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『東方奇黒球 ~ mission4』 作者: ヨーグルト

東方奇黒球 ~ mission4

作品集: 26 投稿日時: 2011/05/25 08:26:34 更新日時: 2011/06/02 20:35:58
『あーたーらしーいーあーさがきたっ、きーぼーおのーあーさーだ』
『よーろこーびにむねをひーろげ、おーおおぞーらあーおーげー』
『ラージオーの、こーえにー、すーこやーかなむーねをー』
『こーのかおーるかぜにひらーけよ』
『そーれいっちにいさん!!』

ガンツ玉に文字が表示される。

『てめえ達の命は無くなりました
 新しい命をどう使おうと
 私の勝手です。
 という理屈なわけだす』

入れ替わる。

『てめえ達は今からこの方をヤッつけに行って下ちい』

それと入れ替わりに表示された星人の名前と写真は、魔理沙を含めた全員を驚愕させる物だった。

『幽香星人
 特徴:つよい こわい うつくしう
 好きなもの:花 植物 友達
 嫌いな物:汚いもの 負けん気』

ガンツの左右と後ろからラックが開かれると、魔理沙達は我に返った。

スーツを最初から着ていた魔理沙はさっさとXガンをホルスターに収めようとする。しかし、肝心のXガンやYガン、ショットガンはラックに掛かっていなかった。その代わりだろうか、ガンツソードなら人数分を超える本数がラックに掛かっている。それとアタッシュケース。
魔理沙に最初に質問をかけたのは見た事も無い顔だった。おそらく村人の人だろう。その男は自分の名前を「木村」と名のった。それは噓でなく、アタッシュケースにもちゃんと『木村』と書かれているのが確認できた。
他には地霊殿の燐、地底妖怪のキスメ、永遠亭に仕える兎の鈴仙、紫の式の橙、プリズムリバー三姉妹のうちの長女のルナサ、文、妖怪の山の天狗の椛、宵闇の妖怪のルーミア、人形のメディスン。それに加えて、先程の初対面の男、木村。そして魔理沙。合計十一人。今回、魔理沙の指示がちゃんと通ったらしく、ガンツ部屋に居る全員がスーツを着て、ラックに掛かっているガンツソードを手に取った。ただ魔理沙は、何故今回に限ってガンツソードしか武器が使用できないのがか気になっていた。ガンツが故意にこんな事をしたのだろうと考え、そのことは考えないようにした。文が魔理沙に寄って来る。言いたい事は魔理沙にはもう既に判っている。

「これですか?」

その意味は単純明快。『消えては此処に来てこんな事をしていたのか?』という意味だ。魔理沙は意地悪そうに頭を縦に振り、妙な笑みを浮かべた。

「そうだが」
「こんな事が有ったのですか」
「ああ」
「にとりさんも、他の皆さんもこんな所に来ていたんですか……?」
「そうだ。そして、星人と戦っては死んでいったんだ」
「……」
「何故文は死んだ?」

魔理沙の唐突な質問に文は口を閉ざす。いつものハイテンションな態度はどこかへ行ってしまったようだ。

「変な奴らに襲われたんだろ」
「そうです」

文は縦に弱く首を振るが、その言葉は椛が代弁した。

「黒い奴らがたくさん来たので、私たちで応戦したんです。でも、だんだん劣勢になってしまって」
「そうか」

魔理沙の足首と両腕が転送され始める。部屋に居る皆が魔理沙の方向を向き、魔理沙の身に起きている事に心底驚き、ザコ妖怪は恐怖に怯えて身を縮こませた。文は納得したのがどうかは判らないが、今から起こる事で死なないようにしようと思ったのか、凛とした顔になった。唯一、ルーミアは今何が起きているか判っていないようで、頭の上に?マークを浮かべていた。木村と言う男は部屋のドアをガチャガチャやっているようだが、開かないと判っていて開けようとしている。

そして始まる星人との闘い。

ガンツの表面には『03:30:00』と表示されていた。



東方奇黒球 ~ mission4



転送された魔理沙達の目の前にまず、飛び込んで来た風景は見渡す限りの花畑。そう、幻想郷に存在する向日葵畑だった。しかし今は夜。夏のように暑い日に照らされ、花本来の美しさを放つような時間帯ではなく、逆に、怖い話などで出て来るホラーなシュチュエーションそのままだった。橙は駆け出す。

「あ!!待て!!」
「紫様ー!!藍様ー!!!」

しかしその瞬間、橙の頭上から花の形をした弾幕や、弾幕勝負をする人なら誰もが見る一般的な弾幕が降り注いだ。橙は持ち前の反射神経と運動神経で弾幕の間と言う間をすり抜け、避けきった。避けきった橙は魔理沙達のもとへ怯えた表情で戻って来た。

「な、ななな、何ですか?!これは!!」
「いいか?戻っちゃ駄目だ。一応はエリアが限定されているらしい。エリアが限定されていると言うことはここから出てはいけないと言うことなんだ……っ!?」

突然、畑全ての向日葵が突風に吹かれたかのように煽られだした。それと同時に皆の視界に飛び込んで来たのは、先程、ガンツ部屋でガンツに表示されていた幽香星人。もとい、誰もが知っている『風見幽香』が皆の目の前に、皆が知っている笑顔で現れた。そして誰もが知っているように日傘を持っていた。

「幽香か!?」
「……」

魔理沙の問いかけに目の前の幽香、いや、幽香星人は応答しない。それどころか一歩ずつ地面を踏みしめながら皆に近づいて来る。魔理沙と橙以外の全員がガンツソードを取り出し、何時襲ってこられても良いように身構える。それに遅れて魔理沙もガンツソードを構えると、目の前の幽香星人(これからは幽香と表記する)に挑発の態度を取った。人語が解らない製だろう。その挑発の態度に誘われて攻撃してこない。なおも幽香は一歩ずつ踏みしめ、魔理沙達に迫って来る。
魔理沙は皆に広がるように命令する。

「いいか!敵は単体だ!!それに、皆で力を合わせれば一緒に帰れるんだ!!いくぞ!!」
『おお!!』

そのかけ声とともに、メンバーは一斉に散開する。皆が逃げるのとは裏腹に、追おうともしない幽香に真っ向に、魔理沙はガンツソードを番えて突進し始めた。それに合わせたのか反応したのか、幽香も魔理沙に向かってダッシュした。刀を振り上げ、幽香の頭上にたたき落とそうとするが、幽香はそれを見切ったかのように避け、魔理沙の後ろに回り込んだ。それを見越し、魔理沙は体を捻って地面に横になって攻撃をかわした。幽香はそのまま体を横に百八十度回転させ、足を振り上げて踵落しを魔理沙の脳天に決めようとする。魔理沙はその攻撃をガンツソードで防ぎ、スーツのパワーを利用して幽香を遠くへ吹き飛ばす。幽香の体が向日葵を散らすと、散らされた向日葵は辺りに汚らしく舞った。幽香は怠そうに体をムックリと起こした。

「げっ」

魔理沙の見た幽香の首は、おかしい程に九十度曲がっていた。幽香は首に手を添えコキッという軽快な音を出し、自らの首を矯正した。そして持っていた傘を星の浮かぶ夜空に向かって差し広げると、幽香の体がから薄い光が放たれた。魔理沙は思わず目を瞑り、両手で顔面を塞いだ。光が放たれ終わると目を開けて両腕を下げたが、それと同時に幽香の体中についていた傷は完全に治り、すこしボロが付いた服も完全に修復されていた。

「やあっ!!」

次の瞬間、ルナサがガンツソードで一斉に幽香に襲いかかった。幽香は見切り、ルナサの持つ刀を華麗に受け止めて、刀を利用しててこの原理でルナサを吹っ飛ばした。体が空中で回転している隙に、幽香は素早く蹴りと拳を叩き込んでルナサに追撃を決めた。地面に転がっているルナサの体はくの字に曲がっている。幽香がルナサにゆっくりと歩み寄り、傘を真っすぐに振り上げて、何故か鋭くなっている傘の先をルナサに刺そうとする。

「くあっ!!」

魔理沙は急いで助太刀をし、幽香の持っている傘をガンツソードで一刀両断する。そのまま回し蹴りで傘全部を使わせなくしようとするが、幽香の反応の方がコンマ秒単位で早く、逆に、魔理沙の持っていたガンツソードを遠くに吹き飛ばした。そのまま魔理沙は吹っ飛ばされ、地面に体を盛大に擦らせた。ルナサはその場を急いで離れ、近距離戦闘での死の間合いをくぐり抜けた。幽香は傘の持ち手の部分だけを放り投げ、手の平から新たに傘を生えさせた。

「……武器をやっても意味が無いのか」
「魔理沙さん!」

鈴仙が魔理沙の横に来る。

「文さんと椛さんが奇襲をかけますので、魔理沙さんもそっちの方に!」
「お前は!」
「ルーミアさんと共同で陽動です!」
「上手いこと言ったつもりか」

鈴仙は刀を仕舞って無手の状態で幽香に立ち向かう。それにいち早く反応し、傘を鈴仙に向けて花の弾幕を大量に乱射する。屈んで一撃目を避けると、ガンツソードを素早く抜いて花の弾幕をどんどん切り刻んで行く。その花が散る様に魔理沙は一瞬だけ目を惹かれたが、すぐに平常を取り戻して向日葵の影に身を潜めた。鈴仙が幽香の背後に回り込んだ頃、その二人の頭上に文と椛がガンツソードの刃を下に向けて今と言わんばかりに頭上落下を決める所だった。幽香は足払いで鈴仙を転ばせ、ガンツソードを取り上げると、刃を出した状態でそのまま頭上の二人に投げつけた。

「うあっ!!」
「椛!」

刀が椛の持つ方の束にヒットし、その刀が手から外れて空中に放り投げられる。自由落下する二人の体が地面にそのまま着地。文はガンツソードを横に振り抜いて幽香の腕を狙おうとする。その切っ先は幽香を捉えること無く空しく空振り、弾かれた。

「危ないっ!!」

瞬間、文の目の前に幽香の足が迫った。しかしその足は椛が身を挺して防いだ。その結果、椛の顔面は半分砕けた。

「ぎゃあああああああああ!!!」
「やろっ!」

魔理沙は飛び出し、地面に落ちていたガンツソードを拾い上げると、自分の持っている物を利き手とは逆に持ち替えて二刀流スタイルを取った。その刹那、空中高く放り上げられていた椛が所持していたガンツソードが、その切っ先が綺麗に椛の脳天を捉えた。文はその刀を抜かない。それは当然のことである。幽香は椛の脳天からガンツソードを引き抜くと、文の首筋目がけて横に振った。その刃先は文の首を切ること無く、二本の刃に受け止められた。魔理沙が守ってくれたのだ。その隙を見逃さずに鈴仙が追撃をする。鈴仙のパンチで飛ばされた幽香は空中で体を反転させ、弾幕を魔理沙と鈴仙の二人に放った。鈴仙はもともと自分が持っていたガンツソードを拾い、飛んで来る花弾幕を続けざまに切り刻んで行く。しかし、その物量に対応しきれていない。なぜならその弾幕は魔理沙にも向けられていたからである。魔理沙も二本の刀で応戦開始。なんとか持ちこたえられそうだ。

「ッ!」
「……」

弾幕を処理している二人の前方では、幽香が傘を二人に向け、その傘の先から怪しげな光が収縮されていた。二人はその攻撃が何なのかを大体把握していたが、今は弾幕処理でそれどころではない。

「だりゃあああああ!!」

しかしそれを阻止したのは意外な人。村人の木村がガンツソードで幽香に襲いかかった。しかし、傘を構えている手は魔理沙達に向けたままで、その反対の手……左手で木村の刀を受け止めた。木村は受け止められた刀をそのまま力任せで、その刀を掴んだ幽香の左手に刃を食い込ませようとする。しかし、力を入れた瞬間に木村は刀ごと大きく吹き飛ばされた。その体を、橙とルーミアが偶然にも受け止める。その体は重かったようで、受け止めた二人の顔が一瞬だけ苦しそうになった。

「来るぞ!!」
「避けられ……」

巨大な攻撃が来ると思った瞬間、幽香の体が横に大きく傾いた。キスメがガンツソードで幽香の左足を切断していたのだ。その瞬間に、幽香の傘から強力なエネルギー砲がくらくなった大空に向けて放たれた。しかし怯まず、幽香は左手を回してキスメのガンツソードを撥ね除けると、右手の傘でキスメの心臓を貫いた。差し上げられたキスメの体は宙を舞い、これもまた、橙とルーミアが受け止めた。それの所為か、幽香が橙とルーミアの位置に気づく。

「ひっ!」
「で、でも、木村さんとキスメさんが!!」

幽香は無くなった自分の左足を復活させると、瞬間的に二人に詰め寄った。しかしその体は後ろから羽交い締めにされる。今まで隠れていた燐に両腕を封印され、ルナサに両足を掴まれたのだ。燐がガンツソードを幽香の頭に刺そうとするが、その所為で幽香を拘束することから頭が離れてしまい、隙を与えた。幽香が体を三百六十度回転させ、自分につきまとっていた二人の体を大きく離れさせる。次の瞬間、幽香の両手から武器が生えて来た。
その武器は向日葵畑に居る全員を驚愕の渦に陥れる物だった。
このミッションで使用でき無かったXガンが幽香の手に握られていたのだ。幽香はXガンを足下の二人、もとい橙とルーミアに向けてロックオン。引き金を無造作にそれぞれ三回引いた。橙とルーミアは怯えきっていて逃げる暇もなかった。鈴仙はガンツソードでそのXガンを破壊しようと走り出す。しかしその瞬間、鈴仙の体が突然動かなくなる。Yガンによって拘束され、地面に縛り付けられたのだ。その刹那に橙とルーミアは破裂した。
何故?
先程の木村の体を受け止めたときとキスメの体を受け止めた時、それに加え、魔理沙と鈴仙が処理して弾幕の流れ弾。それが橙とルーミアに全部まわって来ていたのだ。それだけならまだしも、木村とキスメを守る為に自分の体を盾にしたことが仇となっていた。
立て続け、幽香はXガンを鈴仙に向けた。魔理沙が片手に持っていたガンツソードを鈴仙に投げつける。そのガンツソードが鈴仙の目の前に落下し始めたのと同時に、幽香がXガンの引き金を引いた。Xガンの斜線が綺麗にガンツソードを捉えたお陰であろうか、数秒後に爆発したのは鈴仙の足下に落ちたガンツソードだった。幽香が再びXガンを向けた。しかし、その銃を持つ腕を何者かが押さえつける。木村だった。

「させるかぁ……!!うぐううぅ!!」

幽香の体を押さえつけた木村の口にXガンが突っ込まれ、容赦なく引き金が引かれた。魔理沙が幽香に詰め寄り、ガンツソードでその首をはねたのが、木村の頭が破裂した瞬間だった。



ミッションが終わり、メンバーが戻って来たガンツ部屋。
今部屋に居るのは魔理沙、鈴仙、文、椛、ルナサ、燐。そして今まで空気で役に立たなかったメディスン。

「これで……終わりか……」
「魔理沙さん……」

鈴仙は魔理沙を宥めようとする。ふと、魔理沙がガンツを見ると、その表面にはおかしなことが表示されていた。おかしいのではなく、違和感だった。

『01:50:00』

チーン。

『それぢはちいてんをはぢぬる』

『まりさ
 50てんたす5てん
 TOTAL81てん
 あと19てんでおわり』

『れいせん
 5てん
 TOTAL5てん
 あと95てんでおわり』

『もみじ
 5てん
 おまけ もっとかっこいいとこみせて
 TOTAL5てん
 あと95てんでおわり』

『あや
 5てん
 おまけ もみじをたすけてたらかっこいい
 TOTAL5てん
 あと95てんでおわり』

『るなさ
 5てん
 お、おまけなんだからねっ!(笑)
 TOTAL5てん
 あと95てんでおわり』

『りん
 5てん
 おまけ もうちょっとかつやくしようよ
 TOTAL5てん
 あと95てんでおわり』

『めでぃすん
 5てん
 おまけ いたの?
 TOTAL5てん
 あと95てんでおわり』

「一気に点が稼げた……」

魔理沙はその点数に心底驚いた。今回の幽香星人……個体では50点という設定なのだろう。それにどういうわけか5点プラスされた。

「まあこれで100点に近づいた訳だし」
「100点?」

文が身を乗り出す。

「100点取るとどうなるんですか?」
「ガンツ」

魔理沙がガンツを呼ぶと、それに呼応するかのように表面に文字が表示された。

『100てんめにゅ〜

 1、記憶を消されて解放される

 2、より強力な武器が与えられる

 3、好きな人を生き返らせる』

「……」

文はその文字を妄信するかのように指でなぞった。そして「100点取らなきゃ」と小さく呟いた。その背中に魔理沙が声をかける。

「このことは誰かに話すとまずいぞ。頭がパーンとなるそうだ」



翌日の紅魔館。
特に変化は無い。変化は有るが、昨日とは変わりないと言う意味だ。パチュリーは魔理沙をちらちら見ながらも魔道書を呼んでいる。魔理沙はその視線に気づいていないらしい。気づいていても、いつものことだろうからスルーするだろう。その場には文も居た。

「……」
「……」
「……」

三人はここずっと黙り込んでいる。此処最近の事件が原因どうかは判らない。文が椅子から立ち上がり、ティーカップの中の紅茶を下品にも一気飲みすると、帰り支度を始めた。魔理沙とパチュリーは文に視線を向け「もう帰るのか?」的なことでも言った。

「忙しいんで」

そう言って文は紅魔館を出て行った。



香霖堂。
現在の博霊の巫女、博麗霊夢は久しぶりにこの店を訪れ、またおいしいお茶でもご馳走になろうと思った。店のドアを開けるなりいつもの挨拶をするが、「いらっしゃい」は愚か、いつものような冷たい応対すら帰ってこなかった。頬を膨らませて何度も霖之助の名前を呼ぶが、返事が無い。怒って店を出ると、目の前に魔理沙が居た。

「霖之助さんがいないんだけど?」
「出かけたんじゃないのか?」
「質問に質問で返さないでよ。あの人が出かけると思う?」
「出かけないと思うが」
「じゃあ何でさっき言ったのよ」
「あいつが店にいないこと自体が珍しすぎる。この季節は花見でも海水浴でも、ましてや雪合戦の季節ですら無い。だったら私用でどこかに出かけたんだろう」

適当に相槌を打ちながら魔理沙と霊夢は道を歩く。その魔理沙の頭の中では、霖之助が不在の理由はしっかりと思い出されていたのだが、それを告げては自分の身が危なく、適当に返事を返すしかなかったのだ。最近、霊夢は随分前に見た朱鷺の妖怪に霖之助がいないと言われて困っていた。

「だったら朱鷺の妖怪には私から説明しておくよ」
「あんた知ってるの」
「んにゃ」



三日後の夜、魔理沙を再び寒気が襲った。彼女は違和感を少しながら感じていて、此処最近はガンツに呼ばれるペースが少しながら上がっている気がしたのだ。此処最近と言っても数回分の出来事では有るが。



『あーたーらしーいーあーさがきたっ、きーぼーおのーあーさーだ』
『よーろこーびにむねをひーろげ、おーおおぞーらあーおーげー』
『ラージオーの、こーえにー、すーこやーかなむーねをー』
『こーのかおーるかぜにひらーけよ』
『そーれいっちにいさん!!』

ガンツ玉に文字が表示される。

『てめえ達の命は無くなりました
 新しい命をどう使おうと
 私の勝手です。
 という理屈なわけだす』

入れ替わる。

『てめえ達は今からこの方をヤッつけに行って下ちい』

『巫女服星人
 特徴:みこ 一見ふつう つよい
 好きなもの:かみさま お茶 強いようかい
 得意なこと:てきたいじ ふくすう相手
 嫌いなもの:面倒くさいこと うざいひと』

ラックが開かれた。
今回のメンバーは前回の生き残り、魔理沙、鈴仙、文、椛、ルナサ、燐、メディスン。新メンバーはどれも知った顔で、紅魔館の主のレミリア、白玉楼にお努め(お務め)の半人半霊である妖夢、七色の人形遣いのアリス、地底妖怪の空、命蓮寺に居る一輪と雲山。今回はそれら合計の12名+一名のようだ。もともとの生き残りである七人は既にスーツを着込んでいて、準備は万端のようだ。魔理沙達がなんとか説得してくれたお陰で、妖夢とアリスと空と一輪はスーツを着てくれた。レミリアは「そんな変な物着たくない。霊夢が着たら別だけど」と吐き捨てた。雲山はスーツを両手で持って眺めているだけで、着方が判らないようだ。一輪が必死こいて着方を教えている。
魔理沙がラックの武器に手を伸ばすが、そこにセットされている武器はまたしてもおかしかった。ラックに掛かっていたのはYガンとガンツソードのみ。それ以外の武器は掛かっていない。魔理沙は一瞬だけ前回のミッションを思い出した。前回のように星人がXガンなどの武器を使用して来ると言うのなら結構苦戦する。その為にはどうすれば良いかが問題となるなど、魔理沙が考えることが山積みとなってしまう。

「鈴仙」
「はい」
「この銃はとりあえず二丁持ってくれ。私も二丁持って行く。一応人数分を少しだけ上回っているようだが、問題となると思うなら三丁持ってくれ」
「大丈夫ですよ」

鈴仙はホルスターにYガンを左右に一丁ずつセットし、いつでも使えるように手にも一丁持った。妖夢はYガンを手に取ることは無かったが、ガンツソードは二本持ってくれた。いつもなら持っているはずの白楼剣と楼観剣が何故か無い。そのことをあえて魔理沙は問わなかった。

「ガンツ、私と鈴仙を先に転送してくれ。それ以外はいつも通りで良い」

それに反応したのか、魔理沙と鈴仙の体が輪切り状に転送されて行く。その次に転送され始めたのは妖夢だったのだが、さすがに肝が据わっているらしく自分の頭の辺りを手で何度も触ろうとしていた。それから順に転送されて行く。

『行って下ちい
 01:30:00』



魔理沙は転送され終わり周りを確認したが、鈴仙の姿は何処にも見当たらなかった。代わりに居るのは椛とレミリアだった。そして、転送された場所は命蓮寺。またここで星人と戦うことになるとは、本人は思っていなかった。まだ修復されておらず、さらに破壊するのかと思うと胸が痛くなるのであった。



鈴仙は周りを見渡して、自分が居る場所が博麗神社と言うことを確認した。その周りに居るのは文と燐、メディスンとルナサだった。



妖夢はガンツソードの刃を出して、持ち心地と振り心地を確かめていた。他に一緒に居るアリスはYガンを色んな角度から見ている。空と一輪に、それに付き添う雲山。その雲山はガンツ部屋で一生懸命教え込まれたのだろう。スーツを着込んでいる。顔はどや顔のようなっている。一輪は雲山を笑っていて、それに答えているかのように雲山も、心無しか笑っているように見える。

妖夢は素早くガンツソードを構え、目の前の存在に対峙した。今回のターゲット、巫女服星人。霊夢や早苗のそれとは別だが、どちらかというと霊夢の服装に似ている。顔も髪型も霊夢ではなく、脇が無い。お祓い棒と札の束を所持している。
妖夢が構えるのと同時に巫女服星人が襲いかかって来た。



「くはあぁっっ!!」

魔理沙は吹き飛ばされ、命蓮寺の門に背中を思いっきりぶつけた。椛とレミリアはガンツソードで巫女服星人を畳み掛けるが、その両剣を、巫女服星人は華麗にそれぞれ手で受け止めて二人をひっくり返した。加点する二人の体を尻目に、巫女服星人は魔理沙に襲いかかる。
目の前に迫ったお祓い棒をガンツソードで受け止めた魔理沙は、巫女服星人を跳ね返し、体を起き上がらせた。すでに巫女服星人の服にはどろっとした傷がついていた。正確に言うならばどろっとした傷ではなく、泥がついている。と言う方が正しい。

「くそっ!」

双方互角、正確に言えば巫女服星人の方が少しばかり上である。
ちなみに今回のこの巫女服星人を倒すミッション。これは三エリアに分かれて行われるもので、各メンバーは博麗神社、守矢神社、命蓮寺の三カ所で戦闘する。各チームはそれぞれ複数対一(ガンツメンバーvs星人)で戦う。それぞれ戦闘が終わった場合、任意で終わっていない他チームの戦闘に参加できる。どの星人もメンバーに等しく強く、助太刀したメンバーが他のメンバーと戦っていた星人を倒しても、ポイントはそのまま分け与えられる。

「らっしゃあああ!!」

レミリアが巫女服星人の背中に強烈なタックルを決める。表情を変えることの無い巫女服星人はそのままうつ伏せの体勢で倒れた。そのまま追撃を決めようと飛びかかるが、巫女服星人は体を反転させ、お祓い棒をレミリアの顔面に突き立てる。それに即座に対応。お祓い棒を両手で掴み、空中で縦に体を回転させると、レミリアは自分の足を地面に固定させるように踏ん張り、お祓い棒を掴んだまま巫女服星人を投げ飛ばした。投げ飛ばされた星人は鳥居の柱に両足をくっつけ、受け身のように直接ダメージを回避した。そのまま足に力を入れ、お祓い棒を突き立ててレミリアの方向へ飛んだ。レミリアはそれをジャンプでかわすが、巫女服星人の放った弾幕が直撃する。

「レミリア!」
「こんなものぐらいどうってこと……おおおうらぁぁぁああああ!!!」

落下中のレミリアに追撃しようとする巫女服星人のお祓い棒を、レミリアは両手で受け止める。空中で体を捻って、巫女服星人を地面にたたき落とす。その落下地点はちょうど、魔理沙の頭。「危ねえだろ!」と怒鳴りつけた魔理沙はガンツソードを巫女服星人に突き立てた。その刃は星人の腹をずぶずぶと貫通して行くが、貫通するにつれて巫女服星人の顔は悪意のある笑顔になって行った。

「くっ!!」

魔理沙の刀を手で掴むと、そのまま引っこ抜いて、刀を持って魔理沙を円状に振り回し始めた。そして投げ飛ばされ、魔理沙の体は分社を粉砕する。木片の山から魔理沙は体を起こすが、そこに巫女服星人の追撃が決まる。お祓い棒で魔理沙のスーツのリング状の部分、つまることスーツの弱点を破壊しようとする。

「やろ……」

数回突いた所で魔理沙はお祓い棒を片手で受け止め、巫女服星人を押し飛ばした。そこの方向には椛が居たが、既にそれを予想していたらしく、ガンツソードを構えていた。それを察知。巫女服星人の体が奇妙に反転し、椛の持っていたガンツソードを掴んで遠くに弾き飛ばした。弾き飛ばされたガンツソードは神社の屋根に深く刺さった。

瞬間、三人の足下に四角形の何かが描かれ始めた。



ガィン!!
ガィィン!!

妖夢の二本のガンツソードと、巫女服星人が腕から生やした一本の刀が交わるたびに、金属同士が反発し合うような音が鳴り響く。二人の実力は同等と言って良いはずなのに、妖夢の方が何枚か上回っているように感じる。一緒に居るアリス、空、一輪と雲山は、妖夢と巫女服星人が激闘を繰り広げているのをただただ呆然と見ていた。次の瞬間には巫女服星人の右腕と左腕が本体から断たれ、武器を失わせた妖夢のトドメが決められた。

「これで終わりです」
「さすが妖夢ね」

アリスはYガンを下ろしてそう言った。

「これで星人は倒し終わったと思うんですが」
「魔理沙達の所に助太刀にいけないのかしら」

そうアリスが言った瞬間、アリスの足と頭が転送され始めた。



輝き始める博麗神社周辺。巫女服星人が作り出した結界陣からオレンジ色のような、紅色とも言える目映い光が魔理沙達の視界を塞いだ。

神技「八方鬼縛陣」

しかし、その技は瞬間的に発動されただけで直ぐに止んだ。椛がガンツソードを投げ、巫女服星人の腹を貫通させたのだ。巫女服星人はガンツソードを抜いて地面に投げ捨てた。その隙を見計らい、魔理沙が無手で襲いかかった。

「うおっ!!」

巫女服星人は襲いかかったってきた体を受け止めた。魔理沙は投げ飛ばされ、賽銭箱を蹴散らすように転がった。巫女服星人は追撃しようとするが、それをレミリアが素手で阻止する。しかし、レミリアの体は星人とは反対の方向に吹き飛ばされた。星人が瞬時に発動した技、『霊撃』。幻想郷の少女達なら大体が使える技である。

「やろっ!」
「下がって!!」

魔理沙が反撃しようとした瞬間、その目の前に人影が降り立ち、数秒足らずで巫女服星人を切り捨てた。三人の目の前に現れた人影、魂魄妖夢は魔理沙達の方に向き直り、軽く頭を下げた。それに釣られて他の三人も頭を下げてしまう。
妖夢は辺りをきょろきょろし、こう言った。

「アリスさんは来ていないのですか?」
「は?」

素っ頓狂な声を上げた後、魔理沙は辺りを見渡す。

「来ていないぜ?」
「え?さっき転送されて来たと思ったのですが」
「こっちから捜しに行こうぜ」

魔理沙がそう言った瞬間、その体が突然転送され始めた。
アリス達の所に向かっている。

「私も!」

妖夢がそう叫ぶと、その体も各部位から徐々に転送されて行った。
レミリア達はその場に残り、というより取り残されて、ただ呆然としていた。



Yガンで絡めとられている巫女服星人にYガンを向けている鈴仙の体が吹き飛ばされた。星人の悪あがきだろうか、霊撃を連発していた。皆の傍にはメディスンが、戦闘不能となっているその体が横たわっていた。先程の戦闘で優勢を維持してはいたのだが、少し油断した所為で殺されてしまった。
鈴仙は転送を開始し、合計三体の巫女服星人を倒すことに成功した。
そこに魔理沙達が集まり、メディスンを除いたメンバーはこれで全員となった。皆が辺りを見れば判ったのだが、無駄に血が流れていなかった。

今回のミッションはこれで終わり。



チーン。
部屋にメディスンを除いた全員が集合し、皆の視線はガンツに注がれていた。

『まりさ
 0てん
 やーい、たおせないでよこどりされてやんの
 TOTAL81てん
 あと19てんでおわり』

『れいせん
 25てん
 TOTAL30てん
 あと70てんでおわり』

『もみじ
 0てん
 こびりすぎだったかな?
 TOTAL5てん
 あと95てんでおわり』

『あや
 0てん
 おそすぎ
 TOTAL5てん
 あと95てんでおわり』

『るなさ
 0てん
 かげうすすぎ
 TOTAL5てん
 あと95てんでおわり』

『りん
 0てん
 かつやくしなさすぎ
 TOTAL5てん
 あと95てんでおわり』

『ようむ
 50てん
 TOTAL50てん
 あと50てんでおわり』

『れみりあ
 0てん
 ゆうがにすごしすぎたんじゃないの?しんでれらになる?
 TOTAL0てん
 あと100てんでおわり』

『ありす
 0てん
 ともだちすくなすぎ
 TOTAL0てん
 あと100てんでおわり』

『うっほ
 0てん
 とりあたますぎてこうげきすらわすれた?(笑)
 TOTAL0てん
 あと100てんでおわり』

『いちりん
 0てん
 うごけ
 TOTAL0てん
 あと100てんでおわり』

『うんざん
 0てん
 うんどうしろ
 TOTAL0てん
 あと100てんでおわり』

「(100点取ったら何にしようかな)」

魔理沙がそんなことを考えていると、呼んだ訳でもないのにガンツに文字が表示された。

『100てんめにゅ〜

 1、記憶を消されて解放される

 2、より強力な武器が与えられる

 3、好きな人を生き返らせる』

魔理沙の目に最初に留ったのは『より強力な武器が与えられる』だった。



夜。
今日は珍しく、魔理沙の家に文と椛が来ていた。
この三人はもちろん、今後のこと。特にガンツのことで話し合うことにしていた。紫は面倒くさいのかどうか知らないが、この事、要するにガンツの事には首を突っ込む気がないようだ。そのお陰で、魔理沙達は少しだけ安心ができる。ただし、うっかり口を滑らせれば死んでしまうかも知れないと言う恐怖から、地底妖怪の連中に、特にさとりには会いたくないと全員考えている。

「あれから一週間が経つ」
「そうですね」
「はい」

三人は目を白くしてそう言った。
魔理沙はミニ八卦炉をスカートに隠し入れるように、いつもXガンを装備している。文も、取材用のカメラを入れるバックにXガンを入れてある。ただし、需要は無い。椛と言えば魔理沙や文のように常備している訳ではないが、剣だけは持ち歩くようになった。別段変わった事ではないのだが、山の天狗達には「何故持ち歩くんだ?」と言われた事が有った。

「後少しすればまた呼ばれると思う」
「本当ですか?」
「100点取って解放されるか?戦う楽しみに浸るか、好きな人を生き返らせるまで戦うか……それは個人の自由だと思うが」

洪笑。

「私はこのまま戦い続けるさ。ミッションが全て終わるまで。異変が起きない幻想郷って言うのも退屈だろうからさ」

そう告げた魔理沙の頭が欠け始めた。一瞬だけ、文と椛はそれに驚いたが直ぐに理解して落ち着きを取り戻した。
自分たちの頭が欠け始めた頃には戦闘準備が完了していた。

「あーたーらしーいーあーさがきたっ」

魔理沙はラジオ体操の歌を口ずさみ始める。

「きーぼーおのーあーさーだ」
「よーろこーびにむねをひーろげ、おーおぞーらあーおーげー」

文と椛も一緒に歌う。
そして戦闘開始の合図。

「そーれいっちにーさんっ!!」ヨーグルト
幽香星人、一体。50点。
討伐タイムによって得点が加算される。
巫女服星人、三体。一体25点。

はい、なんだかんだ言って第四話です。
メインの星人が先に倒されちゃうと言う変な流れです。
問う方らしさを出す為にはどうすれば良いか試行錯誤しているうちにできてしまいました。
ほとんど出ていないと思います。
今回もオリジナル星人を募集します。
が。
同時にオリジナル武器も募集しようと思います。

星人テンプレ
名前「」
特徴「」
備考「」

武器テンプレ
名前「」
詳細「」
備考「」

では、次回は『ねずみ星人編』です。
一割以下の期待でもいいのでどうぞ。
ありとあらゆる指摘をお待ちしております。
ヨーグルト
作品情報
作品集:
26
投稿日時:
2011/05/25 08:26:34
更新日時:
2011/06/02 20:35:58
分類
魔理沙
鈴仙
妖夢
グロ
幽香星人編
次回は6月12日前後
1. 名無し ■2011/05/25 20:05:50
三エリアで戦うのは新鮮で良かったです
2. 名無し ■2011/05/25 20:21:56
そろそろタエちゃん出てくるな
誰がタエやるのか楽しみだ
3. NutsIn先任曹長 ■2011/05/25 20:55:02
ガンツ先生の各人の評価、的確すぎ。
星人は、幻想郷の住人をコピーできるのですか!?
今回はゆうかりんと量産型巫女ときましたか。
で、この『ゲーム』にはレギュレーションがあるようですね。相手によって武装が制限されるようですが。
徐々にゲーム性が高くなってきましたね。わくわく。

で、早速、

ぼくのかんがえたぶき

名前:ガンツ・バリアブル・ブルーム
詳細:魔理沙専用武器。通常の箒であるブルームモードの他、砲撃用のバスターモード、巨大な剣となるザンバーモードに変形する。
備考:魔理沙はこれを手に入れて以降、平時から『箒』として愛用するようになった。
ある日、面白半分に攻撃モードで使った所を見られてしまった。
その時、魔理沙は某ソレスタル・ビーイングの下部組織のガンダム・マイスターのような思考に至った。
「見た奴、全員死ねば問題無いだろう」
ガンツの返事は、「問題無い」だった……。

では、続きを120%楽しみにしています。
4. ヨーグルト ■2011/06/02 19:27:39
>1様
原作ではなかったと思ってやってみました。

>2様
次回でそれっぽくしてみようと思いますけど、原作のような扱いでは出ないと思います。
若干役割が判りにくくなるかもしれません。

>NutsIn先任曹長様
元メンバーをコピーするのは実写版の千手観音ぐらいですかね。
それをもとに、勝手にやってみました。武器制限も原作では無かったと思われます。

自作武器ですが、何時出すかは判りませんが追加武器一覧に入れておきました。次回では名前では有りませんががちょろっと出て来ます。
ストーリーまではちょっと判りませんが。
5. 名無し ■2011/06/06 02:02:44
俺がガンツに呼ばれたら強い武器を望む。
何故なら、異星人が存在する限り戦える立場にい続けた方が安全だと思うから。
自分以外の戦う人が凄く多いなら戦わないけど。
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