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『Recurring Nightmare』 作者: スレイプニル
不老不死(ふろうふし、英: Eternal youth and immortality)
「永久に若く、年を取らないこと(不老)」と「いかなる傷、打撃、病気、苦痛にも耐えられる状態(不死)」
穢れ(けがれ、英:disgrace)
時間・空間・物体・身体・行為などが、理想ではない状態・性質になっていることを表す神道の宗教概念
拷問(ごうもん、英:Torture)
被害者の自由を奪った上で肉体的・精神的に痛めつけることにより、加害者の要求に従うように強要する事。
―――the immortality of the soul
―――『蓬莱の薬』
その中で『不老不死の薬』というものがある。
劇薬ではあるが、用法用量を正しく飲めば、永遠の若さと永遠の命を得る事が出来るという秘薬だ。
人間は有限の時を恐れ、栄華が崩れるのに怯え、様々な場所へその不死の薬を探して回った。
だが、誰もがその薬を見つけることが出来ず死んでいった。
やがて人は自分たちの愚かさに気づき、誰もが不老不死の薬などというものを探すものは居なくなった。
しかし、不死の薬は存在していた。
月の都と呼ばれる異界の土地。人智を超えた知恵と技術を持ち得た者達。
だが月の叡智とも言われる科学者の多くは不老不死の薬の研究をするものは居なかった。
理由は至極簡単だ。「穢れが生まれる」からである。
不老不死になるということは道から外れるという事であり、科学者の中ではその研究をするものを愚かな者と呼び徹底的に迫害した。
殆どの不死の薬の研究を行っていた科学者達は迫害により死んだり、精神的に追い詰められ異常をきたしたものすらいた。
だが、その中で
伝承に深く深く残るその薬を作った者がいたのだ。
その者の名前は――――
混濁した意識
目を開ける。
暗い。
意識はまだはっきりしない。
ぼやけた目が周りを見回す。
材質も良く分からない壁や床。
分かるのはロクな照明は使っていないという事だった。
動こうにも手と足が鎖でキツく縛られて動けなかった。
「―――か…」
重苦しい男の声が聞こえる。
しかし見回しても喋っている人はいない。
「―――聞こえるかと言っている。」
意味が分からない。
「―――罪人の処罰を決定する。」
罪人?誰が?
「―――罪人『八意永琳』、不老不死の薬を禁忌と分かっていながら作成したことの罪、月法第67843条‐256項『薬物使用の扱い』の482章56番『不老不死の定義』及び同項482章57番『不老不死の薬製造の禁止』の法律違反により極刑に処す。」
八意永琳…、思い出した。それは私の名前。
「―――罪人『八意永琳』、何か意見はあるか?」
声を出そうにも、口がパクつくだけで声を出すことが出来ない。
「―――沈黙は肯定と取る。審問官の中で異議のあるものは」
異議無し! 異議無し!
異議無し! 異議無し!
異議無し! 異議無し!
異議無し! 異議無し! 異議無し!
異議無し! 異議無し!
異議無し! 異議無し!
異議無し! 異議無し! 異議無し!
異議無し! 異議無し!!
異議無し! 異議無し!!
異議無し! 異議無し!
異議無し! 異議無し!
異議無し! 異議無し!
異議無し! 異議無し! 異議無し!
異議無し! 異議無し!!
異議無し! 異議無し!!
異議無し! 異議無し!
異議無し! 異議無し!
異議無し! 異議無し!
異議無し! 異議無し! 異議無し!
異議無し! 異議無し!
異議無し! 異議無し!! 異議無し!!
異議無し! 異議無し!
異議無し! 異議無し!
異議無し! 異議無し!
異議無し! 異議無し! 異議無し!
大合唱のように浴びせられる怒号めいた声の数々
カツンと盛大に打ち鳴らされる乾いた木と木がぶつかり会う音。
「―――満場一致。罪人『八意永琳』、極刑【永遠刑】に処す。」
永遠刑…?
「―――これにて閉廷。」
その声が途切れると共に、目の前が真っ暗になった。
…………
…………
目を覚ますと、真っ白い景色が一面を覆った。
ここは何処なのだろう、さっきの暗い場所とは違う気がする。
そうすると、何処からかコツコツと足音が聞こえる。しかも1人ではなく複数のようだ。
どうやら後ろみたいだけど、ゴツゴツしい椅子に寝かせられた状態で尚且つ両手両足と胴体が鉄の輪を半分にしたようなものでその椅子に縫い付けられているから振り向くことが出来ない。
その足音は、頭上近くで鳴り止んだ。
「―――これより、罪人『八意永琳』の【永遠刑】を執行する。」
重苦しい男の声。
ぐいっと、男の太い両腕が頭の方から顎を押さえつける。
あまりの力強さに口が強制的に開いてしまう。
「―――刑‐第001【不老不死の薬の強制的投与】」
目の前に見覚えがある試験管が映る。あれは確か私が作った薬だ。
フタが開封され、試験管の口が私の口に接触する。
中に入っている液体が流し込まれ、喉を通し、食道を通過し…吸収される。
これで、私は不老不死になってしまった。しかし、これが刑罰なの…?
永琳は疑問に思った。
「―――穢れめ、罪人め、自らの薬で不老不死になる気分は」
重苦しい声が耳元を通り過ぎる。
何よ、飲ませたのは貴方達じゃない、私はただ作りたかっただけなのに
不老不死の薬っていうものが、科学者の間で禁忌とされているっていうから、それに挑戦するのが科学者ってものじゃないの?
私は悪くないのに、ただ作っただけなのに、それの何処が悪いの?
「―――穢れが」
穢れ?不老不死が穢れ?それが罪なの?
おかしいわ、貴方達おかしいわ。
「―――刑‐第002【腹部殴打】」
単調な声で、次の刑を述べる。
その声と同時に、椅子が持ち上がり一つの壁のようなものに張り付けられたようになる。
目に映ったのは5人か6人の白い服を着た男達、その中の屈強そうな背の高い男が向きあうように接近する。
「―――やれ」
奥に居た男がそう命じると、背の高い男が腰を深く落として体を捻った。
瞬間、豪腕から繰り出される打撃、その目にも留まらぬ速さの打撃は鳩尾に突き刺さる。
その威力が背中まで伝わり、体が逃げ場を探すように後ろへと飛ばされるが、数センチしか隙間はなく背中と椅子を打ち付け、2つの痛みが全身に響いた。
遅れて、胃の内容物が噴門をブチ破り、食道を遡り、口から吐き出され真っ白な床を汚く染め上げる。胃で溶けた緑基調の内容物は異臭を放っていた。
「―――臭い、臭い。穢れが出す者は臭い。」
真っ白い部屋によく響く舌打ち
「―――刑‐第003【頭部蹴撃(しゅうげき)】」
重苦しい男の声。
ひょろりとした男が私の目の前に立つ。
その男の上半身は先程の男と比べ物にならない程筋肉が無い。
しかし
トーン、トーン、トーン。
その男が小さく右、左と特徴的なステップを刻み始める。
ステップを刻むその男の足が異様に長い事に気づく。
ガスマスクのようなもので表情の見えない足の長い男のステップが何度か交わされた後、急に男の足が止まる。
キュッ、歯切れの良い音が床を鳴らした。
その音と同時にその長い右足を巻き込ませるように回し、その反動で、右足から光のようなものが放たれる。
グシャッとした音が左耳の内側から聞こえる。
左耳付近にジリジリとひりつくような痛みが走る。
そして続いて、男の無骨な足の感触…そしてその感触がちゃんと伝わる前に意識が途絶えた。
鎖が大きく揺れ、じゃらじゃらと音を立てる。
足の長い男は足を戻し、重い声を出していた男を一瞥すると後ろに下がった。
重い声の男は、今は意識が無い永琳に近づくと、太い腕でぐいっと顎を持ち上げた。
その頭の右側は砲丸玉を思いっ切りぶつけられたかのように醜くへこんでおり、美貌が無かったかのように血で汚れていた。
「―――死んだか」
男は永琳の目の光の濁りで死亡を確認して、ガスマスクのようなものの遮光板越しに、にやりと薄く笑った。
「―――………。」
男がじっとその顔を見据える。
数秒
ここは…?
永琳の目が開く。
目の前の映る吐瀉物と血溜まり。
あぁ、と理解する。
一度死んだのだと、死ぬ前の記憶が鮮明に鮮明に蘇る。
死んだ記憶はある。だが、痛みは無い。
そんな気持ちの悪い感覚に苛まれ、自分が本当に不老不死になったのだと、そして自分の研究に間違いは無かったのだと自分の実感した。
「―――やはり、成功していたか」
投げかけられる皮肉に、キッとここのトップであろう重い声の男を睨みつける。睨んでも、男の表情を読み取る事は出来ない。
それどころか男は、何やら他の数人の男達と二言三言会話を交わし、一斉に此方を見た。
「―――刑‐第004【短刀による開腹】」
トップであろう男の重い声が響く。
男達の中から男の中でも一番細腕の男が目の前に立つ。その右腕には刃渡り10センチはあろう直刃のナイフが握られている。
男が目の前に立ったと同時に、視界がぐるんと揺れ、拘束している台のような物が傾き、床と水平になる。
そして、ナイフを持った男が右側に立ち、右手を持ち上げギラリとした刃を見せる。
次に何をするか分かっている。私は息を少し吐く、震えているのが分かる。だが、不老不死なのだ。死にはしない。
着ていた白いシャツのようなものが脱がされ、丸く整った胸が顕になる。隠したいが両手が拘束されて無理だ。
良く研がれたナイフの切っ先が柔らかい右脇腹に少し触れチクッとした痛みが走る。
すぅっと、腹を右から左へと撫でるように切っ先を走らせる。
続けてブシュっとトマトを握り潰したかのような音が―――
声にならない痛み。
先程の言葉は撤回する。やはり痛い物は痛いのだ。常人なら一生に一度しか経験しない痛みを繰り返される感覚。
叫びたいが声が出ない。痛みの発散方法が無い為、痛みが内部で反響する。
ナイフはズブズブと内蔵をズタズタにしながらゆっくりと左へと進行する。
1o動く度に身体中に痛みが伝わり…ついには失禁してしまった。
ジョボジョボという放尿の音と、ザクザクという腹を切る音が同時に鳴り不揃いなハーモニーを奏でる。
丁度半分まで切られた所でナイフの進行が止まる。
じくじくとした痛みが津波のように続く中、ゆっくりとナイフを持った男を見る。ナイフを持った男は血一つ付いていなかった。
目が合わさったような感覚
歯切れ良い音と共にナイフが思いっ切り右へと切り開かれる。
同時に血が盛大に吹き出し、その後腸が強力なバネのように飛び出す。
べしゃっと、腸が股下までロープのように垂れ下がる。
意識が朦朧とする。
それもそうだ、麻酔も無しに開腹されている。これで精神に異常をきたさないのが凄いと私は自分を評価した。
目の前がガラスの曇りのようなもので覆われる。
プツリと、目の前が真っ暗になった。
「―――死んだ。」
トップであろう男が重い声で呟く。
「―――また生き返る。次の準備をしろ。」
周りの男達にそう命令し、下腹部が屑籠のような状態になっている永琳を見据えた。
あぁ、またか
ぼうっと、意識がロードされる。
痛みはない、不思議な感覚。
記憶を辿る。下腹部を見る。血に汚れてるが、傷は一つもなく綺麗なままだ。
バカバカしくなる。
これが不老不死というのか、死なないという事はとても便利だ。
だが、今の惨状はどうだ。痛みをずっと耐え続けるだけだ。
ただ作ったというだけで、何故こんな事にならねばならないのか。
声が出ないから、問い詰めることすら出来ない。
「―――起床確認」
重い声
あぁ、この男が憎たらしい。
「―――刑‐第005【鎚による腕部破砕】」
重い声。
シャリシャリシャリと、床を金属で擦る音が聞こえる。
私の腹をぶん殴った太い腕の男が何やら重そうな物を両手で引きずって此方へとやってくる。
長い鉄のような棒だ。しっかりと滑り止めの布も巻いてある。
その棒の先の先、成人男性の背丈の半分ぐらいあるであろうその長さの先。金属の筒がくっついている。
そこで理解する。鎚…つまりハンマーだ。硬い岩を砕くその金属の塊は棒の長さもあってとても重そうだ。
太い腕が棒の先端をしっかりと握り持ち上げる。その様はまるで処刑場の執行人のようだ。
ハンマーの打撃部分が天井が天井と水平になるまで持ち上がる。
一瞬の静止。
ゆっくりと、その打撃部分が左腕付近に当たるように角度を調節する。
周りの男達は全員無言でこちらを見ている。
男が棒の先端を一層強く握る。
ブォンという、重い金属を振り下ろす特有の音が左耳を刺激する。
ハンマーは一寸の狂いもなく二の腕を叩き潰し、グシャりとボキリと言う音が同時鳴り、尋常じゃない痛みが左腕を中心に発生する。
痛いという言葉がこの数秒で何百回と体の内で反響する。
発痛物質が駆け巡り、ズキズキと左腕を刺激する。それに伴い口の呼吸が荒くなっていくのがよく分かる。
血が、ハンマーの柄と打撃部分に付着し、飛び散った分は床などにこびり着くように付着する。
激痛の中、気づけばハンマーを持っていた男はその両手でズルズルとハンマーを引き釣りながら何処かへ行ってしまった。
それと入れ替えるように、ひょろりとした男が右手にゴールドにペイントされた棒を握って目の前に立つ。
「―――刑‐第006【金属製野球用具による腹部殴打】」
この中で一番階級の高そうな男が重い声で言う。
ひょろりとした男が一瞬その男を見て、すぐにこちらを向く。
ズキズキと痛む左腕をよそに視界がまたぐるりと揺れる。
床と台のようなものが垂直になる。視点が男達へと向く。
ガスマスク上からは何も見えないが、全員此方を見ているのだけは分かる。
皆、無言だ。
視線は見ないが、突き刺さるような感覚を覚える。
それは軽蔑か、侮辱か、今の激痛の渦の中では考える事は出来ない。
あぁ、どうしてこうなったのだろう。と少しずつ薄れ行く意識の中で考える。
視点が自分の前に立つ男を捉える。右手にあるゴールドペイントの棒…よく見れば握る所が握り易いように細くなっており、そして先端に行けば行くほど太さが増している。形状からしてとても振るのに適した作りに見える。
男のがその棒の握りを両手で握る。
そして、永琳から見て男は右に少しずれほぼ水平にその棒を構える。
その棒がどんどん後ろへ行き、男の体が後ろへ吸い寄せられるような格好になる。
男が少し息を整えるように腰を落とす。
それでまた傷めつけられるのか、腹部殴打と言っていたから腹か、と次にくるであろう痛みへと耐える準備と心構えをする。
男の両手から放たれるようにその金属の棒は腹を目掛けて思いっ切り殴打される。体の捻りから生み出されるその強烈な力は永琳の腹をヘコませるのは容易であった。
続いてミシミシという骨が軋む音。激痛が走り、内蔵の異常により口から大量の血が吐き出される。
通常の人間なら内臓からの内部出血でもう長くはない。しかし、不老不死にとっては一回死んでもまた元に戻ってしまう。
終わりのない痛み。
繰り返される生と死。
意識が―――
意識―――
いs―――
―――
「今日はここまでとする。」
死なずに失神し、ぐったりとなった永琳を見て、この中で一番偉そうな男が他の男達を見て言った。
「明日は―――及び、―――の為、揃えておくように、それと、この罪人を―――に移しておくように」
そう告げて、男は去った。
残された男達は命令された通りに動き出した。
………
……
…
異端審問(いたんしんもん、ラテン語: Inquisitio)
中世以降のカトリック教会において正統信仰に反する教えを持つ(異端)という疑いを受けた者を裁判するために設けられたシステム。
目を覚ます。
辺りを見回す。
薄暗い部屋、照明があまり効いていないこの部屋は、どちらかと言えば牢屋のようであった。
今さっきまでの事を思い出す。自分は今まで気絶していたのだ。
それで、その間にここに連れてこられて…
思いつくのはここまでだった。
最後に殴られた腹を見る為、もうボロボロになった服をぺらりとめくる。
特に異常は見られなかった。綺麗な腹はすべすべとしていてキメの細かい肌をしていた。
これも不老不死による治癒能力なのだろうか、自分で作っておいて滑稽だ。
部屋には椅子も机も布団もない。ただの冷たい床しかない。
そもそも自殺をしようとしても、死のうとも死ねない為、無意味だ。
脱出をしようにも扉が見当たらない。壁を叩いて見たりもしたが何も成果は得られなかった。
1時間ぐらい無意味な足掻きを行った。
それで分かった事と言えば、自分でここから出るということが不可能という事だけだ。
深い絶望
爪が食い込む
だが、血が少し出るだけですぐに傷は治る。
不老不死は素晴らしいものであったはず。
永琳は思い返す。
あの頃―――
不死の薬の研究をしていた頃
あの頃は何の疑問も感じ無かった。
自分には何百年に一度という才能があると自負していた。
不老不死の薬も作れる確信はあった。
製造のノウハウも簡単で、数年経たずに完成してしまった。
思い返す。
あの頃は何も疑問を感じ無かった。
思い返す。
あの頃は何も疑問を感じ無かった。
――――――あの頃は
――――アノ頃
―――アノ…
………刑‐第021【金属槍による頭部刺突】
つかれるぐしゃりとおとがした
………刑‐第046【火炎放射器による皮膚焼却】
あつい、ぜんしんがあついあついあつい
………刑‐第051【《ユダのゆりかご》による尋問】
いたいいたいいたいいたいいたいたいいたいたいたいたttttttttttttttttttttt
………刑‐第064【王水による全身融解保存】
ああああああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああああああ
………刑‐第105【鋸による関節切断】
アアア…
………
……
…
「刑‐第349…」
重い声が一定の音程で響く。
「隊長」
隊長と呼ばれた男の隣に居た、ガスマスクのようなものを付けた男が囁くようにように声をかけた。
「…何だ。」
「コイツ…どうなるんでしょうかね」
視線は見えないが、そのガスマスクのゴーグルに尋問台で今日も数々の拷問を受け、衰弱しきっている女が映る。
衣類と呼べるものは着ておらず、体は血だらけだが、傷は一つもない。
表情は上の空で、よだれを垂らしており、精神に異常をきたしている事が分かる。
「どうにもならん。不老不死であるという事は永遠に痛みを受ける事になる」
「つまり、永遠にこのままって事ですか?」
「そうだな」
「それって…」
「考えてもみろ」
隊長と呼ばれた男がチラりと視線を泳がせる。
「お前、年は何歳だ?」
「は?」
男が不躾な質問に唖然とする。
「まぁいい。お前が仮に30ぐらいとしよう。」
「はあ」
「お前が死ぬのはいつだ?70か?60か?それとも明日か?お前はそれが分かるか?」
「いえ…そんなの分かる訳無いじゃないですか」
「そうだろう、生に制限時間があるものは、分からない。いつ死ぬのかも、な。」
隊長が言葉を切る。
「だから、道から外れたコイツは、道を歩んでいる私達にとっては」
軽蔑するかのように、尋問台を指差す。
「"ズル"なんだ。」
「ズル…ですか?」
「ああ、そうだ。ズルだ。端的に言うとな。すべてがペテンになってしまう。許せんだろう?
許せるはずがない。」
「そんなものですかね…」
それ以後、男は何も言わなくなった。
隊長はそこまで言って、視線を尋問台へと移した。
「刑‐第349…」
重くまた、声が響いた。
その声に微かな反応を示した磔の女は、うわ言のように繰り返す。
ごめんなさい…と
END
作品情報
作品集:
26
投稿日時:
2011/06/09 14:31:47
更新日時:
2011/06/09 23:31:47
分類
永琳
天国ではなく、地獄を。
一人ぼっちの、地獄を。
神様一人きりの、地獄を。
二人になり、三人になるのは、
地獄が滅びるくらいに気の遠くなるほど先の話。
でも刑罰だからこれでいいのかな
慣れちゃうんだろうなぁ、ほんとに慣れちゃうのかな…?