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『捕食』 作者: ヨーゼフ
魔法の森は鬱蒼とした瘴気が重く圧し掛かる不気味な森だった。今宵もギチギチと、気味の悪い蟲たちの歌声が暗闇に響く。
霧雨魔理沙は後悔する。いつもどおりに太陽が沈み掛ける前に茸狩りを切り上げていれば、と。
彼女は逃げ出したかった。見るも無残、スプラッタな御伽でしか聞いたことのないようなこの場から。
少女は震えていた。自分と寸分変わらぬ筈の、彼女の“食事の時間”を見てしまったのだから。
「魔理――沙――だっけ――か?」
緑髪の少女は途切れ途切れに、行儀悪く咀嚼をしながら会話をする。
魔理沙は大木の根元に腰を下ろしている。否、そう強制されている。首筋に鋭い痛みが走ってから、身体の自由が利かなくなった。
「一応――逃げれないように――しといたから――。ぺっ……、見られちゃったからね」
口に合わなかったのか、筋のような物を吐き出す。地面に吐き捨てられた色は赤。
彼女は魔理沙のトレードマークとも云える帽子を乱暴にかっぱらうと、滴る汁に濡れた口元を拭った。
「な、なぁ、リグル。私は何もみ、み、見てない……!」
かちかちと、言葉を発する度にカスタネットよろしく愉快な音を鳴らす魔理沙。身体を石のように麻痺させた毒に、恐怖という劇薬が上塗りされる。
「なにが見てない、だよ。こんなにもはっきりと見せてるのにさ」
不気味な笑みを溢しながら、リグル・ナイトバグは先ほどまで果実のように頬張っていたモノを魔法使いに投げつける。
緩い弧を描きながら無事、それは魔理沙の胸元に着地した。
「ぅあ、うあああああ……!」
それは魔理沙を見つめていた。眼を逸らしたくても、麻痺がそれを許さない。断末魔の叫びに塗り固められた血みどろの生首は、彼女をじぃっと見つめていた。
「最近はずいぶんとうるさいからね。こうやって真夜中に迷い込んで来たガキを獲って喰うくらいしかできやしない」
腹ごしらえを終えご満悦のリグルは、半壊した首とにらめっこをする魔理沙を見てくすくすと嘲笑していた。
「そうだ、ついでだ、近ごろ溜まってたんだ。それも晴らさしてよ」
そう言うと彼女は蹴鞠のように生首を蹴飛ばした後、妖怪の怪力をもって魔理沙のスカートを、そして下着までも引き裂いてゆく。
「ひゃっ! やめ、やめろ……!」
「ふふ……随分といやらしいね。私、興奮してきちゃった」
リグルのズボンがさながら天幕のように布を押し上げて誇張している。
「ク、クソッ! お前みたいな蟲妖怪ごときに好きにされてたまるか……!」
少し落ち着き、余裕が出来たのか。圧倒的不利の身にありながらも果敢にも悪態をつく魔理沙。
それもそのはず。先ほどまでは微動だにしなかった右腕が、ほんの少しだけ動くようになってきた。
――隙を突いて魔法をドテっ腹に叩き込んでやるッ……
微かに、ゆっくりと、リグルに悟られないように慎重に右腕をミニ八卦炉を格納したホルスターに腕を伸ばしてゆく。
しばらくすると、感触が石化した右手に僅かな温もりが。
――掴んだ!
冷たい筈の八卦炉のボディが、まるで救いの手を差し伸べる救世主の手中のように暖かく感じられた。
「喰らえッ!!」
最低限、しかし人体を損傷させるには充分であろうか細い光線が、八卦炉から照射される!
閃光は低い角度から天空に向かって抉るように伸び、見事にベルトに手を掛け、今まさにズボンを脱がんとしていたリグルの左脇腹から左肩まで通過してみせた。
「おろ?」
思わず鈍間な声が出る。
つい数秒前まで忙しなく動かしていた左腕の感覚がシャットアウトされる。それに、下腹部には妙な温もりを感ずるではないか。
「やったっ……!」
魔理沙は歓喜の声を漏らす。まるで普段みたいに、フラスコに入った珍妙な茸が新たな変化を表した時のような嬉しい気分だった。
「おろ? おろろろろロロロロ……」
左腕はゴトリと墜落する。横っ腹の肉はベロンと舌を突き出したように捲れ、行き場を見つけた鮮やかなピンク色の腸たちは我先と外界へ身を垂れ流す。
口を吐血で真っ赤にコーティングし、痴人のようにへらへらと笑いながら目玉をぎょろぎょろと廻すとリグルはそのままうつ伏せに卒倒してしまった。
「死んだ……か?」
壮絶な断末魔に動転しつつも、安堵する魔理沙。先ほどまでの脅威は今は自らの糞便と血糊に塗れた腸を抱擁し、砂利に猛烈な接吻をしているだけのものに成り下がっている。
「へ、へへ、ざまぁないぜ……」
血溜まりの中で死んだゴキブリのようにぴくぴくと痙攣しているリグルを確認すると、やっと自由に利くようになった半身をのっそりと動かし、帰路を目指す。
とんだ災難だ。
妖怪を殺っちまった。
霊夢に怒られるかな。
正当防衛だ。
そうだ帰ったら湯船を張ろう。
ああ、ホットミルクも作って飲もう。
そして暖かいベッドで一眠りするんだ。
朝には、明日にはまた新しい一日が始まる。今日みたいな狂った一日ではなく。
魔理沙の頭の中で様々な思考が飛び交う。緩みきった安心感はたくさんの事柄を決壊したダムのように吐き出す。
無残にも切り裂かれたエプロンドレスを整えて、乱闘で散り散りになった靴を茂みから探り出す。戸外にて下半身が常時露わになっているおかげで、なんだか変な気持ちになる。
愛用の帽子は――忌々しい害虫の骸が下敷きにしてしまっている。
手間隙かけて死体を動かしても彼奴の唾液に穢れている。惜しくも帽子の事は諦めることにした。
箒はどこだ? 周囲を注視する。それは眼と鼻の先にある大木の根元にあった。
「帰ろう、帰ろう」
念仏のように呟く。一刻も早くこの場には居てはいけない。
箒まであと数寸の距離。疲労が足を重くする、たったこれだけなのに数里もあるかと錯覚する。
「畜生……なんで、こんなに、身体が震えるんだっ……」
得体の知れない嫌悪感が魔理沙を犯す。寒い、寒い。それは下着を、服を裂かれたからではない。
足枷を付けられての長旅が終焉を迎える。箒を掴んだ! 後は何も考えずに自宅まで遮二無二飛んでいけば良い。なんだったら自動魔法運転にして音速を超えてもいい。
だが魔理沙は振り向いてしまった。
「ちくしょう」
血の池に沈んで居る筈の蟲は存在していなかった。
箒を握り締め跨ごうと足を掛ける。耳元から声が聞こえた。
「死んだと思った?」
魔理沙の真後ろにリグルが居る。
直後に強い衝撃が魔理沙の背を襲い、箒から放り出された。
「あグァっ!」
飛びかかってきたリグルが魔理沙の上へ馬乗りになり、残った右腕だけで拘束する。
魔理沙の繊細な素肌を砂利が傷つける。リグルの腹部の惨たらしい裂傷から滾々と湧水の様に滴り流れる血が少女の素肌を濡らす。
太腿に垂れた砂埃まみれの腸が、これまでに味わった事のない嫌悪感を植え付ける。
八卦炉は? 拘束されていない腕をあちらこちらへ、先程の衝撃でどこかへ行ってしまった。
馴染みの得物を諦めると、森のそこら中に転がっている凶器をひとつ。力強くその石を握りしめると、先ずは一撃こめかみに。
リグルが大きく仰け反る。だが拘束する力は一向に収まらない。
なので魔理沙は続けて容赦なく殴打する。何度も、何度も。その顔はくしゃくしゃで今にも泣きだしてしまいそうだ。
「でも私はもうすぐ死ぬ。だからその前に魔理沙、お前の身体を奪ってやる。お前になってやる」
猛烈な打撃にも関わらずリグルは顔色ひとつ変えずにそう宣言する。傷口から白い頭蓋が垣間見えようとも、血の噴霧を魔理沙に噴きかけようとも。
真っ赤に濡れた手から石が滑り落ちる。けれども魔理沙は殴るポーズをし続ける。ぺちんぺちんとリグルの頭を叩いて。その顔はくしゃくしゃで泣きだしていた。
「うぇっ……ひっぐ、お、お願い……殺さないでくれ……」
「駄目」
今度こそ本気の懇願。先程のリグルの言葉の真意は解らなかったが、ただ自分が殺害される事だけは察知していた。
返ってくる返事は単純で事務的であった。
「うあぁあ……お願いだから……お願いだからぁぁあああ!!」
悲願は段々と熱狂的なものになってゆく。だが、返ってくるは「駄目」の一言。
「お前を犯して、お前の中に入って、お前の脳髄を貪り喰ってやる」
魔理沙のうなじにキスをするように近づき、そう宣告すると先程よりも大きく肥大したペニスが彼女の秘所に触れる。
「やめてやめてやめ、嫌ァァああああ!!!」
少女のその純潔は気付かぬ間に絶え間なく垂れる失禁を潤滑油にグロテスクな血管を隆々と浮かばせた肉棒に貫かれ、ごりごりと無理矢理押し広げられゆく。
リグルの絶頂とは関係無しにまるで蛇口をめいいっぱい捻ったように熱湯みたいなぎとぎとの粘ついた精液が早速流し込まれてゆく。
身体が尽きる前に自らの種を、情報を新しい器に移すのである。
それがさらにリグルの魔理沙へのエスコートにもなって、だんだんとストロークが早まり、それに比例して魔理沙の悲鳴は勢いを増してゆく。
「嫌ァアああああ!!! ああああ!!! アアアアアア!!!」
あの魔理沙とは思えぬ恐怖に歪み切った形相で、最早叫びにもなりきれない金切り声を発するだけに。
カクカクと壊れた玩具のように頭を左右に振り回しながら金髪を乱舞させる。今日も念を入れて御洒落に飾ったみつあみも解けてしまった。
「そろそろ、喰ってやるよ」
口角を不気味に釣り上げ微笑んだリグルが魔理沙を抱き上げる。
ピクピクと下顎が痙攣すると、左右にかぱぁっと開く。開口した頭の奥からもぞもぞとい手の平に乗る位の異形の蟲が這い出て来た。これこそがリグルなのであった。
本体が体外に露出すると、今まで魔理沙をがっちりと拘束していた腕が糸が切れた操り人形のように垂れた。
「うわあァァアアア!!! 来ないで――」
しかし魔理沙に逃亡、命乞いをもさせぬうちに甲虫は彼女の内耳に触手の様に柔軟性があるが、尖端が鋭利になった脚を刺し込んでいく。
「ひぃいぎゃあああぁああぁぁああ!!! アアアアアア!!!」
鼓膜を容易く破き、身体を細く折りたたみながら魔理沙の奥へ奥へ姿を消してゆくリグルだったモノ。魔理沙は頭を掻き毟り、爪を頭皮と血で汚し、絶叫する。もはや発狂したも同然。
その姿はまるで月のスポットライトに照らされた踊り狂うピエロのショーのよう。
「いぎぎぎぎ、ぐぎゃあががあ、でいむありあ、あすたげで… …」
彼女の脳が食い尽くされてゆくのにつれて、彼女の意識が、思い出が、魔理沙自身が消えてゆく。
ぐるぐるぎょろぎょろといろんな方向に暴れ回る目玉。顔中の穴という穴から湧き出る血液。声にならない叫びが枯れた頃に遂に魔理沙は卒倒した。
ーー沈黙。
鬱蒼とした魔法の森に再び静寂が訪れた。
血溜まりの池に沈む蟲妖怪の酷く損傷した惨死体に、ご馳走とばかりに小さな蟲たちが集ってゆく。
死体の横にはまだ小綺麗だが、これまた死体のように動かぬ魔法使い。
赤いマニキュアが施された魔法少女の指先に蝿が一匹羽を休めた。
蝿はまるで何かを招くように脚を擦りあわせている。
二つの死体の上をたくさんの蝿が飛び回っている頃に、魔法の少女の指先がピクリと動く。蝿はどこか彼方に飛んでいった。
「あ、あー……」
気怠そうな一声と共に少女は起き上がる。
砂利で汚れた服をぱんぱんと払うと、首をこきりこきりと鳴らす。
「気分は良好。四肢も動く」
「さて、とんだ災難だったぜ。帰ってひとっ風呂浴びて、ふかふかのベッドで寝ようとするか」
いつものように活発な少年のような笑顔で霧雨魔理沙は微笑むと、額の触覚をピンと指で弾いて、我が家への帰路を辿る。
今宵もギチギチと、気味の悪い蟲たちの歌声が暗闇に響いた。
作品情報
作品集:
27
投稿日時:
2011/06/28 18:39:50
更新日時:
2011/12/07 00:15:57
分類
魔理沙
リグル
異形
ふたなり
グロ
掌編
なるほど、あっちが本体だった、と。
でも、こんなことは幻想郷では日常茶飯事。
巫女が動くような事でもない。