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『Eternal Full moon 第四話』 作者: イル・プリンチベ
―18― 忌まわしい過去と罪の在処
私はひたすら逃げている。それも脱兎の如くだ。
でも、何から逃げているのかすでにわからない。
間違いなく物凄く怖いことが起きているから、後ろを振り向いて見たらその場で死んでしまいそうだ。だから私はただ前だけを見て逃げている。
仲間たちが次々死んでいく光景を見ると、どうしてもこんなところでは死にたくない気持ちでいっぱいだった。
あっ、また誰かが死んだ。たぶん仲間のうちの一人だと思うと、わたしはいてもいられなくなってしまった。
「レイセン助けてっ!」
負傷を負った仲間の声が聞こえたけど、私はあえて聞かないふりをした。助けてあげたい気持ちがあっても、私の力では助けてあげられないからだ。
「レイセン。私はもうダメだから、私の代わりに地上の侵略軍が最終防衛ラインを突破した事を依姫様に伝えてほしいの…」
無責任な奴だ。自分が死にそうだから私に自分の仕事を押しつけやがって!私だって現状を維持するだけで精いっぱいなんだ。
「くそっ!くそっ!くそっ!あんな圧倒的な奴相手に戦うなんて、始めから無理だったんだよ」
私の敵は地上の侵略軍だったんだ。穢れた連中の癖に、とんでもない科学技術を持ってやがる。私はぶっといレーザー砲に次々と仲間が焼かれていくのを目の当たりにした。私達が放つ弾幕じゃ、あいつらのミサイルを破壊することはできない!パワーのケタが違いすぎる!
「レイセン、どこに行ったのよっ!」
依姫様は単騎で侵略者を追い払おうとしているけど、いくらあそこまで強くたって無傷のままではいられないだろう。そのうち直撃を貰う筈だ。
「レイセン、助けてっ!うわあああああっ!!!!!」
また仲間のうち誰かが死んだ。私は戦場で死んでしまうの?そんなの耐えられないっ!
「痛いよう!レイセン助けてよ!医療部隊に私を運んでっ!」
また仲間が被弾をしたようだ。腹のあたりが見事に貫通している上に大量出血しているから、彼女はもう助からないだろう。彼女には治療を施すより介錯してやった方が身のためだ。
「レイセン!あなたは仲間を見捨てて平気なのっ!?自分が見捨てられたらどれだけ辛いのかわからないのっ!?」
仲間?私はあんた達の事を仲間と思ってないね。あんた達はなりたくて軍人になっているのに、私は両親に売り払われる形で軍人をやらされているんだ!
「レイセン、応答してっ!レイセンっ!!!!!」
依姫様が私を呼んでいるみたいだけど、私はあんなひどい奴の相手なんかしたくないのは稽古という名の虐待を私に強制させているからだ。
「レイセン!!!!!」
いつも朝から晩まで過酷なトレーニングをやらされていて、心と体は戦う前にすでにボロボロなんだ。
「嫌あああああっ!!!!!」
「死にたくない死にたくない死にたくないっ!!!!!」
私は穢れた地上に向かって逃げる。月の軍人は誇り高いものだと教えられた私達だけど、実際は使い物にならなくなったら容赦なく切り捨てられる。
「うぎゃあああああっ!!!!!」
「あっ!お、お母さん!」
「月の都に栄光あれっ!のわあああああー!!!!!」
私は逃げる。穢れた地上へと。明らかに私達の方が劣勢で、私一人がどうあがいてもこの流れを覆す力はないからだ。もう月の都は勝手に戦場から逃げ出した私の居場所ではないし、月の都に居続けても豊姫様と依姫様に稽古という名の虐待を受けることは避けられない。
「レイセンが逃げたっ!」
「この裏切り者っ!」
「お前は自分のやってることの意味が解っているって言うのか!?」
「レイセンって依姫様の前ではいい子ちゃんぶっているのに、実際は何も出来ないゴミクズなんだね。」
「玉兎にして情けない奴め!」
「お前なんか穢れちまえばいいんだ!」
「兎鍋にでもなって食われちまえばいいのに!」
戦場から勝手に逃げだした私を死んだ仲間達が罵倒してくる。だけど私は私以外誰も信じていないから、間違いなく誰にも信頼されていない筈だ。でも、戦場から逃げ出せればそれでいい。
私はもう二度と月の都に戻るつもりはないので、羽衣を焼き払う事にした。
「兎だっ!とっ捕まえて鍋にしちまえっ!」
「ウサ耳の女の子かわいいのう。わしの嫁になってくんろ!」
「そこの女!ヤらせろ!」
なんとか地上に来たようだが、穢れきった地上人が私を食べようとしたり犯そうとしたりするから、ここにいても私が平穏に暮らせる保証はないようだ。
「待ちなさいそこの妖怪兎、あんたを兎鍋にするから大人しくしなさい!」
「けっけっけ、私のマスタースパークで焼き払ってやるぜ!」
「私、妖怪退治って奴をやってみたかったんですよね。」
今度は幻想郷にやってきたみたいだが、紅白の巫女と白黒の魔法使いと青白の風祝が私を退治するつもりで一斉に弾幕を放って来た。ここにも私の居場所はないので、私は脱兎のごとく逃げだした。
「イナバ。5秒以内に私のご飯を作って頂戴!出来なかったら今すぐ殺すわ。玉兎の軍人なのに勝手に逃げだすなんて恥さらしもいいところよ!それにあなたは私のペットなんだから、飼い主である私を癒してごらんなさいよね!」
今度は姫様が私に無理難題をけしかけてきた。絶対に断れない。
「ウドンゲ!今日も楽しい実験の時間よっ!私の可愛い愛弟子の豊姫と依姫を見捨てるなんて、兎の分際で生意気じゃないの!」
お師匠様が私に新薬の実験台になるように言ってきた。これも絶対に断れない。
「れーせん、遊ぼうよ!ねぇったら!遊んでくれなかったら仲間外れにするよ。ていうか、れーせんだけが仲間外れなんだよね。だって月の兎はれーせんだけなんだからさ!」
てゐが私に遊びを要求してきた!断りたいけど断るわけにはいかない。
「レイセン。月の住人は穢れを持っていないんだから、この扇子で煽いであげるわ!私達のペットの分際で勝手に逃げだすなんて許せないわ!恩を仇で返すなんて、ろくでなしのゴミクズもいいところじゃないの」
豊姫様が最新兵器の扇子で私を扇ごうとしてきた。あの扇子は穢れある物を容赦なく浄化する月の最新兵器だから私に死ねと言ってるけど、もちろんこれも断るわけにはいかない。
「レイセン。これから稽古の時間だから、今日もビシバシ行くわよ!仲間を見捨てたお前には特別メニューを組んでおいたから覚悟してもらうわ!お前が死のうがどうでもいいんだが、お前が詩文の職務に怠慢を働いたことで他の玉兎が死んでしまうのはどうしても納得いかない」
依姫様が私に稽古という名の虐待をけしかけてきた!これも絶対に断れない!
「イナバ」
「ウドンゲ」
「れーせん」
「レイセン」
「レイセン」
「「「「「全部やってくれるよね?」」」」」
姫様と師匠とてゐが私に無理難題を要求してきた。
「うっ、それは…」
私はその場にいることに耐えきれず脱兎のごとく逃げだした。
「逃げだした、穢れきった玉兎が」
私は穢れてなどいないっ!
私は月の都から離れたけど、地上の穢れに染まりきったわけではないっ!
―19― 永琳師匠の華麗な実験タイム
「うわあああああっ!!!!!」
私は言葉では言い表せないほどの悪夢を見てしまったようだ。しかも、物凄く現実味あふれる代物である。
「はぁ…、はぁ…、はぁ…、はぁ…。なんだ、夢か。現実じゃなくて、本当に良かった」
動悸がおさまると私は周囲を見渡したのだが、師匠の診療所にあるベッドで寝かされていたようだ。幸いなことに誰かに犯された痕跡がないのも救いである。
「ウドンゲ、起きたようね」
お師匠様が白いカーテンを開けて私の様子を見に来てくれた。こんな不肖の弟子である私のことを心配してくれるのだから、私は師匠に頭が上がらない。
「お師匠様、おはようございます」
私はお師匠様に挨拶をしたのだが、
「ウドンゲ、もうお昼を過ぎたっていうのに何寝ぼけているのかしら。」
私は慌てて時計を見ると午後1時半過ぎだったので、
「お、お、お、お、お師匠様…、も、も、も、も、申し訳ございません!寝坊してしまった私をお許しください!」
取り返しのつかない事をしでかしたから、私はベッドから飛び降りてお師匠様に見事な土下座をしたのだが、
「ふふふっ、いいのよウドンゲ。新薬の実験はとりあえず成功のようね」
お師匠様は聞き捨てならないことを言ってきました!それはなんでかというと、また私の事を勝手に新薬の実験台にしやがってくれましたんですから!
「お師匠様、いい加減にしてください!」
私はお師匠様に実験台にしないように言ったのですが、
「あ〜らウドンゲ。お師匠様である私に逆らっていいの?あなたがここに入れるのは誰のおかげかしら?あなたが兎のリーダーで入れるのは誰のおかげかしら?自分の立場ってものを少しは理解しておいた方がいいんじゃなくて?」
「こんな生意気な弟子はいい加減に破門した方がいいのかなぁ〜?毎度毎度あなたときたら薬売りのノルマが達成しないんだから、せめて師匠の実験台の役を務めることぐらい問題じゃないでしょう?」
お師匠様は私の弱みを握っているので、私はどんなことがあろうともお師匠様には絶対服従をしなくてはならない。
「そうだウドンゲ。あなたに聞きたい事があるんだけど、胡蝶夢丸2の効果はどうだったの?」
お師匠様は胡蝶夢丸2の効果を聞いてきたのだが、まさかそれは私が昨日寝る前にお師匠様に飲むように言われた眠り薬の事?
「お師匠様、昨晩これはただの眠り薬だとおっしゃりましたよね?」
私の記憶が確かだったら、昨晩お師匠様は私にこれはただの眠り薬であると教えてくれた筈だ。
「ええ、そうよ。これは睡眠薬と胡蝶夢丸を一緒にした代物なの!しかも副作用が一切ない特別仕様で、何度飲んでも現実に戻って来れる画期的な新薬よ」
「それでうまくいったかどうかあなたで試してみたかったのよ!その様子だと、せいこうしたみたいだわ。うん、私は天才!不可能などないっ!(キリッ!)」
師匠は自分の才覚に惚れこんでいるので、今回の新薬の出来に自画自賛しきっているために自分の世界にすっかり入り込んでしまった。
「お師匠様、実験は失敗です。だって私はとんでもない悪夢をみたんですから!」
私は悪夢を見たことで実験は失敗だとお師匠様に言ったのだけど、
「何言ってるのよウドンゲ、実験は成功よ。私に弟子入りして結構立つっていうのにあなたがいまだに使えない子だから、お仕置きとしてナイトメアバージョンをあえて飲ませたのよ。」
お師匠様は私にお仕置きとしてナイトメアバージョンを飲ませたと言ってくれました。これさえなければお師匠様は非の打ちどころがないのに、かつて私を虐待という名の稽古をした豊姫様や依姫様の師匠なのですからこれも納得せざるを得ないのです。
―20― “兎狩り狩り”をする私達
「てゐ。今日は兎狩りをする人間どもを撃退するから、急いで妖怪兎達を招集しなさい!」
私は五日後に迫る寿司パーティの食材を集めること諦め、”兎狩り狩り”をする。兎角同盟の最大の目的である『幻想郷の食卓から兎肉を撲滅させる事』なので私はこの活動に物凄く熱を入れている。いや、何よりの生きがいなのかもしれない。
「はーい。」
てゐが気のない返事をするのは“兎狩り狩り”の活動はしんどいうえに割が合わないから、出来ればやりたくないのが本音であると思わされる。
“兎狩り狩り”を仕掛けても逆に返り討ちにあって兎鍋にさせられる恐れがあるけど、そうでもしないと私達兎は今後生きていくのがより困難になってしまうのに、なぜ地上の兎達はそれが解らないのだろうか?
「何よその気の抜けた返事はっ!」
私は自分の能力を使ってがてゐの正面に近寄ると、
「上官の命令を聞かない部下は修正してやるっ!」
バギッ!
私はヤル気のない部下に対し修正を施しておいた。
「グエッ!」
てゐは地面にひれ伏す形で倒れた。今の幻想郷において兎のリーダーは私なのに、どいつもこいつも私のいう事をまともに聞こうとしない。
「てゐ、今の幻想郷での兎のリーダーは私でしょう!?あなたは命令を聞いていればいいのに、その反抗的で気のない態度は何なのよ!」
バギッ!
「なんで私があなたを打ったかわかる!?兎角同盟の目的を果たすためには、一人一人がやるべきことをやらないといけないのに、てゐときたら私の指示を素直に聞かなかったりあからさまに無視したりしてるじゃないのっ!そんなんじゃ、幻想郷の食卓から兎を撲滅するなんて夢のまた夢よ!」
私があえて冷徹な教官役をするのは、地上の兎達に自分たちの立場が弱く危機的であるという事を理解して欲しいからだ。
「も、申し訳ございませんでした。もう二度と反抗的な態度は取りませんし、他の地上の兎達にもよく言って聞かせますので、愚行をしでかしてしまったこの愚かな私目をお許しになってくださいませ鈴仙様。」
とりあえずこの場を収めるためにてゐは私に従うと言ってるが、本当に信頼できるかどうかは定かではない。地上の穢れた奴らは粗暴かつ強欲でその上知性と品性がない卑しい連中で、その本質は人間や妖怪ですら変わらないからだ。
「卑しくも穢れた私めが偉大で穢れなき鈴仙様に懐柔した証として、これから妖怪兎達を連れてきますので少々お待ちいただけないでしょうか?」
この狡猾極まりない地上の“詐欺兎”は、この場を取り繕うために私に従うと嘘を言ってるようだ。借りに兎達を連れてきたとしても、それは本心から私に従っているわけでなく、ただ仕方なくやってるんだという態度をあからさまにとってくる。
「我々地上の兎達は、月の兎であらせられます鈴仙・優曇華院・イナバ様に忠誠を誓っておりますし、永遠亭の当主であらせられる蓬莱山輝夜様と八意永琳様の事をお慕いしております。」
ああ。またこの“詐欺兎”は嘘を言ってる。あいつは始めから私に従う考えなんてないし、生意気にも姫様とお師匠様を慕っているという事を言いやがるのだから、本当に気に食わないこと極まりない。こいつは私の事を全く信頼していないだろうし、私だって始めからこいつの事を信頼していない。
「それでは兎達を読んできますので、鈴仙様はここでお待ちくださいませ。」
てゐは私に仲間達を読んでくると言って、そのまま迷いの竹林に仲間を呼び出しに行った。たぶん私との約束をすっぽかして花畑あたりで遊んでいるに違いない。
「呼んでくるなら早くしなさいよ!時間は貴重なんだから、一分一秒たりとも無駄にはできないからね!」
私はてゐに怒鳴りつけるのは、“兎狩り狩り”をするのに時間を無駄できないからだ。
てゐが言うには人間は意地汚いから何でも食べることに関しては譲歩するしかないと思っているらしく、そのうえ妖怪になれない普通の兎が人間に食べられないためにはもっと可愛らしい容姿にして、最近のペットブームに乗った上で犬や猫に匹敵する愛玩動物としての地位を気づく必要があるんじゃないかなと文々。新聞で発言をしていた。
私は誰がどう言われようが兎角同盟の活動を辞めるつもりはない。何故なら神社の宴会で兎鍋を出されたあの屈辱を思い出すたびに、私は人間の手に食されて続けている同胞を救わなくてはならない義務があるからだ。
―21― “兎狩り狩り狩り”される私
「みんな、いいわね!今日はそこで兎狩りをしている人間どもに報復行為をするわよ!幻想郷の食卓から兎を撲滅するために私達は戦うっ!エイ、エイ、オー!」
“兎狩り狩り”をするために招集をしておいた妖怪兎は、なんだかんだ言いながらも妖怪兎は60名集まった。言うまでもないが誰もに心底私に忠誠を誓っているのは、ここでは誰一人たりともいないがこれもやむを得ないのか。
部隊の編成はどうなっているかというと、60人の妖怪兎達を2つに分け30名にしておいた。私が総大将かつ第1部隊を指揮して、てゐが副将かつ第2部隊を指揮するのだ。
私はあいつらのやる気を出すために“因幡の大号令”をかけているのだが、てゐも含めてみんな全くもってやる気がないから、
「エイ、エイ、オー…」
「オー」
「オー…」
これから戦いに行くのに私以外の誰一人から覇気を感じることがないから、この時点で戦う前からすでに負けている事が窺える。あいつらは私の事を兎のリーダーとして認めてない奴がいるから、私が“因幡の大号令”をかけても効果はないということだろう。
これでは“兎狩り狩り”をするどころか、逆に“兎狩り狩り狩り”に遭うのではないだろうかと不安がよぎってしまう。だが幻想郷の食卓から兎肉を食するという悪しき慣習を排除するために、これは避けて通れない私達兎が抱える戦いなので逃げることは許させないのだ。
そうこうしているうちに私達が待機している平地に、約3名の人間が兎狩りをしている姿を私が見つけてしまった。偵察部隊は私より先にあの人間どもを確認しているのに、本当に何をやっているのだろうか。こんな考え方だからいつまでたっても人間に食べられてしまう負の連鎖が続くのだ!
「そこにいる兎狩りをしている人間を襲うわよっ!」
私の目の前で堂々と兎狩りをしている人間達が許せないので、野蛮で粗暴で鬼畜な3人の人間に狙いを定め襲う事にした。相手が誰であろうとも関係ない!
「いくわよっ!私に続きなさいっ!」
なんと兎狩りをしている人間は紅白の巫女と白黒の魔法使いと青白の風祝だった。あいつらは妖怪退治のエキスパートなのだが、ここであいつらを襲い殺しておかないと兎の社会地位が今後一切変わることがないので、私はあえて困難なミッションに挑むことにした。
「そこの紅白の巫女と白黒の魔法使いと青白の風祝!これ以上兎狩りという鬼畜で野蛮な行為をさせないわっ!」
私は怒りでいつも以上に目を皿に赤く染めあげると、紅白の巫女と白黒の魔法使いと青白の風祝の背後に回り込み、銃弾型の弾幕を大量に放った!
「何考えているのよっ!後ろからやってくるなんて卑怯じゃない!今日のおゆはんは兎鍋に決定ねっ!」
紅白の巫女さんはれーせんの放った銃弾の弾幕に気づくと、結界を張って弾幕をはじき返してすぐさま“お札”と“陰陽玉”のお返しをして、いつの間にかれーせんの背後に回っていたんだ!
「私は幻想郷の食卓から兎が撲滅するまで戦うわっ!だから私はあなたをここで倒さなくてはならない!」
私は巫女に向かって目から“怪光線”を放つも、
「おっと!兎狩りの邪魔はさせないぜ。聞きわけの悪い奴はこれでもくらうんだな!」
白黒の魔法使いは私に“マスタースパーク”をぶっ放ってきた!アレを直撃でくらうと火傷どころでは済まない。
“マスタースパーク”は私が考えていたよりずっと威力があるので、私の“怪光線”を飲み込みさらに私を“焼き兎”にしてしまい、お気に入りのブレザーとミニスカートを襤褸切れに変えてしまったのだ。
「それに兎肉の美味しさを知るとやめられないですね!知っていますか?兎肉って淡白で身が柔らかいから、幻想郷じゃどこにいっても人気食材として扱われるんですよ?」
「それに、兎狩りと妖怪退治を一緒にやれるなんて最高じゃないですか!」
“マスタースパーク”を直撃でくらった私は穢れた人間どもの手によって地べたに這い付くばされるのだが、青白の風祝はさらにお札と星の風の弾幕をお見舞いしてきやがった!
「くぅぅ〜…、3対1とは卑怯じゃないの!あなた達には誇りというものがないの!?」
私は紅白の巫女と白黒の魔法使いと青白の風祝に自分たちのやっている事が恥ずかしくないと言ったのだが、
「うるさいわね。いきなり背後から奇襲攻撃してきた奴が言ったって説得力がないじゃないの。野山を駆け回っている野蛮な兎の分際で、人間様に何を言ってるんだか」
生意気にも紅白の巫女は私が背後から奇襲攻撃した事を言いつけてきた。地上の穢れた人間の分際で、月の兎である私にその無礼極まりない態度はなんだ!
「そうだぜ、今はお前が悪い。1対1で挑むのがスペルカードルールなんだが、あくまでも正面から正々堂々挑むものであって、背後から奇襲攻撃を仕掛けるのは卑怯者のやる行為ことだぜ」
白黒の魔法使いも私のやった行為を激しく非難したのだが、そもそも兎狩りをするあいつらに圧倒的な非がある。私はそれを正したまでの話だが、あいつらにそれは通じないようだ。
「卑怯な奴には卑怯な手で仕返しをしたっ問題ないでしょう?だから私達は3対1であなたに挑んだんですよ。人間と妖怪はそれぐらいの差があるから、特別問題はないんじゃないですか」
青白の風祝も私の事を卑怯者呼ばわりしてきたうえに、自分たちの行為を正当化してきやがった。本当に信じられない奴だ。
白黒の魔法使いは“マスタースパーク”を私にブチかまし、紅白の巫女と青白の風祝は“お札”と“陰陽玉”の直撃という名のプレゼントを大量にくれた。私はプレゼントを突き返す事が出来ず情けなく事に戦闘不能状態に陥ってしまうのだが、紅白の巫女は地べたに這いつくばってる私に決して容赦することなくさらに“封魔針”をお見舞いしてきた。
「わかるわけがないでしょうね。だって、所詮は頭の弱い兎じゃないの。」
失敗した…。私は紅白の巫女を完全に見誤ってしまったようだ。あの巫女ときたら完全にノックアウトして戦意喪失している私に攻撃の手を一切緩めない!妖怪相手だったら完膚なきまでたたきのめす。それが博麗の巫女だという事を私はすっかり忘れるという取り返しのつかない行為をしてしまったのだ。
「そらよっ、他の雑魚どもはさっさと巣に帰るんだな。今の幻想郷でお前ら兎は人間様に食われるのが関の山なんだぜ。」
白黒の魔法使いは兎達に“マジックミサイル”と“マジックボム”の雨を容赦なく振らす。私は紅白の巫女を叩きのめす事ができなかったために、白黒の魔法使いと青白の風祝にやりたい放題させてしまった事で、何羽かの兎達が弾幕を喰らってしまいその場で命を落としてしまったのだった。
「妖怪になれなかったらその時点で人生終了ってとこじゃないですか!大人しく兎鍋で食われてくださいよ。」
青白の風祝はてゐを始めとする達妖怪兎にお札を大量に打って来た!どうやら彼女達に直撃させることが狙いじゃなく、分散させて普通の兎を捕まえることが目的みたいだ。人間の分際でこうも見事な連携を見せやがるとは生意気な!
「や、やばいっ!み、みんな逃げろっ!は、は、は、博麗の巫女だっ!アイツはうちら妖怪に対し容赦なく退治するんだ!れーせんみたいになりたくなかったら、ここは逃げるが勝ちってところよ!」
「おかーちゃん助けてっ!おいら巫女に退治されたくないよう!」
「おらぁ、こんなところで死にたくない!大人しく竹林に引き篭ってるだよ!」
「巫女はあたし達には残酷なんだ!死にたくなかったら逃げるしかないでしょう!?」
紅白の巫女の姿を見た私が率いる第一部隊の妖怪兎は、案の定浮き足だって我先に逃げ出す有様だった。地上の妖怪兎連中ときたら、どいつもこいつも救いようのないぐらい自分勝手でどうしようもない奴らだ。
「お、お前。た、戦うのかっ!?し、し、し、白黒の魔法使いに焼き殺されるぞ!焼き兎にされたくなかったら、さっさと逃げろっ!」
「あ、あ、あ、あ、あ、青白の風祝だって、妖怪の命を平気で奪いヤバい奴なんだっ!奇跡を起こされたら、俺たちみんなあの世行きだっ!」
「今のうちらじゃアイツを止められないよ!マスタースパークで薙ぎ払われちゃうわっ!」
「近寄ったって無駄だ、風でふっ飛ばされちまう!」
「焼き兎にならなくても、マジックボムで足をぶっ飛ばされちゃうかもしれないんだよ!そんなの嫌だよっ!」
「奇跡を起こされたら俺達は全滅だっ!」
「あたしもうダメっ、これ以上耐えられない!逃げるよっ!だってこんなところで死にたくないもん!」
紅白の巫女と白黒の魔法使いと青白の風祝が容赦なく妖怪兎狩りをしているので、てゐが率いる第二部隊の妖怪兎達もみんな我先に逃げ出してしまった。こいつらは同族を見捨てるとい卑劣な行為をしているのだが、私が地上で唯一の月の兎だからか?
「みんな!何やってるのよ!ひるんじゃダメっ!巫女や魔法使いと言っても、所詮相手は人間よっ!私達が後れを取る相手じゃないわ!」
「てゐ!援護射撃をしなさいっ!あの憎たらしい巫女と魔法使いを今日こそ撃退するのよっ!」
私は逃げ出す仲間に戦うように促しているが、戦意を失ったあいつらに何を言っても効果はないので状況は決してよくならない。むしろより悪くなっている。
「ひ〜、お助け〜!巫女と魔法使いに退治される〜!みんな永遠亭に帰るよ〜!逃げた方がいいわ。命が惜しかったら、さっさと逃げなさいな!」
てゐは私の許可なく勝手に退却命令を出しやがった。兎の尊厳がかかっているのだから、最後の一兵になるまで戦うというのが普通なのだが、あいつらときたらそんな崇高な精神を持ち合わせていないのが本当に嘆かわしい。
普通の兎達は巫女と魔法使いと風祝の手によって何匹か負傷してしまい、憎きあいつらの手によって捕獲されてしまった。私も巫女が繰り出す弾幕によって多大なダメージを受けてしまい、普通の兎達を救いだす事が出来なかった。
「地上の穢れた人間どもめっ!今日はあえて負けてやるが、次やったら命はないと思えよ!」
私はお気に入りのブレザーボロボロにされ、下半身はお気に入りの青白のストライプのショーツを晒しながら捨てゼリフをあの憎たらしい人間ども言うのだが、
「何度やったって同じよ、私はあんたを返り討ちにしてやるわ。今日の宴会の料理は兎鍋に決定ね」
紅白の巫女が私の事を返り討ちにすると言いやがった。
「“兎狩り狩り”のつもりが逆に狩られるんじゃ話にならないぜ。兎肉は淡白な上に身が柔らかくて美味いんだ。お前も一度食べてみろよ?」
白黒の魔法使いは私に兎肉を食べてみろと言いやがった。
「私達は“兎切り狩り狩り狩り”をしだんですよ?妖怪退治と兎狩りを兼ねたんですから、食料確保と社会貢献が出来てハッピーですね」
青白の風祝は私達を退治した事で、食料確保と社会貢献をしたと言っている。
これ以上戦ったら本格的に退治されて兎鍋にされてしまうので、私は脱兎のごとくみっともなく逃げ出してしまうのだった。残念なことに“兎狩り狩り”は失敗に終わったのだが、どう考えても私が危機的な状態に陥ったのに助けもしないで逃げ出した地上の兎がすべて悪い。
―22― 薬売りに行く私
「ウドンゲ、いつものように薬を売って来なさい」
お師匠様が私に薬を打ってこいと言ってきました。あー、嫌だな。私、人間が苦手だっていうのに!それを知っているお師匠様なのに、私に人間ども相手に薬を売れと言いますか。
「わかりました…、これから行ってきます」
私はお師匠様にこれから薬売りに行くと言ったのですが、ちょっと気の抜けた口調でしたので、
「ウドンゲ!何そのヤル気のない態度はっ!」
バギッ!
お師匠様は私の頬をビンタするどころか、こぶしを握り締めて殴りつけてきました。ちょっとでも気に食わないことがあると私の事を殴りつけてくるんですが、私も月の都の軍隊から脱走したという弱みを握られているのと、月人と違い玉兎でしかないのでお師匠様と姫様には絶対に逆らう事が出来ないのです。
「ごめんなさいお師匠様」
私は素直のお師匠様に自分の非を認めたのですが、
「反省するなら猿でもできるっていうでしょう?あなたに薬売りの情熱がなかったら、お客様に熱意が伝わることがないのよっ!」
「あなたの働きがこうだから、我々の生活がいつもギリギリでいっぱいいっぱいの状態なのよ!」
―ババァ(永琳)説教中―
私は自分の非を認めたというのに、お師匠様ときたらまだ怒りが収まっていないので私は説教をされる始末です。老婆心があるから説教されただと思いますが、私にとっては大きなお世話以外の何物でもありません。
「お師匠様。今日こそノルマを達成しますので、どうか期待なさってくださいね」
私はこれ以上のお説教には耐えられないので、お師匠様の視界から消えるようにして診察室から立ち去りました。
「ウドンゲったら、私の言ってる言葉の意味を本当に解ってるのかしら」
お師匠様が何か訳のわからない事を言ってますが、どうてたいしたことじゃないのでここはあえて無視しておきます。いちいち気にしていたら、ここでの生活はやっていけないのですからね。
―少女(ウドンゲ)移動中―
私が嫌々ながら人里に置き薬を売りに来たのですが、
「あっ、竹林にいる怪しい兎だっ」
「本当だ、怪しい屋敷にいる怪しい兎だ」
「噂では兎どもを牛耳ってるらしいぞ」
「ウサ耳ブレザーのコスプレかわいいお」
「おかーさん見て、怪しい兎だー」
「あやしい兎だから見ちゃいけませんっ!これ以上見たらおかしくなっちゃうでしょ?」
人里の人間どもときたら、私の事をいっつも“怪しい兎”なんて呼んでくれるんだ!本来は私とまともに会話すらできない穢れた人間の分際で、こうも侮辱するのだから人間どもの親は子供にどういう教育をしているのか、全くもって理解できた代物ではない。
「今晩は兎鍋ね」
「あいつが持ってる薬は効果があるんだけど、あいつと話した後は凄く気持ち悪いんだよな」
「怪しい上に気持ち悪いんだから、本当にどうしようもないよな!」
「ハッハッハ、全くその通りで!」
「貴殿とは話が合うな!私と一杯呑まないか?もちろん酒の肴は兎肉のソテーという事で」
「そうですな!鍋にして食べるのがいいんだが、ソテーも捨てがたいな」
最低っ!ここの人間どもはどいつもこいつも兎を食べることしか考えていない!兎角同盟のリーダーである私の目の前で兎肉を食べようだなんて、本当に信じられないし気地区で外道極まりない奴らだ。お前らなんか鶏肉でも食べればいいんだっ!
私は戦うっ!幻想郷の食卓から兎がなくなるその日が来るまで!
私はこれ以上人里にいる気分になれなかったので、人間達に見えないように人里を後にしたのだが、
「あれっ?いつの間にか怪しい兎がいなくなったんよ?」
「どこいったんだべか?」
「たぶん、迷いの竹林じゃね?」
「だよね〜。」
「本当に怪しい奴じゃけんのう。何しに来たんだかわからん」
「そうなんよ。私もあの兎が何考えているかなんてわからんよ」
「あの兎は常識がない奴じゃのう」
「あいつから薬を買ったけんど、薬の効果を聞いても一方的に言うだけ言ってこちらの話を聞かないから気味が悪いっぺさ」
私が見えない事をいいことに人間どもときたら、私の名誉を台無しにしてくれることを言いたい放題してくれてるじゃないの!
あんな奴らと話してたらそのうち私まで穢れてしまうと思ったから、私は人里から去っただけなんだ。なんで私があいつらのルールに従わないといけないのか、いまいちよくわからない。
「そこの妖怪兎さん。妖怪用の風邪薬を一つ頂戴していただけないでしょうか?」
人里を出て霧の湖付近あたりで、メイド服を着た人間が私から薬を買おうとしている。
「なんでしょうか。誠に残念ですが、ただいま薬を切らしていまして、売り物は一つたちともございません。どうかお引き取りをして頂けないでしょうか」
私は人間と話したくない気分なので、メイドを突き放すような口調で答えましたよ。このメイドときたら穢れた地上人間なのに、穢れなき偉大な玉兎の私に話しかけれる身分でないという事を理解していないのだろうか?
「お薬を売って下さらないのは残念ですわ。妹様が妖怪肺炎をこじらせてしまいましたから、八意永琳様が作られた妖怪用のお薬が必要なのですが、売っていただけないのは残念な限りです」
「それなら急患という形でそちらに伺わせていただきますが、それでもよろしいでしょうか?」
私が薬を売らないと言ったので、メイドは大人しく引き下がると思いきや無礼極まりないことに永遠亭にくるとぬかしやがった。
「八意診療所は急患を受け付けていません。残念ですが、豊姫様と依姫様に手を上げるような無礼な奴を診察しないとお師匠様がおっしゃってました」
このメイドときたら主の妹の病気を治したいがために、ご多忙極まりないお師匠様に急患をけしかけて診察を受けさせると言ってきます。依姫様に襲いかかった吸血鬼の妹が死んだってこれといった問題があるわけではありませんし、悪魔の類は消えてなくなった方が世のためじゃないですか。
「そう、残念だわ…。幻想郷で生きていくにはお互い手を取り合っていかないといけないのに、あなたときたら相手を受け入れず自分の我を通すことしか考えていないのね」
「でもそんなことばかりやってたんじゃ、あなたが誰かの助けが必要な時に誰も助けてくれないんじゃないかしら?」
メイドはいつの間にか姿を消していったのだが、私よりこのメイドの方がずっと怪しい奴だろう。
お師匠様は地上の穢れた奴ら相手に合わせるように私に言ってきたのだけど、どう考えても私があいつらに会わせるなんて絶対に出来ないことだ。なぜなら、私は穢れなき玉兎であいつらは穢れある地上で生を受けた罪人だからだ。私は幼い時からそう言い聞かされてきたし、現に地上で暮らしていくうちにそれが確かなことだと嫌でも理解させられてきたのだから。
―おまけ―
「お嬢様、ただ今戻って参りました」
咲夜が紅魔館に戻るとすぐにレミリアの部屋に行く理由は、妖怪肺炎の特効薬を確保できなかった事を報告するためだった。
「咲夜!フランのお薬を調達できたかしら?」
咲夜が部屋に入ってくるとレミリアが特効薬を確保できたかを咲夜に問いただしたのだが、
「申し訳ありませんお嬢様。薬売りの兎に何を言っても取引が出来ませんでしたので、妖怪肺炎の特効薬のお薬を買う事が出来ませんでした」
咲夜は簡単なミッションを失敗した事に恥じているのだが、
「買えないっていうんじゃ仕方ないわねぇ。強引に奪い取ったらそれこそトラブルのもとになるし。でもあいつらって薬を売る気があるのかしら?」
レミリアは薬売りが薬を売らないと聞いたとたんに怒りを通り越してあきれてしまったのだが、
「咲夜。接客業と営業をあのコミュニケーション能力のない妖怪兎にやらすっていうのがそもそもの人選ミスだと思わない?私たったら、美鈴に事務職をやらせたりパチェに肉体労働を絶対にさせたりしないわ」
レミリアはさりげなく輝夜と永琳の人選選考を馬鹿にしたのだが、
「そうですね。私もお嬢様と同じ考えでございますが、おそらく配置薬業を任せれる人材がいないのかもしれません」
咲夜も今日あった出来事から鈴仙に配置薬業を任せていること自体が間違っていると思わずにはいられなかった。
「咲夜、あそこの診療所は急患を受け付けていないの?」
レミリアは至極当然の事を咲夜に問いただしたのだが、
「あの妖怪兎が言うには急患は一切受け付けていないと」
咲夜はありのままの真実をレミリアに応えたので、
「なんのための診療所かほんとわかったものじゃない。病院がこんなんじゃ可愛いフランを任せるわけにはいかないし、本当に困った。こういう時に“ゆかりん”がいてくれれば…」
レミリアは八意診療所が何のためにあるのかわからなくなったと共に、困った時に頼れるあいつこと“ゆかりん”の名をあげたら、
「困った時はお互いさま。みんなのアイドル“ゆかりん”よ〜」
いきなりスキマからボーダー商事のCEOである八雲紫イコール“ゆかりん”が姿を現した。レミリアも咲夜も“ゆかりん”が神出鬼没であることを知っているので、これぐらいの事では驚くことはない。
“ゆかりん”は紫色を基調とした派手な服を身にまとい、胡散臭さあふれる笑みを浮かべているので、傍から見ると信頼ならない奴だと思える。
「はぁ〜、また面倒なのが来たわ。咲夜、追い返して頂戴!」
レミリアは“悪魔的ジョーク”をこめて“ゆかりん”を追い出すように咲夜に命令すると、
「承知しましたお嬢様」
咲夜も“悪魔的ジョーク”だという事が解っているので、あからさまに“ゆかりん”を紅魔館から追い出そうとした。
「レミィちゃん酷いわ!私はただあなたの願いをかなえるために、フランちゃんに妖怪肺炎の特効薬を届けようとしただけなのに…」
咲夜に追い出されそうになった“ゆかりん”は、自分が追い出された事がショックで涙を流してしまった。
「“ゆかりん”ごめんね。冗談よ、冗談。今のは“悪魔的ジョーク”だって。じゃあ早速なんだけど、妖怪肺炎の特効薬を頂けないかしら?」
泣きだした“ゆかりん”にレミリアは自分たちのやり取りが“悪魔的ジョーク”だという事をつけて、最愛の妹のフランドールに飲ませる妖怪肺炎の特効薬を売ってほしいと言った。
「妖怪肺炎のお薬ね、それならこれね。はいどうぞ」
いつの間にか胡散臭い笑みを浮かべた“ゆかりん”は、スキマを展開してからどこのメーカーなのかわからない妖怪肺炎の特効薬をレミリアに手渡した。
「ありがとう、本当に助かったわ。これでフランも助かったかもしれない…。お題はこれでいいかしら?」
レミリアは“ゆかりん”を信頼しきっているので、胡散臭い特効薬を受け取ってから手持ちのバックから札束を取り出しそれを“ゆかりん”に手渡したのだった。
「お客様、いくらなんでも100万円は受け取るわけには参りません!この薬のメーカー希望小売価格の5000円で十分でございます」
“ゆかりん”は5000円で十分だとレミリアに行ったのだが、
「途方もくれていたところを助けてくれたんだから、これぐらい当たり前じゃないの」
幻想郷の技術では作ることが出来ない薬を手にしたレミリアは、これぐらいの報酬を支払っても問題ないと考えている。
「とんでもない!私たちボーダー商事は、お客様の笑顔の為に誠心誠意込めて働かせもらうことで幻想郷がより豊かな社会なることを望んでいる次第でございます」
「それに、困った時はお互いさまじゃないですか?」
“ゆかりん”は自分達ボーダー商事が、幻想郷の社会をより豊かにするために困った時はお互いが協力し合うという事をレミリアと咲夜に言うと、
「そうね、困った時はお互いさまだもの。私達はあなたに逆らえないし、逆らうつもりなんて全くもってありませんわ」
「私はお嬢様と妹様に忠誠を誓っているのですが、同じぐらい八雲様をお慕いしております」
レミリアと咲夜は“ゆかりん”に跪いているのは、レミリアの経営するサラ金業の“スカーレットファイナンス”や、レジャー施設や宿泊業の“レッドデビルズ”はボーダー商事傘下の企業であるからだ。
「この間ね、詐欺兎から外界にある魚が欲しいと言ってきたのよ。私は永遠亭にいる奴らが信頼ならないから、全部合わせて4億で買わせたわ。」
「あれ全部の市場価値は1000万でしかないのよ?それを私の言い値で買い取ってくれるんだから、本当に笑いが止まらないったらありゃしないの!」
「極めつけに藍に渡す稲荷寿司と、新作のカラー兎3種を私に渡したんだから、儲かりすぎて“ゆかりん”困っちゃう!」
“ゆかりん”はこの間因幡てゐと取引した事をレミリアと咲夜に言ったら、
「さすが八雲様。商売上手すぎて敵いませんわ!」
レミリアは純粋に“ゆかりん”の商売上須佐に感嘆すれば、
「お見事としかいうしかありませんね」
咲夜も“ゆかりん”の取引のやり方に脱帽せざるを得なかった。
「ふふっ、あの“詐欺兎”は私の知らないところでお金を稼いでいるんだから、これからもっともっと資産って奴をはぎ取ってやらないといけないわ。」
「あそこにいる連中は、この私の恐ろしさをこれから存分に味あわせてあげる!幻想郷を表向きで牛耳っているのは博麗の巫女だけど、あの博麗の巫女を裏から操っているのはこの八雲紫なのよ!」
“ゆかりん”は胡散臭い笑みを浮かべると、そのままスキマに潜り込んでこの世界のどこかにあるというマヨイガに帰ってしまった。
「輝夜も永琳も馬鹿よね。“ゆかりん”に喧嘩を挑むなんて」
「そうですね。お嬢様のおっしゃる通りです」
―あとがき―
“兎狩り狩り”はこのお話の構成上外せないうえに、兎のリーダーであるウドンゲさんの視点じゃないと面白おかしくもないと思ったからです。
今までウドンゲ成分が少なすぎたという事で、今回特別多くして見るとあら不思議、なんとなんと姫様成分とてゐ成分が極端に少なくなるという罠に陥ってしまいました。こんな愚かな私を死罪に処してください。
ためしにやってみたかった事に一つとして、物語の語り部をてゐさんからウドンゲさんの視点で話を進めてみました。
イル・プリンチベ
作品情報
作品集:
27
投稿日時:
2011/07/01 11:38:48
更新日時:
2011/07/01 20:38:48
分類
鈴仙・優曇華院・イナバ
永遠亭
ブラック企業
途中で語り部を変更するのも、たまには新鮮でいいですね。
で、鈴仙、高慢ちきですんげ〜嫌な奴なんですけれど……。
自分が脱走兵だと自覚してるんですかねぇ?
ラビットハンター・キラーの前に、エスケープ・キラーに狩られるんじゃないかな?
この鈴仙、煮ても焼いても食えなさそうですけれど。
相変わらずのゆかりんの華麗臭+胡散臭さで臭い思いをしつつ、続きをお待ちしております。
輝夜もそうだけど、月で大罪やらかして、その穢れた地上に何百年も居座ってるという事を自覚してるのかな(永琳はまだ内心で後ろめたく思ってるらしいから良いとして)。尊い月の民様は「郷に入れば郷に従え」という言葉さえ知らないらしい。
分不相応な特権意識に染まってる者は、そのうち報いを受けるだろうね。
ところで一連のブラック企業シリーズは、基本的に話繋がってるわけではない?
レミリアは普通に思いやりあるし、紫も胡散臭さ爆発だけど仕事は何だかんだでちゃんとしてるし。
同情できてしまう。はたから見るとアホでクズなだけだが、こういう精神状況の人って
本人はすげぇ必死だし真面目なんだよな……だからといって彼女を肯定できる
わけではないけど……このままで終わってほしくないなあ。