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『作戦名「陽動と奇襲」』 作者: 第二偵察小隊
全員が永琳の渡したメモを見終えた所で紫が月へと続くスキマを完成させた。
永琳の渡したメモには、どの部隊への配属かが主に記されていた。それを以下に示す。
*第一部隊
部隊長 八雲 藍
補佐官 十六夜 咲夜
突撃兵 レミリア・スカーレット
突撃兵 フランドール・スカーレット
突撃兵 藤原 妹紅
突撃兵 魂魄 妖夢
*第二部隊
部隊長 鈴仙・優曇華院・イナバ
補佐官 因幡 てゐ
特殊兵 霧雨 魔理沙
特殊兵 アリス・マーガトロイド
特殊兵 パチュリー・ノーレッジ
援護兵 紅 美鈴
*第三部隊
部隊長 蓬莱山 輝夜
補佐官 八意 永琳
特殊兵 八雲 紫
特殊兵 上白沢 慧音
以上とす。
「我々第三部隊は作戦開始後、速やかに自陣付近の警備及び結界の復旧作業に向かいます。
第一部隊はそのまま前線へ向かい、敵の排除に向かってください。第二部隊は第一部隊の援護を。
最後に、部隊内ではツーマンセルを基本とし個人で行動しないように。」
永琳の説明も終わり、全員が武器を持ってスキマへと入っていった。
ここへ来たのはいつぶりだろうか。
何年も何十年も…いや何千年も前か。
そんな昔のことなのに今でもこの場所を覚えている。
だが、憶えていたのは場所だけで風景はまったく変わっていた。
穢れを嫌う月の民らしい穢れの無い街並みは崩れ去り、あちこちで火災がおこっている。
少し遠くを見るだけで月の兎たち…所謂、月の民の駒が死んでいる。
胸糞悪い…。 いや、これから更に死者が出るというのにこんな所で落ち込んでいるわけにはいかない。
だが、腹が立つ。 ちょっとした言い争いで当の本人ではなくその配下が犠牲になっているという現状に。
…落ち着け。落ち着くんだ。 まだ間に合うはずだ。 そう間に合うはず。
第三部隊と別れ、第一部隊と共に進行している。
ツーマンセルを組めと言われたので、私はてゐと組むことにした。
私が狙撃を担当し、てゐが狙撃中の護衛と観測手を担ってくれる。
進行中ふと、姫様も師匠も一瞬であるが懐かしそうな顔をしていたのを思い出した。
その時私は、まだ月を離れて100年もないため、懐かしいとは思えなかった。
いや、思いたくなかったんだ。
今とはまったく関係ない事なのに、逃げ出してしまった事が未だに引き摺っている。
師匠から頂いた精神安定剤を口に押し込み、薬を含む最中てゐが不安そうな顔をしていたが、
私は無視しし、水と共に飲み込んだ。
……これで少しは楽になるはずだ。
「ふむ、予定通りね。 このまま北上し敵の側面を殺ぐわよ。」
前方の方で藍が部隊に指示を出していた。
私たちもここから別行動し、部隊のサポートにまわらなければ。
妹紅に合図を送り、第一部隊が前進する中、私たち第二部隊は近くの高台に向かって進行した。
味方を視界に捉えつつ、敵を上から狙い撃てる場所の確保が私達第二部隊の最初の作戦だからだ。
ふと周りを見渡すと、第一部隊の向かった方角は赤く燃え上がっているのに対し、進行方向の高台側は静まり返っている。
薄気味悪い、辺り一面が戦火になっているためここも範囲的に敵側に占領されていると踏んでいたのに……
「おかしい。辺りを見渡せるこの高台を占領すれば戦略的に役立つはず、なのになぜ誰も踏み入っていない?」
私がそう言ったのに対し、魔理沙は呆れたように
「敵側もわざわざ占領するような場所とは思わなかったんじゃないか?
そもそも敵も味方も月の奴等だ。すなわち地の利は味方にも敵にもあるって事だろ?
見渡せる場所を占領しても意味が無くないか?」
言われてみればそうだ。これは月の内部同士の争いだ。双方が拠点の場所を把握しきっている戦いなんだ。
「確かにそうだったわね。私とした事が…、久しぶりの戦争で焦っているのかもね。」
てゐがまた複雑な顔をしていたが、私はまた無視した。
その後は一言も喋ることなく高台の頂上付近へ来た。
標高は差ほど高くないが、その方が好都合だ。
美鈴とアリスの人形に持たせていた簡易テントを素早く組み立て、私の能力で敵に視認しにくくした。
これで私たちの拠点兼負傷者の一時待機場所を完成させた。
「これより私たちも前線に向かいます、アリスと美鈴はこの場で待機、
パチュリーと魔理沙はペアを組み上空から味方の援護を、てゐは私と共に狙撃ポイントの確保。」
「了解」
荷物の中から、月にいたころに使用していた狙撃銃を手に取り、てゐを従え私も前線へ向かった。
「ふむ、有効射程距離に近づいたな。 これより第一部隊の作戦を開始する。
作戦中はツーマンセルを基本とし、レミリアはフランドールと、妹紅は妖夢と、咲夜は私と共に行動する。」
藍は次々と喋り、全員がそれを集中して聞いている。
「事前の調査では、敵の使う弾丸は人間の使用する実弾に近い素材で作られており、生身の人間には致命的だが、
咲夜、妖夢を除く他の連中にはほぼ無害だ。だが喰らい過ぎは体への負担に変わりないので、当たらないことが一番だな。」
「ふん、そんな豆鉄砲で何回撃たれようと吸血鬼である私がやられるわけがない。」
レミリアはこれみよがしに宣言した。
再生能力に自信のある吸血鬼だから当たり前といえば当たり前か。
まぁ私とて不死身であるから弾丸ごときで死ぬはずもないが…。
痛いのは痛いので当たりたくはない。
妹紅は少し大きめの溜め息をした後、体から炎を生成した。
「おい、そこにいる兎! 隠れてないで出てきなさい。」
妹紅は後ろの茂みに向かってそう叫び、作り出した炎をそこへぶち撒けた。
「ひぃぃ。熱い。熱い。あれ? 熱くない? なんで?」
茂みから出てきたのは、ブレザーを着込んだ兎だった。 どことなく鈴仙に似てる。
どうやらいきなり出てきた兎に驚いたのは妖夢だけで、他の全員は妹紅同様既に気づいていたようだ。
「今の炎は触れても全然熱くない炎だ。敵か味方か分からなかったから、ちょいと細工をね。」
「凄いですね。そんな事が…。 あ、ごめんなさい。」
ブレザーを手で払い、炎を消しつつ呟いた兎は、今度は謝りだした。
忙しい子だなと思いつつも敵意は感じられなかったため、一旦作戦を中断しこの兎の話を聴く事になった。
「私はつい先日穏健派の綿月様の使いとして永遠亭に来ていた兎です。
永遠亭内で治療中にこの作戦の内容を聞き、いてもたってもいられず…。」
「そう…。で? あなたは戦えるの?」
レミリアは少しきつめの口調で兎に言った。
「はい、綿月様の元で訓練し、全行程を終えた者であります。銃も既に整備点検も終えてあります。」
「その綿月って人の訓練がどういう物なのかは知らないけど、普通の兎よりは働いてくれそうね。」
レミリアはそう言い、自分の持ち場へ戻った。 そして今度は藍が出てきた。
「この部隊の隊長を務める藍だ。 今は微々たる戦力も惜しむ暇はない。お前も前線に連れて行く。死ぬなよ?」
「はい。あ、いえ……了解!」
「さて、少々予定が狂ったが、まだ敵も我々に気づいてはいないようだ。このまま一気にたたみに掛かる。ゆくぞ。」
藍の指揮の下、第一部隊の全員が敵の側面に接近していった。
「とうとう第一部隊が前線に顔を出したわ。」
狙撃に絶好なポイントを探し出し、銃を構えている最中にてゐが顔から双眼鏡を離さずに私に言ってきた。
「そう…。魔理沙たちは?」
「今飛行準備が終えて、いつでも離陸可能らしいよ。」
「よし、今すぐ飛ばして。第一部隊が敵に接近しきる前に陽動をかけなければ。」
「分かった。 魔理沙、聞こえる? 今すぐ向かって。敵の視線を釘付けにして。」
てゐの持つ無線から魔理沙の了承の声が聞こえてきた。
「風は無風。敵との距離は約800から1000か。人間のもつ狙撃銃なら危ない距離ね。月の銃ならまだまだいけるけど。
最近訓練サボってたから、私もこの距離は少しキツイかも…。」
スコープから目を離し、私は日頃の過ごし方を反省した。
まぁ、今更といえば今更だけど。
「魔理沙が離陸して向かったわ。 あと2分で前線の敵側に到着。その後爆撃を行い何度か上空を旋回後、
高台へ戻ってくるわ。」
「分かった。 そろそろ私たちも動くわよ。てゐ…頼んだわよ。」
「うん。鈴仙も失敗しないでね。」
スコープを覗くと、魔理沙が上空に見えた。パチュリーも後方についていっている。
ちょうど敵の真上に来たところで二人がそれぞれに魔法陣を築きあげていく。
敵もそれに気づき、銃口を上に向け魔理沙達を狙い始めた。
「11時の方向、距離870、右耳にリボン。」
てゐの声を頼りにその方角へに銃口を向ける。 確かにリボンの奴が上に向かって対空砲らしき物を設置してる。
トリガーに指を置き、精神を集中させる。 自分の心臓の音がやたら大きく聴こえる。
照準が相手をしっかり捉えた所でトリガーを一気に引いた。
サイレンサー付きの銃から乾いた音が聞こえ、
「標的沈黙、衛生兵らしき人物が近づいてきた。照準そのまま。」
「了解。」
倒れた敵に近づいてきた奴はヘルメットと腰のバックに赤の十字マークの付いた衛生兵そのままだった。
私は迷わずソレにも狙いを合わせ、トリガーを引いた。
これで……人
「こりゃ凄いぜ、敵がうじゃうじゃいる。威力を重視したいが範囲を重視した方が良さそうだ。」
「多少詠唱に時間が掛かるけど、そうした方が良いわ。」
魔理沙とパチュリーは前線の遥か上空で少し離れた間隔を維持したまま、魔法陣を築き始めた。
下を見ると案の定、私たちを指差して銃口を向ける敵がいた。
「あちゃ。 やっぱり敵さんにバレた。 パチュリー! うっかり撃ち落されるなよ。」
「あなたじゃあるまいし……。」
魔法陣を作りつつ、敵の攻撃を避けたり防いだり結構忙しくなってきた。
まぁ、そうこう言ってる間にある程度魔法陣はできたんだけど。
だが、まだ足りない。
これでは、スペルカードルールの時に使ってる魔法陣と変わりない。
核なる部分を築き上げなくてはならない。
「なんだパチュリー。 まだ終わらないのか? それじゃ私からいくぜ!」
魔理沙は真下に向かって完成した魔法陣から星の形をした流星群をばら撒いていった。
あぁ、やはり魔理沙はスペルカード戦用に改良された魔法しか使わない気ね。
あれでは、喰らった敵も打撲程度にしかならないわよ。
まぁ、あくまで私たちは陽動が目的のため殺すための魔法を放つ必要はないのだが……。
と、考えているうちに私のも完成した。
「魔理沙。少し危ないわよ。下がってなさい。」
「え? あぁ。」
魔理沙が下がったのを確認し、私の魔法陣を起動させた。
魔法陣から作り出すのは擬似太陽。極限まで範囲を狭めた全てを燃やす炎を下にいる哀れな敵へ撃ち放つ。
「お…おい、パチュリー。 少しやり過ぎじゃ…。」
魔理沙がそんな事を私に言ってきた。
だが、私は魔理沙の戯言に付き合ってる暇はない。
確かに私たちの役目は陽動だ。 しかし、味方に喰らわない範囲で敵に大きな打撃を与えるのも一つの手だ。
現に今足下では、敵がズタボロに焼き焦がされ、呻き声を上げている。
久々に本気で魔法を放ってみたが、スペルカードルールに慣れ過ぎたせいか、威力が余り上がらなかった。
本当なら敵が消し炭になる予定だったんだけど……。
そうこうしている内に、敵の増援が来た。
しぶとい連中だ。余程上の連中は頭が固いかぶっ飛んでるらしい。
また先ほどのように焼くのも良いが、余り調子に乗ると喘息で倒れそうだから、
あとはレミィのいる第一部隊に任せるか。
「魔理沙。 私たちの役目は終わりよ。 撤退するわ。」
「あ……あぁ。」
魔理沙……やっぱり来ない方が良かったんじゃない?
そう言いたいが、無駄にプライドの高いこの子には逆に火に油よね。
少し疲れた。 早く基地に戻って休もう。
「ん? あれは魔理沙にパチュリー様?」
「え? パチェが来たの?」
「あ、パチェだ!」
咲夜が最初に上空にいる二人を見つけ、それに続いてレミリアとフランドール、その他の人が空を見上げる。
「パチェ、本気出しすぎて私たちが行く前に前線の敵が消えちゃうかもね。」
「えぇ〜、久しぶりに暴れれると思ったのに。」
レミリアとフランドールが陽気に喋り始め、藍は呆れ、他は苦笑い。
兎は何故か怯えている。
まず最初は魔理沙の方だった。
無数の星の形をした弾幕が雨のように降り注ぐ。
「綺麗だね〜。」
フランドールは誰にともなく呟いた。
だが全員は思っていた。
これじゃ駄目だと。
案の定、下にいた敵は驚きはしたものの、まったくの無傷だった。
「ふむ、魔理沙はやっぱりこういう戦いには不向きなようだ。 なぜついてきたんだろうな。」
「無駄に好奇心とプライドが高いですからね。」
藍の一言に咲夜は答えた。
「あ、パチェが何か出したよ。」
またフランドールが言った。
「太陽を意識した魔法かしら、永琳から貰った薬飲んでなければ私たちも焼かれる所だったわ。」
「だね〜。」
レミリアとフランドールは随分暢気なものだ。
まぁ、日光とか抜けば不死身の仲間入りだから、そうそう殺される事は無いっていう考えが緊張をほぐせるのかもな。
「ん? 敵の増援か? 魔理沙とパチュリーが頑張ってくれたが、今度は私たちが頑張る番か。
全員気を引き締めていくぞ。」
藍の声の後に、新たに現れた敵の所へ突っ込んでいった。
レミリアとフランドールは我先に敵の目の前まで飛んで行き、レミリアは抵抗する相手を無理やり持ち上げ
その腹部に牙を立て貪り付いた。
フランドールは捕まえた相手をその怪力で引き千切り、滴る血を美味しそうに飲んでいる。
端から見たら狂っていると思われるが、多分これが本来のこの二人の戦闘スタイルなのだろう。
戦闘と食事がイコールで繋がっている。
藍は見た事も無い術を多様し、相手が飛んで行ったり、拉げたりしている。
妖夢は自慢の刀で敵を切り裂く。 咲夜は無数のナイフで次々に相手を惨殺していく。
妹紅は全身に炎を纏い、その熱さに耐え切れず逃げ惑う敵を次々に消し炭に変えていった。
私はこんな化け物共を味方にしてしまったのか。
以前綿月姉妹から地球の妖怪達は弱体している。梃子摺るであろうが負けるような相手ではない。と聞いていたが、
話と全然違う。 たったこれだけの少数で何千何百という敵が次々に消えていく。
味方としてはあり難いが、これがもし敵に回ったとしたらと思うと身震いする。
だが、始まったものは仕方がない。 これも月が平穏に戻るために必要な犠牲なのだ。
後方で銃を構えていた兎は考えるのを止め、自分も遅れまいと前へ出て行った。
「永琳様! 御久しゅう御座います。」
「挨拶は後よ。こっちはどうなってるの、 依姫?」
永琳は久しぶりの知人との再会だというのに挨拶も無しに作業に移ろうとしていた。
「永琳。あなた少し休んでいて良いわよ。 依姫と言ったわね。永琳を休憩できる場所に連れて行って。
そして、そこの者。私をここの責任者の所へ連れて行きなさい。」
「姫! 私は疲れてなどいません。 それよりも姫がお休みになされた方が…。」
「私の命令に従わないと?」
「いえ……そういう訳では。」
「はぁ、永琳はその子から現状を聞きなさいって事よ。 私は私なりに情報を手に入れてくるわ。」
「……分かりました。」
その場で永琳と別れ、私と紫と慧音は近くにいた者に道案内をさせ館の奥へと入っていった。
「気を使わせて頂いたのでしょうか?」
「多分ね。 輝夜は時々私にも理解できない行動を起こすから、本音はわからないけど。」
「後でお礼を申し上げた方が?」
「あぁ〜、止めといた方が良いわよ。 あの子気紛れで、変にお礼されると怒るから。」
「そうなんですか……。 でも、本当にお久しぶりです。永琳様。」
「えぇ、お久しぶり。でも、様はよしてよ、もう私は月の者ではないから。」
「いえ、例え永琳様がそう仰ろうと私は変える気はありません。」
「無駄に輝夜に似てきたところがあるわね……。 一度決めたら止めない所とか。」
「ん? 何か?」
「何でもないわ。」
「あぁ、えぇと。挨拶はこれくらいにして、今の現状をお話した方がいいですよね。」
前回のコメントありがとうございます。
区切りがいい所で編集するとやけに短くなってしまいました。 申し訳ありません。
今回は全員が行動に移し、前線に到達までです。
第二偵察小隊
作品情報
作品集:
25
投稿日時:
2011/04/13 11:02:00
更新日時:
2011/04/13 20:02:00
後方で、慰安部隊として甘い星型弾幕でも出してたほうが良いかも。
狙撃センスのある鈴仙が狙撃手で、抜け目の無いてゐが観測手ですか。適任ですね。
さて、たった二人で何人屠れるか。
吸血鬼姉妹の戦闘スタイルは歩兵には有効ですが、機甲部隊や無人機には向きませんね。
対物兵器が欲しいな。
さて、司令部である第三部隊が友軍首脳部と合流しました。
次回からは本格的な戦闘となるのですね。
楽しみです。