狂気の夢

ここは紅魔館。吸血鬼、レミリアスカーレットの館である。

その紅魔館の廊下で当主であるはずのレミリアが走っていた。

より正確に言うならば、彼女は妹から逃げていた。

「アハハハハッ！遊ぼうよお姉様〜？」

レミリアの妹、フランドールが笑いながらレミリアを追う。

傍から見れば微笑ましい光景に見える。

フランドールが燃える剣レーヴァテインを振り回していなければだが。

「危ない！やめなさいフラン！私が死んじゃうじゃない！」

レミリアが逃げながら叫ぶ。

「何言ってるのお姉様？私は最初からそのつもりだよ？」

「！？」

そういうフランドールの目は冷たく光っていた。

「495年も地下室に閉じ込めといて、いまさら良い姉きどり？反吐が出るわ。」

「私は貴女のことを思って……！」

「だからね、思いっきり遊びましょう？お姉様！」

レミリアの言うことを聞き流しフランドールが剣を振り回す。

そのたびに廊下に置いてある高級な花瓶は消し飛び、絨毯が燃える。

「フラン！いい加減にしないと私も反撃するわよ！」

「やれるものならやってみなよお姉様ッ！」

フランドールが振るった剣がレミリアの背中を焦がす。

「クッ……。仕方ないわね……。」

そういってレミリアは自分の武器である神槍、グングニルをだす。

「あハハッ！やっとヤル気になってくれたのねお姉様！」

フランドールの攻撃が加速する。

しかし、レミリアも負けてはいない。

勢い良く振り向き、槍で剣を受け止める。

ギィンと高い音が廊下に響く。

剣を受け止めた状態からレミリアが鳩尾に向かって蹴りを放つ。

急な反撃に対処できずに剣を放り出し、吹き飛ぶフランドール。

そのまま壁に激突し、倒れる。

「そのまま少し頭を冷やしなさいフラン。」

レミリアが言い放つ。

そのレミリアの左腕が突然破裂した。

「がハッ！？」

フランドールが破壊の能力を使ったのだ。

むくり、とフランドールが立ち上がる。

「駄目だよお姉様。まだ遊び終わってないよ？」

再びレーヴァテインをだしながらフランドールが言う。

「フラン……貴女･･････！」

レミリアが悔しそうにフランドールを睨みつける。

フランドールはニタニタ笑いながらレミリアに近づく。

そして、剣を振り上げレミリアを消し飛ばす。



はずだった。

「あれ？」

目の前にいたはずのレミリアがいなかった。

ビュオンと風を切る音がフランドールの耳に入った。

次の瞬間、紅く輝く槍がフランドールの体を貫いた。

「え？」

自分の腹から槍が飛び出している状況をフランドールは理解できなかった。

困惑したフランドールにレミリアは躊躇いながらも、再び槍を投げる。

ドスッと鈍い音がして、フランドールの頭に槍は突き刺さった。

ばたり、とその場に倒れるフランドール。

レミリアがあわてて駆け寄る。

「大丈夫？フラン？私はなんてことを……。」

そういうレミリアに、笑いながらフランドールが言った。

「アハハハッ！楽しかったね、お姉様？」

そういって、フランドールはレミリアの頭を破壊した。










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「嫌ああああぁァああああぁあアアアアあッ！！」

叫びながらレミリアが跳ね起きた。

「大丈夫ですかッ！お嬢様！」

悲鳴を聞きつけ、メイド長の咲夜が駆けつけてきた。

「あれ……？咲夜？私は……。」

「お嬢様ならずっと部屋で寝ておられましたよ。それより、大丈夫ですか？」

「ええ、平気よ。悪夢を見ただけ。」

夢の内容を思い出しながらレミリアが言う。

「そうでしたか。では、私はこれで。」

「うん、悪かったわね咲夜。」

「いえいえ、お嬢様がご無事でなによりですわ。」

そういって咲夜は部屋から出て行った。

咲夜を見送り、ほっと安堵のため息をつくレミリア。

そこに、コンコンと扉をノックする音が響く。

「はいはい、開いてるわよ。」

入ってきたのはフランドールだった。

何か言いたいのか、レミリアを見ている。

「どうしたのフラン？言いたいことがあるなら言いなさいな。」

そうレミリアが言う。

フランドールが頷いて、こう言った。



























「次は私を殺してよね、お姉様？」

そう言ってニタリと笑った。