、機能を放棄しようとしている。
ローストにされた魔理沙は、こんな姿になってもなお生きることを諦めきれなかった。
見えない目を声のする方に向け、機能を停止させようとする体を使って、激しい恐怖と屈辱の怒りを弱弱しい声でぶつける。

「あうぐっ…………ああぐっ………」

だがローストにされた魔理沙のそんな言葉は、お燐と狼達をさらにせ喜ばせ、そしてその嗜虐心を一掃煽り立てるだけのことでしかない。
狼達は、ローストにされた魔理沙の体を持ち上げると、先程魔理沙に浣腸洗浄と味付けをする為に使った屠殺場に作られている木枠の所に運んでいく。その枠からは、太いロープでぶら下げられている巨大なかぎ針の先端を、今度は魔理沙の腰の部分に思い切り深く抉るように突き刺し、体を木枠からぶら下げてしまう。
かぎ針の刺さる苦痛とローストにされたことによる全身の苦痛。そんな苦痛に悶える魔理沙に、最後にして最大の地獄の苦痛が浴びせられる。

「お姉さん、これが何だか分かるかい?」
「……しにたくない……しにたくないぃいい……」
「おやおや、分からないかい、お姉さん。じぁあヒントをあげよう」
「しにたくなうぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

心ここにあらずといった様子で命乞いをする魔理沙。その体が大きく痙攣し、脇腹から鮮血が吹きあがり、屠殺される豚のような悲鳴を上げる。

「もう分かったろう、お姉さん。こいつは鋸さ」
「うぁあああ……そんな……そんなあぁああああ……」

お燐と狼達が残忍に目を輝かせながら、その体に突きつけたのは刃渡りが一メートル五十センチはある巨大で、見るからに禍々しい、そして前後に挽くための取っ手のついている鉄製の大鋸だった。もちろんこんなもので体を真っ二つにされると思うと、それが恐ろしくない道理がない。

「ヒイイイィイ…いやぁーっ…そんな…………死にたくないよ…死ぬのはいや…助けて……」
「この鋸が股から恥丘、へそを真っ二つにして、それから胸元へとさらにじわじわと食い込んでいく。くく。お姉さんはどんな良い声で泣き叫んでくれるかな?」

魔理沙は声を振り絞るようにして泣き狂う。しかし鋸を持つ二頭の狼は残忍な笑みを浮かべながら鋸の刃をその股間に押し当てる。

「それではいよいよ始まりだ」
「たっぷり泣き叫んで、のた打ち回って、きっと随分と刺激的な姿だろうな」

そしてそんな言葉とともにその鋸は前後に挽かれながら、そして細かな肉片と血飛沫を撒き散らしながら、魔理沙の股間に残忍に食い込み始める。そして魔理沙は、それと同時にさらに無残な声を張り上げながら、一層無惨にのた打ち回り始めなければならない。

「しかし、見れば見るほどいい肉、いやローストだな。宴会まで待ちきれなくなってきたぜ」
「おいおい、抜け駆けとは感心できねぇなぁ。このローストを貪り喰らいたいのは、俺だって同じなんだぜ」
「それはちがいない」

二頭はそんな話をしながら、その鋸の刃をじわりじわりとその股間に食い込ませていく。
そしてそれは彼らの言ったとおりにその女そのものをたちまち真っ二つしてしまい、さらにかっては金色の秘毛に覆われていた剥き出しの恥丘に、ゆっくりと食い込んでいく。
焼けているからそれほどではないといっても、溢れる鮮血はその肌を無惨に彩っていく。
それは全身の皮を剥がれ、ローストとして自分の身を調理されてしまった、魔理沙の涙のようであった。
魔理沙は、残酷さを増す激痛、恐怖に恐ろしい声を張り上げて泣き叫ぶ。
そんな魔理沙の体に、鋸はじわじわと食い込んで両断していく。
やがて鋸はついに骨盤を切断し始めた為、鋸の食い込む速度は遅くなってしまうが、激痛の方は一層残酷さを増して魔理沙を苛み始める。
それは骨格を通して、彼女の体の隅々までも貫き引き裂く。

「グギィエエエエエエエエエ!!グギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア…ぎぐうううううううううううう!!」

魔理沙は無残な声を張り上げてのたうち、泣き叫び、全身をいよいよ激しく戦慄かせる。
この辺りまで引き裂かれてしまうと、左右の柱縛られている両足に引っ張られて裂け目が左右に開きく。鋸の刃は、魔理沙の口から凄絶な絶叫を絞り出させながら、いよいよじわじわとその骨盤を両断していく。
五分あまりもかけて骨盤が切断され、腹部を縦割りにしながら凄まじさを増す激痛と恐怖に、半ば丸焼け状態の魔理沙は狂ったように泣き叫んでいた。
骨盤をぶった切ったものだから速度は一挙に上がっても良いようなものを、狼達はゆっくりと鋸を動かし、じわりじわりと逆さ大の字になっている魔理沙の体をまっすぐ縦に両断していく。
切り裂かれてしまった股間はバックリと左右に開いてしまい、タコ糸を切断しながら先程詰めた内容物を鉄板の上にぼとぼとと落としていく。その体は溢れる鮮血に真っ赤に染まっていて、さっき両断されてしまったばかりの骨盤までも白くその断面をむき出しにしているのも痛々しい。
全身の激痛はいよいよ凄絶になり、恐怖は発狂せんばかりになって、魔理沙を苛んでいるが、その
自由さえ魔理沙には与えられない。残忍な鋸の刃は既に下腹部を切り裂いて、やがてへそへと迫ろ
うとしている。

その激痛は今まで苦痛全てを集めたよりもさらに凄まじいかと思えるほどの残酷さ。周囲からの視線は残酷に、熱っぽく容赦なく集中する。
鋸を扱っている狼達はそんな生贄の有様にいよいよそそられ、興奮し、さらにその返り血を浴びた事で悪鬼さながらの姿になり、それさえ皿に見るものの嗜虐心をそそらずにはおかない。
体の中心を走る背骨の右側に添うようにその体を切り裂いていき、ローストは次第に左側から右側が切り離されていく。
断末魔のような声と共に、激しく体を痙攣させる魔理沙。そこに、お燐は刃渡りが130センチはあるかというような、大きな金鋸を持ち出して、魔理沙のうなじに当てる。

「そろそろ最後見たいだね。最期に最大の苦痛と恐怖を味あわせてやらないとね。あたいがその首をこいつで刈り取ってやるよ」
「ぐああっ……うああ……」

こんなに苛まれていても何をされるのか悟ったのだろう。
絶え絶えに呻くばかりだった魔理沙の目がかっとばかりに見開かれ、死に物狂いの声で許しを乞い始める。しかしそれがなおさら哀れを誘うと同時に残酷な嗜虐心をそそらせる。

「血肉を持つ生き物として、最期に何か言い遺したい事はあるかい?お姉さん」
「あっ……ああぐ……ばぐぅつ………」

魔理沙は何かを口にしようとするが、声が震えてうまくしゃべることができない。
その唇がなにか叫ばなければならないのだが、その言葉が見つからないといった様子でわなわなと戦慄く。

「なにもないのかい。じゃあさよならさ、血肉を持つ人間のお姉さん。強い怨霊となって、あたいの役に立っておくれ」

お燐がそう言うと同時に、鋸の刃は激しく前後しながら魔理沙の細いうなじに食い込み始める。
狼達が魔理沙の心臓を真っ二つにせんと鋸を引き、お燐は魔理沙の頭を体から切り落とそうと、鋸で首を切断していく。それに魔理沙の獣のような恐ろしい断末魔の絶叫がほとばしり、調理場に地獄のアンサンブルを響かせる。
首からほとばしる鮮血が、お燐の体をも朱に染め上げていく。地獄の悪鬼さながらの姿で、牙を剥き出し、舌で獲物の返り血と肉片を舐めとりながら、狼達とお燐は、さらにじわりじわりと鋸の刃を魔理沙の胸元と首に食い込ませていく。

屠殺される凄まじい恐怖。
ローストにされた魔理沙は白濁した目を一杯に見開いて最後の力を振り絞って泣き叫んでいたがそれも次第に弱々しくなり、断末魔に引き攣る声になる。
消えていく生命の灯火になお縋りつこうとしているその姿は無残で哀れだ。
そして魔理沙の心臓に鋸が食い込み、首を鋸が半ばまで切り込んだ時、魔理沙はその短い生涯を終え、息絶える。
やがて鋸は霧雨魔理沙というまだ年若き人間の魔法使いの首を綺麗に切断。それは鉄板の淵にぶつかって止まる。お燐はその頭を手に取ると、まるで自分の上げた戦果でも誇るように高々と掲げる。

「さようなら、人間の魔女だったお姉さん。そして、ようこそ。永遠に輪廻の輪に乗ることができない存在となった新入りの怨霊」

そう言うとお燐は、真っ赤な瘴気の妖気を放つ。妖気は魔理沙の首を瞬く間に覆い、青白く生気のない魔理沙の魂を捕獲。妖気を収縮させると同時に消えていく。

「あたいはお姉さんの残骸をこれだけもらっていくとするかな……。じゃあね、お前達。お姉さんの血肉と骨、ちゃんと食べてあげるんだよ」
「おう。ありがとうよ、燐。さぞかしこの雌の肉はうまいだろうからな」

魔理沙が息絶え、お燐が去った後も、その体を使った調理は容赦なく続けられる。
まず左側に残っていて背骨は取り除かれるが、しかしその他の内臓は体にくっつけたまま、切り口にまでたっぷりと塩胡椒が塗しこまれ、今度は二百八十度以上にまで熱せられてオープンの中に戻され、体の芯まで丁寧に焼かれていく。
そして見るからに鋭い大包丁のが、無惨に毟り取られてた左足にその刃を押し当られる。よほど切れ味が凄まじいのだろう。するすると食い込んでいって、まるでバターでも切断しているかのようにすぱりすぱりと切断していく。
ぶつぎりにされた肉片は、真ん中に骨があって外側が皮膚、その間に脂肪と肉の層のあるそれは見様によっては生ハムのようにも見え、奇妙な美しさを感じさせる。
狼達は用意された皿の上に、ぶつぎりにしたその肉片をうず高く積み重ねられていく。
内臓の心臓や膵臓、そして下腹部から取り除いた大腸などは丁寧に水洗いをされる。そして大腸の半分は他の部分と焼肉にされるらしく、細かく切り刻まれてたれのようなものに漬け込まれてしまう。
小腸やら胃、そしてその他の内臓類までもまとめて切り刻まれて皿に盛られる。これも焼肉にするのだろう。

見ている連中は再びその目をぎらつかせ、中には露骨に舌なめずりなどをし始めている者もいる。狼達は今にも飛びかからんばかりに身構えている。
そして狼達のうたげが始まる。





* * * * * * * * * * *





「美味え。全く美味えな。ここは内腿だがどんな肉だってかなわねぇほど柔らかいや。羊に似ている気もするが、こいつぁ極上の羊だぜ。こいつがたっぷりあるからなぁ」
「俺はやっぱり腿だ。牛だって腿の肉が一番美味いって言うが、人間もその多分に違わないみたいだな。あっっち!!肉汁が口の中に溢れて舌を火傷しちまった。」
「しっかしこの腹の肉を見ろよ。特に脂の質をよぉ。早く出荷させるためにただぶくぶくに太らせただけの豚みたいな嫌な匂いなんかちっともしねぇ。その上、肉が旨いから両方が口ん中で混じり合って、柔らかくって全く口の中で蕩けるとはこの事だ。」
「あぁ。前に豚を丸焼きにした時は油のぎとぎと感に辟易したが、こいつは実にあっさりだ」
「おおっとぉおおお?お前は乙なものを食ってるじゃあねぇか。」
「あたぼうよ。お前らが腿だ、臀だって騒いでいる最中に素早く肋骨の下から三本目か四本目かの一番肉の付いてる奴をいただいたんだ。何せ俺は牛だろうと豚だろうと羊だろうと、この胸の肉が一番好きなんだ。こいつぁ美味いぞ。まだテーブルの上には幾らでも残っていらぁ。取ってくるがいいぜ。」
「いや。美味いのは分かっているが、もうちょっと気の利いた言い方があるってもんだろう。」
「ばぁか。そんなこたぁ、しったこっちゃねぇよ。俺たちは美味けりゃ美味いと言って、素直にこうやって骨付き肉に武者ぶり付いて、それこそ骨までしゃぶればいいんだ。肉は手掴みで爪で牙で削ぎ取って貪り食うんだよ」
「おいおい、お前らこの臀の肉なんぞ食って見ろ。噛みごたえがあって、何とも言えぬ濃のある汁が溢れてきやがる。ここを食わずして美味いのなんのと言うもんじゃねぇぜ。」
「へん。お前ら見て見ろ。俺なんぞすねが丸一本だ。だから他の処なんぞ食う余裕はねぇ。この俺様の一人占めだな」
「馬鹿野郎はお前のことだ。てめぇ、本気で自分だけで食い尽くすつもりか?」
「おうよ。俺様は大ぐらいだからなぁ。遠慮なく喰わせてもらうぜ」
「うるさいな、お前たちは。もっと静かに食えんのか」
「まぁ、そういうな。こいつらも若い人間の雌の肉で興奮しているんだ。今日ぐらいは騒がせてやれ。見ろ。獣のままの奴らも旨そうに食べているだろう」

久しぶりのごちそうに興奮を隠さない若い狼のヒトガタ達と獣の狼。
食べ終わった者が、強引に肉を取る狼達の間に割って入ろうとし、それに抗う声が飛び交う。それが、この場の有様を騒然とさせ、ますます獣地味た様相と思えてくる。
そして彼らがようやくその肉塊を飽食し終わってそこから離れた時、そこには大腿骨や骨盤、背骨、肋骨、腕の骨など体のあらゆる部分の骨が散乱していた。
肉を、内臓を、骨髄までも貪り食われてしまった魔理沙。
こちそうを腹に収め、狼達は心地よい眠りにつくことだろう。











骸薩鍠挧狛氾ヨコベ`             蛆譴麒蠶蠶蠶蠶蠶麟霾骸   蛆麟麟麟霾骸難F" ..蠶蠶蠶飼
骸骸薩鍠挧狛氾∃コベ`          蛆譴麟蠶蠶蠶蠶麒麟霾骸   蛆霾殺〃 ョ蠶蠶蠶蠶
髏骸骸薩鍠_挧狛氾∃ベ`        辷蛆霾麒麟麒麟霾骸     辷蛆霾順賜メ〃 ュ蠶蠶蠶蠶?
薩骸薩鍠挧__狛氾∃ベ`        辷蛆霾骸  譴   辷紫紫賜。〃 ,ュ蠶蠶蠶蠶蠶
蠶蠶醴儲掘__衒氾⊆ベ          辷蛆蛆霊霊霊霊霊Щ  譴蠶   辷辷Щ〃" ョ蠶蠶蠶蠶蠶?
蠶蠶蠶醴譴鍠_衒浴⊆S∴`         辷辷旧旧旧Щ川    譴蠶霾        ョヨ蠶蠶蠶蠶蠶針
鬮髏蠶蠶醴疆伽珀氾3ベベ`           辷ЩЩ川      譴蠶蠶蠶     ュョ醴廳蠶蠶蠶蠶蠶  
蠶蠶蠶蠶蠶蠶髏挧狛氾∃ベ` 諄ヨ                譴蠶蠶蠶蠅   ョ躔蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶?
蠶蠶蠶蠶蠶蠶髏挧狛氾∃ベ`諄醴蠶蠶ヨョ              .譴鄭表躔  ョ蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶 
蠶蠶蠶蠶蠶蠶髏挧狛氾∃ベ`諄醴蠶蠶詩攬。           霊憂劒啾  ョ髏蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶?
蠶蠶蠶蠶蠶蠶髏挧狛氾∃ベ`"諄醴蠶麒蛆茶旭ョ。               。ョヨ髏蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶i
蠶蠶蠶蠶蠶蠶髏挧狛氾∃ベ`"諄蠶蠶醴蠶蠶骸蛆検校コョョ。.      。ョヨ衍蛆蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶針
蠶蠶蠶蠶髏蠶蠶挧狛氾∃ベ` "'諄醴諄蠶蠶蠶鴛_骨蛆検州州州丱丱丱州躔髏蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶i
蠶蠶蠶蠶蠶蠶髏挧狛氾∃コ`      "卆孕_諄蠶蠶蠶鴛薙蛆校検校検校戎確嬪蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶?  
蠶蠶蠶蠶蠶髏髏骸狛氾∃ニ丶       "諄醴蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶骸醴蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶飼
蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶髏骸挧狛氾∃丶        笵諄髑髏蠶蠶蠶蠶蠶蠶骸 醴蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶?
蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶髏骸骸骸骸滋ョヽ       "癶笵結諄髏髑髏髑髏” ,蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶針
蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶髏骸骸骸骸滋ョヽ          "癶夂憂霊表゛ノ ョ構蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶
蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶髏骸骸骸骸骨ヨヽ                  oヨ蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶針





カビ臭さと阿片の匂いの立ちこめる部屋の一室。
そこは、部屋中に色とりどりの薔薇が飾られていた。
その華やかな様は華やかさと同時に、どこか毒々しさを覚える。
部屋の中央の段の周りには松明の炎。その段の中央には、火にあぶられて、ふたを大きな鍋からぐつぐつと煮え立つ音が聞こえてくる。
お燐は右腕を大きく掲げ、道化めいた仕草で会釈をする。
お燐の頭の中では、凶暴な詩がどくどくと波打っていた。
お燐は美という名の未開地とその野蛮をみていた。

「生者の世界というのは、理性のもたらすやけっぱちな夢であり、この悪臭を放つ地獄においては、およそ実現性の欠片もない。
美は不実なものではない。それはむしろ、知性ある者が数えきれない程の致命的な過ちを犯す可能性のある、地図にない国のようなもので、悪の道標も、善の道標もない、自然のままの冷淡なパラダイスだ。
美とは野蛮なものだ。妖怪や人が頭の中で、筋の通った思考ができるようになり、粘土板に行動規範を記す事ができるようになるより前の永劫の昔においては、それは危険で無法なものだった。
音楽はいわば野蛮の園だったのだ。
従って、この上なく絶望的な音楽が美しさに満ちているからといって、悩む必要はどこにもない。
傷つき、冷笑的になり、悲しみ、不信に陥る必要も全くない。
それはこの目ではっきりと後継として確認できる。
あたいは悲鳴をあげる獲物の背に落ち着き払って爪を突き立てる時のように、ごく当然のものとして、認識する」

そこでお燐は一旦言葉を切る。
お燐の周りには、肉体とぼろに包まれ、かたかたとやかましく音を立てる骸骨の大群。その中央にあの骸骨のような身体の残酷な少年の人形があった。数えきれない程の脂ぎった顔が、暗がりの中から、じっとお燐を見返している。
みすぼらしく不潔な衣装、湾曲した骨の上をながれている水のような皮膚。
天井桟敷に陣取る、ぼろをまとった追剥の一団が口笛を鳴らし、野次を飛ばす。
奇形に固め、いやらしい松葉づえ、歯ときたら、墓場の泥から掘り出してきた、頭蓋骨のそれとそっくり同じ色だ。

お燐は全身から妖気を放出。捕えていた新しい怨霊を解放する。
部屋を揺るがさんばかりの呻き声と怨嗟の声をあげる怨霊。
怨霊はひどく混乱し、怯え、発狂しかかっていた。
人間であったころに見せられた悪夢の世界。先程までその世界で地獄の責め苦を受けていたのだ。

「素敵、やっぱりあなたはとても可愛らしいわ。私の買った人形にちっとも劣らない」

こいしは、そんな怨霊の苦悶の様を眺めると、昨日作ったばかりの少女の剥製と向かい合い、半ば陶然とした心地になる。ウェーブのかかった腰ほどまである金髪や白い首筋、長い睫や繊細な指先は言うに及ばない。背を伸ばす端然とした佇まいや、切れ長の瞳から発せられる勝気な眼光。黒色のドレスが映えている。全てが見慣れたものだった。
これが、剥製だ。しわ一つなく、その姿を劣化させるどころかより魅力的なものに変化させ、性格や感情までも込められている。その出来栄えに、こいしは満足した。

「ねぇ、新しい怨霊さん。これをみてごらんなさいよ。これがあなたが使っていた可愛らしい体よ。私が綺麗なはく製にしてあげたの。もう、年老いて醜い姿になることもないのよ」

怨霊はそれを見て、何事かを激しく叫ぶ。しかし、こいしには怨霊が何をいっているのか全く分からない。ただ、声色から、ひどく怒っている事だけは理解できた。

「そんなに怒らなくてもいいのに。あなたはお燐の忠実な怨霊として扱ってもらえるのよ。強い魂を持った怨霊しか、そんなことはしてもらえないんだからね」
「正にその通りさ。いや、お姉さんは本当に強い怨霊になったねぇ。あたい自体もいつになく力を増したような気分だよ」

それぞれが、望むものを手に入れられて満足げな笑みを浮かべるお燐とこいし。怨霊は激しく罵りの声をあげるが、もはやどうすることもできない。

「さぁ、始めよう。あたいとさとり様に仕える怨霊達!!新入りの怨霊の為の歓迎を!!」
「可愛い剥製とその仲間のお人形達もお披露目よ♪」

そういうとこいしは指を鳴らし、少女の剥製の周りに可愛らしい少年少女の人形を出現させる。
人形はどれも命を吹き込まれているかのように、艶かしく美しい。
部屋中を飛び交う無数の怨霊。こいしは、その怨霊達を無意識の能力で選別。人形達の中にこいしに選ばれた怨霊が潜り込み、仮初の命として機能する。
金切り声が、空間を切り裂く。悲鳴のような叫び声が鼓膜を激しく揺さぶった。
狂ったような高い声が、お燐とこいしの全身を揺さぶる。
赤毛の少女が、ひきつった顔でこちらを見ていた。虚ろな大きな黒い瞳は、絶望に蝕まれていた。

「あなたはまるで馬鹿のように喚くのね、おバカさん」

 悪意と嘲りを含んだ言葉を、こいしは笑顔で口に出す。途端、キチは喉が破れたかのような絶叫を上げた。どんなに苦しくても、人形の姿を借りているキチは涙を流すことができず、悲鳴を上げるだけである。

「喚くことしかできないおバカさんのキチ。キチガイキチガイ」

 こいしは楽しそうに繰り返す。興が乗ってきたのか、こいしの語気が次第強く残酷になる。それに合わせてキチの叫びも狂気を強め、音階を上って金切り声に変わっていく。張り裂けそうな狂おしい悲鳴に、こいしも頭を掻き混ぜられる。

「歌いなさい、キチガイ。あなたにふさわしい狂った歌声を」

 絶叫を縫って、お燐は突然命令を下した。途端唐突に叫びは途絶える。
 キチは殴られたように固まって、途方に暮れた顔でこいしを見つめた。喉の奥の声を探しているのだろうか。健康そうな、薄桃色の唇を、何度か微かにわななかせる。
 やがて遠慮がちに、子供の高い歌声が、唇の隙間から紡がれる。キチの歌は、大きな声ではなかった。細く穏やかで可憐な声音。音程の狂ったきしんだ歌が、空間に染み入り、穏やかに瞳子の正気を揺さぶった。

「あら、お姫様?あなたは歌わないのかしら?」

箱の中で穏やかに眠る、可憐な少女。
薄い透明な板を隔て、妖精のように儚い風情の可憐な少女が、深い眠りについている。
閉じた瞼、長い睫毛。青白い、幼い可憐な顔。
まるで夢を見ているようだが、眠っておらず、夢なんか見ていなかった。

「そう。あなたには生命がこもらなかったのね。可哀そうな骸の人形。あなたはオロクね」

オロクは死体の人形。店主は、死体の人形を作り上げ、硝子の柩に納めて飾っていたのだ。

そんな無機物のような少女をよそに、キチは、狂った歌を歌い続けていた。それに合わせるように、歯をむき出して喚きたてる怨霊の髑髏顔を見ながら、お燐は小唄をハミングしていた。
切れ切れの断編ではあったが、お燐は何度も何度も繰り返した。言葉が意味のない音の連なりとなり果てるまで。
ハミングは、いつしか支離滅裂なつぶやきになっていた。

「恐怖、不気味、血、無数の怨霊とそれを引き連れる妖怪。グロテスクな怪奇。
生まれた時から灼熱地獄に住んでいたあたい。
死体を好んで集めるネクロフィリアのあたいの存在は、地底の妖怪の中でも異端の異端。
死肉と腐ったような瘴気を放ちながら旧地獄街道を歩くと、鬼でもあたいを避ける
しかし、なぜ死は、暗闇の中で蠢くものと決まっているのだろう?
なぜ死は、門で待ち構えていなければならないものなのだろう?
あたいは、地底で手に負えない極悪者。忘れ去られ放置された物達の生命のろうそくを吹き消す死の淑女。死体という愛すべき薔薇の花芯に巣くう毒虫なのさ。
あたいによって狩られ、または死体として運ばれた者達は、あるものは灼熱地獄の燃料として魂を燃やされ続け、あるものは加工される為の部屋で直にあたいから魂を抜きとられ、あたいの瘴気の中に閉じ込められる。
永い永い地獄を味わった後、ようやくお前達には闇の賜物が与えられ、哀れな生贄をあたいと共に探し狩り、集めることになる」

お燐の声が大きくなり、いっそう朗々と響き渡った。
お燐の叫びに合わせ、怨霊達が立ち上がって金切り声をあげ始める。
怨霊は構わずどんどん声量をあげていく。
耳を破壊しかねないばかえりの大音響。それは正に、地獄さながらの阿鼻叫喚。
留まる事を知らない乱きち騒ぎは、骸骨のような身体の残酷な少年も、狂気に侵され悲鳴のような歌を奏でるキチの歌も巻き込みながら、いいようのないおぞましい音色を奏でる。

「さぁ、見るといい、新しい怨霊。これが地獄だ。これが地上の愚か者達に忌み嫌われ追いやられた物達の地獄の宴」

そこで、お燐は、段の中央に行くと鍋のふたを勢い良くあける。
むせ返るような血の匂いが辺り一面に立ち込め、怨霊達の興奮を極限に高める。
それは二時間の間、徹底的に圧力釜で温度を上昇させて煮込まれた、魔理沙の肉と血で作った地獄のシチューだった。
高温で頭蓋骨からできるかぎりそぎ落とした顔の肉と、四つに分断された右手が丸ごと煮られ、湯気とともにうまそうな匂いを辺りに振りまき、肉は肉、骨は骨で、完全にばらばらになるまで煮込まれている。
徹底的に煮込まれているためもうどれがどこの肉かなどということは分からない。
人間の少女の、何とも言えぬ血肉の芳香が漂い、その場にいるもの全員の食欲を擽り始める。

「さぁさぁさぁさぁ。騒ぐといい。喰らい尽すがいい。あたいが許す。今宵は無礼講だ。飽くまで喰らい飲み干すがいい」

お燐がそう言うやいなや、一斉に鍋にむらがり、血肉をすする怨霊達。
真っ赤な 血の池と化していた宴の場。
骨を嚼み砕き肉を引きちぎるゾッとする音が響く。グシャグシャという人肉を咀嚼するこの世のものとは思えない音が周囲にこだまする。
踊り狂う怨霊。狂ったような叫び声をあげる人形。穏やかな表情で自らがはく製にした少女を撫ぜるこいし。絶望の感情を震わせる新しい怨霊。
地獄の釜の底のような光景。その中で火炎猫は、楽しそうに笑っていた。
__      rヽ
     く`ー-、      ,' ハ:ヽ
     |::;、:::::ヽ    __/  !:::',
     |::|>'"´::::::::::::::::::ヽ/::::|
    ト.ァ'::::::::::::::::::::::::::::::::::::「 ̄\ヘ/`i
    |/:::::::/:::::/::::;!::::::::;::::::::〉   ソ、_」
   /::::::::;':::::メ、::/|::::::/!:::::::|::::';::ヽ__/メ)
   八:::::::|:::/ ヽ! |__/ |::::::-!‐;ハト、::::ノ        / ̄ハ   / 7 、_,
    ヽ::|::/{  `}イ/7Zァ::::::::::!__」ゝ、__      /::::::::::::' 、}  //
    \::!;ハjr=ミ   __ ^' リィ:、ヽ ノ、 ト、_,   f_____/:::\∠ __
     〈:::7::!  ,    ⌒ヽ /イ′\ }1 ノ }}ー vf⌒ト、7 \/:::::::::::::::/  / ̄ ̄〈
      !::ノ;ト人  r--ュ  r-、_,. -rノ 二 `ーヘ__{{、  }1::::ハ_ノ-‐ ´ \:::::::::/ ̄/       \
     (メソ/:::今 、ヽ_ノr'ヘー┴┘ー--一' ̄   ̄ヽ ー ´    __}_/ゝ / /´ ̄ ̄`ヽ/
     ,〈::r'´ ̄` T7[/                ヽ.  〉、{  /  Y/ヘ
     !::!、(, (, と  f'{        ___,. -ヘ     マ-' V /_,. / /  ̄ ̄ ̄ ̄`ヽ
     /メソ ヽ_(_,-一´k   -一  __ 厂´   \    ヽ--} j /イ           >
    ,(メノ        `<ァ、ェュ_r-z_ノ       \___人≦Z__,. --一ヘ      {
 く ̄`Y7ー-ァ        ヽ-=三           \  \--ュヽ`!}    \    !
  > ,ハ _」            ` ̄ヽ           >、  ーマ } jノ      ヽ  /
  ̄7:::::「                   了      /  `ー-- '´         ∨
  く:::::::/         | ̄><ヽ_,.ヘj     _,. く                  }
    ̄         _レ       ノ    /   \                /
            //      /´          ヽ



さぁ、お前達。今日も死体と罪人探しの時間だよ。

はりきって探しておくれ。愛しい愛しいあたいの怨霊達。






















はい、えらく間が空いてしまってすみません。
こんな長い物語を終わりまで読んで下さった皆さん、ありがとうございました。
長編残酷物語「地獄ノ底ノ狩人ト咎人達ニ寄ル贄ノ蝕」、いかがだったでしょうか。
死体を集めて怨霊を操るというダークな面と、それに対して明るくて可愛いらしいお燐は、自分の好みのピンポイントでした。一番大好きな妖怪です。
いつか、彼女の違う話も書きたいです。
ではまた。
ケテル
作品情報
作品集:
25
投稿日時:
2011/04/13 10:37:55
更新日時:
2011/04/13 19:37:55
分類
ネクロマンサー
ネクロフィリアの想い
インフェルノ
終わりの始まり
日常と非日常
1. NutsIn先任曹長 ■2011/04/13 22:35:21
人、いいや、もっと生命の根源をファックされたような、クソッタレに素晴らしき美と食の賛歌!!
生物が持つ、食欲性欲支配欲、エトセトラ、エトセトラ。
いんや〜、夕食をリバースしそうになると同時に、勃起しましたよ!!
また、こんな恐怖と快楽のお話を楽しみにしています。
にゃん。



最後に、魔理沙の心の叫びをどうぞ。



レクイエムを歌う咎人に楽園で輝く宝玉の光は届かない。
居辛くなった楽園では咎人でも、所変われば価値も変わる。
無茶を繰り返し、彼女は、光り輝くステージにデビューした。

真紅のドレスを纏い、いざ、踊ろう!!
人気の歌手となり、会場に響けこの美声!!
たくさんの観客が、彼女に喝采を送る!!
唇に触れる事のできる王子様は誰か!?
名乗りを上げ、ステージに上がれ!!
一時のショーは、おしまい。

食べて。私を食べて。
すぐに美味しくなるから、それまで待って。
健康第一。よく食べ、よく騒げ!!
手に手を取って、私を食べて!!
2. 名無し ■2011/04/14 00:39:26
内臓を取り除かれたあげくに270℃で丸焼きにされても生きているどころか、大声で滑舌よく喋れるまりしゃのタフさに感嘆した。
3. 狂い ■2011/04/14 03:18:01
もう、言葉もいらない。

あなたの作品に産廃創想話を見た。
4. 名無し ■2011/04/14 03:33:39
胸糞悪くなる最高の産廃だ
5. イル・プリンチベ ■2011/04/14 17:22:11
魔理沙だったらこんな死に方してもおかしくないです。
妖怪は怖いことを忘れた人間は、いつか痛い目にあってしまいます。
それが取り返しのつかないことを知らずに。
霊夢もレミリアも平常運転で良かった良かった。
これぞ産廃クオリティでござる。
6. 名無し ■2011/04/15 02:26:33
産廃らしい作品ですね・・・個人的に好きですが・・・
誠に勝手な申し出ですが、もし機会がありましたら
幽香再登場お願いします
7. 名無し ■2011/04/15 11:46:14
読んでたらおなかすいてきた(´┓`)
実に素晴らしい。
8. 名無し ■2011/04/16 06:11:29
これでこそ産廃だ
9. ケテル ■2011/04/17 21:38:20
>>1
わぁ、これはすごい。自分が書けなかった魔理沙の心の叫びが、しっかり書かれている。
このNutsIn先任曹長様の文で、ようやくこの作品は完成したと思います。
次は、完全放置していたフランの話を書きます。
いましばらくお待ちください。

>>2
魔理沙が異常にタフなのは、魔法の森での生活で体に大量の魔力を溜め込んでいた事と、お燐に死なないように魔力を供給され続けていた為と解釈してください。
大声で滑舌よく喋っているのは……かなり無理がありましたね。すみません。

>>3 >>4 >>8
最近は、理不尽に残酷に殺される話をあまり見なくなったので、徹底して救われない話にしました。

>>5
あれだけ妖怪が跋扈している幻想卿の中で、強力な後ろ立てもなく好き勝手やっている魔理沙は、相当な恐れ知らずで不良だと思います。
それが今回のように、地獄の妖獣達と怨霊達に身も心を奪われる結果になったというわけです。

>>6 
むむ。第一回産廃コンペで書いた幽香の再登場を望む人がいるとは。
あの作品も今読み返すと、あらが目立って恥ずかしい。
リクエストを頂いた以上は、書かせて頂きたいと思います。
ただ、自分は一つの作品を書くのにすごく時間がかかるので、大分先になってしまうかも
しれません。
順番としては完全に放置していたフランの話、ギャグもの、幽香の話の順番になると思います。
本当にいつになるか分かりませんが、書きますので。

>>7
自分はこの作品を、魔理沙のもつ煮とレバーが食べたいなぁと思いながら書いていました。
実際の所は、人間はあまり美味しくないようですが。
名前 メール
パスワード
投稿パスワード
<< 作品集に戻る
作品の編集 コメントの削除
番号 パスワード