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『鏡』 作者: ゆう宮杏
――からん、からん。
ドアに付けられたベルが鳴る。
「こんにちは、霖之助さん」
霊夢はにっこり笑いながら、ぺこりと軽く会釈をした。
「…なんだ、君か。で、今日は何の用だい?」
「別に用はないけど…。って、用が無いのはいつもの事じゃない」
そう言って、ふたりは笑いあう。
「あら、この鏡…なんだか素敵ね」
そう言って霊夢は、棚の横に立てかけられている、
ひとかかえほどの大きさの紫色の鏡を指差した。
「それかい?…それはたしか、数日前に魔理沙が拾ってきた物だな。
けっこう小さな傷が多いから、もしよければそのまま持って帰ってもいいよ」
それを聞いた霊夢は、目を輝かせながら、
「…え、本当!?うれしいわ!うちの鏡、この前割れちゃったのよ。…ありがとう霖之助さん!」
そう言うと霊夢は軽くおじきをして、さっさと帰っていった。
途中、鏡をドアか何かにぶつけたようで、ゴンッと鈍い音が響いてきた。
「ふふふーん、ふーん♪」
ご機嫌に鼻歌を歌いながら、霊夢はその鏡を取り付ける。
紫の鏡は、和風の部屋の中では少し浮いていた。
鏡に映っている夕日が、霊夢にもう夕方なのだ、と思い出させた。
***
次の日、霊夢は着替えを済ませた後、くしを持って鏡の前へ立った。
そして、髪をとかしていると、ふとあることに気づいた。
「…ん?なんか……少し…太った?」
昨日鏡をのぞいたときよりも、ひとまわり顔が大きくなった気がする。
そういって自分の頬をつまんでも、特に変わった様子はなかった。
「……気のせいかな」
口ではそう言いながらも、内心不安になった。
――最近ちょっと茶菓子を食べ過ぎてたかしら?
いつものように、魔理沙が家にやってきた。
「…でさー、その後パチュリーがぶっ倒れてさ…」
気になった霊夢は、思い切って聞いてみることにした。
「あのさ…魔理沙」
「ん?なんだよ、霊夢」
「え…えっと、……か、鏡!持ってない!?」
恥ずかしくて苦し紛れに発したのは、なんだか訳の分からない事だった。
「え?あぁ、あるぜ」
そういって特に気にする様子もなく、魔理沙はポケットから手鏡を取り出した。
ピンク色の、魔理沙が持つにしてはとてもかわいらしい鏡だった。
「あ、ありがと」
そう言って霊夢は自分の顔をのぞいた。
「……あれ?」
そこに映っていたのは、昨日鏡で見た自分の顔だった。
――おかしい。
「霊夢、どうした?」
魔理沙に言われて、霊夢ははっと我に返った。
「いや…なんでもないわ。鏡、ありがとう」
――たしかに、あの鏡で見たときは太って見えたのに。
霊夢は魔理沙を見送った後、いそいで鏡の前に行き、鏡をのぞいた。
やっぱり、霊夢の顔は少し太って見えた。
***
その翌日の朝。
…霊夢は、いつもより少しだるかった。
どうせ風邪だろう、と思い霊夢はふとんから起き上がる。
見ないようにとは思っても、やっぱり人はちょっとした興味が出てしまうものだった。
「…まぁ、気のせいだったんだよね」
そういって鏡の前に立つ。
…そこには、しわだらけの醜い老婆が映っていた。
「いッ…ひぃ、いやぁああああぁああぁあああああああああ!!!」
自分の顔に触る。
昨日までと変わらない、感触。
「えッ…あぁ…なん…で……」
鏡の中の霊夢は、しわだらけの顔をさらにしわくちゃにして泣いていた。
――その後、何をしたのか覚えていない。
でも、気がついたらふとんの中で眠っていた。
近くに放ってあった熱計りで熱を計ったら、39度だった。
風邪薬を飲む気力もなく、そのまま死んだように眠った。
瞼の裏では、ずっとあの場面が繰り返し再生される。
醜い老婆の姿が、目に焼きついて離れない。
…
ここはどこ?
…あぁ、夢の中。
あれ、何で動けないんだろう。
何で声が出ないんだろう。
何で視線をそらせないんだろう。
目の前に私がいる。
鏡に映った、わたしが。
じっと見ていたら、気がついた。
少しずつ、でも確実にわたしは成長しているのだ。
ついさっきまで20代くらいだったのに、もうしわが目立ってきた。
しわがどんどん増えて、背も比例して小さくなっていく。
服ももう、ぼろぼろになっている。
やがて、しわだらけになったわたしは腐り始めた。
虫がわたしの体を食べていると思うと、気持ち悪くて吐きそうになる。
私はふと感じた。
――本当に夢?
大丈夫、こんなの夢に決まってるよ。
だって、夢じゃなかったらこんな風に私が腐っていく様を見るわけ無いし。
でも、じゃあ何でいつまで経っても夢が覚めないの?
何で体が動かないの?何で声が出ないの?何で視線をそらせないの?
そう思った次の瞬間、腐っている途中だったわたしは、一瞬にして骨だけになった。
目があった場所はぽっかりと穴が空き、その奥には闇が見えるだけだった。
……あぁ、なんで私は、自分の死後を見ているんだろう。
――その時、体が開放されたように感じた。
叫ぶ気力も失せて、私は吐しゃ物をそこらじゅうに撒き散らしながら倒れた。
***
――ここはどこ?
はっと目が覚めた。…いつも通りの、朝。
部屋に差し込んだ朝日は、いつものように霊夢をさわやかな気持ちにはさせてくれなかった。
――本当に嫌な夢だった。その割には、冷や汗らしき物を一切かいていなかった。
あの紫の鏡のあった場所に行くと、そこはがらんと空いていた。
今度は鏡じゃなくて別の物を取り付けよう、と霊夢は思った。
「おーい、霊夢ー!遊びに来たぜー!」
縁側の方から魔理沙の声が聞こえた。
どうせお茶をたかりに来ただけだろう、と思いつつ、霊夢は縁側の障子を開けた。
「うわぁあああああああああああああああああああああああッ!!!化け物ォッ!!」
…魔理沙が驚いたのも無理もない。
障子の向こうから出てきたのは、ただの動く骸骨だったのだから。
どうも、ゆう宮です。
次回は…未定ですorz
ゆう宮杏
- 作品情報
- 作品集:
- 26
- 投稿日時:
- 2011/06/04 13:50:49
- 更新日時:
- 2011/06/04 22:50:49
- 分類
- 霊夢
- グロ無
霊夢の夢なのか?
鏡の夢だったのか?