Deprecated : Function get_magic_quotes_gpc() is deprecated in /home/thewaterducts/www/php/waterducts/neet/req/util.php on line 270
『Eternal Full Moon 第一話』 作者: イル・プリンチベ
―1― 因幡てゐの自己紹介
あたしは永遠亭に住んでいる妖怪兎の因幡てゐなんだけど、なかなかいい感じでアレな同居人連中と暮らしてて、馬鹿馬鹿しいながらもそれなりに充実した日々を送っているんだ。
はるか大昔にあたしが生まれた時は今のような妖怪兎じゃなくて、兎鍋にして食べるにはもったいないぐらい可愛らしい普通の因幡の白兎だったけど、健康に気を使って長生きしてきたからこの通り妖怪になって、やっとこさ人型の姿になれるまで力をつけれたんだ。確かにあたしは長生きし続けてきたんだけど、残念なことに自分が何年生きてきたのか忘れちまったのさ。
以前のあたしは頭が悪くて外敵を追い払う力がなかったから、人間が仕掛けた罠に引っかかりそうになったり、他の肉食獣に追われたりと毎日が戦いだったもんだよ。あと一歩のところで死にそうになったこともあったんだけど、最近になってなんだかんだいいながらこうやって生き続けていることが奇跡だと思うんだ。
それに兎は夜行性っていう性質があるんだけど、基本的に早寝早起きの生活サイクルをし続けて、なおかつ食べ過ぎ飲み過ぎなんていう不摂生な真似をしなかったから、この通り健康体を維持できるんだ。あとはどれだけこれを維持できるかにかかっているんだけど、ストレスを溜めないために悪戯をちょくちょくやっておかないと、とてもじゃないけど身がもたなくなっちまうってもんさ。
そんでもって妖怪兎の中で最年長であってリーダーをやっているんだけど、妖怪って奴は基本的に自分勝手で相手の話をロクに聞こうとしないから、私達がチームを組んでも基本的にはまとまりって奴がないもんさ。私達が集団でチームを組むスポーツをやったら、絶対に目も当てられない状態になっているだろうよ。身体能力で劣る人間相手でもね。
そりゃあたしもどこの馬の骨か知らない奴に傲慢な口調で命令されたら、いくらなんでもそいつを殴りはしなくても絶対に反抗的な態度を取り続けちまうだろうよ。
まぁ…、なんというか…、厄介極まりない事に…、私の同居人の“あいつら”はどいつもこいつもそろいもそろって人の事を頭ごなしで命令してくるから、本当に性質が悪いったらありゃしないね。そのうえ“あいつら”ときたら、自分達が月出身で穢れがないと思っていて、地上出身のあたしらを軽蔑視してくるんだ。
あたしは“あいつら”の過去に何があったかなんて知っていないし、ましてや知ろうなんて思っちゃいないし、余計な詮索をしようだなんてこれっぽちも思っちゃいないよ。だけど今は地上に住んでいるんだから、ここで暮らすルールという奴を守っても割らないと何かと困るね。
月出身に人たちがどういう理由があって穢れある地上に来たかなんて知る由もないけど、たぶんとんでもなく悪いことをして何らかの罪を背負ってしまったんだったら、あたし達地上に生きるものを必要以上に悪く言う資格はないね。
こんな奴らと一緒に居続けたら普通の神経をしてたら身がもたないから、溜まったストレスをどう解消するって?馬鹿な人間どもを上手く騙して金目の物をさりげなく奪ったり、ブービートラップに引っ掛けたりして痛い目にあわせるのさ。
それに私がお賽銭詐欺や架空請求の類をあたしがやると、どういうわけか人間達はその気になって馬鹿みたいに支払ってくるし、あたしが幸運の白兎だからみんな私を捕まえようと躍起になるんだけど、あいつらときたら私が逃げる時にあらかじめ仕掛けたブービートラップに勝手に引っかかってくれるんだ。死にそうな顔をしている人間どもを見ると笑いが止まらないねぇ。
こう見えてもあたしって結構商才があるから、兎の遺伝子をいじくって“カラー兎”を世の中に売り込んでみるとこれが“ペットブーム”と上手くかみ合って大儲けもいいところさ。もちろん稼いだ金は全部あたしのものだから、あいつらに一銭たりともくれてやる考えはないよ。金が欲しいなら、自分で稼げってんだ。
―2― 永遠亭の階層社会と住人達の紹介
永遠亭の住人は“穢れなき月人”が二名と、“偉大な玉兎”が一羽と、“穢れきった凡庸な妖怪兎”の少数と、“人型にすらなれない普通の兎”の多数で構成されているんだ。
ちなみにヒエラルキーはこうなっていて、“穢れなき月人”>>>>>絶対にどんなことがあっても越えられない壁>>>>>“偉大な玉兎”>>>>>越えられない壁>>>>>“穢れきった凡庸な妖怪兎”>>>>>天地の差がありぐらいの越えられない壁>>>>>>>“人型にすらなれない普通の兎”の順となんだよね。
端的にまとめるなら、“穢れなき月”>>>>>どんなに必死になって努力しようが絶対に越えられない壁>>>>>“穢れきった地上”の構図が自然と必然的に出来上がっているんだよ。
私から見たらどうしようもなく愚かじみた代物に見えてくるけど、支配階層にいる月人と玉兎がこう思い込んでいるからとてつもなく性質が悪い代物だね。まっ、結局は“月人”>>>>>絶対に越えられない壁>>>>>“兎”であることには変わらないんだ。
永遠亭の財政状況は芳しくないから、恐ろしく残酷なことに人型になれない哀れな兎が姫様と師匠の食料になってしまうんだ。私は姫様と師匠に兎鍋を差し出す時に、若い兎を殺さなくてはならないと思うといつも身を引き裂かれる思いがしてならないよ。確かに姫様と師匠についてきて良かったこともあるけど、それと同じく同胞に対し申し訳ない思いがしてならないんだ。それでも自分が生きていくために我慢はしなくちゃいけないって割り切らないと、とてもじゃないとやっていけないけど。
それに地上の兎で姫様と師匠にお目通りできるのは地上の因幡のリーダーをやっている私だけで、他の兎は直接言いたい事があってもあたしか鈴仙を通じないといけないっていう事がおかしいんだけど、これが永遠亭のやり方みたいだからあたし達は譲歩するどころか全てを受け入れないといけないわけ。
―3― 永遠亭の名目的当主である蓬莱山輝夜の紹介
これから永遠亭の住人達の紹介をするんだけど、桃色の上着と赤いスカートを穿いていて、床に届くほどの長い漆黒の髪の毛をしているのは永遠亭の名目上の当主である“蓬莱山輝夜”さ。こいつは永遠亭を乗っ取ったその次の日からずっと部屋に引き篭り続けてるんだけど、何をしているのかさっぱりわからないんだ。
こいつは元月の姫君なのか、とんでもないぐらいの我儘でわけのわからない事を言い出したら最後。永遠亭の住人が総出でこいつの言いだした行事に付き合わなきゃいけないから、相手の事情の考慮に入れないでくれるから本当にたまったものじゃないね。まぁ、何をすればいいのかわかっていないみたいだから、やりたい事を探す事をやれと言ってもアレだけ生きているのにロクに結果を出していないんじゃ、本当に救いようのないダメ人間だと私は思うね。
見た目は姫様だから美人と可愛らしさと品格を兼ね備えたタイプで、体系はややスレンダー型のモデル体型だから見た目は非常に麗しいんだけど、性格は酷いの極みをいったもんで、凄まじく我儘で自分勝手でなおかつ傲慢不遜なうえに、好奇心旺盛で興味を持った事に周りまで巻き込んでしまうから本当に性質が悪いよ。
そのうえ頭の中がお花畑で出来ているから、いつでもどこでも誰に対してもお姫様的振る舞いをしてきて会話にならないなんて日常茶飯事ってわけ。言うまでもないけど、出来る限り余計な刺激をしないようにしておきたい相手だね。
戦闘能力は私のような妖怪兎が束になっても歯が立たないうえに、見た目深窓のお嬢様でも中身はとんでもない怪力の持ち主で、分厚い鉄板をはるか遠くに放り投げたり力任せで相手の体の一部分を引き裂いたりするんだ。あたしが永遠の命を持っていたとしても、こいつとは喧嘩したくないよ。なんでかって?そりゃ、痛い目に遭うのが嫌なだけさ。
詳しい事はわからないんだけど輝夜はどういうわけか死なない身体を持っていて、輝夜と犬猿の中である“藤原妹紅”とほぼ毎日壮絶な殺し合いをして酷い時には体が塵になってしまうのに、いつの間にか元通り再生されてしまうんだ。こんな化け物と殺し合いをしたんじゃ、いくら命があっても身がもたないね。
―4― 事実上の当主、八意永琳の紹介
銀色の長髪を密網にまとめていて、赤と青を基調としたヘンテコな“白衣”らしき服を着ていて、身長は永遠亭の住人の中で一番高く、スタイルも抜群によくもの凄く色っぽくて、人里の男連中が揃って嫁にしたいほどの美人で、そのうえ天才ともいえるほど凄く頭がよく、かつて“月の英知”と呼ばれていて、“月”の薬学と医療技術のすべてを習得しているのが“八意永琳”さ。
“蓬莱山輝夜”が名目的な当主なら、この“八意永琳”は事実的な当主で永遠亭に八意診療所と呼ばれる医療機関を立ち上げたところ、幻想郷にまともな医療機関が今までなかったから、ものの見事に大ブレイクしたわけよ。
だけど天はこれ以上永琳に才能を与えないのか、それとも何か知ら欠点を与えておきたかったのかは知らないけど、商才が致命的になくなおかつ金に無頓着なので信じられない位安い金額で患者を診るんだ。
“詐欺兎”と呼ばれているあたしには、永琳の経営方針が理解できないし、患者から多少ボッタくってもいいのにそれをしないのが理解できないね。わたしが永琳だったらもっと高い値段を患者に支払われるさ。
今更だろうけど騙された奴が悪いんだから、目いっぱい騙して吸い取れるだけ吸い取っておいた方が絶対に得をするだろうよ。
才色兼備とは永琳の為にある言葉だと私個人の思ってしまうのだが、実際のところ何でもかんでも自分の都合のいいように思いこむマッドサイエンティストで、その上性格は傲慢で自分が誰よりも優れていると本気で思いこんでいるから、なるべくなら関わりあいになりたくないし必要以外の事を話したくない相手だね。まぁ、あたしの様に可愛らしいうえに嫌われないように振る舞っておけば何ら問題はないんだけどさ。
あたしが永琳の事を師匠と呼ぶのは、一応永琳の下で医学と薬学を学んでいるだけであって、私が永琳から“月の技術”とやらを学ぶのと、永琳があたしから“地上のコネクション”を得ることでお互いがいい感じでギブアンドテイクの関係が出来るわけ。
まぁ、永琳師匠にはあたしの考えていることなんてお見通しだろうけど、あたしのコネがなかったら幻想郷のパワーバランスの一角を担う永遠亭は存在しないことを忘れてもらっちゃ困るよ。
あと本来の永琳は輝夜レベルの相手なら子供扱いするぐらい強い筈なのに、どういうわけかその強大すぎる力を押さえつけているような振る舞いをしているんだ。たぶん、輝夜と妹紅がタッグを組んでも勝てないんじゃないかなと思わされるね。
そういえばいつか永琳が全身大火傷で所々が血まみれになった日があったんだけど、どういうわけか翌朝傷ひとつない状態になったんだ。こいつもとんでもない化け物だから、どんなことがあっても怒らせたらいけない相手だな。
不思議な事に永琳は輝夜より遙かに年上なのに、その美貌とスタイルは以前変わらないから多分輝夜と同じく死なない人間だと思わされてしまうね。まぁ、口調と雰囲気から長い時を生きている事が窺えるんだ。
―5― 唯一の月の兎、鈴仙・優曇華院・イナバの紹介
永琳師匠のもう一人の弟子で、永遠亭唯一の月の兎の“鈴仙・優曇華院・イナバ”は、ピンク色をした長ったらしい髪の毛をしていて、ブレザーとミニスカートを穿いていているんだけど、これが月の兎の制服で着ることができるのは一部のエリートだと本人は言ってるのに、下手したら下着が見えそうだからあたしはあんなものを穿こうとは思わないよ。
こいつの本名はとにかく凄く長ったらしい名前で、名付け親の永琳師匠が略して“ウドンゲ”って呼んでいるから、幻想郷の住人どもはみんな略して“ウドンゲ”とか“れーせん”とか呼んでいるんだ。本人は師匠以外に“ウドンゲ”と呼ばれたくないみたいだけど、吸血鬼の“レミリア・スカーレット”には“れーせん”は弄られキャラとしての運命を受けてしまったんだから、現実を素直に受け入れるしかないといってたね。(ちなみにあたしもれーせんって呼んでいるよ。)
ちなみにれーせんの愛用している下着は、幻想郷の弾幕少女があまり履かないショーツを着ていて、しかも青と白の縞模様の柄ものの奴にバックプリントがついた子供っぽいのを好んでいるんだ。あたしと違って見た目は結構色っぽいのに、この子供っぽいものを好むセンスは笑っちまうものがあるね。
それに幻想郷の弾幕少女がミニスカートをはかない理由は、少しでも隙を見せると鴉天狗のパパラッチにパンチラ写真を盗撮されてしまうのを嫌っていて、新聞や週刊誌に載せられ周りの男たちに妙な視線をされ嫌な思いをしているのに、こいつも何度か被害に遭っているのに性懲りもなくミニスカートに拘るんだから本当に呆れて笑っちまいそうだよ。
鈴仙は自分が月の兎だという自覚が強くて、あたしのような地上の兎をいつも見下しているんだけど、目上の姫様や永琳師匠にいつもヘコヘコしていてみっともなく見えるんだ。“虎の威を借りる狐”という諺は“れーせん”の為にあるって思い知らされたよ。
だって、あたしら地上の兎に命令をする時なんていつも頭ごなしで命令してくるし、何かとは意見を言ったり反抗的な態度を取ったりすれば、姫様と師匠の名や自分が月の兎で偉いんだと言ってくるんだから、正直言ってしまうと腹が立っちゃうな。
戦闘能力と知性は私のような地上の兎よりはるかに高い水準にあるから、一応妖怪兎のリーダーに君臨しているんだけど、人徳や魅力がロクにないから実際のところ誰一人たりともまともに言う事を聞かないのさ。そのくせ自分はリーダーで偉いと勘違いしているから、あたしら地上の兎はいつも笑いを隠すのに必死なのさ。
最年長のあたしが妖怪兎どもを掌握してないからこのような事態になったって?とんでもない!妖怪って奴は基本的に自分勝手で自分の都合しか考えないから、集団でまとまって何かをしようと思わないし、力の強弱問わず誰かに懐柔されるのを良しとしないんだ。いまさら妖怪兎連中をまとめようと必死になっても、人の話なんてまともに聞かない奴らに何を言っても無駄なだけ。
“れーせん”が必死になって地上の兎連中をまとめようとしても、いつも“れーせん”が私ら地上の兎を差別視しているから、誰も本当の意味でリーダーとして認めていないし、事実上リーダーなんて存在しないんだよね。私のいう事を聞かないのに、誰が“れーせん”のいう事を素直に聞くんだい?たとえ聞いたとしても、嫌々ながらやっているのが関の山ってところさ!
あとれーせんの瞳を見続けるとどういうわけか気が触れそうになるみたいで、視界がピンボケしたり歪んだり意味もなく叫びたくなるから嫌なもんだね。まぁ、れーせんの性格上人間が苦手で対人コミュニケーションに致命的な問題点があるということもそれに拍車をかけるもんだから、永琳師匠の薬売りの仕事をやらせてもノルマが上がらないわけ。これは師匠の教育方針のミスと、れーせんの適性がないことをやらせている時点でダメなんだけどね。
―6― 永遠亭のいつもの夕食
「えーりん。兎鍋は飽きたから、明日はすき焼きを食べたいわ。」
あーあ、輝夜の奴が兎鍋を食べながらまた無理難題の我儘を言ってるね。永遠亭は慢性的な金欠病に悩まされているのに、この世間知らずのお嬢様ときたら空気を読まず自己主張に走ってくれてるから嫌になっちゃうね。
「申し訳御座いません姫様。我々の生活費は現状でいっぱいいっぱいなので、すき焼きを用意することができないので、兎鍋で勘弁してください。」
永琳は輝夜の我儘になんとかして応えたいと思っているんだけど、永遠亭の財政状況はハッキリ言って危機的な状態だから、普通の兎を潰して兎鍋で我慢するように言うんだ。
迷いの竹林で取れる筍を極力確保して、なおかつあたしのような妖怪兎に米とそのほかの野菜を作らせてエンゲル係数の引き下げを狙っている有様なんだ。
「えーりんのケチ!なんで私達はすき焼きが食べれないのよ!すき焼きはおろか焼き鳥ですら口に出来ないうえに、その上兎鍋で我慢しろですって!?こんな淡白で美味しくない肉を食べるより、もっと脂が乗って濃厚で味わい深い肉を食べるべきだわ!」
兎の肉質にケチをつけてきた輝夜は永琳に牛肉や豚肉や鶏肉を出すように言ってきたけど、いかんせん金がないからそれは実現不可能ってわけよ。だって、永遠亭の金庫はほぼ空っぽなんだからさ。
あたしも兎の肉質と食感を問われるとあんまりいい気分がしないんだけど、食べれることに感謝をしないといけないと思うね。あたしだって不味い人参を食べても、生きるためには仕方ないと割り切って残さず食べてきたんだから。
「姫様!師匠!兎を食べるなんて野蛮なことをしないで下さい!姫様と師匠は神社の巫女達と一緒なんですか!あそこの宴会はいつも兎鍋を出してくるから腹ただしくて仕方ないのに、姫様と師匠もあいつらの仲間なんですか!?」
れーせんが兎鍋を食べている輝夜と永琳に抗議をしたね。一応わたしとれーせんは兎角同盟を結んでいる間柄なんだけど、リーダー気取りでヤル気満々のれーせんに対しあたしはあってもなくてもどうでもいいやって感じさ。だって、必死になって努力をしてもそれが報われるわけじゃないもん。幻想郷において兎は捕食される対象でしかないから、兎鍋を撲滅すること自体が絶対に無理だという現実を受け入れるしかないね。
「あんたの薬の売り上げが悪いからいけないんでしょう!?月の都から逃げ出した臆病者の玉兎の分際で、私に向かって歯向かおうっていうの!?」
輝夜はれーせんの薬の売り上げが悪い事をすべての元凶と見なして、逆切れしてきたね。おー、怖い怖い。
「えーりん!この馬鹿兎の躾がなってないんじゃない!?」
バチッ!
輝夜が不機嫌になっちゃったから、思いっきり永琳にビンタをしたね。これぞ責任転嫁って奴で、生活費を稼ぐのに四苦八苦している原因が、ことあるたびに無駄遣いをする輝夜自身にあるのに、永琳の薬の売り上げと診療費の稼ぎが悪いから永琳になすりつけやがったよ。
輝夜はれーせんが自分のペット扱いの筈なのに、永琳師匠の弟子をやっているだけでなく拾ってやった自分より永琳師匠を慕っている事が気に食わないんだ。
「ひ、姫様申し訳ありません!ウドンゲの躾がなっていない私を死罪に処してください。」
死なない人間を罰するのに、殺そうとしたって無駄だという突っ込みはあえてしないで、私はこの場をしのぐために何も言わないでおくんだ。まぁ、これもいつもの事だから気にしちゃいけない。
案の定師匠もれーせんを殴ってから無理やり土下座をさせた後に意味深な視線を向けたんだけど、たぶん間違いなく改造手術とかやらされそうなフラグが出来てしまったと思うよ。
傍から見たられーせんが可哀相に見えるけど、幻想郷にやってきてそこそこの時間がたつというのに、今なおも地上の住人たちとうまくコミュニケーションを取れないれーせんが悪いから、あたしはあえて何も言わないで不味いご飯を黙々と食べ続けるだけさ。
―7― 永琳師匠の真夜中お仕置きタイム
夕食の後、深夜25時を少し過ぎた時に私とれーせんは永琳師匠の書斎兼実験室に呼び出されると、
「ウドンゲ!新薬ができたから、いつものように飲んでほしいの。お願いできるかしら?」
「てゐ!あなたは私の助手をやって頂戴!」
永琳師匠はれーせんとあたしに新薬の実験につきあうように言ってきたんだけど、これは永遠亭のヒエラルキーによるとれーせんとあたしにとって姫様と師匠の命令は絶対服従を意味するので、れーせんには「ウドンゲ!新薬ができたから、例の如く飲みやがれ!絶対だぞ、わかったな!?もしお前が私に逆らったらお前をここから追い出すそ!」と言ってるもんだから、
「わかりました。お師匠様、私はこの薬を何錠飲めばいいのですか?」
れーせんはあからさまに嫌そうな顔をして師匠にどうすれば聞くんだ。新薬の錠剤の色は左から白と黒と緑の縦縞の組み合わせで、見た目は今まで見たことのない代物だったから、飲むのに抵抗があるだろうね。
「そうね。今日はこの薬の効き目をテストしたいから、ためしに5錠ぐらい飲んでも欲しいわ。」
永琳師匠は椅子から立ち上がるとれーせんに無理やり薬を飲ますんだけど、これもいつものことでこれかられーせんの身に起こる超常現象ですら、現状においてもはや日常レベルの出来事なんだ。
永琳師匠はれーせんをベッドに寝かせたと共に全身に拘束具をつけ身動き一つできないようにしてから、例の錠剤をアルコールで溶かしそれを注射器に入れたんだ。
「か、体が…、全身が焼けそうなぐらい熱いですっ!痛い痛い痛い痛い!し、師匠!な、な、な、何の薬なんですか、これっ!死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ!誰か助けてっ!誰か助けてっ!」
れーせんが新薬の入った液体を注射されると、信じられない事に全身からものすごい勢いで紫色の汗を紫色の涙を滝のように流しながら、悲鳴を上げ続けたんだ。
師匠の書斎兼実験室はれーせんの体臭と薬品臭が混ざって鼻が曲がりそうなとんでもない強烈な臭いがしたね。私も思わず鼻栓をしてしのごうとしたけど、どうやら私の口の中にまで悪臭がこびりついちまったよ。
「ウドンゲ!あんたの薬の売り上げが悪いから、私はわざわざお仕置きをしなきゃいけないじゃないの!」
「それに今日の夕飯の時あんたのせいで私は姫様にビンタをされたんだからね!この責任とどう取ってくれるの!?私の美貌を台無しにしてくれたウドンゲの分際で、姫様に口答えするなんて生意気なのよっ!」
バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!
永琳師匠はいつの間に鞭を取りだすと、全身拘束されているれーせんに向かって叩きつけたんだ。
「それにウドンゲに配置薬業を任せると、どうしていつもいつもノルマが上がらないわけ!?先月も、先々月も、その前の月も、ずっとずっとずっとずっとその前の月も…、過去一度もノルマに達成した事がないじゃない!」
確かに永琳師匠の作るお薬の効き目は人間妖怪ともに効き目が抜群で、程よく副作用がなく安全なことこの上極まりなくその上余計な苦みがないから、子供ですら非常に飲みやすい代物ときたもんだから、永琳師匠は自分の作る薬に絶対的な自信を持っているんだ。
「し、師匠…。ご、ご、ご、ご、御免なさい!次からはちゃんとノルマを上げますから、堪忍して下さい…。」
れーせんが師匠の鞭で叩きつけられた部分はミミズ腫れみたいになって、凄く痛々しく見えるんだけど師匠はそこを撫でるようにして触ったんだ。
「いっ…、ぎゃああああああっ!!!!!あああああっ!!!!!ああああ、ああああああっ!!!!!」
やっぱり師匠はれーせんが姫様にやった事と、薬の売り上げがノルマに達していないことに腹を立てているので、
「私の薬を売るなら、営業が下手糞なバカでも普通にやっていたら確実にノルマを達成できるのに、ウドンゲにやらせるとどうしてこうなるのかしら…。本当に理解出来ないわ!」
「来月ノルマを達成できなかったら、兎鍋にすることも考えておかなきゃいけないわ。こんな役立たずを弟子に取った私が嘆かわしいったらありゃしない!」
バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!
と、永琳師匠はれーせんを激しく鞭で叩きつけながら激しく罵倒したんだ。
「ご、御免なさい師匠。今月は絶対にノルマを上げますから、これ以上乱暴はしないで下さい。」
れーせんは自分の言動が悪かったことを認め、許しを得るためにみっともないぐらいに必死になって永琳師匠に謝り続けたんだけど、
「ノルマを上げると言っていつもいつも結果を出せないあんたは信頼ならないわ!」
永琳師匠の堪忍袋の緒が切れちまったもんだから、完全に怒りで我を忘れて“不肖の弟子”に徹底した“おしおき”を施しちまったよ。あぁ、怖いねぇ…。この人を怒らす事ほど愚かじみた物はないと改めて思い知らされたね。
―8―
「てゐ!なんであんたは姫様と師匠に兎鍋を食べさせる事をするのよ!」
バギッ!
師匠の“お仕置きタイム”から解放されたれーせんはあたしの頬を殴りつけてきたよ。これもいつものことで、れーせんは師匠のお仕置きから解放されると必ずあたしに八つ当たりしてくるんだ。
「ぐっ…」
あたしだって我慢ならないけど、れーせんと戦っても勝ち目はないから大人しくしているだけさ。本当は殴り返してやりたいのに、それができない腹ただしさをグッとこらえてるしか選択肢はないんだ。
これもあたしがここで生きていくための術で、負ける戦いはしない主義を貫いてきたからここまで長生きで来たってもんよ。現にあたしより年下でも好戦的な奴は信じられない位早死にしているしね。
「あんたは私と兎角同盟を結んだのに、なんで兎鍋の撲滅運動に力を注がないのよ!理由を言いなさいよねっ!」
バギッ!
「幻想郷で兎鍋は定番だから、これからも食べられ続けると思うよ。だかられーせんがどんなに頑張っても無駄な努力だと思うんだ。」
あたしは兎鍋がこれからも食べ続けられるとれーせんに言ってみたけど、
バギッ!
「何考えているのよっ!そんなんだから、今なお兎鍋が幻想郷の食卓にはびこり続けているの!てゐ、今日こそあんたを修正してやる!」
バギッ!
「私たち兎角同盟は、幻想郷の食卓から兎料理を撲滅させることじゃない!まずは永遠亭の悪臭を排除することからすべてが始まるのよ!それには姫様とお師匠様の考えを改めてもらわないと困るし、私達が最大限の努力をしないといけないじゃないの!」
バギッ!
「私が姫様と師匠に怒られるのも、薬売りのノルマが上がらないのも、永遠亭の財政が苦しいことすべてあんたのせいなんだからねっ!そこのところ本当にわかっているの!?」
バギッ!
どうやらあたしがわかりましたという前に、意識を失っちまったようだね。あ〜あ、これでまたれーせんに修正という名の嫌がらせを受けるんだけど、あたしはこれっぽちも悪いとは思ってないしそもそも姫様が自分で稼がないのに無駄遣いをすることに問題があることに変わりはないよね。
この苛立ちをどこにぶつければいいのか本当にわからなくなるのは、間違いなく月にいた連中のせいなんだよね。明日は人里付近で詐欺という名の募金活動をしてから、竹林に適当にブービートラップを仕掛けておいて、あたし専用のカラー兎研究所に行って金の兎と銀の兎の研究成果を見ておこうじゃないの。
―あとがき―
またブラック企業物をやってしまいました。今回やるのは永遠亭を杜撰な環境にして、そこで狡猾かつしぶとく生きている因幡てゐさんの視点で進めていきます。
誰の見解で話を進めるのかさんざん迷ったのですが、姫様と師匠とウドンゲさんの見解だと面白くもおかしくもないので、それならてゐさんにしようと思いました。
永遠亭を杜撰な環境にしようと思ったのは、東方三月精で永琳師匠が「このままでは生活が」というセリフがあったからです。
イル・プリンチベ
作品情報
作品集:
26
投稿日時:
2011/06/04 02:05:42
更新日時:
2011/06/04 11:05:42
分類
因幡てゐ
永遠亭
ブラック企業
もうこの時点でクズキャラのオンパレードな展開はわかったので
期待にそぐわぬ描写を期待しますwwwwww
幻想郷最大の医療機関。その内幕を見事なまでにド汚く書いてくれましたね〜。
永遠亭もやがて内部崩壊するのかな?
続きを、胃を痛くしながらお待ちしております。
私の中のてゐ株が僅かにあがりました。
月の民は地上の民を蔑視している、とはっきり公式で明言された以上(そして未だその意識を捨てていない)、実態は案外こんなもんかもしれない。
……てか他のブラック企業シリーズでも思ったけど、何百〜何千年も生きてるんだからもっと精神的に成熟しないものか。いや、長く生きてるからこうなのか?
この永遠亭は、オーナー社長が経営に無関心で会社のことは好きなときに資金を引き出せる財布くらいに思っていて、実際の経営は同族の雇われ役員に丸投げ。
雇われ役員はときおり社長からの無茶振りに悩まされるが、普段は社長の無関心をいいことに会社を私物化する独裁者。自分こそ法で労働法なんかクソ喰らえなイメージなんだろうか?
オーナー社長>>>>>株主の壁>>>>>雇われ役員>>>>>経営者と労働者の壁>>>>>名ばかり管理職>>>>>縁故採用の壁>>>>>正社員≧不当解雇や労災隠しが常態化しているため大して変わらない≧非正規雇用労働者
オーナー社長:輝夜、雇われ役員:永琳、名ばかり管理職:鈴仙、正社員:てゐ、非正規労働者:因幡のウサギ達
他人の作品なのに、勝手に妄想が膨らんでくるwwwwww
永琳のシュウ子音は地上だよ